特許第6334150号(P6334150)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334150
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】難燃性樹脂組成物およびその成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20180521BHJP
   C08K 5/5357 20060101ALI20180521BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20180521BHJP
   C09K 21/12 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   C08L77/00
   C08K5/5357
   C08J5/18CFG
   C09K21/12
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-253203(P2013-253203)
(22)【出願日】2013年12月6日
(65)【公開番号】特開2015-110702(P2015-110702A)
(43)【公開日】2015年6月18日
【審査請求日】2016年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】武田 強
(72)【発明者】
【氏名】山中 克浩
【審査官】 尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−233320(JP,A)
【文献】 特開2004−115763(JP,A)
【文献】 特開2012−067172(JP,A)
【文献】 特開2005−325362(JP,A)
【文献】 特開2004−018731(JP,A)
【文献】 特開2004−051818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 77/00− 77/12
C08K 5/00− 5/59
C08G 69/00− 69/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)50重量%以上が非晶性ポリアミド樹脂および微結晶性ポリアミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のポリアミド樹脂である樹脂成分(A成分)100重量部、および(B)下記式(1)で示される有機リン化合物(B成分)1〜50重量部を含み、0.03μm以下の算術平均粗さ(Ra)を有する厚み2mmの平滑平板において、全光線透過率が80%以上であることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【化1】
(式中、X、Xは同一もしくは異なり、下記式(2)で表される芳香族置換アルキル基である。)
【化2】
(式中、ALは炭素数1〜5の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基であり、Arはその芳香環に置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基またはアントリル基である。nは1〜3の整数を示し、ArはAL中の任意の炭素原子に結合することができる。)
【請求項2】
A成分のポリアミド樹脂のガラス転移温度が90℃〜250℃である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
A成分のポリアミド樹脂が、少なくとも1種の脂環式構造を有する請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
B成分の有機リン化合物が、下記式(3)で表される有機リン化合物である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【化3】
(式中、R、Rは同一または異なっていてもよく、置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基またはアントリル基である。R、R、R、Rは同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基またはアントリル基から選択される置換基である。)
【請求項5】
B成分の有機リン化合物が、下記式(4)で表される有機リン化合物である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【化4】
(式中、R21、R22は同一もしくは異なり、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。)
【請求項6】
B成分の有機リン化合物は、下記式(5)で示される化合物である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【化5】
【請求項7】
B成分の有機リン化合物は、酸価が0.7mgKOH/g以下である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項8】
B成分の有機リン化合物は、HPLC純度が少なくとも90%である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項9】
UL−94規格の難燃レベルにおいて、少なくともV−2を達成する請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項10】
A成分100重量部に対して、B成分が2〜40重量部の割合で含有する請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項11】
