【実施例】
【0029】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0030】
図において、符号1は、自動車で例示される車両であり、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。
【0031】
上記車両1の車体2は、この車体2の下部を構成すると共にこの車体2の骨格部材を構成する車体フレーム3と、この車体フレーム3上に支持され、内部が車室4とされる板金製の車体本体(ボデー)5と、上記車体フレーム3の前、後部にそれぞれ不図示の懸架装置により支持される左右一対の前、後車輪6,7とを備え、これら前、後車輪6,7によって車体2が走行面8上に支持される。
【0032】
上記車体本体5は、左右側壁11と、これら左右側壁11の各上端縁部に架設され、上記車室4の上面を形成するルーフパネル12とを有している。また、上記側壁11は、その外側面を形成し、その前、後端部がわが上記前、後車輪6,7によって走行面8上に支持されるサイドアウタパネル15と、このサイドアウタパネル15に車室4側から少し離れて対面し、この車室4の内側面を形成するサイドインナパネル16とを有している。これらサイドアウタ、サイドインナパネル15,16のそれぞれ面方向の外縁部は互いにスポット溶接により結合され、上記側壁11の各部は中空閉断面構造とされて強度、剛性の向上が図られている。また、上記サイドアウタパネル15の前、後端部のそれぞれ少なくとも一部分は、車体2の側面視(
図1)で、前、後車輪6,7の上方に位置している。
【0033】
上記サイドアウタパネル15は、その面方向の外縁部を構成し、一枚の板金材から一体的に加圧形成される枠形状パネル19と、この枠形状パネル19の上、下部部材20,21のそれぞれ車体2の前後方向の各中途部に架設され、これら中途部同士を結合するセンタピラーアウタパネル22とを有している。上記サイドインナパネル16は、上記サイドアウタパネル15と同様の構成を有し、詳図しないが、上記枠形状パネル19、および上、下部部材20,21にそれぞれ相当する部材を有し、また、上記センタピラーアウタパネル22に相当するセンタピラーインナパネル23を有している。
【0034】
上記の場合、サイドアウタパネル15における枠形状パネル19の上部部材20と、これに相当するサイドインナパネル16の部材とにより、車体2において、通常、ルーフサイドレールといわれるものが形成される。また、サイドアウタパネル15における枠形状パネル19の下部部材21と、これに相当するサイドインナパネル16の部材とにより、車体2において、通常、ロッカといわれるものが形成される。
【0035】
上記センタピラーアウタ、センタピラーインナパネル22,23の各前、後端縁部同士が二枚重ねとされてそれぞれスポット溶接Sにより結合され、これにより、センタピラーが形成される。上記サイドアウタパネル15における枠形状パネル19と、センタピラーアウタパネル22とで囲まれるよう形成される前、後空間が車室4の内外を連通させる前、後ドア開口27,28とされる。
【0036】
上記センタピラーアウタパネル22は、上記枠形状パネル19とは別体に形成され、上記センタピラーアウタパネル22の上、下端縁部は、上記枠形状パネル19の上、下部部材の各中途部に対しレーザー溶接Wにより突き合せ結合される。この場合、枠形状パネル19とセンタピラーアウタパネル22とを、それぞれ個別に所定形状に加圧形成した後、これら19,22を上記したようにレーザー溶接Wしてもよく、また、上記枠形状パネル19とセンタピラーアウタパネル22との各材料パネルを予めレーザー溶接Wして一体パネルとした後、これを加圧形成して上記サイドアウタパネル15を形成するようにしてもよい。
【0037】
上記サイドアウタパネル15におけるセンタピラーアウタパネル22の板厚と強度とは、上記枠形状パネル19のそれよりも大きくされる。具体的には、上記枠形状パネル19は、その板厚がt1とされ、引張強度がT1の高張力鋼板とされる一方、上記センタピラーアウタパネル22は、その板厚がt2とされ、引張強度がダイクエンチ加工によりT2の超高張力鋼板とされて、t1<t2、T1<T2とされる。また、上記サイドアウタパネル15の上下方向での各部断面において、上記センタピラーアウタパネル22の車体2の前後方向における長さ寸法を所定寸法内に抑制する一方、車体2の幅方向における外幅寸法を上記枠形状パネル19のそれより大きくするなどして、車体2の前後方向に延びる中立軸に関しての上記センタピラーアウタパネル22の断面係数を、より大きくさせるようにしてもよい。
【0038】
ここで、上記ダイクエンチ加工とは、上記サイドアウタパネル15のセンタピラーアウタパネル22を加圧形成するに際し、このセンタピラーアウタパネル22の材料パネルを一旦加熱し、この加熱した材料パネルを、金型で加圧形成すると同時に、この金型への接触により冷却し、焼入れをするという公知の工法である。この工法において、加工後の製品表面に酸化皮膜が生じた場合、これはショットピーニングなどにより除去可能とされる。
【0039】
そして、上記したようにセンタピラーアウタパネル22の板厚、強度、および断面係数を大きくすることにより、車両1の走行時に、前、後車輪6,7を介し走行面8から上記サイドアウタパネル15のセンタピラーアウタパネル22に与えられる衝撃力や、車体2の外側方から上記サイドアウタパネル15のセンタピラーアウタパネル22に対し与えられる外力Fに対し、上記センタピラーアウタパネル22の剛性を十分に向上させている。
