特許第6334032号(P6334032)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6334032
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】ロープ引き上げ治具
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20180521BHJP
   B66B 5/04 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   B66B5/00 D
   B66B5/04 F
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-101846(P2017-101846)
(22)【出願日】2017年5月23日
【審査請求日】2017年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 弥槻
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−166072(JP,A)
【文献】 特開2006−89264(JP,A)
【文献】 特開2006−213512(JP,A)
【文献】 特開2015−51854(JP,A)
【文献】 特開2006−264871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00
B66B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーブを回転自在に支持するフレームに据え付けられ、前記シーブに巻き掛けられたロープを前記シーブから引き上げるロープ引き上げ治具であって、
前記フレームの上に載置され、前記シーブから垂下された前記ロープの直線部が通過する第1の通過部を有するベースと、
前記ベースよりも前記シーブの側に配置され、前記ロープの前記直線部が通過する第2の通過部を有するジャッキ板と、
前記ベースと前記ジャッキ板との間に跨って設けられ、回転させることで前記ジャッキ板を昇降動させる単一の操作部材と、を備え、
前記ジャッキ板は、前記操作部材が連結された連結部と、前記ロープの前記直線部を把持したロープ把持具が載置される載置面を有する支持部と、を含み、前記連結部と前記支持部との間に前記載置面を前記連結部よりも下方に位置させる段差が設けられたロープ引き上げ治具。
【請求項2】
前記操作部材は、前記ベースと前記ジャッキ板の前記連結部との間に介在されたナットと、
前記ナットにねじ込まれるとともに、前記ベースに固定された第1のねじ棒と、
前記第1のねじ棒の反対側から前記ナットにねじ込まれ、前記ジャッキ板の前記連結部に固定された第2のねじ棒と、を備え、
前記ナットを回転させることで、前記第1のねじ棒および前記第2のねじ棒が前記ナットに対し互いに逆方向に移動する請求項1に記載のロープ引き上げ治具。
【請求項3】
前記操作部材は、一本のジャッキボルトであり、当該ジャッキボルトは、前記ジャッキ板にねじ込まれているとともに、前記ジャッキボルトの下端が前記ベースに回転自在に支持された請求項1に記載のロープ引き上げ治具。
【請求項4】
前記ベースから起立されたガイド板をさらに備え、前記連結部の反対側に位置された前記支持部の先端部が前記ガイド板に昇降動可能に支持された請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のロープ引き上げ治具。
【請求項5】
前記ジャッキ板の前記支持部は、前記先端部から前記載置面の下方に向けて折り曲げられた補強部を含み、当該補強部が前記ガイド板に昇降動可能に支持された請求項4に記載のロープ引き上げ治具。
【請求項6】
前記ジャッキ板は、前記連結部と前記支持部との間を結ぶ起立部を有し、前記ロープ把持具が載置される前記載置面は、前記起立部と前記ガイド板との間に位置された請求項5に記載のロープ引き上げ治具。
【請求項7】
前記載置面は、フラットな水平面である請求項6に記載のロープ引き上げ治具。
【請求項8】
前記ベースから起立されたガイド板をさらに備え、当該ガイド板は、前記ジャッキ板の昇降方向に沿うガイド孔を有するとともに、前記連結部の反対側に位置された前記支持部の先端部が前記ガイド孔を貫通する締結具を介して昇降動可能に前記ガイド板に支持され、前記ガイド孔は、前記ナットを回転させた時の前記第1のねじ棒および前記第2のねじ棒の最大移動量を規定する長さを有する請求項2に記載のロープ引き上げ治具。
【請求項9】
前記ジャッキボルトは、ねじ山が刻まれた軸部と、前記軸部の軸方向に沿う一端に位置され、工具を引っ掛ける頭部と、前記軸部の軸方向に沿う他端から同軸状に突出され、ねじ山を持たない先端軸部とを有し、
前記ベースは、前記ジャッキボルトの前記先端軸部が回転自在に嵌合された嵌合孔を有する請求項3に記載のロープ引き上げ治具。
【請求項10】
前記ジャッキボルトは、前記頭部と前記軸部との境界に前記頭部よりも径が大きいフランジ部を有する請求項9に記載のロープ引き上げ治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えばガバナロープをガバナシーブから引き上げる際に用いるロープ引き上げ治具に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの安全装置の一つであるガバナ装置は、フレームの上に回転自在に支持されたガバナシーブと、ガバナシーブに巻き掛けられたガバナロープと、を主要な要素として備えている。ガバナロープは、乗りかごに追従して走行するとともに、乗りかごの非常止め装置に連結されている。
