(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の実施形態について図を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態の送信装置の構成の概要を示したものである。本実施形態の送信装置は、第1の信号出力手段1と、第1の出力制御手段2と、第1の監視手段3と、第2の信号出力手段4と、第2の出力制御手段5と、送信制御手段6を備えている。第1の信号出力手段1は、第1の光信号を出力する。第1の出力制御手段2は、第1の光信号の出力を制御する。第1の監視手段3は第1の光信号を監視する。第2の信号出力手段4は、第2の光信号を出力する。第2の出力制御手段5は、第1の光信号の監視結果を基に第2の出力制御手段5のクロック周波数を複数段階で制御し、第2の信号出力手段4をそれぞれの所定の動作状態となるように制御する。
【0016】
本実施形態の送信装置は、第1の監視手段3が第1の信号出力手段1が出力した第1の光信号の監視を行っている。また、本実施形態の送信措置では、第1の光信号の監視結果に基づいて、第2の出力制御手段5のクロック周波数を複数段階で制御し、第2の信号出力手段4の制御が行われている。また、第2の出力制御手段5のクロック周波数に応じて、第2の信号出力手段4は所定の動作状態で動作している。すなわち、本実施形態の送信装置では、第1の光信号の状態に応じて、第2の出力制御手段5のクロック周波数を制御し、第2の信号出力手段4を所定の動作状態で動作させることができる。よって、本実施形態の送信装置では、冗長化された構成において一方の光信号の状態に応じてもう一方の光信号の出力および出力制御を最適化して行うことができるので消費電力の削減が可能になる。また、クロック周波数で制御しているので、動作状態の移行を素早く管理することができる。その結果、本実施形態の送信装置では、現用系と予備系とに冗長化された構成において、消費電力を抑制しつつ、起動状態への移行時間を抑制することが可能となる。
【0017】
本発明の第2の実施形態について図を参照して詳細に説明する。
図2は本実施形態の光通信システムの構成の概要を示したものである。本実施形態の光通信システムは、送信装置10と、受信装置40を備えている。送信装置10および受信装置40は、第1の伝送路71および第2の伝送路72を介して接続されている。また、送信装置10および受信装置40は、通信回線73を介して接続されている。
【0018】
送信装置10は、第1の伝送路71を介して、第1の光信号S71を受信装置40に送信する。また、送信装置10は、第2の伝送路72を介して、受信装置40に第2の光信号S72を送信する。本実施形態の光通信システムでは、第1の伝送路71および第2の伝送路72によって、伝送路が冗長化されている。また、送信装置10の光信号の送信部および受信装置50の光信号の受信部も、伝送路に合わせて冗長化されている。
【0019】
送信装置10の構成について説明する。
図3は、送信装置10の構成の概要について示したものである。送信装置10は、信号受信部11と、経路切替部12と、制御部13と、第1の送信部20と、第2の送信部30を備えている。
【0020】
信号受信部11は、送信装置10に入力された信号を送信装置10の内部で用いる信号形式に変換して出力する機能を有する。信号受信部10は、通信ネットワークや情報処理装置などから入力されたデータ伝送用の信号を、内部で用いる信号形式に変換して、経路切替部12に内部信号S11として出力する。
【0021】
経路切替部12は、スイッチ素子を備え、入力された内部信号S11を第1の送信部20または第2の送信部30のいずれかに出力する機能を有する。経路切替部12は、制御部13から送られてくる切替制御信号S12に基づいて、スイッチ素子を動作させて、信号の出力経路の切り替えを行う。切替制御信号S12には、第1の送信部20側または第2の送信部30側のいずれの出力経路にスイッチ素子を切り替えるかの情報が含まれている。
【0022】
制御部13は、送信装置10の制御全般を行う機能を有する。制御部13は、第1の送信部20および第2の送信部30の稼働状態を制御する。動作状態とは、現用系として用いられているときの主信号の送信を行う通常の動作状態と、予備系として用いられているときの各動作を抑制した待機状態のことをいう。制御部13は、第1の送信部20および第2の送信部30に、送信部制御信号S21または送信部制御信号S31をそれぞれ送って動作状態の制御を行う。
【0023】
また、制御部13は受信装置40から送られてくる送信装置制御信号S40に基づいて、第1の送信部20および第2の送信部30の稼働状態の制御を行う。送信装置制御信号S40に基づいて動作状態の変更を行った場合は、制御部13は、切り替えが完了したことを示す信号を受信装置制御信号S10として受信装置40に送る。
【0024】
また、制御部13は、経路切替部12を制御して信号を出力する経路の切り替えを行う。制御部13は、第1の送信部20または第2の送信部30のうち現用系として用いられている側へ、内部信号S11が出力されるように経路切替部12を制御する。制御部13は、経路切替信号S12を経路切替部12に送ることにより、経路切替部12を制御する。
【0025】
第1の送信部20は、送信信号処理部21と、光信号送信部22と、送信制御部23と、信号監視部24を備えている。送信信号処理部21は、入力された内部信号S11のデータを第1の伝送路71で伝送する際の信号形式に変換するための符号化を行う機能を有する。送信信号処理部21は、入力された内部信号S11のデータの符号化や冗長化を行い、送信用信号S22として光信号送信部22に出力する。
【0026】
送信信号処理部21は、半導体装置を備えている。半導体装置には、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)が用いられる。本実施形態の半導体装置が駆動する際の、クロック周波数は複数段階の周波数で設定されている。本実施形態では半導体装置を駆動させるクロックの周波数の値をクロック周波数と呼ぶ。
【0027】
本実施形態では、クロック周波数は、周波数ftおよび周波数fwの2段階で設定されている。周波数ftは、通常の動作状態のときのクロック周波数である。通常の動作状態とは、第1の送信部20が、現用系として選択されていて、データ通信用の光信号を主信号として出力している状態のことをいう。また、第1の送信部20は、主信号に多重化して制御用の信号や試験用の信号を出力することもある。
【0028】
周波数fwは、待機状態のときのクロック周波数である。待機状態とは、第1の送信部20が予備系として選択され、データ通信用の光信号の出力を行っていない状態のことをいう。送信信号処理部21は、待機状態において、信号処理に関する設定情報などを保持し続けることができる。また、周波数の値はft>fwとなり、通常の動作状態のときのクロック周波数の方が高くなるように設定される。このように、待機状態のときのクロック、通常の動作状態のときよりも周波数を下げることにより、消費電力の抑制および半導体素子の劣化の防止を行うことができる。送信信号処理部21は、送信処理部制御信号S23に基づいて動作状態の移行を行う。光送信信号処理部21、光送信部制御信号S24のクロックが示す周波数に応じて動作状態の移行を行う。
【0029】
また、送信信号処理部21の半導体装置は、単数または複数備えられている。半導体装置は、複数の半導体装置のチップが1つのパッケージ内に収められたSiP(System in a Package)として構成されていることもある。
【0030】
光信号送信部22は、第1の伝送路71で伝送する光信号を生成する機能を有する。光信号送信部22、光出力部と変調部を備えている。光出力部は、所定の波長の光を出力する半導体レーザーを備える光学装置が用いられる。変調部は、光出力部が出力した光を送信用信号S22の符号データに基づいて変調し第1の光信号S71として出力する。本実施形態では、位相変調方式が用いられる。光信号送信部22で生成された第1の光信号S71は、第1の伝送路71に出力される。
【0031】
また、光信号送信部22の光出力部の光学装置は、第1の送信部20が予備系として選択されたときに待機状態に移行する機能を有する。待機状態では、光学装置は半導体レーザーを停止するか、通常の動作状態のときよりも出力の強度を低下させる。予備系として選択されたときに、待機状態として動作することにより、消費電力の抑制や半導体レーザーの劣化を防止することができる。光信号送信部22は、光送信部制御信号S24に基づいて動作状態の移行を行う。光信号送信部22は、光送信部制御信号S24のクロックが示す周波数に応じて動作状態の移行を行う。
【0032】
送信制御部23は、第1の送信部20の制御全般を行う機能を有する。送信制御部23も、送信信号処理部21と同様の半導体装置により構成されている。送信制御部23は、制御部13から送られてく送信部制御信号S21に基づいて、第1の送信部20の動作状態を制御する。送信制御部23は、送信信号処理部21および光信号送信部22にそれぞれ出力する送信処理部制御信号S23または光送信部制御信号S24が示すクロックの周波数により動作状態を制御する。
