特許第6334076号(P6334076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6334076ナノワイヤーおよびその製造方法、ナノワイヤー分散液ならびに透明導電膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334076
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】ナノワイヤーおよびその製造方法、ナノワイヤー分散液ならびに透明導電膜
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/24 20060101AFI20180521BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20180521BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20180521BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20180521BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   B22F9/24 C
   B22F1/00 M
   H01B1/00 H
   H01B1/22 Z
   H01B5/14 A
【請求項の数】17
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-504312(P2018-504312)
(86)(22)【出願日】2017年3月9日
(86)【国際出願番号】JP2017009484
(87)【国際公開番号】WO2017159537
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2018年1月26日
(31)【優先権主張番号】特願2016-49139(P2016-49139)
(32)【優先日】2016年3月14日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100103115
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 康廣
(72)【発明者】
【氏名】竹田 裕孝
(72)【発明者】
【氏名】嘉村 由梨
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 孝司
(72)【発明者】
【氏名】大西 早美
(72)【発明者】
【氏名】吉永 輝政
【審査官】 坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/163258(WO,A1)
【文献】 特開2011−058021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00− 8/00
B22F 9/00− 9/30
H01B 1/00− 1/24
H01B 5/00− 5/16
CiNii
Google Scholar
JSTPlus/
JST7580/
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の粒子が一次元的に繋がった粒子連結形状を有する1本のナノワイヤーであって、
ナノワイヤー1本における直径の最大値をA(nm)、最小値をB(nm)とし、前記直径の最大値Aが前記1本のナノワイヤーにおいて端から100nm以内の端部ではないところでの直径の最大値である場合に、前記ナノワイヤーが下記式(1)を満たし、
前記ナノワイヤーが金属ナノワイヤーであり、
前記ナノワイヤーが実質的に高分子の層を有さないことを特徴とするナノワイヤー。
1.5≦A/B≦2.5 (1)
【請求項2】
Aが50〜500nmであり、
Bが10〜200nmである、請求項1に記載のナノワイヤー。
【請求項3】
前記ナノワイヤーが下記式(2)を満たす、請求項1または2に記載のナノワイヤー。
A+B≦350nm (2)
【請求項4】
前記ナノワイヤーが10μm以上40μm以下の長さを有する、請求項1〜3のいずれかに記載のナノワイヤー。
【請求項5】
前記ナノワイヤーがニッケルから構成される、請求項1〜のいずれかに記載のナノワイヤー。
【請求項6】
複数の粒子が一次元的に繋がった粒子連結形状を有する複数のナノワイヤーであって、
前記複数のナノワイヤーが金属ナノワイヤーであり、
請求項1〜のいずれかに記載のナノワイヤーを含む複数のナノワイヤー。
【請求項7】
複数の粒子が一次元的に繋がった粒子連結形状を有する複数のナノワイヤーであって、
ナノワイヤー1本における直径の最大値をA(nm)、最小値をB(nm)とし、前記直径の最大値Aが前記1本のナノワイヤーにおいて端から100nm以内の端部ではないところでの直径の最大値である場合に、前記複数のナノワイヤーが下記式(1−1)を満たし、
前記複数のナノワイヤーが金属ナノワイヤーであり、
前記ナノワイヤーが実質的に高分子の層を有さない、複数のナノワイヤー。
1.5≦A/Bの平均値≦2.5 (1−1)
【請求項8】
Aの平均値が50〜500nmであり、
Bの平均値が10〜200nmである、請求項またはに記載のナノワイヤー。
【請求項9】
前記複数のナノワイヤーが下記式(1−2)および(1−3)を満たす、請求項のいずれかに記載の複数のナノワイヤー。
1.5≦A/Bの最大値≦2.5 (1−2)
1.5≦A/Bの最小値≦2.5 (1−3)
【請求項10】
前記複数のナノワイヤーが下記式(2−1)を満たす、請求項のいずれかに記載の複数のナノワイヤー。
A+Bの平均値≦350nm (2−1)
【請求項11】
前記複数のナノワイヤーが下記式(2−2)および(2−3)を満たす、請求項10のいずれかに記載の複数のナノワイヤー。
A+Bの最大値≦350nm (2−2)
A+Bの最小値≦350nm (2−3)
【請求項12】
前記複数のナノワイヤーが10μm以上40μm以下の平均長を有する、請求項11のいずれかに記載の複数のナノワイヤー。
【請求項13】
前記複数のナノワイヤーがニッケルから構成される、請求項12のいずれかに記載の複数のナノワイヤー。
【請求項14】
請求項6〜13のいずれかに記載の複数のナノワイヤーの製造方法であって、
磁場中で金属イオンを還元することを含む、複数のナノワイヤーの製造方法。
【請求項15】
前記還元に還元剤を使用し、
前記還元剤の反応溶液に対する濃度が0.05〜1.0質量%である、請求項14に記載の複数のナノワイヤーの製造方法。
【請求項16】
請求項13のいずれかに記載の複数のナノワイヤーが分散されたナノワイヤー分散液。
【請求項17】