【0003】
エレベータの定期点検時においては、ガバナ装置が正常に作動するか否かを検査するガバナトリッピング試験が行われる。ガバナトリッピング試験を行うに当たっては、ガバナシーブを空転させるために、ガバナシーブからガバナロープを一時的に引き上げる必要がある。
【0004】
従来では、ガバナロープの引き上げ作業を円滑に行うために、ガバナロープのうちガバナシーブから垂下された箇所にロープ把持具としてのハンドバイスを取り付け、当該ハンドバイスを専用の引き上げ治具を用いて引き上げている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6001115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の引き上げ治具によると、ガバナロープを把持したハンドバイスを一定量引き上げるためには、作業者は複数のボルトおよびナットを均等量ずつ交互に回転させる必要がある。このため、ハンドバイスを引き上げる作業に多大な手間と労力を要し、作業性の面で改善の余地がある。
【0007】
さらに、従来の引き上げ治具は、ガバナ装置が有する既存のボルトを利用してガバナ装置のフレームに固定しているため、フレームに向けて張り出す専用の突出部を必要とする。それとともに、ハンドバイスを引き上げるための複数のボルトが存在するために、引き上げ治具の形状が比較的大きくなるのを否めない。
【0008】
この結果、引き上げ治具を適用可能なガバナ装置が自ずと限られてしまい、引き上げ治具の汎用性が低下するのを否めない。
【0009】
本発明の目的は、作業性がよく、しかも、コンパクトで汎用性に富むロープ引き上げ治具を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態によれば、ロープ引き上げ治具は、ベース、ジャッキ板および単一の操作部材を備えている。ベースは、ロープが巻き掛けられたシーブを回転自在に支持するフレームの上に載置され、前記シーブから垂下された前記ロープの直線部が通過する第1の通過部を有する。ジャッキ板は、前記ベースよりも前記シーブの側に配置され、前記ロープの前記直線部が通過する第2の通過部を有する。操作部材は、前記ベースと前記ジャッキ板との間に跨って設けられ、回転させることで前記ジャッキ板を昇降動させる。
前記ジャッキ板は、前記操作部材が連結された連結部と、前記ロープの前記直線部を把持したロープ把持具が載置される載置面を有する支持部と、を含み、前記連結部と前記支持部との間に前記載置面を前記連結部よりも下方に位置させる段差が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態で用いるエレベータ用のガバナ装置の構成を概略的に示す側面図である。
図2】第1の実施形態に係るロープ引き上げ治具を用いてガバナシーブからガバナロープを引き上げた状態を示す斜視図である。
図3】第1の実施形態に係るロープ引き上げ治具の斜視図である。
図4】第1の実施形態において、高ナットを回転させてジャッキ板を上昇させた状態を示すロープ引き上げ治具の斜視図である。
図5】第1の実施形態に係るロープ引き上げ治具の断面図である。
図6】第1の実施形態において、高ナットを回転させてジャッキ板を上昇させた状態を示すロープ引き上げ治具の断面図である。
図7】第2の実施形態に係るロープ引き上げ治具の斜視図である。
図8】第2の実施形態において、高ナットを回転させてジャッキ板を上昇させた状態を示すロープ引き上げ治具の断面図である。
図9】第3の実施形態に係るロープ引き上げ治具の斜視図である。
図10】第3の実施形態において、ジャッキボルトを回転させてジャッキ板を上昇させた状態を示すロープ引き上げ治具の断面図である。
図11】第3の実施形態において、ジャッキボルトがジャッキ板にねじ込まれた状態を示す斜視図である。
図12】第4の実施形態に係るロープ引き上げ治具の斜視図である。
図13】第4の実施形態において、ジャッキボルトを回転させてジャッキ板を上昇させた状態を示すロープ引き上げ治具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施形態]
以下、第1の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、エレベータの安全装置の一つであるガバナ装置1を開示している。ガバナ装置1は、昇降路2と機械室3とを隔てる機械室3の床4の上に据え付けられている。ガバナ装置1は、フレーム5、ガバナシーブ6、ガバナロープ7、ラチェット機構8、フライウエイト9およびリミットスイッチ10を主要な要素として備えている。
【0014】
フレーム5は、底板5aと、一対の側板5b(一方のみを図示)と、を有している。底板5aは、機械室3の底板4から突出された一対の中空支柱11a,11bの上端部間に水平に架け渡されている。側板5bは、底板5aの側縁から起立されているとともに、互いに間隔を存して向かい合っている。
【0015】
