【実施例】
【0045】
本発明の例示的一態様である一実施例を、
図1〜
図20に基づいて説明する。
【0046】
図1は、本実施例のスピーカ装置(電子機器)1の斜視図である。また、
図2は、
図1におけるA−A断面図であり、
図3は、
図1におけるB−B断面図である。
図1〜
図3に示されように、本実施例のスピーカ装置は、主として、スピーカユニット2と第1の筐体4と第2の筐体6とから構成される。なお、
図2〜
図20において、後述するスピーカユニットのキャビネット以外は、図示することを省略している。
【0047】
スピーカユニット2は、キャビネット21、図示しない、フレーム、振動板、エッジ、ボイスコイル、ボイスコイルを支持するボイスコイル支持部、磁気回路とを有する。キャビネットは、外周筒部と底部を備えている。キャビネットの外周筒部又は底部は開口部を備えているか、開口部を有さない閉じた形状を備えていても構わない。フレームはキャビネット内に配置されている。振動板はエッジを介してフレームに支持されている。ボイスコイルはボイスコイル支持部を介して振動板に支持されている。磁気回路は、磁石、ヨーク、プレートとを備え、ボイスコイルが配置される磁気ギャップを有する。また、必要に応じて、ボイスコイルはダンパを介してフレームに支持されていても構わない。スピーカユニット2の音響放射側(以下、前面と呼称する)は開放されている。すなわち、前面側におけるキャビネットの面は開口部を有する。スピーカユニット2が発する音波は、キャビネットの開口部を通過して、外部へ放射される。なお、音響放射側とは逆側を、以下、背面側と呼称する。
【0048】
第1の筐体4は、スピーカユニット2を収容する筐体である。第1の筐体4は、外周筒部41、底部42とを備える。また、後述する第2の筐体6に向かって突起する突起部43を備える。この突起部43は環状に形成されている。
【0049】
第2の筐体6は、第1の筐体4を収容する筐体である。第2の筐体6は、外周筒部61、底部62とを備える。底部62は開口部63を備えている。底部62は開口部63を備えていなくても構わない。第1の筐体4と第2の筐体6は、実質的に同軸上に位置するように配置される。
【0050】
第1の筐体4の底部42と第2の筐体6の底部62との間には、間隙44が設けられている。この間隙が設けられていることで、第1の筐体4と第2の筐体6との接触面を比較的小さくできる。このため、第1の筐体4と第2の筐体6との間に生じる摩擦力が比較的小さくなり、後述する第2の回転装置にて、第1の筐体4が第2の筐体6に対してスムーズに回転することができる。
【0051】
第2の筐体6は、外周部64aと内周部64bを有する蓋部64を備える。この蓋部64は、第2の筐体6の外周筒部61に設けられている。外周筒部61と蓋部64は一体的に形成されていても、別部材で構成されていても構わない。蓋部64は、第1の筐体4に対向する位置に配置されている。また、第1の筐体の一部を覆う面65を備えている。面65が設けられることで、スピーカユニット2と第1の筐体4との間に形成される空間、又は第1の筐体4と第2の筐体6との間に形成される空間内にゴミ等が入り込むことを抑止できる。
【0052】
蓋部64の面65は、平板状に形成された第1の面66と、第2の筐体6の外周部6aからスピーカユニット2の底部に向かって傾斜する傾斜面(第2の面)67を備える。この傾斜面が設けられることで、後述する第1の回転装置にてスピーカユニット2が回転した際、スピーカユニット2の前面が蓋部64にて遮られて、音波の一部が外部へ放射されないことを抑止できる。
【0053】
この蓋部64の第1の面は、スピーカユニット2の前面に対して略同じ位置に設けられている。必要に応じて、蓋部64の第1の面は、スピーカユニット2の前面に対して低い位置又は高い位置に設けても構わない。
【0054】
蓋部64の面に対して、第1の筐体の外周部4aは下方に配置されている。
【0055】
蓋部64は環状に形成されている。蓋部64の内周部64bは、スピーカユニット2の外周部と実質的に同じ、又は大きく形成されている。このような内周部64bを備えることで、蓋部64とスピーカユニット2の外周部とが接触することを抑止できる。