請求項13のいずれかに記載の複数のナノワイヤーを含む透明導電膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナノワイヤーおよびその製造方法、ナノワイヤー分散液ならびに透明導電膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽電池の市場拡大、およびスマートフォンおよびタブレット端末等の急速な普及によるタッチパネルの需要拡大に伴い、透明電極として透明導電膜が広く用いられている。透明導電膜としては、軽量化、薄膜化およびフレキシブル化の観点から、透明導電フィルムが多く用いられており、現在はそのほとんどが、酸化インジウムスズを導電層として用いるITOフィルムである。
【0003】
しかしながら、ITOフィルムは、長波長領域の光線透過率が低いことに起因して、色調に問題があった。またITOは半導体であるため高導電化に限界があった。さらにITOは、導電層の屈曲性が乏しいため折り曲げ性に問題があった。このため、より高透過率かつ高導電性を有するフレキシブルフィルムの要求があった。
【0004】
そこで、現在、次世代の透明導電フィルムとして、カーボンナノチューブ、導電性高分子、メッシュ構造を構成する金属細線、銀ナノワイヤー等の金属ナノ材料を用いた透明導電フィルムが種々提案されている。
【0005】
これらの中で、カーボンナノチューブおよび導電性高分子は半導体程度の導電性であり、そのため、次世代の透明導電フィルムとしては満足する導電性が得られるものではなかった。また、金属メッシュ構造からなる透明導電フィルムは非常に高い導電性が得られるものの、金属細線が目視できてしまう等の問題があった。他方、金属ナノワイヤーを用いた透明導電フィルムは導電性と透明性を両立可能なため、注目されている。
【0006】
透明導電フィルムに用いられる金属ナノワイヤーとしては、銀、銅、金、ニッケル等からなる金属ナノワイヤーが知られている。例えば、特許文献1には、直径の変動係数が30%以下である、金、ニッケルおよび銅からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含むナノワイヤーが開示されている。また例えば、特許文献2には、両端が球状の銅ナノワイヤーが開示されている。また例えば、特許文献3には、金属ナノワイヤーおよび当該金属ナノワイヤーが表面に有する高分子化合物層を含む金属ナノワイヤー分散液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−238592号
【特許文献2】特表2013−513220号
【特許文献3】国際公開第2015/163258号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のナノワイヤーは、直径が太い場合には導電性が上がるが、透明性が低下し、他方、直径が細い場合には透明性は上がるが、導電性は下がる、あるいは切断されやすいという問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するものであって、透明性および導電性の両方が十分に優れたナノワイヤー膜を得ることができるナノワイヤーおよびその分散液を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ナノワイヤーを、特定の形状に制御することで、ナノワイヤー内の導電性ロスと可視光の遮蔽を極力低減でき、高い透明性と高い導電性を両立できることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
(I)複数の粒子が一次元的に繋がった粒子連結形状を有する1本のナノワイヤーであって、
ナノワイヤー1本における直径の最大値をA(nm)、最小値をB(nm)とした場合に、前記ナノワイヤーが下記式(1)を満たすことを特徴とするナノワイヤー。
1.5≦A/B≦2.5 (1)
(II)Aが50〜500nmであり、
Bが10〜200nmである、(I)に記載のナノワイヤー。
(III)前記ナノワイヤーが下記式(2)を満たす、(I)に記載のナノワイヤー。
A+B≦350nm (2)
(IV)前記ナノワイヤーが10μm以上40μm以下の長さを有する、(I)〜(III)のいずれかに記載のナノワイヤー。
(V)前記ナノワイヤーが金属ナノワイヤーである、(I)〜(IV)のいずれかに記載のナノワイヤー。
(VI)前記ナノワイヤーがニッケルから構成される、(I)〜(V)のいずれかに記載のナノワイヤー。
(VII)複数の粒子が一次元的に繋がった粒子連結形状を有する複数のナノワイヤーであって、
(I)〜(VI)のいずれかに記載のナノワイヤーを含む複数のナノワイヤー。
(VIII)複数の粒子が一次元的に繋がった粒子連結形状を有する複数のナノワイヤーであって、
ナノワイヤー1本における直径の最大値をA(nm)、最小値をB(nm)とした場合に、前記複数のナノワイヤーが下記式(1−1)を満たす複数のナノワイヤー。
1.5≦A/Bの平均値≦2.5 (1−1)
(IX)Aの平均値が50〜500nmであり、
Bの平均値が10〜200nmである、(VII)または(VIII)に記載のナノワイヤー。
(X)前記複数のナノワイヤーが下記式(1−2)および(1−3)を満たす、(VII)〜(IX)のいずれかに記載の複数のナノワイヤー。
1.5≦A/Bの最大値≦2.5 (1−2)
1.5≦A/Bの最小値≦2.5 (1−3)
(XI)前記複数のナノワイヤーが下記式(2−1)を満たす、(VII)〜(X)のいずれかに記載の複数のナノワイヤー。
A+Bの平均値≦350nm (2−1)
(XII)前記複数のナノワイヤーが下記式(2−2)および(2−3)を満たす、(VII)〜(XI)のいずれかに記載の複数のナノワイヤー。
A+Bの最大値≦350nm (2−2)
A+Bの最小値≦350nm (2−3)
(XIII)前記複数のナノワイヤーが10μm以上40μm以下の平均長を有する、(VII)〜(XII)のいずれかに記載の複数のナノワイヤー。
(XIV)前記複数のナノワイヤーが金属ナノワイヤーである、(VII)〜(XIII)のいずれかに記載の複数のナノワイヤー。
(XV)前記複数のナノワイヤーがニッケルから構成される、(VII)〜(XIV)のいずれかに記載の複数のナノワイヤー。
(XVI)(XIV)または(XV)に記載の複数のナノワイヤーの製造方法であって、
磁場中で金属イオンを還元することを含む、複数のナノワイヤーの製造方法。
(XVII)(VII)〜(XV)のいずれかに記載の複数のナノワイヤーが分散されたナノワイヤー分散液。
(XVIII)(VII)〜(XV)のいずれかに記載の複数のナノワイヤーを含む透明導電膜。
【発明の効果】
【0012】