ガバナシーブ6は、フレーム5の側板5bの間に回転軸12を介して回転自在に支持されている。図2に示すように、ガバナシーブ6の外周面の下部は、フレーム5の底板5aの上面に近接した状態に保たれている。言い換えると、フレーム5の底板5aとガバナシーブ6の外周面の下部との間に、ガバナ装置1を構成する要素を収めるためのスペースは存在しない。
【0016】
ガバナロープ7は、ガバナシーブ6と昇降路2の底に位置するテンショナーシーブ(図示せず)との間に跨って無端状に巻き掛けられている。ガバナロープ7は、ガバナシーブ6の外周面に円弧状に巻き掛けられた湾曲部7aと、ガバナシーブ6から垂下された第1の直線部7bおよび第2の直線部7cを有している。
【0017】
第1の直線部7bおよび第2の直線部7cは、夫々フレーム5の底板5a、中空支柱11a,11bおよび機械室3の床4を貫通して昇降路2に導かれている。昇降路2に導かれた第1の直線部7bは、セフティリンク機構を介してエレベータの乗りかごに連結されている。
【0018】
このため、ガバナロープ7は、乗りかごが昇降動する方向に乗りかごと同じ速度で無端状に走行する。ガバナロープ7が巻き掛けられたガバナシーブ6は、ガバナロープ7の走行に追従して回転する。
【0019】
ラチェット機構8は、回転軸12の上に回転自在に支持されたラチェットホイール13を有している。ラチェットホイール13は、側板5bの間でガバナシーブ6と同軸状に配置されている。
【0020】
フライウエイト9は、ガバナシーブ6の側面に回動可能に支持されている。フライウエイト9は、乗りかごの下降に伴ってガバナシーブ6が回転した時に、ガバナシーブ6の回転により生じる遠心力を受けてガバナシーブ6の径方向に変位する。
【0021】
リミットスイッチ10は、ブラケット15を介して一方の側板5bに支持されている。リミットスイッチ10は、乗りかごの下降速度が定格速度を超過した過速域に達した時に、エレベータの巻上機の電源を遮断するとともに、巻上機の電磁ブレーキを作動させる。リミットスイッチ10は、ガバナシーブ6の外周部に向けて突出された検出レバー10aを備えている。
【0022】
このようなガバナ装置1において、乗りかごの下降速度が過速域に達した場合、ガバナシーブ6の回転に基づく遠心力によりフライウエイト9がガバナシーブ6の径方向に変位し、リミットスイッチ10の検出レバー10aに接触する。これにより、リミットスイッチ10が作動し、巻上機の電源を遮断するとともに巻上機の電磁ブレーキを作動させる。
【0023】
リミットスイッチ10が作動したにも拘らず、乗りかごが停止せずに乗りかごの下降速度が上昇した場合、フライウエイト9がさらに回動し、当該フライウエイト9が静止しているラチェットホイール13に係合する。
【0024】
この結果、ラチェットホイール13がガバナシーブ6に追従して回転し、当該ラチェットホイール13の回転に追従するように図示しないブレーキ機構が作動する。ブレーキ機構は、ガバナシーブ6の外周面との間でガバナロープ7を挟み込み、ガバナロープ7の走行を停止させる。ガバナロープ7の走行が停止すると、セフティリンク機構を介して乗りかごの非常停止装置が作動し、下降する乗りかごを強制的に停止させる。
【0025】
ところで、ガバナ装置1が正常に作動するか否かを検査するガバナトリッピング試験を行うに当たっては、ガバナシーブ6からガバナロープ7を一時的に引き上げて、ガバナシーブ6を自由に回転できる状態にする必要がある。図2は、二つのロープ把持具20およびターンバックル式のロープ引き上げ治具21を用いてガバナシーブ6からガバナロープ7を引き上げた状態を開示している。
【0026】
図2に示すように、本実施形態のロープ把持具20は、クランプ型のハンドバイスであって、一対のグリップ22a,22bと、グリップ22a,22bの先端に固定された角柱状の挟持片23a,23bと、を備えている。
【0027】
一方のロープ把持具20は、ガバナシーブ6から垂下されたガバナロープ7の第1の直線部7bを挟持片23a,23bの間で強固に挟み込んでいる。同様に、他方のロープ把持具20は、ガバナシーブ6から垂下されたガバナロープ7の第2の直線部7cを挟持片23a,23bの間で強固に挟み込んでいる。
【0028】
他方のロープ把持具20にあっては、第2の直線部7cを挟持した状態でフレーム5の底板5aの上に載置されている。これにより、ガバナロープ7の第2の直線部7cが機械室3の床4の側に移動しようとしても、第2の直線部7cの移動が他方のロープ把持具20によって静止される。
【0029】
図2に示すように、ロープ引き上げ治具21は、フレーム5の底板5aと一方のロープ把持具20の挟持片23a,23bとの間に介在されて、ロープ把持具20を床板5aから押し上げている。
【0030】
具体的に述べると、図3および図5に示すように、ロープ引き上げ治具21は、ベース25、ジャッキ板26およびターンバックル式の単一の操作部材27を主要な要素として備えている。ベース25は、底板5aの上に載置される細長い板状の要素であって、例えば厚さが数mmの鋼板で構成されている。
【0031】
ベース25は、第1の嵌合孔28および第1の通過部29を有している。第1の嵌合孔28は、ベース25の長手方向に沿う一端部に形成され、ベース25を厚み方向に貫通している。第1の通過部29は、ガバナロープ7の第1の直線部7bが通過するように、ベース25を部分的に切り欠くことで構成されている。第1の通過部29は、ベース25の長手方向に沿う他端部に位置されるとともに、ベース25の幅方向に沿う一側方に向けて開放された形状を有している。
