(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記赤外線遮蔽性微粒子が、六ホウ化ランタン、セシウム酸化タングステン、スズ酸化インジウム、アンチモン酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、およびパラジウムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のシート状透明成型体。
前記赤外線遮蔽性微粒子の一次粒子の平均径が、1nm〜10μmであり、かつ、前記赤外線遮蔽性微粒子の含有量が、前記樹脂に対して0.0001〜5.0質量%である、請求項1または2に記載のシート状透明成型体。
前記有機系紫外線遮蔽剤が、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、およびベンゾフェノン系紫外線吸収剤からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項4に記載のシート状透明成型体。
前記光輝性薄片状微粒子の含有量が、前記樹脂に対して0.0001〜5.0質量%であり、かつ、前記光輝性薄片状微粒子の一次粒子の平均径が1〜50μmであり、かつ平均アスペクト比が10〜500である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のシート状透明成型体。
前記略球状微粒子が、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、およびダイヤモンドからなる群より選択された少なくとも1種である、請求項9に記載のシート状透明成型体。
前記略球状微粒子の一次粒子のメジアン径が、0.1〜100nmであり、かつ、前記略球状微粒子の一次粒子の含有量が、前記樹脂に対して0.0001〜2.0質量%である、請求項9または10に記載のシート状透明成型体。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<シート状透明成型体>
本発明によるシート状透明成型体は、透明光散乱層を備えてなり、保護層、基材層、粘着層、および反射防止層等の他の層をさらに備えてもよい。本発明によるシート状透明成型体は透視可能であり、透明スクリーンとして好適に用いることができる。本発明によるシート状透明成型体は、投影光を異方的に散乱反射することにより投影光の視認性に優れ、視野角が広く、さらに、透明性が高く、透過光の視認性に優れるものである。また、シート状透明成型体は赤外線遮蔽性微粒子を含有することで、室内の温度上昇やガラスの熱割れを抑制することもできる。さらに、シート状透明成型体は紫外線遮蔽剤を含有することで、基材となる樹脂の劣化による黄変、クラックの発生、強度の低下を防ぐことができる。このようなシート状透明成型体は、ヘッドアップディスプレイやウェアラブルディスプレイ等に用いられる反射型スクリーンとしても好適に用いることができる。なお、本発明において、「透明」とは、用途に応じた透過視認性を実現できる程度の透明性があれば良く、半透明であることも含まれる。
【0031】
本発明によるシート状透明成型体の一実施形態の厚さ方向の断面模式図を
図1に示す。透明シート状成型体は、樹脂10中に赤外線遮蔽性微粒子13と、光輝性薄片状微粒子11と、略球状微粒子12と、が分散されてなる透明光散乱層14を備える。このようなシート状透明成型体は、投影光16を異方的に散乱することで、視認者15は散乱光17を視認できる。なお、13は、紫外線遮蔽剤であってもよく、赤外線遮蔽性微粒子と紫外線遮蔽剤の両方が含まれていてもよい。
【0032】
本発明によるシート状透明成型体の一実施形態の厚さ方向の断面模式図を
図2に示す。シート状透明成型体は、樹脂20中に赤外線遮蔽性微粒子23と、光輝性薄片状微粒子21と、略球状微粒子22と、が分散されてなる透明光散乱層26を備えてなり、透明光散乱層26の両面に粘着層24および基材層25を備えてなる。このようなシート状透明成型体は、投影光27を異方的に散乱することで、視認者29は散乱光28を視認できる。なお、23は、紫外線遮蔽剤であってもよく、赤外線遮蔽性微粒子と紫外線遮蔽剤の両方が含まれていてもよい。
【0033】
当該シート状透明成型体は、ヘイズ値が、好ましくは50%以下、より好ましくは1%以上40%以下であり、より好ましくは1.3%以上30%以下であり、さらにより好ましくは1.5%以上20%以下である。全光線透過率が、好ましくは70%以上であり、より好ましくは75%以上であり、さらに好ましくは80%以上であり、さらにより好ましくは85%以上である。また、当該シート状透明成型体は、拡散透過率が、好ましくは1.5%以上60%以下、より好ましくは1.7%以上55%以下であり、より好ましくは1.9%以上50%以下であり、さらにより好ましくは2.0%以上45%以下である。ヘイズ値、および全光線透過率が上記範囲内であれば、透明性が高く、透過視認性をより向上させることができ、拡散透過率が上記範囲内であれば、入射光を効率よく拡散させ、視野角をより向上させることができるため、スクリーンとしての性能に優れる。なお、本発明において、シート状透明成型体のヘイズ値、全光線透過率および拡散透過率は、濁度計(日本電色工業(株)製、品番:NDH−5000)を用いてJIS−K−7361およびJIS−K−7136に準拠して測定することができる。
【0034】
当該シート状透明成型体は、反射正面光度が、好ましくは3以上60以下であり、より好ましくは4以上50以下であり、さらに好ましくは4.5以上40以下である。また、当該シート状透明成型体は、透過正面光度(×1000)が、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは2.0以上であり、さらにより好ましくは3.0以上50以下である。シート状透明成型体の反射正面光度および透過正面光度(×1000)が上記範囲内であれば、反射光の輝度が高く、反射型スクリーンとしての性能に優れる。なお、本発明において、シート状透明成型体の反射光度および反射光度向上率は、以下のようにして測定した値である。
(反射正面光度)
変角光度計(日本電色工業(株)製、品番:GC5000L)を用いて測定した。光源の入射角を45度にセットし、測定ステージに白色度95.77の標準白色板を載せたときの0度方向への反射光強度を100とした。サンプル測定時は、光源の入射角を15度にセットし、0度方向への反射光の強度を測定した。
(透過正面光度)
変角光度計(日本電色工業(株)製、品番:GC5000L)を用いて測定した。光源の入射角を0度にセットし、測定ステージに何も置かない状態での0度方向への透過光強度を100とした。サンプル測定は、光源の入射角を15度にセットし、0度方向への透過光の強度を測定した。
【0035】
当該シート状透明成型体は、遮蔽係数が、好ましくは0.40以上0.90以下であり、より好ましくは0.50以上0.80以下であり、さらに好ましくは0.65以上0.80以下である。遮蔽係数が上記範囲内であれば、赤外線遮蔽効果、内部温度上昇抑制効果に優れ、かつシート状透明成型体の透明性も実現できる。遮蔽係数とは、フィルムを貼ったガラスの帯熱しにくさの指標であり、素ガラスを1としたときの相対値なので、遮蔽係数の数値が小さくなるほど熱割れしにくい。なお、本発明において、シート状透明成型体の遮蔽係数は、以下のようにして測定した値である。
(遮蔽係数)
紫外可視近赤外分光光度計((株)島津製作所製、型番UV−2600)を用い、JIS A5759に準拠して測定した。
【0036】
当該シート状透明成型体は、紫外線遮蔽剤を含むことで、優れた耐光性を有する。耐光性は、光照射前後でのフィルム物性値の変化量によって評価することができる。フィルム物性値としては、黄色味の指標であるb
*値および機械強度の指標であるMIT耐折度回数などが用いられる。例えば、キセノンウェザーメーター(東洋精機製作所 アトラスCi4000)を用いて、シート状透明成型体に光を照射し、下記のようにして耐光性を評価することができる。なお、黄色味の指標であるb
*値とMIT耐折度回数は以下のようにして測定した値である。
(b
*値)
日本電色工業(株)製Spectrophotometer SD6000を用いて測定した。
(MIT耐折度回数)
MIT耐折度回数は、以下のようにしてテスター産業株式会社製のBE−201 MIT耐屈度試験機を使用して求めることができる。なお、テスター産業株式会社製のBE−201 MIT耐屈度試験機は、MIT耐折度試験機とも呼ばれている。測定条件は加重200g、折り曲げ点先端Rは0.38、屈曲速度は175回/分、屈曲角度は左右135°とし、フィルムサンプルの幅は15mmとする。そして、シート状透明成型体の搬送方向に繰り返し屈曲させたときの破断するまでの屈曲回数と、幅方向に繰り返し屈曲させたときの破断するまでの屈曲回数との平均値をMIT耐折度回数とする。
【0037】
耐光性は、光照射後のb
*値を光照射前のb
*値(b
*1)から差し引きした値Δb
*(=b
*1−b
*)および光照射前後におけるMIT耐折度回数の差し引き値ΔMIT(=光照射前MIT−光照射後MIT)から評価できる。当該シート状透明成型体は、放射照度60W/m
2で600時間光照射の前後における黄色味の差し引き値Δb
*が、好ましくは0.10以下であり、より好ましくは0.08以下であり、さらに好ましくは0.05以下である。また、当該シート状透明成型体は、放射照度60W/m
2で600時間光照射の前後におけるMIT耐折度回数の差し引き値ΔMITが、好ましくは2000以下であり、より好ましくは1500以下であり、さらに好ましくは1000以下である。Δb
*およびΔMITの値が小さいほど、光照射による劣化がなく、耐光性に優れている。
【0038】
当該シート状透明成型体は、写像性が、好ましくは70%以上であり、より好ましくは75%以上であり、さらに好ましくは80%以上であり、さらにより好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。当該透明スクリーン用フィルムの写像性が上記範囲内であれば、透明スクリーンを透過して見える像が極めて鮮明となる。なお、本発明において、写像性とは、JIS K7374に準拠して、光学くし幅0.125mmで測定した時の像鮮明度(%)の値である。
【0039】
当該シート状透明成型体の厚さは、特に限定されるものではないが、用途、生産性、取扱い性、および搬送性の観点から、好ましくは0.1μm〜20mmであり、より好ましくは0.5μm〜15mmであり、さらに好ましくは1μm〜10mmである。なお、本発明において「シート状透明成型体」とは、いわゆるフィルム、シート、基板上に塗布することで形成される塗膜体、プレート(板状成形物)等の様々な厚みの成形物を包含する。
【0040】
(透明光散乱層)