【0056】
図4に、第2の筐体6を、外周筒部61と蓋部64とに分解した分解斜視図を示す。
図4に示されるように、蓋部64は、開口部5を備える。蓋部64を有することで、スピーカユニット2に外力が作用すること、又はスピーカユニット2と第1の筐体4との間の空間内に埃・ゴミ等が入り込むことを抑止できる。また、スピーカユニット2の背面側から放射される音波と、スピーカユニット2の前面側から放射される音波とが干渉することを抑制することができる。
【0057】
第2の筐体6内に、第1の筐体4及び後述するその他の部品とスピーカユニット2とを組み込んだ後に、第2の筐体6の開口部の一部を蓋部64で被うことで、電子機器としてのスピーカ装置1が作製される。この際、蓋部64の爪68が第2の筐体6の外周筒部61の爪69の間に位置する状態で外周筒部61に蓋部64を設け、蓋部64を第2の筐体6に対して回転させて、蓋部64の面66と爪68との間の間隙64cに爪69を配置する。このような配置により、蓋部64と第2の筐体の外周筒部61に取り付けられる。また、蓋部64を第2の筐体の外周筒部61から取り外す際には、蓋部64を外周筒部61に対して逆回転させることで取り外すことができ、修理等の際に分解することができる。
【0058】
図5は、
図1のスピーカ装置1における蓋部64及びスピーカユニット2を除した状態の斜視図である。
【0059】
図2及び
図5に示されるように、第1の筐体4の中央部近傍には、第2の回転装置8が配されている。第2の回転装置8は、駆動装置としてのモータ8aと、第1の筐体4に回転自在に支持されモータ8aの回転が伝達されるギヤ(回転部材)8bと、第2の筐体6に固定されギヤ8bの回転が伝達されるギヤ(被回転部材)8cとを備える。
【0060】
ギヤ8cは、第2の筐体6の底部62が有する突起部62aに設けられている。
【0061】
駆動装置は、回転部材に回転力を与える装置であれば特に限定はしない。回転部材及び被回転部材は回転力を伝達できる部材であれば構わなく、例えば歯を有するギヤ、摩擦力を発生させる面を有する車輪等の部材等が挙げられる。ギヤ8cは、第2の筐体6の中央部近傍に配置されている。また、ギヤ8cは、第2の筐体6の軸上に配置されている。ギヤ8cは第2の筐体6に固定されていればよく、一体に成形されていても、第1の筐体4の底部42に対して別部材で構成されていても構わない。
【0062】
第1の筐体4の底部42が有する内周部42a内には、突起部62aが配置されている。また、第1の筐体4の突起部43により、第1の筐体4は第2の筐体6に対して回転自在に支持されている。
【0063】
そして、モータ8aが駆動すると、その回転力は、モータ8aに歯合し第1の筐体4に回転自在に支持されたギヤ8bに伝達され、ギヤ8cに対してギヤ8bが回転する。
【0064】
すると、固定されたギヤ8c及びギヤ8bが回転する状態となり、回転自在に第2の筐体2に支持された第1の筐体4が第2の筐体6に対して回転する。これによって、第1の筐体4、延いては第1の筐体4に収容されるスピーカユニット2が、第1の筐体4及び第2の筐体6の軸を回転軸(
図5中の一点鎖線E)として平面的に、即ち
図1に示す矢印X−Y方向に回転する。
【0065】
このように、第2の回転装置8が、第1の筐体4内に配されているとともに、第1の筐体4及び第2の筐体6の軸を回転軸として第2の筐体6に対して第1の筐体4を回転させる構成であるため、第2の回転装置8の回転力を比較的小さくできる。よって、第2の回転装置8に基づく消費電力を小さくできるとともに、第2の回転装置8に基づく電子機器の大型化を抑止することができる。
【0066】
既述のように、第1の筐体4には、スピーカユニット2が収容される。
図6に、スピーカユニット2を背面側から見た斜視図を示す。スピーカユニット2の背面には、突出する第1の接触部5a,5bと、ギヤ(被回転部材)3cと、後述する接触部18に対応する第2の被接触部9a,9bとが設けられている。
