特許第6334146号(P6334146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334146
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 17/06 20060101AFI20180521BHJP
   F25D 11/02 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   F25D17/06 313
   F25D17/06 316
   F25D11/02 D
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-244943(P2013-244943)
(22)【出願日】2013年11月27日
(65)【公開番号】特開2015-102315(P2015-102315A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 秀竹
(72)【発明者】
【氏名】野口 明裕
【審査官】 小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−039974(JP,A)
【文献】 特開2003−287344(JP,A)
【文献】 特開平06−123541(JP,A)
【文献】 特開平09−089434(JP,A)
【文献】 特開2000−146400(JP,A)
【文献】 特開平08−296942(JP,A)
【文献】 特開昭61−003969(JP,A)
【文献】 特開2005−016877(JP,A)
【文献】 特開平07−019699(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0111933(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 1/00 − 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵庫と、
圧縮機、凝縮器および蒸発器を順次接続した冷凍サイクルと、
前記冷凍サイクルにて冷却された空気を前記貯蔵庫へ供給する冷却ファンと、
前記貯蔵庫の温度を検知する貯蔵庫温度検知手段と、
前記蒸発器の温度を検知する蒸発器温度検知手段と、
貯蔵庫温度検知手段で検知した前記貯蔵庫の温度である庫内温度と前記蒸発器温度検知手段で検知した前記蒸発器の温度である蒸発器温度との差分である温度差が、所定の判定期間内において所定の許容範囲内で推移している際、前記冷却ファンの回転数を下げる回転数抑制制御を実行する制御手段と、を備え、
前記貯蔵庫は、冷蔵空間と冷凍空間とが設けられており、
前記貯蔵庫温度検知手段は、前記冷蔵空間の温度を冷蔵温度として検知する冷蔵温度検知手段と、前記冷凍空間の温度を冷凍温度として検知する冷凍温度検知手段とが設けられており、
前記制御手段は、前記庫内温度として前記冷蔵空間の温度と前記冷凍温度とをそれぞれ検知し、前記冷蔵温度と前記蒸発器温度との温度差である冷蔵温度差、ならびに、前記冷凍温度と前記蒸発器温度との温度差である冷凍温度差に基づいて、前記冷蔵空間および前記冷凍空間のうち空気の供給先とされた貯蔵庫を対象として前記回転数抑制制御を実行し、
前記冷却ファンにより供給される空気の流路を前記冷蔵空間または前記冷凍空間の何れか一方に切り換えるダンパ機構をさらに備え、
前記制御手段は、前記ダンパ機構により空気の供給先が切り換えられたとき、所定の待機期間が経過するまで前記回転数抑制制御の実行を抑制することを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
貯蔵庫と、
圧縮機、凝縮器および蒸発器を順次接続した冷凍サイクルと、
前記冷凍サイクルにて冷却された空気を前記貯蔵庫へ供給する冷却ファンと、
前記貯蔵庫の温度を検知する貯蔵庫温度検知手段と、
前記蒸発器の温度を検知する蒸発器温度検知手段と、
貯蔵庫温度検知手段で検知した前記貯蔵庫の温度である庫内温度と前記蒸発器温度検知手段で検知した前記蒸発器の温度である蒸発器温度との差分である温度差が、所定の判定期間内において所定の許容範囲内で推移している際、前記冷却ファンの回転数を下げる回転数抑制制御を実行する制御手段と、を備え、
前記貯蔵庫は、冷蔵空間と冷凍空間とが設けられており、
前記蒸発器は、前記冷蔵空間用の冷蔵用蒸発器と、前記冷凍空間用の冷凍用蒸発器とが設けられており、
前記蒸発器温度検知手段は、前記冷蔵用蒸発器の温度を検知する冷蔵蒸発器温度検知手段と、前記冷凍用蒸発器の温度を検知する冷凍蒸発器温度検知手段とが設けられており、
前記制御手段は、前記冷蔵空間が空気の供給先とされている場合には、前記冷蔵温度と前記冷蔵用蒸発器の温度との温度差に基づいて前記回転数抑制制御を行う一方、前記冷凍空間が空気の供給先とされている場合には、前記冷凍温度と前記冷凍用蒸発器の温度との温度差に基づいて前記回転数抑制制御を実行し、
前記冷却ファンにより供給される空気の流路を前記冷蔵空間または前記冷凍空間の何れか一方に切り換えるダンパ機構をさらに備え、
前記制御手段は、前記ダンパ機構により空気の供給先が切り換えられたとき、所定の待機期間が経過するまで前記回転数抑制制御の実行を抑制することを特徴とする冷蔵庫。
【請求項3】
貯蔵庫と、
圧縮機、凝縮器および蒸発器を順次接続した冷凍サイクルと、
前記冷凍サイクルにて冷却された空気を前記貯蔵庫へ供給する冷却ファンと、
前記貯蔵庫の温度を検知する貯蔵庫温度検知手段と、
前記蒸発器の温度を検知する蒸発器温度検知手段と、
貯蔵庫温度検知手段で検知した前記貯蔵庫の温度である庫内温度と前記蒸発器温度検知手段で検知した前記蒸発器の温度である蒸発器温度との差分である温度差が、所定の判定期間内において所定の許容範囲内で推移している際、前記冷却ファンの回転数を下げる回転数抑制制御を実行する制御手段と、を備え、
前記貯蔵庫は、冷蔵空間と冷凍空間とが設けられており、
前記貯蔵庫温度検知手段は、前記冷蔵空間の温度を冷蔵温度として検知する冷蔵温度検知手段と、前記冷凍空間の温度を冷凍温度として検知する冷凍温度検知手段とが設けられており、
前記制御手段は、前記庫内温度として前記冷蔵空間の温度と前記冷凍温度とをそれぞれ検知し、前記冷蔵温度と前記蒸発器温度との温度差である冷蔵温度差、ならびに、前記冷凍温度と前記蒸発器温度との温度差である冷凍温度差に基づいて、前記冷蔵空間および前記冷凍空間のうち空気の供給先とされた貯蔵庫を対象として前記回転数抑制制御を実行し、