透明光散乱層は、樹脂と、赤外線遮蔽性微粒子および紫外線遮蔽剤の少なくともいずれか一方と、光輝性薄片状微粒子および略球状微粒子の少なくともいずれか一方とを含んでなる。下記の光輝性薄片状微粒子および略球状微粒子の少なくともいずれか一方を用いることで、透明光散乱層内で光を異方的に散乱反射させて、視野角および輝度を向上させることができる。
【0041】
透明光散乱層の厚さは、特に限定されるものではないが、用途、生産性、取扱い性、および搬送性の観点から、好ましくは0.1μm〜20mmであり、より好ましくは0.2μm〜15mmであり、さらに好ましくは1μm〜10mmである。透明光散乱層はシート状透明成型体であってもよく、ガラスや樹脂等からなる基板に形成した塗膜であってもよい。透明光散乱層は単層構成であってもよく、塗布等で2種以上の層を積層させる、または2種以上のシート状透明成型体を粘着剤等で貼り合わせた複層構成の積層体であってもよい。
【0042】
(樹脂)
透明光散乱層を形成する樹脂としては、透明性の高いシート状透明成型体を得るために、透明性の高い樹脂を用いることが好ましい。透明性の高い樹脂としては、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、アセタール系樹脂、ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、およびフッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ならびに電離放射線硬化性樹脂等を用いることができる。これらの中でも、熱可塑性樹脂を用いることが、シート状透明成型体の成形性の観点から好ましいが、特に制限されるものではない。熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、およびポリスチレン系樹脂を用いることが好ましく、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびポリスチレン樹脂を用いることがより好ましい。これらの樹脂は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。電離放射線硬化型樹脂としては、アクリル系やウレタン系、アクリルウレタン系やエポキシ系、シリコーン系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、アクリレート系の官能基を有するもの、例えば比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジェン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アルリレート等のオリゴマー又はプレポリマー及び反応性希釈剤としてエチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマー、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を比較的多量に含有するものが好ましい。また、電離放射線硬化型樹脂は熱可塑性樹脂および溶剤と混合されたものであってもよい。熱硬化型樹脂としては、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、メラミン樹脂、ウレタン系樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂が好ましい。
【0043】
(赤外線遮蔽性微粒子)
赤外線遮蔽性微粒子としては、例えば、六ホウ化ランタン、セシウム酸化タングステン、スズ酸化インジウム、アンチモン酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛およびパラジウムを好適に用いることができる。熱線遮蔽の観点からは、吸収した光の室内への再放射(吸収した日射エネルギーの約1/3量)がある熱線吸収型より、再放射がない熱線を反射する粒子が好ましい。赤外線遮蔽性微粒子を添加することで、赤外線を反射し、室内の温度上昇を抑制することができる。
【0044】
赤外線遮蔽性微粒子は、一次粒子の平均径が好ましくは1nm〜10μm、より好ましくは5nm〜5μm、さらに好ましくは10nm〜1μm、さらにより好ましくは15nm〜0.5μmである。赤外線遮蔽性微粒子の平均径が上記範囲内であると、シート状透明成型体を透明スクリーン用として使用した場合に、透過視認性を損なわずに十分な赤外線反射効果が得られることで、鮮明な映像を投影し、室内の温度上昇を抑制することができる。なお、本発明において、赤外線遮蔽性微粒子の平均径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置((株)島津製作所製、品番:SALD−2300)を用いて測定した。平均アスペクト比は、SEM((株)日立ハイテクノロジーズ製、商品名:SU−1500)画像より算出した。
【0045】
赤外線遮蔽性微粒子は、市販のものを使用してもよく、例えば、テイカ株式会社製の商品名JR−1000、住友金属鉱山株式会社製の商品名:YMF−02A、KHF−7AH、YMDS−874、KHDS−06等を好適に使用することができる。
【0046】
透明光散乱層中の赤外線遮蔽性微粒子の含有量は、赤外線遮蔽性微粒子の種類に応じて適宜調節することができ、樹脂に対して、好ましくは0.0001〜5.0質量%であり、好ましくは0.0005〜2質量%であり、より好ましくは0.001〜1質量%である。赤外線遮蔽性微粒子を上記範囲のように低濃度で樹脂中に分散させて透明光散乱層を形成することによって、透過視認性を損なわずに十分な赤外線反射効果を得ることができる。
【0047】
(紫線遮蔽剤)
紫外線遮蔽剤としては、金属系紫外線遮蔽剤または有機系紫外線遮蔽剤を好適に用いることができる。紫外線遮蔽性剤を添加することで、紫外線を遮蔽でき、シート状透明成型体の劣化を抑制することができる。
【0048】
金属系紫外線遮蔽剤としては、酸化亜鉛、酸化チタン、および硫酸バリウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属系微粒子を好適に用いることができる。紫外線遮蔽剤の金属系微粒子は、一次粒子の平均径が好ましくは1nm〜10μm、より好ましくは5nm〜5μm、さらに好ましくは10nm〜1μm、さらにより好ましくは15nm〜0.5μmである。紫外線遮蔽剤の金属系微粒子の平均径が上記範囲内であると、シート状透明成型体を透明スクリーン用として使用した場合に、透過視認性を損なわずに十分な紫外線遮蔽効果が得られることで、鮮明な映像を投影するとともに、機械強度低下や黄変等の光劣化を抑制することができる。なお、本発明において、紫外線遮蔽剤の平均径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置((株)島津製作所製、品番:SALD−2300)を用いて測定した。平均アスペクト比は、SEM((株)日立ハイテクノロジーズ製、商品名:SU−1500)画像より算出した。
【0049】
有機系紫外線遮蔽剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、およびベンゾフェノン系紫外線吸収剤からなる群から選択される少なくとも1種を好適に用いることができる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネート、2−〔5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル〕−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ドデシル−4−メチルフェノール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、および2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等が挙げられる。トリアジン系紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2'−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、および2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸、およびヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0050】
紫外線遮蔽剤は、市販のものを使用してもよく、金属系紫外線遮蔽剤としては、例えば、石原産業社製の酸化亜鉛(商品名:FZO)および酸化チタン(商品名:TTO−51(A))、有機系紫外線遮蔽剤としては、株式会社ADEKA製のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(商品名:アデカスタブLA−31)、トリアジン系紫外線吸収剤(商品名:アデカスタブLA−46)、BASFジャパン社製のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(商品名:チヌビン234)、トリアジン系紫外線吸収剤(商品名:チヌビン1577、チヌビン1600)、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(商品名:アデカスタブ1413)等を好適に使用することができる。
【0051】
透明光散乱層中の紫外線遮蔽剤の含有量は、紫外線遮蔽剤の種類に応じて適宜調節することができ、樹脂に対して、好ましくは0.0001〜5.0質量%であり、好ましくは0.0005〜2質量%であり、より好ましくは0.001〜1質量%である。紫外線遮蔽剤を上記範囲のように低濃度で樹脂中に分散させて透明光散乱層を形成することによって、透過視認性を損なわずに十分な紫外線遮蔽効果を得ることができる。
【0052】
(光輝性薄片状微粒子)
光輝性薄片状微粒子としては、薄片状に加工できる光輝性材料を好適に用いることができる。光輝性薄片状微粒子の正反射率は、好ましくは12.0%以上であり、より好ましくは15.0%以上であり、さらに好ましくは20.0%以上80.0%以下である。なお、本発明において、光輝性薄片状微粒子の正反射率は、以下のようにして測定した値である。
(正反射率)
分光測色計(コニカミノルタ(株)製、品番:CM−3500dを用いて測定した。適切な溶媒(水またはメチルエチルケトン)に分散させた光輝性薄片状微粒子をスライドガラス上に膜厚が0.5mm以上になるように塗布、乾燥させた。得られた塗膜付きガラス板について、ガラス面の法線に対して45度の角度でガラス面から塗膜部へ光を入射したときの正反射率を測定した。光輝性薄片状微粒子を塗膜としたときの正反射率を測定することで、微粒子表面の酸化状態等を考慮した光輝性薄片状微粒子の反射性能を把握することができる。
【0053】
光輝性薄片状微粒子としては、分散させる樹脂の種類にもよるが、例えば、アルミニウム、銀、白金、金、チタン、ニッケル、スズ、スズ‐コバルト合金、インジウムおよびクロム等の金属系微粒子、または、酸化アルミニウムおよび硫化亜鉛からなる金属系微粒子、ガラスに金属または金属酸化物を被覆した光輝性材料、または天然雲母もしくは合成雲母に金属または金属酸化物を被覆した光輝性材料を用いることができる。
