特許第6334181号(P6334181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334181
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】溶解分離層を備えた薬剤付き支持体
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20180521BHJP
   A61M 35/00 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   A61F9/007 170
   A61M35/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-14461(P2014-14461)
(22)【出願日】2014年1月29日
(65)【公開番号】特開2014-166350(P2014-166350A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2017年1月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-14670(P2013-14670)
(32)【優先日】2013年1月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000177634
【氏名又は名称】参天製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591091043
【氏名又は名称】ツキオカフィルム製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】田坂 文孝
(72)【発明者】
【氏名】浅田 博之
(72)【発明者】
【氏名】月岡 忠夫
(72)【発明者】
【氏名】西村 美佐夫
(72)【発明者】
【氏名】北出 麻利江
【審査官】 宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−045379(JP,A)
【文献】 特表2004−534030(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01407732(EP,A1)
【文献】 特開昭57−185870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/00 − A61F 9/007
A61D 7/00
A61M 35/00
A61J 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤及び水溶性ポリマーを含む薬剤層と、
前記薬剤層の水溶性ポリマーよりも水溶性が高く設定された水溶性ポリマーを含む溶解分離層と、
持ち手となる支持体とを備え、
前記溶解分離層を介して前記薬剤層と前記支持体とが反対側に接続される、眼に薬剤を投与するための薬剤付き支持体。
【請求項2】
前記薬剤層の全部または一部と前記溶解分離層の一部とが重なっている請求項1に記載の薬剤付き支持体。
【請求項3】
前記溶解分離層の一部と前記支持体の一部とが重なっている請求項2に記載の薬剤付き支持体。
【請求項4】
前記溶解分離層と前記支持体とが熱圧着または接着されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の薬剤付き支持体。
【請求項5】
前記溶解分離層の水または生理食塩水に対する平均崩壊時間が60秒以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の薬剤付き支持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼への薬剤投与用の薬剤付き支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から眼科用剤として点眼剤が広く知られている。点眼剤の場合、点眼容器に収納された液体状の薬剤を滴下して投与することから、点眼容器の押圧力によって滴下量が異なり、意図していた滴下量を投与できないことがあった。
【0003】
一方、眼に薬剤を一定量投与する手段としては、眼科用の固形組成物を眼に挿入する方法が知られている。この種の固形組成物は、1つの固形組成物に1回の投与に必要な薬剤成分が含有されているので、一定量投与することが可能となるが、該固形組成物を直接手にとって投与するため、滅菌状態を維持することが困難であった。