前記貯蔵庫を開閉する扉の開閉を検知する開扉検知手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記開扉検知手段により扉の開閉が検知されていない状態で空気の供給先が切り換えられたとき、前記冷却ファンの回転数を前回の前記回転数抑制制御にて設定された回転数に設定した上で、前記回転数抑制制御を実行することを特徴とする冷蔵庫。
【請求項4】
貯蔵庫と、
圧縮機、凝縮器および蒸発器を順次接続した冷凍サイクルと、
前記冷凍サイクルにて冷却された空気を前記貯蔵庫へ供給する冷却ファンと、
前記貯蔵庫の温度を検知する貯蔵庫温度検知手段と、
前記蒸発器の温度を検知する蒸発器温度検知手段と、
貯蔵庫温度検知手段で検知した前記貯蔵庫の温度である庫内温度と前記蒸発器温度検知手段で検知した前記蒸発器の温度である蒸発器温度との差分である温度差が、所定の判定期間内において所定の許容範囲内で推移している際、前記冷却ファンの回転数を下げる回転数抑制制御を実行する制御手段と、を備え、
前記貯蔵庫は、冷蔵空間と冷凍空間とが設けられており、
前記蒸発器は、前記冷蔵空間用の冷蔵用蒸発器と、前記冷凍空間用の冷凍用蒸発器とが設けられており、
前記蒸発器温度検知手段は、前記冷蔵用蒸発器の温度を検知する冷蔵蒸発器温度検知手段と、前記冷凍用蒸発器の温度を検知する冷凍蒸発器温度検知手段とが設けられており、
前記制御手段は、前記冷蔵空間が空気の供給先とされている場合には、前記冷蔵温度と前記冷蔵用蒸発器の温度との温度差に基づいて前記回転数抑制制御を行う一方、前記冷凍空間が空気の供給先とされている場合には、前記冷凍温度と前記冷凍用蒸発器の温度との温度差に基づいて前記回転数抑制制御を実行し、
前記貯蔵庫を開閉する扉の開閉を検知する開扉検知手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記開扉検知手段により扉の開閉が検知されていない状態で空気の供給先が切り換えられたとき、前記冷却ファンの回転数を前回の前記回転数抑制制御にて設定された回転数に設定した上で、前記回転数抑制制御を実行することを特徴とする冷蔵庫。
【請求項5】
前記貯蔵庫を開閉する扉の開閉を検知する開扉検知手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記開扉検知手段により扉の開閉が検知された場合、前記冷却ファンの回転数を初期回転数に設定することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記制御手段は、前記庫内温度と前記蒸発器温度との温度差が所定の上限温度差を超えた場合、または、前記庫内温度と前記蒸発器温度との温度差が所定の上限温度勾配を超えて大に推移した場合、前記回転数抑制制御の実行を抑制するとともに、前記冷却ファンの回転数を上げることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記制御手段は、前記庫内温度と前記蒸発器温度との温度差が所定の下限温度差を下回っている場合、または、前記庫内温度と前記蒸発器温度との温度差が所定の下限温度勾配を超えて小に推移した場合、前記判定期間の終了を待機することなく前記冷却ファンの回転数を下げることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記制御手段は、前記回転数抑制制御を実行することで前記冷却ファンの回転数が最小回転数となった状態で前記庫内温度と前記蒸発器温度との温度差が前記許容範囲内で小に推移している際、前記圧縮機の運転周波数を下げることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項記載の冷蔵庫。
【請求項9】
前記制御手段は、前記冷却ファンの回転数が最大回転数となった状態で前記庫内温度と前記蒸発器温度との温度差が前記許容範囲を超えて大に推移している際、前記圧縮機の運転周波数を上げることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項記載の冷蔵庫。
【請求項10】
前記蒸発器温度検知手段は、前記蒸発器に冷媒が流入する入り口側の温度を入口蒸発器温度として検知する入口温度検知手段と、前記蒸発器から冷媒が流出する出口側の温度を出口蒸発器温度として検知する出口温度検知手段とを有するとともに、当該出口蒸発器温度を前記蒸発器温度として検知するものであり、
前記制御手段は、前記入口蒸発器温度と前記出口蒸発器温度との温度差が所定の出入口上限温度を超えた場合、前記回転数抑制制御の実行を抑制することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷蔵庫では、例えば特許文献1に記載されているように、冷却ファンの回転数を、貯蔵庫の庫内温度とユーザにより設定された設定温度との温度差に基づいて制御することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−194981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的な冷蔵庫では部品の製造上のばらつき等を考慮した制御が行われており、例えば冷却ファンの場合には、回転数にある程度の余裕を持たせることで、庫内温度と設定温度との温度差が許容範囲内となるような制御が行われている。このため、場合によっては実際に必要とされるよりも高めの回転数で冷却ファンが制御されることがあり、その結果、余分に電力を消費している可能性があった。かといって、消費電力を抑制するために単純に冷却ファンの回転数を下げてしまうと、庫内温度を適切に保つことができなくなるおそれがあった。
そこで、本実施形態では、電力の消費を抑制しつつも、庫内温度を適切に保つことができる冷蔵庫を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態による冷蔵庫は、貯蔵庫と、圧縮機、凝縮器および蒸発器を順次接続した冷凍サイクルと、前記冷凍サイクルにて冷却された空気を前記貯蔵庫へ供給する冷却ファンと、前記貯蔵庫の温度を検知する貯蔵庫温度検知手段と、前記蒸発器の温度を検知する蒸発器温度検知手段と、貯蔵庫温度検知手段で検知した前記貯蔵庫の温度である庫内温度と前記蒸発器温度検知手段で検知した前記蒸発器の温度である蒸発器温度との温度差が所定の判定期間内において所定の許容範囲内で推移している際、前記冷却ファンの回転数を下げる回転数抑制制御を実行する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一実施形態の冷蔵庫の構成を模式的に示す縦断断面図
