(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第二のプリズムは、前記分離部に含まれる入射側第二プリズムと、前記全反射部に含まれる出射側第二プリズムと、の二つの別体からなるプリズムから構成されており、
前記入射側第二プリズムの出射面と、前記出射側第二プリズムの入射面とは、エアギャップを介して配置されており、前記第一のプリズムの前記入射面と平行であることを特徴とする請求項1又は2記載の全反射型偏光子。
前記第一のプリズムの前記出射面,前記第二のプリズムの前記入射面,前記第三のプリズムの前記出射面及び前記第四のプリズムの前記入射面は、相互に平行であることを特徴とする請求項6記載の全反射型偏光子。
前記第三のプリズムは、前記全反射部に含まれる入射側第三プリズムと、前記平行化部に含まれる出射側第三プリズムと、の二つの別体からなるプリズムから構成されており、
前記入射側第三プリズムの出射面と、前記出射側第三プリズムの入射面とは、エアギャップを介して配置されており、前記第一のプリズムの前記入射面と平行であることを特徴とする請求項6記載の全反射型偏光子。
前記入射光線が、波長200nm以下の光であるときに、前記入射光線の入射角許容幅が、±1°以上であることを特徴とする請求項1乃至9いずれか記載の全反射型偏光子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のグランテーラプリズムでは、入射角許容幅は、プリズム材として方解石を用いた場合で、±4.3°、α−BBO(バリウムホウ酸塩)を用いた場合で、±3.3°、LB4(四ホウ酸リチウム,Li
2B
4O
7)を用いた場合で、±1.4°である。全反射型偏光子としての実用性のためには、±1°が必要であり、これらの一般的な材料を用いた場合には、何とか、実用的な入射角許容幅が得られている。
一方、近年、露光装置や偏光評価装置は、製作や評価の精度を高めるため、波長10〜200nmのVUV(真空紫外)領域の光の使用が要求されるなど、短波長化の傾向にある。
【0008】
しかし、特許文献1のような従来のグランテーラプリズムに例えば波長160nm以下の光を入射させた場合、得られる入射角許容幅は、±1°未満であり、実用的な入射角許容幅が得られない。
全反射型偏光子としては、そのほかにも、ブリュースター型グランテーラプリズムや、グラントムソンプリズム,DUV用のグラントムソンプリズムがある。
ブリュースター型グランテーラプリズムは、第一プリズムの入射面をブリュースター角にしているため、入射光線が第一プリズムに大きく斜めに入射されて二つの光線に分離されて第一プリズムを進み、光線が分離して第二プリズムとの間のエアギャップ層に入射される。従って、ブリュースター型グランテーラプリズムの入射角許容幅は、グランテーラプリズムより大きくなる。
しかし、分離角を、ブリュースター角で入射させるという制約から、材料の屈折率に応じた素子構造になる。また分離角は、材料の持つ複屈折量によりある決まった値となる。
VUV領域の光を透過するMgF
2などの一軸性結晶は、複屈折量が小さいため、ブリュースター型グランテーラプリズムにおいても、入射角許容幅は、±1°未満であり、実用的な入射角許容幅が得られない。
【0009】
更に、ブリュースター型偏光子は、構造上光線が並進ずれを起こすため、素子を回転して使用する場合は、検出光が回転し安定的な検出が困難になる。集光光線が入射される場合、構造上、消光比の劣化が発生し易い。
【0010】
また、グラントムソンプリズム,DUV用のグラントムソンプリズムは、VUVを透過する実用的な材料が無いため、使用する事ができない。
以上のように、全反射型偏光子において、VUV領域で実用的に使用できるものは知られていない。
VUV領域で実用的な偏光子としては、ローションプリズム,ウォーラストンプリズムのような偏光分離型偏光子があるが、偏光分離型偏光子は、分離した2つの偏光成分が共に透過する。従って、一方の偏光を全反射により除去し、もう一方の偏光のみ透過させる全反射型偏光子の代替として用いる場合、不要な偏光の処理を行うためには、光学系を長くする必要があるという課題があり、偏光子が適用される光学機器全体が大型化する。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、入射角許容幅が改善された全反射型偏光子を提供することにある。
本発明の他の目的は、波長200nm以下のVUV領域においても実用的な入射角許容幅を有し、VUV領域で用いることができる全反射型偏光子を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、並進ずれが無く、集光光線が入射された場合でも消光比劣化が小さい全反射型偏光子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題は、請求項1の全反射型偏光子によれば、入射光線の光軸に沿って複数のプリズムが配置され、入射光線の二つの偏光成分の一方
のみを全反射により除去する全反射型偏光子であって、入射側の第一のプリズムと、該第一のプリズムの出射面に対向して入射面が配置された第二のプリズムと、該第二のプリズムの出射面に対向して入射面が配置された第三のプリズムとが、前記入射光線の光軸に沿って前記入射側から順次配列されており、前記第一のプリズムと、前記第二のプリズムのうち前記入射面を含む少なくとも一部と、からなり、前記第一のプリズムの前記出射面において、前記入射光線を複数の前記偏光成分に分離する分離部と、前記第二のプリズムのうち前記分離部よりも入射方向下流側の部分と、前記第三のプリズムのうち入射面を含む少なくとも一部と、からなり、前記第二のプリズムの前記出射面において、前記二つの偏光成分のうち一方
のみを、全反射により除去する全反射部と、を備え、前記第一のプリズムの光学軸は、前記入射光線の光軸と直交し、且つ前記第二のプリズムの光学軸と直交しており、前記第二のプリズムの光学軸は、前記入射光線の光軸と直交し、且つ前記第三のプリズムの光学軸と平行であること、により解決される。
【0013】
このように、全反射型偏光子において、全反射部の入射側に分離部を備え、前記第一のプリズムの光学軸は、前記入射光線の光軸と直交し、且つ前記第二のプリズムの光学軸と直交しており、前記第二のプリズムの光学軸は、前記入射光線の光軸と直交し、且つ前記第三のプリズムの光学軸と平行であるため、入射光線の複数の偏光成分を分離させてから、一部の偏光成分
のみを全反射により除去することができ、分離角に応じて、入射光線の入射角許容幅を拡張できる。
