(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第二多孔質層において、前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂と前記ガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂とが相溶した状態で含まれている、請求項1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
前記第二多孔質層における前記ガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂の含有量が、前記第二多孔質層に含まれる全樹脂の総量の5質量%〜50質量%である、請求項1又は請求項2に記載の非水系二次電池用セパレータ。
前記接着性多孔質層において、前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂と前記ガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂とが相溶した状態で含まれている、請求項6に記載の非水系二次電池用セパレータ。
前記接着性多孔質層における前記ガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂の含有量が、前記接着性多孔質層に含まれる全樹脂の総量の5質量%〜50質量%である、請求項6又は請求項7に記載の非水系二次電池用セパレータ。
前記ガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂が、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂及び塩化ビニル系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置された請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータと、を備え、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、発明の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0017】
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0018】
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0019】
本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0020】
本開示において、「機械方向」とは、長尺状に製造される多孔質基材及びセパレータにおいて長尺方向を意味し、「幅方向」とは、「機械方向」に直交する方向を意味する。本開示において、「機械方向」を「MD方向」ともいい、「幅方向」を「TD方向」ともいう。
【0021】
本明細書において、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の「単量体単位」とは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の構成単位であって、単量体が重合してなる構成単位を意味する。
【0022】
<第一形態の非水系二次電池用セパレータ>
第一形態の非水系二次電池用セパレータ(「第一形態のセパレータ」ともいう。)は、多孔質基材と、多孔質基材の一方の面に設けられた第一多孔質層と、多孔質基材の他方の面に設けられた第二多孔質層を備える。第一形態のセパレータにおいて第一多孔質層及び第二多孔質層は、セパレータの最外層として存在し、電極と接着する層である。
【0023】
第一形態のセパレータにおいて第一多孔質層は、フッ化ビニリデン単量体単位及びヘキサフルオロプロピレン単量体単位を有し、ヘキサフルオロプロピレン単量体単位の含有量が全単量体単位の3質量%〜20質量%であり、且つ重量平均分子量が10万〜150万であるポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する。第一形態のセパレータにおいて第二多孔質層は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂と、ガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂とを含有する。
【0024】
以下、フッ化ビニリデン単量体単位を「VDF単位」ともいい、ヘキサフルオロプロピレン単量体単位を「HFP単位」ともいい、VDF単位及びHFP単位を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂を「VDF−HFP共重合体」ともいい、HFP単位の含有量が全単量体単位の3質量%〜20質量%であり且つ重量平均分子量が10万〜150万であるVDF−HFP共重合体を「特定VDF−HFP共重合体(1)」ともいう。
【0025】
第一形態のセパレータは、特定VDF−HFP共重合体(1)を含有する第一多孔質層と、ポリフッ化ビニリデン系樹脂及びガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂を含有する第二多孔質層とを備えることによって、ドライヒートプレスによる正極及び負極との接着に優れる。
【0026】
第一形態のセパレータは、以下の理由から、特定VDF−HFP共重合体(1)を含有する第一多孔質層を一方の面に備え、ポリフッ化ビニリデン系樹脂とガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂とを含有する第二多孔質層をもう一方の面に備える。
【0027】
正極は、一般的に、正極活物質及びバインダ樹脂を含む正極活物質層が集電体上に配置された構造を有し、正極活物質層のバインダ樹脂としては、主としてポリフッ化ビニリデン系樹脂が用いられる。一方、負極は、一般的に、負極活物質及びバインダ樹脂を含む負極活物質層が集電体上に配置された構造を有し、負極活物質層のバインダ樹脂としては、主としてスチレンブタジエンゴム又はポリフッ化ビニリデン系樹脂が用いられる。したがって、正極のバインダ樹脂と負極のバインダ樹脂との組合せとしては、双方が主としてポリフッ化ビニリデン系樹脂である形態と、一方が主としてポリフッ化ビニリデン系樹脂で他方が主としてスチレンブタジエンゴムである形態とが、一般的にあり得る。
【0028】
そこで、上記の2形態いずれにも対応するために、
(a)セパレータの多孔質層を両面ともポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む多孔質層としつつ、
(b)一方の多孔質層を、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の組成を制御することによって、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を主たるバインダ樹脂とする電極活物質層に対して、優れて接着する多孔質層(第一多孔質層)とし、
(c)他方の多孔質層を、ポリフッ化ビニリデン系樹脂以外の樹脂も共に含有させることによって、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を主たるバインダ樹脂とする電極活物質層に対しても、スチレンブタジエンゴムを主たるバインダ樹脂とする電極活物質層に対しても、優れて接着する多孔質層(第二多孔質層)とする。
【0029】
上記(b)は、具体的には、下記によって実現される。
【0030】
VDF−HFP共重合体は、HFP単位を含まないポリフッ化ビニリデンに比較し、加熱された際のポリマー鎖の運動性が高い。そこで、第一形態のセパレータは、第一多孔質層において、ポリフッ化ビニリデン系樹脂としてVDF−HFP共重合体を含む。VDF−HFP共重合体のHFP単位含有量が3質量%以上であると、ドライヒートプレスを行った際のポリマー鎖の運動性が高く、電極表面の凹凸にポリマー鎖が入り込んでアンカー効果が発現し、電極に対する第一多孔質層の接着を向上させる。この観点から、VDF−HFP共重合体のHFP単位含有量は、3質量%以上であり、5質量%以上がより好ましく、6質量%以上が更に好ましい。一方で、VDF−HFP共重合体のHFP単位含有量が20質量%以下であると、電解液に溶解しにくく過度に膨潤することもないので、電池内部において電極と第一多孔質層との接着が保たれる。この観点から、VDF−HFP共重合体のHFP単位含有量は、20質量%以下であり、18質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。
【0031】
さらに、上記(b)をより効果的に実現するために、VDF−HFP共重合体の重量平均分子量の範囲を下記のとおりに制御する。
【0032】
VDF−HFP共重合体のMwが10万以上であると、第一多孔質層が電極との接着処理に耐え得る力学特性を確保でき、電極との接着がよい。また、VDF−HFP共重合体のMwが10万以上であると、電解液に溶解しにくいので、電池内部において電極と第一多孔質層との接着が保たれる。これらの観点から、VDF−HFP共重合体のMwは、10万以上であり、20万以上がより好ましく、30万以上が更に好ましく、50万以上が更に好ましい。
【0033】
VDF−HFP共重合体のMwが150万以下であると、第一多孔質層の塗工成形に用いられる塗工液の粘度が高くなり過ぎず成形性及び結晶形成がよく、第一多孔質層の表面性状の均一性が高く、その結果として、電極に対する第一多孔質層の接着が良好である。また、VDF−HFP共重合体のMwが150万以下であると、ドライヒートプレスを行った際のポリマー鎖の運動性が高く、電極表面の凹凸にポリマー鎖が入り込んでアンカー効果が発現し、電極に対する第一多孔質層の接着を向上させる。これらの観点から、VDF−HFP共重合体のMwは、150万以下であり、120万以下がより好ましく、100万以下が更に好ましい。
【0034】
上記(c)は、具体的には、下記によって実現される。
【0035】
第二多孔質層は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂と、ガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂とを含有する。ガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂が、ドライヒートプレスの際に第二多孔質層の流動性を高めるので、電極表面の凹凸にポリマー鎖が入り込んでアンカー効果が発現し、電極に対する第二多孔質層の接着を向上させる。ガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂のガラス転移温度は、ドライヒートプレスの熱印加によって流動性を発現する観点から、120℃以下であり、115℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましく、第二多孔質層の耐熱性を確保する観点から、30℃以上であり、35℃以上がより好ましく、40℃以上が更に好ましい。
【0036】
第一形態のセパレータは、電池を製造する際において、第一多孔質層及び第二多孔質層の一方を正極に対向させ他方を負極に対向させる。どちらの多孔質層を正極に対向させてもよく、正極活物質層の材料又は負極活物質層の材料に応じて選択すればよい。正極活物質層にバインダ樹脂としてポリフッ化ビニリデン系樹脂が含まれ、負極活物質層にバインダ樹脂としてスチレンブタジエンゴムが含まれる電池においては、第一形態のセパレータは、第一多孔質層を正極に対向させ、第二多孔質層を負極に対向させて配置されることが好ましい。
【0037】
第一形態のセパレータは、ドライヒートプレスによる正極及び負極との接着に優れるが故に、電池の製造工程において電極と位置ずれしにくくなり、電池の製造歩留りを向上させる。
【0038】
第一形態のセパレータは、ドライヒートプレスによる正極及び負極との接着に優れるが故に、電池のサイクル特性(容量維持率)を向上させる。
【0039】
以下に、第一形態のセパレータが有する多孔質基材、第一多孔質層及び第二多孔質層の詳細を説明する。
【0040】
[多孔質基材]