本発明のナノワイヤーによれば、高い透明性と高い導電性を両立できるナノワイヤー膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1で作製したニッケルナノワイヤーのTEM画像。
図2】実施例1のナノワイヤーと比較例1および2のナノワイヤーの表面抵抗値と透過率のグラフ。
図3】実施例2のナノワイヤーと比較例3および4のナノワイヤーの表面抵抗値と透過率のグラフ。
図4】実施例3のナノワイヤーと比較例5のナノワイヤーの表面抵抗値と透過率のグラフ。
図5】実施例4のナノワイヤーと比較例6のナノワイヤーの表面抵抗値と透過率のグラフ。
図6】実施例5のナノワイヤーと比較例7のナノワイヤーの表面抵抗値と透過率のグラフ。
図7】実施例6のナノワイヤーと比較例8のナノワイヤーの表面抵抗値と透過率のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(ナノワイヤー)
本発明は、複数の粒子、特にナノ粒子、が一次元的に繋がった粒子連結形状を有する1本のナノワイヤーを提供する。粒子連結形状とは、換言すると、複数の粒子が直列かつ連続的に連結されてなる、全体として線状の形状のことである。両端の粒子はそれぞれ隣接する1つ以上の粒子と連結され、その他の各粒子は隣接する2つ以上の粒子と連結されている。このような粒子連結形状においては通常、連結部分(粒子の境界部分)で凹部を形成し、粒子部分で凸部を形成し、粒子の連結方向(ナノワイヤーの長手方向)において凹部と凸部とが連続的に繰り返されている。一般的にナノワイヤーからなる透明導電膜はナノワイヤーの形状が太い方が導電性は高くなるが、透明性は低下する。他方で、ナノワイヤーの形状が細い方が導電性は低くなるが、透明性は向上する。本発明の粒子連結形状を有するナノワイヤーは、長手方向において、凹凸を繰り返し有することで、凹部が可視光の遮蔽を低減して透明性(光線透過率)のロスを抑制し、凸部が導電性のロスを抑制する。その結果として、全体として高い透明性と高い導電性との両立が達成される。本発明のナノワイヤーは、厳密かつ明確に上記のような粒子連結形状を有さなければならないというわけではなく、ナノワイヤーの長手方向において凹部と凸部とが連続的に繰り返されて、後述のような特定の凹凸の関係を有していればよい。
【0015】
本発明のナノワイヤーを構成する各粒子は略球形状を有する。略球形状とは円形断面を有する球形状だけでなく、三角形以上の多角形、楕円形またはそれらの複合形状の断面を有する立体形状を包含して意味するものとする。
【0016】
本発明のナノワイヤーは特定の凹凸の関係を有するものである。詳しくは、本発明のナノワイヤーは、ナノワイヤー1本における直径の最大値をA(nm)、最小値をB(nm)とした場合に、下記式(1)を満たし、透明性および導電性とのさらなる向上の観点から、下記式(1’)を満たすことが好ましく、下記式(1’’)を満たすことがより好ましい。
1.5≦A/B≦2.5 (1)
1.5≦A/B≦2 (1’)
1.55≦A/B≦1.75 (1’’)
【0017】
式(1)において、A/Bの値が、1.5未満の場合、高い透明性と高い導電性の両立が難しくなり、透明性または導電性の一方が低下する。A/Bの値が2.5超の場合、弱い応力でもナノワイヤーが切断されやすくなるため、分散時または成膜時の応力でナノワイヤーの切断が起こり、導電性が低下する。本発明では、ナノワイヤー1本で上記式を満たしていることが好ましい。長手方向において略一定の断面形状を有する棒形状のナノワイヤーを、太いものと、細いものとを混合して用いても、高い透明性と高い導電性の両立は難しく、透明性または導電性の一方が低下する。
【0018】
本発明のナノワイヤーにおいて、直径の最大値Aは通常、50〜500nm、特に50〜400nmであり、透明性および導電性のさらなる向上の観点から、好ましくは50〜300nm、より好ましくは50〜200nm、さらに好ましくは60〜200nm、最も好ましくは60〜150nmである。
【0019】
本発明のナノワイヤーにおいて、直径の最小値Bは通常、10〜200nm、特に20〜200nmであり、透明性および導電性のさらなる向上の観点から、好ましくは30〜150nm、より好ましくは30〜90nm、さらに好ましくは40〜90nmである。
【0020】
本発明において直径は、ナノワイヤーの長手方向に対する垂直断面における直径を意味し、直径の最大値および最小値はナノワイヤーのTEM画像において読み取ることができる。本発明のナノワイヤーは、1本のナノワイヤーにおいて端部ではないところで直径の最大値Aを提供する。端部とはナノワイヤーの端から100nm以内のところである。
【0021】
本発明のナノワイヤーはまた、A+Bが通常は、500nm以下、特に80〜500nmであり、透明性および導電性、特に透明性のさらなる向上の観点から、下記式(2)を満たすことが好ましく、下記式(2’)を満たすことがより好ましく、下記式(2’’)を満たすことがさらに好ましい。
A+B≦350nm (2)
80nm≦A+B≦350nm (2’)
100nm≦A+B≦250nm (2’’)
【0022】
ナノワイヤーの長さは、ナノワイヤーから作製される透明導電膜の導電性や透明性に影響する。ナノワイヤーが短すぎると単位面積当たりのナノワイヤー間の接点が多くなり、透明導電膜の導電性が低下する。ナノワイヤーが長すぎるとナノワイヤーの分散性が低下するため、作製される透明導電膜にムラができやすく、均一な透明性と導電性が得られない。そのため、本発明では、ナノワイヤーの長さは10μm以上、40μm以下が好ましく、15μm以上、40μm以下がより好ましく、15μm以上、30μm以下がさらに好ましく、20μm以上、30μm以下が最も好ましい。
【0023】
本発明のナノワイヤーは、導電性を有する材料から構成されていればよく、例えば、金属ナノワイヤーであってもよいし、半導体や導電性高分子のナノワイヤーであってもよい。本発明のナノワイヤーは、導電性の観点から、金属ナノワイヤーであることが好ましい。さらに、本発明の金属ナノワイヤーは、製造方法の点からニッケル、コバルト、鉄からなる群から選択される1種以上の金属から構成されるのが好ましい。さらに本発明のナノワイヤーは、ニッケルおよび/またはコバルト、特にニッケル、から構成されることが好ましい。ニッケルおよび/またはコバルトから構成される上記形状のナノワイヤーであれば、市販されている銀ナノワイヤーと同等の透明性および導電性を有し、さらにイオンマイグレーション耐性に優れる透明導電膜を得ることができる。ナノワイヤーがニッケルおよび/またはコバルトから構成されるとは、当該ナノワイヤーは実質的にニッケルおよび/またはコバルトのみから構成されている、という意味であり、ICP発光分析または蛍光X線によりニッケルおよびコバルトは定量可能である。この場合、ナノワイヤーは厳密にニッケルおよび/またはコバルトのみから構成されなければならないというわけではなく、ナノワイヤーおよびその原料の合成時等において、本発明の効果を損なわない範囲内でニッケルおよびコバルト以外の物質を不純物として含んでもよい。