【0040】
なお、上記センタピラーアウタパネル22は、上記枠形状パネル19と一体的に加圧形成してもよい。また、この場合、上記サイドアウタパネル15のパネル材のうち、上記センタピラーアウタパネル22に相当する部分のみをダイクエンチ加工するなどして、その強度を向上させればよく、また、上記センタピラーアウタパネル22に相当する部分の断面係数をより向上させてもよい。
【0041】
上記構成によれば、センタピラーアウタパネル22の強度を、枠形状パネル19のそれよりも大きくしている。
【0042】
ここで、前記したようにサイドアウタパネル15における少なくとも枠形状パネル19が一体的に形成されている分、このサイドアウタパネル15の形成作業が容易にできる。
【0043】
一方、車両1の走行時に、前、後車輪6,7を介し走行面8から車体2のサイドアウタパネル15に衝撃力が与えられるとき、前記従来の技術に詳述したように、上記サイドアウタパネル15における枠形状パネル19の上、下部部材20,21の各中途部に架設されてサイドアウタパネル15の面方向の中央部を構成するセンタピラーアウタパネル22には大きい外力が負荷されて、このセンタピラーアウタパネル22には、その厚さ方向である車体2の幅方向に弾性的に大きく屈曲変形するおそれが生じる。
【0044】
しかも、上記サイドアウタパネル15の枠形状パネル19の前、後端部の少なくとも一部分は、車体2の側面視(
図1)で、上記前、後車輪6,7の上方に配置されている。このため、このように枠形状パネル19が上記前、後車輪6,7に跨るよう形成された分、上記枠形状パネル19は、その車体2の前後方向における長さが長くなりがちである。この結果、上記センタピラーアウタパネル22は、上記した車両1の走行時の衝撃力により、その厚さ方向に、より大きく弾性的に屈曲変形するおそれが生じる。
【0045】
しかし、上記構成によれば、センタピラーアウタパネル22の強度を大きくしたため、このセンタピラーアウタパネル22の剛性を向上させることは容易にでき、これにより、上記サイドアウタパネル15の面方向の中央部を構成する上記センタピラーアウタパネル22が上記衝撃力により容易に屈曲変形することは、より確実に防止される。よって、車両1の走行中の衝撃力により上記サイドアウタパネル15に捩れなどの変形が生じることは、より確実に防止され、この結果、車両1の操安性や乗り心地が良好に維持される。
【0046】
また、車体2の側面に対し何らかの物体が衝突(側突)した時には、その外力Fである衝撃力は、上記したように大きい剛性とされた上記センタピラーアウタパネル22によって強固に支持され、このセンタピラーアウタパネル22が車体2の内部がわに大きく変形することは、より確実に防止される。そして、これは、上記センタピラーアウタパネル22の前、後方の前、後ドア開口27,28に対応する車体2の内部に居る乗員の保護にとって、極めて有益である。
【0047】
また、上記したようにセンタピラーアウタパネル22の強度を大きくしたため、このセンタピラーアウタパネル22の剛性の向上は、このセンタピラーアウタパネル22の長手方向各部の断面積が大きくなることを抑制しつつ達成できる。よって、上記したようにセンタピラーアウタパネル22の剛性を向上させた場合でも、このセンタピラーアウタパネル22に因り上記前、後ドア開口27,28が狭められることは防止され、これらドア開口27,28を通しての車室4への乗降が円滑にできる。
【0048】
また、上記諸効果は、上記サイドアウタパネル15の枠形状パネル19を一体的に形成したことと、センタピラーアウタパネル22の強度を上記枠形状パネル19のそれよりも大きくしたこととにより達成可能である。よって、上記構成によれば、従来、前記ルーフサイドレールの補強用として設けていたルーフサイドレール補強パネル31や、前記センタピラーの補強用として設けていたセンタピラー補強パネル32を不要にすることができ、その分、車体2の構成をより簡単に、かつ、軽量にできて、その生産性を向上させることができる。
【0049】
また、前記したように、センタピラーアウタパネル22を枠形状パネル19とは別体に形成している。
【0050】
このため、上記センタピラーアウタパネル22は、上記枠形状パネル19の板厚や材質などの影響を受けることなく、これら板厚などの諸条件を自由に設定できる。よって、上記センタピラーアウタパネル22は、その板厚の他、形状など諸条件の設定の自由度が向上し、これにより、強度や外観上の見栄えの点で、より所望のサイドアウタパネル15を得ることができる。
【0051】
また、前記したように、センタピラーアウタパネル22を枠形状パネル19と一体的に形成している。
【0052】
このため、上記サイドアウタパネル15における枠形状パネル19とセンタピラーアウタパネル22とを個別に形成して、互いに組み付けることに比べ、上記サイドアウタパネル15の形成作業は、より容易にできる。
【0053】
なお、上記サイドアウタパネル15の枠形状パネル19やセンタピラーアウタパネル22の剛性の向上のために、これらに通常のクエンチ加工を施して強度を向上させたり、板厚をより大きくしたり、より強度の大きい高張力鋼板を用いたりしてもよい。また、上記枠形状パネル19も上記センタピラーアウタパネル22と共にダイクエンチ加工してもよい。また、上記サイドアウタパネル15の枠形状パネル19とセンタピラーアウタパネル22とは、アルミニウム合金などの金属材製や、炭素繊維(カーボン)材製や、射出形成されたり繊維で強化されたりした樹脂製のものであってもよく、これらの組み合わせ体であってもよい。