【0054】
金属系微粒子に用いる金属材料には、投影光の反射性に優れる金属材料が用いられる。具体的には、金属材料は、測定波長550nmにおける反射率Rが好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上であり、さらに好ましくは60%以上であり、さらにより好ましくは70%以上である。以下、本発明において、「反射率R」とは、金属材料に対して光を垂直方向から入射させたときの反射率を指す。反射率Rは金属材料固有値である屈折率nと消衰係数kの値を用いて下記式(1)により算出することができる。nおよびkは、例えばHandbook of Optical Constants of Solids: Volume 1(Edward D.Palik著)や、P.B. Johnson and R.W Christy, PHYSICAL REVIEW B, Vol.6, No.12, 4370-4379(1972)等に記載されている。
R={(1−n)
2+k
2}/{(1+n)
2+k
2} 式(1)
すなわち、測定波長550nmにおける反射率R(550)は、波長550nmで測定したときのnおよびkより算出できる。金属材料は、測定波長450nmにおける反射率R(450)と、測定波長650nmにおける反射率R(650)の差の絶対値が、測定波長550nmにおける反射率R(650)に対して25%以内であり、好ましくは20%以内であり、より好ましくは15%以内であり、さらに好ましくは10%以内である。このような金属材料を用いることで、反射型透明スクリーンとして用いた場合、投影光の反射性および色再現性に優れ、スクリーンとしての性能に優れる。
【0055】
金属系微粒子に用いる金属材料は、誘電率の実数項ε’が、好ましくは−60〜0であり、より好ましくは−50〜−10である。なお、誘電率の実数項ε’は、屈折率nと消衰係数kの値を用いて下記式(2)により算出することができる。
ε’=n
2−k
2 式(2)
本発明はいかなる理論にも束縛されるものではないが、金属材料の誘電率の実数項ε’が上記数値範囲を満たすことで、以下の作用が生じ、透明光散乱体が反射型透明スクリーンとして好適に使用できると考えられる。すなわち、光が金属系微粒子の中に入ると、金属系微粒子中には光による振動電界が生じるが、同時に金属系微粒子の自由電子によって逆向きの電気分極が生じ電界を遮蔽してしまう。誘電率の実数光ε’が0以下であるとき、光が完全に遮蔽され金属系微粒子の中に光が入って行けない、すなわち、表面凹凸による拡散や金属系微粒子による光の吸収が無いという理想状態を仮定すると、光は全て金属系微粒子表面で反射されることになるため、光の反射性は強い。ε’が0より大きいとき、金属系微粒子の自由電子の振動は光の振動に追随出来ないため光による振動電界を完全には打ち消すことが出来ず、光は金属系微粒子の中に入ったり、透過したりする。その結果、金属系微粒子表面で反射されるのは一部の光だけになり、光の反射性は低くなる。
【0056】
金属材料としては、上記の反射率R、好ましくはさらに誘電率を満たす金属材料を用いたものであればよく、純金属や合金も用いることができる。純金属としてはアルミニウム、銀、白金、チタン、ニッケル、およびクロムからなる群から選択されるものが好ましい。金属系微粒子としては、これらの金属材料からなる微粒子や、これらの金属材料を樹脂、ガラス、天然雲母もしくは合成雲母等に被覆した微粒子を用いることができる。また、金属系微粒子の形状は、特に限定されず、薄片状微粒子や略球状微粒子等を用いることができる。各種の金属材料について、各測定波長における屈折率nおよび消衰係数kを表1に、その値を用いて算出した反射率Rおよびε’を表2にまとめる。
【表1】
【表2】
【0057】
光輝性薄片状微粒子は、一次粒子の平均径が好ましくは0.01〜100μm、より好ましくは0.05〜80μm、さらに好ましくは0.1〜50μm、さらにより好ましくは0.5〜30μmである。さらに、光輝性薄片状微粒子は、平均アスペクト比(=光輝性薄片状微粒子の平均径/平均厚み)が好ましくは3〜800、より好ましくは4〜700、さらに好ましくは5〜600、さらにより好ましくは10〜500である。光輝性薄片状微粒子の平均径および平均アスペクト比が上記範囲内であると、シート状透明成型体を透明スクリーン用として使用した場合に、透過視認性を損なわずに投影光の十分な散乱効果が得られることで、鮮明な映像を投影することができる。なお、本発明において、光輝性薄片状微粒子の平均径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置((株)島津製作所製、品番:SALD−2300)を用いて測定した。平均アスペクト比は、SEM((株)日立ハイテクノロジーズ製、商品名:SU−1500)画像より算出した。
【0058】
光輝性薄片状微粒子は、市販のものを使用してもよく、例えば、大和金属粉工業株式会社製アルミニウムパウダー、松尾産業株式会社製の金属被覆ガラス(商品名:メタシャイン)を好適に使用することができる。
【0059】
透明光散乱層中の光輝性薄片状微粒子の含有量は、光輝性薄片状微粒子の正反射率に応じて適宜調節することができ、樹脂に対して、好ましくは0.0001〜5.0質量%であり、好ましくは0.0005〜3.0質量%であり、より好ましくは0.001〜1.0質量%である。光輝性薄片状微粒子を上記範囲のように低濃度で樹脂中に分散させて透明光散乱層を形成することによって、光源から出射される投影光を異方的に散乱反射することにより、投影光の視認性と透過光の視認性とを向上することができる。
【0060】
(略球状微粒子)
略球状微粒子とは、真球状粒子を含んでいてもよく、凹凸や突起のある球状粒子を含んでいてもよい。樹脂の屈折率n
1と略球状微粒子の屈折率n
2は、下記数式(1):
|n
2−n
1|≧0.1 ・・・(1)
を満たすことが好ましく、下記数式(2):
|n
2−n
1|≧0.15 ・・・(2)
を満たすことがより好ましく、下記数式(3):
3.0≧|n
2−n
1|≧0.2 ・・・(3)
を満たすことがさらに好ましい。透明光散乱層を形成する樹脂と略球状微粒子の屈折率が上記数式を満たすことで、透明光散乱層内で光を異方的に散乱させ、視野角を向上させることができる。また、略球状の微粒子を用いることで、光を全方位的に散乱させ、輝度を向上させることができる。
【0061】
高屈折率を有する略球状微粒子としては、例えば、屈折率n
2が好ましくは1.80〜3.55であり、より好ましくは1.9〜3.3であり、さらに好ましくは2.0〜3.0である、無機物を微粒化した無機系粒子または金属酸化物や金属塩を微粒化した金属系粒子を用いることができる。無機系粒子としては、ダイヤモンド(n=2.42)を挙げることができる。金属酸化物としては、例えば、酸化ジルコニウム(n=2.40)、および酸化セリウム(n=2.20)等を挙げることができる。金属塩としては、例えば、チタン酸バリウム(n=2.40)およびチタン酸ストロンチウム(n=2.37)等を挙げることができる。また、低屈折率を有する無機系略球状微粒子としては、例えば、屈折率n
2が好ましくは1.35〜1.80であり、より好ましくは1.4〜1.75であり、さらに好ましくは1.45〜1.7であり、シリカ(酸化ケイ素、n=1.45)等を微粒子化した粒子が挙げられる。さらに低屈折率を有する有機系略球状微粒子としては、例えば、アクリル系粒子、ポリスチレン系粒子が挙げられる。これらの略球状微粒子は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
略球状微粒子の一次粒子のメジアン径は好ましくは0.1〜100nmであり、より好ましくは0.2〜70nmであり、さらに好ましくは0.5〜50nmである。略球状微粒子の一次粒子のメジアン径が上記範囲内であると、透明シートとして使用した場合に、透過視認性を損なわずに投影光の十分な拡散効果が得られることで、透明スクリーンに鮮明な映像を投影することができる。なお、本発明において、無機微粒子の一次粒子のメジアン径(D
50)は、動的光散乱法により粒度分布測定装置(大塚電子(株)製、商品名:DLS−8000)を用いて測定した粒度分布から求めることができる。
【0063】
略球状微粒子の含有量は、透明光散乱層の厚さや微粒子の屈折率に応じて適宜調節することができる。透明光散乱層中の微粒子の含有量は、樹脂に対して、好ましくは0.0001〜2.0質量%であり、より好ましくは0.001〜1.0質量%であり、さらに好ましくは0.005〜0.5質量%であり、さらにより好ましくは0.01〜0.3質量%である。透明光散乱層中の略球状微粒子の含有量が上記範囲内であれば、透明光散乱層の透明性を確保しながら、投射装置から出射される投影光を異方的に十分に拡散させることで、拡散光の視認性と透過光の視認性とを両立することができる。
(基材層)
基材層は、シート状透明成型体の両面または片面に貼り合わせることでシート状透明成型体を支持するための層であり、シート状透明成型体の強度を向上させることができる。基材層は、シート状透明成型体の透過視認性や所望の光学特性を損なわないような透明性の高い樹脂またはガラスからなることが好ましい。このような樹脂としては、例えば、上記の透明光散乱層と同様の透明性の高い樹脂を用いることができる。すなわち、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、アセタール系樹脂、ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、およびフッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ならびに電離放射線硬化性樹脂等を好適に用いることができる。また、上記した樹脂を2種以上積層した積層体またはシートを使用してもよい。なお、基材層の厚さは、その強度が適切になるように用途・材料に応じて適宜変更することができる。例えば、10μm〜1mm(1000μm)の範囲としてもよく、1mm以上の厚板であってもよい。
【0064】
(保護層)
保護層は、シート状透明成型体の表面側(視認者側)および裏面側の両面またはいずれか一方の面に積層してもよく、耐光性、耐傷性、基材密着性および防汚性等の機能を付与するための層である。保護層は、シート状透明成型体の透過視認性や所望の光学特性を損なわないような樹脂を用いて形成することが好ましい。
【0065】