【0004】
上述の課題を解決することを意図した眼科用剤として、特許文献1には、湿潤した生体表面に薬剤を投与するためのアプリケータが開示されている。つまり、このアプリケータにおいて、溶解性マトリックス中に薬剤成分を含有させたマトリックス層が、長細い帯形状を有した使い捨てのアプリケータの一端に設けられている。このマトリックス層の中途部に他の部分よりその厚さが薄い分離部が形成されている(特許文献1の図1参照)。このアプリケータでは、アプリケータの薬剤本体とは反対側の他端部を持って、薬剤本体を投与部位である生体表面に接触させることにより、他の部分より薄い分離部が溶解して薬剤本体がアプリケータから分離し、薬剤本体が投与されるので、薬剤を投与する際の滅菌状態を維持しつつ、一定量の薬剤を投与することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平4−11229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、元来それほど厚みのないマトリックス層において、他の部分より薄い分離部を形成することは、その加工が非常に困難であった。また、分離部を形成できたとしても、分離部の溶解度と他の部分の溶解度の差が充分ではなく、例えば、マトリックス層中の分離部よりも先端側で分離するなどして、必ずしも一定量の薬剤を投与することができなかった。
【0007】
本発明は上述した背景に鑑みてなされたものであり、眼に一定量の薬剤を確実に投与することができる薬剤付き支持体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る眼に薬剤を投与するための薬剤付き支持体は、
薬剤及び水溶性ポリマーを含む薬剤層と、
前記薬剤層の水溶性ポリマーよりも水溶性が高く設定された水溶性ポリマーを含む溶解分離層と、
持ち手となる支持体とを備え、
前記溶解分離層を介して前記薬剤層と前記支持体とが反対側に接続されている。
【0009】
本構成によれば、薬剤層および溶解分離層の形態は特に制限されないが、例えばフィルム状の形態を取ることが好ましく、また、支持体は薬剤付き支持体の持ち手となり、薬剤投与時のアプリケータとして利用することができる。したがって、本発明の薬剤付き支持体は、滅菌状態を維持したままで薬剤を投与することができる。
また、薬剤層と支持体との間に設けた溶解分離層の水溶性は、薬剤層の水溶性よりも高いことを特徴とする。このため、薬剤の投与時に、眼の表面で溶解分離層が薬剤層よりも先に溶解することによって、薬剤層が薬剤付き支持体から分離して眼の表面に投与される。この結果、一定量の薬剤(薬剤層)を確実に投与することができる。
上述のように、一定量の薬剤を確実に投与することができる薬剤付き支持体を提供することができる。
【0010】
上記構成において、前記薬剤層の全部または一部と前記溶解分離層の一部とが重なっていると好適である。
【0011】
薬剤層と溶解分離層との重なり(接触面積)を増加させることによって、薬剤層と溶解分離層との接続強度を増大させることができる。
【0012】
また、前記溶解分離層と前記支持体もそれらの一部が重なっていると好適である。
薬剤層と溶解分離層および溶解分離層と支持体を重ねて接続することにより、薬剤層、溶解分離層および支持体を一体物として、接続強度を増大させることができる。
【0013】
上記構成において、前記薬剤層と前記溶解分離層および前記溶解分離層と前記支持体は、熱圧着または接着することにより、確実に接続することが好ましい。
【0014】
上記構成において、前記溶解分離層の平均崩壊時間(崩壊時間は一定サイズのフィルム状のマトリックスが水または生理食塩水に溶解するのに必要な時間)は60秒以下、より好ましくは50秒以下である。これは、溶解分離層の平均崩壊時間が60秒を超えると薬剤付き支持体を用いて眼に薬剤を投与するのに時間がかかり過ぎるからである。
【0015】
本構成により、溶解分離層が眼表面で素早く溶解することから、一定量の薬剤を迅速に眼表面に投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る薬剤付き支持体の一例を示す側面図である。
図2】本発明に係る薬剤付き支持体の一例を示す上面図である。
図3】薬剤付き支持体の使用状況を示す図である。
図4】本発明の別実施形態に係る薬剤付き支持体を示す側面図である。
図5】本発明の別実施形態に係る薬剤付き支持体を示す側面図である。
図6】本発明の別実施形態に係る薬剤付き支持体を示す側面図である。