【0024】
(複数のナノワイヤー)
本発明の複数のナノワイヤーは上記したナノワイヤーを含む。ナノワイヤーの形状および寸法は、分散液または透明導電膜中における全てのナノワイヤーについて把握するのは、現実的に不可能である。本発明では、分散液または透明導電膜中の全ナノワイヤーのうちの任意の一部を評価し、上記条件を満たしていれば、透明性および導電性のさらなる向上効果が得られることを確認している。
【0025】
本発明の複数のナノワイヤーは、具体的には、粒子連結形状を有するものであって、ナノワイヤー1本における直径の最大値をA(nm)、最小値をB(nm)とした場合に、下記式(1−1)を満たし、透明性および導電性とのさらなる向上の観点から、下記式(1−1’)を満たすことが好ましく、下記式(1−1’’)を満たすことがより好ましい。
1.5≦A/Bの平均値≦2.5 (1−1)
1.5≦A/Bの平均値≦2 (1−1’)
1.55≦A/Bの平均値≦1.75 (1−1’’)
【0026】
A/Bの平均値とは、任意の100本のナノワイヤーについてのA/Bの平均値である。
【0027】
式(1−1)においてA/Bの平均値が1.5未満の場合および2.5超の場合は、それぞれ上記式(1)においてA/Bの値が1.5未満の場合および2.5超の場合と同様である。
【0028】
本発明の複数のナノワイヤーにおいて、直径の最大値Aの平均値は通常、50〜500nm、特に50〜400nmであり、透明性および導電性のさらなる向上の観点から、好ましくは50〜300nm、より好ましくは50〜200nm、さらに好ましくは60〜200nm、最も好ましくは60〜150nmである。Aの平均値とは、任意の100本のナノワイヤーについてのAの平均値である。
【0029】
本発明の複数のナノワイヤーにおいて、直径の最小値Bの平均値は通常、10〜200nm、特に20〜200nmであり、透明性および導電性のさらなる向上の観点から、好ましくは30〜150nm、より好ましくは30〜90nm、さらに好ましくは40〜90nmである。Bの平均値とは、任意の100本のナノワイヤーについてのBの平均値である。
【0030】
本発明の複数のナノワイヤーは、透明性および導電性のさらなる向上の観点から、下記式(1−2)および(1−3)を満たすことが好ましく、下記式(1−2’)および(1−3’)を満たすことが好ましく、下記式(1−2’’)および(1−3’’)を満たすことが好ましい。
1.5≦A/Bの最大値≦2.5 (1−2)
1.55≦A/Bの最大値≦2.2 (1−2’)
1.65≦A/Bの最大値≦1.85 (1−2’’)
1.5≦A/Bの最小値≦2.5 (1−3)
1.5≦A/Bの最小値≦1.9 (1−3’)
1.45≦A/Bの最小値≦1.65 (1−3’’)
【0031】
A/Bの最大値とは、任意の100本のナノワイヤーについてのA/Bの最大値である。
A/Bの最小値とは、任意の100本のナノワイヤーについてのA/Bの最小値である。
【0032】
本発明の複数のナノワイヤーはまた、A+Bの平均値が通常は、500nm以下、特に80〜500nmであり、透明性および導電性、特に透明性のさらなる向上の観点から、下記式(2−1)を満たすことが好ましく、下記式(2−1’)を満たすことがより好ましく、下記式(2−1’’)を満たすことがさらに好ましい。
A+Bの平均値≦350nm (2−1)
80nm≦A+Bの平均値≦350nm (2−1’)
100nm≦A+Bの平均値≦250nm (2−1’’)
【0033】
A+Bの平均値とは、任意の100本のナノワイヤーについてのA+Bの平均値である。
【0034】
本発明の複数のナノワイヤーはさらに、A+Bの最大値が通常、520以下、特に90〜520nmであり、A+Bの最小値が通常、480以下、特に70〜480nmである。本発明の複数のナノワイヤーは、透明性および導電性のさらなる向上の観点から、下記式(2−2)および(2−3)を満たすことが好ましく、下記式(2−2’)および(2−3’)を満たすことがより好ましく、下記式(2−2’’)および(2−3’’)を満たすことがさらに好ましく、下記式(2−2’’’)および(2−3’’’)を満たすことがさらに好ましい。
A+Bの最大値≦350nm (2−2)
A+Bの最小値≦350nm (2−3)
80nm≦A+Bの最大値≦350nm (2−2’)
80nm≦A+Bの最小値≦350nm (2−3’)
100nm≦A+Bの最大値≦350nm (2−2’’)
80nm≦A+Bの最小値≦250nm (2−3’’)
100nm≦A+Bの最大値≦250nm (2−2’’’)
100nm≦A+Bの最小値≦250nm (2−3’’’)
【0035】
A+Bの最大値とは、任意の100本のナノワイヤーについてのA+Bの最大値である。
A+Bの最小値とは、任意の100本のナノワイヤーについてのA+Bの最小値である。
【0036】
本発明の複数のナノワイヤーにおいて、平均径は、透明性および導電性のさらなる向上の観点から、40〜300nmが好ましく、50〜200nmがより好ましく、50〜180nmがさらに好ましく、70〜180nmが最も好ましい。
【0037】
平均径は、支持膜付きグリッド上で乾燥したナノワイヤーを、透過型電子顕微鏡にて60万倍で撮影し、10視野中における任意の100点におけるナノワイヤー径の平均値を計測した。
【0038】
本発明の複数のナノワイヤーにおいて、平均長は、透明性および導電性のさらなる向上の観点から、10μm以上、40μm以下が好ましく、15μm以上、40μm以下がより好ましく、15μm以上、30μm以下がさらに好ましく、20μm以上、30μm以下がさらに好ましい。
【0039】
平均長とは、任意の200本のナノワイヤーについての平均長である。
【0040】
本発明の複数のナノワイヤーは、前記したナノワイヤーと同様の材料から構成されていればよく、例えば、金属ナノワイヤーであってもよいし、半導体や導電性高分子のナノワイヤーであってもよい。本発明のナノワイヤーは、導電性の観点から、金属ナノワイヤーであることが好ましい。さらに、本発明の金属ナノワイヤーは、製造方法の点からニッケル、コバルト、鉄からなる群から選択される1種以上の金属から構成されるのが好ましい。さらに本発明の複数のナノワイヤーは、ニッケルおよび/またはコバルト、特にニッケルから構成されることが好ましい。
【0041】
本発明の複数のナノワイヤーは、溶媒中において分散可能な形態を有していているのが好ましい。溶媒中において分散可能な形態とは、当該ナノワイヤーを後述の分散媒に0.1〜2.0質量%の濃度で添加し1分間撹拌するだけで、目視による凝集物が無い状態になる形態のことであり、さらにナノワイヤーの切断が無い状態であることが好ましい。
