特許第6334061号(P6334061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6334061腫瘍血管遮断剤であるポリペプチド、遺伝子、発現ベクター、腫瘍血管遮断剤の組成物、及び腫瘍血管遮断剤であるポリペプチドの調製方法
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  • 特許6334061-腫瘍血管遮断剤であるポリペプチド、遺伝子、発現ベクター、腫瘍血管遮断剤の組成物、及び腫瘍血管遮断剤であるポリペプチドの調製方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334061
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】腫瘍血管遮断剤であるポリペプチド、遺伝子、発現ベクター、腫瘍血管遮断剤の組成物、及び腫瘍血管遮断剤であるポリペプチドの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20180521BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20180521BHJP
   C07K 14/745 20060101ALI20180521BHJP
   A61K 38/36 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180521BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C07K19/00
   C07K14/745
   A61K38/36
   A61P35/00
   C12P21/02 C
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-521279(P2017-521279)
(86)(22)【出願日】2015年9月8日
(65)【公表番号】特表2017-524380(P2017-524380A)
(43)【公表日】2017年8月31日
(86)【国際出願番号】CN2015089116
(87)【国際公開番号】WO2016004906
(87)【国際公開日】20160114
【審査請求日】2017年5月15日
(31)【優先権主張番号】201410323457.6
(32)【優先日】2014年7月8日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517006898
【氏名又は名称】北京▲華▼安科▲創▼生物技▲術▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING HUA’AN INNOVATION BIOTECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】▲聶▼ 广▲軍▼
(72)【発明者】
【氏名】李 素▲萍▼
(72)【発明者】
【氏名】田 ▲艷▼▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ ▲穎▼
【審査官】 小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−298805(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/047354(WO,A2)
【文献】 中国特許出願公開第103705465(CN,A)
【文献】 国際公開第2008/084652(WO,A1)
【文献】 Huang, X. et al.,Tumor infarction in mice by antibody-directed targeting of tissue factor to tumor vasculature,Science,1997年,Vol. 275,pp. 547-550
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
A61K 38/00−38/58
UniProt/GeneSeq
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS
/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ端からカルボキシル端へ、短縮型組織因子、連結ドメイン、及び、腫瘍標的分子pHLIPを有するポリペプチドであって、
前記短縮型組織因子は配列番号2に示されるアミノ酸配列を有し、
前記連結ドメインは配列番号3に示される1つのみのアミノ酸配列を有し、