【0033】
本実施形態では、送信制御部23は、通常の動作状態では周波数ftの周波数のクロックの送信処理部制御信号S23または光送信部制御信号S24を出力する。また、待機状態では送信制御部23は、周波数fwの送信処理部制御信号S23または光送信部制御信号S24を出力する。周波数fwは周波数ftよりも小さい。例えば、fw=ft/2として設定し、送信信号処理部21および光信号送信部22は、待機状態では通常の動作状態の半分のクロック周波数で動作する設定とすることができる。また、送信制御部23も、通常の動作状態では周波数ft、待機状態では周波数fwのクロック周波数で駆動する。光信号送信部21の待機状態が、動作を停止した状態である場合は、クロックの供給を止めることにより制御することもできる。
【0034】
図4は、第1の送信部20が、通常の動作状態と待機状態のそれぞれの動作状態であったときの、送信信号処理部21、光信号送信部22および送信制御部23の状態の例を表したものである。
図4に示し通り、通常の動作状態では送信信号処理部21および送信制御部23はクロック周波数ftで動作し、データ通信用の光信号の処理および制御を行うことができる状態である。また、光信号送信部22は、周波数ftのクロックが入力され、光を出力する半導体レーザーの出力を、光信号が送信可能な強度に保つ通常出力の状態となっている。
【0035】
また、待機状態では、送信信号処理部21および送信制御部23は、周波数ftよりも低いクロック周波数fwで動作し、設定情報の保持や制御信号への応答のみが可能な状態である。また、待機状態において、光信号送信部22は光の出力を停止しているか、出力強度を下げ、データ通信用の光信号を行えない状態である。また、このとき、光信号送信部22は、周波数ftのクロックの信号を受け取るか、信号を受け取っていない状態である。
【0036】
送信制御部23は、信号監視部23から送られてくる強度信号S25を基に、光信号送信部22が出力した第1の光信号S71の強度を監視する機能を有する。送信制御部23は、強度信号S25が示す計測結果を所定の基準値と比較する。強度が所定の基準値未満であるときは、送信制御部23は、第1の光信号S71に異常が生じていることを示す信号を、監視状態信号S26として送信する。
【0037】
信号監視部24は、光信号送信部22が出力した第1の光信号S71の強度を計測する機能を有する。第1の光信号S71は、光カプラ等で分岐されて信号監視部24に入力される。信号監視部24は、光信号の強度を計測し計測結果の情報を強度信号S25として送信制御部23に送る。信号監視部24は、送信制御部23と同じクロック周波数で動作する。光信号送信部22が動作を停止したときは、信号監視部24の動作も停止される構成としてもよい。また、信号監視部24は、光信号の強度を直接、計測する方法に代えて、光信号出力部22の半導体レーザーの出力電圧または電流値を計測して光信号の強度に換算する方法としてもよい。
【0038】
第2の送信部30は、送信信号処理部31と、光信号送信部32と、送信制御部33と、信号監視部34を備えている。送信信号処理部31、光信号送信部32、送信制御部33および信号監視部34の構成および機能は第1の送信部20の同名称の部位と同様である。送信制御部33は、送信部制御信号S31に基づいて、第1の送信部30の動作状態の制御を行う。送信制御部33は、送信信号処理部31および光信号送信部32にそれぞれ出力する送信処理部制御信号S33または光送信部制御信号S34が示すクロックの周波数により動作状態を制御する。また、送信信号処理部31は、生成した符号データを送信用信号S32として光信号送信部32に送る。光信号送信部32は、送信用信号S32を元に生成した光信号を第2の光信号S72として第2の伝送路72に出力する。信号監視部34は、第2の光信号S72の強度を計測し、強度信号S35として送信制御部33に送る。送信制御部33は、第2の光信号S72の強度の異常を検知した場合は、強度に異常が生じていることを示す信号を、監視状態信号S36として制御部13に送る。
【0039】
次に、受信装置40について説明する。
図5は、本実施形態の受信装置40の構成の概要を示したものである。本実施形態の受信装置40は、信号送信部41と、経路切替部42と、制御部43と、第1の受信部50と、第2の受信部60を備えている。
【0040】
信号送信部41は、入力された信号を通信ネットワークや情報処理装置などに送られる信号形式に変換して出力する機能を有する。信号送信部41は、内部信号S41を受信装置40からの出力用の信号形式に変換して出力する。
【0041】
経路切替部42は、スイッチ素子を備え、第1の受信部50または第2の受信部60のいずれか一方からの入力経路を信号送信部41に接続する機能を有する。経路切替部42は、制御部43から送られてくる切替制御信号S42に基づいて、スイッチ素子を動作させて、接続する経路の切り替えを行う。切替制御信号S42には、第1の受信部50側または第2の受信部60側からのいずれの入力経路を信号送信部41に接続するようにスイッチ素子を切り替えるかの情報が含まれている。
【0042】
制御部43は、受信装置40の制御全般を行う機能を有する。制御部43は、第1の受信部50および第2の受信部60の稼働状態を制御する。動作状態とは、現用系として用いられているときの主信号の受信を行う通常の動作状態、すなわち、起動状態と、予備系として用いられているときの動作を抑制した待機状態のことをいう。制御部43は、第1の受信部50および第2の受信部60に、送信部制御信号S51または送信部制御信号S61をそれぞれ送って動作状態の制御を行う。
【0043】
また、制御部43は予備系への切り替えが必要なときに、送信部10に予備系への切り替えを要求する信号を送信装置制御信号S40として送る機能を有する。制御部43は、監視状態信号S56および監視状態信号S66を基に、第1の受信部50および第2の受信部60で受信する光信号の異常を検知する。制御部43は、現用系の異常を検知したときに、自装置および送信装置10を予備系に切り替えるための動作を開始する。また、制御部43は、送信装置10から予備系への切り替えが完了したことを示し受信装置制御信号S10を受け取ることにより、送信装置10の予備系への切り替えが完了したことを認識する。
【0044】
また、制御部43は、経路切替部42の経路の切り替えを制御する。制御部43は、第1の受信部50および第2の受信部60のうち現用系として用いられている側からの信号が信号送信部41に入力されるように経路切替部42を制御する。制御部43は、経路切替信号S42を経路切替部42に送ることにより、経路切替部12を制御する。
【0045】
第1の受信部50は、光信号受信部51と、受信信号処理部52と、受信制御部53と、信号監視部54を備えている。光信号受信部51は、第1の伝送路71を介して入力された第1の光信号S71を電気信号に変換する機能を有する。光信号受信部51は、光信号を受光して電気信号に変換する受光装置を備えている。光信号受信部51の受光装置は、光信号を電気信号に変換する光電変換素子としてフォトダイオードを備えている。光信号受信部51は、第1の光信号を光電変換素子によって電気信号に変換し、さらにデジタル信号に変換する。光信号受信部51は、変換した信号を受信信号S52として受信信号処理部52に送る。
【0046】
また、光信号受信部51の受光装置は、第1の受信部50が予備系として選択されたときに待機状態に移行する機能を有する。待機状態では、光学装置は各素子への通電を停止するか、電圧を低下させる。待機状態として動作することにより、消費電力の抑制や素子の劣化を防止することができる。光信号受信部51は、受信制御部53から送られてくる光受信部制御信号S54のクロックの周波数に基づいて、動作状態の移行を行う。
【0047】
受信信号処理部52は、入力された受信信号S52のデータを復号し、伝送装置内部で用いる信号形式に変換する機能を有する。受信信号処理部52は、信号処理を行う半導体装置を備えている。受信信号処理部52は、入力された受信信号S52のデータの復号、信号の歪み補正等を行う。受信信号処理部52は、復号や歪み補正等の処理を行った信号を受信装置40の内部で用いる信号の形式に変換して内部信号S41として経路切替部42に送る機能を有する。
【0048】
また、受信信号処理部52は、受信信号S52の復号および歪み補正等を行う際に、信号の品質を計測する機能を有する。受信信号処理部52は、受信信号S52の復号処理が行えないときや信号の品質が所定の基準以下となったときに、受信信号に異常が生じていることを示す信号品質信号S55を受信制御部53に送る。信号の品質が所定の基準以下とは、例えば、ジッタを信号の品質の項目とした場合、ジッタが所定の基準を超えたときに信号の品質が所定の基準より低下したとみなすことをいう。
【0049】