本開示において多孔質基材とは、内部に空孔ないし空隙を有する基材を意味する。このような基材としては、微多孔膜;繊維状物からなる、不織布、紙等の多孔性シート;これら微多孔膜や多孔性シートに他の多孔性の層を1層以上積層した複合多孔質シート;などが挙げられる。多孔質基材としては、セパレータの薄膜化及び強度の観点から、微多孔膜が好ましい。微多孔膜とは、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となった膜を意味する。
【0041】
多孔質基材の材料としては、電気絶縁性を有する材料が好ましく、有機材料及び無機材料のいずれでもよい。
【0042】
多孔質基材は、多孔質基材にシャットダウン機能を付与するため、熱可塑性樹脂を含むことが望ましい。シャットダウン機能とは、電池温度が高まった際に、構成材料が溶解して多孔質基材の孔を閉塞することによりイオンの移動を遮断し、電池の熱暴走を防止する機能をいう。熱可塑性樹脂としては、融点200℃未満の熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;などが挙げられ、中でもポリオレフィンが好ましい。
【0043】
多孔質基材としては、ポリオレフィンを含む微多孔膜(「ポリオレフィン微多孔膜」という。)が好ましい。ポリオレフィン微多孔膜としては、例えば、従来の電池セパレータに適用されているポリオレフィン微多孔膜が挙げられ、この中から十分な力学特性とイオン透過性を有するものを選択することが好ましい。
【0044】
ポリオレフィン微多孔膜は、シャットダウン機能を発現する観点から、ポリエチレンを含むことが好ましく、ポリエチレンの含有量としては、ポリオレフィン微多孔膜全体の質量の95質量%以上が好ましい。
【0045】
ポリオレフィン微多孔膜は、高温に曝されたときに容易に破膜しない程度の耐熱性を付与する観点からは、ポリエチレン及びポリプロピレンを含むポリオレフィン微多孔膜が好ましい。このようなポリオレフィン微多孔膜としては、ポリエチレンとポリプロピレンが1つの層において混在している微多孔膜が挙げられる。該微多孔膜においては、シャットダウン機能と耐熱性の両立という観点から、95質量%以上のポリエチレンと5質量%以下のポリプロピレンとを含むことが好ましい。また、シャットダウン機能と耐熱性の両立という観点からは、2層以上の積層構造を備え、少なくとも1層はポリエチレンを含み、少なくとも1層はポリプロピレンを含む構造のポリオレフィン微多孔膜も好ましい。
【0046】
ポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンとしては、重量平均分子量(Mw)が10万〜500万のポリオレフィンが好ましい。ポリオレフィンのMwが10万以上であると、微多孔膜に十分な力学特性を付与できる。一方、ポリオレフィンのMwが500万以下であると、微多孔膜のシャットダウン特性が良好であるし、微多孔膜の成形がしやすい。
【0047】
ポリオレフィン微多孔膜の製造方法としては、溶融したポリオレフィン樹脂をT−ダイから押し出してシート化し、これを結晶化処理した後延伸し、次いで熱処理をして微多孔膜とする方法:流動パラフィンなどの可塑剤と一緒に溶融したポリオレフィン樹脂をT−ダイから押し出し、これを冷却してシート化し、延伸した後、可塑剤を抽出し熱処理をして微多孔膜とする方法;などが挙げられる。
【0048】
繊維状物からなる多孔性シートとしては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド等の耐熱性樹脂;セルロース;などの繊維状物からなる、不織布、紙等の多孔性シートが挙げられる。耐熱性樹脂とは、融点が200℃以上の樹脂、又は、融点を有さず分解温度が200℃以上の樹脂を指す。
【0049】
複合多孔質シートとしては、微多孔膜や繊維状物からなる多孔性シートに、機能層を積層したシートが挙げられる。このような複合多孔質シートは、機能層によってさらなる機能付加が可能となる観点から好ましい。機能層としては、例えば耐熱性を付与するという観点からは、耐熱性樹脂からなる多孔性の層や、耐熱性樹脂及び無機フィラーからなる多孔性の層が挙げられる。耐熱性樹脂としては、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン及びポリエーテルイミドから選ばれる1種又は2種以上の耐熱性樹脂が挙げられる。無機フィラーとしては、アルミナ等の金属酸化物;水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;などが挙げられる。複合化の手法としては、微多孔膜や多孔性シートに機能層を塗工する方法、微多孔膜や多孔性シートと機能層とを接着剤で接合する方法、微多孔膜や多孔性シートと機能層とを熱圧着する方法等が挙げられる。
【0050】
多孔質基材の表面には、多孔質層を形成するための塗工液との濡れ性を向上させる目的で、多孔質基材の性質を損なわない範囲で、各種の表面処理を施してもよい。表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線照射処理等が挙げられる。
【0051】
[多孔質基材の特性]
多孔質基材の厚さは、良好な力学特性と内部抵抗を得る観点から、5μm〜25μmが好ましい。
【0052】
多孔質基材のガーレ値(JIS P8117:2009)は、電池の短絡の抑制及び十分なイオン透過性を得る観点から、50秒/100cc〜200秒/100ccが好ましい。
【0053】
多孔質基材の空孔率は、適切な膜抵抗やシャットダウン機能を得る観点から、20%〜60%が好ましい。多孔質基材の空孔率は、下記の算出方法に従って求める。即ち、構成材料がa、b、c、…、nであり、各構成材料の質量がWa、Wb、Wc、…、Wn(g/cm
2)であり、各構成材料の真密度がda、db、dc、…、dn(g/cm
3)であり、膜厚をt(cm)としたとき、空孔率ε(%)は以下の式より求められる。
ε={1−(Wa/da+Wb/db+Wc/dc+…+Wn/dn)/t}×100
【0054】
多孔質基材の突刺強度は、セパレータの製造歩留り及び電池の製造歩留りを向上させる観点から、300g以上が好ましい。多孔質基材の突刺強度は、カトーテック社KES−G5ハンディー圧縮試験器を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/secの条件で突刺試験を行って測定する最大突刺荷重(g)を指す。
【0055】
[第一多孔質層及び第二多孔質層]
第一多孔質層及び第二多孔質層は、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となっている。
【0056】
第一多孔質層及び第二多孔質層はそれぞれ、セパレータの最外層として多孔質基材上に設けられた層であり、セパレータと電極とを重ねてプレス又は熱プレスしたときに電極と接着する層である。
【0057】
第一多孔質層は、多孔質基材の一方の面に設けられた、少なくとも特定VDF−HFP共重合体(1)を含有する多孔質層である。第一多孔質層は、さらに、特定VDF−HFP共重合体(1)以外の樹脂、無機フィラー、有機フィラー等を含んでもよい。
【0058】
第二多孔質層は、多孔質基材のもう一方の面に設けられた、少なくともポリフッ化ビニリデン系樹脂とガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂とを含有する多孔質層である。第二多孔質層は、さらに、上記以外の樹脂、無機フィラー、有機フィラー等を含んでもよい。
【0059】
・ポリフッ化ビニリデン系樹脂
ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体(即ちポリフッ化ビニリデン);フッ化ビニリデンと他の共重合可能なモノマーとの共重合体(ポリフッ化ビニリデン共重合体);これらの混合物;が挙げられる。フッ化ビニリデンと共重合可能なモノマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリクロロエチレン、フッ化ビニル等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。
【0060】
第二多孔質層に含まれるポリフッ化ビニリデン系樹脂は、重量平均分子量(Mw)が10万〜300万であることが好ましい。ポリフッ化ビニリデン系樹脂のMwが10万以上であると、第二多孔質層の力学特性が優れる。一方、ポリフッ化ビニリデン系樹脂のMwが300万以下であると、第二多孔質層の塗工成形に用いられる塗工液の粘度が高くなり過ぎず成形性及び結晶形成がよく、第二多孔質層の多孔化が良好である。ポリフッ化ビニリデン系樹脂のMwは、より好ましくは30万〜200万であり、更に好ましくは50万〜150万である。
【0061】
第二多孔質層に含まれるポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、電極に対する接着性の観点から、VDF−HFP共重合体が好ましい。ヘキサフルオロプロピレンをフッ化ビニリデンと共重合することで、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の結晶性、耐熱性、電解液に対する耐溶解性などを適度な範囲に制御できる。
【0062】
第二多孔質層に含まれるポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、HFP単位の含有量が全単量体単位の3質量%〜20質量%であり且つ重量平均分子量(Mw)が10万〜150万であるポリフッ化ビニリデン系樹脂、すなわち特定VDF−HFP共重合体(1)が好ましい。その理由は、第一多孔質層に特定VDF−HFP共重合体(1)を適用する理由と同じである。
【0063】
第二多孔質層の実施形態例においては、特定VDF−HFP共重合体(1)が、第二多孔質層に含まれるポリフッ化ビニリデン系樹脂の総量の90質量%以上を占めることがあり、95質量%以上を占めることがあり、100質量%を占めることがある。
【0064】
・特定VDF−HFP共重合体(1)
特定VDF−HFP共重合体(1)には、VDF単位とHFP単位のみを有する共重合体、及び、さらに他の単量体単位を有する共重合体のいずれも含まれる。他の単量体単位を形成する単量体としては、例えば、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル等の含フッ素単量体が挙げられ、これら単量体の1種又は2種以上に由来する単量体単位が特定VDF−HFP共重合体(1)に含まれていてもよい。特定VDF−HFP共重合体(1)としては、VDF単位とHFP単位のみを有する二元共重合体が好ましい。
【0065】
特定VDF−HFP共重合体(1)は、HFP単位の含有量が全単量体単位の3質量%〜20質量%である。特定VDF−HFP共重合体(1)におけるHFP単位含有量は、下限としては、5質量%以上がより好ましく、6質量%以上が更に好ましく、上限としては、18質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。
【0066】
特定VDF−HFP共重合体(1)は、重量平均分子量(Mw)が10万〜150万である。特定VDF−HFP共重合体(1)のMwは、下限としては、20万以上がより好ましく、30万以上が更に好ましく、50万以上が更に好ましく、上限としては、120万以下がより好ましく、100万以下が更に好ましい。
【0067】
特定VDF−HFP共重合体(1)を製造する方法としては、乳化重合や懸濁重合が挙げられる。また、HFP単位の含有量及び重量平均分子量を満足する市販のVDF−HFP共重合体を選択することも可能である。
【0068】
第一多孔質層の実施形態例においては、特定VDF−HFP共重合体(1)が、第一多孔質層に含まれる全樹脂の総量の90質量%以上を占めることがあり、95質量%以上を占めることがあり、100質量%を占めることがある。
【0069】
・ガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂
ガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂としては、ドライヒートプレスによる電極との接着がより良好になる観点から、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂及び塩化ビニル系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0070】