図7】本発明の別実施形態に係る薬剤付き支持体を示す側面図である。
図8】本発明の別実施形態に係る薬剤付き支持体を示す側面図である。
図9】本発明の別実施形態に係る薬剤付き支持体を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る薬剤付き支持体1の実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0018】
図1に示すように、この薬剤付き支持体1は、フィルム状の薬剤層2、フィルム状の溶解分離層4および持ち手となる支持体3から構成され、薬剤層2のサイズは特に制限されないが、例えば幅1〜4mm程度、長さ5〜10mm程度、厚さ1〜300μmであることが好ましく、溶解分離層4のサイズは特に制限されないが、例えば幅1〜4mm程度、長さ3〜10mm程度、厚さ1〜300μmであることが好ましく、また、支持体3のサイズは特に制限されないが、例えば幅1〜4mm程度、長さ10〜60mm程度、厚さは50μm〜2mmであることが好ましい。
【0019】
支持体3は、例えば長細い長方形状を有し、滅菌状態を維持するための持ち手となる。支持体3の材質は特に限定されないが、紙製、プラスチック製、アルミニウム箔製等、適宜適用可能である。また、これらの複数の層を積層して支持体3を形成してもよい。
【0020】
図1及び図2に示すように、溶解分離層4を介して薬剤層2と支持体3とが反対側に接続され、溶解分離層4は薬剤層2と支持体3との間に設けられる。より具体的には、薬剤層2及び溶解分離層4はそれぞれフィルム状のマトリックスであり、薬剤層2の下面の全部と溶解分離層4の上面の一部とを接着することによって接続し、また、溶解分離層4の下面の一部と支持体3の上面の一部とを熱圧着または接着することによって接続する。このように、薬剤層2と溶解分離層4および溶解分離層4と支持体3を重ねて接続し、夫々の接触面積を増加させることによって接続強度を増大させることができる。
なお、薬剤層2と溶解分離層4との接続方法および溶解分離層4と支持体3との接続方法は、熱圧着、接着以外の方法で接続しても差し支えない。
【0021】
薬剤層2は、水溶性ポリマーおよび薬剤を含有するマトリックスから構成され、該マトリックス中には必要に応じてポリソルベート80などの乳化剤やグリセリンなどの可塑剤を配合することができ、また、2種以上の水溶性ポリマーを混合したり、あるいは、2種以上の多層構造のマトリックスとすることもできる。
溶解分離層4は薬剤を含有しない水溶性ポリマーを含有するマトリックスから構成され、該マトリックス中には必要に応じて乳化剤や可塑剤を配合することができ、また、水溶性をより高めるためにマンニトール等の糖アルコールやオリゴマー、テロマーなどの分子量が大きくない水溶性高分子を添加したり、気泡を導入することもできる。必要に応じて、2種以上の水溶性ポリマーを混合することもできる。溶解分離層4を構成するマトリックスは、薬剤層2を構成するマトリックスよりも水溶性がより高くなるように設定する。このように、溶解分離層4の水溶性を、薬剤層2のそれよりも高くすることにより、投与時に涙液と接触すれば、溶解分離層4が薬剤層2よりも先に溶解する。また、薬剤層2よりも水溶性の高い溶解分離層4を設けることによって、投与時に薬剤層2の中途部から分離するなどの不具合の発生がなく、薬剤層2が薬剤付き支持体1から分離して眼表面に付着するため、一定量の薬剤を確実に投与することができる(図1〜3を参照)。
【0022】
水溶性を示す指標として、実施例において詳述する一定サイズ[2×7mm、膜厚約30μm]のフィルム状のマトリックスを用いた場合の水または生理食塩水に対する平均崩壊時間を適用することができる。例えば、薬剤層2を構成するマトリックスの平均崩壊時間は、特に制限されないが100分以下が好ましい。
【0023】
また、溶解分離層4を構成するフィルム状マトリックスの平均崩壊時間は、水または生理食塩水に対する溶解性が大きくなるほど溶解分離層4は眼表面の涙液によって溶解し易くなるので、特に制限されないが60秒以下、より好ましくは50秒以下である。これは、溶解分離層4の平均崩壊時間が60秒を超えると薬剤付き支持体1を用いて眼に薬剤を投与するのに時間がかかり過ぎるからである。すなわち、溶解分離層4の平均崩壊時間を60秒以下に設定することで、溶解分離層4が眼表面の涙液に素早く溶解し、一定量の薬剤を迅速に眼表面に投与することができる。
【0024】