【0042】
本発明の複数のナノワイヤーは実質的に高分子の層を有さないことが好ましい。ナノワイヤーは実質的に高分子の層を有さないとは、ナノワイヤーをリンタングステン酸染色法で染色させ、透過型電子顕微鏡にて60万倍程度で観察しても、ナノワイヤーの表面に高分子の層が全く観察されない、という意味である。高分子の層とは、高分子がナノワイヤーの表面を周方向にわたって連続して覆っている形態のことである。本発明においてナノワイヤーは、そのような層の形態を有さない高分子を有していてもよいが、分散性の向上の観点から、有さないことが好ましい。ナノワイヤーの周方向とは、ナノワイヤーの長手方向に対する垂直断面におけるナノワイヤーの周方向のことである。
【0043】
(ナノワイヤーの製造方法)
以下、複数のナノワイヤーの製造方法について説明するが、本発明の1本のナノワイヤーも製造できることは明らかである。以下、特記しない限り、ナノワイヤーは複数のナノワイヤーのことである。
【0044】
本発明のナノワイヤー(特に金属ナノワイヤー)は、例えば以下の方法により製造できる。詳しくは、磁場中で金属イオン、特にニッケルイオンを還元する。以下にその製造方法を示す。
【0045】
金属イオン(例えばニッケルイオン)を磁場中で還元するためには、金属塩を溶媒に溶解させることが好ましい。金属塩の形状(形態)は、使用する溶媒に可溶であり、還元可能な状態で金属イオンを供給できるものであればよい。金属塩としては、例えば、金属(特にニッケル)の塩化物、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩等が挙げられる。これらの塩は、水和物でも、無水物でもよい。
【0046】
還元される金属イオンの濃度は、ナノワイヤーの形状制御の観点から、反応溶液全量に対して1.5〜20μmol/gにするのが好ましく、1.5〜15μmol/g程度にするのがより好ましく、1.5〜10μmol/g程度にするのがさらに好ましい。金属イオンの濃度が20μmol/g以下であれば、ナノワイヤーの三次元的な凝集の発生(不織布形態の生成)を抑制することが可能になる。金属イオンの濃度が1.5μmol/g以上であれば、上記形状を満たすナノワイヤーが作製可能になる。
【0047】
金属イオンを還元する方法としては、還元剤を使用するのが好ましい。本製造方法においては、還元剤としては、例えば、ヒドラジン、ヒドラジン一水和物、塩化第一鉄、次亜リン酸、水素化ホウ素塩、アミノボラン類、水素化アルミニウムリチウム、亜硫酸塩、ヒドロキシルアミン類(例えば、ジエチルヒドロキシルアミン)、亜鉛アマルガム、水素化ジイソブチルアルミニウム、ヨウ化水素酸、アスコルビン酸、シュウ酸、ギ酸、塩化第一鉄、次亜リン酸、水素化ホウ素塩、アミノボラン類、アスコルビン酸、シュウ酸、ギ酸が挙げられる。好ましい還元剤はヒドラジン、ヒドラジン一水和物である。
【0048】
還元剤、特にヒドラジン一水和物の添加濃度としては、反応溶液に対して、通常は0.05〜1.0質量%であり、不織布形態の生成抑制の観点からは0.1〜0.5質量%が好ましい。
【0049】
反応溶媒としては、エチレングリコール、プロピレングリコール等のポリオール類が好ましい。ポリオール類であれば、金属塩(特にニッケル塩)および還元剤を溶解することができ、さらに反応温度においても沸騰が起きないため、再現良く反応が可能となる。
【0050】
金属イオン(例えばニッケルイオン)を還元するためにはpHおよび温度の制御が必要である。還元剤により、そのpH、温度は異なるが、例えば、エチレングリコール中でヒドラジン一水和物を使い還元反応を行う場合、その温度は70℃から100℃、pHは11から12とすることが好ましい。
【0051】
金属イオンを還元する時に印加する磁場としては、ナノワイヤーの形状制御の観点から、反応容器の中心磁場が10〜200mT程度、特に80〜180mTであるのが好ましい。磁場が弱いとナノワイヤーが生成しない。また強い磁場は発生させるのが難しいため、現実的ではない。
【0052】
本発明においては、反応溶液に高分子化合物を添加する必要は無い。ナノワイヤー作製時に高分子化合物を添加することで、分散性に優れたナノワイヤーが製造可能になるが、高分子化合物により、上記記載の凹凸が発生しにくくなる場合がある。
【0053】
ナノワイヤーの表面凹凸、平均径および平均長を制御するため、還元される金属イオンおよび還元剤の種類に応じて、反応溶液に核形成剤および/または錯化剤を添加してもよい。
【0054】
核形成剤としては、例えば、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム等の貴金属の塩が挙げられる。貴金属塩の具体例として、例えば、塩化白金酸、塩化金酸、塩化パラジウムが挙げられる。好ましい核形成剤は白金の塩、特に塩化白金酸である。
【0055】
核形成剤の量は、本発明の透明性および導電性の向上効果が得られる限り特に限定されず、例えば、核形成剤の貴金属イオン1モルに対して、還元される金属イオンのモル数が5,000〜10,000,000、特に10,000〜10,000,000となるような量であることが好ましい。
【0056】
還元反応の還元時間は、本発明のナノワイヤーが作製され得る限り特に限定されず、ナノワイヤーの形状制御の観点から、例えば10分〜1時間であり、好ましくは10分〜30分である。その後、遠心分離、ろ過、磁石による吸着等でナノワイヤーを精製回収することで、金属ナノワイヤーを得ることができる。
【0057】
上記製造方法で作製されたナノワイヤーは、作製および精製中に酸化するため、さらに還元処理を施すのが好ましい。還元処理としては、エチレングリコール等のポリオール溶媒中で150℃程度に加熱すればよい。これにより、ESCAでナノワイヤー表面に金属単体由来のピークが確認できるようになる。
【0058】
(ナノワイヤー分散液およびその製造方法)
本発明は、上記したナノワイヤーが分散された分散液も提供する。分散液中のナノワイヤーの濃度は特に限定されず、分散性のさらなる向上の観点からは、0.01〜2.0質量%程度が好ましい。当該濃度は分散液全量に対する割合である。分散媒としては、特に限定されるものではないが、ナノワイヤー表面に水酸基等の極性基を有するため、エチレングリコール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトニトリル、DMSO、DMF等の極性の有機溶媒がより好ましい。
【0059】
本発明のナノワイヤー分散液は、その性能を低下させない限り、バインダー、酸化防止剤、濡れ剤、レベリング剤等の添加剤を含んでもよいが、特にバインダーを含まないことが好ましい。
【0060】