アクリル系樹脂としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル等のアクリル酸エステルを単独重合した又は共重合した重合体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステルを単独重合した又は共重合した重合体;少なくとも1種のアクリル酸エステルと少なくとも1種のメタクリル酸エステルとの共重合体;アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種と、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等から選ばれる少なくとも1種とを共重合した共重合体;が挙げられる。
【0071】
アクリル系樹脂としては、メタクリル酸メチルを主たる重合成分とする樹脂であるポリメタクリル酸メチル樹脂(polymethyl methacrylate、PMMA)が好ましい。PMMAは、メタクリル酸メチルの単独重合体でもよく、メタクリル酸メチル以外の他の単量体が共重合した共重合体でもよく、共重合される他の単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸、及びメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0072】
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は5万〜100万が好ましい。アクリル系樹脂のMwが5万以上であると、製膜性がよく、また、第二多孔質層の特性が優れる。一方、アクリル系樹脂のMwが100万以下であると、第二多孔質層の塗工成形に用いられる塗工液の粘度が高くなり過ぎず、セパレータの生産性が向上する。
【0073】
酢酸ビニル系樹脂としては、例えば、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニル(polyvinyl acetate、PVAc);酢酸ビニルと、不飽和カルボン酸、オレフィン、ビニルエーテル、不飽和スルホン酸等から選ばれる少なくとも1種との共重合体;などが挙げられる。
【0074】
酢酸ビニル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は5万〜50万が好ましい。酢酸ビニル系樹脂のMwが5万以上であると、製膜性がよく、また、第二多孔質層の特性が優れる。一方、酢酸ビニル系樹脂のMwが50万以下であると、第二多孔質層の塗工成形に用いられる塗工液の粘度が高くなり過ぎず、セパレータの生産性が向上する。
【0075】
塩化ビニル系樹脂としては、単独重合体でも共重合体でもよく、例えば、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソプレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−ビニルエーテル共重合体等が挙げられる。
【0076】
塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は5000〜15万が好ましい。塩化ビニル系樹脂のMwが5000以上であると、製膜性がよく、また、第二多孔質層の特性が優れる。一方、塩化ビニル系樹脂のMwが15万以下であると、第二多孔質層の塗工成形に用いられる塗工液の粘度が高くなり過ぎず、セパレータの生産性が向上する。
【0077】
第二多孔質層は、ガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂を1種のみ含んでもよく、2種以上含んでもよい。
【0078】
第二多孔質層におけるガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂の含有量は、多孔質基材と第二多孔質層との間の剥離強度を高める観点から、第二多孔質層に含まれる全樹脂の総量の、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、15質量%以上が更に好ましい。一方、第二多孔質層の凝集破壊を抑制する観点から、第二多孔質層に含まれる全樹脂の総量の、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、35質量%以下が更に好ましい。
【0079】
第二多孔質層において、ポリフッ化ビニリデン系樹脂と、ガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂とが成す形態としては、(a)前者と後者とが相溶した形態;(b)前者の連続相中に後者が分散相として存在する形態;(c)前者の連続相中に後者が粒子状に分散して存在する形態;などが挙げられ、中でも(a)が好ましい。(a)であると、孔の形状及び大きさの均一性が高まり、電極に対する接着点が第二多孔質層表面に均一性高く散在することになり、電極との接着性に優れる。(a)、(b)及び(c)は、第二多孔質層の断面を電子顕微鏡で観察することにより確認できる。
【0080】
第二多孔質層の実施形態例においては、ポリフッ化ビニリデン系樹脂とガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂との合計が、第二多孔質層に含まれる全樹脂の総量の90質量%以上を占めることがあり、95質量%以上を占めることがあり、100質量%を占めることがある。
【0081】
・その他の樹脂
第一多孔質層は、特定VDF−HFP共重合体(1)以外のその他の樹脂を含んでいてもよい。第二多孔質層は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂及びガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂以外のその他の樹脂を含んでいてもよい。
【0082】
第一多孔質層又は第二多孔質層に含まれることがある樹脂としては、フッ素系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、ビニルニトリル化合物(アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)の単独重合体又は共重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等)などが挙げられる。
【0083】
・フィラー
第一多孔質層又は第二多孔質層は、セパレータの滑り性や耐熱性を向上させる目的で、無機物又は有機物からなるフィラーを含んでいてもよい。その場合、第一形態の効果を妨げない程度の含有量や粒子サイズとすることが好ましい。フィラーとしては、セル強度の向上及び電池の安全性確保の観点から、無機フィラーが好ましい。
【0084】
フィラーの平均粒子径は、0.01μm〜5μmが好ましい。その下限値としては0.1μm以上がより好ましく、上限値としては1μm以下がより好ましい。
【0085】
無機フィラーとしては、電解液に対して安定であり、且つ、電気化学的に安定な無機フィラーが好ましい。具体的には例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化クロム、水酸化ジルコニウム、水酸化セリウム、水酸化ニッケル、水酸化ホウ素等の金属水酸化物;アルミナ、チタニア、マグネシア、シリカ、ジルコニア、チタン酸バリウム等の金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩;ケイ酸カルシウム、タルク等の粘土鉱物;などが挙げられる。これらの無機フィラーは、1種を単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。無機フィラーは、シランカップリング剤等により表面修飾されたものでもよい。
【0086】
無機フィラーとしては、電池内での安定性及び電池の安全性確保の観点から、金属水酸化物及び金属酸化物の少なくとも1種が好ましく、難燃性付与や除電効果の観点から、金属水酸化物が好ましく、水酸化マグネシウムが更に好ましい。
【0087】
無機フィラーの粒子形状には制限はなく、球に近い形状でもよく、板状の形状でもよいが、電池の短絡抑制の観点からは、板状の粒子や、凝集していない一次粒子であることが好ましい。
【0088】
第一多孔質層又は第二多孔質層に無機フィラーが含まれている場合、第一多孔質層又は第二多孔質層における無機フィラーの含有量は、各多孔質層に含まれる全樹脂と無機フィラーの合計量の5質量%〜75質量%が好ましい。無機フィラーの含有量が5質量%以上であると、熱が印加された際にセパレータの熱収縮が抑制され寸法安定性の観点から好ましい。本観点から、無機フィラーの含有量は、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。一方、無機フィラーの含有量が75質量%以下であると、多孔質層の電極への接着が確保される観点から好ましい。本観点から、無機フィラーの含有量は、70質量%以下がより好ましく、65質量%以下が更に好ましい。
【0089】
有機フィラーとしては、例えば、架橋ポリメタクリル酸メチル等の架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチレンなどが挙げられ、架橋ポリメタクリル酸メチルが好ましい。
【0090】
・その他の成分
第一多孔質層及び第二多孔質層は、界面活性剤等の分散剤、湿潤剤、消泡剤、pH調整剤などの添加剤を含んでいてもよい。分散剤は、多孔質層の塗工成形に用いられる塗工液に、分散性、塗工性及び保存安定性を向上させる目的で添加される。湿潤剤、消泡剤、pH調整剤は、多孔質層の塗工成形に用いられる塗工液に、例えば、多孔質基材とのなじみをよくする目的、塗工液へのエア噛み込みを抑制する目的、又はpH調整の目的で添加される。
【0091】
[第一多孔質層及び第二多孔質層の特性]
以下において、第一多孔質層と第二多孔質層とに共通する特性を説明する場合、双方をまとめて「多孔質層」という。
【0092】
多孔質層の厚さは、多孔質基材の片面において、電極との接着性の観点から、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、電池のエネルギー密度の観点から、8.0μm以下が好ましく、6.0μm以下がより好ましい。
【0093】
第一多孔質層の厚さと、第二多孔質層の厚さとの差は、両面合計の厚さの20%以下であることが好ましく、低いほど好ましい。
【0094】
多孔質層の重量は、多孔質基材の片面において、電極との接着性の観点から、0.5g/m
2以上が好ましく、0.75g/m
2以上がより好ましく、イオン透過性の観点から、5.0g/m
2以下が好ましく、4.0g/m
2以下がより好ましい。
【0095】
多孔質層の空孔率は、イオン透過性の観点から、30%以上が好ましく、力学的強度の観点から、80%以下が好ましく、60%以下がより好ましい。第一形態における多孔質層の空孔率の求め方は、多孔質基材の空孔率の求め方と同様である。
【0096】
多孔質層の平均孔径は、イオン透過性の観点から、10nm以上が好ましく、電極との接着性の観点から、200nm以下が好ましい。第一形態における多孔質層の平均孔径は、すべての孔が円柱状であると仮定し、下記の式によって算出する。式中、dは多孔質層の平均孔径(直径)を表し、Vは多孔質層1m
2当たりの空孔体積を表し、Sは多孔質層1m
2当たりの空孔表面積を表す。
d=4V/S
【0097】
多孔質層1m
2当たりの空孔体積Vは、多孔質層の空孔率から算出する。
【0098】
多孔質層1m
2当たりの空孔表面積Sは、次の方法で求める。まず、多孔質基材の比表面積(m
2/g)とセパレータの比表面積(m
2/g)とを、窒素ガス吸着法にBET式を適用することにより、窒素ガス吸着量から算出する。これらの比表面積(m
2/g)にそれぞれの目付(g/m
2)を乗算して、それぞれの1m
2当たりの空孔表面積を算出する。そして、多孔質基材1m
2当たりの空孔表面積をセパレータ1m
2当たりの空孔表面積から減算して、多孔質層1m
2当たりの空孔表面積Sを算出する。
【0099】