保護層の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系樹脂、シクロオレフィン系ないしはノルボルネン構造を有するオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系樹脂、イミド系樹脂、スルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ビニルブチラール系樹脂、アリレート系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、あるいは前記樹脂のブレンド物などが保護フィルムを形成する樹脂の例として挙げられる。その他、アクリル系やウレタン系、アクリルウレタン系やエポキシ系、シリコーン系等の電離放射線硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂に熱可塑性樹脂と溶剤を混合したもの、および熱硬化型樹脂などが挙げられる。
【0066】
電離放射線硬化型樹脂組成物の被膜形成成分は、好ましくは、アクリレート系の官能基を有するもの、例えば比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジェン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アルリレート等のオリゴマー又はプレポリマー及び反応性希釈剤としてエチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマー、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を比較的多量に含有するものが使用できる。
【0067】
上記電離放射線硬化型樹脂組成物を紫外線硬化型樹脂組成物とするには、この中に光重合開始剤としてアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチュウラムモノサルファイド、チオキサントン類や、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホソフィン等を混合して用いることができる。特に本発明では、オリゴマーとしてウレタンアクリレート、モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を混合するのが好ましい。
【0068】
電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化方法としては、前記電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化方法は通常の硬化方法、即ち、電子線又は紫外線の照射によって硬化することができる。例えば、電子線硬化の場合には、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速機から放出される50〜1000KeV、好ましくは100〜300KeVのエネルギーを有する電子線等が使用され、紫外線硬化の場合には超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等が利用できる。
【0069】
保護層は、上記電離放射(紫外線)線硬化型樹脂組成物の塗工液をスピンコート、ダイコート、ディップコート、バーコート、フローコート、ロールコート、グラビアコート等の方法で、上記の反射型スクリーン用シート状透明成型体の表面側(視認者側)および裏面側の両面またはいずれか一方の面に塗布し、上記のような手段で塗工液を硬化させることにより形成することができる。
【0070】
(粘着層)
粘着層は、シート状透明成型体の少なくとも片面に基材層や反射防止層等を貼付するための層である。シート状透明成型体の両面に粘着層を設け、基材層でシート状透明成型体を挟んだ積層構造を作製することも可能である。粘着層は、シート状透明成型体の透過視認性や所望の光学特性を損なわないような粘着剤組成物を用いて形成することが好ましい。粘着剤組成物としては、例えば、天然ゴム系、合成ゴム系、ポリ(メタ)アクリル系、ポリビニルエーテル系、ポリウレタン系、ポリシリコーン系、ポリビニルアルコール系等が挙げられる。合成ゴム系の具体例としては、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ポリイソブチレンゴム、イソブチレン−イソプレンゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレンブロック共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコール系の具体例としてはポリビニルブチラール、エチレン−酢酸ビニル樹脂が挙げられる。ポリシリコーン系の具体例としては、ジメチルポリシロキサン等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系粘着剤、アクリル系粘着剤が好ましい。これらの粘着剤は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
アクリル系樹脂粘着剤は、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを含んで重合させたものである。炭素原子数1〜18程度のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体であるのが一般的である。なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸またはメタクリル酸の少なくともいずれか一方をいう。(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸sec−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ウンデシルおよび(メタ)アクリル酸ラウリル等を挙げることができる。また、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、通常は、アクリル系粘着剤中に30〜99.5質量部の割合で共重合されている。
【0072】
また、アクリル系樹脂粘着剤を形成するカルボキシル基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、マレイン酸モノブチルおよびβ−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基を含有するモノマーを挙げることができる。
【0073】
アクリル系樹脂粘着剤には、上記の他に、アクリル系樹脂粘着剤の特性を損なわない範囲内で他の官能基を有するモノマーが共重合されていても良い。他の官能基を有するモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルおよびアリルアルコール等の水酸基を含有するモノマー;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミドおよびN−エチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基を含有するモノマー;N−メチロール(メタ)アクリルアミドおよびジメチロール(メタ)アクリルアミド等のアミド基とメチロール基とを含有するモノマー;アミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびビニルピリジン等のアミノ基を含有するモノマーのような官能基を有するモノマー; アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテルなどのエポキシ基含有モノマーなどが挙げられる。この他にもフッ素置換(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリロニトリルなどのほか、スチレンおよびメチルスチレンなどのビニル基含有芳香族化合物、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニル化合物などを挙げることができる。
【0074】
アクリル系樹脂粘着剤には、上記のような他の官能基を有するモノマーの他に、他のエチレン性二重結合を有するモノマーを使用することができる。エチレン性二重結合を有するモノマーの例としては、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチルおよびフマル酸ジブチル等のα,β−不飽和二塩基酸のジエステル; 酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;ビニルエーテル;スチレン、α−メチルスチレンおよびビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;(メタ)アクリロニトリル等を挙げることができる。また、上記のようなエチレン性二重結合を有するモノマーの他に、エチレン性二重結合を2個以上有する化合物を併用することもできる。このような化合物の例としては、ジビニルベンゼン、ジアリルマレート、ジアリルフタレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレ-ト、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
【0075】
さらに、上記のようなモノマーの他に、アルコキシアルキル鎖を有するモノマー等を使用することができる。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−エトキシブチルなどを挙げることができる。
【0076】
粘着剤組成物としては、上記したアクリル系樹脂粘着剤の他、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの単独重合体であっても良い。例えば、(メタ)アクリル酸エステル単独重合体としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸オクチル等が挙げられる。 アクリル酸エステル単位2種以上を含む共重合体としては、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ3−フェニルオキシプロピル共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルと他の官能性単量体との共重合体としては、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−エチレン共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル−スチレン共重合体が挙げられる。
【0077】
粘着剤は市販のものを使用してもよく、例えば、SKダイン2094、SKダイン2147、SKダイン1811L、SKダイン1442、SKダイン1435、およびSKダイン1415(以上、綜研化学(株)製)、オリバインEG−655、およびオリバインBPS5896(以上、東洋インキ(株)製)等(以上、商品名)を好適に使用することができる。
【0078】
(反射防止層)