【0032】
ジャッキ板26は、ベース25の上方に配置される細長い板状の要素であって、例えば厚さが数mmの鋼板を所望の形状に折り曲げることで構成されている。すなわち、ジャッキ板26は、連結部31、支持部32および起立部33を有している。連結部31は、ジャッキ板26の長手方向に沿う一端部に位置されている。連結部31は、ベース25と向かい合うように当該ベース25と平行に配置されている。
【0033】
連結部31は、第2の嵌合孔34を有している。第2の嵌合孔34は、連結部31を厚み方向に貫通するとともに、ベース25の第1の嵌合孔28に対し同軸状に位置されている。
【0034】
支持部32は、連結部31に対しジャッキ板26の長手方向に隣り合っている。支持部32は、載置面35および第2の通過部36を有している。載置面35は、前記一方のロープ把持具20を受け止めるフラットな水平面であって、支持部32の上面の略全面に亘っている。図3および図4では、載置面35を規定する領域をグレーに着色して表示している。
【0035】
第2の通過部36は、ガバナロープ7の第1の直線部7bが通過するように、支持部32を部分的に切り欠くことで構成されている。第2の通過部36は、ベース25の第1の通過部29の真上に位置されるとともに、支持部32の幅方向に沿う一側方に向けて開放された形状を有している。さらに、支持部32は、載置面35が連結部31よりもベース25に近づくように連結部31の下方に位置されている。
【0036】
起立部33は、連結部31と支持部32との間を結ぶようにジャッキ板26の長手方向に沿う中間部で起立されている。そのため、起立部33は、連結部31と支持部32との境界に載置面35を連結部31よりも下方に位置させる段差Bを規定している。
【0037】
さらに、支持部32は、補強部37を有している。補強部37は、連結部31の反対側に位置された支持部32の先端部に連なるとともに、載置面35の下方に向けて折り曲げられている。
【0038】
図4ないし図6に示すように、ターンバックル式の操作部材27は、高ナット40、第1のねじ棒41および第2のねじ棒42を主要な要素として備えている。高ナット40は、ベース25の一端部とジャッキ板26の連結部31との間に起立した姿勢で介在されている。
【0039】
図5および図6に示すように、高ナット40は、ねじ孔43を有している。ねじ孔43の上半分の領域には、右ねじのねじ山が加工されている。ねじ孔43の下半分の領域には、左ねじのねじ山が加工されている。
【0040】
第1のねじ棒41は、左ねじのねじ山が加工された軸部41aと、ねじ山を持たない先端軸部41bと、を有している。第1のねじ棒41は、先端軸部41bをベース25の第1の嵌合孔28に嵌合させた状態でベース25に溶接等の手段で固定されている。これにより、第1のねじ棒41の軸部41aがベース25からジャッキ板26に向けて垂直に突出されている。第1のねじ棒41の軸部41aは、高ナット40のねじ孔43の下半分の領域にねじ込まれている。
【0041】
第2のねじ棒42は、右ねじのねじ山が加工された軸部42aと、ねじ山を持たない先端軸部42bと、を有している。第2のねじ棒42は、先端軸部42bをジャッキ板26の第2の嵌合孔34に嵌合させた状態でジャッキ板26の連結部31に溶接等の手段で固定されている。これにより、第2のねじ棒42の軸部42aがジャッキ板26の連結部31からベース25に向けて垂直に突出されている。第2のねじ棒42の軸部42aは、高ナット40のねじ孔43の上半分の領域にねじ込まれている。
【0042】
さらに、本実施形態によると、第1のねじ棒41のねじ山および第2のねじ棒42のねじ山は、1ピッチの間に1条の螺旋を有する一条ねじで構成されている。したがって、例えば高ナット40を右方向に4回転させると、第1のねじ棒41が4ピッチの分だけ高ナット40から下向きに進出する。それとともに、第2のねじ棒42が4ピッチの分だけ高ナット40から上向きに進出する。
【0043】
言い換えると、第1のねじ棒41および第2のねじ棒42は、高ナット40を回転させた時に、互いに逆方向に進出する。
【0044】
なお、高ナット40としては、ねじ孔43の上半分の領域に左ねじの加工を施すとともに、下半分の領域に右ねじの加工を施した高ナット40を用いてもよい。この場合、高ナット40のねじ孔43の下半分の領域にねじ込まれる第1のねじ棒41の軸部41aには、右ねじのねじ山が形成される。同様に、高ナット40のねじ山43の上半分の領域にねじ込まれる第2のねじ棒42の軸部42aには、左ねじのねじ山が形成される。
【0045】
次に、ロープ引き上げ治具21を用いてガバナシーブ6からガバナロープ7を引き上げる手順について説明する。
【0046】
まず、ガバナロープ7の走行を停止させた状態で、フレーム5の床板5aの上にロープ引き上げ治具21のベース25を載置する。この際、高ナット40を例えばスパナ等の工具を用いて左方向に回転させ、第1のねじ棒41および第2のねじ棒42を互いに近づく方向に移動させる。これにより、ジャッキ板26がベース25に最も近づいた待機位置に保持される。
【0047】
図2に最もよく示されるように、ベース25は、その長手方向をガバナシーブ6の厚み方向に沿わせた姿勢でフレーム5の底板5aの上に載置し、ガバナシーブ6から垂下されたガバナロープ7の第1の直線部7bをベース25の第1の通過部29およびジャッキ板26の第2の通過部36に通す。