多孔質基材と多孔質層との間の剥離強度は、0.20N/10mm以上が好ましい。該剥離強度が0.20N/10mm以上であると、電池の製造工程においてセパレータのハンドリング性に優れる。この観点からは、該剥離強度は、0.30N/10mm以上がより好ましく、高いほど好ましい。該剥離強度の上限は制限されるものではないが、通常は2.0N/10mm以下である。
【0100】
[第一形態のセパレータの特性]
第一形態のセパレータの厚さは、機械的強度の観点からは、5μm以上が好ましく、電池のエネルギー密度の観点からは、35μm以下が好ましい。
【0101】
第一形態のセパレータの突刺強度は、250g〜1000gが好ましく、300g〜600gがより好ましい。セパレータの突刺強度の測定方法は、多孔質基材の突刺強度の測定方法と同様である。
【0102】
第一形態のセパレータの空孔率は、電極に対する接着性、ハンドリング性、イオン透過性、及び機械的強度の観点から、30%〜65%が好ましく、30%〜60%がより好ましい。
【0103】
第一形態のセパレータのガーレ値(JIS P8117:2009)は、機械的強度と電池の負荷特性の観点から、100秒/100cc〜300秒/100ccが好ましい。
【0104】
[第一形態のセパレータの製造方法]
第一形態のセパレータは、例えば、下記工程(i)〜(iv)を有する湿式塗工法によって製造することができる。
【0105】
(i)特定VDF−HFP共重合体(1)を含む第一塗工液を多孔質基材の一方の面に塗工し、第一塗工層を形成する工程。
(ii)ポリフッ化ビニリデン系樹脂及びガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂を含む第二塗工液を多孔質基材の他方の面に塗工し、第二塗工層を形成する工程。
(iii)第一塗工層及び第二塗工層を形成した多孔質基材を凝固液に浸漬し、第一塗工層及び第二塗工層において相分離を誘発しつつ樹脂を固化させ、多孔質基材上に第一多孔質層及び第二多孔質層を形成し、複合膜を得る工程。
(iv)複合膜を水洗及び乾燥する工程。
【0106】
以下において、第一塗工液と第二塗工液とに共通する事項を説明する場合、双方をまとめて「塗工液」といい、第一塗工層と第二塗工層とに共通する事項を説明する場合、双方をまとめて「塗工層」といい、第一多孔質層と第二多孔質層とに共通する事項を説明する場合、双方をまとめて「多孔質層」という。
【0107】
塗工液は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂及びその他の樹脂を溶媒に溶解又は分散させて調製する。多孔質層にフィラーを含有させる場合は、それぞれの塗工液中にフィラーを分散させる。
【0108】
塗工液の調製に用いる溶媒は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解する溶媒(以下、「良溶媒」ともいう。)を含む。良溶媒としては、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド等の極性アミド溶媒が挙げられる。
【0109】
塗工液の調製に用いる溶媒は、良好な多孔構造を有する多孔質層を形成する観点から、相分離を誘発させる相分離剤を含むことが好ましい。したがって、塗工液の調製に用いる溶媒は、良溶媒と相分離剤との混合溶媒であることが好ましい。相分離剤は、塗工に適切な粘度が確保できる範囲の量で良溶媒と混合することが好ましい。相分離剤としては、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0110】
塗工液の調製に用いる溶媒としては、良好な多孔構造を形成する観点から、良溶媒と相分離剤との混合溶媒であって、良溶媒を60質量%以上含み、相分離剤を40質量%以下含む混合溶媒が好ましい。
【0111】
塗工液の樹脂濃度は、良好な多孔構造を形成する観点から、1質量%〜20質量%が好ましい。
【0112】
多孔質基材への塗工液の塗工手段としては、マイヤーバー、ダイコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター等が挙げられる。生産性の観点からは、第一塗工液と第二塗工液とを同時に多孔質基材へ塗工することが好ましい。
【0113】
凝固液は、塗工液の調製に用いた良溶媒及び相分離剤と、水とを含むことが一般的である。良溶媒と相分離剤の混合比は、塗工液の調製に用いた混合溶媒の混合比に合わせるのが生産上好ましい。凝固液中の水の含有量は40質量%〜90質量%であることが、多孔構造の形成および生産性の観点から好ましい。凝固液の温度は、例えば20℃〜50℃である。
【0114】
第一形態のセパレータは、乾式塗工法でも製造し得る。乾式塗工法とは、樹脂を含む塗工液を多孔質基材に塗工して塗工層を形成した後、塗工層を乾燥させて塗工層を固化させ、多孔質基材上に多孔質層を形成する方法である。ただし、乾式塗工法は湿式塗工法と比べて多孔質層が緻密になりやすいので、良好な多孔構造を得られる観点から湿式塗工法の方が好ましい。
【0115】
第一形態のセパレータは、多孔質層を独立したシートとして作製し、この多孔質層を多孔質基材に重ねて、熱圧着や接着剤によって積層する方法によっても製造し得る。多孔質層を独立したシートとして作製する方法としては、上述した湿式塗工法又は乾式塗工法を適用して剥離シート上に多孔質層を形成し、多孔質層から剥離シートを剥離する方法が挙げられる。
【0116】
<第二形態の非水系二次電池用セパレータ>
第二形態の非水系二次電池用セパレータ(「第二形態のセパレータ」ともいう。)は、多孔質基材と、多孔質基材の片面又は両面に設けられた接着性多孔質層とを備える。
【0117】
第二形態のセパレータにおいて接着性多孔質層は、フッ化ビニリデン単量体単位及びヘキサフルオロプロピレン単量体単位を有し、ヘキサフルオロプロピレン単量体単位の含有量が全単量体単位の5質量%〜20質量%であり、且つ重量平均分子量が10万〜150万であるポリフッ化ビニリデン系樹脂と、ガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂とを含有する。当該接着性多孔質層は、多孔質基材の片面のみに有ってもよく、多孔質基材の両面に有ってもよい。当該接着性多孔質層が多孔質基材の片面のみに有る場合、多孔質基材のもう一方の面には、層が無くてもよく、他の層が有ってもよい。
【0118】
以下、フッ化ビニリデン単量体単位を「VDF単位」ともいい、ヘキサフルオロプロピレン単量体単位を「HFP単位」ともいい、VDF単位及びHFP単位を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂を「VDF−HFP共重合体」ともいい、HFP単位の含有量が全単量体単位の5質量%〜20質量%であり且つ重量平均分子量が10万〜150万であるVDF−HFP共重合体を「特定VDF−HFP共重合体(2)」ともいう。
【0119】
第二形態のセパレータにおいて接着性多孔質層は、セパレータの最外層として存在し、電極と接着する層である。
【0120】
第二形態のセパレータは、特定VDF−HFP共重合体(2)とガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂とを含有する接着性多孔質層を備えることによって、ドライヒートプレスによる電極との接着に優れる。このメカニズムは、必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。
【0121】
接着性多孔質層に含まれるポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、電極に対する接着性の観点から、VDF−HFP共重合体が好ましい。ヘキサフルオロプロピレンをフッ化ビニリデンと共重合することで、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の結晶性、耐熱性、電解液に対する耐溶解性などを適度な範囲に制御できる。第二形態のセパレータは、以下の理由から、HFP単位の含有量が全単量体単位の5質量%〜20質量%であり且つ重量平均分子量(Mw)が10万〜150万である特定VDF−HFP共重合体(2)を接着性多孔質層に含む。
【0122】
VDF−HFP共重合体のHFP単位含有量が5質量%以上であると、ドライヒートプレスを行った際のポリマー鎖の運動性が高く、電極表面の凹凸にポリマー鎖が入り込んでアンカー効果が発現し、電極に対する接着性多孔質層の接着を向上させる。この観点から、VDF−HFP共重合体のHFP単位含有量は、5質量%以上であり、5.5質量%以上がより好ましく、6質量%以上が更に好ましい。
【0123】
VDF−HFP共重合体のHFP単位含有量が20質量%以下であると、電解液に溶解しにくく過度に膨潤することもないので、電池内部において電極と接着性多孔質層との接着が保たれる。この観点から、VDF−HFP共重合体のHFP単位含有量は、20質量%以下であり、18質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。
【0124】
VDF−HFP共重合体のMwが10万以上であると、接着性多孔質層が電極との接着処理に耐え得る力学特性を確保でき、電極との接着がよい。また、VDF−HFP共重合体のMwが10万以上であると、電解液に溶解しにくいので、電池内部において電極と接着性多孔質層との接着が保たれる。これらの観点から、VDF−HFP共重合体のMwは、10万以上であり、20万以上がより好ましく、30万以上が更に好ましく、50万以上が更に好ましい。
【0125】
VDF−HFP共重合体のMwが150万以下であると、接着性多孔質層の塗工成形に用いられる塗工液の粘度が高くなり過ぎず成形性及び結晶形成がよく、接着性多孔質層の表面性状の均一性が高く、その結果として、電極に対する接着性多孔質層の接着が良好である。また、VDF−HFP共重合体のMwが150万以下であると、ドライヒートプレスを行った際のポリマー鎖の運動性が高く、電極表面の凹凸にポリマー鎖が入り込んでアンカー効果が発現し、電極に対する接着性多孔質層の接着を向上させる。これらの観点から、VDF−HFP共重合体のMwは、150万以下であり、120万以下がより好ましく、100万以下が更に好ましい。
【0126】
加えて、第二形態のセパレータは、接着性多孔質層に含まれるガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂が、ドライヒートプレスの際に接着性多孔質層の流動性を高めるので、電極表面の凹凸にポリマー鎖が入り込んでアンカー効果が発現し、電極に対する接着性多孔質層の接着を向上させる。ガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂のガラス転移温度は、ドライヒートプレスの熱印加によって流動性を発現する観点から、120℃以下であり、115℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましく、接着性多孔質層の耐熱性を確保する観点から、30℃以上であり、35℃以上がより好ましく、40℃以上が更に好ましい。
【0127】
第二形態のセパレータは、ドライヒートプレスによる電極との接着に優れるが故に、電池の製造工程において電極と位置ずれしにくくなり、電池の製造歩留りを向上させる。
【0128】
第二形態のセパレータは、ドライヒートプレスによる電極との接着に優れるが故に、電池のサイクル特性(容量維持率)を向上させる。
【0129】
以下に、第二形態のセパレータを構成する構成要素、及び構成要素に含まれる成分について説明する。
【0130】
[多孔質基材]
第二形態における多孔質基材は、第一形態における多孔質基材と同義である。第二形態における多孔質基材の具体的形態及び好ましい形態は、第一形態における多孔質基材の具体的形態及び好ましい形態と同じである。
【0131】
[接着性多孔質層]
第二形態において接着性多孔質層は、多孔質基材の片面又は両面にセパレータの最外層として設けられ、セパレータと電極とを重ねてプレス又は熱プレスしたときに電極と接着する層である。
【0132】
第二形態において接着性多孔質層は、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となっている。
【0133】
第二形態において接着性多孔質層は、多孔質基材の片面又は両面に設けられた、少なくとも特定VDF−HFP共重合体(2)とガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂とを含有する多孔質層である。接着性多孔質層は、さらに、上記以外の樹脂、無機フィラー、有機フィラー等を含んでもよい。