前記腫瘍標的分子pHLIPは配列番号4に示されるアミノ酸配列を有することを特徴とする腫瘍血管遮断剤であるポリペプチド。
【請求項2】
請求項に記載のポリペプチドをコーディングするヌクレオチド配列を有することを特徴とする腫瘍血管遮断剤遺伝子。
【請求項3】
配列番号5に示されるヌクレオチド配列を有することを特徴とする請求項に記載の腫瘍血管遮断剤遺伝子。
【請求項4】
請求項またはに記載の腫瘍血管遮断剤遺伝子において、ポリペプチドをコーディングするヌクレオチド配列を含むことを特徴とする腫瘍血管遮断剤の発現ベクター。
【請求項5】
pET30aベクタープラスミドで構築されることを特徴とする請求項に記載の腫瘍血管遮断剤の発現ベクター。
【請求項6】
請求項に記載の腫瘍血管遮断剤であるポリペプチド、請求項もしくはに記載の腫瘍血管遮断剤遺伝子、又は、請求項もしくはに記載の腫瘍血管遮断剤の発現ベクターを有することを特徴とする腫瘍血管遮断剤の組成物。
【請求項7】
請求項に記載の腫瘍血管遮断剤であるポリペプチドの調製方法であって、
請求項またはに記載の腫瘍血管遮断剤の発現ベクターを発現系に移し、誘導発現して腫瘍血管遮断剤であるポリペプチドを得ることを特徴とする腫瘍血管遮断剤であるポリペプチドの調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は腫瘍治療薬の技術分野に関し、特に腫瘍血管遮断剤であるポリペプチド、遺伝子、発現ベクター、腫瘍血管遮断剤の組成物、及び腫瘍血管遮断剤であるポリペプチドの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍血管は腫瘍細胞が栄養素を取得して代謝産物を排出する通路であると同時に、腫瘍細胞が脱出したり転移したりするための重要な経路の一つでもあり、その形態的も機能的にも生体の正常な血管系と異なっているため、腫瘍標的治療のためのキー標的の1つである。腫瘍血管標的治療には主に、新生血管形成を抑制すること、既存の腫瘍血管を遮断することという二つのモードを含む。この中でも、腫瘍の既存血管を阻断する治療法は、主に腫瘍の既存血管を選択的に破壊し、腫瘍への血液供給を遮断し、腫瘍細胞の虚血性壊死を誘発することによって腫瘍を治療する目的が達成される。そのため、どのように生体の正常組織血管に影響せずに腫瘍部位の血管を特異的に遮断するかということが研究の主要テーマとなっている。
【0003】
組織因子(TF)は分子量が約47kDaの膜貫通糖タンパク質(Transmembrane glucose)であり、血栓形成過程において極めて重要な役割を果たす。通常の状況下で、組織因子は血管壁の周皮細胞に位置し、循環に存在しないか、又は循環血液と接触しない。血管壁の完全性が破壊されると、組織因子は循環血液に暴露され、凝固カスケード反応を始動させることによって止血効果を発揮する。組織因子は263個のアミノ酸残基からなり、そのうち、アミノ端の219個のアミノ酸残基が細胞膜外に位置し、組織因子の活性部位である。
検討より明らかなように、該領域が遊離状態にある場合、凝固活性がないが、細胞膜にアンカーされて血液中に暴露されると、完全長因子と類似する血液凝固活性が発生するため、この配列は短縮型組織因子(tTF)と呼ばれる。この特徴に鑑み、腫瘍標的機能のある分子でtTFを特異的に腫瘍組織にアンカーすると、腫瘍血管に血栓を特異性的に形成し、腫瘍部位への血液供給および代謝産物排出のための経路を遮断し、腫瘍を治療する目的を達成できる。
【0004】
腫瘍標的分子pHLIPは35個のアミノ酸からなるポリペプチドである。体内(pH=7.35−7.45)で循環する場合、自在に延伸している状態にあり、特定の組織にアンカーできない。しかし、腫瘍(pH<7)部位に到達すると、酸に応答した立体配座変化が発生し、α−ヘリックス構造を形成し、且つ細胞膜と相互作用し、細胞膜に挿入して内皮細胞の表面にアンカーされる。
【0005】
それぞれの機能に影響しないように、上記した短縮型組織因子tTFと腫瘍標的分子pHLIPを融合タンパク質に組換えると、該融合タンパク質はpHLIPにより腫瘍血管内皮細胞の表面に位置決めされる。そして、腫瘍血管でtTFの血液凝固機能を発揮し、血栓を形成することにより、腫瘍部位への血液供給を遮断して、腫瘍を治療する目的を達成でき、腫瘍治療に対して重要な意義がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は腫瘍血管遮断剤であるポリペプチド、遺伝子、発現ベクター及びその腫瘍を治療する薬物の製造における使用方法を提供する。前記ポリペプチドは、上記tTFと腫瘍標的分子pHLIPを組換えてなる融合タンパク質であり、それぞれの機能に影響しないように両方が5個のアミノ酸により連結される。前記融合タンパク質はpHLIPにより腫瘍血管内皮細胞の表面に位置決めされ、腫瘍血管でtTFの血液凝固機能を発揮し、血栓を形成することにより、腫瘍部位への血液供給を遮断し、腫瘍を治療する目的を達成できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の内容を含む。