反射防止層は、シート状透明成型体表面やその積層体の最表面での反射や、外光の映りこみを防止するための層である。反射防止層は、シート状透明成型体やその積層体の視認者側または反対側の片面にのみ積層されるものであってもよく、両面に積層されるものであってもよい。特に反射型スクリーンとして用いる際には視認者側に積層するのが好ましい。反射防止層は、シート状透明成型体やその積層体の透過視認性や所望の光学特性を損なわないような樹脂を用いて形成することが好ましい。このような樹脂としては、例えば、紫外線・電子線によって硬化する樹脂、即ち、電離放射線硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂に熱可塑性樹脂と溶剤を混合したもの、および熱硬化型樹脂を用いることができるが、これらの中でも電離放射線硬化型樹脂が特に好ましい。
【0079】
反射防止層の形成方法としては、特に限定されないが、コーティングフィルムの貼合、フィルム基板に直接蒸着またはスパッタリング等でドライコートする方式、グラビア塗工、マイクログラビア塗工、バー塗工、スライドダイ塗工、スロットダイ塗工、デイップコート等のウェットコート処理などの方式を用いることができる。
【0080】
<シート状透明成型体の製造方法>
本発明によるシート状透明成型体の製造方法は、透明光散乱層を形成する工程を含むものであり、保護層、基材層、粘着層、および反射防止層等の他の層をさらに積層する場合は、積層工程を含む他の層の形成工程をさらに含んでもよい。透明光散乱層を形成する工程は、混練工程と製膜工程からなる押出成型法、キャスト成膜法、グラビア塗工、マイクログラビア塗工、バー塗工、スライドダイ塗工、スロットダイ塗工、デイップコート、噴霧等を含む塗布法、射出成型法、カレンダー成型法、ブロー成型法、圧縮成型法、2枚のガラス板の間にモノマー液を封入し、その中で塊状重合を行い、重合固化させて板状成型体を得るセルキャスト法など公知の方法により成型加工でき、成膜可能な膜厚範囲の広さから、押出成型法、射出成型法を好適に用いることができる。以下、製造方法の各工程について詳述する。
【0081】
(混練工程)
混練工程は、押出機を用いて透明光散乱層を形成する工程である。押出機としては単軸または二軸混練押出機を用いることができ、二軸混錬押出機を用いて、二軸混錬押出機のスクリュー全長にわたる平均値として、好ましくは3〜1800KPa、より好ましくは6〜1400KPaのせん断応力をかけながら、上記の樹脂と微粒子とを混錬して、樹脂組成物を得る工程である。せん断応力が上記範囲内であれば、微粒子を樹脂中に十分に分散させることができる。特に、せん断応力が3KPa以上であれば、微粒子の分散均一性をより向上させることができ、1800KPa以下であれば、樹脂の分解を防ぎ、透明光散乱層内に気泡が混入するのを防止することができる。せん断応力は、二軸混錬押出機を調節することで、所望の範囲に設定することができる。本発明においては、微粒子を予め添加した樹脂(マスターバッチ)と、微粒子を添加していない樹脂とを混合したものを、二軸混錬押出機を用いて混練して、樹脂組成物を得てもよい。上記は混練工程の一例であり、単軸混錬押出機を用いて微粒子を予め添加した樹脂(マスターバッチ)を作製しても良く、一般的に知られている分散剤を添加してマスターバッチを作製しても良い。
【0082】
樹脂組成物には、上記の樹脂と微粒子以外にも、シート状透明成型体の透過視認性や所望の光学性能を損なわない範囲で、従来公知の添加剤を加えてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、滑剤、光安定剤、相溶化剤、核剤および安定剤等が挙げられる。なお、樹脂と微粒子は、上記で説明したとおりである。
【0083】
混練工程に用いる二軸混錬押出機は、シリンダー内に2本のスクリューが挿入されたものであり、スクリューエレメントを組み合わせて構成される。スクリューは、少なくとも、搬送エレメントと、混練エレメントとを含むフライトスクリューを好適に用いることができる。混練エレメントは、ニーディングエレメント、ミキシングエレメント、およびロータリーエレメントからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。このような混練エレメントを含むフライトスクリューを用いることで、所望のせん断応力をかけながら、微粒子を樹脂中に十分に分散させることができる。
【0084】
(製膜工程)
製膜工程は、混練工程で得られた樹脂組成物を製膜する工程である。製膜方法は、特に限定されず、従来公知の方法により、樹脂組成物からなるシート状透明成型体を製膜することができる。例えば、混練工程で得られた樹脂組成物を、融点以上の温度(Tm〜Tm+70℃)に加熱された溶融押出機に供給して、樹脂組成物を溶融する。溶融押出機としては、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ベント押出機、タンデム押出機等を目的に応じて使用することができる。
【0085】
続いて、溶融した樹脂組成物を、例えばTダイ等のダイによりシート状に押し出し、押し出されたシート状物を、回転している冷却ドラムなどで急冷固化することによりシート状の成型体を成型することができる。なお、上記の混練工程と連続して製膜工程を行う場合には、混練工程で得られた樹脂組成物を溶融状態のまま直接、ダイより押出してシート状の透明光散乱層を成型することもできる。
【0086】
製膜工程により得られたシート状の透明光散乱層は、従来公知の方法により、さらに一軸延伸または二軸延伸してもよい。上記の透明光散乱層を延伸することで、機械強度を向上させることができる。
【0087】
(積層工程)
積層工程は、保護層、基材層、粘着層、および反射防止層等の他の層を設ける場合に、製膜工程で得られたシート状の透明光散乱層上に、他の層をさらに積層する工程である。他の層の積層方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。
【0088】
<透明スクリーン>
本発明による透明スクリーンは、上記のシート状透明成型体を備えてなる。透明スクリーンは、上記のシート状透明成型体のみからなるものでもよく、透明パーティション等の支持体をさらに備えるものでもよい。透明スクリーンは、平面であってもよく、曲面であってもよく、凹凸面を有していてもよい。
【0089】
本発明による透明スクリーンは、背面投射型スクリーン(透過型スクリーン)であってもよく、前面投射型スクリーン(反射型スクリーン)であってもよい。すなわち、本発明による透明スクリーンを備える映像表示装置においては、光源の位置がスクリーンに対して視認者と反対側にあってもよく(透過型スクリーン)、視認者側にあってもよい(反射型スクリーン)。また、反射型スクリーンとして用いた場合、視認者は上記シート状透明成型体の透明光散乱層側から画像を視認する態様が好ましい。このような透明スクリーンは、光源ら出射される投影光を異方的に散乱反射することにより投影光の視認性に優れ、さらに視野角が広く、かつ透過光の視認性に優れるものである。
【0090】
(支持体)
支持体は、シート状透明成型体を支持するためのものである。支持体は、反射型スクリーンの透過視認性や所望の光学特性を損なわないものであればよく、例えば、透明パーティション、ガラスウィンドウ、乗用車のヘッドアップディスプレイ、およびウェアラブルディスプレイ等が挙げられる。
【0091】
<建物用部材>
本発明による建物用部材は、上記のシート状透明成型体または上記の透明スクリーンを備えてなる。建物用部材としては、住宅の窓ガラス、コンビニや路面店のガラス壁等を挙げることができる。建物用部材は上記のシート状透明成型体または上記の透明スクリーンを備えることで、別途のスクリーンを設けなくても、建物用部材上に鮮明な画像を表示させることができる。
【0092】
<車両用部材>
本発明による車両用部材は、上記のシート状透明成型体または上記の透明スクリーンを備えてなる。車両用部材としては、フロントガラスやサイドガラス等が挙げられる。車両用部材は上記のシート状透明成型体または上記の透明スクリーンを備えることで、別途のスクリーンを設けなくても、車両用部材上に鮮明な画像を表示させることができる。
【0093】
<映像投影システム>
本発明による映像投影システムは、上記のシート状透明成型体または透明スクリーンと、投射装置とを備えてなる。当該画像表示装置においては、投射装置(光源)の位置がスクリーンに対して視認者側にあってもよく、視認者の反対側にあってもよい。投射装置とは、スクリーン上に映像を投射できるものであれば特に限定されず、例えば、市販のフロントプロジェクタを用いることができる。
【0094】
本発明による透明スクリーンおよび映像投影システムの一実施形態の模式図を
図3に示す。透明スクリーン33は、透明パーティション(支持体)32と、透明パーティション32上の視認者34側にシート状透明成型体31とを備えてなる。シート状透明成型体31は、透明パーティション32に貼付するために、粘着層を含んでもよい。透過型スクリーンである場合、映像投影システムは、透明スクリーン33と、透明パーティション32に対して視認者34と反対側(背面側)に設置された投射装置35Aとを備えてなる。投射装置35Aから出射された投影光36Aは、透明スクリーン33の背面側から入射し、透明スクリーン33により異方的に散乱することで、視認者34は散乱光37Aを視認できる。また、反射型スクリーンである場合、映像投影システムは、透明スクリーン33と、透明パーティション32に対して視認者34と同じ側(前面側)に設置された投射装置35Bとを備えてなる。投射装置35Bから出射された投影光36Bは、透明スクリーン33の前面側から入射し、透明スクリーン33により異方的に散乱することで、視認者34は散乱光37Bを視認できる。
【実施例】
【0095】
以下、実施例と比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定解釈されるものではない。
【0096】
実施例および比較例において、各種物性および性能評価の測定方法は次のとおりである。
(1)ヘイズ
濁度計(日本電色工業(株)製、品番:NDH−5000)を用い、JIS K7136に準拠して測定した。
(2)全光線透過率
濁度計(日本電色工業(株)製、品番:NDH−5000)を用い、JIS K7361−1に準拠して測定した。
(3)拡散透過率
濁度計(日本電色工業(株)製、品番:NDH−5000)を用い、JIS K7361−1に準拠して測定した。
(4)反射正面光度
変角光度計(日本電色工業(株)製、品番:GC5000L)を用いて測定した。光源の入射角を45度にセットし、測定ステージに白色度95.77の標準白色板を載せたときの0度方向への反射光強度を100とした。サンプル測定時は、光源の入射角を15度にセットし、0度方向への反射光の強度を測定した。
(5)透過正面光度
変角光度計(日本電色工業(株)製、品番:GC5000L)を用いて測定した。光源の入射角を0度にセットし、測定ステージに何も置かない状態での0度方向への透過光強度を100とした。サンプル測定は、光源の入射角を15度にセットし、0度方向への透過光の強度を測定した。