【0134】
第二形態において接着性多孔質層は、多孔質基材の片面のみにあるよりも両面にある方が、電池のサイクル特性が優れる観点から好ましい。接着性多孔質層が多孔質基材の両面にあると、セパレータの両面が接着性多孔質層を介して両電極とよく接着するからである。
【0135】
・特定VDF−HFP共重合体(2)
特定VDF−HFP共重合体(2)には、VDF単位とHFP単位のみを有する共重合体、及び、さらに他の単量体単位を有する共重合体のいずれも含まれる。他の単量体単位を形成する単量体としては、例えば、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル等の含フッ素単量体が挙げられ、これら単量体の1種又は2種以上に由来する単量体単位が特定VDF−HFP共重合体(2)に含まれていてもよい。特定VDF−HFP共重合体(2)としては、VDF単位とHFP単位のみを有する二元共重合体が好ましい。
【0136】
特定VDF−HFP共重合体(2)は、HFP単位の含有量が全単量体単位の5質量%〜20質量%である。特定VDF−HFP共重合体(2)におけるHFP単位含有量は、下限としては、5.5質量%以上がより好ましく、6質量%以上が更に好ましく、上限としては、18質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。
【0137】
特定VDF−HFP共重合体(2)は、重量平均分子量(Mw)が10万〜150万である。特定VDF−HFP共重合体(2)のMwは、下限としては、20万以上がより好ましく、30万以上が更に好ましく、50万以上が更に好ましく、上限としては、120万以下がより好ましく、100万以下が更に好ましい。
【0138】
特定VDF−HFP共重合体(2)を製造する方法としては、乳化重合や懸濁重合が挙げられる。また、HFP単位の含有量及び重量平均分子量を満足する市販のVDF−HFP共重合体を選択することも可能である。
【0139】
接着性多孔質層における特定VDF−HFP共重合体(2)の含有量は、接着性多孔質層に含まれる全樹脂の総量を基準として、下限としては、50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、65質量%以上が更に好ましく、上限としては、95質量%以下が好ましく、93質量%以下がより好ましく、90質量%以下が更に好ましく、85質量%以下が更に好ましい。
【0140】
・ガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂
ガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂としては、ドライヒートプレスによる電極との接着がより良好になる観点から、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂及び塩化ビニル系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0141】
アクリル系樹脂としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル等のアクリル酸エステルを単独重合した又は共重合した重合体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステルを単独重合した又は共重合した重合体;少なくとも1種のアクリル酸エステルと少なくとも1種のメタクリル酸エステルとの共重合体;アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種と、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等から選ばれる少なくとも1種とを共重合した共重合体;が挙げられる。
【0142】
アクリル系樹脂としては、メタクリル酸メチルを主たる重合成分とする樹脂であるポリメタクリル酸メチル樹脂(polymethyl methacrylate、PMMA)が好ましい。PMMAは、メタクリル酸メチルの単独重合体でもよく、メタクリル酸メチル以外の他の単量体が共重合した共重合体でもよく、共重合される他の単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸、及びメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0143】
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は5万〜100万が好ましい。アクリル系樹脂のMwが5万以上であると、製膜性がよく、また、接着性多孔質層の特性が優れる。一方、アクリル系樹脂のMwが100万以下であると、接着性多孔質層の塗工成形に用いられる塗工液の粘度が高くなり過ぎず、セパレータの生産性が向上する。
【0144】
酢酸ビニル系樹脂としては、例えば、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニル(polyvinyl acetate、PVAc);酢酸ビニルと、不飽和カルボン酸、オレフィン、ビニルエーテル、不飽和スルホン酸等から選ばれる少なくとも1種との共重合体;などが挙げられる。
【0145】
酢酸ビニル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は5万〜50万が好ましい。酢酸ビニル系樹脂のMwが5万以上であると、製膜性がよく、また、接着性多孔質層の特性が優れる。一方、酢酸ビニル系樹脂のMwが50万以下であると、接着性多孔質層の塗工成形に用いられる塗工液の粘度が高くなり過ぎず、セパレータの生産性が向上する。
【0146】
塩化ビニル系樹脂としては、単独重合体でも共重合体でもよく、例えば、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソプレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−ビニルエーテル共重合体等が挙げられる。
【0147】
塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は5000〜15万が好ましい。塩化ビニル系樹脂のMwが5000以上であると、製膜性がよく、また、接着性多孔質層の特性が優れる。一方、塩化ビニル系樹脂のMwが15万以下であると、接着性多孔質層の塗工成形に用いられる塗工液の粘度が高くなり過ぎず、セパレータの生産性が向上する。
【0148】
接着性多孔質層は、ガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂を1種のみ含んでもよく、2種以上含んでもよい。
【0149】
接着性多孔質層におけるガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂の含有量は、多孔質基材と接着性多孔質層との間の剥離強度を高める観点から、接着性多孔質層に含まれる全樹脂の総量の5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、15質量%以上が更に好ましい。一方、接着性多孔質層の凝集破壊を抑制する観点から、接着性多孔質層に含まれる全樹脂の総量の50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、35質量%以下が更に好ましい。
【0150】
接着性多孔質層において、特定VDF−HFP共重合体(2)と、ガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂とが成す形態としては、(a)前者と後者とが相溶した形態;(b)前者の連続相中に後者が分散相として存在する形態;(c)前者の連続相中に後者が粒子状に分散して存在する形態;などが挙げられ、中でも(a)が好ましい。(a)であると、孔の形状及び大きさの均一性が高まり、電極に対する接着点が接着性多孔質層表面に均一性高く散在することになり、電極との接着性に優れる。(a)、(b)及び(c)は、接着性多孔質層の断面を電子顕微鏡で観察することにより確認できる。
【0151】
接着性多孔質層の実施形態例においては、特定VDF−HFP共重合体(2)とガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂との合計が、接着性多孔質層に含まれる全樹脂の総量の90質量%以上を占めることがあり、95質量%以上を占めることがあり、100質量%を占めることがある。
【0152】
・その他の樹脂
接着性多孔質層は、特定VDF−HFP共重合体(2)及びガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂以外のその他の樹脂を含んでいてもよい。
【0153】
特定VDF−HFP共重合体(2)以外のポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、例えば、HFP単位の含有量が特定VDF−HFP共重合体(2)と相違するVDF−HFP共重合体;フッ化ビニリデンの単独重合体(即ちポリフッ化ビニリデン);フッ化ビニリデンと、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル等から選ばれる少なくとも1種との共重合体;が挙げられる。
【0154】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂以外の他の樹脂としては、フッ素系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、ビニルニトリル化合物(アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)の単独重合体又は共重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等)などが挙げられる。
【0155】
・フィラー
接着性多孔質層は、セパレータの滑り性や耐熱性を向上させる目的で、無機物又は有機物からなるフィラーを含んでいてもよい。その場合、第二形態の効果を妨げない程度の含有量や粒子サイズとすることが好ましい。フィラーとしては、セル強度の向上及び電池の安全性確保の観点から、無機フィラーが好ましい。
【0156】
フィラーの平均粒子径は、0.01μm〜5μmが好ましい。その下限値としては0.1μm以上がより好ましく、上限値としては1μm以下がより好ましい。
【0157】
無機フィラーとしては、電解液に対して安定であり、且つ、電気化学的に安定な無機フィラーが好ましい。具体的には例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化クロム、水酸化ジルコニウム、水酸化セリウム、水酸化ニッケル、水酸化ホウ素等の金属水酸化物;アルミナ、チタニア、マグネシア、シリカ、ジルコニア、チタン酸バリウム等の金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩;ケイ酸カルシウム、タルク等の粘土鉱物;などが挙げられる。これらの無機フィラーは、1種を単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。無機フィラーは、シランカップリング剤等により表面修飾されたものでもよい。
【0158】
無機フィラーとしては、電池内での安定性及び電池の安全性確保の観点から、金属水酸化物及び金属酸化物の少なくとも1種が好ましく、難燃性付与や除電効果の観点から、金属水酸化物が好ましく、水酸化マグネシウムが更に好ましい。
【0159】
無機フィラーの粒子形状には制限はなく、球に近い形状でもよく、板状の形状でもよいが、電池の短絡抑制の観点からは、板状の粒子や、凝集していない一次粒子であることが好ましい。
【0160】