第1の側面において、本発明は配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する腫瘍血管遮断剤であるポリペプチドを提供する。
【0008】
ここで、配列番号1に示されるアミノ酸配列は具体的に、以下のとおりである。
SGTTNTVAAYNLTWKSTNFKTILEWEPKPVNQVYTVQISTKSGDWKSKCFYTTDTECDLTDEIVKDVKQTYLARVFSYPAGNVESTGSAGEPLYENSPEFTPYLETNLGQPTIQSFEQVGTKVNVTVEDERTLVRRNNTFLSLRDVFGKDLIYTLYYWKSSSSGKKTAKTNTNEFLIDVDKGENYCFSVQAVIPSRTVNRKSTDSPVECMGQEKGEFREGGGGSAEQNPIYWARYADWLFTTPLLLLDLALLVDADEGT(配列番号1)。
【0009】
前記腫瘍血管遮断剤であるポリペプチドは活性ドメイン、連結ドメインおよび標的ドメインを含み、それぞれ異なる機能を発揮する。
前記活性ドメインは219個のアミノ酸からなり、配列が以下のとおりである。
SGTTNTVAAYNLTWKSTNFKTILEWEPKPVNQVYTVQISTKSGDWKSKCFYTTDTECDLTDEIVKDVKQTYLARVFSYPAGNVESTGSAGEPLYENSPEFTPYLETNLGQPTIQSFEQVGTKVNVTVEDERTLVRRNNTFLSLRDVFGKDLIYTLYYWKSSSSGKKTAKTNTNEFLIDVDKGENYCFSVQAVIPSRTVNRKSTDSPVECMGQEKGEFRE(配列番号2)。
【0010】
前記活性ドメインの配列は組織因子の細胞膜外にあるアミノ酸残基の配列と同じで、遊離状態にある場合、凝固活性がないが、標的ペプチドにより腫瘍血管内皮細胞膜に位置決めされた場合、組織因子の機能を発揮し、血液凝固経路を活性化し、血栓の形成を誘発することになる。
【0011】
前記連結ドメインは5個のアミノ酸からなり、配列が以下のとおりである。
GGGGS(配列番号3)。
前記連結ドメインの配列は、発現した融合タンパク質の活性ドメインと標的ドメインの機能を完全に維持することを保証できる。
【0012】
前記標的ドメインは35個のアミノ酸からなり、配列が以下のとおりである。
AEQNPIYWARYADWLFTTPLLLLDLALLVDADEGT(配列番号4)。
前記標的ドメインの配列は腫瘍部位での弱酸性環境において立体配座変化が発生し、α−ヘリックス構造を形成し、細胞膜を貫通し、これにより、腫瘍血管の内皮細胞膜に位置決めされる。
【0013】
前記腫瘍血管遮断剤であるポリペプチドは、腫瘍弱酸性の特徴に応答でき、立体配座変化が発生し、腫瘍血管の内皮細胞に位置決めされ、且つ活性ドメインの凝固活性を活性化し、これにより、腫瘍血管で血栓を特異的に形成し、腫瘍成長を抑制して治療する目的を達成できる。正常な生理pH環境では、標的ドメインはα−ヘリックス構造を形成できず、膜貫通機能が無いため、活性ドメインを細胞に位置決めして活性ドメインに血液凝固活性を発揮させることができないことから、該当薬物分子は体内で循環する場合、正常部位での血管で血栓を形成することがなく、更に副作用の発生が回避できる。
【0014】
さらに、前記腫瘍血管遮断剤であるポリペプチドは腫瘍血管で直接作用でき、腫瘍組織まで浸透する必要がないため、使用量が減少され、薬剤耐性が発生しにくく、ポリペプチドの主要な部分は自体の組織因子の細胞外ドメインに由来するため、免疫原性が小さく、薬物が体内循環際の免疫除去を減少できる。
【0015】
本発明において、前記腫瘍血管遮断剤であるポリペプチドは、既に報告された他の腫瘍標的ペプチド介在組織因子に比べて、組織因子の天然の立体配座に近いため、血液凝固活性がより良好となる。
【0016】
第2の側面において、本発明は、前記腫瘍血管遮断剤であるポリペプチドをコーディングするヌクレオチド配列を有する腫瘍血管遮断剤遺伝子を提供する。
当業者にとって、コドンの縮重性によって、本発明に係る前記腫瘍血管遮断剤であるポリペプチドをコーディングするヌクレオチド配列は唯一ではなく、前記腫瘍血管遮断剤であるポリペプチドをコーディングして発現できるヌクレオチド配列は全て本発明の腫瘍血管遮断剤遺伝子であると理解すべきである。
それにもかかわらず、本発明は特に、配列番号5に示されるヌクレオチド配列を有する腫瘍血管遮断剤遺伝子を提供する。