(6)視野角
変角光度計(日本電色工業(株)製、品番:GC5000L)を用いて測定した。光源の入射角を0度にセットし、測定ステージに何も置かない状態での0度方向への透過光強度を100とした。サンプル測定時は、光源の入射角は0度のまま、−85度から+85度までの透過光強度を1度刻みで測定した。測定範囲の中で、透過光強度が0.001以上ある範囲を視野角とした。
(7)正反射率
分光測色計(コニカミノルタ(株)製、品番:CM−3500dを用いて測定した。適切な溶媒(水またはメチルエチルケトン)に分散させた光輝性薄片状微粒子をスライドガラス上に膜厚が0.5mm以上になるように塗布、乾燥させた。得られた塗膜付きガラス板について、ガラス面の法線に対して45度の角度でガラス面から塗膜へ光を入射したときの正反射率を測定した。
(8)写像性
写像性測定器(スガ試験機(株)製、品番:ICM−1T)を用い、JIS K7374に準拠して、光学くし幅0.125mmで測定した時の像鮮明度(%)の値を写像性とした。像鮮明度の値が大きい程、透過写像性が高いことを示す。
(9)遮蔽係数
紫外可視近赤外分光光度計((株)島津製作所製、型番UV−2600)を用い、JIS A5759に準拠して測定した。
(10)耐光性:b
*値、MIT耐折度回数
耐光性の評価には、キセノンウェザーメーター〔東洋精機製作所 アトラスCi4000〕を用いて、二軸延伸フィルムに、放射照度60W/m
2、ブラックパネル温度63±3℃、湿度50%RH、600時間光照射して行った。光照射後のb
*値を光照射前のb
*値(b
*1)から差し引きした値Δb
*(=b
*1−b
*)、および光照射前後におけるMIT耐折度回数の差し引き値ΔMIT(=光照射前MIT−光照射後MIT)を求め、耐光性を評価した。b
*は日本電色工業(株)製Spectrophotometer SD6000を用いて5回測定して平均値を算出し、Δb
*(=b
*1−b
*)は、光照射後のb
*値を光照射前のb
*値(b
*1)から差し引きして算出した。MIT耐折度回数は、テスター産業株式会社製のBE−201 MIT耐屈度試験機を使用し、加重200g、折り曲げ点先端Rは0.38、屈曲速度は175回/分、屈曲角度は左右135°、フィルムサンプルの幅は15mmの測定条件下、シート状透明成型体の搬送方向に繰り返し屈曲させたときに破断した屈曲回数と、幅方向に繰り返し屈曲させたときに破断した屈曲回数との平均値を求めることで測定した。ΔMITは、光照射前後におけるMIT耐折度回数の差し引き値(光照射前MIT−光照射後MIT)として算出した。
(11)スクリーン性能
透明スクリ−ンとして下記で作製したシート状透明成型体に、シート状透明成型体の法線方向に対して角度15度で50cm離れた位置から、オンキョーデジタルソリューションズ(株)製のモバイルLEDミニプロジェクターPP−D1Sを用いて画像を投影した。次に、スクリ−ンの面上に焦点が合うようにプロジェクターの焦点つまみを調整した後、スクリ−ンの前方1mおよび後方1mの2ヶ所からスクリ−ンに映し出された画像を目視で観察し、下記の基準に基づいて目視で評価した。前方からの観察により反射型透明スクリーンとしての性能が評価でき、後方からの観察により透過型透明スクリーンとしての性能が評価できる。
[評価基準]
◎:極めて鮮明に映像を視認することができた。
○:鮮明に映像を視認することができた。
△:映像の輪郭、色相がややぼやけて視認された。
×:映像の輪郭がぼやけ、スクリーンとして使用するには不適であった。
【0097】
[実施例A1]
(1)微粒子を添加した熱可塑性樹脂ペレットの作製(以下、「ペレット作製工程」という)
熱可塑性樹脂としてポリエチレンテレフタレート(PET)ペレット((株)ベルポリエステルプロダクツ製、商品名:IP121B)を用意した。該PETペレットに、赤外線遮蔽性微粒子として、PETペレットに対して0.001質量%のセシウム酸化タングステン微粒子(住友金属鉱山(株)社製、商品名:YMF−02A、一次粒子の平均径15nm、屈折率1.66)、光輝性薄片状微粒子として、PETペレットに対して0.0085質量%の薄片状アルミニウム微粒子A(一次粒子の平均径10μm、アスペクト比300、正反射率62.8%)を加えて、回転型混合器にて混合することでPETペレット表面に均一にセシウム酸化タングステン微粒子および薄片状アルミニウム微粒子が付着したPETペレットを得た。
(2)透明光散乱層(シート状透明成型体)の作製(以下、「シート作製工程」という)
得られた微粒子添加PETペレットをスクリュー式の二軸混練押出機(テクノベル(株)製、商品名:KZW−30MG)のホッパーに投入し、80μmの厚さの透明光散乱層(シート状透明成型体)を作製した。なお、二軸混練押出機のスクリュー径は20mmであり、スクリュー有効長(L/D)は30であった。また、二軸混練押出機にはアダプタを介し、ハンガーコートタイプのTダイを設置した。押出温度は270℃とし、スクリュー回転数は500rpmとし、せん断応力は300KPaとした。使用したスクリューは全長670mmであり、スクリューのホッパー側から160mmの位置から185mmの位置までの間にミキシングエレメントを含み、かつ185mmから285mmの位置の間にニーディングエレメントを含み、その他の部分はフライト形状であった。
(3)透明スクリーンの評価
作製した透明光散乱層(シート状透明成型体)をそのまま透明スクリーンに用いたところ、ヘイズ値は4.8%、拡散透過率は4.1%、全光線透過率は86.0%であり、高い透明性を有していた。
変角光度計にて測定した透過正面光度(×1000)は、1.00であり、透過正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した反射正面光度は、9.8であり、反射正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した視野角は±18度であり、視野角特性に優れることが分かった。また、写像性測定器にて測定した写像性は89%であり、視認性を目視で評価した結果、前方観察時、後方観察時ともに鮮明に映像を視認することができ、特に前方観察時に極めて鮮明な映像を視認することができた。また、遮蔽係数は0.85であり、優れた熱線遮蔽効果を有することが分かった。
【0098】
[実施例A2]
実施例A1の(1)ペレット作製工程において、セシウム酸化タングステン微粒子の添加量を0.010質量%とし、さらに略球状微粒子として酸化ジルコニウム粒子(関東電化工業(株)製、屈折率2.40、一次粒子のメジアン径10nm)を0.15質量%添加した以外は実施例A1と同様にして、膜厚100μmの透明光散乱層(シート状透明成型体)を作製した。
作製した透明光散乱層(シート状透明成型体)をそのまま透明スクリーンに用いたところ、ヘイズ値は13.9%、拡散透過率は10.1%、全光線透過率は72.4%であり、高い透明性を有していた。
変角光度計にて測定した透過正面光度(×1000)は11.29であり、透過正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した反射正面光度は、5.1であり、反射正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した視野角は±32度であり、視野角特性に優れることが分かった。また、写像性測定器にて測定した写像性は85%であり、視認性を目視で評価した結果、前方観察時、後方観察時ともに極めて鮮明に映像を視認することができた。また、遮蔽係数は0.68であり、優れた熱線遮蔽効果を有することが分かった。
【0099】
[実施例A3]
実施例A1の(1)ペレット作製工程において、薄片状アルミニウム微粒子Aの添加量を0.042質量%とし、赤外線遮蔽性微粒子としてセシウム酸化タングステンの代わりに六ホウ化ランタン(住友金属鉱山(株)社製、商品名:KHF−7AH、平均径80nm)を0.001質量%用いた以外は実施例A1と同様にして、膜厚80μmの透明光散乱層(シート状透明成型体)を作製した。なお、KHF−7AH(六ホウ化ランタン)はセシウム酸化タングステン含有量の1.5倍量の酸化ジルコニウムを含有しているため、透明光散乱層は0.0015質量%の酸化ジルコニウムを含有している。
作製した透明光散乱層(シート状透明成型体)をそのまま透明スクリーンに用いたところ、ヘイズ値は18.1%、拡散透過率は12.9%、全光線透過率は71.0%であり、実施例A2と比較するとやや劣るものの、十分な透明性を有していた。
変角光度計にて測定した透過正面光度(×1000)は、3.11であり、透過正面光度(×1000)に優れることが分かった。変角光度計にて測定した反射正面光度は、38.2であり、反射正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した視野角は±33度であり、視野角特性に優れることが分かった。また、写像性測定器にて測定した写像性は91%であり、視認性を目視で評価した結果、前方観察時、後方観察時ともに極めて鮮明に映像を視認することができた。また、遮蔽係数は0.88であり、優れた熱線遮蔽効果を有することが分かった。
【0100】
[実施例A4]
実施例A1の(1)ペレット作製工程において、光輝性薄片状微粒子として薄片状アルミニウム微粒子B(一次粒子の平均径7μm、アスペクト比40、正反射率24.6%)をPETペレットに対して0.014質量%を添加し、赤外線遮蔽性微粒子としてセシウム酸化タングステンの代わりに酸化チタン(テイカ(株)社製、商品名:JR−1000、平均径1μm)を0.005質量%添加した以外は実施例A1と同様にして膜厚100μmの透明光散乱層(シート状透明成型体)を作製した。
作製した透明光散乱層(シート状透明成型体)をそのまま透明スクリーンに用いたところ、ヘイズ値は5.1%、拡散透過率は4.4%、全光線透過率は86.4%であり、高い透明性を有していた。
変角光度計にて測定した透過正面光度(×1000)は、0.80であり、透過正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した反射正面光度は、6.3であり、反射正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した視野角は±18度であり、視野角特性に優れることが分かった。また、写像性測定器にて測定した写像性は91%であり、視認性を目視で評価した結果、前方観察時、後方観察時ともに鮮明に映像を視認することができ、特に前方観察時に極めて鮮明な映像を視認することができた。また、遮蔽係数は0.87であり、優れた熱線遮蔽効果を有することが分かった。
【0101】
[実施例A5]
実施例A1の(1)ペレット作製工程において、光輝性薄片状微粒子として酸化チタン(TiO
2)被覆雲母(トピー工業(株)製、商品名:Helios R10S、一次粒子の平均径12μm、アスペクト比80、正反射率16.5%)を0.1質量%用いた以外は実施例A1と同様にして膜厚100μmの透明光散乱層(シート状透明成型体)を作製した。