入射角許容幅が大きくなることで、グランテーラプリズムやグラントムソンプリズムに代表される従来の全反射型偏光子において、実用的な入射角許容幅が得られないために使用されてこなかった、複屈折量が小さい材料を用いて、実用的な入射角許容幅を備えた全反射型偏光子を実現可能となる。
材料の選択幅が広がる事で、波長200nm以下のVUV領域や中赤外領域など、従来、全反射型偏光子の実現が困難であった波長帯域において、全反射型偏光子を実現することが可能となる。
【0014】
このとき、前記第二のプリズムの前記出射面と、前記第三のプリズムの前記入射面との間には、エアギャップが形成されていてもよい。
このように構成すると、全反射部で除去されずに透過した偏光成分の並進ずれをなくすように調整することができ、並進ずれのない全反射型偏光子を実現可能となる。
また、通常の接着剤は、VUV領域や中赤外領域の光を透過しないが、このように、第二のプリズムの出射面と、第三のプリズムの入射面との間が、エアギャップとなっていると、VUV領域や中赤外領域において利用可能な全反射型偏光子とすることができる。
【0015】
このとき、前記第三のプリズムのうち前記入射面を含む少なくとも一部は、前記第三のプリズムの全体であって、前記第三のプリズムの出射面は、前記第一のプリズムの前記入射面と平行であってもよい。
このように構成すると、全反射型偏光子の口径長さ比を小さくすることが可能となると共に、全反射型偏光子全体の大きさを小さくすることができ、安価に製作できる。
【0016】
このとき、前記第三のプリズムのうち前記入射面を含む少なくとも一部は、前記第三のプリズムの全体であって、前記第三のプリズムの出射面は、前記第一のプリズムの前記入射面に対して、前記第三のプリズムの前記入射面が傾斜する方向と同じ方向に傾斜していてもよい。
このように、前記第三のプリズムの出射面は、前記第一のプリズムの前記入射面に対して、前記第三のプリズムの前記入射面が傾斜する方向と同じ方向に傾斜しているため、全反射偏光子からの出射光線の偏角が生じることを抑制できる。
偏光子の口径長さ比を小さくすることが可能となると共に、偏光子全体の大きさを小さくすることができ、安価に製作できる。
【0017】
このとき、前記第二のプリズムは、前記分離部に含まれる入射側第二プリズムと、前記全反射部に含まれる出射側第二プリズムと、の二つの別体からなるプリズムから構成されており、前記入射側第二プリズムの出射面と、前記出射側第二プリズムの入射面とは、エアギャップを介して配置されており、前記第一のプリズムの前記入射面と平行であってもよい。
このように構成すると、個々のプリズムの素材が小さくてもよく、小さい素材を用いて全反射型偏光子を製作できる。
【0018】
このとき、前記第三のプリズムのうち前記入射面を含む少なくとも一部は、前記第三のプリズムの一部分であって、前記第三のプリズムの出射面に対向して入射面が配置された第四のプリズムを更に備え、前記第三のプリズムのうち前記全反射部よりも前記入射方向下流側の部分と、前記第四のプリズムと、からなり、前記二つの偏光成分のうち他方により構成される出射光線を、前記入射光線に対して平行にする平行化部を、備え
、前記第三のプリズムの光学軸は、前記入射光線の光軸と直交し、且つ前記第四のプリズムの光学軸と直交していてもよい。
このように、平行化部を備えているため、出射光線を入射光線に対して平行にして、入射光線と出射光線の偏角ずれを波長によらず防止することができる。偏角ずれが防止されるため、全反射型偏光子を回転して使用する際にも、光線が回ることなく、安定的な光の検出が容易になる。更に、光入射側と光出射側が反対になっても機能できる双方向性を有する全反射型偏光子を実現可能となる。
【0019】
このとき、前記第一のプリズムの前記出射面,前記第二のプリズムの前記入射面,前記第三のプリズムの前記出射面及び前記第四のプリズムの前記入射面は、相互に平行であってもよい。
このように構成すると、入射光線と出射光線とを、平行にすることが可能となる。
また、前記第三のプリズムは、前記全反射部に含まれる入射側第三プリズムと、前記平行化部に含まれる出射側第三プリズムと、の二つのプリズムから構成されており、前記入射側第三プリズムの出射面と、前記出射側第三プリズムの入射面とは、エアギャップを介して配置されており、前記第一のプリズムの前記入射面と平行であってもよい。
このように構成すると、個々のプリズムの素材が小さくてもよく、小さい素材を用いて全反射型偏光子を製作できる。
【0020】
このとき、前記第一のプリズムと前記第四のプリズムは、同一形状の断面直角三角形の三角柱からなり、前記第二のプリズムと前記第三のプリズムは、同一形状の三角柱からなり、前記全反射型偏光子が、直方体であってもよい。
このように構成すると、入射角許容幅及び使用可能な波長帯域が拡張され、並進ずれのない全反射型偏光子を実現可能となる。また、前記第一のプリズムと前記第四のプリズムは、同一形状の断面直角三角形の三角柱からなり、前記第二のプリズムと前記第三のプリズムは、同一形状の三角柱からなるため、全反射型偏光子を構成する部品の種類が限定され、全反射型偏光子の取り扱いが簡易になる。
【0021】
このとき、前記入射光線が、波長200nm以下の光であるときに、前記入射光線の入射角許容幅が、±1°以上であってもよい。
このように構成すると、グランテーラプリズム等の従来の偏光子では、入射角許容幅が狭いために全反射型偏光子の材料として使用できなかった材料が使用可能となり、その結果、使用できる波長帯域の拡張が可能となる。
【0022】
このとき、前記プリズムが、MgF
2又はLB4(Li
2B
4O
7)からなる一軸性結晶材料から形成されていていてもよい。
このように構成すると、従来は入射角許容幅が狭いために全反射型偏光子の材料として使用できなかったMgF
2又はLB4(Li
2B
4O
7)からなる一軸性結晶材料を、全反射型偏光子の材料として用いることが可能となり、これらの材料が透過するVUV領域や中赤外領域など、従来は実現できなかった波長帯域で使用可能な全反射型偏光子を実現できる。
このとき、前記プリズムが、LB4(Li2B4O7)からなる一軸性結晶材料から形成され、前記入射光線が、波長193nmの光であるときに、前記入射光線の入射角許容幅が、±3.9°であり、前記第一のプリズム及び前記第四のプリズムの楔角が30°であり、前記第二のプリズム及び前記第三のプリズムの楔角が65.6°であるとよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、全反射型偏光子において、全反射部の入射側に分離部を備えているため、入射光線の複数の偏光成分を分離させてから、一部の偏光成分を全反射により除去することができ、分離角に応じて、入射光線の入射角許容幅を拡張できる。