酸化防止剤としては、塗布後に酸化防止剤あるいは副生成物が残存しないものが好ましく、例えば、ヒドラジン類、ヒドロキシルアミン類が挙げられる。また、分散液中の酸化防止剤の濃度は特に限定されないが、酸化防止剤による分散性の低下を防ぐためには、0.01〜2.0質量%程度が好ましい。
【0061】
本発明のナノワイヤー分散液は、上記したナノワイヤーを、所望の添加剤が含有された分散媒に添加し、撹拌することにより得ることができる。
【0062】
(ナノワイヤー分散液の使用)
本発明のナノワイヤー分散液を基材に塗布し、乾燥することにより、膜、積層体および配線等を形成することができる。基材としては、例えば、ガラス基板、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルムが挙げられる。
【0063】
塗布方法は特に限定されないが、例えば、ワイヤーバーコーター塗り、フィルムアプリケーター塗り、スプレー塗り、グラビアロールコーティング法、スクリーン印刷法、リバースロールコーティング法、リップコーティング、エアナイフコーティング法、カーテンフローコーティング法、浸漬コーティング法、ダイコート法、スプレー法、凸版印刷法、凹版印刷法、インクジェット法が挙げられる。
【0064】
本発明においてナノワイヤー膜は、バインダーを含まないナノワイヤー層のことであり、透明導電膜の用途に有用である。ナノワイヤー膜はバインダーを含まない本発明のナノワイヤー分散液を基材上に塗布し、乾燥することにより、形成することができる。本発明においてナノワイヤー膜を基材上に形成して透明導電膜として使用する場合、当該ナノワイヤー膜の上に光硬化性樹脂等を塗布してナノワイヤー膜が基材から剥がれないようにすることができる。透明導電膜は通常、基材および当該基材上に形成されたナノワイヤー膜を含む。
【0065】
本発明においてナノワイヤー膜は透明性および導電性に十分に優れているため、透明導電膜もまた透明性および導電性に十分に優れている。ナノワイヤー膜または透明導電膜において良好な表面抵抗値を得るためにナノワイヤー分散液の塗布量を増加させると、膜の透過率は一般に著しく低下する。しかし、本発明のナノワイヤー分散液を用いる場合は、十分に低い表面抵抗値を達成するために塗布量を増加させても、透過率の低下は十分に抑制される。従って、本発明のナノワイヤーおよびナノワイヤー膜は透明導電膜、特にタッチパネル用透明導電膜(タッチパネル用透明電極)の導電材として有用である。
【0066】
本発明においてナノワイヤー膜は、例えば、表面抵抗値が100Ω/□のとき、85%以上、好ましくは88%以上、より好ましくは91%以上の透過率を達成する。表面抵抗値が100Ω/□のときの透過率は、例えば、ナノワイヤー膜の表面抵抗値が約100Ω/□となるように塗布量を変化させた5種類のナノワイヤー膜の表面抵抗値および透過率を測定し、表面抵抗値と透過率のグラフから読み取ることにより、得ることができる。ナノワイヤー膜の表面抵抗値および透過率の詳しい測定方法は実施例に示す通りである。
【0067】
本発明においてナノワイヤー膜を、透明導電膜、特にタッチパネル用透明導電膜(タッチパネル用透明電極)の導電材として使用する場合、当該ナノワイヤー膜の目付は通常、1〜30mg/m、好ましくは5〜20mg/mある。
【実施例】
【0068】
次に、本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれらの発明によって限定されるものではない。
【0069】
実施例および比較例で用いた評価方法は以下の通りである。
【0070】
(1)ナノワイヤー平均径の測定
支持膜付きグリッド上で乾燥したナノワイヤーを、透過型電子顕微鏡にて60万倍で撮影し、10視野中における任意の100点におけるナノワイヤー径の平均値を計測した。
【0071】
(2)ナノワイヤー径の測定
分散液を支持膜付きグリッド上で乾燥し、得られたナノワイヤーを、透過型電子顕微鏡にて10万〜100万倍程度でナノワイヤーを撮影し、ナノワイヤー1本における直径の最大値、最小値を任意の100本について計測した。その値からナノワイヤー1本ごとのA値、B値、A/B値、A+B値を算出し、結果を表1にまとめた。
【0072】
(3)ナノワイヤー長の測定
分散液を試料台上で乾燥し、得られたナノワイヤーを、走査型電子顕微鏡にて2000〜6000倍で撮影し、ナノワイヤー長を計測した。任意の合計200本のナノワイヤー長から平均長を算出し、結果を表2にまとめた。
【0073】
(4)ナノワイヤー膜の表面抵抗値および透過率の測定
得られたナノワイヤー分散液をアプリケーターで、スライドガラス上に塗布し、透過率(塗布量)が異なるナノワイヤー膜を5枚得た。
得られたナノワイヤー膜の表面抵抗値について、三菱化学アナリテック社製抵抗率計MCP−T610で測定した。
透過率については、スライドガラスをブランク値として、波長550nmにおける光線透過率を測定した。従って、透過率はナノワイヤー膜のみの透過率である。
得られた5枚の表面抵抗値と対応する透過率を表3〜表8に記載し、図2図7に示した。各表または図に記載されている実施例および比較例は、有意な比較が可能なように、ナノワイヤーの平均径および平均長が略同等の実施例と比較例を組み合わせたものである。
【0074】
実施例1
塩化ニッケル六水和物0.25g(1.05mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で50gとした。この溶液を90℃に加熱し、塩化ニッケルを溶解させた。
一方、水酸化ナトリウム0.40g、塩化白金酸六水和物30.7μg(59.4nmol)をエチレングリコールに添加し、全量で49.9gにした。この溶液を90℃に加熱し、水酸化ナトリウムと塩化白金酸を溶解させた。
各溶液中の化合物がすべて溶解した後、水酸化ナトリウムが含まれる溶液にヒドラジン一水和物0.1gを溶解し、その後、2つの溶液を混合した。
混合した溶液はすぐに、中心に150mTの磁場が印加できる磁気回路に入れ、当該磁場を印加し、90〜95℃に維持したまま15分間静置して還元反応を行った。pHは11.5であった。反応溶液中のニッケルイオンの濃度は10μmol/gであった。
反応後、ネオジム磁石により、ナノワイヤーを集め、取り出すことで精製回収した。回収したナノワイヤーは、エチレングリコール30gと混合し、150℃で3時間加熱した。加熱後、再度磁石により回収することでニッケルナノワイヤーを得た。
得られたナノワイヤーを、ヒドラジン一水和物が含有したイソプロパノールに加え、ナノワイヤー濃度0.5質量%、ヒドラジン一水和物濃度0.5質量%にしたナノワイヤー分散液を作製した。
本実施例で作製したナノワイヤーのTEM画像を図1に示す。
【0075】
実施例2