【0017】
ここで、配列番号5に示されるヌクレオチド配列は具体的に、以下のとおりである。
TCAGGCACTACAAATACTGTGGCAGCATATAATTTAACTTGGAAATCAACTAATTTCAAGACAATTTTGGAGTGGGAACCCAAACCCGTCAATCAAGTCTACACTGTTCAAATAAGCACTAAGTCAGGAGATTGGAAAAGCAAATGCTTTTACACAACAGACACAGAGTGTGACCTCACCGACGAGATTGTGAAGGATGTGAAGCAGACGTACTTGGCACGGGTCTTCTCCTACCCGGCAGGGAATGTGGAGAGCACCGGTTCTGCTGGGGAGCCTCTGTATGAGAACTCCCCAGAGTTCACACCTTACCTGGAGACAAACCTCGGACAGCCAACAATTCAGAGTTTTGAACAGGTGGGAACAAAAGTGAATGTGACCGTAGAAGATGAACGGACTTTAGTCAGAAGGAACAACACTTTCCTAAGCCTCCGGGATGTTTTTGGCAAGGACTTAATTTATACACTTTATTATTGGAAATCTTCAAGTTCAGGAAAGAAAACAGCCAAAACAAACACTAATGAGTTTTTGATTGATGTGGATAAAGGAGAAAACTACTGTTTCAGTGTTCAAGCAGTGATTCCCTCCCGAACAGTTAACCGGAAGAGTACAGACAGCCCGGTAGAGTGTATGGGCCAGGAGAAAGGGGAATTCAGAGAAGGTGGTGGTGGTTCTGCTGAACAGAACCCGATCTACTGGGCTCGTTACGCTGACTGGCTGTTCACCACCCCGCTGCTGCTGCTGGACCTGGCTCTGCTGGTTGACGCTGACGAAGGTACC(配列番号5)。
【0018】
第3の側面において、本発明は、前記腫瘍血管遮断剤であるポリペプチドをコーディングするヌクレオチド配列を含む腫瘍血管遮断剤の発現ベクターを提供する。
当業者にとって、コドンの縮重性によって、本発明に係る前記腫瘍血管遮断剤であるポリペプチドをコーディングするヌクレオチド配列は唯一ではなく、前記腫瘍血管遮断剤であるポリペプチドをコーディングして発現できるヌクレオチド配列は全て本発明の腫瘍血管遮断剤遺伝子であると理解すべきである。従って、前記腫瘍血管遮断剤であるポリペプチドをコーディングして発現する発現ベクターは全て本発明の意図する保護範囲に含まれるものとする。
それにもかかわらず、本発明は特に上記配列番号5に示されるヌクレオチド配列を含む発現ベクターを提供する。
【0019】
当業者にとって、本発明は、発現ベクターに使用されるベクタープラスミドについて、特に限定がなく、当業者が本発明の遺伝子配列を基に、当業者の公知常識を結合して本発明の遺伝子発現に適するベクタープラスミドを選択できるためであると理解すべきである。
それにもかかわらず、本発明は特に一般的に使用されるpET30aベクタープラスミドであるベクタープラスミドを提供する。従って、本発明の発現ベクターとしては、pET30aベクタープラスミドで構築される発現ベクターが好ましく使用される。
【0020】
第4の側面において、本発明は前記腫瘍血管遮断剤であるポリペプチドの腫瘍治療薬の製造における使用方法を提供する。
本発明において、前記腫瘍血管遮断剤であるポリペプチドは、具体的に、対応した遺伝子配列を設計して融合タンパク質の発現プラスミドを構築し、例えばBL21大腸菌に移し、IPTGにより誘導発現して精製し、腫瘍標的性及び血液凝固活性を有する腫瘍血管遮断剤を得る。
【0021】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
(1)前記腫瘍血管遮断剤は主要な部分が自体の組織因子の細胞外ドメインに由来するため、免疫原性が小さく、免疫系の除去を良く回避できる。
(2)前記腫瘍血管遮断剤は、酸に応答した腫瘍標的ペプチドをうまく利用して組織因子を腫瘍血管の内皮細胞に位置決めするものであり、他のリガンド−受容体による組織因子の位置決め方法に比べて、組織因子の天然構造により近く、血液凝固活性がより良好となる。
(3)本発明は、標的分子を変えることで、他の出血性疾患に適用できるため、応用の将来性が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る腫瘍血管遮断剤であるポリペプチド(融合タンパク質)の組成構造ドメインの模式図(A)と融合タンパク質のSDS−PAGE電気泳動同定結果(B)であり、ここで、前記腫瘍血管遮断剤であるポリペプチドは、活性ドメイン、連結ドメイン及び標的ドメインの三つの部分を含み、Mはタンパク質の標準分子量、1は融合タンパク質のレーンを示し、矢印の指示する箇所は融合タンパク質である。