入射角許容幅が大きくなることで、グランテーラプリズムやグラントムソンプリズムに代表される従来の全反射型偏光子において、実用的な入射角許容幅が得られないために使用されてこなかった、複屈折量が小さい材料を用いて、実用的な入射角許容幅を備えた全反射型偏光子を実現可能となる。
材料の選択幅が広がる事で、波長200nm以下のVUV領域や中赤外領域など、従来、全反射型偏光子の実現が困難であった波長帯域において、全反射型偏光子を実現することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係る全反射型偏光子について、
図1〜
図26を参照しながら説明する。
本明細書では、コンタクトとは、一対の隣接するプリズムが相互に接触して配置されていることをいい、直接接合されているオプチカルコンタクトのほか、接着による接合も含まれる。
また、本明細書において、プリズムが「対向」するとは、エアギャップを介して対向する場合と、直接接合されているオプチカルコンタクトの場合と、接着剤など、何かを介在させて接合されている接着の場合とを含む。
【0026】
(実施の形態1 全反射型偏光子P1:Wc−G−Wc一体型)
本実施形態に係る全反射型偏光子P1は、半導体基板の回路パターン製作を行う露光装置や評価を行う評価装置に好適に用いられる。
本実施形態の全反射型偏光子P1は、
図1に示すように、入射光の光軸Xに沿って、第一のプリズム10と、第二のプリズム20と、第三のプリズム30と、第四のプリズム40と、が、順に配列されて構成されている。第一のプリズム10と第二のプリズム20とは、コンタクトC1において接合され、第二のプリズム20と第三のプリズム30とは、エアギャップ層G2を介して対向するように構成され、第三のプリズム30と第四のプリズム40とは、コンタクトC2において接合されている。
【0027】
エアギャップ層G2の幅を調節することで、入射光と出射光の並進位置を一致させることができる。エアギャップ層G2を適切な間隔にすることで、入射光が分離した分離光a,bのうち全反射型偏光子P1を透過し出射光として出射される分離光aの並進ずれを防止でき、並進ずれのない全反射型偏光子P1を製作可能となる。
【0028】
図1に示すように、第一のプリズム10及び第四のプリズム40とは、断面直角三角形の三角柱状の同一形状からなり、第二のプリズム20と第三のプリズム30とは、三角柱状の同一形状からなる。
また、第一のプリズム10の出射面12,第二のプリズム20の入射面21,第三のプリズム30の出射面32及び第四のプリズム40の入射面41は、相互に平行に配置されている。このため、全反射型偏光子P1の入射光と出射光とを、平行にすることができる。
第一のプリズム10の出射面12の出射側端部を通り、入射光の光軸Xに垂直でかつ第一のプリズム10の入射面11に平行な仮想平面を面Paとしたとき、全反射型偏光子P1のうち、第一のプリズム10の入射面11と面Paとに囲まれた領域は、第一のプリズム10と、第二のプリズム20の入射側部分20fとを備えており、一対のプリズムがコンタクトにより接合されたウォーラストンプリズムの構造を備えた分離部としてのウォーラストン(コンタクト)部Wc1となっている。
【0029】
第四のプリズム40の入射面41の入射側端部を通り入射光の光軸Xに垂直でかつ第一のプリズム10の入射面11に平行な仮想平面を面Pbとしたとき、全反射型偏光子P1のうち、面Paと面Pbとに囲まれた領域は、第二のプリズム20の出射側部分20bと第三のプリズム30の入射側部分30fとを備えており、一対のプリズムがエアギャップにより構成されたグランテーラプリズムの構造を備えた全反射部としてのグランテーラ部GTとなっている。
また、全反射型偏光子P1のうち、面Pbと第四のプリズム40の出射面42とに囲まれた領域は、第三のプリズム30の出射側部分30bと第四のプリズム40とを備えており、一対のプリズムがコンタクトにより接合されたウォーラストンプリズムの構造を備えた平行化部としてのウォーラストン(コンタクト)部Wc2となっている。
【0030】
本実施形態の第一のプリズム10,第二のプリズム20,第三のプリズム30,第四のプリズム40は、MgF
2(フッ化マグネシウム)の一軸性結晶からなるが、これに限定されるものではなく、YLF(イットリウムリチウムフルオライド;LiYF
4),水晶,LB4(四ホウ酸リチウム;Li
2B
4O
7),α−BBO(バリウムホウ酸塩),方解石等の一軸性結晶から構成してもよい。
また、本実施形態では、第一のプリズム10,第二のプリズム20,第三のプリズム30,第四のプリズム40を、同じ材料から構成しているが、第一のプリズム10と第四のプリズム40とを同じ材料から構成し、第二のプリズム20と第三のプリズム30とを、同じ材料から構成し、第一のプリズム10と第四のプリズム40の組合せと、第二のプリズム20と第三のプリズム30の組合せとを、異なる材料としてもよい。
【0031】
第一のプリズム10,第二のプリズム20,第三のプリズム30,第四のプリズム40のそれぞれの光学軸A1,A2,A3,A4は、一軸性材料の持つ二つの屈折率の関係に応じ、ウォーラストン(コンタクト)部Wc1において所望の光線分離角が得られるように、入射光線の光軸Xに対して垂直な方向(矢印方向)又はこの矢印方向に対して垂直な方向(二重丸)とする。
【0032】
本実施形態の全反射型偏光子P1に、第一のプリズム10の入射面11から光が入射すると、入射光線は、ウォーラストン(コンタクト)部Wc1で分離光a,bに分離し、第一のプリズム10から、常光と異常光である二つの分離光a,bが出射する。
一方の分離光bは、グランテーラ部GTにおいて、エアギャップ層G2で全反射して、全反射型偏光子P1から除去され、もう一方の分離光aは、エアギャップ層G2を透過して、第三のプリズム30,第四のプリズム40を通過して、第四のプリズム40の出射面42から出射される。
このとき、出射側のウォーラストン(コンタクト)部Wc2は、分離光aを入射光に対して平行にさせる役割を持つ。
【0033】
図2,
図3に基づき、本実施形態の全反射型偏光子P1により入射角許容幅が拡幅される機構について説明する。
図2は、
図1の第二のプリズム20を透過する分離光a,bの拡大図である。
ウォーラストン(コンタクト)部Wc1における分離光a,bの分離角θt,θrは、第一のプリズム10の入射面11に垂直に入射する光線の出射面12への入射角α0に依存する。従って、分離角θt,θrは、楔角度α1を大きくすることで、大きくなる。そして、分離角θt,θrに応じて入射角許容幅も大きくなる。
【0034】