塩化ニッケル六水和物0.20g(0.84mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で50gとした。この溶液を90℃に加熱し、塩化ニッケルを溶解させた。
一方、水酸化ナトリウム0.40g、塩化白金酸六水和物30.7μg(59.4nmol)をエチレングリコールに添加し、全量で49.9gにした。この溶液を90℃に加熱し、水酸化ナトリウムと塩化白金酸を溶解させた。
各溶液中の化合物がすべて溶解した後、水酸化ナトリウムが含まれる溶液にヒドラジン一水和物0.1gを溶解し、その後、2つの溶液を混合した。
混合した溶液はすぐに、中心に150mTの磁場が印加できる磁気回路に入れ、当該磁場を印加し、90〜95℃に維持したまま15分間静置して還元反応を行った。pHは11.5であった。反応溶液中のニッケルイオンの濃度は8.4μmol/gであった。
反応後、ネオジム磁石により、ナノワイヤーを集め、取り出すことで精製回収した。回収したナノワイヤーは、エチレングリコール30gと混合し、150℃で3時間加熱した。加熱後、再度磁石により回収することでニッケルナノワイヤーを得た。
得られたナノワイヤーを、ヒドラジン一水和物が含有したイソプロパノールに加え、ナノワイヤー0.5質量%、ヒドラジン一水和物0.5質量%にしたナノワイヤー分散液を作製した。
【0076】
実施例3
塩化ニッケル六水和物0.20g(0.84mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で50gとした。この溶液を90℃に加熱し、塩化ニッケルを溶解させた。
一方、水酸化ナトリウム0.40gをエチレングリコールに添加し、全量で49.9gにした。この溶液を90℃に加熱し、水酸化ナトリウムを溶解させた。
各溶液中の化合物がすべて溶解した後、水酸化ナトリウムが含まれる溶液にヒドラジン一水和物0.1gを溶解し、その後、2つの溶液を混合した。
混合した溶液はすぐに、中心に150mTの磁場が印加できる磁気回路に入れ、当該磁場を印加し、90〜95℃に維持したまま15分間静置して還元反応を行った。pHは11.5であった。反応溶液中のニッケルイオンの濃度は8.4μmol/gであった。
反応後、ネオジム磁石により、ナノワイヤーを集め、取り出すことで精製回収した。回収したナノワイヤーは、エチレングリコール30gと混合し、150℃で3時間加熱した。加熱後、再度磁石により回収することでニッケルナノワイヤーを得た。
得られたナノワイヤーを、ヒドラジン一水和物が含有したイソプロパノールに加え、ナノワイヤー濃度0.5質量%、ヒドラジン一水和物濃度0.5質量%にしたナノワイヤー分散液を作製した。
【0077】
実施例4
塩化ニッケル六水和物0.20g(0.84mmol)、クエン酸三ナトリウム二水和物50mg(0.17mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で50gとした。この溶液を90℃に加熱し、塩化ニッケルを溶解させた。
一方、水酸化ナトリウム0.40gをエチレングリコールに添加し、全量で49.9gにした。この溶液を90℃に加熱し、水酸化ナトリウムを溶解させた。
各溶液中の化合物がすべて溶解した後、水酸化ナトリウムが含まれる溶液にヒドラジン一水和物0.1gを溶解し、その後、2つの溶液を混合した。
混合した溶液はすぐに、中心に150mTの磁場が印加できる磁気回路に入れ、当該磁場を印加し、90〜95℃に維持したまま15分間静置して還元反応を行った。pHは11.5であった。反応溶液中のニッケルイオンの濃度は8.4μmol/gであった。
反応後、ネオジム磁石により、ナノワイヤーを集め、取り出すことで精製回収した。回収したナノワイヤーは、エチレングリコール30gと混合し、150℃で3時間加熱した。加熱後、再度磁石により回収することでニッケルナノワイヤーを得た。
得られたナノワイヤーを、ヒドラジン一水和物が含有したイソプロパノールに加え、ナノワイヤー濃度0.5質量%、ヒドラジン一水和物濃度0.5質量%にしたナノワイヤー分散液を作製した。
【0078】
実施例5
塩化ニッケル六水和物0.20g(0.84mmol)、クエン酸三ナトリウム二水和物100mg(0.34mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で50gとした。この溶液を90℃に加熱し、塩化ニッケルを溶解させた。
一方、水酸化ナトリウム0.40gをエチレングリコールに添加し、全量で49.9gにした。この溶液を90℃に加熱し、水酸化ナトリウムを溶解させた。
各溶液中の化合物がすべて溶解した後、水酸化ナトリウムが含まれる溶液にヒドラジン一水和物0.1gを溶解し、その後、2つの溶液を混合した。
混合した溶液はすぐに、中心に150mTの磁場が印加できる磁気回路に入れ、当該磁場を印加し、90〜95℃に維持したまま15分間静置して還元反応を行った。pHは11.5であった。反応溶液中のニッケルイオンの濃度は8.4μmol/gであった。
反応後、ネオジム磁石により、ナノワイヤーを集め、取り出すことで精製回収した。回収したナノワイヤーは、エチレングリコール30gと混合し、150℃で3時間加熱した。加熱後、再度磁石により回収することでニッケルナノワイヤーを得た。
得られたナノワイヤーを、ヒドラジン一水和物が含有したイソプロパノールに加え、ナノワイヤー濃度0.5質量%、ヒドラジン一水和物濃度0.5質量%にしたナノワイヤー分散液を作製した。
【0079】
実施例6
塩化ニッケル六水和物0.25g(1.05mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で50gとした。この溶液を90℃に加熱し、塩化ニッケルを溶解させた。
一方、水酸化ナトリウム0.40g、塩化白金酸六水和物30.7μg(59.4nmol)をエチレングリコールに添加し、全量で49.9gにした。この溶液を90℃に加熱し、水酸化ナトリウムと塩化白金酸を溶解させた。
各溶液中の化合物がすべて溶解した後、水酸化ナトリウムが含まれる溶液にヒドラジン一水和物0.1gを溶解し、その後、2つの溶液を混合した。
混合した溶液はすぐに、中心に100mTの磁場が印加できる磁気回路に入れ、当該磁場を印加し、90〜95℃に維持したまま15分間静置して還元反応を行った。pHは11.5であった。反応溶液中のニッケルイオンの濃度は10μmol/gであった。
反応後、ネオジム磁石により、ナノワイヤーを集め、取り出すことで精製回収した。回収したナノワイヤーは、エチレングリコール30gと混合し、150℃で3時間加熱した。加熱後、再度磁石により回収することでニッケルナノワイヤーを得た。
得られたナノワイヤーを、ヒドラジン一水和物が含有したイソプロパノールに加え、ナノワイヤー濃度0.5質量%、ヒドラジン一水和物濃度0.5質量%にしたナノワイヤー分散液を作製した。
【0080】