受信信号処理部52の半導体装置は、複数段階のクロック周波数で駆動する。本実施形態では、クロック周波数は、通常の動作状態の周波数ftと、待機状態の周波数fwの2段階で設定さている。通常の動作状態とは、第1の受信部50が、現用系として選択されていて、データ通信用の信号の処理している状態、または、信号の処理をすぐに行えるように待機している状態をいう。待機状態とは、第2の受信部50が予備系として選択され、データ通信用の光信号の処理を行わずに機能を制限している状態のことをいう。また、周波数の値はft>fwとなり、通常の動作状態のときのクロック周波数の方が高くなるように設定される。このように、待機状態のときに通常の動作状態よりもクロック周波数を下げることにより、消費電力の抑制および半導体素子の劣化の防止を行うことができる。また、受信信号処理部52は、待機状態で動作しているときに信号処理に関する設定情報を保持する。
【0050】
受信制御部53は、第1の受信部50の制御全般を行う機能を有する。受信制御部53は、制御用の半導体装置を備えている。受信制御部53は、制御部43から送られてく受信部制御信号S51に基づいて、第1の受信部50の動作状態を制御する。受信制御部53は、光信号受信部51および受信信号処理部52にそれぞれ送る、光受信部制御信号S54または受信処理部制御信号S53のクロックの周波数により動作状態を制御する。
【0051】
本実施形態では、受信制御部53は、通常の動作状態では周波数ftのクロックの光受信部制御信号S54および受信処理部制御信号S53を出力する。また、待機状態では周波数fwの光受信部制御信号S54および受信処理部制御信号S53を出力する。周波数fwは周波数ftよりも小さい。また、受信制御部53の制御用の半導体装置も、通常の動作状態では周波数ft、待機状態では周波数fwのクロック周波数で動作する。光信号受信部51の待機状態が、動作を停止した状態である場合は、クロックの供給を止めることにより制御することもできる。また、受信制御部53は、待機状態で動作しているときに信号処理に関する設定情報を保持する。
【0052】
また、受信制御部53は、受信信号処理部52から信号に異常が生じたことを示す信号品質信号S55を受け取ると、第1の伝送路71に異常が生じたことを示す信号を状態監視信号S56として制御部43に送る。
【0053】
図6は、第1の受信部50が、通常の動作状態と待機状態のそれぞれの動作状態であったときの、光信号受信部51、受信信号処理部52および受信制御部53の状態の例を表したものである。
図6に示し通り、通常の動作状態では受信信号処理部52および受信制御部53はクロック周波数ftで動作し、データ通信用の光信号の処理および制御を行うことができる状態である。また、光信号受信部51は、周波数ftのクロックが入力され光信号の受光および電気信号への変換が可能な通常動作の状態となっている。
【0054】
また、待機状態では、受信信号処理部52および受信制御部53は、周波数ftよりも低いクロック周波数fwで動作し、設定情報の保持や制御信号への応答のみが可能な状態である。また、待機状態において、光信号受信部51は停止しているか、起動に必要な最低限の電圧供給のみが行われていて、データ通信用の光信号の受信を行えない状態である。また、このとき、光信号受信部51は、周波数fwのクロックの信号を受け取るか、信号の受け取っていない状態である。
【0055】
信号監視部54は、第1の伝送路71を介して入力される第1の光信号S71の強度を計測する機能を有する。信号監視部54は、光信号受信部51が、第1の光信号S71を電気信号に変換した際の電圧値または電流値を計測し、光信号の強度に換算する。受光素子の特性、電気信号の電圧値または電流値と光信号の強度の関係はあらかじめ信号監視部54に保存されている。信号監視部54は、受信制御部53と同じクロック周波数で動作する。光信号受信部51が動作を停止した場合は、信号監視部54も動作を停止する構成としてもよい。また、信号監視部54は、光信号受信部51が電気信号に変換するよりも前段において光カプラ等で分岐した第1の光信号S71を計測する構成としてもよい。信号監視部54は、光信号の強度を計測し計測結果の情報を強度信号S27として受信制御部53に送る。
【0056】
第2の受信部60は、光信号受信部61と、受信信号処理部62と、受信制御部63と、信号監視部64を備えている。光信号受信部61、受信信号処理部62、受信制御部63および信号監視部S64の構成および機能は第1の受信部50の同名称の部位と同様である。光信号受信部61は、第2の伝送路72を介して入力された第2の光信号S72を電気信号に変換し、受信信号S62として受信信号処理部62に送る。受信信号処理部62は、受信信号S62の復号処理等を行う。第受信信号処理部62は、復号処理等を行った信号を、内部信号S41として経路切替部42に送る。また、受信信号処理部62は、信号の品質の低下等の異常を検知したときに、異常を検知したことを示す信号を信号品質信号S55として受信制御部53に送る。
【0057】
受信制御部63は、光信号受信部61を光受信部制御信号S64によって制御する。また、受信制御部53は、受信信号処理部62を受信処理部制御信号S63によって制御する。第2の受信部60で用いられる各信号は、第1の受信部50の同名称の信号と同様の機能を有する。また、受信制御部63は、受信信号処理部62から信号に異常が生じたことを示す信号品質信号S65を受け取ると、第2の伝送路72に異常が生じたことを示す信号を監視状態信号S66として制御部43に送る。信号監視部64は、光信号の強度を計測し、結果の情報を強度信号S67として受信制御部63に送る。また、受信制御部63は、第2の光信号S72の強度の異常を検知すると、第2の伝送路72に異常が生じたことを示す信号を監視状態信号S66として制御部43に送る。
【0058】
第1の伝送路71および第2の伝送路72は、それぞれ、光信号を伝送する光ファイバーにより構成されている。第1の伝送路71は、送信装置10の第1の送信部30から出力された第1の光信号S71を、受信装置40の第1の受信部50に入力されるように伝送する。また、第2の伝送路72は、送信装置10の第2の送信部30から出力された第2の光信号S72が、受信装置40の第2の受信部60に入力されるように伝送する。第1の伝送路71および第2の伝送路72には、光信号を増幅する増幅装置が備えられていてもよい。
【0059】
通信回線73は、光通信システムを構成する各装置の制御用の信号を伝送する機能を有する。本実施形態では、送信装置10から受信装置40に、予備系への切り替えが完了したことを示す信号が、受信装置制御信号S10として送られる。また、受信装置40から送信装置10に、予備系への切り替えを要求する信号が送信装置制御信号S40として送られる。送信装置10から受信装置40に、受信装置制御信号S10を送るときは第1の伝送路71または第2の伝送路72を介して送る構成とすることもできる。また、通信回線73は、専用回線でもよく、データ通信用の回線を他と共用したものであってもよい。
【0060】
本実施形態の光通信システムにおいて送信装置10から受信装置40に光信号が伝送される際の動作について説明する。初期の状態では第1の伝送路71が現用系、第2の伝送路72が予備系として用いられているとして以下の説明を行う。すなわち、現用系である第1の伝送路71を介して、送信装置10から受信装置40にデータ通信用の主信号が伝送されている状態を初期状態として説明する。このとき、予備系である第2の伝送路72では、送信装置10から受信装置40へは、データ通信用の光信号の伝送は行われていない。
【0061】
送信装置10に、データ通信用のデータの信号が入力されると、信号受信部11は入力された信号を送信装置10の内部で用いる信号形式に変換して内部信号S11として経路切替部12に送る。内部信号S11が入力されると、経路切替部12は、現用系の側の送信部、すなわち、第1の送信部20に内部信号S11を出力する。
【0062】
内部信号S11が入力されると、第1の送信部20の送信信号処理部21は、入力された内部信号S11のデータの符号化や冗長化処理などを行って、第1の伝送路71で伝送する符号データを生成する。送信信号処理部21は、符号データを生成すると、生成した符号データを送信用信号S22として光信号送信部22に送る。このとき、送信信号処理部21および送信制御部23は、通常の動作状態であり周波数ftで動作している。
【0063】
送信用信号S22が入力されると、光信号送信部22は、所定の波長の光を送信用信号S22の符号データに基づいて変調して、第1の光信号S71を生成する。本実施形態では、位相変調方式により第1の光信号S71が生成される。光信号送信部22が生成した第1の光信号S71は、第1の伝送路71へと出力される。
【0064】
光信号送信部22が出力した第1の光信号S71は、第1の送信部20から出力される前に、光カプラで分岐され信号監視部24に入力される。第1の光信号S71が入力されると、信号監視部24は入力された第1の光信号S71の強度を測定する。信号監視部24は、計測した第1の光信号S71の強度の情報を強度信号S25として送信制御部23に送る。送信制御部23は、強度信号S25を受け取ると、強度信号S25が示す第1の光信号S71の強度と所定の基準値を比較する。第1の光信号S71の強度が所定の基準値未満の場合は、送信制御部23は、第1の光信号S71に異常が生じていることを示し信号を監視状態信号S26として制御部13に送る。