本実施形態では、第一のプリズム10と第二のプリズム20とが、コンタクトC1で接合されているため、第一のプリズム10と第二のプリズム20との間にエアギャップ層が形成されている場合よりも、入射角許容幅の最大値が大きくなる。
エアギャップ層は、プリズム材料に比べて屈折率の小さい空気からなるため、コンタクトや接着の場合に比べて臨界角が小さくなる。そのため、入射角α0は臨界角で制限されて、コンタクトや接着に比べて最大光線分離角が小さくなり、これに依存して入射角許容幅の最大値も小さくなるためである。
【0035】
図2に示すように、入射光線は、各分離光a,b毎に、分離角θt,θrだけ分離する。透過する分離光aと全反射する分離光bとは、異なる角度の入射角θT´=θG−θt,θR´=θG+θrでエアギャップ層G2に入射される。
分離光a,bのエアギャップ層G2への入射角θT´,θR´は、
図27に示す従来のグランテーラプリズムにおけるエアギャップ層Gへの入射角θGに、それぞれ、分離角θt,θrを足した値となっている。
【0036】
分離光a,bのエアギャップ層G2への入射角θT´,θR´は、式5の関係になるように設定される。
θT´<θR’・・・・・式5
θT´:透過する分離光aの入射角
θR´:全反射する分離光bの入射角
すると、
図3に示すように、分離光a,bの入射角θT´,θR´に対する臨界角の幅が、それぞれ、
図27に示す従来のグランテーラプリズムの場合よりも、第二のプリズム20に入射するときに分離した分離角θt,θr分だけ、大きくなる。
【0037】
図3は、縦軸が角度を示し、図の中央の実線が、
図27に示す従来のグランテーラプリズムのエアギャップ層Gへの入射角θGを示している。
図27に示す従来のグランテーラプリズムでは、入射角θGの入射角許容幅は、従来のグランテーラプリズムの一対の臨界角θcT,θcRより、θcT−θcRとなる。
それに対し、
図2に基づき説明した通り、本実施形態の全反射型偏光子P1では、分離角θt,θrにより、一対の臨界角間の幅が大きくなる効果が得られる。
【0038】
そこで、従来のグランテーラプリズムの一対の臨界角θcT,θcRに、それぞれの分離角θt,θrによる拡幅分を足したものを、視野角θcT´,θcR´と定義すると、一対の視野角は、それぞれ、
θcT´=θcT+θt
θcR´=θcR−θr
となり、本実施形態の全反射型偏光子P1の入射角許容幅は、
θcT´−θcR´=θcT+θt−(θcR−θr)
となって、
図27に示す従来のグランテーラプリズムの入射角許容幅よりも、θt+θr大きくなる。
このように、本実施形態の全反射型偏光子P1では、
図27に示す従来のグランテーラプリズムに比べて、入射角許容幅を大きくすることができる。入射角許容幅が大きくなった結果、使用波長範囲も、広くすることができる。
【0039】
図4は、本実施形態の全反射型偏光子P1の使用可能な波長範囲を、従来のグランテーラプリズムの使用可能な波長範囲と比較した説明図である。
一般的に、光学材料の屈折率は、波長に依存する。また二つの異なる臨界角θcT,θcRを持つプリズムにおいて、臨界角θcT,θcRは、上述の式1〜式4のように、屈折率の値により異なる。
【0040】
従って、2つの異なる臨界角θcT,θcRも、波長に依存する。2つの異なる臨界角θcT,θcRが、波長に依存するため、偏光子には、ある一定角度で光を入射した場合、偏光子として機能できる波長範囲が存在する。
本実施形態の全反射型偏光子P1では、
図3に示すように、二つの臨界角の間の幅が、従来のグランテーラプリズムよりも拡幅されるため、結果として、
図4のように、縦軸に角度、横軸に波長を取ったグラフにおいて、偏光子として機能できる波長範囲も、従来のグランテーラプリズムよりも、拡幅されることとなる。
また、空気層と結晶の境界面の面数が4面と少なく、透過性も高い。
更に、光出射側にウォーラストン(コンタクト)部Wc2を備えているため、入射光と出射光の偏角ずれと並進ずれも波長によらず防止され、光入射側と光出射側が反対になっても機能できる双方向性を有する。並進ずれと偏角ずれがないため、全反射型偏光子P1を回転して使用する際にも、光線が回ることなく、安定的な光の検出が容易になる。
【0041】
(実施の形態2 全反射型偏光子P2:Wa−G−Wa一体型)
本発明の他の実施形態に係る全反射型偏光子P2を、
図5に示す。
図5の全反射型偏光子P2は、各プリズムの間に、エアギャップ層G1,G2,G3が設けられている。全反射型偏光子P2は、第一のプリズム10と第二のプリズム20,及び第三のプリズム30と第四のプリズム40とが、エアギャップ層G1,G3を介して対向している点で、全反射型偏光子P1と異なっていることを除いては、全反射型偏光子P1と同様の構成からなる。
第一のプリズム10の入射面11と面Paとに囲まれた領域は、一対のプリズムがエアギャップ層を介して配置されたウォーラストンプリズムの構造を備えたウォーラストン(エアギャップ)部Wa1となっている。
【0042】
また、面Paと面Pbとに囲まれた領域は、全反射型偏光子P1と同様に、グランテーラプリズムの構造を備えたグランテーラ部GTとなっている。
面Pbと第四のプリズム40の出射面42とに囲まれた領域は、第三のプリズム30の出射側部分と第四のプリズム40とを備えており、一対のプリズムがエアギャップを介して配置されたウォーラストンプリズムの構造を備えたウォーラストン(エアギャップ)部Wa2となっている。
本実施形態の全反射型偏光子P2は、プリズム間に、コンタクトによる接合部を有しないため、高強度な光線に対する耐性が高められ、光に対する高耐力化が図られる。
また、光出射側に、ウォーラストン(エアギャップ)部Wa2を備えているため、入射光と出射光の並進ずれと偏角ずれも防止され、光入射側と光出射側が反対になっても機能できる双方向性を有する。並進ずれと偏角ずれがないため、全反射型偏光子P2を回転して使用する際にも、光線が回ることなく、安定的な光の検出が容易になる。
【0043】
(実施の形態3 全反射型偏光子P3:Wc−G一体型)
本発明の更に他の実施形態に係る全反射型偏光子P3を、
図6に示す。
本実施形態の全反射型偏光子P3は、実施の形態1の全反射型偏光子P1の光出射側のウォーラストン(コンタクト)部Wc2を備えないことを除いては、
図1の全反射型偏光子P1と同様の構成からなる。
つまり、
図1の第三のプリズム30,第四のプリズム40の代わりに、第三のプリズム30の面Pbよりも入射側の部分に対応する第三のプリズム30f´が配置されている。
このように、光出射側のウォーラストン(コンタクト)部Wc2を備えないことにより、偏光子の口径長さ比を小さくすることが可能となると共に、偏光子全体の大きさを小さくすることができ、安価に製作できる。