図2】一実施形態の冷蔵庫の冷凍サイクルの構成を模式的に示す図
図3】一実施形態の冷蔵庫の電気的構成を模式的に示す図
図4】一実施形態の冷蔵庫の温度差(ΔT)が変化する態様を模式的に示す図
図5】一実施形態の冷蔵庫による回転数抑制制御の流れを示す図
図6】一実施形態の冷蔵庫における温度差(ΔT)の推移の一例を示す図
図7】その他の実施形態の冷蔵庫の冷凍サイクルの構成を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、一実施形態について、図1から図6を参照しながら説明する。
図1に示すように、冷蔵庫10のキャビネット12は、外箱と内箱とより構成され、その間に断熱材が挿入された断熱構造である。キャビネット12は、断熱仕切り体14によって大きく分けて2つの空間に仕切られており、本実施形態では、冷蔵庫10の上部側に位置する冷蔵空間(以下、R空間と称する)と、下部側に位置する冷凍空間(以下、F空間と称する)とに仕切られている。より具体的には、冷蔵庫10には、貯蔵庫として冷蔵室20、野菜室22、および製氷室24を含んだ冷凍室26が設けられている。このうち、冷蔵室20と野菜室22とよりR空間が構成され、製氷室24と冷凍室26とよりF空間が構成されている。なお、この構成は一例であり、例えば各貯蔵室の配置が異なっていたり、製氷室24が冷凍室26から独立していたりするような構成であってもよい。
【0008】
冷蔵室20の前面には、ヒンジにより開閉自在な扉20aが設けられ、野菜室22及び冷凍室26には引出し式の扉22a、26aがそれぞれ設けられている。冷凍室26の背面側、すなわちキャビネット12の背面側の底部には、機械室28が設けられている。この機械室28に、圧縮機30等が配置されている。冷蔵室20の下部から冷凍室26の上部にかけての背面には、R空間およびF空間に対して仕切られた冷却空間32が設けられている。この冷却空間32の下部には蒸発器34が設けられ、上部には冷却ファン36が設けられている。
この冷却ファン36は、その回転数が、最大回転数から最小回転数まで段階的に調整可能となっている。この冷却ファン36は、制御部68によってその回転数が制御されており、最大回転数に設定されると庫内に冷気を循環させる能力(以下、空気供給能力と称する)が最大となり、最小回転数に設定されると空気供給能力が最小となる。なお、冷却ファン36は、その回転数を連続的に調整可能なものであってもよい。
【0009】
なお、冷却ファン36の最低回転数は、当該冷却ファン36の実用上の最低回転数であり、冷却ファン36の仕様上の最低回転数以上の値が製造時の試験等に基づいて設定されている。このため、前述した従来の冷蔵庫のように冷却ファンやキャビネットのばらつき等を考慮して高めの値が設定されている場合とは異なり、実用可能な最低値まで冷却ファン36の回転数を下げることができる。本実施形態では、冷却ファン36の最低回転数は800rpm、最高回転数は1500rpmに設定されている。
冷却ファン36の前方、つまり、冷却ファン36の吹き出し側には、ダンパ機構38が設けられている。本実施形態のダンパ機構38は、R空間側への空気の流路を開閉する冷蔵用ダンパ(以下、Rダンパ39と称する)と、F空間側への空気の流路を開閉する冷凍用ダンパ(以下、Fダンパ40と称する)が設けられている。そして、Rダンパ39から上方に向かって、R空間を冷却するための空気が流れる冷蔵ダクト(以下、Rダクト42と称する)が設けられており、Fダンパ40から下方に向かって、F空間を冷却するための空気が流れる冷凍ダクト(以下、Fダクト44と称する)が設けられている。
【0010】
冷蔵室20の背面側の壁部には、冷蔵室20の庫内温度を検知するために、冷蔵温度検知手段としての冷蔵用温度センサ(以下、Rセンサ46と称する)が設けられており、冷凍室26の背面側の壁部には、冷凍室26の庫内温度を測定するために、冷凍温度検知手段としての冷凍用温度センサ(以下、Fセンサ48と称する)が設けられている。これらRセンサ46およびFセンサ48は、いずれも貯蔵庫温度検知手段を構成している。
これらRセンサ46およびFセンサ48の設置場所は、背面側の壁部に限定されるものでは無く、庫内温度を検知できる場所であればよい。なお、以下では、R空間の温度について説明する際には、冷蔵室20の庫内温度を便宜的にR庫内温度と称し、F空間について説明する際には、冷凍室26の庫内温度を便宜的にF庫内温度とも称することがある。お、R庫内温度として野菜室22の庫内温度をさらに検知する構成としてもよい。
【0011】
蒸発器34には、蒸発器34の表面温度(以下、蒸発器温度と称する)を検知するために、蒸発器温度検知手段としての蒸発器用温度センサ50が設けられている。この蒸発器用温度センサ50は、蒸発器34から冷媒が流出する出口側の温度を出口蒸発器温度として検知する出口温度検知手段であるエバ出口センサ50aと、蒸発器34に冷媒が流入する入り口側の温度を入口蒸発器温度として検知する入口温度検知手段であるエバ入口センサ50bとから構成されている。このうち、出口蒸発器温度が、上記した蒸発器温度として検知される。
これら、圧縮機30や蒸発器34等は、図2に示すように、冷凍サイクル54を構成している。この冷凍サイクル54は、圧縮機30の吐出側から冷媒が流れる方向に向かって順に、凝縮器56、切替弁58、キャピラリーチューブ60およびキャピラリーチューブ62、アキュームレータ64、およびサクションパイプ66が接続されており、全体として、冷媒が循環する循環経路を形成している。なお、冷凍サイクル54そのものは、周知の構成のものを採用することができる。また、キャピラリーチューブは複数ではなく、1つであってもよい。
【0012】
この冷凍サイクル54では、凝縮器56に接続されている切替弁58の一方の出口には、相対的に絞りが強いキャピラリーチューブ60が接続され、他方の出口には、相対的に絞りが弱いキャピラリーチューブ62が接続されている。これらキャピラリーチューブ60とキャピラリーチューブ62とは、の出口側において一つに接続されており、蒸発器34の入口に接続されている。これらキャピラリーチューブ60とキャピラリーチューブ62により、絞り機構が構成されている。