薬剤層2を構成するフィルム状マトリックスの平均崩壊時間は、溶解分離層4を構成するフィルム状マトリックスの平均崩壊時間よりも大きく、その差は、特に限定はされないが1秒以上が好ましく、より好ましくは2秒以上である。つまり、平均崩壊時間の差を上記に設定することにより、投与時に眼の表面で溶解分離層4が薬剤層2よりも先に溶解し、薬剤付き支持体1から薬剤層2を分離して眼の表面に投与することができる。また、薬剤層2と溶解分離層4の一部とが積層して接続する場合には、薬剤層2の平均崩壊時間と溶解分離層4の平均崩壊時間との合計が溶解分離層4の平均崩壊時間よりも大きく、より好ましくは2秒以上大きくなるように設定することにより、眼の表面で溶解分離層4を薬剤層2と溶解分離層4の積層体よりも先に溶解させることができる。
【0025】
上記を踏まえ、薬剤層2を構成するマトリックスとしては、水溶性のマトリックスであれば特に限定されないが、例えばセルロース系水溶性ポリマー、アクリレート系ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ(エチレンオキシド)、多糖類等が挙げられ、具体的にはCMCダイセル1205(平均崩壊時間10秒、ダイセルファインケム社製)、PLASDONE K−90(平均崩壊時間11秒、ASHLAND社製)、HPC-L(平均崩壊時間27秒、日本曹達社製)、ゴーセノールEG-05(平均崩壊時間29秒、日本合成化学社製)、TC-5S(平均崩壊時間34秒、信越化学社製)、メトローズ60SH-50(平均崩壊時間43秒、信越化学社製)、メトローズSM15(平均崩壊時間138秒、信越化学社製)、メトローズSM100(平均崩壊時間162秒、信越化学社製)、セルニーM(平均崩壊時間287秒、日本曹達社製)、キミカアルギンIL-2(平均崩壊時間332秒、キミカ社製)、HECダイセルSE400(平均崩壊時間1800秒以上、ダイセルファインケム社製)などの水溶性ポリマーを含むものが好適に用いられる。
【0026】
また、溶解分離層4を構成するマトリックスとしては、例えばセルロース系水溶性ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等が挙げられ、具体的にはCMCダイセル1205(平均崩壊時間10秒、ダイセルファインケム社製)、PLASDONE K−90(平均崩壊時間11秒、ASHLAND社製)、HPC-L(平均崩壊時間27秒、日本曹達社製)、ゴーセノールEG-05(平均崩壊時間29秒、日本合成化学社製)、TC-5S(平均崩壊時間34秒、信越化学社製)、メトローズ60SH-50(平均崩壊時間43秒、信越化学社製)などの水溶性の高いポリマーを含むものが好適に用いられる。
【0027】
薬剤層2を構成するマトリックスと溶解分離層4を構成するマトリックスとの組み合わせは、特に限定されないが、薬剤層2を構成するマトリックスとしては、例えばHPC-L、メトローズSM15などの水溶性ポリマーを含み、また、溶解分離層4を構成するマトリックスとしては、例えばPLASDONE K−90、CMCダイセル1205などのより水溶性の高い水溶性ポリマーを含むのが好適である。
【0028】
次に、この薬剤付き支持体1の使用方法について説明する。薬剤層2を眼表面に投与する場合を例に挙げて説明するが、例えば、角膜、眼瞼結膜又は結膜襄等の前眼部に投与される。図3に示すように、使用者は、薬剤付き支持体1の薬剤層2が設けられた側の端部とは反対側の支持体3の端部近傍を指で摘み、薬剤層2を投与部位に近づける。本実施形態では、一方の手の指で下眼瞼を引き下げて結膜を露出させるとともに、他方の手の指で支持体3のうち薬剤層2が設けられた側とは反対側の端部近傍部位を摘んで、薬剤層2及び溶解分離層4を眼表面に近づけて露出した結膜に接触させる。この際、溶解分離層4の水溶性は、薬剤層2の水溶性よりも高いので、溶解分離層4が涙液で溶解する結果として薬剤層2は支持体3から速やかに分離して眼表面に付着する。このように、この薬剤付き支持体1では薬剤層2の中途部分で分離することがなく、一定量の薬剤(薬剤層2)を確実に投与することができる。
【0029】
[別実施形態]
本発明に係る薬剤付き支持体1の別実施形態を図4図9に示す。図4は、薬剤層2の下面の一部と溶解分離層4の上面の一部とが接続され、また、溶解分離層4の下面の一部と支持体3の上面の一部とが接続されている。図5は、薬剤層2の下面の全部と溶解分離層4の上面の一部とが接続され、また、溶解分離層4の上面の一部と支持体3の下面の一部とが接続されている。図6は、薬剤層2の下面の一部と溶解分離層4の上面の一部とが接続され、また、溶解分離層4の上面の一部と支持体3の下面の一部とが接続されている。図7は、薬剤層2の下面の全部と溶解分離層4の上面の一部とが接続され、また、溶解分離層4の上下面と支持体3の上下面とは重なり合うことなく接続されている。図8は、薬剤層2、溶解分離層4および支持体3の上下面はどれも重なり合うことなく接続されている。図9は、薬剤層2の下面の全部と溶解分離層4の上面の一部とが接続され、また、2つの支持体3が溶解分離層4を挟み込む形態である。図9においては支持体3と溶解分離層4は必ずしも熱圧着または接着することを要しない。