【0067】
第1の接触部5a、5bは、スピーカユニット2の背面側の側面において、並べて配置されている。これら第1の接触部5a、5bは略平行に配置されている。また、第1の接触部5a、5bは、スピーカユニット2の背面側の側面における中央部2aと外周部2bとの間に配置され、中央部2aから外周部2bに向かって延在している。第1の接触部5a,5bが、中央部2aと外周部2bとの間に配置されていることで、第1の接触部5a,5bを中央部2aに配置した場合に比べて、第1の筐体4の軸方向における厚さを小さくすることができ、延いてはスピーカ装置1をコンパクト化することができる。このため、例えば、自動車のフロントや、住宅の天井に本実施例のスピーカ装置1を設置する場合、当該スピーカ装置1のためのスペースを小さくできるので、他の電子機器を配置するためのスペースを確保することができる。
【0068】
一方、第1の筐体4内には、
図5等に示されるように、第1の接触部5a,5bの一方5aが嵌合しスライドするための第1の被接触部10が設けられている。この第1の被接触部10は、第1の接触部5a,5bに対応する形状として、凹状に形成されている。第1の接触部5a,5bは、スピーカユニット2が第1の筐体4に対して回転する軸を中心軸として、円弧状に延在している。
【0069】
第1の接触部5a,5b、例えば第1の被接触部10のうち、一方が凸状の形状を有し、他方が凹状の形状を備えるなど、後述するスピーカユニットが回転する経路を構成する形状であれば、特に限定はしない。また、第1の被接触部10は、複数の接触部に対応して、第1の筐体4に複数設けられていても構わない。
【0070】
図7は、第1の筐体4を、その中心部より奥側の位置で切断した際の斜視図である。説明のため、スピーカユニット2一部が図示されている。
図7に示されるように、第1の接触部5aが第1の被接触部10に嵌合し、第1の被接触部10を経路としてスライドする。第1の接触部5aが経路としての第1の被接触部10に対してスライドすることで、スピーカユニット2は所望の経路に沿って回転できる。
【0071】
第1の接触部5a,5bは、開口部15a,15bを備えている。この開口部15a,15bは、第1の接触部5a,5bの側面を開口しており、第1の接触部5a,5bが延在する方向に沿って形成されている。一方、第1の筐体4には、第1の筐体4に固定された部材としての棒状部材11が配置されている。この棒状部材11は、支持部12を介して第1の筐体4に固定されている。この棒状部材11は、第1の接触部5a,5bの開口部15a,15bを通過している。
【0072】
棒状部材11が開口部15a,15bを通過しているため、第1の接触部5aが第1の被接触部10に嵌合した状態を維持することができ、スピーカユニット2の回転がスムーズに行われる。
【0073】
また、スピーカユニット2を回転させる際に、その回転軸となるシャフトの使用を控えることができる。このため、回転軸を所望の位置に設定することができる。また、回転軸としてのシャフトの使用を控えることで、シャフトを配置するスペースを排除でき、スピーカ装置1自身を小型化することができる。さらに、シャフトの使用を控えることで、スピーカユニット2と、第1の筐体4と、第2の筐体6とを別々に組み立てることができ、スピーカユニット2が故障した際に、当該スピーカユニット2を取り外して、交換することができる。
【0074】
第1の筐体4内には、当該第1の筐体4の軸に交差す
る方向を回転軸(
図1中の破線C)としてスピーカユニット2を回転させる第1の回転装置3が配されている。また、この回転軸は、スピーカユニット2の軸に対しても交差する。図示の例では、
図1中の破線Cで示される回転軸は第1の筐体4に対して実質的に直交する方向である。また、
図1中の破線Cで示される回転軸は、スピーカユニット2の軸に実質的に直交する。
【0075】