接着性多孔質層に無機フィラーが含まれている場合、接着性多孔質層における無機フィラーの含有量は、接着性多孔質層に含まれる全樹脂と無機フィラーの合計量の5質量%〜75質量%が好ましい。無機フィラーの含有量が5質量%以上であると、熱が印加された際にセパレータの熱収縮が抑制され寸法安定性の観点から好ましい。本観点から、無機フィラーの含有量は、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。一方、無機フィラーの含有量が75質量%以下であると、接着性多孔質層の電極への接着が確保される観点から好ましい。本観点から、無機フィラーの含有量は、70質量%以下がより好ましく、65質量%以下が更に好ましい。
【0161】
有機フィラーとしては、例えば、架橋ポリメタクリル酸メチル等の架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチレンなどが挙げられ、架橋ポリメタクリル酸メチルが好ましい。
【0162】
・その他の成分
接着性多孔質層は、界面活性剤等の分散剤、湿潤剤、消泡剤、pH調整剤などの添加剤を含んでいてもよい。分散剤は、接着性多孔質層の塗工成形に用いられる塗工液に、分散性、塗工性及び保存安定性を向上させる目的で添加される。湿潤剤、消泡剤、pH調整剤は、接着性多孔質層の塗工成形に用いられる塗工液に、例えば、多孔質基材とのなじみをよくする目的、塗工液へのエア噛み込みを抑制する目的、又はpH調整の目的で添加される。
【0163】
[接着性多孔質層の特性]
接着性多孔質層の厚さは、多孔質基材の片面において、電極との接着性の観点から、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、電池のエネルギー密度の観点から、8.0μm以下が好ましく、6.0μm以下がより好ましい。
【0164】
接着性多孔質層が多孔質基材の両面に設けられている場合、一方の面における接着性多孔質層の厚さと、他方の面における接着性多孔質層の厚さとの差は、両面合計の厚さの20%以下であることが好ましく、低いほど好ましい。
【0165】
接着性多孔質層の重量は、多孔質基材の片面において、電極との接着性の観点から、0.5g/m
2以上が好ましく、0.75g/m
2以上がより好ましく、イオン透過性の観点から、5.0g/m
2以下が好ましく、4.0g/m
2以下がより好ましい。
【0166】
接着性多孔質層の空孔率は、イオン透過性の観点から、30%以上が好ましく、力学的強度の観点から、80%以下が好ましく、60%以下がより好ましい。第二形態における接着性多孔質層の空孔率の求め方は、多孔質基材の空孔率の求め方と同様である。
【0167】
接着性多孔質層の平均孔径は、イオン透過性の観点から、10nm以上が好ましく、電極との接着性の観点から、200nm以下が好ましい。第二形態における接着性多孔質層の平均孔径は、第一形態における多孔質層の平均孔径と同じく、式:d=4V/Sによって算出する。
【0168】
多孔質基材と接着性多孔質層との間の剥離強度は、0.20N/10mm以上が好ましい。該剥離強度が0.20N/10mm以上であると、電池の製造工程においてセパレータのハンドリング性に優れる。この観点からは、該剥離強度は、0.30N/10mm以上がより好ましく、高いほど好ましい。該剥離強度の上限は制限されるものではないが、通常は2.0N/10mm以下である。
【0169】
[第二形態のセパレータの特性]
第二形態のセパレータの厚さは、機械的強度の観点からは、5μm以上が好ましく、電池のエネルギー密度の観点からは、35μm以下が好ましい。
【0170】
第二形態のセパレータの突刺強度は、250g〜1000gが好ましく、300g〜600gがより好ましい。セパレータの突刺強度の測定方法は、多孔質基材の突刺強度の測定方法と同様である。
【0171】
第二形態のセパレータの空孔率は、電極に対する接着性、ハンドリング性、イオン透過性、及び機械的強度の観点から、30%〜65%が好ましく、30%〜60%がより好ましい。
【0172】
第二形態のセパレータのガーレ値(JIS P8117:2009)は、機械的強度と電池の負荷特性の観点から、100秒/100cc〜300秒/100ccが好ましい。
【0173】
[第二形態のセパレータの製造方法]
第二形態のセパレータは、例えば、下記工程(i)〜(iii)を有する湿式塗工法によって製造することができる。
【0174】
(i)特定VDF−HFP共重合体(2)及びガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂を含む塗工液を多孔質基材に塗工し、塗工層を形成する工程。
(ii)塗工層を形成した多孔質基材を凝固液に浸漬し、塗工層において相分離を誘発しつつポリフッ化ビニリデン系樹脂を固化させ、多孔質基材上に多孔質層を形成し、複合膜を得る工程。
(iii)複合膜を水洗及び乾燥する工程。
【0175】
塗工液は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂と、ガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂とを溶媒に溶解又は分散させて調製する。接着性多孔質層にフィラーを含有させる場合は、塗工液中にフィラーを分散させる。
【0176】
塗工液の調製に用いる溶媒は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解する溶媒(以下、「良溶媒」ともいう。)を含む。良溶媒としては、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド等の極性アミド溶媒が挙げられる。
【0177】
塗工液の調製に用いる溶媒は、良好な多孔構造を有する多孔質層を形成する観点から、相分離を誘発させる相分離剤を含むことが好ましい。したがって、塗工液の調製に用いる溶媒は、良溶媒と相分離剤との混合溶媒であることが好ましい。相分離剤は、塗工に適切な粘度が確保できる範囲の量で良溶媒と混合することが好ましい。相分離剤としては、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0178】
塗工液の調製に用いる溶媒としては、良好な多孔構造を形成する観点から、良溶媒と相分離剤との混合溶媒であって、良溶媒を60質量%以上含み、相分離剤を40質量%以下含む混合溶媒が好ましい。
【0179】
塗工液の樹脂濃度は、良好な多孔構造を形成する観点から、1質量%〜20質量%が好ましい。
【0180】
多孔質基材への塗工液の塗工手段としては、マイヤーバー、ダイコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター等が挙げられる。多孔質層を多孔質基材の両面に形成する場合、塗工液を両面同時に基材へ塗工することが生産性の観点から好ましい。
【0181】
凝固液は、塗工液の調製に用いた良溶媒及び相分離剤と、水とを含むことが一般的である。良溶媒と相分離剤の混合比は、塗工液の調製に用いた混合溶媒の混合比に合わせるのが生産上好ましい。凝固液中の水の含有量は40質量%〜90質量%であることが、多孔構造の形成および生産性の観点から好ましい。凝固液の温度は、例えば20℃〜50℃である。
【0182】
第二形態のセパレータは、乾式塗工法でも製造し得る。乾式塗工法とは、樹脂を含む塗工液を多孔質基材に塗工して塗工層を形成した後、塗工層を乾燥させて塗工層を固化させ、多孔質基材上に多孔質層を形成する方法である。ただし、乾式塗工法は湿式塗工法と比べて多孔質層が緻密になりやすいので、良好な多孔構造を得られる観点から湿式塗工法の方が好ましい。
【0183】
第二形態のセパレータは、多孔質層を独立したシートとして作製し、この多孔質層を多孔質基材に重ねて、熱圧着や接着剤によって積層する方法によっても製造し得る。多孔質層を独立したシートとして作製する方法としては、上述した湿式塗工法又は乾式塗工法を適用して剥離シート上に多孔質層を形成し、多孔質層から剥離シートを剥離する方法が挙げられる。
【0184】
<非水系二次電池>
本開示の非水系二次電池は、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池であり、正極と、負極と、本開示の非水系二次電池用セパレータとを備える。ドープとは、吸蔵、担持、吸着、又は挿入を意味し、正極等の電極の活物質にリチウムイオンが入る現象を意味する。
【0185】
本開示の非水系二次電池は、例えば、負極と正極とがセパレータを介して対向した電池素子が電解液と共に外装材内に封入された構造を有する。本開示の非水系二次電池は、非水電解質二次電池、特にリチウムイオン二次電池に好適である。
【0186】
第一形態のセパレータを備えた非水系二次電池は、第一形態のセパレータがドライヒートプレスによる正極及び負極との接着に優れるが故に、製造歩留りが高い。
【0187】
第一形態のセパレータを備えた非水系二次電池は、第一形態のセパレータがドライヒートプレスによる正極及び負極との接着に優れるが故に、電池のサイクル特性(容量維持率)に優れる。
【0188】
第二形態のセパレータを備えた非水系二次電池は、第二形態のセパレータがドライヒートプレスによる電極との接着に優れるが故に、製造歩留りが高い。
【0189】
第二形態のセパレータを備えた非水系二次電池は、第二形態のセパレータがドライヒートプレスによる電極との接着に優れるが故に、電池のサイクル特性(容量維持率)に優れる。
【0190】
以下、本開示の非水系二次電池が備える正極、負極、電解液及び外装材の形態例を説明する。
【0191】
正極の実施形態例としては、正極活物質及びバインダ樹脂を含む活物質層が集電体上に配置された構造が挙げられる。活物質層は、さらに導電助剤を含んでもよい。正極活物質としては、例えば、リチウム含有遷移金属酸化物が挙げられ、具体的にはLiCoO
2、LiNiO
2、LiMn
1/2Ni
1/2O
2、LiCo
1/3Mn
1/3Ni
1/3O
2、LiMn
2O
4、LiFePO
4、LiCo
1/2Ni
1/2O
2、LiAl
1/4Ni
3/4O
2等が挙げられる。バインダ樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられる。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛粉末等の炭素材料が挙げられる。集電体としては、例えば厚さ5μm〜20μmの、アルミ箔、チタン箔、ステンレス箔等が挙げられる。
【0192】
第一形態のセパレータを備えた非水系二次電池においては、第一形態のセパレータの多孔質層に含まれるポリフッ化ビニリデン系樹脂が耐酸化性に優れるため、正極活物質として、4.2V以上の高電圧で作動可能なLiMn
1/2Ni
1/2O
2、LiCo
1/3Mn
1/3Ni
1/3O
2等を適用しやすい。
【0193】
第二形態のセパレータを備えた非水系二次電池においては、第二形態のセパレータの接着性多孔質層に含まれるポリフッ化ビニリデン系樹脂が耐酸化性に優れるため、接着性多孔質層を非水系二次電池の正極側に配置することで、正極活物質として、4.2V以上の高電圧で作動可能なLiMn
1/2Ni
1/2O
2、LiCo
1/3Mn
1/3Ni
1/3O
2等を適用しやすい。
【0194】
負極の実施形態例としては、負極活物質及びバインダ樹脂を含む活物質層が集電体上に配置された構造が挙げられる。活物質層は、さらに導電助剤を含んでもよい。負極活物質としては、リチウムを電気化学的に吸蔵し得る材料が挙げられ、具体的には例えば、炭素材料;ケイ素、スズ、アルミニウム等とリチウムとの合金;ウッド合金;などが挙げられる。バインダ樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられる。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛粉末等の炭素材料が挙げられる。集電体としては、例えば厚さ5μm〜20μmの、銅箔、ニッケル箔、ステンレス箔等が挙げられる。また、上記の負極に代えて、金属リチウム箔を負極として用いてもよい。
【0195】
電解液は、リチウム塩を非水系溶媒に溶解した溶液である。リチウム塩としては、例えば、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4等が挙げられる。非水系溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びそのフッ素置換体等の鎖状カーボネート;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル;などが挙げられ、これらは単独で用いても混合して用いてもよい。電解液としては、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを質量比(環状カーボネート:鎖状カーボネート)20:80〜40:60で混合し、リチウム塩を0.5mol/L〜1.5mol/L溶解した溶液が好適である。