蒸発器34の出口側には、アキュームレータ64、サクションパイプ66が接続され、圧縮機30の吸入側に接続されている。この圧縮機30は、運転周波数を変化させることにより回転数が変化する周波数可変型の圧縮機である。そして、基本的には、運転周波数を上げることで冷却能力が上がり、運転周波数を下げることで冷却能力を下げることができる。この圧縮機30は、後述する制御部68により制御されている。切替弁58は、例えば、三方弁で構成されている。
【0013】
ここで、冷凍サイクル54の作用について説明する。冷凍サイクル54では、冷媒が圧縮機30にて圧縮されて高温高圧の気体状となる一方、凝縮器56にて放熱されて液体状となる。この液体状の冷媒は、切替弁58によってその流れがキャピラリーチューブ60またはキャピラリーチューブ62に切り替えられ、いずれかのキャピラリーチューブにて気化し易いように減圧され、その後に蒸発器34にて気化することで、周囲すなわち冷却空間32を流れる空気から熱を奪う。
周囲から熱を奪った冷媒は、アキュームレータ64に流れていき、このアキュームレータ64にて気液混合体状の冷媒が気体状の冷媒と液体状の冷媒とにそれぞれ分離され、気体状の冷媒のみがサクションパイプ66を通って圧縮機30に戻り、再び圧縮されて高温高圧の気体状となる。これにより、冷却空間32を流れる空気が冷却され、冷却ファン36によってR空間あるいはF空間に供給される。このように、本実施形態の冷蔵庫10では、R空間を冷却するR冷却とF空間を冷却するF冷却とが互いに切り替えられて運転されている。
【0014】
次に、冷蔵庫10の電気的構成について説明する。図3に示すように、冷蔵庫10の制御を行う制御部68は、制御基板52に設けられている。この制御部68には、冷却ファン36、Rダンパ39、Fダンパ40、Rセンサ46、Fセンサ48、エバ出口センサ50a、エバ入口センサ50b、切替弁58、圧縮機30等が接続されている。制御部68は、図示しないCPU、ROMやRAM等を有するマイクロコンピュータによって構成されており、例えばROM等に記憶されているコンピュータプログラムによって、冷蔵庫10の全体を制御する。この制御部68は、機械室28の背面側上部に配置された制御基板52(図1参照)に搭載されている。また、制御部68は、本実施形態に関連して、後述する回転数抑制制御を実行する。なお、図示は省略するが、冷蔵庫10には、温度設定などの冷蔵庫10の運転設定等を行うための操作パネルも設けられており、制御部68は、その操作パネルからの設定に基づいて冷蔵庫10を制御する。
【0015】
具体的には、制御部68は、冷凍サイクル54を用いて、R空間を冷却する冷蔵冷却(以下、R冷却と称する)と、F空間を冷却する冷凍冷却(以下、F冷却と称する)とを行う。このとき、R冷却を行う際には、相対的に絞りが強いキャピラリーチューブ60に冷媒の流れを切り替えるとともに、Rダンパ39を開とし、Fダンパ40を閉として冷却ファン36を回転させ、蒸発器34で冷却された冷気を、Rダクト42を経由させてR空間に供給する。一方、F冷却を行う際には、相対的に絞りが弱いキャピラリーチューブ62に冷媒の流れを切り替えるとともに、Rダンパ39を閉とし、Fダンパ40を開として冷却ファン36を回転させ、蒸発器34で冷却された冷気を、Fダクト44を経由させてF空間に供給する。
【0016】
次に、上記した冷蔵庫10の作用について説明する。
まず、図4を参照しながら、冷蔵庫10で実行されている冷却ファン36の回転数を抑制する回転数抑制制御の基本的な考え方について説明する。
図4は、庫内温度と蒸発器温度との温度差(以下、温度差ΔTと称する)が変化する態様の一例を模式的に示しており、縦軸が温度差ΔT、横軸が時間(t)となっている。図4の場合、時刻t0は、上記したF冷却とR冷却とが切り替えられた時点を示しており、時刻t1は、回転数抑制制御の抑制状態が終了した時点、つまり、後述する待機期間が経過した時点を示している。なお、冷凍サイクル54は、設定温度に応じた運転制御が行われている。
【0017】
さて、図4に示すグラフG1の場合、庫内温度と蒸発器温度との温度差ΔTは、時刻t1以降において安定した状態となっている。換言すると、このグラフG1にて示されている状態は、庫内温度と蒸発器温度とのバランスが取れた状態を示している。その一方で、グラフG1にて示されている状態は、冷却ファン36の回転数を下げたとしても温度差ΔTが安定し続ける可能性がある状態と考えられる。
【0018】
ここで、温度差ΔTが安定した状態とは、温度差ΔTが、所定の判定期間内において所定の許容範囲内で推移している状態を示している。換言すると、温度差ΔTが安定した状態とは、所定の判定期間内における温度差ΔTの変化量が、所定の許容範囲内で推移している状態を示している。また、温度差ΔTが安定した状態には、温度差ΔTの変化量がゼロである状態ももちろん含まれている。この判定期間は、本実施形態では2分に設定されている。また、許容範囲は、本実施形態では予め±1℃の固定値に設定されている。本実施形態では、後述するように温度差ΔTを1分ごとに測定しており、判定期間における平均値を、その期間における温度差ΔTとして求めている。
【0019】
なお、判定期間を2分としたのは設定の一例であり、1分や5分など他の値を設定してもよい。また、許容範囲は、上記したように固定値であってもよいし、温度差ΔTの大きさ、つまり、温度差ΔTの絶対値(以下、|ΔT|とも称する)に応じてある程度の変更が可能なように設定されていてもよい。例えば、|ΔT|が5℃であれば許容範囲を±1℃、|ΔT|が10℃であれば許容範囲を±1.5℃とするようなことが考えられる。なお、この場合には、許容範囲を段階的に変更可能としてもよいし、連続的に変更可能としてもよい。
【0020】
このように温度差ΔTが安定している状態において冷却ファン36の回転数を下げると、いつかは空気供給能力が必要量を下回り、庫内温度が上昇する。このとき、蒸発器温度は、庫内温度が上昇していることから、さらに冷却能力を高めるために低下する。そのため、空気供給能力が不足し始めると、温度差ΔTが大に変化する。そこで、回転数抑制制御では、温度差ΔTが安定している状態において、どこまで冷却ファン36の回転数を下げられるかを、温度差ΔTに基づいて判定する。これにより、冷却ファン36の回転数を、実運転の状況に応じて、必要とされる最低限の回転数に設定することが可能となる。
