特許第6334085号(P6334085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テールズの特許一覧

特許6334085光起電手段及び太陽光集中装置を備える気球
<>
  • 特許6334085-光起電手段及び太陽光集中装置を備える気球 図000002
  • 特許6334085-光起電手段及び太陽光集中装置を備える気球 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334085
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】光起電手段及び太陽光集中装置を備える気球
(51)【国際特許分類】
   B64B 1/58 20060101AFI20180521BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20180521BHJP
   H01L 31/042 20140101ALI20180521BHJP
【FI】
   B64B1/58
   B64D27/24
   H01L31/04 500
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-256322(P2012-256322)
(22)【出願日】2012年11月22日
(65)【公開番号】特開2013-107638(P2013-107638A)
(43)【公開日】2013年6月6日
【審査請求日】2015年11月2日
(31)【優先権主張番号】1103552
(32)【優先日】2011年11月22日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505157485
【氏名又は名称】テールズ
(74)【代理人】
【識別番号】100071054
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高久
(72)【発明者】
【氏名】シュセル、ジャン−フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】プロスト、ジャン−ピエール
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−221387(JP,A)
【文献】 米国特許第03153878(US,A)
【文献】 特開平08−306218(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0229850(US,A1)
【文献】 米国特許第03565368(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64B 1/00 − 1/70
B64D 27/24
H01L 31/042 − 31/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光を受けるように意図された能動面を有した光起電手段が気嚢に設置される気球であって、前記気嚢が少なくとも:
―太陽光に対して透明な第一の区域(ZT)と、
―前記太陽光用の第二の反射区域(ZR)と、
―その前記能動面が前記気嚢の内側に向けられている、前記光起電手段が設置される第三の区域(ZC)と、
―前記太陽光を前記第三の区域(ZC)の方向に反射するように設置され、協調している前記第二の反射区域(ZR)及び前記第三の区域(ZC)と
を備え、
前記気嚢を構成する膜である前記第二の反射区域(ZR)が、前記第三の区域(ZC)の方向に前記太陽光を集中させるのに適した形状を示していることを特徴とする気球。
【請求項2】
前記光起電手段が太陽電池パネルであることを特徴とする、請求項1に記載の光起電手段を装備する気球。
【請求項3】
光起電手段を装備する気球であって、少なくとも:
―前記第一の区域(ZT)が前記太陽光を前記第二の反射区域(ZR)の方向に反射する、前記第一の区域(ZT)及び前記第二の反射区域(ZR)と、
―前記第二の反射区域(ZR)と前記第三の区域(ZC)が、前記太陽光を前記第三の区域(ZC)の方向に反射するように協調するために設置されていることと
を含むのを特徴とする、請求項1あるいは2のいずれか一項に記載の気球。
【請求項4】
前記光起電手段が前記気嚢の外側に設置されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光起電手段を装備する気球。
【請求項5】
前記第三の区域(ZC)に気嚢の透明部分を追加的に備え、前記第三の区域(ZC)の前記気嚢の前記透明部分を太陽光が通過して、前記気嚢の外側に設置された前記光起電手段が太陽光を受けることを特徴とする、請求項4に記載の光起電手段を装備する気球。
【請求項6】
前記光起電手段が前記気嚢の内側に設置されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光起電手段を装備する気球。
【請求項7】
前記光起電手段が前記気嚢内に作られた開口の中に設置されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光起電手段を装備する気球。
【請求項8】
前記気嚢と前記光起電手段との間にシーリング用のジョイントを追加的に備えることを特徴とする、請求項7に記載の光起電手段を装備する気球。
【請求項9】
前記気嚢が放物形を示すことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光起電手段を装備する気球。
【請求項10】