【0048】
次に、ガバナロープ7の第1の直線部7bおよび第2の直線部7cに夫々ロープ把持具20を取り付ける。一方のロープ把持具20にあっては、第1の直線部7bを挟持した挟持片23a,23bをジャッキ板26の載置面35の上に載置する。他方のロープ把持具20にあっては、第2の直線部7cを挟持した挟持片23a,23bを底板5aの上に載置する。そのため、第2の直線部7cは、ロープ把持具20と底板5aとの接触により底板5aの下方向への移動が阻止された状態に保たれる。
【0049】
引き続いて、図4および図6に矢印で示すように、高ナット40を例えばスパナ等の工具を用いて右方向に回転させる。これにより、第1のねじ棒41が高ナット40の下端から下向きに進出するとともに、第2のねじ棒42が高ナット40の上端から上向きに進出する。
【0050】
このため、ジャッキ板26が待機位置から押し上げられ、載置面35の上に載置された一方のロープ把持具20がガバナロープ7の第1の直線部7bを挟んだままガバナシーブ6に向けて上昇する。したがって、ガバナロープ7の第1の直線部7bがガバナシーブ6に向けて引き上げられる。
【0051】
第1の直線部7bが引き上げられても、第2の直線部7cは他方のロープ把持具20に挟持されて下方向への移動が阻止されているので、ガバナロープ7のうちガバナシーブ6に巻き掛けられた湾曲部7aがガバナシーブ6の外周面から離脱するように引き上げられる。図1の二点鎖線および図2は、ガバナロープ7の湾曲部7aがガバナシーブ6の外周面から離脱した状態を開示している。
【0052】
この結果、ガバナシーブ6が自由に回転可能な状態に移行し、ガバナ装置1が正常に作動するか否かを検査するガバナトリッピング試験を実行することができる。
【0053】
第1の実施形態によると、ガバナロープ7の第1の直線部7bを把持したロープ把持具20が載置されるジャッキ板26は、ベース25に対しターンバックル式の単一の操作部材27で支持されている。
【0054】
このため、ジャッキ板26を待機位置から引き上げるには、一つの高ナット40を回転させるだけでよく、従来の引き上げ治具との比較においてロープ把持具20を引き上げる作業を容易に行なうことができる。よって、ガバナシーブ6からガバナロープ7を引き上げる際の作業性を改善できる。
【0055】
さらに、ジャッキ板26は、単一の操作部材27によって片持ちの状態で支持されているので、ジャッキ板26およびベース25を可能な限り小型化することができる。これにより、ロープ引き上げ治具21そのものがコンパクトな形状に纏まり、ガバナシーブ6の外周面の下部がフレーム5の底板5aに近接した小型のガバナ装置1においても適用が可能となる。
【0056】
この結果、ガバナシーブ6と底板5aとの間のスペースに制約されることなく、ロープ引き上げ治具21をガバナ装置1に据え付けることが可能となり、ロープ引き上げ治具21の汎用性を高めることができる。
【0057】
しかも、ロープ把持具20が載置されるジャッキ板26の載置面35は、段差Bの分だけジャッキ板26の連結部31よりもベース25に近づいた低い位置に設けられている。このため、ジャッキ板26が待機位置から引き上げられる際に、ロープ把持具20の引き上げ開始位置をフレーム5の底板5aに可能な限り近づけることができる。
【0058】
よって、ガバナシーブ6と底板5aとの間のスペースが小さなガバナ装置1においても、ロープ把持具20の引き上げ量を十分に確保することができる。
【0059】
加えて、第1の実施形態によると、第1のねじ棒41および第2のねじ棒42は、夫々高ナット40の回転数に対応したピッチの分だけ高ナット40から互いに逆向きに進出する。このため、例えばジャッキ板26を一本のジャッキボルトで引き上げる場合と比較して、高ナット40の回転数を半分としつつジャッキ板26の押し上げ量を確保することができる。よって、ジャッキ板26を引き上げる際の手間が半減され、ガバナシーブ6からガバナロープ7を短時間のうちに効率よく引き上げることができる。
【0060】
ターンバックル式の操作部材27では、高ナット40を右方向に過剰に回転させた場合に、高ナット40から第1のねじ棒41および第2のねじ棒42が脱落することがあり得る。これを解消するためには、例えばベース25とジャッキ板26との間を例えばワイヤで連結し、高ナット40に対する第1のねじ棒41および第2のねじ棒42の進出量が上限に達した際に、前記ワイヤを用いて第1のねじ棒41および第2のねじ棒42の進出を制限することが望ましい。
【0061】
[第2の実施形態]
図7および図8は、第2の実施形態を開示している。
【0062】
第2の実施形態は、ベース25にジャッキ板26の補強部37を支えるガイド板50を付加した点が第1の実施形態と相違している。それ以外のロープ引き上げ治具21の構成は、基本的に第1の実施形態と同様である。そのため、第2の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0063】
図7および図8に示すように、ガイド板50は、ベース25およびジャッキ板26と同等の幅寸法を有する細長い鋼板で構成されている。ガイド板50は、ベース25の上面の他端部から垂直に起立するように、ベース25に溶接等の手段で固定されている。
【0064】