【0021】
図4に示すグラフG2の場合、温度差ΔTは、時刻t1以降において徐々に小さくなっている。これは、蒸発器34にて冷却された空気が十分に貯蔵庫に供給されている状態を示している。ただし、このグラフG2にて示されている状態は、換言すれば庫内温度と蒸発器温度とのバランスが取れてない状態であり、冷却ファン36が実際に必要とされるよりも高い回転数で制御されている可能性があるとも考えられる。すなわち、このグラフG2にて示される状態も、回転数抑制制御を実行する余地があると考えられる。
【0022】
図4に示すグラフG3の場合、温度差ΔTは、時刻t1以降において徐々に大きくなっている。これは、蒸発器34にて冷却された空気が十分に供給されておらず、その結果、庫内温度が上昇していると考えられる。このため、このグラフG3にて示されている状態では、庫内温度と蒸発器温度とのバランスが取れていないことから、回転数抑制制御の実行を抑制し、冷却ファン36の回転数を上げる必要があると考えられる。
このような考え方に基づいて、本実施形態の冷蔵庫10では回転数抑制制御が行われている。以下、回転数抑制制御の具体的な処理の流れについて、冷蔵庫10を主体にして説明する。なお、冷蔵庫10は基本的には常時通電されて使用されるものであるため、以下の回転数抑制制御は既に通電されている状態であるものとし、また、説明の簡略化のため、扉の開閉が無いものとする。
【0023】
冷蔵庫10は、1分ごとに温度差ΔTを測定しており、図5に示す回転数抑制制御処理において、1分が経過したかを判定し(S1)、1分が経過すると(S1:YES)、温度差ΔTを測定する(S2)。この場合、冷却モードはF冷却であるので、このとき測定される温度差ΔTが冷凍温度差に相当する。続いて、冷蔵庫10は、待機期間が経過したかを判定し(S3)、待機期間が経過していない場合には(S3:NO)、ステップS1に移行して、1分ごとに温度差ΔTの測定を繰り返す。
ここで、待機期間とは、R冷却とF冷却とが切り替えられた際にその後の回転数抑制制御の実行を抑制する期間であり、図6に示すように、R冷却からF冷却に切り替えられた場合には待機期間は15分に設定されており、F冷却からR冷却に切り替えられた場合には待機期間は5分に設定されている。なお、待機期間の値は一例であり、他の値であってもよいし、例えば庫内温度や設定温度あるいは冷蔵庫10の外部の温度等に応じて変更可能であってもよい。
【0024】
冷蔵庫10は、待機期間が経過した場合には(S3:YES)、温度差ΔTは安定しているかを判定し(S4)、安定している場合には(S4:YES)、対応する冷却ファンが最低回転数であるかを判定する(S5)。図6に対応付けて説明すると、冷蔵庫10は、時刻t10でR冷却からF冷却に切り替えられとした場合、時刻t25まで、つまり、待機期間が経過するまで1分ごとに温度差ΔTを測定しながら待機し(ステップS1、S2)、待機時間が経過した時刻t25にて(ステップS3:YES)、その後の2分間の判定期間(時刻t25〜t27の期間)内において、温度差ΔTが安定しているかを判定する(ステップS4)。なお、図6に示す温度差ΔTの変化量は、時刻tnにおける温度差ΔT(n)と、1分前の時刻tn−1に測定された温度差ΔT(n−1)との差分で示されている。
【0025】
冷蔵庫10は、例えば図6に示す時刻t25〜t27の期間のように温度差ΔTが安定している場合には(S4:YES)、対応する冷却ファンの回転数が最低回転数であるかを判定する(S5)。ここで、本実施形態では1つの冷却ファン36のみが設けられているものの、回転数抑制制御では、例えばR空間とF空間とのそれぞれに対応して個別に冷却ファンが設けられている場合をも想定している。その場合、現在の冷却モードがR冷却かF冷却かによって制御対象となる冷却ファンが異なることがあるため、ステップS5では「対応する冷却ファン」としている。
【0026】
冷蔵庫10は、冷却ファン36の回転数が最低回転数(1000rpm)ではない場合には(S5:NO)、対応する冷却ファンの回転数を下げる(S10)。この場合、例えば図6では、時刻t27における冷却ファン36の回転数は1300rpmであり、最低回転数(100rpm)ではないため、冷却ファン36の回転数が1段階下げられて1200rpmとなっている。
【0027】
冷却ファン36の回転数を下げると、冷蔵庫10は、1分が経過したか否か(S8)、および、冷却モードが変更されたか否か(S13)を判定しつつ待機する。そして、冷蔵庫10は、冷却モードが変更されないまま(S13:NO)1分が経過すると(S8:YES)、温度差ΔTを測定し(S9)、ステップS4に移行して、再び温度差ΔTが安定しているかの判定(S4)等を繰り返す。このとき、冷蔵庫は、時刻t27〜t29の期間のように温度差ΔTが不安定である場合、つまり、温度差ΔTが許容範囲を超えて変化している場合には、冷却ファン36の回転数を抑制することはせず、そのままの回転数を維持する。また、冷蔵庫10は、例えば図6の時刻t29〜31の期間のように温度差ΔTが安定している場合には、冷却ファン36の回転数が1200rpmで最低回転数ではないため、再び回転数を1段階下げて1100rpmとする。そして、冷蔵庫10は、ステップS8に移行して、同様の処理を繰り返す。
【0028】
さて、冷却ファン36の回転数を下げると、場合によっては冷却能力が不足した状態になり、庫内温度が上昇する可能性がある。例えば、図6に示す時刻t31〜t33の期間においては、温度差ΔTの変化量が大に変化している。これは、時刻t31にて冷却ファン36の回転数を下げたところ冷却された空気の供給が不足し、その結果、庫内温度が上昇して温度差ΔTの変化が生じたものと推察される。そして、この時刻t31〜t33の期間では、温度差ΔTが所定の上限温度差を超えたとする。すなわち、時刻t31〜33の期間においては、温度差ΔTが安定しておらず、且つ、所定の上限温度差を超えて変化した状態である。
【0029】
そこで、冷蔵庫10は、温度差ΔTが安定していない場合において(S4:NO)、且つ、温度差ΔTが所定の上限温度差を超えて大に変化した場合には(S11:YES)、対応する冷却ファンの回転数を上げる(S12)。この場合、図6に示すように、時刻t33にて冷却ファン36の回転数が上げられた結果、時刻t33〜t35の期間における温度差ΔTの変化量は徐々に小に変化していく。
【0030】