また、光入射側にウォーラストン(コンタクト)部Wc1を備えているため、実施の形態1の全反射型偏光子P1と同様、入射角許容幅の拡張性が高く、使用可能な波長帯域の拡張性も高い。
また、空気層と結晶の境界面の面数が4面と少なく、透過性も高い。
【0044】
(実施の形態4 全反射型偏光子P4:Wa−G一体型)
本発明の更に他の実施形態に係る全反射型偏光子P4を、
図7に示す。
本実施形態の全反射型偏光子P4は、各プリズムの間に、エアギャップ層G1,G2が設けられている点で、実施の形態3の全反射型偏光子P3と異なっていることを除いては、
図6の全反射型偏光子P3と同様の構成からなる。このように、プリズムの間にコンタクトを有していないため、光に対する高耐力化が図られる。
また、光出射側のウォーラストン(エアギャップ)部Wa2を備えていないことにより、偏光子の口径長さ比を小さくすることが可能となると共に、偏光子全体の大きさを小さくすることができ、安価に製作できる。
【0045】
(実施の形態5 全反射型偏光子P5:Wc−Go一体型)
本発明の更に他の実施形態に係る全反射型偏光子P5を、
図8に示す。
本実施形態の全反射型偏光子P5は、第三のプリズム30f´の出射面32oが、第一のプリズム10の入射面11に対して傾斜していることを除いては、
図6の全反射型偏光子P3と同様の構成からなる。
第三のプリズム30f´の出射面32oは、第一のプリズム10の入射面11に平行な面よりも、第三のプリズム30f´の入射面31が傾斜する側と同じ側に傾斜している。このため、全反射偏光子からの出射光線の偏角が生じることを抑制できる。
つまり、第三のプリズム30f´を構成する3つの長方形の側面のうち、入射光の光軸Xに平行な面を底面33としたとき、第三のプリズム30f´は、入射面31と出射面32oとの間の角度と、入射面31と底面33との間の角度が鋭角で、出射面32oと底面33との間の角度が鈍角に形成されている。
面Paと第三のプリズム30f´の出射面32oとに囲まれた領域は、一対のプリズムがエアギャップにより構成されたグランテーラプリズムの構造を備えたグランテーラ(出射面斜面タイプ)部Goとなっている。
【0046】
このように、光出射側のウォーラストン(コンタクト)部Wc2を備えないことにより、偏光子の口径長さ比を小さくすることが可能となると共に、偏光子全体の大きさを小さくすることができ、安価に製作できる。
また、光入射側にウォーラストン(コンタクト)部Wc1を備えているため、入射角許容幅の拡張性が高く、使用可能な波長帯域の拡張性も高い。
また、空気層と結晶の境界面の面数が4面と少なく、透過性も高い。
【0047】
(実施の形態6 全反射型偏光子P6:Wa−Go一体型)
本発明の更に他の実施形態に係る全反射型偏光子P6を、
図9に示す。
本実施形態の全反射型偏光子P6は、各プリズムの間に、エアギャップ層G1,G2が設けられている点で、実施の形態5の全反射型偏光子P5と異なっていることを除いては、
図8の全反射型偏光子P5と同様の構成からなる。このようにプリズムの間にコンタクトを有していないため、光に対する高耐力化が図られる。
また、全反射型偏光子P5と同様に、光出射側のウォーラストン(エアギャップ)部Wa2を備えないことにより、偏光子の口径長さ比を小さくすることが可能となると共に、偏光子全体の大きさを小さくすることができ、安価に製作できる。
実施の形態5と同様に、第三のプリズム30f´の出射面32oは、第一のプリズム10の入射面11に平行な面よりも、第三のプリズム30f´の入射面31が傾斜する側と同じ側に傾斜している。このため、全反射偏光子からの出射光線の偏角が生じることを抑制できる。
【0048】
(実施の形態7 全反射型偏光子P7:Wc−G−Wc分離型)
本発明の更に他の実施形態に係る全反射型偏光子P7を、
図10に示す。
図10の全反射型偏光子P7は、ウォーラストン(コンタクト)部Wc1とグランテーラ部GTとの間、及び、グランテーラ部GTとウォーラストン(コンタクト)部Wc2との間に、エアギャップ層G4,G5が設けられている点で、実施の形態1の全反射型偏光子P1と異なっていることを除いては、
図1の全反射型偏光子P1と同様の構成からなる。
つまり、本実施形態の全反射型偏光子P7は、全反射型偏光子P1における面Pa,Pbの位置で、全反射型偏光子P1の第二のプリズム20及び第三のプリズム30が、それぞれ、第二前方プリズム20Fと第二後方プリズム20Bとに、また、第三前方プリズム30Fと第三後方プリズム30Bとに分割され、分割位置に、エアギャップ層G4,G5が設けられている。
【0049】
このように、光入射側にウォーラストン(コンタクト)部Wc1を備えているため、入射角許容幅の拡張性が高く、使用可能な波長帯域の拡張性も高い。
更に、光出射側にウォーラストン(コンタクト)部Wc2を備えているため、入射光と出射光の偏角ずれと並進ずれも防止され、光入射側と光出射側が反対になっても機能できる双方向性を有する。偏角ずれと並進ずれがないため、全反射型偏光子P7を回転して使用する際にも、光線が回ることなく、安定的な光の検出が容易になる。
また、第二のプリズム20が第二前方プリズム20Fと第二後方プリズム20Bとに、また、第三のプリズム30が第三前方プリズム30Fと第三後方プリズム30Bとに分割されているため、個々のプリズムの素材が小さくてもよい。
【0050】
(実施の形態8 全反射型偏光子P8:Wa−G−Wa分離型)
本発明の更に他の実施形態に係る全反射型偏光子P8を、
図11に示す。
図11の全反射型偏光子P8は、ウォーラストン(エアギャップ)部Wa1とグランテーラ部GTとの間、及び、グランテーラ部GTとウォーラストン(エアギャップ)部Wa2との間に、エアギャップ層G4,G5が設けられている点で、実施の形態2の全反射型偏光子P2と異なっていることを除いては、
図5の全反射型偏光子P2と同様の構成からなる。
つまり、本実施形態の全反射型偏光子P8は、全反射型偏光子P2における面Pa,Pbの位置で、全反射型偏光子P2の第二のプリズム20及び第三のプリズム30が、それぞれ、第二前方プリズム20Fと第二後方プリズム20Bとに、また、第三前方プリズム30Fと第三後方プリズム30Bとに分割され、分割位置に、エアギャップ層G4,G5が設けられている。
【0051】
このように、プリズムの間にコンタクトを有していないため、光に対する高耐力化が図られる。
更に、光出射側にウォーラストン(エアギャップ)部Wa2を備えているため、入射光と出射光の偏角ずれと並進ずれも防止され、光入射側と光出射側が反対になっても機能できる双方向性を有する。偏角ずれと並進ずれがないため、全反射型偏光子P8を回転して使用する際にも、光線が回ることなく、安定的な光の検出が容易になる。