さらに、ガイド板50は、ジャッキ板26の補強部37が摺動可能に接するガイド面51と、垂直方向に延びるスリット状のガイド孔52と、を有している。ガイド孔52は、高ナット40に対する第1のねじ棒41および第2のねじ棒42の進出量を規定するための要素であって、第1のねじ棒41および第2のねじ棒42が高ナット40から上限を超えて進出するのを防ぐ長さを有している。
【0065】
図8に示すように、締結具としてのねじ54が補強部37の反対側からガイド孔52に摺動可能に挿入されている。ねじ54は、補強部37に開けた通孔55を貫通して支持部32の下方に突出されている。ねじ54の突出端には、ナット56がねじ込まれている。ナット56は、ねじ54の頭部54aとの間で補強部37およびガイド板50を摺動可能に挟んでいる。
【0066】
本実施形態によると、図8に示すように、ジャッキ板26が最大に引き上げられた状態では、ガイド板50の上端部が支持部32の載置面35よりも上方に突出されている。そのため、載置面35は、ジャッキ板26の起立部33とガイド板50の上端部との間に位置され、これら起立部33とガイド板50の上端部との間のスペースWにロープ把持具20が収まるようになっている。
【0067】
本実施形態では、ジャッキ板26の補強部37は、支持部32の先端部から下向きに折り曲げられているので、補強部37がスペースWに張り出すことはない。言い換えると、補強部37が支持部32の先端部から上向きに折り曲げられていると、補強部37がスペースWに進出する。そのため、補強部37の厚さに相当する分だけスペースWが減少し、ロープ把持具20が補強部37に突き当たることがあり得る。スペースWの減少を解消するためには、支持部32を長くすることが必要となる。支持部32の延長は、ロープ引き上げ治具21のコンパクト化を図る上での妨げとなる。
【0068】
これに対し、本実施形態では、補強部37がスペースWに張り出すことはないので、ロープ把持具20が補強部37に突き当たるのを回避できる。そのため、ロープ把持具20が載置されるスペースWを確保しつつ、ロープ引き上げ治具21をコンパクトに形成することができる。
【0069】
よって、本実施形態に係るロープ引き上げ治具21は、フレーム5の底板5aとガバナシーブ6の外周面の下部との間のスペースが狭いガバナ装置1においても無理なく適用が可能である。
【0070】
第2の実施形態によれば、ジャッキ板26の補強部37は、ねじ54およびナット56を介してガイド板50に昇降動可能に支持されている。そのため、ジャッキ板26が待機位置から引き上げられると、ジャッキ板26の補強部37がガイド板50のガイド面51に沿って上昇する。
【0071】
したがって、ロープ把持具20が載置されるジャッキ板26の支持部32をガイド板50で支えることができ、ガバナロープ7をガバナシーブ6から引き上げる際の荷重が支持部32に加わった場合でも、当該荷重によるジャッキ板26の倒れおよび振れを抑制することができる。すなわち、ベース25にガイド板50を付加したことで、ジャッキ板26を水平の姿勢を保ったまま引き上げることができ、ガバナロープ7の引き上げ作業を円滑に行うことができる。
【0072】
加えて、ガイド板50のガイド孔52は、第1のねじ棒41および第2のねじ棒42が高ナット40から上限を超えて進出するのを防ぐ長さを有している。これにより、たとえ高ナット40を過剰に右回転させたとしても、高ナット40に対する第1のねじ棒41および第2のねじ棒42の進出量が上限に達した時点で、ねじ54がガイド孔52の上端に突き当たる。
【0073】
この結果、ジャッキ板26をそれ以上に引き上げることができなくなり、第1のねじ棒41および第2のねじ棒42が高ナット40から脱落するのを未然に防止することができる。
【0074】
[第3の実施形態]
図9ないし図11は、第3の実施形態を開示している。
【0075】
第3の実施形態は、操作部材として一本のジャッキボルト60を用いた点が前記第1の実施形態と相違している。それ以外のロープ引き上げ治具21の構成は、基本的に第1の実施形態と同様である。そのため、第3の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0076】
図10に示すように、ジャッキ板26の連結部31に円形の貫通孔61が形成されている。ポップナット(登録商標)62が貫通孔61に取り付けられている。ポップナット62は、連結部31を貫通するように貫通孔61の開口縁部に締結された嵌合部63と、嵌合部63から同軸状に延出された筒状部64と、を有している。筒状部64は、連結部31の下方に突出されているとともに、当該筒状部64の内面には、右ねじのねじ山が加工されたねじ孔65が形成されている。
【0077】
ジャッキボルト60は、右ねじのねじ山が加工された軸部67と、軸部67の一端に位置され、スパナ等の工具を引っ掛ける頭部68と、軸部67の他端から同軸状に突出され、ねじ山を持たない先端軸部69と、を有している。先端軸部69は、軸部67よりも径が小さい。
【0078】
さらに、本実施形態では、ジャッキボルト60の軸部67にフランジ付きナット70がねじ込まれている。フランジ付きナット70は、円盤状のフランジ部71を有している。フランジ部71は、ジャッキボルト60の頭部68よりも径が大きい。フランジ付きナット70は、フランジ部71を頭部68の側に位置させた姿勢でジャッキボルト60の軸部67にねじ込まれている。このねじ込みにより、フランジ部71が頭部68に突き当たるとともに、当該フランジ部71の外周部が頭部68の周囲に周方向に連続して張り出している。