時刻t35の時点において、冷蔵庫10は、時刻t33〜t35の期間における温度差ΔTが安定していない状態であるものの(S4:NO)、温度差ΔTは小に変化していることから(S11:NO)、対応する冷却ファン36の回転数が最低回転数でなければ(S5:NO)、対応する冷却ファンの回転数を下げる(S10)。これにより、図6に示すように、時刻t35にて冷却ファン36の回転数が再び1100rpmに下げられる。その後、冷蔵庫10は、同様の処理を繰り返し、時刻t37の時点において、時刻t35〜t37の期間における温度差ΔTが安定しており(S4:YES)、その時点での冷却ファン36の回転数(1100rpm)は最低回転数ではないので(S5:NO)、さらに冷却ファン36の回転数を下げる(S10)。
【0031】
さて、冷蔵庫10は、図5に示す回転数抑制制御において、冷却モードが変更された場合には(S13:YES)、現在の冷却モードにおける回転数を記憶するとともに、冷却ファン36の回転数を切り替え後の冷却モードにおける前回値に設定する(S14)。具体的には、冷蔵庫10は、図6に示すように、F冷却からR冷却に切り替えられた時刻t40における冷却ファン36の回転数を、F冷却期間において最終的に設定された回転数(図6に符号R10を付して示す1000rpm)として記憶する。この最終的に設定された回転数が、次回のF冷却に切り替えられた際に最初に設定される回転数(図6に符号R11を付して示す1000rpm)であり、ステップS14にて設定される前回値となる。
【0032】
図6の場合、時刻t40ではF冷却からR冷却に冷却モードが切り替えられていることから、前回のR冷却において最終的に設定された回転数(図6に符号R20を付して示す1300rpm)が、ステップS14にて設定される前回値(図6に符号R21を付して示す1300rpm)となる。このため、時刻t40にてR冷却に切り替えられた際には、冷却ファン36の回転数は、1300rpmに設定される。
さて、冷却モードが切り替えられた場合には、冷却対象となる貯蔵庫の設定温度が異なることから、当然のことながら、蒸発器温度も変化する。つまり、冷却モードが切り替えられた場合には、温度差ΔTは大きく変化することになる。
【0033】
そのため、冷蔵庫10は、冷却モードが変更された後(ステップS13、S14)には、温度差ΔTを測定しつつも(ステップS1、S2)、待機期間が経過するまでは(ステップS3)、ステップS4以降の処理を実行しないようにしている。すなわち、冷蔵庫10は、冷却モードが切り替えられた際には、所定の待機期間が経過するまで、回転数抑制制御における実質的な処理、つまり、ステップS4以降の冷却ファン36の回転数を変更する処理を抑制する。なお、回転数抑制制御の実行が抑制されている待機期間には、冷却ファン36は、従来と同様にPID(Proportional Integral Derivative)制御により回転数が制御される。
【0034】
そして、冷蔵庫10は、待機期間が経過すると(S3:YES)、上記したF冷却のときと同様にステップS4以降の処理を実行し、温度差ΔTが安定していれば冷却ファン36の回転数を下げ、温度差ΔTが大に変化すれば冷却ファン36の回転数を上げ、温度差ΔTが小に変化すれば冷却ファン36の回転数を下げる等の制御を行う。この場合、冷却モードはR冷却であるので、このとき測定される温度差ΔTが冷蔵温度差に相当する。その後、冷蔵庫10は、再びF冷却に切り替えられると、冷却ファン36の回転数を前回値に設定するとともに、待機期間が経過するまで待機した後、ステップS4以降の処理を実行する。
【0035】
ところで、例えば冷蔵庫10内の食材収納量が少なく、冷気の循環が妨げられることが少ない状況では、冷却ファン36の回転数を最低回転数としたとしても、温度差ΔTが安定した状態あるいは温度差ΔTが小になるように変化する状態となる可能性がある。
そのため、冷蔵庫10は、温度差ΔTが安定した状態(S4:YES)、あるいは、温度差ΔTが小になるように変化した状態(S4:NO、且つ、S11:YES)において、冷却ファン36の回転数が最低回転数である場合には(S5:YES)、圧縮機30の回転数(運転周波数)を下げる(S7)。つまり、現時点での冷却能力が過剰であるとして、冷凍サイクル54の冷却能力自体を低下させる。これにより、冷凍サイクル54、特には、圧縮機30における電力の消費が抑制される。
【0036】
このように、冷蔵庫10は、判定期間内において温度差ΔTが安定しているか否かに応じて、冷却ファン36の回転数を制御している。
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を奏する。
冷蔵庫10は、冷蔵室20や冷凍室26等の貯蔵庫と、冷凍サイクル54と、冷凍サイクル54にて冷却された空気を貯蔵庫へ供給する冷却ファン36と、貯蔵庫の温度を検知する貯蔵庫温度検知手段(Rセンサ46、Fセンサ48)と、冷凍サイクル54を構成する蒸発器34の温度を検知する蒸発器温度検知手段(エバ出口センサ50a、エバ入口センサ50b)と、貯蔵庫温度検知手段で検知した貯蔵庫の温度である庫内温度と蒸発器温度検知手段で検知した蒸発器34の温度である蒸発器温度との差分である温度差ΔTが、所定の判定期間内において所定の許容範囲内で推移している際、冷却ファン36の回転数を下げる回転数抑制制御を実行する制御手段(制御部68)と、を備えている。
【0037】
これにより、温度差ΔTが安定した状態、すなわち、冷凍サイクル54側の冷却能力と冷却ファン36による冷気の供給能力とのバランスが取れている状態では、冷却ファン36の回転数をより低回転側に変更することが可能となる。したがって、冷却ファン36における電力の消費を抑制することができるとともに、庫内温度を適切な温度に保つことができる。
また、冷却ファン36において電力の消費が抑制されることにより、冷却ファン36からの発熱量が低減され、庫内温度の上昇が抑制され、もって、冷凍サイクル54の負荷が低減される。これにより、冷蔵庫10全体として、さらなる省電力化を促進することができる。
【0038】
実施形態の冷蔵庫10は、冷蔵空間(R空間)と冷凍空間(F空間)とが設けられており、貯蔵庫温度検知手段は、冷蔵空間の温度を検知する冷蔵温度検知手段(Rセンサ46)と、冷凍空間の温度を検知する冷凍温度検知手段(Fセンサ48)とが設けられており、制御手段(制御部68)は、庫内温度として冷蔵温度検知手段で検知した冷蔵空間の温度および冷凍温度検知手段で検知した冷凍空間の温度をそれぞれ検知し、冷蔵空間の温度と蒸発器温度との温度差である冷蔵温度差ならびに冷凍空間の温度と蒸発器温度との温度差である冷凍温度差に基づいて、冷蔵空間および冷凍空間のうちによって空気の供給先とされた貯蔵庫を対象として回転数抑制制御を実行する。