作製した透明光散乱層(シート状透明成型体)をそのまま透明スクリーンに用いたところ、ヘイズ値は2.8%、拡散透過率は2.6%、全光線透過率は91.2%であり、高い透明性を有していた。
変角光度計にて測定した透過正面光度(×1000)は、1.45であり、透過正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した反射正面光度は、8.2であり、反射正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した視野角は±15度であり、視野角特性に優れることが分かった。また、写像性測定器にて測定した写像性は88%であり、視認性を目視で評価した結果、前方観察時、後方観察時ともに鮮明に映像を視認することができ、特に前方観察時に極めて鮮明な映像を視認することができた。また、遮蔽係数は0.86であり、優れた熱線遮蔽効果を有することが分かった。
【0102】
[実施例A6]
実施例A1の(1)ペレット作製工程において、光輝性薄片状微粒子としてアルミニウムC(一次粒子の平均径1μm、アスペクト比25、正反射率16.8%)を0.001質量%用いた以外は実施例A1と同様にして膜厚80μmの透明光散乱層(シート状透明成型体)を作製した。
作製した透明光散乱層(シート状透明成型体)をそのまま透明スクリーンに用いたところ、ヘイズ値は1.8%、拡散透過率は1.7%、全光線透過率は92.1%であり、高い透明性を有していた。
変角光度計にて測定した透過正面光度(×1000)は、0.65であり、透過正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した反射正面光度は、2.9であり、反射正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した視野角は±15度であり、視野角特性に優れることが分かった。また、写像性測定器にて測定した写像性は92%であり、視認性を目視で評価した結果、前方観察時、後方観察時ともに鮮明に映像を視認することができ、特に前方観察時に極めて鮮明な映像を視認することができた。また、遮蔽係数は0.88であり、優れた熱線遮蔽効果を有することが分かった。
【0103】
[実施例A7]
実施例A2の(1)ペレット作製工程において、光輝性薄片状微粒子を添加しなかった以外は実施例A2と同様にして膜厚100μmの透明光散乱層(シート状透明成型体)を作製した。
作製した透明光散乱層(シート状透明成型体)をそのまま透明スクリーンに用いたところ、ヘイズ値は13.2%、拡散透過率は10.7%、全光線透過率は81.3%であり、高い透明性を有していた。
変角光度計にて測定した透過正面光度(×1000)は、3.8であり、透過正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した反射正面光度は、1.9であり、反射正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した視野角は±28度であり、視野角特性に優れることが分かった。また、写像性測定器にて測定した写像性は88%であり、視認性を目視で評価した結果、前方観察時、後方観察時ともに鮮明に映像を視認することができ、特に後方観察時に極めて鮮明な映像を視認することができた。また、遮蔽係数は0.69であり、優れた熱線遮蔽効果を有することが分かった。
【0104】
[実施例A8]
実施例A1の(1)ペレット作製工程において、セシウム酸化タングステンの添加量を0.0001質量%とし、光輝性薄片状微粒子として薄片状アルミニウム微粒子Aの代わりに銀粒子(一次粒子の平均径1μm、アスペクト比200、正反射率32.8%)を0.001質量%とした以外は実施例A1と同様にしてセシウム酸化タングステンおよび銀粒子が付着したペレットを得た。得られたペレットを用い、射出成形機(日精樹脂工業(株)製、商品名:FNX−III)にて膜厚1000μmの透明光散乱層(シート状透明成型体)を作製した。
作製した透明光散乱層(シート状透明成型体)をそのまま透明スクリーンに用いたところ、ヘイズ値は6.4%、拡散透過率は4.5%、全光線透過率は70.1%であり、高い透明性を有していた。
変角光度計にて測定した透過正面光度(×1000)は、1.42であり、透過正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した反射正面光度は、14.8であり、反射正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した視野角は±18度であり、視野角特性に優れることが分かった。また、写像性測定器にて測定した写像性は74%であり、視認性を目視で評価した結果、前方観察時、後方観察時ともに鮮明に映像を視認することができ、特に前方観察時に極めて鮮明な映像を視認することができた。また、遮蔽係数は0.87であり、優れた熱線遮蔽効果を有することが分かった。
【0105】
[比較例A1]
実施例A1の(1)ペレット作製工程において、赤外線遮蔽性微粒子を添加しなかった以外は実施例A1と同様にして、膜厚100μmの透明光散乱層(シート状透明成型体)を作製した。
作製した透明光散乱層(シート状透明成型体)をそのまま透明スクリーンに用いたところ、ヘイズ値は4.0%、拡散透過率は3.6%、全光線透過率は89.1%であり、写像性測定器にて測定した写像性は92%であった。
変角光度計にて測定した透過正面光度(×1000)は、1.06であり、反射正面光度は、9.2であった。変角光度計にて測定した視野角は±14度であり、視認性を目視で評価した結果、特に前方観察時において鮮明な画像を視認することができたが、遮蔽係数は0.95であり、熱線遮蔽効果が劣っていた。
【0106】
[比較例A2]
実施例A1の(1)ペレット作製工程において、光輝性薄片状微粒子を添加せず、光輝性の無い薄片状微粒子として、雲母粒子((株)ヤマグチマイカ製、商品名:A−21S、一次粒子の平均径23μm、アスペクト比70、正反射率9.8%)を0.2質量%添加した以外は比較例A1と同様にして、膜厚100μmの透明光散乱層(シート状透明成型体)を作製した。
作製した透明光散乱層(シート状透明成型体)をそのまま透明スクリーンに用いたところ、ヘイズ値は9.0%、拡散透過率は8.1%、全光線透過率は90.0%であり、写像性測定器にて測定した写像性は87%であった。
変角光度計にて測定した透過正面光度(×1000)は2.63であり、反射正面光度は1.0であり、反射正面光度が劣っていた。変角光度計にて測定した視野角は±20度であり、視野角特性は優れているものの、視認性を目視で評価した結果、前方観察時、後方観察時ともに映像を視認することができなかった。また、遮蔽係数は0.93であり、熱線遮蔽効果が劣っていた。
【0107】
実施例A1〜7および比較例A1〜2で用いた透明光散乱層の詳細を表3に示す。
【表3】
【0108】
実施例A1〜7および比較例A1〜2で用いたシート状透明成型体の各種物性および性能評価の結果を表4に示す。
【表4】
【0109】
[実施例B1]
(1)微粒子を添加した熱可塑性樹脂ペレットの作製(以下、「ペレット作製工程」という)
熱可塑性樹脂としてポリエチレンテレフタレート(PET)ペレット((株)ベルポリエステルプロダクツ製、商品名:IP121B)を用意した。該PETペレットに、紫外線遮蔽剤として、PETペレットに対して0.001質量%の酸化亜鉛(ZnO、石原産業(株)社製、商品名:FZO、一次粒子の平均径0.021μm)と、光輝性薄片状微粒子として、PETペレットに対して0.0085質量%の薄片状アルミニウム微粒子A(一次粒子の平均径10μm、アスペクト比300、正反射率62.8%)とを加えて、回転型混合器にて混合することでPETペレット表面に均一に酸化亜鉛微粒子および薄片状アルミニウム微粒子が付着したPETペレットを得た。
(2)透明光散乱層(シート状透明成型体)の作製(以下、「シート作製工程」という)
得られた微粒子添加PETペレットをスクリュー式二軸混練押出機(テクノベル(株)製、商品名:KZW−30MG)のホッパーに投入し、80μmの厚さの透明光散乱層(シート状透明成型体)を作製した。なお、二軸混練押出機のスクリュー径は20mmであり、スクリュー有効長(L/D)は30であった。また、二軸式混練押出機にはアダプタを介し、ハンガーコートタイプのTダイを設置した。押出温度は270℃とし、スクリュー回転数は500rpmとし、せん断応力は300KPaとした。使用したスクリューは全長670mmであり、スクリューのホッパー側から160mmの位置から185mmの位置までの間にミキシングエレメントを含み、かつ185mmから285mmの位置の間にニーディングエレメントを含み、その他の部分はフライト形状であった。
(3)透明スクリーンの評価
作製した透明光散乱層(シート状透明成型体)をそのまま透明スクリーンに用いたところ、ヘイズ値は4.8%、拡散透過率は4.3%、全光線透過率は88.7%であり、高い透明性を有していた。
変角光度計にて測定した透過正面光度(×1000)は、1.21であり、透過正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した反射正面光度は、10.2であり、反射正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した視野角は±18度であり、視野角特性に優れることが分かった。また、写像性測定器にて測定した写像性は89%であり、視認性を目視で評価した結果、前方観察時、後方観察時ともに鮮明に映像を視認することができ、特に前方観察時に極めて鮮明な映像を視認することができた。また、Δb
*は0.03(紫外線照射前b
*値=0.53、紫外線照射後b
*1値=0.58)、ΔMITは1151(紫外線照射前MIT=12020、紫外線照射後MIT=10869)であり、優れた耐光性を有することが分かった。
【0110】
[実施例B2]
実施例B1の(1)ペレット作製工程において、酸化亜鉛微粒子の添加量を0.010質量%とし、略球状微粒子として酸化ジルコニウム(ZrO
2、関東電化工業(株)製、屈折率2.40、一次粒子のメジアン径10nm)を0.15質量%添加した以外は実施例B1と同様にして、膜厚80μmの透明光散乱層(シート状透明成型体)を作製した。
作製した透明光散乱層(シート状透明成型体)をそのまま透明スクリーンに用いたところ、ヘイズ値は15.7%、拡散透過率は11.4%、全光線透過率は72.9%であり、高い透明性を有していた。
変角光度計にて測定した透過正面光度(×1000)は11.29であり、透過正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した反射正面光度は、5.1であり、反射正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した視野角は±32度であり、視野角特性に優れることが分かった。また、写像性測定器にて測定した写像性は85%であり、視認性を目視で評価した結果、前方観察時、後方観察時ともに極めて鮮明に映像を視認することができた。また、Δb