また、第二のプリズム20が第二前方プリズム20Fと第二後方プリズム20Bとに、また、第三のプリズム30が第三前方プリズム30Fと第三後方プリズム30Bとに分割されているため、個々のプリズムの素材が小さくてもよい。
【0052】
(実施の形態9 全反射型偏光子P9:Wc−G分離型)
本発明の更に他の実施形態に係る全反射型偏光子P9を、
図12に示す。
図12の全反射型偏光子P9は、ウォーラストン(コンタクト)部Wc1とグランテーラ部GTとの間に、エアギャップ層G4が設けられている点で、実施の形態3の全反射型偏光子P3と異なっていることを除いては、
図6の全反射型偏光子P3と同様の構成からなる。
つまり、本実施形態の全反射型偏光子P9は、全反射型偏光子P3における面Paの位置で、全反射型偏光子P3の第二のプリズム20が第二前方プリズム20Fと第二後方プリズム20Bとに分割され、分割位置に、エアギャップ層G4が設けられている。
【0053】
このように、光入射側にウォーラストン(コンタクト)部Wc1を備えているため、入射角許容幅の拡張性が高く、使用可能な波長帯域の拡張性も高い。
また、光出射側のウォーラストン(コンタクト)部Wc2を備えないことにより、偏光子の口径長さ比を小さくすることが可能となると共に、偏光子全体の大きさを小さくすることができ、安価に製作できる。
また、第二のプリズム20が第二前方プリズム20Fと第二後方プリズム20Bとに分割されているため、個々のプリズムの素材が小さくてもよい。
【0054】
(実施の形態10 全反射型偏光子P10:Wa−G分離型)
本発明の更に他の実施形態に係る全反射型偏光子P10を、
図13に示す。
図13の全反射型偏光子P10は、ウォーラストン(エアギャップ)部Wa1とグランテーラ部GTとの間に、エアギャップ層G4が設けられている点で、実施の形態4の全反射型偏光子P4と異なっていることを除いては、
図7の全反射型偏光子P4と同様の構成からなる。
つまり、本実施形態の全反射型偏光子P10は、全反射型偏光子P4における面Paの位置で、全反射型偏光子P4の第二のプリズム20が第二前方プリズム20Fと第二後方プリズム20Bとに分割され、分割位置に、エアギャップ層G4が設けられている。
【0055】
このように、各プリズムの間にコンタクトを有していないため、光に対する高耐力化が図られる。
また、光出射側のウォーラストン(エアギャップ)部Wa2を備えないことにより、偏光子の口径長さ比を小さくすることが可能となると共に、偏光子全体の大きさを小さくすることができ、安価に製作できる。
また、第二のプリズム20が第二前方プリズム20Fと第二後方プリズム20Bとに分割されているため、個々のプリズムの素材が小さくてもよい。
【0056】
(実施の形態11 全反射型偏光子P11:Wc−Go分離型)
本発明の更に他の実施形態に係る全反射型偏光子P11を、
図14に示す。
図14の全反射型偏光子P11は、ウォーラストン(コンタクト)部Wc1とグランテーラ(出射面斜面タイプ)部Goとの間に、エアギャップ層G4が設けられている点で、実施の形態5の全反射型偏光子P5と異なっていることを除いては、
図8の全反射型偏光子P5と同様の構成からなる。
つまり、本実施形態の全反射型偏光子P11は、全反射型偏光子P5における面Paの位置で、全反射型偏光子P5の第二のプリズム20が第二前方プリズム20Fと第二後方プリズム20Bとに分割され、分割位置に、エアギャップ層G4が設けられている。
【0057】
このように、光入射側にウォーラストン(コンタクト)部Wc1を備えているため、入射角許容幅の拡張性が高く、使用可能な波長帯域の拡張性も高い。
また、光出射側のウォーラストン(コンタクト)部Wc2を備えないことにより、偏光子の口径長さ比を小さくすることが可能となると共に、偏光子全体の大きさを小さくすることができ、安価に製作できる。
また、第二のプリズム20が第二前方プリズム20Fと第二後方プリズム20Bとに分割されているため、個々のプリズムの素材が小さくてもよい。
第三のプリズム30f´の出射面32oは、第一のプリズム10の入射面11に平行な面よりも、第三のプリズム30f´の入射面31が傾斜する側と同じ側に傾斜している。このため、全反射偏光子からの出射光線の偏角が生じることを抑制できる。
【0058】
(実施の形態12 全反射型偏光子P12:Wa−Go分離型)
本発明の更に他の実施形態に係る全反射型偏光子P12を、
図15に示す。
図15の全反射型偏光子P12は、ウォーラストン(エアギャップ)部Wa1とグランテーラ(出射面斜面タイプ)部Goとの間に、エアギャップ層G4が設けられている点で、実施の形態6の全反射型偏光子P6と異なっていることを除いては、
図9の全反射型偏光子P6と同様の構成からなる。
つまり、本実施形態の全反射型偏光子P12は、全反射型偏光子P6における面Paの位置で、全反射型偏光子P6の第二のプリズム20が第二前方プリズム20Fと第二後方プリズム20Bとに分割され、分割位置に、エアギャップ層G4が設けられている。
【0059】
このように、プリズムの間にコンタクトを有していないため、光に対する高耐力化が図られる。
また、光出射側のウォーラストン(コンタクト)部Wc2を備えないことにより、偏光子の口径長さ比を小さくすることが可能となると共に、偏光子全体の大きさを小さくすることができ、安価に製作できる。
また、第二のプリズム20が第二前方プリズム20Fと第二後方プリズム20Bとに分割されているため、個々のプリズムの素材が小さくてもよい。
第三のプリズム30f´の出射面32oは、第一のプリズム10の入射面11に平行な面よりも、第三のプリズム30f´の入射面31が傾斜する側と同じ側に傾斜している。このため、全反射偏光子からの出射光線の偏角が生じることを抑制できる。
【実施例】
【0060】
以下、具体的実施例又は実施例に基づき、本発明の全反射型偏光子について更に詳細に説明するが、本発明は、以下の具体的実施例に限定されるものではない。
<<実施例1及び2>>
本例では、MgF
2材からなり、実施の形態1の構成に係る実施例1及び2の全反射型偏光子(
図16,
図17)と、
図18に示す対比例1のグランテーラプリズムのそれぞれの性能について、シミュレーションを行い検討した。
実施例1及び2の全反射型偏光子は、MgF
2材からなる第一のプリズム10,第二のプリズム20,第三のプリズム30及び第四のプリズム40が配置され、第一のプリズム10と第二のプリズム20との間、第三のプリズム30と第四のプリズム40との間は、コンタクトにより構成され、第二のプリズム20と第三のプリズム30とは、エアギャップ層G2を介して配置されている。