【0079】
ジャッキボルト60は、ジャッキ板26の連結部31の上からポップナット62のねじ孔65にねじ込まれている。ジャッキボルト60の下端部は、ベース25に回転自在に支持されている。
【0080】
具体的に述べると、図10に示すように、ベース25の一端部に座ぐり孔73が形成されている。座ぐり孔73は、大径部73aと、大径部73aよりも径が小さい小径部73bと、を有している。大径部73aは、ベース25の上面に開口されているとともに、ジャッキボルト60の軸部67よりも径が大きい。さらに、大径部73aの内周面に軸部67が噛み合うねじ山は存在しない。軸部67の下端部は、座ぐり孔73の大径部73aの内側に入り込んでいる。軸部67の下端部の外周面と大径部73aの内周面との間には、周方向に連続する隙間が形成されている。
【0081】
小径部73bは、大径部73aと同軸状に位置されるとともに、ベース25の下面に開口されている。ジャッキボルト60の先端軸部69は、座ぐり孔73の小径部73bに摺動可能に嵌合されている。さらに、先端軸部69の下端面は、ベース25の下面に開口された小径部73bの開口端に達していない。そのため、ベース25をフレーム5の底板5aの上に載置した状態において、先端軸部69の下端面は、フレーム5の底板5aに接することなく底板5aから離れている。
【0082】
さらに、本実施形態では、ジャッキ板26の連結部31の下面と起立部33とで規定される角部に一対の補強板75が溶接されている。補強板75は、ジャッキ板26の幅方向に間隔を存して向かい合っており、ジャッキ板26の連結部31から起立部33に至る領域が撓むことがないように補強している。
【0083】
第3の実施形態において、ジャッキボルト60の頭部68に工具を引っ掛けて軸部67を右回転させると、ジャッキ板26が上昇する。これにより、載置面35の上に載置された一方のロープ把持具20がガバナロープ7の第1の直線部7bを挟んだままガバナシーブ6に向けて上昇する。
【0084】
この結果、前記第1の実施形態と同様に、ガバナロープ7のうちガバナシーブ6に巻き掛けられた湾曲部7aがガバナシーブ6の外周面から離脱するように引き上げられ、ガバナシーブ6が自由に回転可能な状態に移行する。よって、ガバナ装置1が正常に作動するか否かを検査するガバナトリッピング試験を実行することができる。
【0085】
第3の実施形態によると、ロープ把持具20が載置されるジャッキ板26は、ベース25に対し一本のジャッキボルト60で支持されている。このため、ジャッキ板26を待機位置から引き上げるには、一本のジャッキボルト60を回転させるだけでよく、前記第1の実施形態と同様に、ガバナシーブ6からガバナロープ7を引き上げる際の作業性を改善できる。
【0086】
しかも、ジャッキ板26は、一本のジャッキボルト60によって片持ちの状態で支持されているので、ジャッキ板26およびベース25を可能な限り小型化することができる。これにより、ロープ引き上げ治具21そのものがコンパクトな形状に纏まり、ガバナシーブ6と底板5aとの間のスペースに制約されることなくロープ引き上げ治具21をガバナ装置1に据え付けることができる。
【0087】
さらに、本実施形態においても、ロープ把持具20が載置されるジャッキ板26の載置面35は、段差Bの分だけジャッキ板26の連結部31よりもベース25に近づいた低い位置に設けられている。このため、ジャッキ板26が待機位置から引き上げられる際に、ロープ把持具20の引き上げ開始位置をフレーム5の底板5aに可能な限り近づけることができる。
【0088】
したがって、前記第1の実施形態と同様に、ガバナシーブ6と底板5aとの間のスペースが小さなガバナ装置1においても、ロープ把持具20の引き上げ量を十分に確保することができる。
【0089】
加えて、ジャッキボルト60は、頭部68とは反対側にねじ山がない先端軸部69を有し、当該先端軸部69がベース25の座ぐり孔73に摺動可能に嵌合されている。この構成によれば、ポップナット62にねじ込まれたジャッキボルト60は、先端軸部69が座ぐり孔73に嵌合しながら回転するので、ジャッキボルト60の下端をベース25で支えることができる。
【0090】
したがって、ジャッキボルト60およびジャッキ板26の傾きや転倒を防止することができ、ロープ把持具20が載置されたジャッキ板26を垂直に引き上げることができる。
【0091】
それとともに、本実施形態では、ジャッキボルト60の軸部67にフランジ付きナット70がねじ込まれており、当該フランジ付きナット70のフランジ部71が頭部68に隣接した位置で頭部68の周囲に張り出している。
【0092】
この構成によれば、頭部68にスパナのような工具を引っ掛けてジャッキボルト60を回転させる際に、フランジ部71が工具を下から受け止める。このため、工具が軸部67の方向に抜け落ちるのを防止でき、ジャッキボルト60を回転させる際の作業性が良好となる。
【0093】
[第4の実施形態]
図12および図13は、第4の実施形態を開示している。
【0094】
第4の実施形態は、ベース25にジャッキ板26の補強部37を支えるガイド板80を付加した点が第3の実施形態と相違している。それ以外のロープ引き上げ治具21の構成は、基本的に第3の実施形態と同様である。そのため、第4の実施形態において、第3の実施形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0095】