第1の回転装置3は、駆動装置としてのモータ3aと、モータ3aの回転が伝達されるギヤ(回転部材)3bと、ギヤ3bの回転が伝達されるギヤ(回転部材)3b’と、ギヤ3b’の回転が伝達される、スピーカユニット2の背面に設けられたギヤ(被回転部材)3c、支持部3dとから構成される。ギヤ3b及びギヤ3b’は、第1の筐体4に回転自在に、支持部3dにより支持されている。駆動装置は、回転部材に回転力を与える装置であれば特に限定はしない。回転部材及び被回転部材は回転力を伝達できる部材であれば構わなく、例えば歯を有するギヤ、摩擦力を発生させる面を有する車輪等の部材等が挙げられる。第1の回転装置3は、第1の筐体4の中央部と外周筒部42との間であって、第2の回転装置8に隣接して配置されている。
【0076】
モータ3aが駆動すると、その回転は、モータ3aに歯合するギヤ3b、次いでギヤ3b’に伝達され、これらギヤが連鎖的に回転する。さらに、その回転は、ギヤ3b’に歯合しスピーカユニット2の背面側の側面に固定されたギヤ3cに伝達され、ギヤ3cとともにスピーカユニット2が第1の筐体4に対して回転する。
【0077】
これによって、第1の筐体4に収容されるスピーカユニット2が、第1の筐体4の軸に直交する方向を回転軸(
図1中のC−C破線)として回転する。この回転の向きは、
図1に示されるように、スピーカユニット2のエッジ部分が矢印Z方向、即ち、
図1中の矢印Z’方向となる。このように、本実施例では、
図1中の矢印Z’方向と、既述の通り、
図1中のX−Y方向にスピーカユニット2を動かすことができるので、スピーカの向きを任意に変更することができる。
【0078】
第1の回転装置3によってスピーカユニット2を回転させた際、第1の回転装置3におけるモータ3aとモータ3aの回転が伝達されるギヤ3bとの間、あるいはギヤ3bとギヤ3b’との間、及び、ギヤ3b’とギヤcとの間(以下、「モータ3a,ギヤ3b,3b’,c相互間」と略す。)の歯合(第2の回転装置3が有する回転部材間の連結)が離れて、モータ3a,ギヤ3b,3b’,3c相互間で歯飛びが生じる(回転力が正確に伝達されない)可能性がある。
【0079】
しかし、第1の筐体内4に配された、スピーカユニット2の回転軸(破線C)と略平行に延在する棒状部
材11が、第1の接触部5a,5bにおける開口部15a,15bの2つ(以上)を貫通した状態であれば、第1の回転装置8におけるギヤ3b,3b’,c相互間の歯合(第1の回転装置8が有する回転部材間の連結)が離れることを抑止して、歯飛び等、回転力が伝達されないことを抑止できる。また、モータ3a、ギヤ3b、3b‘は、第1の筐体4に設けられた支持部3dにより支持されている。支持部3dを用いることで、モータ3aと、ギヤ3b、3b‘間の歯合(第1の回転装置8が有する回転部材間の連結)が離れることを抑止できる。
【0080】
第1の接触部5a、5bの開口部15a、15bは、2つの端部を備える。図示の例では、2つの端部のうち、一方の端部15a1、15b1はスピーカユニット2の外周部側に配置され、他方の端部15a2、15b2はスピーカユニット2の中央部側に配置される。
【0081】
スピーカユニット2が定常位置に配置されている時、棒状部材11は、開口部15a、15bの一方の端部15a1、15b1近傍であって、開口部15a、15b内に配置されている。
【0082】
ここで、定常位置とは、第1の回転装置及び第2の回転装置が駆動する前における、スピーカユニット2の位置である。定常位置は、具体的には
図2や
図7に示されるような、スピーカユニット2の前面が第2の筐体の開口部側に配置される位置であり、この定常位置は任意に変更することができる。
【0083】
棒状部材11を開口部15a、15bの一方の端部15a1、15b1近傍に配置することで、スピーカユニット2の向きを変更させる際、開口部15a、15bの一方の端部15a1、15b1から他方の端部15a2、15b2までの長さを、棒状部材2の移動幅とすることができる。このため、スピーカユニット2の向きを広範囲に変更することができる。また、開口部15a(15b)、又は第1の接触部5a(5b)の長さを比較的小さくしつつ、スピーカユニット2の回転可能な範囲を比較的大きくすることができる。