【0039】
これにより、冷却対象となる貯蔵庫が複数存在し、且つ、それぞれの貯蔵庫における設定温度が異なる場合であっても、すなわち、貯蔵庫によって蒸発器温度が異なる場合であっても、冷却ファン36の回転数を制御することができる。すなわち、電力の消費を抑制することができる。
実施形態の冷蔵庫10は、冷却ファン36により供給される空気の流路を冷蔵空間または冷凍空間の何れか一方に切り換えるダンパ機構38によって空気の供給先が切り換えられたとき、つまり、冷却モードが変更されたとき、所定の待機期間が経過するまで回転数抑制制御の実行を抑制する。これにより、温度差ΔTが変化することが明確に予測される冷却モードの切り替え時には処理が不要となり、制御部68における電力の消費をも抑制することができる。
【0040】
実施形態の冷蔵庫10は、回転数抑制制御を実行することで冷却ファン36の回転数が最小回転数となった状態で庫内温度と蒸発器温度との温度差ΔTが許容範囲内で推移している場合には、すなわち、冷却ファン36の空気供給能力が最小に設定された状態でも温度差ΔTが安定している場合には、圧縮機30の運転周波数(回転数)を下げる。これにより、冷凍サイクル54が過剰な冷却能力で運転されている際にはその冷却能力自体を低下させることができ、もって、電力の消費を抑制することができる。このとき、圧縮機30を冷却するためのファン(図示省略)の回転数も下げることができるため、さらなる省電力化を図ることができる。
庫内温度と蒸発器温度との温度差ΔTが所定の上限温度差を超えて大に変化した場合には冷却ファン36の回転数を上げるので、空気供給能力が抑制されて庫内温度が過度に上昇するおそれを低減することができる。
【0041】
実施形態の冷蔵庫10は、貯蔵庫を開閉する扉の開閉を検知する開扉検知手段(R開扉センサ20b、F開扉センサ22b)をさらに備え、開扉検知手段により扉の開閉が検知されていない状態で空気の供給先が切り換えられたとき、冷却ファン36の回転数を前回の回転数抑制制御にて設定された回転数に設定した上で、回転数抑制制御を実行する。扉の開閉が無い状態では、冷蔵庫10内の食材等は、その貯蔵量が変化していないと考えられる。つまり、食材の収納量等の庫内の状状況は、前回の回転数抑制制御において最終的に設定された回転数に冷却ファン36の回転数を設定すれば、温度差ΔTが安定すると考えられる。
そのため、冷蔵庫10は、扉の開閉が無いまま冷却モードが切り替えられた際には、冷却ファン36を前回値にて駆動する。これにより、冷却ファン36が最終的に設定される回転数まで到達するまでの期間、換言すると、余分に高回転で駆動されている期間を短縮でき、電力の消費をさらに抑制することができる。
【0042】
(その他の実施形態)
本発明は、上記した実施形態にて例示したものに限定されることなく、次のように変形又は拡張することができる。また、上記した実施形態で例示したものおよび以下に示す変形例および拡張例にて例示するものは、その一部または全部を任意に組み合わせることができる。
【0043】
一実施形態では蒸発器34を1つ設けた構成例を示したが、冷蔵空間用の冷蔵用蒸発器と、冷凍空間用の冷凍用蒸発器を設けてもよい。例えば、図7に示すように、相対的に絞りが弱いキャピラリーチューブ62に接続されている蒸発器34を冷凍用蒸発器として使用し、相対的に絞りが強いキャピラリーチューブ60に蒸発器134を接続して冷蔵用蒸発器としてもよい。そして、それぞれの蒸発器34、蒸発器134に、冷蔵用蒸発器(34)の温度を冷蔵温度として検知する冷蔵蒸発器温度検知手段(エバ出口センサ50a、エバ入口センサ50b)と、冷凍用蒸発器(134)の温度を冷凍温度として検知する冷凍蒸発器温度検知手段(エバ出口センサ150a、エバ入口センサ150b)とを設け、ダンパ機構38によって冷蔵空間が空気の供給先とされている場合には、冷蔵温度と冷蔵用蒸発器の温度との温度差に基づいて回転数抑制制御を行う一方、ダンパ機構38によって冷凍空間が空気の供給先とされている場合には、冷凍温度と冷凍用蒸発器の温度との温度差に基づいて回転数抑制制御を実行してもよい。
【0044】
このような構成であっても、一実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、このように冷蔵空間および冷凍空間にそれぞれ専用の蒸発器が設けられている場合には、冷却モードの切り替え時の待機期間を無くしたり、待機期間を短くしたりしてもよい。
貯蔵庫を開閉する扉の開閉を検知する開扉検知手段(R開扉センサ20b、F開扉センサ22b)により扉の開閉が検知された場合、冷却ファン36の回転数を初期回転数に設定してもよい。ここで、初期設定値とは、通常のPID制御にて制御される際の初期値でもよいし、予め設定した回転数であってもよい。
【0045】
扉が開放されたときには、通常は、冷却ファン36の回転が停止される。そのため、貯蔵庫への冷気の供給が途絶える一方で、外気が庫内に侵入し、その結果、貯蔵庫の温度が上昇することが予想される。すなわち、庫内温度と蒸発器温度との温度差ΔTが大になると予想される。そのため、扉の開閉を検知した場合には冷却ファン36を初期設定値に設定することで、迅速に庫内温度を設定温度に近づけることができる。この場合、例えば冷蔵室20の扉20aが開閉され、冷凍室26の扉26aは開閉されていない場合には、冷凍室26に対する回転数抑制制御はそのまま実行してもよい。
【0046】
一実施形態では庫内温度と蒸発器温度との温度差ΔTが所定の上限温度差を超えて変化した場合に冷却ファン36の回転数を上げる例を示したが、温度差ΔTが所定の上限温度差を超えた場合には、回転数抑制制御の実行を抑制したり、冷却ファン36の回転数を上げたりしてもよい。例えば、図6の時刻t32〜t33の期間において温度差ΔTが下限温度勾配を超えて大に推移したとすると、判定期間の終了すなわち時刻t33まで待機することなく、回転数抑制制御の実行を抑制したり、冷却ファン36の回転数を上げたりしてもよい。このように判定期間の経過を待たずに冷却ファン36の回転数を上げたりすることにより、これにより、より迅速に庫内温度を下げることができる。もちろん、回転数抑制制御の実行を抑制するとともに、冷却ファン36の回転数も上げてもよい。
