(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の水分散ベシクルは、水相がベシクル内部と外部(バルク)に存在するため、水溶性成分の交換が起きやすい。従って、水分散ベシクル組成物に、水溶性の有効成分を安定的に保持できないという問題があった。
【0008】
一方、非特許文献1に示されるように、シクロヘキサン中で、レシチンとC4−レシチンを組み合わせた場合には、逆ベシクル組成物を形成することができるものの、非特許文献2に示されるように他のレシチンを用いた場合には逆ベシクルを形成するのが困難であった。
また、非特許文献1に示されるように、シクロヘキサンにおける逆ベシクルの安定的な形成のためには、NaCl等の塩を添加することが必要であった。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決しようとするものであり、レシチンを用いた逆ベシクル組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する第一の本発明は、レシチンを含む逆ベシクル、及び分子量が114g/molより大きい25℃で液状の油剤を含有する逆ベシクル組成物である。
本発明の逆ベシクル組成物は、レシチンの逆ベシクルが、油剤中に安定的に形成されているものである。
なお、ここでいう逆ベシクルの安定的な形成とは、逆ベシクルを含む組成物が、油とラメラ相に相分離することなく、逆ベシクルが、組成物中に保持されていることを意味する。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記油剤は、シリコーン油、炭化水素油、エステル油、天然動植物油、フッ素油から選ばれる。
これらの油剤を用いることで、化粧料に適した、安全性の高い逆ベシクル組成物となる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記逆ベシクル組成物は、前記油剤を40質量%以上含む。
前記油剤を40質量%含む逆ベシクル組成物は、逆ベシクルの形成性が高い。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記逆ベシクルは、水を含む。
逆ベシクルが水を含むことで、逆ベシクルの形成性が向上し、より安定性の高い逆ベシクル組成物となる。また、例えば、化粧料などの有効成分である水溶性成分を逆ベシクル内に保持することができる。また、逆ベシクル内を、反応場として使用することもできる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記逆ベシクル組成物における前記水の含有量は、レシチンを含む二分子膜構成成分の含有量の1質量倍以下である。
このような形態とすることにより、レシチンの逆ベシクルをより安定的に維持することができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記逆ベシクルは、水溶性の有効成分を含む。
このような逆ベシクル組成物を含む逆ベシクル組成物は、例えば皮膚などの生体組織に対し、さまざまな活性をもった組成物として機能させることが可能である。
【0016】
本発明の好ましい形態では、本発明の逆ベシクル組成物は、非乳化型である。
このような形態の逆ベシクル組成物は、安定性が高い。
【0017】
また、もう一つの本発明は、上述した本発明の逆ベシクル組成物を含む、皮膚外用剤である。
このような逆ベシクル組成物を含む皮膚外用剤は、水溶性の有効成分を逆ベシクル内に保持しうるものであり、よって該有効成分を製剤中に安定的に保持しうるものである。
【0018】
また、もう一つの本発明は、レシチン、及び分子量が114g/molより大きい25℃で液状の油剤成分を混合して混合物を調製した後、該混合物を振とう又は撹拌することを含む、逆ベシクル組成物の製造方法である。
本発明の製造方法によれば、レシチンを含む逆ベシクルを含む安定な組成物を、効率的に製造することができる。
【0019】
また、もう一つの本発明は、上述した逆ベシクル組成物から逆ベシクルを回収することを含む、逆ベシクルの製造方法である。
また、もう一つの本発明は、上記で回収した逆ベシクルを含む、皮膚外用剤である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の逆ベシクル組成物は、安定性が高い。また、本発明の逆ベシクル組成物は、その逆ベシクル組成物の逆ベシクル内に水溶性の有効成分を含有させることが可能であり、また、その逆ベシクル内のウォータープールを反応場として利用することも可能である。また、本発明の逆ベシクル組成物は、皮膚外用剤や食品等に用いることを想定した場合にも、高い安全性を実現しうるものである。