【0084】
図8に、本実施例のスピーカ装置1の外周部(
図1におけるD矢示周辺部)の拡大図を示す。
図8(A)はスピーカ装置1の外周部の一部の断面図を拡大した図であり、
図8(B)はその部分を拡大した斜視図である。
図8(B)においては、第2の筐体6における蓋部64が省略されて描かれている。
【0085】
図8(A)及び
図8(B)に示されるように、スピーカ装置1の外周部では、スピーカユニット2の外側に第1の筐体4の外周部4aが、その更に外側に第2の筐体6の外周部6aが配置されている。第1の筐体4の外周部4aを覆うように第2の筐体6の蓋部64の面65が張り出している。
【0086】
また、第1の筐体4の外周部4aは、第2の筐体6側に突出する突出部4a1を備える。この突出部4a1は環状の形状に形成され、且つ蓋部64に対面する面4a2を備える。突出部4a1に対面する蓋部64の下面には、板バネ(弾性部材)13の一方の端部が取り付けられており、その他方の端部が突出部4a1の面4a2に接触している。板バネ13は燐青銅等などの金属部材、ゴム、ポリウレタン樹脂等の樹脂部材で構成されている。蓋部64から第1の筐体4に向かう方向にて、第1の筐体4には、板バネの弾性力(付勢力)が作用している。また、蓋部64には、第1の筐体4から第2の筐体6に向かう方向にて、弾性力(付勢力)が作用している。
【0087】
既述の第2の回転装置8によって第1の筐体4及び第2の筐体6の軸を回転軸(
図5中の一点鎖線E)として第2の筐体6に対して第1の筐体4を回転させると、
図8(B)中の矢印F方向に第1の筐体4が回転し、板バネ13が突出部4a1の面4a2上を移動する。即ち、第1の筐体4と第2の筐体6は、第2の筐体6に固定される弾性部材13を介して接触している。
【0088】
また、
図1に示される蓋部64の筒状部64cに弾性部材13が取り付けられている。
図9には、筒状部64cの背面側の面に、複数の弾性部材13が配置されていることが示されている。これら弾性部材13は、周方向にて異なる位置に配置されている。また、弾性部材13は、第1の筐体4の外周部4aに接触している。
【0089】
第2の回転装置8によって第1の筐体4を回転させた場合、第2の筐体6と第1の筐体4との間に間隙が形成されている場合、第1の筐体4と第2の筐体6とが接触して異音が発生する場合がある。また、スピーカユニット2を回転させた場合やスピーカユニット2を駆動させた場合に生じる振動がスピーカ装置1全体に伝播して、第1の筐体4と第2の筐体6とが接触して異音が発生する場合がある。
【0090】
しかし、本実施例のように弾性部材13を第1の筐体4と第2の筐体6との間に設けることで、第2の筐体6を第1の筐体4に向けて弾性力(付勢力)が作用して、異音(ガタツキ)の発生を抑制することができる。
【0091】
なお、本実施例では、弾性部材13が第2の筐体6に固定され第1の筐体4に対して移動する態様を例示しているが、第1の筐体4に固定され第2の筐体6に対して移動する態様であっても構わない。
【0092】
第1の筐体4内には、その底部42に固定された支持部14と、支持部14に支持されたロール(第1の回転部材)16が備えられている。
図2、
図3及び
図7に示されるように、スピーカユニット2の背面側の側面に設けられた第2の被接触部9がロール16と接触しながら、第1の回転装置3によりスピーカユニット2が回転する。即ち、スピーカユニット2は、ロール16及び支持部14を介して第1の筐体4に支持されている。スピーカユニット2の背面側の側面(詳しくは第2の被接触部9)が、回転するロール16に接触しながらロール16及び支持部14を介して第1の筐体4に支持されるので、第1の回転装置3によりスピーカユニット2の向きを変更する際に、スピーカユニット2をスムーズに回転させられる。
【0093】
図2、
図3及び