0.03μm以下の算術平均粗さ(Ra)を有する厚み2mmの平滑平板において、ヘーズが10%以下である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物より形成された成形品。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物より形成されたシートまたはフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的にハロゲンを含有しない難燃性樹脂組成物に関する。特に本発明は透明性、機械的強度、難燃性に優れ、自動車部品、機械部品、電気・電子部品など種々の用途に好適に用いられる難燃性ポリアミド系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、機械的強度、耐熱性などに優れることから、自動車部品、機械部品、電気・電子部品など多岐の分野で使用されている。特に近年、電気・電子部品用途において、ますます難燃性に対する要求レベルが高くなり、本来ポリアミド樹脂が有する自己消火性よりもさらに高度な難燃性が要求され、アンダーライターズ・ラボラトリーのUL−94規格に適合する難燃レベルの高度化検討が数多くなされている。
【0003】
これらの検討の多くはハロゲン系難燃剤を添加する方法であり、例えば、特許文献1では、ポリアミド樹脂に対して塩素置換多環式化合物を添加する例が開示されている。また、特許文献2ではデカブロモジフェニルエーテルが、特許文献3では臭素化ポリスチレンが、特許文献4では臭素化ポリフェニレンエーテルが添加された例が開示されている。
【0004】
このように、ポリアミド樹脂に難燃性を付与する方法として、従来からハロゲン系難燃剤が用いられている。ハロゲン系難燃剤は酸化アンチモンと併用することによって、高度な難燃化が達成されることが一般に知られており、多用されてきたが、近年、燃焼時の有害ガス発生等の環境問題、さらに燃焼時の発生ガスによる腐食性の問題から、特に電気・電子部品用途において、ハロゲン系難燃剤は忌避されており、この分野でのノンハロゲン系難燃剤が強く望まれている。
【0005】
かかるノンハロゲン難燃化の技術としては、従来から、赤リンを用いる方法が知られている。しかしながら、赤リンを用いる樹脂組成物は、押出混練時および成形時に有毒なホスフィンガスが発生し、さらに、赤リン特有の赤褐色の着色があるため、実用は非常に限定されたものであった。また、その他のノンハロゲン難燃化の技術としては、特許文献5、特許文献6、特許文献7に有機リン化合物を用いる方法が報告されており、高度な難燃化および機械的強度を達成できる難燃性樹脂組成物が提供されている。しかしながら、透明性、機械的強度、難燃性を共立する組成に関しては検討されておらず、透明性が必須とされる成形品、フィルム・シート、レンズなどの用途には不適であった。
【0006】
一方で、耐薬品性や機械的強度など、従来のポリアミド樹脂の優れた特性を保持しながら透明性を上げる技術としては、特許文献8、特許文献9に非晶性若しくは微結晶性ポリアミド樹脂を用いる方法が報告されている。
しかしながら、非晶性若しくは微結晶性ポリアミド樹脂の透明性を維持したまま難燃性を向上させる技術に関しては、これまで検討されてこなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭48−029846号公報
【特許文献2】特開昭47−007134号公報
【特許文献3】特開昭51−047044号公報
【特許文献4】特開昭54−116054号公報
【特許文献5】特開2007−23206号公報
【特許文献6】特開2012−132027号公報
【特許文献7】特開2004−115763号公報
【特許文献8】特開平8−239469号公報
【特許文献9】特表2008−525604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、実質的にハロゲンを含有せず、透明性、機械的強度、難燃性に優れた難燃性樹脂組成物の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために以下の構成を採用する。
1.(A)50重量%以上が非晶性ポリアミド樹脂および微結晶性ポリアミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のポリアミド樹脂である樹脂成分(A成分)100重量部、および(B)下記式(1)で示される有機リン化合物(B成分)1〜50重量部を含み、0.03μm以下の算術平均粗さ(Ra)を有する厚み2mmの平滑平板において、全光線透過率が80%以上であることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【化1】
(式中、X、Xは同一もしくは異なり、下記式(2)で表される芳香族置換アルキル基である。)
【化2】
(式中、ALは炭素数1〜5の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基であり、Arはその芳香環に置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基またはアントリル基である。nは1〜3の整数を示し、ArはAL中の任意の炭素原子に結合することができる。)
.A成分のポリアミド樹脂のガラス転移温度が90℃〜250℃である前項1記載の難燃性樹脂組成物。
.A成分のポリアミド樹脂が、少なくとも1種の脂環式構造を有する前項1記載の難燃性樹脂組成物。
【0010】
.B成分の有機リン化合物が、下記式(3)で表される有機リン化合物である前項1記載の難燃性樹脂組成物。
【化3】
(式中、R、Rは同一または異なっていてもよく、置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基またはアントリル基である。R、R、R、Rは同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基またはアントリル基から選択される置換基である。)