図2】本発明により提供される腫瘍血管遮断剤を尾静脈からヌードマウス乳癌腫瘍モデルに注入した12時間後の治療効果であり、ここで、(A)は生理食塩水(対照)を注射した担癌マウスの体外形態、(B)は対照腫瘍、(C)は対照腫瘍の病理学的切片(矢印は腫瘍血管を示し、血栓形成がない)、(D)は腫瘍血管遮断剤を注射した担癌マウスの体外形態、(E)は腫瘍血管遮断剤を注射した腫瘍、(F)は腫瘍血管遮断剤を注射した腫瘍病理学的切片(矢印は腫瘍血管を示し、明らかな血栓形成がある)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施例を結合して本発明の実施形態を詳細に説明する。当業者であれば、以下の実施例は本発明を理解しやすくするための本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
特に断らない限り、下記実施例の実験方法は常法であり、使用される実験材料は、一般的な生化学的試薬メーカーから入手されるものである。
【0024】
[実施例1:融合タンパク質プラスミドの構築]
まず、NCBIウェブサイトで組織因子の細胞外の219個のアミノ酸配列(配列番号2に示される)の遺伝子配列を調べて、次に、腫瘍標的ペプチド(配列番号3に示される)及び連結部でのアミノ酸配列について翻訳して遺伝子配列を取得し、配列番号5に示されるような融合タンパク質の遺伝子配列を得る。全遺伝子合成方式によって、融合タンパク質の遺伝子を合成し、且つ両端のそれぞれにNde IとXho Iの酵素切断部位を設計した。最後に、融合タンパク質の遺伝子を上記酵素切断部位によって、pET30aベクターに連結して、融合タンパク質の発現ベクターを得る。
【0025】
[実施例2:融合タンパク質の発現及び精製]
(1)融合タンパク質の発現
上記融合タンパク質の発現ベクターをBL21大腸菌に形質転換し、先ず5μLの菌液を5mLのLB液体培地に接種し、37℃、200×rpmで、16h振盪培養した。培養した菌液を500mLのLB液体培地に接種し、37℃、200×rpmで、OD=0.6〜0.8になるまで培養し、IPTG(0.5mM)により4h誘導発現した。
【0026】
(2)融合タンパク質の精製
上記IPTGにより誘導発現した菌液を遠心分離し(6000×rpm、5min)、上澄みを捨て、細菌を収集した。沈殿を25mLの10mM Tris−HCl(pH=8.0)溶液で吹き散らし、超音波で破砕し、12000×rpmで10min遠心分離し、上澄みを除去した後、25mLの10mM Tris−HCl(pH=8.0)溶液で超音波によって遠心して得た沈殿を再懸濁させ、10min静置した。上記操作を1回繰り返し、沈殿を得た。少量の10mM Tris−HCl(pH=8.0)溶液を加えて沈殿を再懸濁させた後、更に8M尿素を含有する10mM Tris−HCl(pH=8.0)溶液8mLを加えてタンパク質を溶解し、12000×rpmで10min遠心分離して、上澄みを収集した。
SDS−PAGE電気泳動によって融合タンパク質を同定した結果を図1(B)に示す。明瞭で純粋なバンドが形成されることが見られ、大きさが30KDa以上であり、予想と一致している。
【0027】
[実施例3:腫瘍血管遮断剤の効果実験]
本発明の実施例2で調製した腫瘍血管遮断剤を、833μg/kg体重又は20μg/匹マウスの量で尾静脈からヌードマウス乳癌腫瘍モデルに注入し、12時間後、治療効果を観察し、生理食塩水を注射するものを対照群とする。結果は図2に示される。
生理食塩水を注射した担癌マウス(A)に比べて、本発明の腫瘍血管遮断剤は、腫瘍部位で目視により見られる深紅色(D)を引き起こした。解剖したところ、対照群では、腫瘍(B)は正常な肉紅色であるのに対して、腫瘍血管遮断剤(E)を注射した腫瘍では、血栓に起因する明らかな暗赤色が見られた。腫瘍の病理学的切片では、対照群(C)に比べて、腫瘍血管遮断剤注射群(F)は、腫瘍血管に明らかな血栓(矢印で示される)が形成されていることが分かった。
【0028】
上記実施例により本発明の詳細な特徴及び詳細な方法を説明したが、本発明は上記詳細な特徴及び詳細な方法に制限されるものではない。即ち、本発明は上記詳細な特徴及び詳細な方法によってしか実施できないものではないことを出願人は主張する。
本発明に対するあらゆる改良、本発明の製品における各原料の均等置換及び補助成分の添加、具体的な形態の選択等は、全て本発明の保護範囲と開示範囲に属することを、当業者は了承すべきである。
図1
図2
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]