【0065】
また、第2の送信部30は予備系として選択されているので、送信信号処理部31および送信制御部32は、周波数ftの待機状態で動作している。光信号送信部30は、待機状態として出力を低下させている。
【0066】
第1の伝送路71へと出力された第1の光信号は、第1の伝送路71で伝送されて受信装置40に入力される。受信装置40に入力された第1の光信号は、第1の受信部50の光信号受信部51に入力される。
【0067】
光信号受信部51に入力された第1の光信号はデジタル信号形式の電気信号に変換されて、受信信号S52として受信信号処理部52に送られる。受信信号S52が入力されると、受信信号処理部52は、受信信号S52の復号および信号を歪み補正処理等を行って、処理を行った信号を内部信号S41として出力する。このとき、受信信号処理部52および受信制御部53は、通常の動作状態であり周波数ftで動作している。
【0068】
また、受信信号処理52は、信号の復号や歪み補正等を行う際に信号の品質を所定の基準と比較する。信号の品質が所定の基準以上であったときは、正常であることを示す信号を信号品質信号S55として受信制御部53に送る。また、所定の基準以下であったときは、異常であることを示す信号を信号品質信号S55として受信制御部53に送る。制御部は、正常か異常かを示す信号を監視状態信号S56として制御部43に送る。制御部43は、監視状態信号S56を基に、第1の伝送路71の異常の有無の監視を行う。
【0069】
信号監視部54は、光信号受信部51において第1の光信号S71から変換された電気信号の電圧値または電流値を計測する。信号監視部54は、第1の光信号S71から変換された電気信号の電圧値または電流値を計測すると、光信号の強度に換算する。信号監視部54は、計測結果から算出した第1の光信号S71の強度の情報を強度信号S57として受信制御部53に送る。受信制御部53は、強度信号S57を受け取ると、強度信号S57が示す第1の光信号S71の強度と所定の基準値を比較する。第1の光信号S71の強度が所定の基準値未満の場合は、受信制御部53は、第1の光信号S71に異常が生じていることを示す信号を監視状態信号S56として制御部43に送る。
【0070】
第2の受信部60は予備系として選択されているので、受信信号処理部62および受信制御部62は、周波数ftの待機状態で動作している。また、光信号受信部61も、待機状態となっている。
【0071】
受信信号処理部52から出力された内部信号S41は、経路切替部42に送られる。第1の受信部50が現用系であるとき、第1の受信部50側の経路が信号送信部42に接続されているので、経路切替部42に入力された内部信号S41は、信号処理部42に送られる。内部信号S41が入力されると、信号送信部42は、入力された信号を通信ネットワークや情報処理装置に出力する信号形式に変換する。信号送信部42は、出力する信号形式に変換した信号を、送信装置40に接続されたネットワークや情報処理装置に出力する。以上で、本実施形態の光通信システムで、送信装置10から受信装置40にデータ通信用の光信号を伝送する際の動作の説明は終了である。
【0072】
次に、本実施形態の光通信システムにおいて現用系で異常が発生して予備系に切り替える際の動作について説明する。
図7は、現用系で異常が発生したことを受信装置40が検出して予備系に切り替える際のフローの概要を示したものである。現用系である第1の伝送路71で異常が発生して第1の光信号S71のパワーが低下したとして説明する。
【0073】
受信装置40において、現用系として用いられている第1の受信部50の受信信号処理部52は、信号の処理を行う際に信号の品質の確認を行う(ステップ101)。信号の品質の確認は、常時、行う方法としてもよく、また、所定の時間ごとに行う方法としてもよい。また、受信制御部53も、第1の光信号S71の強度を監視して、第1の光信号S71の異常の有無を確認している。現用系である第1の伝送路71が正常である場合には、信号に異常が生じていないので(ステップ102でNo)、現用系である第1の伝送路71で光信号の伝送が継続される(ステップ103)。
【0074】
現用系の第1の伝送路71で障害が発生すると、受信装置40に入力される第1の光信号のパワーの低下が生じる。第1の受信部50の受信信号処理部52は、雑音に対する主信号の比が低下して受信信号S52の処理が行えなくなることにより第1の光信号S71の異常を検知する。また、受信信号処理部52は、信号の品質が所定の基準以下であることを検知することにより、第1の光信号S71に異常があることを検知する。
【0075】
第1の光信号S71に異常があることを検知すると(ステップ102でYes)、受信信号処理部52は、受信している第1の光信号S71に異常があることを示す信号を信号品質信号S55として受信制御部53に送る。受信制御部53は、第1の光信号S71に異常があることを示す信号品質信号S55を受け取ると、異常が発生したことを示す信号を監視状態信号S56として制御部43に送る。監視状態信号S56により、現用系である第1の伝送路71に異常が発生したことを検知すると、制御部43は、予備系である第2の伝送路72への切り替えが必要と判断する。予備系への切り替えが必要と判断されると、予備系である第2の伝送路への切り替えが開始される(ステップ104)。
【0076】
予備系である第2の伝送路72への切り替えは、次のように行う。予備系への切り替えが必要と判断すると、制御部43は、第2の伝送路72側への切り替えを要求することを示す送信装置制御信号S40を通信回線73を介して送信装置10に送信する。
【0077】
送信装置10は、予備系である第2の伝送路72への切り替えを要求する送信装置制御信号S40を受け取ると、予備系の第2の伝送路72への切り替えを行う(ステップ105)、第2の伝送路72への切り替えは次のように行う。
【0078】
送信装置10の制御部13は、送信装置制御信号S40を受け取ると、第2の送信部30に通常の動作状態に移行することを要求する信号を送信部制御信号S31として送る。第2の送信部30の送信制御部33は、送信部制御信号S31を受信すると、送信信号処理部31に送る送信処理部制御信号S33のクロックを通常の動作状態に対応した周波数ftに上げる。また、送信制御部33は、光信号送信部32に送る光送信部制御信号S34のクロックも周波数ftに上げる。
【0079】
送信信号処理部31および光信号送信部32は、通常の動作状態に対応した周波数ftのクロックの信号を受け取ると、通常の動作状態に移行する。例えば、送信信号処理部31は、周波数ftのクロック周波数で信号の処理を行える状態に移行する。また、光信号送信部32は、主信号の光信号の出力に必要な水準に出力強度を設定する。送信信号処理部31および光信号送信部32が通常の動作状態に移行すると、第2の送信部30側からのデータ通信用の主信号の送信することが可能になる。
【0080】
また、制御部13は経路切替部12に、第2の送信部30側に信号の出力経路を切り替えることを要求する信号を経路切替信号S12として送る。経路切替信号S12を受け取ると、経路切替部12はスイッチ素子を動作させて、内部信号S11が第2の送信部30側に信号が入力されるようにする。送信装置10の制御部13は、第2の送信部30側への切り替えを完了すると、受信装置40に受信装置制御信号S10を送信する。
【0081】
受信装置制御信号S10を受け取ると、受信装置40は予備系の第2の伝送路72への切り替えを行う(ステップ106)、第2の伝送路72への切り替えは次のように行う。
受信装置制御信号S10を受け取ると、受信装置40の制御部43は、第2の受信部60に通常の動作状態に移行することを要求する信号を受信部制御信号S61として送信する。第2の受信部60の制御部63は、通常の動作状態に移行することを要求する受信部制御信号S61を受け取ると、光信号受信部61に送る光受信部制御信号S64のクロックの周波数を、通常の動作状態に対応した周波数ftに上げる。また、制御部63は、受信信号処理部62に送る受信処理部制御信号S63のクロックの周波数も周波数ftに上げる。
【0082】
光信号受信部61および受信信号処理部62は、通常の動作状態用の周波数ftのクロックの信号を受け取ると通常の動作状態に移行する。例えば、受信信号処理部62は、周波数ftのクロック周波数での動作を開始し、受信した信号の復号等の処理が可能な状態に移行する。また、光信号受信部61は、受光素子やその周辺回路に通常の動作状態に対応した電圧の印加を開始する。通常の動作状態に移行すると、光信号受信部61および受信信号処理部62は、主信号の受信および受信した信号の復号等の処理が可能となる。
【0083】