.B成分の有機リン化合物が、下記式(4)で表される有機リン化合物である前項1記載の難燃性樹脂組成物。
【化4】
(式中、R21、R22は同一もしくは異なり、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。)
.B成分の有機リン化合物は、下記式(5)で示される化合物である前項1記載の難燃性樹脂組成物。
【化5】
【0011】
.B成分の有機リン化合物は、酸価が0.7mgKOH/g以下である前項1記載の難燃性樹脂組成物。
.B成分の有機リン化合物は、HPLC純度が少なくとも90%である前項1記載の難燃性樹脂組成物。
.UL−94規格の難燃レベルにおいて、少なくともV−2を達成する前項1記載の難燃性樹脂組成物。
10.A成分100重量部に対して、B成分が2〜40重量部の割合で含有する前項1記載の難燃性樹脂組成物。
11.0.03μm以下の算術平均粗さ(Ra)を有する厚み2mmの平滑平板において、ヘーズが10%以下である前項1記載の難燃性樹脂組成物。
12.前項1〜11のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物より形成された成形品。
13.前項1〜11のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物より形成されたシートまたはフィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、実質的にハロゲンを含有せず、透明性、機械的強度、難燃性、耐薬品性に優れた難燃性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
<A成分>
本発明の樹脂成分(A成分)は、50重量%以上がポリアミド樹脂から構成される。本発明の樹脂成分(A成分)は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、特に好ましくは実質的にポリアミド樹脂のみから構成される。本発明の範囲であれば、ポリアミド樹脂の特徴である、優れた機械的特性及び耐薬品性が保持される。他の樹脂成分としては、ポリスチレン、環状ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂、SAN樹脂、エラストマーなどが挙げられる。
【0014】
本発明のA成分として使用されるポリアミド樹脂は、透明性を有するものであれば特に限定されない。透明性を有するポリアミド樹脂としては、非晶性ポリアミド樹脂および微結晶性ポリアミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のポリアミド樹脂を好適に使用することができる。
【0015】
また、ポリアミド樹脂は90℃〜250℃のガラス転移温度を有することが好ましく、より好ましくは100℃〜230℃、さらに好ましくは100℃〜200℃である。ガラス転移温度が90℃より低い場合は、得られる透明ポリアミド樹脂組成物の成形品の耐熱性が低下し、工業的な有用性が低下する場合がある。さらに、ガラス転移温度が90℃より低い場合は低温で溶融混練する必要があり、難燃性を付与するB成分が未溶融の状態でA成分中に残り分散不良を起こすため、難燃性が低下することがある。一方、ガラス転移温度が250℃より高い場合は、高温での溶融混練が必要となり、透明ポリアミド樹脂の分解が起こり、成形品が着色することがある。また、押出時のベンチレーションに伴うB成分の揮発が懸念され、目標の組成でB成分を配合することが困難となり、難燃性や機械特性にバラツキが発生することがある。
A成分を構成するポリアミド樹脂の原料としては、非対称性の化学構造を有する原料モノマーや脂環式構造を有する原料モノマーを用いることができる。
【0016】
非対称性の化学構造を導入することで、透明性を有する非晶性若しくは微結晶性ポリアミド樹脂を得ることができる。非晶性若しくは微結晶性ポリアミド樹脂は、透明性を有するだけでなく、非晶領域に添加剤を多く溶解させることができ、ブリードアウト等の問題が発生し難く好ましい。
非対称性の化学構造を有する原料モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、および1,2−プロピレンジアミンから構成される群のうち、少なくとも1種の分岐脂肪族ジアミンを選択することができる。
【0017】
また、A成分を構成するポリアミド樹脂に脂環式構造を導入することでも、透明性を有する非晶性若しくは微結晶性ポリアミド樹脂を得ることができる。脂環式構造を導入させた場合、ポリアミド樹脂に疎水性基を多く持たせることにより、A成分のポリアミド樹脂成分とB成分の有機リン化合物との溶解度パラメータの差が小さくなり、相溶性が向上することが考えられる。相溶性が向上すると、A成分のポリアミド樹脂中に、B成分の有機リン化合物が均一に分散し、難燃性が向上すると考えられる。
【0018】
脂環式構造を有する原料モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、1,4−または1,3−ビス(アミノメチル)ヘキサン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチルジシクロヘキシルプロパンおよびイソホロンジアミンから構成される群のうち、少なくとも1種の脂環式ジアミンを選択することができる。
上記以外の原料モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、6〜36個の炭素原子を持つ、脂肪族、脂環族、または芳香族ジアミン、ジカルボン酸、ラクタム、及び/又はアミノカルボン酸から構成される群のうち、少なくとも1種のモノマーを選択することができる。
【0019】