【0061】
また、第一のプリズム10,第二のプリズム20,第三のプリズム30,第四のプリズム40のそれぞれの光学軸は、一軸性材料の持つ二つの屈折率の関係に応じ、ウォーラストン(コンタクト)部Wc1において所望の光線分離角が得られるように、入射光線の光軸Xに対して垂直な方向(矢印方向)又はこの矢印方向に対して垂直な方向(二重丸)とされている。
【0062】
エアギャップ層G2の幅は、実施例1の全反射型偏光子では0.5mm、実施例2の全反射型偏光子では0.13mmであり、実施例1と実施例2のその他の構成は、同じである。各プリズムの斜面の角度や各プリズムの寸法は、
図16,
図17に示すとおりである。
対比例1のグランテーラプリズムを構成する各プリズムの斜面の角度や各プリズムの寸法は、
図18に示すとおりである。
【0063】
実施例1,2及び対比例1の全反射型偏光子について、波長177nmにおける光の入射角許容幅と、使用可能な波長帯域を、シミュレーションにより算出した。
結果を、
図19に示す。
図19は、実施例1,2と対比例1の入射角許容幅及び使用可能な波長帯域を示すグラフである。
図19に示すように、実施例1及び2では、波長177nmにおける入射角許容幅は±1.6°であり、入射光が垂直(入射角0°)で入射される場合に使用可能な波長帯域は、154〜219nmであった。
また、実施例1の全反射型偏光子では、約1mmの並進ずれを生じるが、実施例2の全反射型偏光子では、並進ずれがなかった。
対比例1では、
図19に示すように、波長177nmにおける入射角許容幅は±0.4 °であり、入射光が垂直(入射角0°)で入射される場合に使用可能な波長帯域は、171〜184nmであった。
±0.4 °という入射角許容幅は、組み立て誤差を考えると、組みたてたときに、実用性の殆どない範囲であり、実用化が困難な範囲である。また、約1mmの並進ずれを生じていた。この並進ずれは、グランテーラプリズムの構造上必ず発生するものである。
【0064】
このように、対比例1のグランテーラプリズムと比較して、実施例1,2の全反射型偏光子では、入射角許容幅と波長帯域が大きくなることが分かった。実施例1,2では、入射角許容幅が大きくなることにより、使用可能な波長帯域も広くなる効果が得られていた。
また、対比例1のグランテーラプリズムと異なり、実施例1,2の全反射型偏光子では、エアギャップ層G2の幅を調整することにより、並進ずれをなくすことが可能であることが分かった。
【0065】
<<具体的実施例3〜8>>
具体的実施例3〜8では、実施の形態1の全反射型偏光子P1の構成において、プリズム高さtを10mmとし、各プリズムの材料,光学軸の方向,楔角β1,β4,頂角β2,β3の角度,各プリズム間の接合層(エアギャップ層,オプチカルコンタクト又は接着剤層)G1´,G2´,G3´の幅を変更させて、入射角許容幅,使用可能な波長帯域の検討を行った。
【0066】
光学軸の方向としては、第一のプリズム10の光学軸を
図20のA1s又はA1pのいずれかとし、第二のプリズム20の光学軸を
図20のA2s又はA2pのいずれかとし、第三のプリズム30の光学軸を
図20のA3s又はA3pのいずれかとし、第四のプリズム40の光学軸を
図20のA4s又はA4pのいずれかとした。
具体的実施例3〜8の全反射型偏光子の基本的構造を、
図20に示す。
具体的実施例3〜8では、
図20の全反射型偏光子の第一のプリズム10,第四のプリズム40の楔角β1,β4及び第二のプリズム20,第三のプリズム30の頂角β2,β3を変更させた。
【0067】
(具体的実施例3)
具体的実施例3の全反射型偏光子は、設計波長177nm、プリズム材料としてMgF
2を用いた。各プリズムの光学軸の方向,楔角,頂角の角度,接合層(エアギャップ層)G2´の幅は、表1の通りとし、波長177nmにおける光の入射角許容幅と、使用可能な波長帯域を、シミュレーションにより算出した。
【0068】
【表1】
【0069】
結果を、
図21の具体的実施例3の入射角許容幅と使用可能な波長範囲を示すグラフに示す。
図21では、実線と二点鎖線の間の角度が、偏光子として使用可能な幅を示している。
図21の結果より、具体的実施例3の全反射型偏光子は、入射角許容幅が、波長177nmにおいて、±1.6°であり、使用可能な波長範囲は、入射光が入射面に垂直に入射した場合において、154〜219nmであった。
また、全波長帯域において、偏角はなく、接合層(エアギャップ層)G2´の幅を0.13mmにした場合、波長177nmにおいて並進ずれもなかった。
波長200nm以下のVUV領域のうち、長い領域の光を透過する素材としては、水晶,Li
2B
4O
7が知られているが、177nm程度まで短い波長の光を透過する材料は、MgF
2などに限定されている。
【0070】
しかし、MgF
2は、グランテーラプリズム等の従来の偏光子では実用的な入射角許容幅を得ることができず、全反射型偏光子として使用することができなかった。
それに対し、具体的実施例3の全反射型偏光子によれば、入射側に、ウォーラストン(コンタクト)部Wc1を備えているため、入射角許容幅が拡張され、従来は実用的な入射角許容幅が得られないために全反射型偏光子として使用できなかったMgF
2などの材料を用いた全反射型偏光子を製作可能となった。
【0071】
(具体的実施例4)
具体的実施例4の全反射型偏光子は、設計波長193nm、プリズム材料としてLi
2B
4O
7を用いた。各プリズムの光学軸の方向,楔角,頂角の角度,接合層(エアギャップ層)G1´〜G3´の幅は、表2の通りとし、波長193nmにおける光の入射角許容幅と、使用可能な波長帯域を、シミュレーションにより算出した。
【0072】
【表2】
【0073】
結果を、
図22の具体的実施例4の入射角許容幅と使用可能な波長範囲を示すグラフに示す。
図22では、実線と二点鎖線の間の角度が、偏光子として使用可能な幅を示している。
図22の結果より、具体的実施例4の全反射型偏光子は、入射角許容幅が、波長193nmにおいて、±3.9°と大きく、実用性の高い全反射型偏光子を製作する事が可能であった。使用可能な波長範囲は、入射光が入射面に垂直に入射した場合において、175〜264nmであった。
また、全波長帯域において、偏角はなく、接合層(エアギャップ層)G2´の幅を0.33mmにした場合、波長193nmにおいて並進ずれもなかった。
具体的実施例4の構造は、接合部がなく、プリズム同士間が全てエアギャップ層になっているため、光耐力も高い。波長193nmで高強度な光を使用する露光装置などの産業用途において、要求される高い光耐性を満足していることが分かった。