前記第二の反射区域(ZR)が放物面を示すことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の光起電手段を装備する気球。
【請求項11】
前記気嚢が第一の膜と第二の膜を備え、前記第二の反射区域(ZR)を含む前記気嚢の前記第一の膜の形状と、前記気嚢の前記第二の膜の形状が異なっていことを特徴とする、請求項10に記載の光起電手段を装備する気球。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、気球及びとりわけ成層圏の気球に関する。一般的に気球は、地上のアンテナ又は人工衛星と比較して低いコストに起因するだけでなく、それらが稼動できる高度にも起因する、高い適用の潜在能力を示す。成層圏は人工衛星に到達できず、観測ロケットによって余りに早く横切られる。気球、もしくは科学用語で“aerostat”は、高度が12〜45kmの間に及ぶ、大気のこの「中間」層内を長期間にわたって移動することができ、或る範囲の用途への対応に関して、そしてとりわけ遠隔通信の分野において、それらを特に前途有望なものとする。
【背景技術】
【0002】
歴史的に、気球は大気及び天文学を研究するために使用されている。宇宙活動の発展は、それらの応用分野が拡大されることを可能にしている。今日、多くの気球の飛行は、例えば人工衛星上への設置を目的とする機器のテストという、技術的な目的を有する。
【0003】
しかしながら、一般にこの種の気球においては2つの対処すべき問題がある。
―一方では、適切な気嚢容積によって解決される、浮力の問題があり、
―他方では、太陽エネルギーから太陽電池によって提供される、一般に電気的な動力源に頼ることを必要とする、気球を駆動するための推進力の問題がある。
【0004】
一般的に、ステーションの保持が数ヶ月の期間にわたるとき、自律的であるべき誘導される成層圏の気球に関して、それは太陽電池の助けでそのエネルギーを生み出さなければならない。典型的には10m/sを超える成層圏風の条件下で、そして連続的な任務に対して、日中の間に生み出された電気エネルギーは、夜間において使われるために蓄えられる。日中の電力生産は急速に数十kwに、すなわち太陽電池の数百m、従って数百kg相当に達する。運ばれる重量が大きい程、気球のサイズは大きくなり、その風の抵抗は大きくなり、そしてステーションを保持するとき、気球が任務に就いている位置に維持するために風に対抗する、モーターに電力を供給するのに必要な電気エネルギーは多くなるため、重量の評価は成層圏の気球の実現可能性に関する大きな要因である。
【0005】
現行の解決策は、太陽光Rを電気エネルギーへと変換するために、太陽光Rを獲得できる太陽電池PVを大きな表面積にわたり備える、先行技術の気球を概略的に示す図1に例証されるように、望ましくない重量の評価を伴って、気球の上部表面を太陽電池で覆うことをもたらす。
【0006】
太陽光を受けるように意図された能動面を示し、そして太陽光に対して透明な区域と前記光起電手段を含む区域とを備える気嚢を含み、その能動面が前記気嚢の内側に向けられている、光起電手段を装備した気球を提案する、米国特許出願第2010/0229850号明細書から特に知られている解決策がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
これに関連して、本発明は、所定量の電気エネルギーを発生させるために必要な太陽電池の数を低減するために、気球によって受けた太陽エネルギーが、より小さい表面上に集められる解決策を提案し、従って組立品全体の重量を軽くすることを提供する。
【0008】
より具体的には、本発明の主題は、太陽光を受けるように意図された能動面を示し、気嚢を含んだ光起電手段を装備する気球であって、その気嚢が少なくとも:
―太陽光に対して透明な第一の区域と、
―前記太陽光用の第二の反射区域と、
―その能動面が前記気嚢の内側に向けられている、前記光起電手段を含む第三の区域と、
―太陽光を前記第三の区域の方向に反射するように設置され、協調している第二及び第三の区域とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の1つの変形によれば、光起電手段は太陽電池パネルである。
【0010】
本発明の1つの変形によれば、気球は第一の反射区域及び第二の反射区域を備え、前記第一の反射区域は、太陽光を前記第二の反射区域の方向に反射し、前記第二の反射区域と前記第三の区域は、太陽光を前記第三の区域の方向に反射するように協調するために設置されている。
【0011】
本発明の1つの変形によれば、光起電手段は気嚢の外側に設置され、第三の区域は太陽光に対して少なくとも部分的に透明である。有利なことに、気球は前記第三の区域に位置する副気嚢を追加的に備えることができ、前記第三の区域が太陽光の集中した反射照射から保護されることを可能にする。
【0012】
本発明の1つの変形によれば、光起電手段は気嚢の内側に設置される。
【0013】
本発明の1つの変形によれば、光起電手段は気嚢内に作られた開口の中に設置される。
【0014】
本発明の1つの変形によれば、反射区域は前記第三の区域の方向に太陽光を集中させるのに適した形状を示す。
【0015】
本発明の1つの変形によれば、気嚢は放物形を示す。
【0016】
本発明の1つの変形によれば、反射区域は放物面を示す。
【0017】
本発明の1つの変形によれば、気嚢の形状は浮力を最適化するために適していてもよい。
【0018】
本発明の1つの変形によれば、気嚢はその内側に反射区域を含む第一の膜と第二の膜を備える。
【0019】
本発明の1つの変形によれば、反射区域を含む気嚢の第一の膜の形状と気嚢の第二の膜の形状は異なり、気嚢の第一の膜の形状は浮力に関して最適化され、気嚢の第二の膜の形状は太陽光を集中させるために最適化されている。