透明性を有するポリアミド樹脂の種類としては、特に限定されないが、例えば、ポリアミドPA12/MACMI(PA12/4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチルジシクロヘキシルメタン、イソフタル酸)、PA12/MACMT(PA12/4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチルジシクロヘキシルメタン、テレフタル酸)、PA MACM 12(4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチルジシクロヘキシルメタン、デカンジカルボン酸又はラウロラクタム)、PA MC 12(PA12、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン)、PA6I/6T、PA6I/6T/MACMI、PA MACM PACM 12(4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、デカンジカルボン酸又はラウロラクタム)などが挙げられる。なお、前記ポリアミド樹脂の表記は、JIS K6920−1に従った。
【0020】
非晶性若しくは微結晶性ポリアミド樹脂を含む樹脂成分としては、市販されているものを用いても良く、特に限定されないが、例えば、PA12/MACMIを含む商品名「グリルアミドTR55」(エムスケミー・ジャパン社)、PA MACM 12を含む商品名「グリルアミドTR90」(エムスケミー・ジャパン社)、PA MC 12を含む商品名「トロガミドCX」(ダイセル・エボニック社)、PA12/MACMTを含む商品名「クリスタミドMS」(アルケマ社)、PA MACM 14を含む商品名「リルサン(Rilsan)M−G350」(アルケマ社)などが挙げられる。
【0021】
<B成分>
B成分は下記式(1)で示される有機リン化合物であり、上記A成分が成形用樹脂組成物の主成分であるのに対し、B成分は難燃性を付与するための成分である。
【0022】
【化6】
(式中、X、Xは同一もしくは異なり、下記式(2)で表される芳香族置換アルキル基である。)
【0023】
【化7】
【0024】
式中、ALは炭素数1〜5の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基としてアルカンジイル基、アルカントリイル基、アルカンテトライル基等が挙げられる。
【0025】
具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、イソプロピルジイル基、ブチレン基、ペンチレン基等の炭素数1〜5のアルキレン基が挙げられる。また、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基等の炭素数1〜5のアルカントリイル基が挙げられる。また、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基等の炭素数1〜5のアルカンテトライル基が挙げられる。
【0026】
Arは置換基を有しても良い、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基である。置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜5のアルキル基、フッソ原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
ArはAL中の任意の炭素原子に結合することができる。nは1〜3の整数である。
【0027】
有機リン化合物(B成分)として下記式(3)で表される化合物が好ましい。
【化8】
【0028】
式中、R、Rは同一または異なっていてもよく、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基またはアントリル基である。置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜5のアルキル基、フッソ原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0029】
、R、R、Rは同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状のアルキル基、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基またはアントリル基から選択される置換基である。炭素数1〜4のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル等が挙げられる。フェニル基、ナフチル基またはアントリル基の置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜5のアルキル基、フッソ原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0030】
有機リン化合物(B成分)として下記式(4)で表される化合物がさらに好ましい。
【化9】
【0031】
式中、R21、R22は同一もしくは異なり、その芳香環に置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、そのうちフェニル基が好ましい。
21およびR22のフェニル基、ナフチル基またはアントリル基は、その芳香環の水素原子が置換されていてもよく、置換基としてはメチル、エチル、プロピル、ブチルもしくはその芳香環の結合基が、酸素原子、イオウ原子または炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。
【0032】
有機リン化合物(B成分)として下記式(5)で表される化合物が特に好ましい。
【化10】
【0033】
上記式(1)で表される有機リン化合物は各種溶媒に対する溶解度が低く、ポリアミド樹脂に配合した場合においても、ポリアミド樹脂が本来有する耐薬品性を保持することができる。
【0034】