図8に示されるように、第1の筐体4の外周部4aには、ロール(第2の回転部材)17が設けられている。これら図面からわかるように、ロール17は、第1の回転装置3によるスピーカユニット2の回転方向(矢印Z’方向)に回転可能な状態で、第1の筐体に支持されている。また、スピーカユニット2の背面側の側面が、ロール17に接触し、ロール17を介して第1の筐体4に支持されている。そのため、第1の回転装置3によりスピーカユニット2の向きを変更する際に、スピーカユニット2をスムーズに回転させられる。特に、ロール17及び支持部14を設けることで、スピーカユニット2の回転をスムーズにする。
【0094】
図8(A)及び
図8(B)に示されるように、ロール17は板バネ(弾性部材)13の近傍に配されている。第1の回転装置3によりスピーカユニット2を回転させた際、その振動がロール17を介して第1の筐体4と第2の筐体6との間に伝播し、両者が接触して異音が生じる場合がある。ロール17の近傍に板バネ13を配置することで、振動を減衰させて、異音の発生を抑制することができる。
【0095】
図5及び
図7に示されるように、第1の筐体4内には検知部18が配置されている。検知部18は、複数のセンサ18a、18bスピーカユニット2の背面に設けられた第2の被接触部9に接触する接触部18’を備えている。センサには、光センサ、光電素子やフォトダイオード等の公知のセンサを用いることができる。第1の回転装置3によりスピーカユニット2を回転させた際、スピーカユニット2の背面側の側面(詳しくは第2の被接触部9)と接触する接触部18’がその位置を変化させたことを、センサ18a、18bが検知する。センサ18aは、例えば定常位置にスピーカユニット2があることを検知し、センサ18bは、スピーカユニット2が第2の回転装置により最大の回転角度まで回転されたことを検知する。このように、複数のセンサ18a、18bを用いることで、接触部18‘の2つの異なる位置を把握することで、スピーカユニット2の位置(回転角度)を把握することができる。また、検知された情報を基に、後述する操作部における制御機能により、フィードバック制御を行うことができる。
【0096】
本実施例において、スピーカユニット2と第1の筐体4とは、
図2に示されるように、伸縮自在な螺旋状のバネ(弾性部材)19で連結されている。螺旋状のバネ19の一方の端部が第1の筐体4の底部42に設けられた連結部20に、他方の端部はスピーカユニット2の背面側の側面に設けられた連結部21(
図6参照)に連結される。スピーカユニット2と第1の筐体4は、この螺旋状のバネ19を解して連結される。
【0097】
第1の回転装置3によってスピーカユニット2を回転させた際、第1の回転装置3におけるモータ3a,ギヤ3b,3b’,c相互間の歯合(第1の回転装置3が有する回転部材間の連結)が離れ、ギヤの歯飛びが生じる(回転力が正確に伝達されない)場合がある。しかし、スピーカユニット2と第1の筐体4とが、螺旋状のバネ19で連結されていることで、第2の回転装置3におけるモータ3a,ギヤ3b,3b’,c相互間の歯合(第1の回転装置3が有する回転部材間の連結)が離れることを抑止して、歯飛び等、回転力が正確に伝達されない状態の発生を抑止できる。
【0098】
なお、本実施例では螺旋状のバネ19を用いたが、伸縮自在な弾性部材であれば問題なく、一般的なゴム紐やゴムバンド等従来公知の各種弾性部材を用いることができる。
【0099】
本実施例において、スピーカユニット2は、第1の筐体4に対して着脱可能に構成されている。第1に、スピーカユニット2の蓋部64を外す。第2に、開口部15a,15bから棒状部材11を引く。第3に、螺旋状のバネ19を引っ掛け孔21から外す。この後に、第2の筐体6に収容された第1の筐体4及びスピーカユニット2を第2の筐体6から引き抜くことができる。また、逆の手順で簡単に取り付けることができる。このように、スピーカユニット2が着脱可能であるので、スピーカユニット2が故障等した際に、当該スピーカユニット2を取り外して、新たなスピーカユニット2と交換することができる。
【0100】