【0196】
外装材としては、金属缶、アルミラミネートフィルム製パック等が挙げられる。電池の形状は角型、円筒型、コイン型等があるが、本開示のセパレータはいずれの形状にも好適である。
【0197】
本開示の非水系二次電池の製造方法としては、セパレータに電解液を含浸させずに熱プレス処理(本開示において「ドライヒートプレス」という。)を行って電極に接着させることを含む製造方法;セパレータに電解液を含浸させて熱プレス処理(本開示において「ウェットヒートプレス」という。)を行って電極に接着させることを含む製造方法;が挙げられる。
【0198】
本開示の非水系二次電池の製造方法としては、ドライヒートプレスを行う製造方法が好ましい。該製造方法は、例えば、正極と負極との間に本開示のセパレータを配置した積層体を製造する積層工程と、積層体にドライヒートプレスを行って電極とセパレータとを接着させるドライ接着工程と、を有する。
【0199】
積層工程において、正極と負極との間にセパレータを配置する方式は、正極、セパレータ、負極をこの順に少なくとも1層ずつ積層する方式(所謂スタック方式)でもよく、正極、セパレータ、負極、セパレータをこの順に重ね、長さ方向に捲き回す方式でもよい。
【0200】
ドライ接着工程は、積層体を外装材(例えばアルミラミネートフィルム製パック)に収容する前に行ってもよく、積層体を外装材に収容した後に行ってもよい。つまり、ドライヒートプレスによって電極とセパレータとが接着した積層体を外装材に収容してもよく、積層体を外装材に収容した後に外装材の上からドライヒートプレスを行って電極とセパレータとを接着させてもよい。
【0201】
ドライ接着工程におけるプレス温度は、70℃〜120℃が好ましく、75℃〜110℃がより好ましく、80℃〜100℃が更に好ましい。この温度範囲であると、電極とセパレータとの接着が良好であり、また、セパレータが幅方向に適度に膨張し得るので、電池の短絡が起こりにくい。ドライ接着工程におけるプレス圧は、電極1cm
2当たりの荷重として0.5kg〜40kgが好ましい。プレス時間は、プレス温度及びプレス圧に応じて調節することが好ましく、例えば0.5分間〜60分間の範囲で調節する。
【0202】
上記製造方法においては、ドライヒートプレスする前に積層体に常温プレス(常温下での加圧)を施して、積層体を仮接着してもよい。
【0203】
上記製造方法においては、ドライヒートプレスを行った後、積層体を収容している外装材に電解液を注入し、外装材の封止を行う。電解液を注入した後、外装材の上からさらに積層体をウェットヒートプレスしてもよい。封止前に、外装体の内部は真空状態にすることが好ましい。外装材の封止の方式としては、例えば、外装材の開口部を接着剤で接着する方式、外装材の開口部を加熱加圧して熱圧着する方式が挙げられる。
【実施例】
【0204】
以下に実施例を挙げて、本開示のセパレータ及び非水系二次電池をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本開示のセパレータ及び非水系二次電池の範囲は、以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきではない。
【0205】
<測定方法、評価方法>
実施例及び比較例で適用した測定方法及び評価方法は、以下のとおりである。以下において、第一多孔質層、第二多孔質層及び接着性多孔質層に共通する事項を説明する場合、これらをまとめて「多孔質層」という。
【0206】
[ポリフッ化ビニリデン系樹脂の組成]
ポリフッ化ビニリデン系樹脂20mgを重ジメチルスルホキシド0.6mlに100℃にて溶解し、100℃で
19F−NMRスペクトルを測定し、NMRスペクトルからポリフッ化ビニリデン系樹脂の組成を求めた。
【0207】
[ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量]
ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー分析装置(日本分光社GPC−900)を用い、カラムに東ソー社TSKgel SUPER AWM−Hを2本用い、溶媒にN,N−ジメチルホルムアミドを使用し、温度40℃、流量10ml/minの条件で、ポリスチレン換算の分子量として測定した。
【0208】
[樹脂のガラス転移温度]
樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry、DSC)を行って得た示差走査熱量曲線(DSC曲線)から求めた。ガラス転移温度は、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、階段状変化部分の曲線の接線であって勾配が最大の接線とが交わる点の温度である。
【0209】
[多孔質層における樹脂の状態]
セパレータを、ウルトラミクロトーム装置により厚さ方向に切断し、薄片試料を作製した。薄片試料を25℃のデシケータ内で重金属染色法により24時間染色した。染色した薄片試料を、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JEM−1400Plus)を使用して観察し、ポリフッ化ビニリデン系樹脂とそれ以外の樹脂とが相溶しているか否か確認した。
【0210】
[多孔質基材及びセパレータの膜厚]
多孔質基材及びセパレータの膜厚(μm)は、接触式の厚み計(ミツトヨ社LITEMATIC)にて20点を測定し、これを平均することで求めた。測定端子は直径5mmの円柱状の端子を用い、測定中に7gの荷重が印加されるように調整した。
【0211】
[多孔質層の層厚]
セパレータの膜厚から多孔質基材の膜厚を減算し、その値の半分を、多孔質基材の片面における多孔質層の層厚(μm)とした。
【0212】
[ガーレ値]
多孔質基材及びセパレータのガーレ値(秒/100cc)は、JIS P8117:2009に従い、ガーレ式デンソメータ(東洋精機社G−B2C)を用いて測定した。
【0213】
[空孔率]
多孔質基材及び多孔質層の空孔率(%)は、下記の式に従って求めた。式中、εは空孔率(%)、Wsは目付(g/m
2)、dsは真密度(g/cm
3)、tは厚さ(μm)である。
ε={1−Ws/(ds・t)}×100
【0214】
[多孔質基材と多孔質層との間の剥離強度]
セパレータの一方の表面に粘着テープを貼り(貼る際に、粘着テープの長さ方向をセパレータのMD方向に一致させた。)、セパレータを粘着テープごと、TD方向1.2cm、MD方向7cmに切り出した。粘着テープを直下の多孔質層と共に少し剥がし、2つに分離した端部をテンシロン(オリエンテック社製RTC−1210A)に把持させてT字剥離試験を行った。なお、粘着テープは、多孔質層を多孔質基材から剥がすための支持体として用いたものである。T字剥離試験の引張速度は20mm/minとし、多孔質基材から多孔質層が剥離する際の荷重(N)を測定した。測定開始後10mmから40mmまでの荷重を0.4mm間隔で採取しその平均を算出し、幅10mmあたりの荷重(N/10mm)に換算し、さらに試験片3枚の測定値を平均して、剥離強度(N/10mm)とした。
【0215】
[第一形態:正極と第一多孔質層との接着強度]
正極活物質であるコバルト酸リチウム粉末89.5g、導電助剤であるアセチレンブラック4.5g、及びバインダであるポリフッ化ビニリデン6gを、ポリフッ化ビニリデンの濃度が6質量%となるようにN−メチル−ピロリドンに溶解し、双腕式混合機にて攪拌し、正極用スラリーを作製した。この正極用スラリーを厚さ20μmのアルミ箔の片面に塗布し、乾燥後プレスして、正極活物質層を有する正極を得た。
【0216】
上記で得た正極を幅1.5cm、長さ7cmに切り出し、セパレータをTD方向1.8cm、MD方向7.5cmに切り出した。セパレータの第一多孔質層を正極に対向させて重ね、温度85℃、圧力1.0MPa、時間10秒間の条件で熱プレスして、正極とセパレータとを接着させ、これを試験片とした。試験片の長さ方向(即ちセパレータのMD方向)の一端において正極からセパレータを少し剥がし、2つに分離した端部をテンシロン(オリエンテック社製RTC−1210A)に把持させてT字剥離試験を行った。T字剥離試験の引張速度は20mm/minとし、正極からセパレータが剥離する際の荷重(N)を測定し、測定開始後10mmから40mmまでの荷重を0.4mm間隔で採取しその平均を算出し、さらに試験片3枚の測定値を平均して、正極と第一多孔質層との接着強度(N)とした。表1〜表4には、実施例及び比較例の各セパレータの接着強度を、比較例1のセパレータの接着強度で除して求めた百分率(%)を示す。
【0217】
[第一形態:負極と第二多孔質層との接着強度]
負極活物質である人造黒鉛300g、バインダであるスチレン−ブタジエン共重合体の変性体を40質量%含む水溶性分散液7.5g、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース3g、及び適量の水を双腕式混合機にて攪拌し、負極用スラリーを作製した。この負極用スラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に塗布し、乾燥後プレスして、負極活物質層を有する負極を得た。
【0218】
上記で得た負極を幅1.5cm、長さ7cmに切り出し、セパレータをTD方向1.8cm、MD方向7.5cmに切り出した。セパレータの第二多孔質層を負極に対向させて重ね、温度85℃、圧力1.0MPa、時間10秒間の条件で熱プレスして、負極とセパレータとを接着させ、これを試験片とした。この試験片に、前記[第一形態:正極と第一多孔質層との接着強度]と同様にしてT字剥離試験を行い、負極と第二多孔質層との接着強度(N)を求めた。表1〜表4には、実施例及び比較例の各セパレータの接着強度を、比較例1のセパレータの接着強度で除して求めた百分率(%)を示す。
【0219】
[第二形態:正極と接着性多孔質層との接着強度]
前記[第一形態:正極と第一多孔質層との接着強度]と同様にして、試験片を作製し、T字剥離試験を行い、正極と接着性多孔質層との接着強度(N)を求めた。表5〜表7には、実施例及び比較例の各セパレータの接着強度を、比較例101のセパレータの接着強度で除して求めた百分率(%)を示す。
【0220】
[第二形態:負極と接着性多孔質層との接着強度]
前記[第一形態:負極と第二多孔質層との接着強度]と同様にして、試験片を作製し、T字剥離試験を行い、負極と接着性多孔質層との接着強度(N)を求めた。表5〜表7には、実施例及び比較例の各セパレータの接着強度を、比較例101のセパレータの接着強度で除して求めた百分率(%)を示す。
【0221】
[サイクル特性(容量維持率)]
前記の正極及び負極にリードタブを溶接し、正極、セパレータ、負極の順に積層した。この際に、第一形態においては、セパレータの第一多孔質層を正極に対向させ、第二多孔質層を負極に対向させた。この積層体をアルミラミネートフィルム製のパック中に挿入し、真空シーラーを用いてパック内を真空状態にして仮封止し、パックごと積層体の積層方向に熱プレス機を用いて熱プレスを行い、これにより、電極とセパレータとの接着を行った。熱プレスの条件は、温度90℃、電極1cm
2当たり20kgの荷重、プレス時間2分間とした。次いで、パック内に電解液(1mol/L LiPF
6−エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート[質量比3:7])を注入し、積層体に電解液をしみ込ませた後、真空シーラーを用いてパック内を真空状態にして封止し、電池を得た。
【0222】
温度30℃の環境下で、電池に300サイクルの充放電を行った。充電は1C且つ4.2Vの定電流定電圧充電、放電は1C且つ2.75Vカットオフの定電流放電とした。300サイクル目の放電容量を初期容量で除し、電池10個の平均を算出し、得られた値(%)を容量維持率とした。
【0223】
[負荷特性]
前記[サイクル特性(容量維持率)]における電池製造と同様にして電池を製造した。温度25℃の環境下、電池に充放電を行い、0.2Cで放電した際の放電容量と、2Cで放電した際の放電容量とを測定し、後者を前者で除し、電池10個の平均を算出し、得られた値(%)を負荷特性とした。充電条件は0.2C、4.2Vの定電流定電圧充電8時間とし、放電条件は2.75Vカットオフの定電流放電とした。