以上の、動作が完了すると予備系であった第2の伝送路72でのデータ通信用の主信号の伝送が開始される(ステップ107)。第2の伝送路72での主信号の伝送は、第1の伝送路71を現用系としていた場合と同様に行われる。以上で、現用系で異常が発生した場合における、予備系への切り替え動作についての説明は終了である。
【0084】
予備系への切り替えが行われた場合に、送信装置10および受信装置40は、それまで現用系として使われていた送信部または受信部を、それぞれ待機状態または休止状態に移行してもよい。
【0085】
第2の伝送路72側への切り替えが行われると、送信装置10の制御部13は、第1の送信部20の送信制御部23に待機状態に移行することを要求する送信部制御信号S21を送る。送信部制御信号S24を受け取ると、送信制御部23は、送信信号処理部21および光信号送信部22に送る、光送信部制御信号S24および送信処理部制御信号S23のクロックを周波数fwに減少させる。送信信号処理部21および光信号送信部22は、受け取る信号のクロックが周波数fwとなると、待機状態に移行する。また、障害が発生した際は、待機状態ではなく稼働を休止する方法としてもよい。
【0086】
第2の伝送路72側への切り替えが行われると、送信装置40の制御部43は、第1の受信部50の受信制御部53に待機状態に移行することを要求する受信部制御信号S51を送る。受信部制御信号S51を受け取ると、受信制御部53は、光信号受信部51および受信信号処理部52に送る光受信部制御信号S54および受信処理部制御信号S53のクロックを周波数fwに減少させる。光信号受信部51および受信信号処理部52は、受け取った信号のクロックが周波数fwとなると、待機状態に移行する。また、障害が発生した際は、待機状態ではなく稼働を休止する方法としてもよい。
【0087】
上記では、受信装置40が現用系の光信号の異常を検知して、予備系への切り替えを行う場合について説明した。受信装置40が光信号の光信号の異常を検知した場合だけでなく、送信装置10が、自装置が出力する光信号の強度の異常を検知して切り替えることもできる。
【0088】
第1の伝送路71が現用系であるとき、強度信号S25を基に送信制御部23が第1の光信号S71の異常を検知したとして説明する。第1の光信号S71の異常を検知すると、送信制御部23は、監視状態信号S26を制御部13に送る。制御部13は、第1の光信号S71に異常が生じたことを示す監視状態信号S26を受け取ると、予備系である第2の伝送路72側への切り替えが必要であると判断する。
【0089】
予備系である第2の伝送路72側への切り替えが必要と判断すると、制御部13は第2の伝送路72側への切り替えを要求する信号を受信装置制御信号S10として、受信装置40に通信回線73を介して送る。受信装置40の制御部43は、予備系への切り替えを要求する受信装置制御信号S10を受け取ると、ステップ106と同様の方法で待機状態であった予備系の第2の受信部60を通常の動作状態へと移行させる。
【0090】
第2の受信部60が通常の動作状態へと移行すると、切り替えが完了したことを示す信号を送信装置制御信号S40として、通信回線72を介して送信装置10に送る。送信装置10は、受信装置40から予備系への切り替えが完了したことを示す送信装置制御信号S40を受け取ると、待機状態であった第2の送信部30を通常の動作状態に移行させる。予備系である第2の送信部30の通常の動作状態への移行は、ステップ105と同様に行われる。送信装置10および受信装置40ともに予備系であった第2の伝送路72側への切り替えが終わると、第2の伝送路72を介して第2の光信号S72の伝送が行われる。
【0091】
本実施形態では、ステップ105で送信装置10を予備系に切り替えた後に、ステップ106において受信装置40の予備系への切り替えが行われた。このような動作方法に代えて、送信装置10と受信装置40が同時に予備系への切り替えを行う方法とすることもできる。同時に行う場合は、切り替えの動作段階ごとに送信装置10および受信装置40が交互に切り替えを進める方法とすることもできる。また、受信装置40が先に予備系に切り替えた後に、送信装置10が予備系への切り替えを行ってもよい。
【0092】
本実施形態の光通信システムのは、現用系の光信号の状態を監視しつつ、予備系の送信制御部および受信制御部のクロック周波数を現用系として稼動させているときの所定の周波数よりも下げるように制御している。また、送信制御部および受信制御部のクロック周波数を低下させたときに、光信号送信部や光信号受信部などの光学系のモジュールの稼働を停止するか抑止状態としている。予備系の送信制御部や受信制御部などのクロック周波数を下げることにより消費電力を抑制することができる。また、自装置または対抗する装置による光信号の監視結果を基に、動作状態の制御を行っているので、監視システム等からの制御を必要とせずに、現用系と待機系の切り替えが可能となる。そのため、障害等が発生したときに待機系を起動状態として、現用系と待機系を切り替える動作を素早く行うことが可能となる。
【0093】
本実施形態の光通信システムは、電源供給の有無ではなく、クロック周波数で制御することにより、現用系としての稼働時に各半導体装置が保持している設定情報等を待機状態の間もそのまま保持することができる。クロック周波数を低下させていても、送信制御部や受信制御部などは稼働状態を継続しているので、通常の動作状態、すなわち、起動状態への移行を素早く行うことができる。また、光信号送信部や光信号受信部もクロック周波数に応じて停止状態または抑止状態としているので、消費電力や光学素子の劣化を抑制することができる。このように、特性等に応じて待機状態を管理することにより、通常の動作状態に素早く移行できる状態にしつつ予備系の消費電力を抑制し、光学素子等の劣化を防止することが可能となる。その結果、本実施形態の光通信システムでは、現用系と予備系で冗長化された構成において消費電力を抑制しつつ、起動状態への移行時間を抑制することが可能となる。
【0094】
本発明の第3の実施形態について詳細に説明する。第2の実施形態の光通信システムでは、正常な動作状態と待機状態の2段階で動作が行われていた。本実施形態の光通信システムでは、クロック周波数の設定段階を増やすことにより、複数の待機状態で動作する。本実施形態ではクロック周波数の設定が3段階で設定され、通常の動作状態が1段階、待機状態が、第1の待機状態および第2の待機状態の2段階で設定されている例について説明する。
【0095】
本実施形態の光通信システムの構成は、第2の実施形態と同様であるので、
図2、
図3および
図5を参照して、第2の実施形態とは異なる機能についてのみ説明する。
【0096】
送信装置10の第1の送信部20の送信信号処理部21および送信制御部23に備えられている半導体装置は、3段階の設定のクロック周波数で動作する。3段階の周波数は、周波数ft、周波数fwhおよび周波数fwlでそれぞれ設定されている。通常の動作状態では、送信信号処理部21および送信制御部23は、周波数ftのクロック周波数で動作する。第1の待機状態では、送信信号処理部21および送信制御部23は、周波数fwhのクロック周波数で動作する。また、第2の待機状態では、送信信号処理部21および送信制御部23は、周波数fwlのクロック周波数で動作する。周波数の大きさは、ft>fwh>fwlである。そのため、第1の待機状態は第2の待機状態よりも稼動している機能を多くすることができる。
【0097】
通常の動作状態では、第1の送信部20の送信信号処理部21および送信制御部23は、第2の実施形態の通常の動作状態のときと同様の動作を行う。第1の待機状態では、送信信号処理部21は、試験信号の符号データを生成し、送信用信号S22として光信号送信部22に送る機能を有する。また、第1の待機状態では、送信制御部23は、送信信号処理部21および光信号送信部23の試験信号の送信を制御する機能を有する。また、第2の待機状態では、送信信号処理部21および送信制御部23は、第2の実施形態における待機状態と同様の動作を行う。
【0098】
第1の送信部20の光信号送信部23は、第1の待機状態では第1の光信号S71を送信できる状態を維持する。光信号送信部23は、通常の動作状態では、第2の実施形態の通常の動作状態のときと同様に、第1の光信号S71を送信できる状態で動作する。また、光信号送信部23は、第2の待機状態では、第2の実施形態の待機状態のときと同様に、光信号の出力に関する機能を停止する。すなわち、第2の待機状態では、光信号送信部22の半導体レーザーの出力を停止した状態にあるか、半導体レーザーの出力強度を抑制している。
【0099】
図8は、第1の送信部20が、通常の動作状態、第1の待機状態および第2の待機状態のそれぞれの動作状態であったときの、送信信号処理部21、光信号送信部22および送信制御部23の状態の例を表したものである。
図8に示し通り、通常の動作状態では送信信号処理部21および送信制御部23はクロック周波数ftで動作し、データ通信用の光信号の処理および制御を行うことができる状態である。また、光信号送信部22は、周波数ftのクロックが入力され、光を出力する半導体レーザーの出力を、光信号が送信可能な強度に保つ通常出力の状態となっている。