なお、接合層G1´と接合層G3´をオプチカルコンタクトにしてβ1〜β4を大きくする事により、入射角許容幅と波長範囲を大きくする事も可能である。
【0074】
(具体的実施例5)
具体的実施例5の全反射型偏光子は、設計波長633nm、プリズム材料として水晶を用いた。各プリズムの光学軸の方向,楔角,頂角の角度,接合層(エアギャップ層)G2´の幅は、表3の通りとし、波長633nmにおける光の入射角許容幅と、使用可能な波長帯域を、シミュレーションにより算出した。
【0075】
【表3】
【0076】
結果を、
図23の具体的実施例5の入射角許容幅と使用可能な波長範囲を示すグラフに示す。
図23では、実線と二点鎖線の間の角度が、偏光子として使用可能な幅を示している。
図23の結果より、具体的実施例5の全反射型偏光子は、入射角許容幅が、波長633nmにおいて、±1.6°の実用可能な範囲であり、使用可能な波長範囲は、入射光が入射面に垂直に入射した場合において、295〜2360nmであった。
また、全波長帯域において、偏角はなく、接合層(エアギャップ層)G2´の幅を0.22mmにした場合、波長633nmにおいて並進ずれもなかった。
【0077】
具体的実施例5では、一般的に広く使用されている光学材料である水晶を使用した。水晶は、人口結晶であるため安定的かつ安価に入手が可能であるが、複屈折量が小さいために、従来は、実用的な入射角許容幅を持つ全反射型偏光子を実現できなかった。
具体的実施例5では、入射側に、ウォーラストン(コンタクト)部Wc1を備えているため、入射角許容幅が拡張され、水晶を用いた実用的に使用可能な全反射型偏光子を実現可能になった。その結果、可視〜近赤外用の安価な全反射型偏光子を製作することが可能になった。
【0078】
(具体的実施例6)
具体的実施例6の全反射型偏光子は、設計波長633nm、プリズム材料として水晶を用いた。水晶は、複屈折量が小さく、従来は、全反射型偏光子の材料として用いることができなかった材料である。
各プリズムの光学軸の方向,楔角,頂角の角度,接合層(接着剤層)G1´〜G3´の幅は、表4の通りとした。接合層(接着剤層)G1´〜G3´には、λ=633nmにおいて、屈折率nB=1.45の接着剤を用いた。波長633nmにおける光の入射角許容幅と、使用可能な波長帯域を、シミュレーションにより算出した。
【0079】
【表4】
【0080】
結果を、
図24の具体的実施例6の入射角許容幅と使用可能な波長範囲を示すグラフに示す。
図24では、実線と二点鎖線の間の角度が、偏光子として使用可能な幅を示している。
図24の結果より、具体的実施例6の全反射型偏光子は、入射角許容幅が、波長633nmにおいて、±1.6°の実用可能な範囲であり、使用可能な波長範囲は、入射光が入射面に垂直に入射した場合において、350〜2200nmであった。
また、全波長帯域において、偏角はなく、接合層(接着剤層)G2´の幅を0.22mmにした場合、波長633nmにおいて並進ずれもなかった。
プリズムの接合に用いられる通常の接着剤は、VUV領域や中赤外領域の光を透過しない。従って、接着剤を使用した場合は、可視から近赤外用の全反射型偏光子になる。
本例では、全反射型偏光子を、
図20に示す構成としているため、グランテーラ部GTの接合層G2´を、エアギャップ層としなくても、可視域から近赤外域用の全反射型偏光子とすることが可能になったものである。なお、G2´の厚みを、特定の範囲にすることにより、並進ずれが防止される。
更に、本例の全反射型偏光子を、水晶を用いて形成しているため、安価な全反射型偏光子を製作することが可能である。また、接合層G1´〜G3´を、接着層として構成しているため、オプチカルコンタクトやエアギャップ層として構成する場合よりも、全反射型偏光子を容易に製作可能である。
【0081】
(具体的実施例7)
具体的実施例7の全反射型偏光子は、設計波長3000nm、プリズム材料としてLiNbO
3を用いた。各プリズムの光学軸の方向,楔角,頂角の角度,接合層(エアギャップ層)G2´の幅は、表5の通りとし、波長3000nmにおける光の入射角許容幅と、使用可能な波長帯域を、シミュレーションにより算出した。
【0082】
【表5】
【0083】
結果を、
図25の具体的実施例7の入射角許容幅と使用可能な波長範囲を示すグラフに示す。
図25では、実線と二点鎖線の間の角度が、偏光子として使用可能な幅を示している。
図25の結果より、具体的実施例7の全反射型偏光子は、入射角許容幅が、波長3000nmにおいて、±6.1°であり、使用可能な波長範囲は、入射光が入射面に垂直に入射した場合において、400〜5000nmであった。
また、全波長帯域において、偏角はなく、接合層(エアギャップ層)G2´の幅を0.46mmにした場合、波長3000nmにおいて並進ずれもなかった。
【0084】
LiNbO
3は、中赤外領域を透過するものの複屈折量が小さいため、従来は、実用的な入射角許容幅を持つ全反射型偏光子を実現できなかった。
それに対し、具体的実施例7は、入射側に、ウォーラストン(コンタクト)部Wc1を備えているため、入射角許容幅が拡張され、LiNbO
3を用いた実用的に使用可能な全反射型偏光子を実現可能になった。その結果、従来製作が難しかった中赤外領域の全反射型偏光子を実現可能になった。
【0085】
(具体的実施例8)
具体的実施例8の全反射型偏光子は、設計波長5500nm、プリズム材料としてMgF
2を用いた。各プリズムの光学軸の方向,楔角,頂角の角度,接合層(エアギャップ層)G2´の幅は、表6の通りとした。
【0086】
【表6】
【0087】
結果を、
図26の具体的実施例8の入射角許容幅と使用可能な波長範囲を示すグラフに示す。
図26では、実線と二点鎖線の間の角度が、偏光子として使用可能な幅を示している。
図26の結果より、具体的実施例8の全反射型偏光子は、入射角許容幅が、波長5500nmにおいて、±1.25°であり、使用可能な波長範囲は、入射光が入射面に垂直に入射した場合において、3670〜6380nmであった。
また、全波長帯域において、偏角はなく、接合層(エアギャップ層)G2´の幅を0.14mmにした場合、波長5500nmにおいて並進ずれもなかった。
【0088】
波長5500nm帯域は、大気汚染物質の計測に使用されており、今後偏光を利用した高精度計測が期待される。しかし中赤外領域における全反射型偏光子は、従来、存在しなかった。
MgF
2は、中赤外領域を透過するものの、複屈折量が小さいため、実用的な入射角許容幅を持つMgF
2を材料とした全反射型偏光子は、実現できなかった。
それに対し、具体的実施例8は、入射側に、ウォーラストン(コンタクト)部Wc1を備えているため、入射角許容幅が拡張され、MgF
2を材料とした実用的な全反射型偏光子が実現可能となった。