*は0.02(紫外線照射前b
*値=0.61、紫外線照射後b
*1値=0.63)、ΔMITは633(紫外線照射前MIT=9013、紫外線照射後MIT=8380)であり、優れた耐光性を有することが分かった。
【0111】
[実施例B3]
実施例B1の(1)ペレット作製工程において、酸化亜鉛微粒子の代わりに、紫外線遮蔽剤として酸化チタン(TiO
2、石原産業(株)社製、商品名:TTO−51(A)、一次粒子の平均径0.01〜0.03μm)を0.001質量%、薄片状アルミニウム微粒子Aを0.042質量%、および酸化ジルコニウム微粒子を0.0015質量%加えた以外は実施例B1と同様にして、膜厚80μmの透明光散乱層(シート状透明成型体)を作製した。
作製した透明光散乱層(シート状透明成型体)をそのまま透明スクリーンに用いたところ、ヘイズ値は15.5%、拡散透過率は11.0%、全光線透過率は71.2%であり、高い透明性を有していた。
変角光度計にて測定した透過正面光度(×1000)は、4.11であり、透過正面光度(×1000)に優れることが分かった。変角光度計にて測定した反射正面光度は、33.1であり、反射正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した視野角は±33度であり、視野角特性に優れることが分かった。また、写像性測定器にて測定した写像性は90%であり、視認性を目視で評価した結果、前方観察時、後方観察時ともに極めて鮮明に映像を視認することができ、た。また、Δb
*は0.03(紫外線照射前b
*値=0.52、紫外線照射後b
*1値=0.55)、ΔMITは889(紫外線照射前MIT=11363、紫外線照射後MIT=10474)であり、優れた耐光性を有することが分かった。
【0112】
[実施例B4]
実施例B1の(1)ペレット作製工程において、酸化亜鉛微粒子の代わりに、紫外線遮蔽剤としてトリアジン系紫外線吸収剤(BASFジャパン社製、商品名:チヌビン1577)を0.10質量%、および光輝性薄片状微粒子として薄片状アルミニウム微粒子B(一次粒子の平均径7μm、アスペクト比40、正反射率24.6%)を0.014質量%添加した以外は実施例B1と同様にして膜厚100μmの透明光散乱層(シート状透明成型体)を作製した。
作製した透明光散乱層(シート状透明成型体)をそのまま透明スクリーンに用いたところ、ヘイズ値は4.6%、拡散透過率は4.1%、全光線透過率は89.4%であり、高い透明性を有していた。
変角光度計にて測定した透過正面光度(×1000)は、1.01であり、透過正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した反射正面光度は、7.7であり、反射正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した視野角は±18度であり、視野角特性に優れることが分かった。また、写像性測定器にて測定した写像性は89%であり、視認性を目視で評価した結果、前方観察時、後方観察時ともに鮮明に映像を視認することができ、特に前方観察時に極めて鮮明な映像を視認することができた。また、Δb
*は0.01(紫外線照射前b
*値=0.62、紫外線照射後b
*1値=0.63)、ΔMITは965(紫外線照射前MIT=12451、紫外線照射後MIT=11486)であり、優れた耐光性を有することが分かった。
【0113】
[実施例B5]
実施例B1の(1)ペレット作製工程において、光輝性薄片状微粒子として酸化チタン(TiO
2)被覆雲母(トピー工業(株)製、商品名:Helios R10S、一次粒子の平均径12μm、アスペクト比80、正反射率16.5%)を0.1質量%、および紫外線遮蔽剤として酸化亜鉛の代わりにベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤((株)ADEKA製、商品名:アデカスタブLA−31)を0.20質量%用いた以外は実施例B1と同様にして膜厚100μmの透明光散乱層(シート状透明成型体)を作製した。
作製した透明光散乱層(シート状透明成型体)をそのまま透明スクリーンに用いたところ、ヘイズ値は2.4%、拡散透過率は2.2%、全光線透過率は92.9%であり、高い透明性を有していた。
変角光度計にて測定した透過正面光度(×1000)は、0.50であり、透過正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した反射正面光度は、5.3であり、反射正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した視野角は±15度であり、視野角特性に優れることが分かった。また、写像性測定器にて測定した写像性は92%であり、視認性を目視で評価した結果、前方観察時、後方観察時ともに鮮明に映像を視認することができた。また、Δb
*は0.01(紫外線照射前b
*値=0.62、紫外線照射後b
*1値=0.63)、ΔMITは768(紫外線照射前MIT=8242、紫外線照射後MIT=7474)であり、優れた耐光性を有することが分かった。
【0114】
[実施例B6]
実施例B1の(1)ペレット作製工程において、紫外線遮蔽剤として酸化亜鉛の代わりにベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASFジャパン社製、商品名:チヌビン234)を0.15質量%用いた以外は実施例B1と同様にして膜厚100μmの透明光散乱層(シート状透明成型体)を作製した。
作製した透明光散乱層(シート状透明成型体)をそのまま透明スクリーンに用いたところ、ヘイズ値は4.5%、拡散透過率は4.0%、全光線透過率は89.1%であり、高い透明性を有していた。
変角光度計にて測定した透過正面光度(×1000)は、1.06であり、透過正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した反射正面光度は、9.2であり、反射正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した視野角は±18度であり、視野角特性に優れることが分かった。また、写像性測定器にて測定した写像性は92%であり、視認性を目視で評価した結果、前方観察時、後方観察時ともに鮮明に映像を視認することができ、特に前方観察時に極めて鮮明な映像を視認することができた。また、Δb
*は0.01(紫外線照射前b
*値=0.59、紫外線照射後b
*1値=0.60)、ΔMITは1312(紫外線照射前MIT=11038、紫外線照射後MIT=9726)であり、優れた耐光性を有することが分かった。
【0115】
[実施例B7]
実施例B4の(1)ペレット作製工程において、チヌビン1577の添加量を0.01質量%に変更し、光輝性薄片状微粒子として薄片状アルミニウム微粒子Bの代わりに銀粒子(一次粒子の平均径1μm、アスペクト比200、正反射率32.8%)を0.001質量%用いた以外は実施例B4と同様にしてチヌビン1577および銀粒子が付着したペレットを得た。得られたペレットを用い、射出成形機(日精樹脂工業(株)製、商品名:FNX−III)にて膜厚1000μmの透明光散乱層(シート状透明成型体)を作製した。
作製した透明光散乱層(シート状透明成型体)をそのまま透明スクリーンに用いたところ、ヘイズ値は5.6%、拡散透過率は4.1%、全光線透過率は73.2%であり、高い透明性を有していた。
変角光度計にて測定した透過正面光度(×1000)は、1.32であり、透過正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した反射正面光度は、13.8であり、反射正面光度に優れることが分かった。変角光度計にて測定した視野角は±21度であり、視野角特性に優れることが分かった。また、写像性測定器にて測定した写像性は75%であり、視認性を目視で評価した結果、前方観察時、後方観察時ともに鮮明に映像を視認することができ、特に後方観察時に極めて鮮明な映像を視認することができた。また、Δb
*は0.02(紫外線照射前b
*値=0.62、紫外線照射後b
*1値=0.64)であった。なお、本実施例の透明光散乱層は厚みが1000μmの板であるため、ΔMITは測定不能である。
【0116】
[比較例B1]
実施例B1の(1)ペレット作製工程において、紫外線遮蔽剤を添加しなかった以外は実施例B1と同様にして、膜厚80μmの透明光散乱層(シート状透明成型体)を作製した。
作製した透明光散乱層(シート状透明成型体)をそのまま透明スクリーンに用いたところ、ヘイズ値は4.0%、拡散透過率は3.6%、全光線透過率は89.1%であり、写像性測定器にて測定した写像性は92%であった。変角光度計にて測定した透過正面光度(×1000)は、1.06であり、反射正面光度は、9.2であった。変角光度計にて測定した視野角は±14度であり、視認性を目視で評価した結果、前方観察時、後方観察時ともに鮮明に映像を視認することができ、特に前方観察時において鮮明な画像を視認することができた。また、Δb
*は0.15(紫外線照射前b
*値=0.52、紫外線照射後b
*1値=0.67)、ΔMITは3242(紫外線照射前MIT=14532、紫外線照射後MIT=11290)であり、耐光性が劣っていた。
【0117】
[比較例B2]
実施例B3の(1)ペレット作製工程において、光輝性薄片状微粒子を添加せず、光輝性の無い薄片状微粒子として、雲母粒子((株)ヤマグチマイカ製、商品名:A−21S、一次粒子の平均径23μm、アスペクト比70、正反射率9.8%)を0.2質量%添加し、さらに、紫外線遮蔽剤を添加しなかった以外は実施例B3と同様にして、膜厚80μmの透明光散乱層(シート状透明成型体)を作製した。
作製した透明光散乱層(シート状透明成型体)をそのまま透明スクリーンに用いたところ、ヘイズ値は9.0%、拡散透過率は8.1%、全光線透過率は90.0%であり、写像性測定器にて測定した写像性は87%であった。変角光度計にて測定した透過正面光度(×1000)は2.63であり、反射正面光度は1.0であり、反射正面光度が劣っていた。変角光度計にて測定した視野角は±20度であり、視野角特性は優れているものの、視認性を目視で評価した結果、前方観察時は映像の輪郭、色相がややぼやけて視認され、後方観察時には映像の輪郭がぼやけ、スクリーンとして使用するには不適であった。また、Δb
*は0.12(紫外線照射前b
*値=0.53、紫外線照射後b
*1値=0.65)、ΔMITは4140(紫外線照射前MIT=9269、紫外線照射後MIT=5129)であり、耐光性が劣っていた。
【0118】
実施例B1〜6および比較例B1〜2で用いた透明光散乱層の詳細を表5に示す。
【表5】
【0119】
実施B1〜6および比較B1〜2で用いたシート状透明成型体の各種物性および性能評価の結果を表6に示す。
【表6】