次に本発明における前記有機リン化合物(B成分)の合成法について説明する。B成分は、以下に説明する方法以外の方法によって製造されたものであってもよい。
B成分は例えばペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、続いて酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属化合物により処理し、次いでアラルキルハライドを反応させることにより得られる。
【0035】
また、ペンタエリスリトールにアラルキルホスホン酸ジクロリドを反応させる方法や、ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させることによって得られた化合物にアラルキルアルコールを反応させ、次いで高温でArbuzov転移を行う方法により得ることもできる。後者の反応は、例えば米国特許第3,141,032号明細書、特開昭54−157156号公報、特開昭53−39698号公報に開示されている。
【0036】
B成分の具体的合成法を以下説明するが、この合成法は単に説明のためであって、本発明において使用されるB成分は、これら合成法のみならず、その改変およびその他の合成法で合成されたものであってもよい。より具体的な合成法は後述する調製例に説明される。
【0037】
(I)B成分中の前記(1−a)の有機リン化合物;
ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、次いでターシャリーブタノールにより酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシドにより処理し、ベンジルブロマイドを反応させることにより得ることができる。
また別法としては、ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、得られた生成物とベンジルアルコールの反応生成物を触媒共存下で加熱処理する事により得られる。
【0038】
前述したB成分は、その酸価が好ましくは0.7mgKOH/g以下、より好ましくは0.5mgKOH/g以下であるものが使用される。酸価がこの範囲のB成分を使用することにより、難燃性、色相および熱安定性に優れた難燃性樹脂組成物が得られる。B成分は、その酸価が0.4mgKOH/g以下のものが最も好ましい。ここで酸価とは、サンプル(B成分)1g中の酸成分を中和するのに必要なKOHの量(mg)を意味する。
【0039】
さらに、B成分は、そのHPLC純度が、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも99%であるものが使用される。かかる高純度のものは難燃性樹脂組成物の難燃性、色相、および熱安定性に優れ好ましい。ここでB成分のHPLC純度の測定は、以下の方法を用いることにより効果的に測定が可能となる。
【0040】
カラムは東ソー(株)製TSKgel ODS−120T 2.0mm×150mm(5μm)を用い、溶離液に蒸留水とアセトニトリルとの混合液を用いて、カラム温度40℃、検出器UV−264nmで0→12min:アセトニトリル50%、12→17min:アセトニトリル50→80%、17→27min:アセトニトリル80%、27→34min:アセトニトリル80→100%、34→60min:100%のグラジエントプログラムにてHPLC分析を行った。測定は、B成分50±0.5mgをアセトニトリル25mlに溶解させた後、孔径0.2μmのPTFEフィルターでろ過し、測定した。純度は面積%として算出した。
【0041】
B成分中の不純物を除去する方法としては、特に限定されるものではないが、水、メタノール等の溶剤でリパルプ洗浄(溶剤で洗浄、ろ過を数回繰り返す)を行う方法が最も効果的で、且つコスト的にも有利である。
さらに、B成分の平均粒径は5〜100μmが好ましく、より好ましくは7〜50μmである。
【0042】
前記B成分は、樹脂成分(A成分)100重量部に対して1〜50重量部、好ましくは2〜40重量部、より好ましくは3〜30重量部の範囲で配合される。B成分の配合割合は、所望する難燃性レベル、樹脂成分(A成分)の種類などによりその好適範囲が決定される。さらに他の難燃剤、難燃助剤の使用によってもB成分の配合量を変えることができ、多くの場合、これらの使用によりB成分の配合割合を低減することができる。
【0043】
<その他の成分>
その他の難燃剤(C成分)としては下記(C−1)〜(C−11)を例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0044】
(C−1);赤リン
(C−2);下記式(C−2)で表されるトリアリールホスフェート
【化11】
【0045】
(C−3);下記式(C−3)で表される縮合リン酸エステル
【化12】
【0046】
(C−4);下記式(C−4)で表される縮合リン酸エステル
【化13】
【0047】
(C−5);下記式(C−5)で表される有機リン化合物
【化14】
【0048】
(C−6);下記式(C−6)で表されるフォスフィン酸塩化合物
【化15】
【0049】
(C−7);下記式(C−7)で表されるジフォスフィン酸塩化合物
【化16】
【0050】
(C−8);ポリリン酸アンモニウム
(C−9);メラミン
(C−10);ポリリン酸メラミン
(C−11);メラミンシアヌレート
【0051】