また、本発明の逆ベシクル組成物の製造方法は、効率的に上記逆ベシクル組成物を製造することを可能にするものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について、詳述する。
本発明の逆ベシクル組成物は、レシチンを含む逆ベシクルと、分子量が114g/molより大きい25℃で液状の油剤とを含む。以下、本組成物を構成する各成分について説明する。
【0023】
<1>レシチンを含む逆ベシクル
本発明の逆ベシクル組成物における逆ベシクルは、レシチンを含む。
本発明の逆ベシクルを形成するレシチンは、植物、動物及び微生物の生体から抽出され、所望により精製したものを用いてもよいし、合成したものを用いても良い。好ましくは、大豆、トウモロコシ、落花生、ナタネ、麦等の植物由来レシチンや、卵黄等の動物由来レシチンなどを用いることができる。
本発明におけるレシチンには、ホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルメチルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ビスホスアチジン酸、ジホスファチジルグリセリン(カルジオリピン)等が含まれる。
また、本発明において、「レシチン」には、水素添加レシチン、酵素分解レシチン、酵素分解水素添加レシチン、リゾレシチン等も含まれる。
【0024】
レシチンの疎水基部分を構成する脂肪酸の炭素数は特に制限されず、例えば炭素数8〜20、好ましくは16〜18のものを主に用いることができる。また、脂肪酸は、飽和であっても不飽和であってもよい。また、脂肪酸は直鎖であっても分岐であっても良い。
特に、本発明の逆ベシクル組成物は、不飽和脂肪酸を有するレシチンを主成分として用いることができる点に利点がある。後述する実施例で示すように、従来知られているシクロヘキサンを溶媒とした逆ベシクル組成物においては、不飽和脂肪酸を有するレシチンを主成分として用いることは困難であった。
【0025】
本発明において、レシチンは、上記化合物の単独種の形態で用いることもできるし、上述した複数種のリン脂質の混合物の形態で用いることも出来る。
レシチンの組成としては、ホスファチジルコリンを主体としたものが好ましく、例えば20質量%以上、好ましくは50質量%以上がホスファチジルコリンであることが好ましい。
【0026】
レシチンは、市販のものを用いることができる。例えば、以下のような市販品を用いることができる。
レシノールS−10、日光ケミカルズ社
(水添:○、PC(ホスファチジルコリン)含有量:25〜30%)
レシノールS−10E、日光ケミカルズ社
(水添:○、PC含有量:75〜85%)
レシノールS−10EX、日光ケミカルズ社
(水添:○、PC含有量:>95%)
ベイシスLP−20、日清オイリオ社(水添:×、PC含有量:20〜30%)
ベイシスLP−20H、日清オイリオ社(水添:○、PC含有量:未確認)
ベイシスLS−60HR、日清オイリオ社(水添:○、PC含有量:60〜75%)
ベイシスLS−60、日清オイリオ社(水添:×、PC含有量:未確認)
Phospholipon85G、H.Holstein GmbH&Co.KG社((水添:×、PC含有量:>85%))
Phospholipon90G、H.Holstein GmbH&Co.KG社((水添:×、PC含有量:>94%))
Phospholipon75IP、H.Holstein GmbH&Co.KG社((水添:×、PC含有量:>70%))
Phospholipon90IP、H.Holstein GmbH&Co.KG社((水添:×、PC含有量:>90%))
Phospholipon80H、H.Holstein GmbH&Co.KG社((水添:○、PC含有量:>70%))
Phospholipon90H、H.Holstein GmbH&Co.KG社((水添:○、PC含有量:>90%))
Phospholipon75HIP、H.Holstein GmbH&Co.KG社((水添:○、PC含有量:>70%))
Phospholipon90HIP、H.Holstein GmbH&Co.KG社((水添:○、PC含有量:>90%))
LipoidE25、H.Holstein GmbH&Co.KG社((水添:×、PC含有量:>25%))
LipoidE80、H.Holstein GmbH&Co.KG社((水添:×、PC含有量:>80%))
LipoidE80S、H.Holstein GmbH&Co.KG社((水添:×、PC含有量:>64%))
LipoidEPCS、H.Holstein GmbH&Co.KG社((水添:×、PC含有量:>96%))