図12および図13に示すように、ガイド板80は、ベース25およびジャッキ板26と同等の幅寸法を有する細長い鋼板で構成されている。ガイド板80は、ベース25の上面の他端部から垂直に起立するように、ベース25に溶接等の手段で固定されている。
【0096】
ガイド板80は、ジャッキ板26の補強部37が摺動可能に接するガイド面81と、垂直方向に延びるスリット状のガイド孔82と、を有している。ガイド孔82は、ジャッキ板26の昇降範囲を規定するための要素であって、ロープ把持具20の最大引き上げ高さに相当する長さを有している。
【0097】
図13に示すように、締結具としてのねじ84が補強部37の反対側からガイド孔82に摺動可能に挿入されている。ねじ84は、補強部37に開けた通孔85を貫通して支持部32の下方に突出されている。ねじ84の突出端には、ナット86がねじ込まれている。ナット86は、ねじ84の頭部84aとの間で補強部37およびガイド板80を摺動可能に挟んでいる。
【0098】
本実施形態によると、図13に示すように、ガイド板80の上端部は、支持部32の載置面35よりも上方に突出されている。そのため、載置面35は、ジャッキ板26の起立部33とガイド板80の上端部との間に位置され、これら起立部33とガイド板80の上端部との間のスペースWにロープ把持具20が収まるようになっている。
【0099】
本実施形態では、ジャッキ板26の補強部37は、支持部32の先端部から下向きに折り曲げられているので、補強部37がスペースWに張り出すことはない。言い換えると、補強部37が支持部32の先端部から上向きに折り曲げられていると、補強部37がスペースWに進出する。そのため、補強部37の厚さに相当する分だけスペースWが減少し、ロープ把持具20が補強部37に突き当たることがあり得る。スペースWの減少を解消するためには、支持部32を長くすることが必要となる。支持部32の延長は、ロープ引き上げ治具21のコンパクト化を図る上での妨げとなる。
【0100】
これに対し、本実施形態では、補強部37がスペースWに張り出すことはないので、ロープ把持具20が補強部37に突き当たるのを回避できる。そのため、ロープ把持具20が載置されるスペースWを確保しつつ、ロープ引き上げ治具21をコンパクトに形成することができる。よって、本実施形態に係るロープ引き上げ治具21は、フレーム5の底板5aとガバナシーブ6の外周面の下部との間のスペースが狭いガバナ装置1においても無理なく適用できる。
【0101】
第4の実施形態によれば、ジャッキ板26の補強部37は、ねじ84およびナット86を介してガイド板80に昇降動可能に支持されている。そのため、ジャッキ板26が待機位置から引き上げられると、ジャッキ板26の補強部37がガイド板80のガイド面81に沿って上昇する。
【0102】
したがって、ロープ把持具20が載置されるジャッキ板26の支持部32をガイド板80で支えることができ、ガバナロープ7をガバナシーブ6から引き上げる際の荷重が支持部32に加わった場合でも、当該荷重によるジャッキ板26の倒れおよび振れを抑制することができる。すなわち、ベース25にガイド板80を付加したことで、ジャッキ板26を水平の姿勢を保ったまま引き上げることができ、ガバナロープ7の引き上げ作業を円滑に行うことができる。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0104】
第3の実施形態および第4の実施形態では、ジャッキ板の連結部に締結したポップナットにジャッキボルトをねじ込むようにしたが、例えば連結部にジャッキボルトがねじ込まれるねじ孔を直に形成してもよい。
【0105】
さらに、ジャッキ板の連結部と補強部との間に跨るように補強された補強板は、第3の実施形態および第4の実施形態のロープ引き上げ治具に限らず、第1の実施形態又は第2の実施形態のロープ引き上げ治具に適用しても何ら差し支えない。
【符号の説明】
【0106】
5…フレーム、6…シーブ(ガバナシーブ)、7…ロープ(ガバナロープ)、7b,7c…直線部、20…ロープ把持具、21…ロープ引き上げ治具、25…ベース、26…ジャッキ板、27,60…操作部材(ジャッキボルト)、29…第1の通過部、32…支持部、35…載置面、36…第2の通過部、B…段差。
【要約】      (修正有)
【課題】作業性がよく、しかも、コンパクトで汎用性に富むロープ引き上げ治具を得ることにある。
【解決手段】ロープ引き上げ治具21において、ベース25は、ロープ7が巻き掛けられたシーブ6を回転自在に支持するフレーム5の上に据え付けられ、シーブ6から垂下されたロープ7の直線部7bが通過する第1の通過部を有する。ジャッキ板26は、ベース25よりもシーブ6の側に配置され、ロープ7の直線部が通過する第2の通過部を有する。操作部材27は、ベースとジャッキ板26との間に跨って設けられ、回転させることでジャッキ板26を昇降動させる。ジャッキ板26は、操作部材27が連結された連結部と、ロープ7の直線部7b、7cを把持したロープ把持具20が載置される載置面を有する支持部と、を含み、連結部と支持部との間に載置面を連結部よりも下方に位置させる段差が設けられている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13