【0100】
また、第1の待機状態では、送信信号処理部21および送信制御部23は、周波数ftよりも低いクロック周波数fwhで動作し、設定情報の保持、制御信号への応答、試験信号の送信のみが可能な状態である。また、第1の待機状態において、光信号送信部22は、周波数fwhのクロックが入力され、光を出力する半導体レーザーの出力を、光信号が送信可能な強度に保つ通常出力の状態となっている。
【0101】
また、第2の待機状態では、送信信号処理部21および送信制御部23は、周波数fwhよりも低いクロック周波数fwlで動作し、設定情報の保持や制御信号への応答のみが可能な状態である。また、第2の待機状態において、光信号送信部22は光の出力を停止しているか、出力強度を下げ、データ通信用の光信号を行えない状態である。また、このとき、光信号送信部22は、周波数fwlのクロックの信号を受け取るか、信号を受け取っていない状態である。
【0102】
第2の送信部30の送信信号処理部31、光信号送信部32および送信制御部33は、それぞれ第1の送信部20と同様の動作を行う。
【0103】
送信装置40の第2の受信部50の受信信号処理部52および受信制御部53に備えられている半導体装置は、送信装置10の第1の送信部20と同様に、3段階の設定のクロック周波数で動作する。3段階の周波数は、周波数ft、周波数fwhおよび周波数fwlでそれぞれ設定されている。通常の動作状態では、受信信号処理部52および受信制御部53は、周波数ftのクロック周波数で動作する。第1の待機状態では、受信信号処理部52および受信制御部53は、周波数fwhのクロック周波数で動作する。また、第2の待機状態では、受信信号処理部52および受信制御部53は、周波数fwlのクロック周波数で動作する。周波数の大きさは、ft>fwh>fwlである。
【0104】
通常の動作状態では、受信信号処理部52および受信制御部53は、第2の実施形態の通常の動作状態のときと同様の動作を行う。第1の待機状態では、受信信号処理部52は、試験信号の復号および歪み補正等を行い、信号の品質の計測を行う機能を有する。受信信号処理部52は、信号の品質を計測し、計測結果から信号の品質を判断して信号品質信号S55として受信制御部53に送る。また、受信制御部53は、信号監視部54から送られてくる強度信号S57と所定の強度基準値を比較して、第1の光信号S71の強度の異常の有無を監視する。
【0105】
本実施形態では、受信信号処理部52は、信号の品質として信号のジッタを計測する。制御部43は、受け取った信号品質信号S55のデータを元に、第1の光信号S71の状態を示す信号を監視状態信号S56として制御部43に送る。制御部43は、監視状態信号S56を基に、第1の伝送路71から入力される第1の光信号S71の異常や劣化の有無の監視を行う。
【0106】
第1の受信部50の光信号受信部53は、第1の待機状態では第1の光信号S71を受信できる状態を維持する。光信号受信部53は、通常の動作状態では、第2の実施形態の通常の動作状態のときと同様に、第1の光信号S71を受信できる状態で動作する。また、光信号受信部53は、第2の待機状態では、第2の実施形態の待機状態のときと同様に、光信号の受信に関する機能を停止する。
【0107】
図9は、第1の受信部50が、通常の動作状態、第1の待機状態および第2の待機状態のそれぞれの動作状態であったときの、光信号受信部51、受信信号処理部52および受信制御部53の状態の例を表したものである。
図9に示し通り、通常の動作状態では受信信号処理部52および受信制御部53はクロック周波数ftで動作し、データ通信用の光信号の処理および制御を行うことができる状態である。また、光信号受信部51は、周波数ftのクロックが入力され光信号の受光および電気信号への変換が可能な通常動作の状態となっている。
【0108】
また、第1の待機状態では、受信信号処理部52および受信制御部53は、周波数ftよりも低いクロック周波数fwhで動作し、設定情報の保持、試験信号の処理および制御信号への応答などへの対応のみが可能である。また、第1の待機状態において、光信号受信部51は、試験信号を受信するために光信号の受信が可能な状態である。また、このとき、光信号受信部51は、周波数fwhのクロックの信号を受け取っている。
【0109】
第2の待機状態では、受信信号処理部52および受信制御部53は、周波数fwhよりも低いクロック周波数fwlで動作し、設定情報の保持や制御信号への応答のみが可能な状態である。また、待機状態において、光信号受信部51は停止しているか、起動に必要な最低限の電圧供給のみが行われていて、データ通信用の光信号の受信を行えない状態である。また、このとき、光信号受信部51は、周波数fwlのクロックの信号を受け取るか、信号の受け取っていない状態である。
【0110】
第2の受信部60の光信号受信部61、受信信号処理部62および受信制御部63は、それぞれ第1の受信部50の同名称の部位と同様の動作を行う。
【0111】
本実施形態の光通信システムの動作について説明する。本実施形態の光通信システムが、現用系の設定を用いてデータ通信用の光信号を送信装置10から受信装置40に伝送する際の動作は、第2の実施形態と同様である。
【0112】
次に予備系において送信装置10から受信装置40に試験信号が送られ、予備系の異常の有無の確認が行われる際の動作について説明する。第1の伝送路71が現用系、第2の伝送路72が予備系として設定されているとして説明を行う。また、送信装置10の第2の送信部30および受信装置40の第2の受信部60は、それぞれ第1の待機モードで動作しているとして説明する。
【0113】
予備系として設定されている第2の送信部30の送信信号処理部31は、所定の時間ごとに試験信号の符号データを生成する。このとき、送信信号処理部31は、第1の待機状態であるクロック周波数fwhで動作している。試験信号の符号データは、光通信システムの設計に応じてあらかじめ設定されている。送信信号処理部31は、試験信号の符号データを生成すると、送信用信号S32として光信号送信部32に送る。送信用信号S32を受け取ると、光信号送信部32は所定の波長の光を符号データに基づいて変調して試験信号を生成する。光信号送信部32は、生成した試験信号を第2の光信号S72として第2の伝送路72に出力する。
【0114】
また、信号監視部34は、光カプラで分岐されて入力される第2の光信号S72の強度を測定する。信号監視部34は、強度の測定結果を送信制御部33に強度信号S35として送る。送信制御部33は、強度信号S35を基に試験信号の異常の有無を判断する。
【0115】
第2の伝送路72に出力された第2の光信号S72は、第2の伝送路72で伝送されて、受信装置40に入力される。受信装置40に入力された第2の光信号S72は、第2の受信部60の光信号受信部61に入力される。第2の光信号S72が入力されると、光信号受信部61は、入力された光信号をデジタル形式の電気信号に変換する。光信号受信部61は、変換した信号を受信信号S62として受信信号処理部62に送る。
【0116】
受信信号S62を受け取ると、受信信号処理部62は信号の復号処理や歪み補正処理を行う。このとき、受信信号処理部62は、第1の待機状態であるクロック周波数fwhで動作している。受信信号処理部62は、復号処理を行う際に信号の品質を所定の基準と比較する。本実施形態では、所定の基準は、第1の所定の基準と第2の所定の基準の2段階で設定されている。第1の所定の基準は、光信号の品質の異常の有無を判断する基準値である。第2の所定の基準は、異常ではないが劣化が生じている場合を検出するための基準である。
【0117】
また、信号監視部64は、光信号受信部61を監視して光信号から変換された電気信号の電圧値または電流値を計測して、第2の光信号S72の強度を算出する。信号監視部64は、強度の測定結果を受信制御部63に強度信号S67として送る。受信制御部63は、強度信号S67を基に試験信号の異常の有無を判断する。強度の判断基準も第1の所定の強度基準、第2の所定の強度基準が設定されている。第1の所定の強度基準は、光信号の強度の異常の有無を判断する基準値である。第2の所定の強度基準は、異常ではないが劣化が生じている場合を検出するための基準である。
【0118】
受信信号処理部62は、信号の品質が第1の所定の基準以上であったときは、正常であることを示す信号を信号品質信号S65として受信制御部63に送る。また、第2の所定の基準以下であったときは、受信信号処理部62は、異常であることを示す信号を信号品質信号S65として受信制御部63に送る。第2の所定の基準以上で、第1の所定の基準未満であったときは、受信信号処理部62は劣化が生じていることを示す信号を信号品質信号S65として受信制御部63に送る。
【0119】