Epikron200、Cargill社(水添:×、PC含有量:>95%)
Epikron200SH、Cargill社(水添:○、PC含有量:未確認)
Epikron100P、Cargill社(水添:×、PC含有量:未確認)
Epikron100H、Cargill社(水添:○、PC含有量:未確認)
PhosphoLipidPCSH70、日本精化社(水添:○、PC含有量:約70%)
卵黄レシチンPL−100E、キューピー社(水添:○、PC含有量:約83%)
【0027】
本発明における逆ベシクルは、上述したレシチンの脂肪酸鎖を外側に向けて配向させた二分子膜の小胞体である。
また、本発明における逆ベシクルは、レシチン以外の補助界面活性剤(非イオン界面活性剤、イオン性界面活性剤)を二分子膜構成成分として含んでいてもよい。
ここで、逆ベシクルを形成する二分子膜構成成分のうち、レシチンが好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上を占めることが好ましい。
本発明における逆ベシクルは、水を含むものであることが好ましい。水は、逆ベシクルの二分子膜内に保持される。これにより、逆ベシクルの組成物中の安定性が向上する。また、二分子膜内に水溶性の有効成分などを保持することも可能となる。有効成分としては、例えば皮膚組織の改善、健康の増進に有効な成分が挙げられる。
逆ベシクルが水を含むものである場合、水の含有量は、レシチンを含む二分子膜構成成分の含有量の1質量倍以下であることが好ましい。また、水の含有量は、好ましくはレシチンを含む二分子膜構成成分の含有量の好ましくは0.1〜0.7質量倍である。これにより、逆ベシクルの二分子膜から過剰な水が溢れることなく、逆ベシクルを安定的に保持することが可能となる。
【0028】
<2>分子量が114g/molより大きい25℃で液状の油剤
本発明で用いられる、分子量が114g/molより大きい25℃で液状の油剤は、上述した逆ベシクルの外部と内部の相を構成する。
上記油剤は、分子量が114g/molより大きく、25℃で液状である限り特に制限されない。
ここで、分子量が114g/mol以下の油剤を用いた場合には、逆ベシクルの形成に必要なラメラ相と油剤の共存相を形成することができない。しかしながら、油剤として分子量が114g/molより大きいものを用いることで、レシチンの油剤への溶解性を低くすることができ、ラメラ相と油剤の共存相を形成することが可能となる。
油剤の分子量は、好ましくは282g/mol以上である。しかし、一般に分子量が大きくなるにつれて油剤の粘度が高くなり、ラメラ相の分散が困難になる。したがって油剤は室温で流動性を実現できる分子量以下である好ましい。
【0029】
本発明で用いられる油剤としては、シリコーン油、炭化水素油、エステル油、天然動植物油、フッ素油等が挙げられる。
【0030】
シリコーン油の例としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等のオルガノポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シロキサン等が挙げられる。
中でも、上述した環状シロキサンが好ましく用いられる。
【0031】
炭化水素油としては、鎖式及び環式の炭化水素、例えば、α−オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、水添イソブテン、イソオクタン、デカン、イソドデカン、イソヘキサデカン、ポリブデン、デシルテトラデカノール等が挙げられる。
【0032】
エステル油としては、コハク酸ジオクチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ(2−ヘプチルウンデシル)、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチルオクチル、リンゴ酸ジイソステアリル、クエン酸トリエチル、ジオクタン酸エチレングリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリオクタン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラオレイン酸ペンタエリトリトール、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソセチル、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ラウロイルグルタミン酸ジオクチルドデシル、ラウロイルサルコシンイソプロピル、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、エチルヘキサン酸セチル等が挙げられる。