比較例1
AGS Material社製の銀ナノワイヤー分散液(Agnws−90)を、ヒドラジン一水和物が含有したイソプロパノールに加え、ナノワイヤー濃度0.5質量%、ヒドラジン一水和物濃度0.5質量%にしたナノワイヤー分散液を作製した。
【0081】
比較例2、3および5〜7
特開2012−238592号と同様の方法により、磁場を用いることなく金属イオンを還元して、ナノワイヤーを作製した。得られたナノワイヤーは、ナノワイヤー50mgに対して、エチレングリコール30gと混合し、150℃で3時間加熱した。加熱後、磁石によりナノワイヤーを回収し、得られたナノワイヤーを、ヒドラジン一水和物が含有したイソプロパノールに加え、ナノワイヤー濃度0.5質量%、ヒドラジン一水和物濃度0.5質量%にしたナノワイヤー分散液を作製した。
【0082】
比較例4
塩化ニッケル六水和物0.3g(1.26mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で50gとした。この溶液を90℃に加熱し、塩化ニッケルを溶解させた。
一方、水酸化ナトリウム0.40g、塩化白金酸六水和物30.7μg(59.4nmol)をエチレングリコールに添加し、全量で49.9gにした。この溶液を90℃に加熱し、水酸化ナトリウムと塩化白金酸を溶解させた。
各溶液中の化合物がすべて溶解した後、水酸化ナトリウムが含まれる溶液にヒドラジン一水和物0.1gを溶解し、その後、2つの溶液を混合した。
混合した溶液はすぐに、中心に150mTの磁場が印加できる磁気回路に入れ、当該磁場を印加し、90〜95℃に維持したまま15分間静置して還元反応を行った。pHは11.5であった。反応溶液中のニッケルイオンの濃度は12.6μmol/gであった。
反応後、ネオジム磁石により、ナノワイヤーを集め、取り出すことで精製回収した。回収したナノワイヤーは、エチレングリコール30gと混合し、150℃で3時間加熱した。加熱後、再度磁石により回収することでニッケルナノワイヤーを得た。
得られたナノワイヤーを、ヒドラジン一水和物が含有したイソプロパノールに加え、ナノワイヤー濃度0.5質量%、ヒドラジン一水和物濃度0.5質量%にしたナノワイヤー分散液を作製した。
【0083】
比較例8
国際公開第2015/163258号と同様の方法により、ナノワイヤー分散液を作製した。詳しくは、以下の方法を用いた。
エチレングリコールに、塩化ニッケル六水和物0.40g(1.68mmol)、クエン酸三ナトリウム二水和物50mg(0.17mmol)を溶解した。さらに、水酸化ナトリウム0.32g、第一工業製薬製ピッツコールK120Lの乾燥物3.0g、0.054Mの塩化白金酸水溶液0.92mlを順に溶解し、全量で75gになるようにエチレングリコールを添加した。
一方、エチレングリコールに、水酸化ナトリウム0.10g、クエン酸三ナトリウム二水和物50mg(0.17mmol)を溶解した。さらに、ピッツコールK120Lの乾燥物1.0g、ヒドラジン一水和物1.25gを順に溶解し、その後、全量で25gになるようにエチレングリコールを添加して、還元剤溶液を作製した。
上記2液をいずれも90〜95℃に加熱した後、温度を維持したまま混合し、反応溶液の中心に150mTの磁場を印加し、1時間30分間静置して還元反応を行った。pHは11.5であった。
得られた反応液からナノワイヤーを精製および回収するため、反応液100gをエチレングリコールで10倍に希釈し、ネオジム磁石により、ナノワイヤーを集め取り出すことで精製回収した。回収したナノワイヤーは、エチレングリコール30gと混合し、150℃で3時間加熱した。加熱後、再度磁石により回収することでニッケルナノワイヤーを得た。
得られたナノワイヤーを、ヒドラジン一水和物が含有したイソプロパノールに加え、ナノワイヤー濃度0.5質量%、ヒドラジン一水和物濃度0.5質量%にしたナノワイヤー分散液を作製した。
【0084】
実施例および比較例で得られたナノワイヤー、およびナノワイヤー分散液の評価結果を表1〜表9に示す。ナノワイヤーの平均径および平均長が略同等の実施例と比較例との組み合わせごとに、評価結果を表3〜表8に示し、またナノワイヤーの表面抵抗値と透過率のグラフを図2図7に示した。各図において、「1.E+01」は「10」を、「1.E+02」は「100」を、「1.E+03」は「1000」を意味する。
【0085】
各実施例について、表面抵抗値が100Ω/□のときの透過率(T)を各グラフから読み取り、表9に示し、以下のランク付けに従って評価した。
◎:91%≦T(最良);
○:88%≦T<91%(より良);
△:85%≦T<88%(良)。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
【表5】
【0091】
【表6】
【0092】
【表7】
【0093】
【表8】
【0094】
【表9】
【0095】
実施例1から6のナノワイヤーは、上記した式(1−1):A/B値の平均、式(2−1):A+B値の平均、およびナノワイヤーの平均長を満たしている。そのため、これらのナノワイヤーで構成されるナノワイヤー膜は、従来のニッケルナノワイヤーあるいは、平均長、平均径が似ているナノワイヤーで構成されるナノワイヤー膜より、表面抵抗値と透過率が十分に優れていた。
【0096】
特に、実施例1、4のナノワイヤーは、上記した式(1−2)および(1−3):A/B値の最大値と最小値、ならびに式(2−2)および(2−3):A+B値の最大値と最小値のすべてを満たしている。そのため、実施例1、4のナノワイヤーで構成されるナノワイヤー膜は、より一層低い表面抵抗値でも、より一層高い透過率を達成していた。
【0097】
比較例1は一般的な銀ナノワイヤーである。体積固有抵抗値はニッケルより銀の方が低い値であるにも関わらず、本発明で規定する形状を満たしていないため、同様の平均径、平均長を有する実施例1のニッケルナノワイヤーより、表面抵抗値と透過率が劣っていた。実施例1のナノワイヤーと比較例1のナノワイヤーの表面抵抗値と透過率のグラフを図2に示す。
【0098】
比較例2〜8は、各実施例に相当する平均径、平均長を有するニッケルナノワイヤーであるが、本発明で規定する形状を満たしていないため、同様の平均径、平均長を有する各実施例のニッケルナノワイヤーより、表面抵抗値と透過率が劣っていた。各実施例のナノワイヤーと相当する比較例のナノワイヤーの表面抵抗値と透過率のグラフを図2〜7に示す。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明のナノワイヤーは、透明電極および透明導電膜の導電材、特にタッチパネル用透明導電膜等のフレキシブル透明導電膜の導電材として有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7