【0030】
[実験例]
(1)フィルム状マトリックスの平均崩壊時間の測定方法および測定結果
水溶性ポリマーとしてCMCダイセル1205[ポリマーA] 18.0%(w/w)、可塑剤としてグリセリン 1.62%(w/w)、乳化剤としてポリソルベート80 0.09%(w/w)となるように、水溶性ポリマー(CMCダイセル1205)、可塑剤(グリセリン)および乳化剤(ポリソルベート80)を溶媒(水)に溶解させて試料1を作製した。また、同様の操作を行って水溶性ポリマーとしてPLASDONE K−90[ポリマーB]、HPC−L[ポリマーC]、ゴーセノールEG−05[ポリマーD]、TC−5S[ポリマーE]、メトローズ60SH−50[ポリマーF]、メトローズSM15[ポリマーG]、メトローズSM100[ポリマーH]、セルニーM[ポリマーI]、キミカアルギンIL−2[ポリマーJ]およびHECダイセルSE400[ポリマーK]を溶媒(水、エタノール、水とエタノールの混合液)に溶解させ、また、必要に応じて可塑剤としてグリセリンを、また、乳化剤としてポリソルベート80を添加して表1に示すように試料2〜11を作製した。ついで、試料1〜11をポリプロピレンフィルムのベース材上にアプリケータを用いて厚さ約30μmとなるように塗布して温風で乾燥させた。つぎに、得られた各フィルム状マトリックスを2×7mmの大きさに細切し、室温下10mLの生理食塩水中に浸漬し、フィルム状マトリックスの崩壊時間[マトリックスが完全に溶解し、消失するまでの時間]を計測した。結果を表1に示す。なお、試料1〜11から得られた各フィルム状マトリックスの平均崩壊時間は、3回測定したときの崩壊時間の平均値である。
【表1】
【0031】
(2)薬剤付き支持体の作製
代用薬剤としてフルオレセインナトリウム10%(w/w)となるように、フルオレセインナトリウムを各試料[試料1、3、6、7、10、11]に添加して薬剤層用塗工液を作製した。この薬剤層用塗工液をポリプロピレンフィルムのベース材上にアプリケータを用いて厚さ約30μm、幅7mmとなるように塗布して温風で乾燥させた。つぎに、このベース材に塗布した薬剤層の上に溶解分離層用塗工液(試料1、2、6、10、11)をアプリケータを用いて厚さ約30μm、幅約50mmとなるように塗布し、薬剤層の上に溶解分離層を形成し、温風で乾燥させて各積層フィルムを得た。ベース材から各積層フィルムを分離し、積層フィルムと支持体(セパレート紙)を粘着剤で接続した後、得られた薬剤付き支持体を2×50mmの大きさに細切した。表2に実施例1〜4および比較例1〜2の各薬剤層や各溶解分離層を構成する水溶性ポリマーの種類とその平均崩壊時間を示す。
【0032】
(3)ウサギを用いた眼への投与試験
正常ウサギ(♂、日本白色種、北山ラベス)の右眼下眼瞼結膜中央に、上記(2)で作製した各薬剤付き支持体の溶解分離層側を10秒間押しつけた後、回収してウサギ結膜部に薬剤層の全量が投与できたかどうかを目視により判定した。ウサギ結膜部に薬剤層の全量が投与できた場合を「1」、また、薬剤層を全く投与できないか、一部しか投与できなかった場合は「0」として、本操作を3回繰り返した場合の合計点を算出した。表2に結果を示す。なお、実施例1〜2は、薬剤層2の下面の全部と溶解分離層4の上面の一部とが接続された図1の形態の薬剤付き支持体であり、また、実施例3〜4及び比較例1〜2は、薬剤層2の下面の一部と溶解分離層4の上面の一部とが接続された図4の形態の薬剤付き支持体である。
【表2】
実施例1〜4の薬剤付き支持体は、10秒以内に薬剤層が支持体から分離され、その全量をウサギ結膜部に投与できた。
したがって、本発明の薬剤付き支持体を用いれば、眼に一定量の薬剤を確実に投与できる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、眼への薬剤投与用の薬剤付き支持体に適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 薬剤付き支持体
2 薬剤層
3 支持体
4 溶解分離層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9