【0033】
天然動植物油としては、アボカド油、アーモンド油、オリーブ油、小麦胚芽油、サフラワー油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、綿実油、ヤシ油等が挙げられる。
【0034】
フッ素油としてはパーフルオロ類の油が挙げられる。
【0035】
<3>逆ベシクル組成物
本発明の逆ベシクル組成物は、上述した油剤中に、上述した逆ベシクルが形成されたものである。
本発明の逆ベシクル組成物におけるレシチンの含有量の上限は、逆ベシクル組成物を形成できる範囲であれば、特に制限されないが、通常10質量%、好ましくは5質量%、さらに好ましくは2質量%、より好ましくは1質量%である。
また、本発明の逆ベシクル組成物におけるレシチンの含有量の下限は、好ましくは0.001質量%、さらに好ましくは0.01質量%、より好ましくは0.1質量%である。
【0036】
本発明の逆ベシクル組成物における油剤の含有量の下限は、逆ベシクル組成物を形成できる範囲であれば、特に制限されないが、好ましくは60質量%、さらに好ましくは80質量%、さらに好ましくは90質量%、より好ましくは95質量%である。
【0037】
このような範囲で油剤を含有することにより、ラメラ相と油剤の共存相を形成しやすくなり、逆ベシクルが安定的に形成され、また組成物中に保持される。
また、本発明の逆ベシクル組成物における油剤の含有量の上限は特に制限されないが、好ましくは99.99質量%、さらに好ましくは99.90質量%、より好ましくは99.00質量%である。
【0038】
本発明の逆ベシクル組成物は、水を含むものであっても良い。この場合、上述したように水は逆ベシクル内に保持されることが好ましい。
一方、組成物中の水の一部は、上記油剤と共に乳化物を形成していてもよい。ただし、逆ベシクルの安定性の観点から、本発明の逆ベシクル組成物は、乳化型でないことがより好ましい。
このような観点から、逆ベシクル組成物における水の質量は、レシチンと同量以下が好ましい。このようにすることで、ラメラ相からの水の分離を抑えることができ、水の大半を逆ベシクル内に保持することができる。
【0039】
本発明の逆ベシクル組成物における逆ベシクルの粒子径は、作成直後の状態で200μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは20μm、より好ましくは2μm以下である。粒子径が小さいほど、分散液中で沈降しにくいという利点がある。ただし、この逆ベシクルの粒子径は、逆ベシクル自体の安定性には、特に影響しない。
逆ベシクルの粒子径は、動的光散乱法やレーザー回折法により測定することができる。
【0040】
本発明の逆ベシクル組成物は、その他、逆ベシクルの形成性を妨げない範囲において、防腐剤、増粘剤、香料等の任意成分を含んでいても良い。
【0041】
<4>逆ベシクル組成物の製造方法
上述した逆ベシクル組成物は、従来のベシクルの製造と同様の方法で行うことができる。すなわち、上述したレシチン、油剤、所望により水を混合して混合物を調製し、続いて該混合物を振とう又は撹拌することにより製造することができる。
振とうは、振とう機等を用いて行うことができる。また、撹拌は、超音波分散機等を用いて行うことができる。
逆ベシクルが形成されていることの確認は、例えば、偏光下で顕微鏡観察を行うことにより確認することができる。
【0042】
また、上記のようにして製造した逆ベシクル組成物から、逆ベシクルを回収することも可能である。なお、ここにいう回収は、濃縮の概念を含むものである。
その方法として、逆ベシクル組成物において、逆ベシクルを沈降させた後、上澄み液を除く方法が挙げられる。
【0043】
<5>皮膚外用剤
本発明の逆ベシクル組成物は、皮膚外用剤の原料として用いることができる。もちろん、本発明の逆ベシクル組成物をそのまま皮膚外用剤として用いることもできる。
このような逆ベシクル組成物を含む皮膚外用剤は、水溶性の有効成分を逆ベシクル内に保持しうるものであり、よって該有効成分を製剤中に安定的に保持しうるものである。このような水溶性の有効成分としては、トラネキサム酸、及びグリチルリチン酸やその塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステル、3−O−エチルアスコルビン酸、アスコルビン酸グルコシド或いはこれらの塩の様なアスコルビン酸類、アルブチン、ウルソール酸リン酸カリウムなどのウルソール酸塩、ピリドキシン、リボフラビン或いはこれらの塩の様なビタミンB類、ヒアルロン酸やその塩、フコイダン、硫酸化トレハロース或いはその塩、トレハロース、アミノ酸およびアミノ酸誘導体、エスクレチン配糖体、植物エキス(液状又は固形状のものを含む)等が好適に例示できる。