また、受信制御部63は強度信号S67を基に、強度を基準とした第2の光信号S72の異常や劣化の有無を判断する。受信制御部63は、第2の光信号S71の強度が第1の所定の強度基準以上のときは、第2の光信号S72は正常であると判断する。受信制御部63は、第2の光信号S71の強度が第2の所定の強度基準未満のときは、第2の光信号S72の強度に異常が生じていると判断する。受信制御部63は、第2の光信号S72の強度が第2の所定の強度基準以上で、第1の所定の強度基準以下の場合は、光信号に劣化が生じていると判断する。受信制御部63は、品質基準と強度基準で判断結果が分かれたときは、判断結果が悪い側の判断を優先する。例えば、品質基準で劣化、強度基準で異常と判断された場合は、光信号に異常が生じていると判断される。
【0120】
受信制御部63は、正常、異常または劣化などの信号の状態を示す信号を監視状態信号S66として制御部43に送る。また、このとき、受信制御部63は、第1の待機状態であるクロック周波数fwhで動作している。
【0121】
制御部43は、監視状態信号S66を受け取ると、信号が示す情報を保存する。既に保存されている情報がある場合は、受け取った信号に基づいて更新する。制御部43は、信号が新たに送られてくるまで保存した情報を保持する。制御部43は、監視状態信号S66を基に、第2の伝送路72の異常の有無の監視を行う。
【0122】
また、送信装置10においても同様に試験信号の強度の確認が行われる。送信制御部33は強度信号S35を基に、強度を基準とした第2の光信号S72の異常や劣化の有無を判断する。送信制御部33は、第2の光信号S71の強度が第1の所定の強度基準以上のときは、第2の光信号S72は正常であると判断する。送信制御部33は、第2の光信号S71の強度が第2の所定の強度基準未満のときは、第2の光信号S72の強度に異常が生じていると判断する。送信制御部33は、第2の光信号S72の強度が第2の所定の強度基準以上で、第1の所定の強度基準以下の場合は、光信号に劣化が生じていると判断する。以上で、予備系の第2の伝送路72において試験信号を送受信することにより、異常の有無を確認する際の動作についての説明は終了である。
【0123】
次に、本実施形態の光通信システムにおいて、現用系で異常が発生して予備系に切り替えが行われる際の動作について
図10を参照して説明する。
図10は、本実施形態において受信装置40が光信号の異常等を検知し現用系から予備系に切り替えが行われる際の動作フローの概要を示したものである。
【0124】
以下の説明では、第1の伝送路71が現用系、第2の伝送路72が予備系として設定されているとして、動作状態の変更が行われる際の動作について説明する。送信装置10から受信装置40に第1の伝送路71を介して、データ通信用の主信号が第1の光信号S71として、第2の実施形態と同様に伝送されているとして説明する。また、受信信号処理部52の計測した信号の品質を計測して、光信号の異常や劣化の有無を判断する例を示している。
【0125】
受信装置40に第1の伝送路71を介して第1の光信号S71が入力されると、第1の光信号S71は第1の受信部50の光信号受信部51に入力される。第1の光信号S71が入力されると、光信号受信部51は、第1の光信号S71をデジタル形式の電気信号に変換する。光信号受信部51は、変換した電気信号を受信信号S52として受信信号処理部52に送る。
【0126】
受信信号S52を受け取ると、受信信号処理部52は、信号のデータの復号や歪み補正処理を行う。受信信号処理部52は、信号の復号処理等を行う際に信号の品質を計測して信号の品質を確認する(ステップ111)。信号の品質の判断には、所定の基準として2つの閾値が用いられる。本実施形態では第1の閾値T1および第2の閾値T2の2つの閾値が設定されているとする。本実施形態では、第1の閾値T1は信号に異常が生じているかの判断に用いられる値として設定されている。また、第2の閾値T2は信号の復号処理等には支障が生じていないが、信号の品質の劣化が生じている状態を判断するために用いる値をして設定されている。
【0127】
本実施形態の受信信号処理部52は、信号のジッタを計測して信号の品質を判断する。よって。ジッタが大きい方が信号の劣化が大きい。よって、T1>T2となるように閾値が設定される。
【0128】
信号のジッタが第1の閾値T1以上であり信号に異常がある場合(ステップ112でYes)、受信信号処理部52は第1の伝送路71で異常が発生していると判断する。受信信号処理部52は、第1の伝送路71に異常が発生していると判断すると、異常が発生していることを示す信号を信号品質信号S55として受信制御部53に送る。
【0129】
受信制御部53は、信号品質信号S55を受け取ると、異常が発生していることを示す信号を監視状態信号S56として制御部43に送る。制御部43は、異常が発生していることを示す監視状態信号S56を受け取ると、予備系である第2の受信部60の動作状態を確認する(ステップ119)。
【0130】
第2の受信部60が第1の待機状態であるとき(ステップ120でYes)、制御部43は予備系である第2の受信部60で受信している信号の品質を確認する(ステップ121)。制御部43は、保存している第2の受信部60の品質の計測結果を基に信号の異常の有無を判断する。予備系の第2の受信部60で受信している信号に異常がない場合は(ステップ122でNo)、制御部43は予備系である第2の伝送路72側へ切り替えが可能であると判断する。予備系への切り替えが可能であると判断されると、予備系への切り替えが第2の実施形態と同様に行われる(ステップ123)。
【0131】
ステップ119の予備系の動作状態の確認において、第1の待機状態ではなかった場合は(ステップ120でNo)、第2の伝送路72の異常の有無が判断できないので、制御部43は異常の有無の判断をせず予備系への切り替えの動作を行う。予備系への切り替えの開始が判断されると、予備系への切り替えが第2の実施形態と同様に行われる(ステップ123)。
【0132】
ステップ121の予備系の信号の品質の確認において、第2の伝送路71から受信する信号に異常がある場合は(ステップ122でYes)、制御部43は予備系への切り替えは不可と判断する。予備系の第2の伝送路72への切り替えが不可の場合、第1の伝送路71および第2の伝送路72ともに使用できないので、制御部43は通信の継続が不可であることを示す情報を管理システム等に送る。
【0133】
ステップ111の確認において信号に異常がないとき(ステップ112でNo)、制御部43は信号に劣化が生じていないかを確認する。信号のジッタが第2の閾値T2以上で第1の閾値T1未満であるとき、受信信号処理部52は第1の伝送路71で信号の劣化が生じている判断する。信号のジッタが第2の閾値T2未満であり信号の劣化が生じていない場合、すなわち正常な場合は(ステップ113でNo)、制御部43は動作状態の移行は不要と判断する(ステップ116)。動作状態の移行が不要と判断されると、動作状態の移行は行われずに現用系の第1の伝送路71での第1の光信号S71の伝送が継続される(ステップ117)。
【0134】
信号のジッタが第2の閾値T2以上で第1の閾値T1未満で信号に劣化が生じているとき(ステップ113でYes)、制御部43は予備系の稼働状態を確認する(ステップ114)。
【0135】
ステップ114において、予備系の動作状態が第1の待機状態であったときは(ステップ115でYes)、制御部43は動作状態の移行は不要と判断する(ステップ116)。動作状態の移行が不要と判断されると、動作状態の移行は行われずに現用系の第1の伝送路71での第1の光信号S71の伝送が継続される(ステップ117)。
【0136】
ステップ114において、予備系の動作状態が第1の待機状態でない場合は(ステップ115でNo)、制御部43は予備系を第1の待機状態に移行させる(ステップ118)。
【0137】
第2の待機状態から第1の待機状態への移行は次のように行う。制御部43は、信号の劣化が生じていることを示す監視状態信号S56を受け取ると、第1の待機状態での動作を要求する信号を受信部制御信号S51として、第2の受信部60に送る。
【0138】
第2の受信部60は、第1の待機状態への移行を要求する受信部制御信号S51を受け取ると、光受信部制御信号S54および受信部制御信号S53のクロックの周波数をfwhとして光信号受信部51および受信信号処理部52にそれぞれ送る。光信号受信部51および受信信号処理部52は、周波数fwhのクロックの信号を受け取ると、第1の待機状態で稼働する。
【0139】
制御部43は、第1の待機状態での動作を要求する受信部制御信号S51を送ると、送信装置10に、第1の待機状態への移行を要求する信号を送信装置制御信号S40として送る。送信装置10は、第1の待機状態への移行を要求する送信装置制御信号S40を受け取ると、第2の送信部30の送信制御部33へ第1の待機状態への移行を要求する信号を送信部制御信号S31として送る。送信制御部33は第1の待機状態への移行を要求する信号を受け取ると、送信信号処理部31および光信号送信部32に送る送信処理部制御信号S33および光送信部制御信号S34のクロックを周波数fwhに変更する。送信信号処理部31および光信号送信部32は、周波数fwhのクロックの信号を受け取ると、第1の待機状態での稼働を開始する。上記の説明では、受信信号処理部52が計測した光信号の品質を基に、動作状態の切り替えを行う例について示したが、光信号の強度を基に行う場合も同様の方法で行うことができる。光信号の強度の基準も併せて光信号の異常や劣化の有無を判断する場合は、試験信号の送受信で説明した判断方法と同様に行う。