前記式(C−2)〜(C−4)中Q〜Qは、それぞれ同一もしくは異なっていてもよく、炭素数6〜15のアリール基、好ましくは炭素数6〜10のアリール基である。このアリール基の具体例としてはフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基が挙げられる。これらアリール基は1〜5個、好ましくは1〜3個の置換基を有していてもよく、その置換基としては、(i)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基およびノニル基の如き炭素数1〜12のアルキル基、好ましくは炭素数1〜9のアルキル基、(ii)メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基およびペントキシ基の如き炭素数1〜12のアルキルオキシ基、好ましくは炭素数1〜9のアルキルオキシ基、(iii)メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基およびペンチルチオ基の如き炭素数1〜12のアルキルチオ基、好ましくは炭素数1〜9のアルキルチオ基および(iv)Ar−W−式で表される基(ここでWは−O−、−S−または炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、Arは炭素数6〜15、好ましくは炭素数6〜10のアリール基を示す)が挙げられる。
【0052】
式(C−3)および(C−4)において、ArおよびArは、両者が存在する場合(C−4の場合)には同一または異なっていてもよく、炭素数6〜15のアリーレン基、好ましくは炭素数6〜10のアリーレン基を示す。具体例としては、フェニレン基またはナフチレン基が挙げられる。このアリーレン基は1〜4個、好ましくは1〜2個の置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、(i)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基およびtert−ブチル基の如き炭素数1〜4のアルキル基、(ii)ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基およびクミル基の如き炭素数7〜20のアラルキル基、(iii)Q−W−式で示される基(ここでWは−O−または−S−を示し、Qは炭素数1〜4、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基または炭素数6〜15、好ましくは6〜10のアリール基を示す)および(iv)フェニル基の如き炭素数6〜15のアリール基が挙げられる。
【0053】
式(C−3)および(C−4)において、mは1〜5の整数、好ましくは1〜3の整数を示し、特に好ましくは1である。
式(C−4)においてZはArおよびArを結合する単結合もしくは基であり、−Ar−Z−Ar−は通常ビスフェノールから誘導される残基である。かくしてZは単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−または炭素数1〜3のアルキレン基を示し、好ましくは単結合、−O−、またはイソプロピリデンである。
【0054】
前記式(C−5)の芳香族環は1〜4個、好ましくは1〜3個の置換基を有していてもよく、その置換基としては、(i)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基およびノニル基の如き炭素数1〜12のアルキル基、好ましくは炭素数1〜9のアルキル基、(ii)メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基およびペントキシ基の如き炭素数1〜12のアルキルオキシ基、好ましくは炭素数1〜9のアルキルオキシ基、(iii)メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基およびペンチルチオ基の如き炭素数1〜12のアルキルチオ基、好ましくは炭素数1〜9のアルキルチオ基および(iv)Ar−W−式で表される基(ここでWは−O−、−S−または炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、Arは炭素数6〜15、好ましくは炭素数6〜10のアリール基を示す)が挙げられる。
【0055】
式(C−6)および(C−7)において、R及びRは、それぞれ、直鎖状もしくは分枝状の炭素数1〜6のアルキル基及び/又は炭素数1〜10のアリール基を表し、Rは線状もしくは分枝状の炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、炭素数7〜10のアルキルアリーレン基又は炭素数7〜10のアリールアルキレン基を表す。MはCa、Mg、Al、Znから選ばれるものであり、mはMの価数を表し、2n=mxであり、nは1又は3、xは1又は2である。
【0056】
前記(C−1)〜(C−11)のリン若しくはリン化合物は、本発明を損なわない限り、B成分と併用することができる。
前記(C−1)〜(C−11)のリン若しくはリン化合物を樹脂組成物に配合する場合、その割合は、有機リン化合物(B成分)100重量部当たり、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは2〜40重量部、特に好ましくは3〜30重量部の範囲が適当である。前記(C−1)〜(C−11)のリン若しくはリン化合物の内、好ましくは(C−2)〜(C−5)のリン化合物である。
【0057】
本発明の樹脂組成物には他の難燃助剤を添加することができる。例えば、下記化学式(D−1)で示されるジクミル(D成分)を配合することができる。
【化17】
【0058】
このビスクミル化合物の芳香族環は1〜5個、好ましくは1〜3個の置換基を有していてもよく、その置換基としては、(i)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基およびノニル基の如き炭素数1〜12のアルキル基、好ましくは炭素数1〜9のアルキル基、(ii)メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基およびペントキシ基の如き炭素数1〜12のアルキルオキシ基、好ましくは炭素数1〜9のアルキルオキシ基、(iii)メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基およびペンチルチオ基の如き炭素数1〜12のアルキルチオ基、好ましくは炭素数1〜9のアルキルチオ基および(iv)Ar−W−式で表される基(ここでWは−O−、−S−または炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、Arは炭素数6〜15、好ましくは炭素数6〜10のアリール基を示す)が挙げられる。