皮膚外用剤として、医薬や化粧料が挙げられるが、本発明の逆ベシクル組成物は、特に化粧料の原料として用いることが好ましい。
例えば、本発明の逆ベシクル組成物は、そのままローションやオイルの形態の皮膚外用剤として用いることができる。また、本発明の逆ベシクル組成物をその他成分と混合し、必要に応じて乳化するなどして、ローションやクリームの形態の皮膚外用剤として用いることもできる。また、本発明の逆ベシクル組成物を化粧料の原料粉体と混合することにより、パウダータイプの化粧料とすることもできる。
【実施例】
【0044】
(1)試験例1
表1に示す組成にて、各成分を混合し、チップ型の超音波分散機(製品名:VCX130(Sonics & Materials製))で、ラメラ相を油剤に分散した。
その後、偏光顕微鏡を用いて、逆ベシクルの形成確認をした。逆ベシクルの形成が確認されたものについては○を、逆ベシクルの形成が確認されなかったものについては×を記入した。
【0045】
【表1】
(単位:質量%)
(1)レシノールS−10、日光ケミカルズ株式会社製
(2)Epikron200、Cargill社製
*炭素数が16以上の脂肪酸を主体とするものであり、分子量は114を上回る。
【0046】
表1に示すように、分子量が114g/molより大きい油剤を用いたB、D〜Jでは、水素添加レシチンを用いた場合、及びレシチンを用いた場合のいずれにおいても逆ベシクルの形成が確認された。
一方、分子量が
84g/molの油剤を用いたA及びCを見ると、水素添加レシチンを用いたAでは逆ベシクルの形成が確認されたものの、レシチンを用いたCでは逆ベシクルの形成が確認されなかった。
これより、分子量が114g/molより大きい油剤を用いることで、レシチンの種類に制限されることなく、逆ベシクルを形成させることができることが分かった。
【0047】
(2)試験例2
試験例1とは異なるレシチンと油剤の組み合わせで逆ベシクルが形成されることを確認した。使用したレシチンと油剤を表2に示す。レシチン 0.8質量%、水 0.2質量%、油剤 99質量%を含む混合物を調製し、チップ型の超音波分散機を用いてラメラ相を油剤に分散した。その後、偏光顕微鏡を用いて、逆ベシクルの形成を確認した。逆ベシクルの形成が確認されたものについては○を、逆ベシクルの形成が確認されなかったものについては×を記入した。なお、試験を行わなかったレシチンと油剤の組み合わせについては、表2において空欄となっている。
【表2】
(1)Cargill社(水添:×、PC(ホスファチジルコリン)含有量:>95%)
(2)日清オイリオ社(水添:○、PC含有量:60〜75%)
(3)日光ケミカルズ社 (水添:○、PC含有量:25〜30%)
*炭素数が16以上の脂肪酸を主体とするものであり、分子量は114を上回る。
**炭素数が16以上のダイマー酸エステルを主体とするものであり、分子量は114を上回る。
***重合度が2以上であるため分子量は114を上回る。
【0048】
表に示すように試験を行ったすべてのレシチン、油剤の組み合わせにおいて、逆ベシクルの形成が確認された。
試験例1及び2の結果より、分子量が114g/molより大きい油剤を用いることで、レシチンの種類に制限されることなく、逆ベシクルを形成させることができることが分かった。
【0049】
(3)試験例3
結晶性の水溶性有効成分が逆ベシクルの形成に必要なラメラ相の形成を阻害しないか検討した。本試験例ではアスコルビン酸2−グルコシド、トラネキサム酸、及びグリチルリチン酸2カリウムの3種類の結晶性の水溶性有効成分について検討を行った。
まず上記3成分の水への溶解度を検討した。その結果を表3に示す。
【表3】
表3に示すように、40% アスコルビン酸2−グルコシド水溶液、10% トラネキサム酸水溶液、及び10% グリチルサリチル酸水溶液が、各成分が溶解する最も高い濃度の水溶液であるので、これらを用いて検討を行った。レシチン(Epikuron200)とそれぞれの水溶液を8:2で混合し、この混合物について、小角X線散乱を用いて、ラメラ相が存在するかを観察した。ラメラ相が形成されている場合、ピーク比が1:2となるラメラ相特有の散乱スペクトルが観察される。各混合物の小角X線散乱の測定結果を
図1〜3に示す。
図1〜3に示すように、すべての混合物においてピーク比が1:2となるラメラ相に特有の散乱スペクトルが得られた。つまり、いずれの水溶性有効成分もラメラ相の形成を阻害せず、ラメラ相中に含まれていることが確認できた。
本試験例のように形成したラメラ相を用いて逆ベシクルの形成を行えば、水溶性の有効成分を含む逆ベシクル組成物を得ることができる。
【0050】
(3)皮膚外用剤