【0224】
<第一形態のセパレータの作製>
[実施例1]
ジメチルアセトアミドとトリプロピレングリコールの混合溶媒(ジメチルアセトアミド:トリプロピレングリコール=80:20[質量比])に、ポリフッ化ビニリデン系樹脂(VDF−HFP共重合体、HFP単位含有量12.4質量%、重量平均分子量86万)を溶解させ、第一多孔質形成用の第一塗工液を作製した。第一塗工液の樹脂濃度を5.0質量%とした。
【0225】
ジメチルアセトアミドとトリプロピレングリコールの混合溶媒(ジメチルアセトアミド:トリプロピレングリコール=80:20[質量比])に、ポリフッ化ビニリデン系樹脂(VDF−HFP共重合体、HFP単位含有量6質量%、重量平均分子量85万)と、アクリル系樹脂(メタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体、重合比[質量比]90:10、重量平均分子量8.5万、ガラス転移温度80℃)とを溶解させ、第二多孔質形成用の第二塗工液を作製した。第二塗工液に含まれるポリフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル系樹脂の質量比を75:25とし、第二塗工液の樹脂濃度を5.0質量%とした。
【0226】
多孔質基材であるポリエチレン微多孔膜(膜厚9.0μm、ガーレ値150秒/100cc、空孔率43%)の一方の面に第一塗工液を、他方の面に第二塗工液を、両面同時塗工し(その際、表裏の塗工量が等量になるように塗工した)、凝固液(水:ジメチルアセトアミド:トリプロピレングリコール=62.5:30:7.5[質量比]、液温35℃)に浸漬して固化させた。次いで、これを水洗し乾燥して、ポリエチレン微多孔膜の両面に多孔質層が形成されたセパレータを得た。
【0227】
[実施例2]
第二塗工液を調製するアクリル系樹脂を酢酸ビニル系樹脂(ポリ酢酸ビニル、重量平均分子量1.5万、ガラス転移温度30℃)に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0228】
[実施例3]
第二塗工液を調製するアクリル系樹脂を塩化ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル、重量平均分子量2万、ガラス転移温度40℃)に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0229】
[実施例4〜9]
第二塗工液に含まれるポリフッ化ビニリデン系樹脂及びアクリル系樹脂の含有量を表1に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0230】
[実施例10]
第一塗工液及び第二塗工液に、表2に記載の含有量になるように、さらに水酸化マグネシウム粒子(一次粒子の体積平均粒径0.8μm、BET比表面積6.8m
2/g)を分散した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0231】
[実施例11]
第一塗工液及び第二塗工液に、表2に記載の含有量になるように、さらに水酸化マグネシウム粒子(一次粒子の体積平均粒径0.8μm、BET比表面積6.8m
2/g)を分散した以外は、実施例2と同様にしてセパレータを作製した。
【0232】
[実施例12]
第一塗工液及び第二塗工液に、表2に記載の含有量になるように、さらに水酸化マグネシウム粒子(一次粒子の体積平均粒径0.8μm、BET比表面積6.8m
2/g)を分散した以外は、実施例3と同様にしてセパレータを作製した。
【0233】
[実施例13〜14]
第一塗工液に含まれる樹脂及び水酸化マグネシウム粒子の含有量、並びに第二塗工液に含まれる樹脂及び水酸化マグネシウム粒子の含有量を表2に記載のとおりに変更した以外は、実施例10と同様にしてセパレータを作製した。
【0234】
[実施例15〜18]
第一塗工液を調製するポリフッ化ビニリデン系樹脂を別のポリフッ化ビニリデン系樹脂(表3に記載の組成及び重量平均分子量を有するVDF−HFP共重合体)に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0235】
[実施例19]
第二塗工液を調製するポリフッ化ビニリデン系樹脂を別のポリフッ化ビニリデン系樹脂(表3に記載の組成及び重量平均分子量を有するVDF−HFP共重合体)に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0236】
[比較例1]
第二塗工液にアクリル系樹脂を含まない以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0237】
[比較例2]
第二塗工液にアクリル系樹脂を含まず、第二塗工液に含まれる樹脂及び水酸化マグネシウム粒子の含有量を表4に記載のとおりに変更した以外は、実施例10と同様にしてセパレータを作製した。
【0238】
[比較例3、6]
第一塗工液を調製するポリフッ化ビニリデン系樹脂を別のポリフッ化ビニリデン系樹脂(表4に記載の組成及び重量平均分子量を有するVDF−HFP共重合体又はポリフッ化ビニリデン)に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0239】
[比較例4、7]
第一塗工液を調製するポリフッ化ビニリデン系樹脂を別のポリフッ化ビニリデン系樹脂(表4に記載の組成及び重量平均分子量を有するVDF−HFP共重合体又はポリフッ化ビニリデン)に変更した以外は、実施例2と同様にしてセパレータを作製した。
【0240】
[比較例5、8]
第一塗工液を調製するポリフッ化ビニリデン系樹脂を別のポリフッ化ビニリデン系樹脂(表4に記載の組成及び重量平均分子量を有するVDF−HFP共重合体又はポリフッ化ビニリデン)に変更した以外は、実施例3と同様にしてセパレータを作製した。
【0241】
実施例1〜19及び比較例1〜8の各セパレータの物性及び評価結果を表1〜表4に示す。
【0242】
【表1】
【0243】
【表2】
【0244】
【表3】
【0245】
【表4】
【0246】
<第二形態のセパレータの作製>
[実施例101]
ジメチルアセトアミドとトリプロピレングリコールの混合溶媒(ジメチルアセトアミド:トリプロピレングリコール=80:20[質量比])に、ポリフッ化ビニリデン系樹脂(VDF−HFP共重合体、HFP単位含有量12.4質量%、重量平均分子量86万)と、アクリル系樹脂(メタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体、重合比[質量比]90:10、重量平均分子量8.5万、ガラス転移温度80℃)とを溶解させ、接着性多孔質形成用の塗工液を作製した。塗工液に含まれるポリフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル系樹脂の質量比を75:25とし、塗工液の樹脂濃度を5.0質量%とした。
【0247】
塗工液を、多孔質基材であるポリエチレン微多孔膜(膜厚9.0μm、ガーレ値150秒/100cc、空孔率43%)の両面に塗工し(その際、表裏の塗工量が等量になるように塗工した)、凝固液(水:ジメチルアセトアミド:トリプロピレングリコール=62.5:30:7.5[質量比]、液温35℃)に浸漬して固化させた。次いで、これを水洗し乾燥して、ポリエチレン微多孔膜の両面に接着性多孔質層が形成されたセパレータを得た。
【0248】
[実施例102]
アクリル系樹脂を酢酸ビニル系樹脂(ポリ酢酸ビニル、重量平均分子量1.5万、ガラス転移温度30℃)に変更した以外は、実施例101と同様にしてセパレータを作製した。
【0249】
[実施例103]
アクリル系樹脂を塩化ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル、重量平均分子量2万、ガラス転移温度40℃)に変更した以外は、実施例101と同様にしてセパレータを作製した。
【0250】
[実施例104〜109]
塗工液に含まれるポリフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル系樹脂の質量比を表5に記載のとおりに変更した以外は、実施例101と同様にしてセパレータを作製した。
【0251】
[実施例110]
塗工液に、表6に記載の含有量になるように、さらに水酸化マグネシウム粒子(一次粒子の体積平均粒径0.8μm、BET比表面積6.8m
2/g)を分散した以外は、実施例101と同様にしてセパレータを作製した。
【0252】
[実施例111]
塗工液に、表6に記載の含有量になるように、さらに水酸化マグネシウム粒子(一次粒子の体積平均粒径0.8μm、BET比表面積6.8m
2/g)を分散した以外は、実施例102と同様にしてセパレータを作製した。
【0253】
[実施例112]
塗工液に、表6に記載の含有量になるように、さらに水酸化マグネシウム粒子(一次粒子の体積平均粒径0.8μm、BET比表面積6.8m
2/g)を分散した以外は、実施例103と同様にしてセパレータを作製した。
【0254】
[実施例113〜114]
ポリフッ化ビニリデン系樹脂、アクリル系樹脂及び水酸化マグネシウム粒子の含有量を表6に記載のとおりに変更した以外は、実施例110と同様にしてセパレータを作製した。
【0255】
[実施例115〜118]
ポリフッ化ビニリデン系樹脂を別のポリフッ化ビニリデン系樹脂(表6に記載の組成及び重量平均分子量を有するVDF−HFP共重合体)に変更した以外は、実施例101と同様にしてセパレータを作製した。
【0256】
[比較例101]
塗工液にアクリル系樹脂を含まない以外は、実施例101と同様にしてセパレータを作製した。
【0257】
[比較例102]
塗工液にアクリル系樹脂を含まず、ポリフッ化ビニリデン系樹脂及び水酸化マグネシウム粒子の含有量を表7に記載のとおりに変更した以外は、実施例110と同様にしてセパレータを作製した。
【0258】
[比較例103、106]
ポリフッ化ビニリデン系樹脂を別のポリフッ化ビニリデン系樹脂(表7に記載の組成及び重量平均分子量を有するVDF−HFP共重合体又はポリフッ化ビニリデン)に変更した以外は、実施例101と同様にしてセパレータを作製した。
【0259】
[比較例104、107]
ポリフッ化ビニリデン系樹脂を別のポリフッ化ビニリデン系樹脂(表7に記載の組成及び重量平均分子量を有するVDF−HFP共重合体又はポリフッ化ビニリデン)に変更した以外は、実施例102と同様にしてセパレータを作製した。
【0260】
[比較例105、108]
ポリフッ化ビニリデン系樹脂を別のポリフッ化ビニリデン系樹脂(表7に記載の組成及び重量平均分子量を有するVDF−HFP共重合体又はポリフッ化ビニリデン)に変更した以外は、実施例103と同様にしてセパレータを作製した。
【0261】
実施例101〜118及び比較例101〜108の各セパレータの物性及び評価結果を表5〜表7に示す。
【0262】
【表5】
【0263】
【表6】
【0264】
【表7】
【0265】
2016年9月21日に出願された日本国出願番号第2016−184346号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。2016年9月21日に出願された日本国出願番号第2016−184347号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【0266】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
多孔質基材と、前記多孔質基材の一方の面に設けられた多孔質層であって、HFP単位の含有量が3質量%〜20質量%であり且つ重量平均分子量が10万〜150万であるPVDF系樹脂を含有する第一多孔質層と、前記多孔質基材の他方の面に設けられた多孔質層であって、PVDF系樹脂とガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂とを含有する第二多孔質層と、を備えた非水系二次電池用セパレータ。
多孔質基材と、前記多孔質基材の片面又は両面に設けられた接着性多孔質層であって、HFP単位の含有量が5質量%〜20質量%であり且つ重量平均分子量が10万〜150万であるPVDF系樹脂と、ガラス転移温度が30℃〜120℃である樹脂とを含有する接着性多孔質層と、を備えた非水系二次電池用セパレータ。