【0059】
このジクミル(D成分)は、樹脂成分(A成分)100重量部に対して0.01〜3重量部、好ましくは0.02〜2重量部、特に好ましくは0.03〜1重量部配合される。このジクミルを前記割合で配合することによる難燃効果はラジカル発生によるものと推測され、その結果として難燃性のレベルが向上する。
【0060】
本発明の難燃性樹脂組成物には、種々の添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤などの劣化防止剤、滑剤、帯電防止剤、離型剤、可塑剤、ガラス繊維、炭素繊維などの補強繊維、タルク、マイカ、ワラストナイトなどの充填剤、顔料などの着色剤などを添加してもよい。前記添加剤の使用量は、透明性、耐熱性、耐衝撃性、機械的強度などを損なわない範囲で、添加剤の種類に応じて適当に選択できる。
【0061】
本発明の難燃性樹脂組成物の調整は、AおよびB成分および必要に応じてその他成分を、V型ブレンダー、スーパーミキサー、スーパーフローター、ヘンシェルミキサーなどの混合機を用いて予備混合した組成物であってもよいが、通常、前記予備混合物を均一に溶融混合した混合物である場合が多い。A成分の樹脂種によるが、このような混合物は、例えば、好ましくは200〜350℃、より好ましくは220〜300℃程度の温度で溶融混練して、ペレット化することにより得ることができる。混練手段としては、種々の溶融混合機、例えば、ニーダー、単軸または二軸押出機などが使用できるが、二軸押出機などを用いて樹脂組成物を溶融して、サイドフィーダーにより液体成分を注入し、押出し、ペレタイザーによりペレット化する場合が多い。
【0062】
本発明の難燃性樹脂組成物は、オフィスオートメーション機器部品、家電製品部品、自動車部品などの種々の成形品を成形する材料として有用である。このような成形品は慣用の方法、例えば、射出成形機を用いて、ペレット状難燃性樹脂組成物を例えば、200〜350℃程度のシリンダー温度で射出成形することにより製造できる。また、シートまたはフィルムの製造方法としては、例えば、溶融押し出し法、熱プレス法、カレンダー法等公知の方法を挙げることが出来る。特に、溶融押し出し法が生産性の点から好ましい。溶融押し出し法においては、Tダイを用いて樹脂を押し出し冷却ロールに送る方法が好ましく用いられる。このときの溶融温度はポリカーボネート樹脂の分子量、Tg、溶融流動特性等から決められるが、210℃〜260℃の範囲が好ましく、210℃〜250℃の範囲がより好ましい。シートまたはフィルムの厚みとしては、0.03〜10mmの範囲が好ましく、より好ましくは0.04〜5mm、さらに好ましくは0.05〜3mmの範囲である。
【0063】
<全光線透過率>
本発明の樹脂組成物は、0.03μm以下の算術平均粗さ(Ra)を有する厚み2mmの平滑平板において、全光線透過率が80%以上であり、好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは88%以上である。全光線透過率が80%以上であると、視認性に優れ好ましい。全光線透過率はJIS K7105に従って測定される。
【0064】
<ヘーズ>
本発明の樹脂組成物は、0.03μm以下の算術平均粗さ(Ra)を有する厚み2mmの平滑平板において、ヘーズが好ましくは10%以下であり、より好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは2%以下であり、特に好ましくは1.5%以下である。ヘーズが10%以下であると、透明性に優れ好ましい。ヘーズはJIS K7105に従って測定される。
【0065】
<難燃性>
本発明の難燃性樹脂組成物は、ハロゲンを実質的に含有しない組成物であり、厚さ1/16インチ(1.6mm)の成形品においてUL−94規格の難燃レベルにおいて少なくともV−2レベル、より好ましくはV−0レベルの難燃性が達成される。
【実施例】
【0066】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。なお、評価は下記の方法で行った。
【0067】
<難燃剤>
(1)酸価
JIS−K−3504に準拠して測定を実施した。
(2)HPLC純度
難燃剤50±0.5mgをアセトニトリル25mlに溶解させた後、孔径0.2μmのPTFEフィルターでろ過し、下記の分析方法で測定した。純度は面積%として算出した。
カラムは東ソー(株)製TSKgel ODS−120T 2.0mm×150mm(5μm)を用い、溶離液に蒸留水とアセトニトリルとの混合液を用いて、カラム温度40℃、検出器UV−264nmで0→12min:アセトニトリル50%、12→17min:アセトニトリル50→80%、17→27min:アセトニトリル80%、27→34min:アセトニトリル80→100%、34→60min:100%のグラジエントプログラムにてHPLC分析を行った。
【0068】
<樹脂組成物>
(1)難燃性(UL−94評価)
難燃性は厚さ1/16インチのテストピースを用い、難燃性の評価尺度として、米国UL規格のUL−94に規定されている垂直燃焼試験に準じて評価を行った。
(2)全光線透過率
実施例に記載の方法で成形した3段型(厚み1.0mm、2.0mm、3.0mm部分を有する)プレート(算術平均表面粗さRa;0.03μm)の厚み2.0mm部の全光線透過率を、JIS K7105に従って、日本電色工業(株)製、積分球式全光線透過率測定機NDH−2000(C光源)により測定した。
(3)へーズ
実施例に記載の方法で成形した3段型プレート(算術平均表面粗さRa;0.03μm)の厚み2.0mm部のヘーズを、JIS K7105に従って、日本電色(株)製NDH−300Aにより測定した。
ヘーズ(H)は下記式で求めた。
H=Td/Tt×100(%)