以下に、本発明の皮膚外用剤(化粧料)の実施例を記載する。各成分の配合量は質量パーセントで示す。
実施例1.トリートメントオイル
(A)レシチン 0.4
(A)水 0.1
(B)スクワラン 69.4
(B)オリーブオイル 20
(B)ホホバオイル 10
(B)香料 0.1
【0051】
(A)群の成分を予め混合した後、(B)群の成分を混合し、超音波分散機で分散した。
その結果、逆ベシクルを含むトリートメントオイル(逆ベシクル溶液)を製造した。
【0052】
実施例2.クリーム
(A)ジメチコン 31.5
(A)シクロペンタシロキン 10
(A)(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 5
(A)ポリエーテル変性シリコーン 2
(A)セスキイソステアリン酸ソルビタン 1
(A)フェノキシエタノール 0.5
(B)水 30
(B)1,3―ブタンジオール 10
(C)逆ベシクル溶液 10
(C−1)レシチン 2
(C−2)スクワラン 98
【0053】
予め(C−1,2)を混合し、超音波分散機で分散することにより逆ベシクル溶液(C)を調製した。(A)群の成分を均一に混合し、これに(B)群の成分を混合し、ホモジナイザーで乳化物を形成した。その後、乳化物と予め作成した(C)を、手撹拌により混合した。
その結果、逆ベシクルを含むクリームを製造した。
【0054】
実施例3.日焼け止め化粧料
(A)シクロペンタシロキサン 26.7
(A)ポリエーテル変性シリコーン 3
(A)40%疎水化処理微粒子酸化チタンスラリー* 15
(A)40%疎水化処理微粒子亜鉛スラリー* 10
*分散媒:シクロペンタシロキサン
(B)水 30
(B)1,3−BG 5
(B)メチルパラベン 0.3
(C)逆ベシクル溶液 10
(C−1)レシチン 0.7
(C−2)水 0.3
(C−3)シクロペンタシロキサン 99
【0055】
予め(C−1〜3)を用いて実施例1と同じ方法で逆ベシクル溶液(C)を調製した。(A)群の成分を手攪拌で均一に混合、80℃に加熱した。そこに、(B)群の成分を80℃で加熱して撹拌したものを添加し、ホモジナイザーで乳化した。乳化物を冷却し、35℃に達したときに、乳化物と予め作成した(C)を、手撹拌により混合した。
その結果、逆ベシクルを含む日焼け止め化粧料を製造した。
【0056】
実施例4.乳化型ファンデーション
(A)シクロペンタシロキサン 24.2
(A)ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 10
(A)ポリエーテル変性シリコーン 4
(A)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 5
(A)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 0.5
(B)顔料色素(酸化チタン、酸化鉄) 10
(C)有機変性ベントナイト 1
(D)水 30
(D)グリセリン 10
(D)メチルパラベン 0.3
(E)逆ベシクル溶液 5
(E−1)レシチン 1.4
(E−2)水 0.6
(E−3)シクロペンタシロキサン 98
【0057】
予め(E−1〜3)を用いて実施例1と同じ方法で逆ベシクル溶液(E)を調製した。(A)群の成分を手攪拌で均一に混合、80℃に加熱した。(A)群の成分の混合物に(B)群の成分をディスパーで分散した後、さらに(C)分の成分をディスパーで分散する。ホモジナイザーを用いて、得られた油相と80℃で均一に混合した(D)群を混合し、乳化する。乳化物を冷却し、35℃に達したときに、乳化物と予め作成した(E)を手攪拌にて混合した。
その結果、逆ベシクルを含む乳化型ファンデーションを製造した。
【0058】
実施例5.パウダーファンデーション
(A)シリコーン処理顔料色素(酸化チタン、酸化鉄)15
(A)タルク 29.7
(A)マイカ 10
(A)フッ素処理セリサイト 10
(A)シリカ 10
(A)メタクリル酸メチルクロスポリマー 10
(A)雲母チタン 5
(A)メチルパラベン 0.3
(B)逆ベシクル溶液 10
(B−1)レシチン 3
(B−2)水 0.3
(B−3)ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.3
(B−4)ジメチコン 40
(B−5)ホホバオイル 56.4
【0059】
予め(B−1〜5)を用いて、実施例1と同じ方法で逆ベシクル溶液(B)を調製した。(A)群の成分を混合してパルベライザーで粗粉砕した後、(B)を添加しヘンシェルミキサーで混合した。その後、再びパルベライザーで粉砕し、金皿に打型した。
その結果、逆ベシクルを含むパウダーファンデーションを製造した。