本実施例においては、スピーカユニット2が所望の(後述する操作部からの情報のほか、他の制御装置からの情報によりもたらされた要求を含む。)あるいは設定された(スピーカ装置1自身に予め設定された情報のほか、記憶手段等に予め記憶された情報や使用者が予め記憶させておいた情報によりもたらされた要求を含む。)方向に向くように、第1の回転装置3及び第2の回転装置8によるスピーカユニット2の回転を制御する制御部(不図示)と、外部から入力された情報を基に、スピーカユニットが向くべき方向の信号を前記制御部に送信する操作部(不図示)と、を備えていてもよい。
【0101】
これにより、本実施例のスピーカ装置1のスピーカからの音を聴く者は、スピーカユニット2が向くべき方向についての情報を前記操作部に入力することで、所望とする方向にスピーカユニットを向けることができる。この操作部は、スピーカ装置1本体に埋め込まれていてもよいし、無線であるいは有線で信号をやり取り可能なリモコンタイプの物でもよい。また、パソコンや自動車の車載器(カーナビゲーションシステム、カーオーディオ等)に前記操作部の機能を担わせても構わない。
【0102】
また、前記制御部が、スピーカ装置1自身がオフ状態である信号を受けて、スピーカユニット2の前面が前方に向く定常位置にスピーカユニット2が位置するように第1の回転装置3及び第2の回転装置8によるスピーカユニット2の回転を制御するとともに、スピーカ装置1自身がオン状態である信号を受けて、スピーカユニット2が所望のあるいは設定された方向に向くように、第1の回転装置3及び第2の回転装置8によるスピーカユニット2の回転を制御するように構成されていても構わない。当該構成であれば、スピーカ装置1自身がオンになった際に、スピーカユニット2が所望のあるいは設定された方向に向いて、いわゆるスタンバイ状態に自動的になるとともに、スピーカ装置1自身がオフになった際には、自動的にスピーカユニット2が定常位置に戻るように制御される。
【0103】
以上の本実施例のスピーカ装置1は、自動車が備えても、住宅が備えても有用である。
【0104】
本実施例のスピーカ装置1を自動車が備える場合、スピーカ装置1は、例えば、ドアインナー、ダッシュボード、リアトレイ、ラゲージトレイ、天井、各種ピラー等に取り付けることができる。この場合、車内で音を聴く者は、乗車人数や乗車位置、それぞれの人の好みや状態を勘案して前記操作部に入力し、スピーカユニット2の向きを最適なあるいは好みの状態に制御することができる。乗車人数や乗車位置を車載の検知手段で把握して、その情報から前記制御部等で最適なスピーカの向きを割り出して、スピーカユニット2の向きを自動的に変更するように構成されていてもよい。
【0105】
また、本実施例のスピーカ装置1は、スピーカユニット2の向きを変更する際の消費電力が抑えられることから、車載バッテリーへの負荷が少ない。さらに、本実施例のスピーカ装置1は、設置スペースを小さくすることができるので、他の電子機器やエンジン部品、その他の車載装置・部品等を配置するためのスペースを確保することができる。
【0106】
本実施例のスピーカ装置1を住宅が備える場合、スピーカ装置1は、例えば、壁面や天井、床、梁、柱等の住宅構造体に埋め込んだり、家具等の住宅付属品に埋め込んだりして取り付けることができる。この場合、住宅の室内で音を聴く者は、室内に居る人数や居る位置、それぞれの人の好みや状態、部屋の構造等を勘案して前記操作部に入力し、スピーカユニット2の向きを最適なあるいは好みの状態に制御することができる。室内に居る人数や居る位置を室内の検知手段で把握して、その情報から前記制御部等で最適なスピーカの向きを割り出して、スピーカユニット2の向きを自動的に変更するように構成されていてもよい。
【0107】
また、本実施例のスピーカ装置1は、スピーカユニット2の向きを変更する際の消費電力が抑えられることから、省エネルギーである。さらに、本実施例のスピーカ装置1は、設置スペースを小さくすることができるので、他の電子機器や住宅部品、その他の住宅付属品や調度品等を配置するためのスペースを確保することができる。
【0108】
なお、前述した実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。