(ここで、Td;拡散透過率(%)、Tt;全光線透過率(%))
ヘーズは成形品の濁り度で、数値が低いほど濁りが少ないことを示す。
(4)ガラス転移温度
ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製2910型DSCを使用し、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/minにて測定した。
(5)融点
ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製2910型DSCを使用し、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/minにて測定した。
(6)引張試験
日本製鋼所製射出成形機J−75EIIIを用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で成形したダンベル型試験片を用い、IS0 527−1および527−2に則して、23℃における引張強度を測定し、破壊呼び歪、降伏応力および引張破壊応力を求めた。
(7)曲げ試験
日本製鋼所製射出成形機J−75EIIIを用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で成形した曲げ試験片を用い、ISO178に従って、曲げ強さ、曲げ弾性率を測定した。
(8)シャルピー衝撃強さ(ノッチ有り)
日本製鋼所製射出成形機J−75EIIIを用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で成形した試験片を用い、ISO179に従って、23℃におけるシャルピー衝撃強さ(ノッチ有り)を測定した。
【0069】
[調製例1]
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド(FR−1)の調製
攪拌機、温度計、コンデンサーを有する反応容器に、3,9−ジベンジロキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン22.55g(0.055モル)、ベンジルブロマイド19.01g(0.11モル)およびキシレン33.54g(0.32モル)を充填し、室温下攪拌しながら、乾燥窒素をフローさせた。次いでオイルバスで加熱を開始し、還流温度(約130℃)で4時間加熱、攪拌した。加熱終了後、室温まで放冷し、キシレン20mLを加え、さらに30分攪拌した。析出した結晶をろ過により分離し、キシレン20mLで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール40mLをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約2時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール20mLで洗浄した後、得られたろ取物を120℃、1.33×10Paで19時間乾燥し、白色の鱗片状結晶を得た。生成物は質量スペクトル分析、H、31P核磁気共鳴スペクトル分析および元素分析でビスベンジルペンタエリスリトールジホスホネートであることを確認した。収量は20.60g、収率は91%、31P−NMR純度は99%であった。また、本文記載の方法で測定したHPLC純度は99%であった。酸価は0.05mgKOH/gであった。
H−NMR(DMSO−d,300MHz):δ7.2−7.4(m,10H),4.1−4.5(m,8H),3.5(d,4H)、31P−NMR(DMSO−d,120MHz):δ23.1(S)、融点:257℃、平均粒径:30μm
【0070】
(イ)ポリアミド系樹脂(A成分)
(1)市販の非晶性ポリアミド(エムスケミー・ジャパン(株)製グリルアミドTR−90)を用いた(以下PA−1と称する)。樹脂単体でのガラス転移温度は151℃であった。
(2)市販の微結晶性ポリアミド(ダイセル・エボニック(株)製トロガミドmyCX)を用いた(以下PA−2と称する)。樹脂単体でのガラス転移温度は131℃、融点は250℃であった。
【0071】
(ロ)有機リン化合物(B成分)
(1)調製例1で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド{前記式(5)のリン系化合物(以下FR−1と称する)}
【0072】
(ハ)その他の難燃剤
(1)ジエチルホスフィン酸アルミニウム塩
市販のフォスフィン酸塩化合物(クラリアント(株)社製Exolit OP1240)を用いた(以下FR−2と称する)。
(2)ポリリン酸メラミン
市販のポリリン酸メラミン(チバスペシャリティケミカルズ(株)製MELAPUR200)を用いた(以下FR−3と称する)。
(3)縮合リン酸エステル
市販の縮合リン酸エステル((株)ADEKA製FP−600)を用いた(以下FR−4と称する)。
【0073】
[実施例1〜4、比較例1〜5]
表1および2記載の各成分を表記載の量(重量部で表示)でタンブラーにて配合し、15mmφ二軸押出機(テクノベル製、KZW15)にてシリンダー温度250℃の条件でペレット化し、得られたペレットを80℃の熱風乾燥機にて8時間乾燥を行った。該ペレットを日本製鋼所製射出成形機J−75EIIIにてシリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で成形し、各種試験片を得た。
実施例で作成した樹脂組成物は、比較例で作成した樹脂組成物に比べて、透明性を維持したまま、難燃性が向上していることが分かる。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、実質的にハロゲンを含有することなく高い難燃性を有する透明ポリアミド系樹脂組成物を提供するものであり、本樹脂組成物は透明性を必要とされる電気・電子部品、自動車部品、レンズ等の種々の成形品、フィルム・シートを成形する材料として有用であり、工業的に極めて有用である。