【0047】
温度差ΔTが過大である場合、冷気の供給が不足していることは明白である。そして、温度差ΔTが過大であるにもかかわらず回転数抑制制御を実行すると、最終的には適切な回転数まで上げられるものの、庫内温度を適切に保つまでに時間が掛かる。そのため、温度差ΔTが過大である場合、つまり、温度差ΔTの絶対値|ΔT|が所定の上限温度差を超えた場合には、回転数抑制制御の実行を抑制することで、速やかに庫内を冷却することができる。また、温度差ΔTの変化が著しく大に推移した場合、つまり、例えば図4に示したグラフG3のように温度差ΔTが所定の上限温度勾配を超えて上昇しているような場合にも、回転数抑制制御の実行を抑制することで、速やかに庫内を冷却することができる。
【0048】
庫内温度と蒸発器温度との温度差ΔTが所定の下限温度差を下回っている場合、または、庫内温度と蒸発器温度との温度差ΔTが所定の下限温度勾配を超えて小に推移した場合、回転数抑制制御の実行を抑制する、および/または、冷却ファン36の回転数を下げてもよい。例えば、図6の時刻t33〜t34の期間において温度差ΔTが下限温度勾配を超えて小に推移したとすると、判定期間の終了すなわち時刻t35まで待機することなく回転数抑制制御の実行を抑制したり、冷却ファン36の回転数を下げたりしてもよい。このように判定期間の経過を待たずに冷却ファン36の回転数を下げたりすることにより、より迅速に電力の消費が低い状態に移行することができる。もちろん、回転数抑制制御の実行を抑制するとともに、冷却ファン36の回転数も下げてもよい。
【0049】
温度差ΔTが小さい場合、冷気の供給が十分であることは明白である。つまり、温度差ΔTが十分に小さい場合には、回転数抑制制御を実行しなくても冷却ファン36の回転数を下げることができる。これにより、より迅速に冷却ファン36の回転数を下げることができ、電力の消費を素早く抑制することができる。また、温度差ΔTの変化が著しく小に推移した場合、つまり、温度差ΔTが所定の上限温度勾配を超えて下降している場合にも、回転数抑制制御の実行を抑制することで、速やかに冷却ファン36の回転数を下げることができ、電力の消費を抑制することができる。
【0050】
蒸発器温度検知手段として、蒸発器(34、134)に冷媒が流入する入り口側の温度を入口蒸発器温度として検知する入口温度検知手段(エバ入口センサ50b、150b)と、蒸発器(34、134)から冷媒が流出する出口側の温度を出口蒸発器温度として検知する出口温度検知手段(エバ出口センサ50a、150a)とを有するとともに、当該出口蒸発器温度を前記蒸発器温度として検知し、入口蒸発器温度と出口蒸発器温度との温度差が所定の出入口上限温度を超えた場合、回転数抑制制御の実行を抑制してもよい。
【0051】
入口蒸発器温度と出口蒸発器温度との温度差ΔTが所定の出入口上限温度を超えるのは、冷媒の流量が足らず、冷凍サイクル54の冷却能力が不足している状況である。その場合、仮に温度差ΔTが安定していたとしても、回転数を下げてしまうと、さらに冷却が不足気味になり、庫内温度が上昇してしまうおそれがある。そのため、そのような状況下では回転数抑制制御の実行を抑制することで、冷却能力が不足することを防止できる。この場合、蒸発器が2つ設けられている構成であれば、その時点での冷却モードに対応する蒸発器の出入口上限温度に基づいて回転数抑制制御の実行を抑制すればよい。
【0052】
冷却ファン36の回転数が最大回転数となった状態で庫内温度と蒸発器温度との温度差ΔTが許容範囲を超えて大に推移している際、圧縮機30の運転周波数を上げてもよい。
冷却ファン36の回転数を最大回転数に設定しても温度差ΔTが安定しないのは、冷凍サイクル54自体の冷却能力が不足していると考えられる。そのため、冷却ファン36の空気供給能力が最大となった状態において温度差ΔTが安定していない場合には、圧縮機30の運転周波数を上げて冷凍サイクル54の冷却能力を上げることにより、庫内を冷却するのに必要な冷却能力を確保でき、もって、庫内温度を適切に保つことができる。
【0053】
一実施形態のように冷却ファン36を1つ設けて兼用する構成では冷却ファン36を対象とし、図7に例示したような冷蔵空間用の冷蔵用冷却ファン(36)と冷凍空間用の冷凍用冷却ファン(136)とが個別に設けられている構成では、冷蔵用冷却ファンにおよび冷凍用冷却ファンのそれぞれに対して回転数抑制制御を実行してもよい。その場合、現在の冷却モードに対応する冷却ファンに対して、回転数抑制制御を実行すればよい。また、冷蔵用や冷凍用にそれぞれ複数の冷却ファンを設けてもよい。その場合、現在の冷却モードに対応する全部あるいは一部の冷却ファンに対して、回転数抑制制御を実行すればよい。
一実施形態では冷却ファン36により供給される空気の流路をダンパ機構38によって切り換える構成を例示したが、冷蔵空間用と冷凍空間用とにそれぞれ独立した空気の経路を形成し、ダンパ機構を設けない構成としてもよい。この場合、切替弁58が切り替えられるタイミングを、冷却モードが変更されたタイミングとすればよい。
【0054】
上記した各実施形態で示した各種の数値は、いずれも実施形態における一例であり、それに限定されるものでは無い。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
図面中、10は冷蔵庫、20は冷蔵室(貯蔵庫)、20aは扉、20bはR開扉センサ(開扉検知手段)、22は野菜室(貯蔵庫)、22aは扉、22bはF開扉センサ(開扉検知手段)、24は製氷室(貯蔵庫)、26は冷凍室(貯蔵庫)、26aは扉、30は圧縮機、34は蒸発器、36は冷却ファン、38はダンパ機構、39はRダンパ(ダンパ機構)、40はFダンパ(ダンパ機構)、46はRセンサ(貯蔵庫温度検知手段、冷蔵温度検知手段)、48はFセンサ(貯蔵庫温度検知手段、冷凍温度検知手段)、50は蒸発器用温度センサ(蒸発器温度検知手段)、50aはエバ出口センサ(蒸発器温度検知手段、出口温度検知手段)、50bはエバ入口センサ(蒸発器温度検知手段、入口温度検知手段)、54は冷凍サイクル、56は凝縮器、68は制御部(制御手段)、134は蒸発器、136は冷却ファン、150aはエバ出口センサ(蒸発器温度検知手段、出口温度検知手段)、150bはエバ入口センサ(蒸発器温度検知手段、入口温度検知手段)を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7