【0020】
本発明は制限されない方法で与えられる以下の記述を読むことにより、そして添付図に関連してより良く理解され、その他の利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】先行技術による成層圏の気球の略図を示す。
図2】本発明による気球を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、成層圏の気球との関連において今後説明されるが、それはまた任意のタイプの気球にも適用され得る。一般に、成層圏の気球はヘリウムで膨らんだ、加圧された気嚢を備える。本発明との関連で、前記気嚢は少なくとも、太陽光を通過させる第一の透明な区域と、太陽電池の能動的検出面が気球の内側へと向けられるように方向付けられる、それら太陽電池により形成される手段を含んだ第三の区域に向けて光線を反射するための、第二の反射区域とを備える。
【0023】
反射面の形状は、太陽光を前記太陽電池へと集中させるように適合され得る。
【0024】
図2はこのように、気嚢を表わす本発明の気球を概略的に示す。気嚢は太陽光Rに対して透明な第一の区域ZT、前記太陽光のための第二の反射区域ZR、及びその能動面Faが前記気嚢の内側に向けられている、前記太陽電池を含む第三の区域ZCを備える。第二及び第三の区域は、太陽光を前記第三の区域の方向に反射させるために協調するように設置される。さらに、気嚢の形状はまた、太陽光の反射光線Rの光束角度を調節し、それを太陽電池の能動面上へと集中させる。
【0025】
気嚢は、有利なことに強化された複合ポリウレタンで作られ得る。このために、太陽光に対して透明なポリウレタンが存在する。反射区域に関して、反射コーティングで被覆され、前記ポリウレタンの気嚢に対して設置される織物に関する用意がなされ得る。
【0026】
本発明の1つの変形によれば、太陽電池は気球の内側に設置され、集中した太陽光を直接受ける。それらはこの場合、気嚢へ接着され得る。この構成は非常に良好な収率を確保する利点を示し、透明な気嚢部分は、このレベルの気嚢において反射され集中した太陽光によって熱せられないため、透明な気嚢部分の早期の摩耗防止を提供する。この変形によれば、前記太陽電池と連結された冷却手段に関する用意がなされ得る。
【0027】
本発明の1つの変形によれば、太陽電池が気球の外側の気嚢に設置され、集中した太陽エネルギーは、そのとき太陽光を捕集するために専用である第一の区域以外の、気嚢の透明部分を通過する。この配置は、太陽電池の加熱が外側で生じ、従って自然通風が有効であるため、前記電池の冷却に有利に働く。この場合、第二の膜が太陽光の集中した光線を受ける限り、気嚢を第二の膜が保護する用意が有利になされ得る。特定のポリウレタン・フィルムがこの目的のために使用され得る。
【0028】
本発明の1つの変形によれば、太陽電池は気球の気嚢と一体化される。このために、その中に前記太陽電池が組み込まれる開口が、気嚢内に作られる。この場合、太陽電池により形成される気嚢の部分と気嚢の別の部分との間に、シーリングを備えるためにジョイントが用いられる。
【0029】
使用される変形に関わらず、気嚢の反射区域ZRは気嚢の形をとることができる。この場合、気嚢の形は気球の浮力及び、太陽電池に向けられる太陽光の光学的集中の両方を最適化するように選ばれる。
【0030】
本発明の1つの変形によれば、気嚢の形状とは異なる形状もまた持てるように、気嚢は反射区域ZRを含む第一の膜及び第二の膜を備えることができる。この場合、気嚢の形状と反射面の形状は別々に選ばれ得る。気嚢の形状は浮力を最適化するように構成されることができ、反射面の形状は光学的な理由のためだけに選ばれる。この場合、有利には、反射区域は太陽光の入射角もまた考慮してその形状を最適化するように、変形可能である。この角度は一日の時間帯、季節、気球の高度と地理的な位置によって変化し得る。
【0031】
一般的に、気嚢の形状は望ましくは回転型のうちの1つである。気嚢用の楕円形は、とりわけ反射面が気嚢の表面と同じ場合、満足できる浮力及び光学性能を提供するのに適している。代わりに、気嚢は放物形であり得る。
【0032】
とりわけ反射区域の形状が気嚢の形状と無関係の場合、放物形と同様に球形であり得る、通常の形状の気球が用いられ得る。
【0033】
反射区域の形状は、望ましくは放物形である。
【0034】
一般的に気嚢の構成は、その一部分を形成する反射区域に、太陽光を太陽電池の方向へ集中させる能力を与えるように導く。集中係数は調整可能であり得る。太陽光の角度θは一日の時間と共に変化するため、それは一日の時間と共に変化して、一般に1よりも大きく5未満であり得る。
【0035】
太陽光の幾何学的集中は、従って太陽電池の表面積及び、それゆえ関連する重量の大幅な低減を提供する。
【0036】
1つの変形によれば、成層圏の気球は、様々な反射区域が相互に、そして太陽電池パネルの能動面と協調している、1つ以上の反射区域もまた備え得る。
【0037】
成層圏の気球の例
与えられた任務用の成層圏の気球の機上に搭載する重量を考慮に入れて、例えばヘリウムで膨らませる気嚢の必要な容積が定義され、浮力の計算が気球の形状及びそれゆえ適切な表面を調整する。気球は50000mのオーダーの容積、及び4tのオーダーの搭載重量を示し、放物形の気嚢を備える。気嚢の第一部分は、太陽光に対して透明な複合ポリウレタンにより形成される。同じく放物形である気嚢の第二部分は、反射コーティングを含む。気嚢の第三部分は、前記気嚢に接着された一群の太陽電池を備える。
【符号の説明】
【0038】
R 太陽光
PV 太陽電池
θ 太陽光の角度
ZC 第三の区域
Fa 能動面
太陽光の反射光線
ZT 第一の区域
ZR 第二の反射区域
図1
図2