【0140】
また、送信装置10が光信号の強度測定結果を基に動作状態の切り替えを行う場合も同様の動作で行うことができる。以上で、現用系から予備系に切り替える際の動作についての説明は終了となる。
【0141】
本実施形態の光通信システムでは待機状態を複数、段階で設定することで消費電力をより効果的に削減することが可能となる。本実施形態では、現用系の光信号の品質や強度を計測し、光信号の品質や強度が正常であるときは、予備系の動作状態を大きく抑制している。信号の品質や強度が正常であるときは、予備系への切り替えが生じる可能性が低いからである。また、異常ではないが信号の品質の劣化や強度の低下が生じているときは、正常なときよりも予備系が動作させる機能を多くしている。正常なときに比べ、予備系への切り替えの可能性が高く、切り替えの際に素早く対応できるようにするためである。本実施形態の光通信システムでは、このように複数段階で待機モードを管理することにより、光信号の状態に応じた消費電力の抑制効果を得ることができる。その結果、本実施形態の光通信システムでは、現用系と予備系で冗長化された構成において予備系から通常の動作状態、すなわち起動状態への移行をできるだけ迅速に行うことを可能にしつつ、消費電力をより効果的に抑制することが可能となる。
【0142】
第2の実施形態および第3の実施形態の送信装置および受信装置は、クロック周波数を低減することにより待機状態に移行した。このような構成に代えて、クロック周波数を低減せずにクロック信号の供給を所定の時間間隔で停止または開始する構成とすることができる。すなわち、クロックの周波数を変えずに所定のインターバルで信号の供給の停止または開始を行うことで、通常の動作状態と同様の機能を保持しつつ消費電力の抑制を行うことができる。
【0143】
第2の実施形態および第3の実施形態の光通信システムは、伝送路が冗長化され、送信部および受信部はそれぞれの伝送路に対応して備えられていた。このような構成に代えて、現用系および予備系の送信部が1つの伝送路に光信号を出力する構成としてもよい。現用系および予備系の送信部が1つの伝送路に光信号を送信する場合は、現用系および予備系の受信部は1つの伝送路を介して光信号を受信する。現用系と予備系の送信部から出力された光信号は、合波素子で1つの伝送路への光信号とするかスイッチ素子により一方の光信号のみを出力する構成とすることができる。また、受信部の前段にも分波素子またはスイッチ素子が備えられる。デジタルコヒーレント方式の光通信システムの場合は、分波素子やスイッチ素子を備えない構成とすることもある。このような構成とすることに、伝送路を冗長化しなくとも、所定の信頼性を確保しつつ消費電力を抑制することが可能となる。
【0144】
第2の実施形態および第3の実施形態の光通信システムは、現用系および予備系の送信部および受信部をそれぞれ1つずつ備えていた。このような構成に代えて、現用系および予備系のいずれか一方、または、両方について、複数の送信部および受信部が備えられている構成とすることもできる。
【0145】
第2の実施形態および第3の実施系では、送信部を冗長化した送信装置および受信部を冗長化した受信装置について説明した。このような構成に代えて、送信装置への信号の入力部、すなわち受信部が冗長化されていてもよい。また、受信装置からの信号の出力部、すなわち送信部が冗長化されていてもよい。送信装置および受信装置が、送信部と受信部それぞれについて冗長化かせた構成を備えていることで、光通信システムの信頼性がより向上する。
【0146】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0147】
(付記1)
第1の光信号を出力する第1の信号出力手段と、
前記第1の光信号の出力を制御する第1の出力制御手段と、
前記第1の光信号を監視する第1の監視手段と、
第2の光信号を出力する第2の信号出力手段と、
前記第2の光信号の出力を制御する第2の出力制御手段と、
前記第1の光信号の監視結果を基に前記第2の出力制御手段のクロック周波数を複数段階で制御し、前記第2の信号出力手段が所定の動作状態となるように制御する送信制御手段と
を備えることを特徴とする送信装置。
(付記2)
前記第1の監視手段が前記第1の光信号の異常を検知してないときに、
前記送信制御手段は、前記第2の出力制御手段の前記クロック周波数を複数段階の設定値のうち、最も低いクロック周波数となるように制御し、
前記第2の信号出力手段は、前記第2の出力制御手段の制御によって動作を停止することを特徴とする付記1に記載の送信装置。
(付記3)
前記送信制御手段は、前記第2の出力手段の前記クロック周波数を少なくとも3段階以上の複数段階で制御し、
前記送信制御手段は、前記監視手段が前記第1の光信号の異常を検知してないときに、第2の出力制御手段の前記クロック周波数を複数段階の設定値のうち、最低及び最高以外のクロック周波数となるように制御し、
前記第2の出力手段は出力強度を現用系として用いられるときの所定の強度よりも下げていることを特徴とする付記1または2いずれかに記載の送信装置。
(付記4)
前記第2の光信号の監視する第2の監視手段をさらに備え、
前記第2の信号出力手段は、所定の試験信号を前記第2の光信号として出力し、前記第2の監視手段は、前記所定の試験信号を監視することを特徴とする付記1から3いずれかに記載の送信装置。
(付記5)
第1の光信号を受信する第1の信号受信手段と、
前記第1の光信号の受信を制御する第1の受信制御手段と、
前記第1の光信号の受信状態を監視する第1の受信信号監視手段と、
第2の光信号を受信する第2の信号受信手段と、
前記第2の光信号の受信を制御する第2の受信制御手段と、
前記第1の光信号の監視結果を基に前記第2の受信制御手段のクロック周波数を複数段階で制御し、前記第2の信号受信手段が所定の動作状態となるように制御する受信装置制御手段と
を備えることを特徴とする受信装置。
(付記6)
前記第1の受信信号監視手段が前記第1の光信号の異常を検知してないときに、
前記受信制御手段は、前記第2の受信制御手段の前記クロック周波数を複数段階の設定値のうち、最も低いクロック周波数となるように制御し、
前記第2の信号受信手段は、前記受信制御手段によって動作を停止することを特徴とする付記5に記載の受信装置。
(付記7)
前記第2の光信号を監視する第2の受信信号監視手段をさらに備え、
前記第2の信号受信手段は、所定の試験信号を前記第2の光信号として受信し、前記第2の監視手段は、前記所定の試験信号を監視することを特徴とする付記5または6いずれかに記載の受信装置。
(付記8)
前記第1の受信信号監視手段が前記第1の光信号の異常を検知したときに、
通信回線を介して前記第1の光信号の送信元の送信装置に、前記第2の光信号への切り替えを要求する信号を送信する切替信号送信手段をさらに備えることを特徴とする付記5から7いずれかに記載の受信装置。
(付記9)
付記1から4いずれかに記載の送信装置と
付記5から8いずれかに記載の受信装置とを備え、
前記送信装置から出力された前記第1の光信号および前記第2の光信号が、前記受信装置に入力されることを特徴とする光通信システム。
(付記10)
第1の光信号の出力し、
前記第1の光信号を監視し、
前記第1の光信号の監視結果を基に、前記第2の光信号の出力動作を制御する際のクロック周波数を複数段階で制御し、前記第2の光信号の出力動作を所定の待機状態とすることを特徴とする送信方法。
(付記11)
前記第1の光信号の異常を検知してないときに、
前記クロック周波数を複数段階の設定値のうち、最も低いクロック周波数となるように制御し、前記第2の出力制御手段の制御によって前記第2の光信号の出力動作を停止することを特徴とする付記1に記載の送信方法。
(付記12)
前記クロック周波数を少なくとも3段階以上の複数段階で制御し、
前記第1の光信号の異常を検知してないときに、前記クロック周波数を複数段階の設定値のうち、最低及び最高以外のクロック周波数となるように制御し、
前記第2の光信号の出力動作において出力強度を現用系として用いられるときの所定の強度よりも下げていることを特徴とする付記10または11いずれかに記載の送信方法。
(付記13)
所定の試験信号を前記第2の光信号として出力し、
前記所定の試験信号を監視することを特徴とする付記10から12いずれかに記載の送信方法。
(付記14)
第1の光信号を受信し、
前記第1の光信号の受信状態を監視し、
前記第1の光信号の監視結果を基に、前記第2の光信号の受信を制御する際のクロック周波数を複数段階で制御し、前記第2の光信号の受信動作を所定の動作状態となるように制御することを特徴とする受信方法。
(付記15)
前記第1の光信号の異常を検知してないときに、
前記クロック周波数を複数段階の設定値のうち、最も低いクロック周波数となるように制御し、前記第2の光信号の受信動作を停止することを特徴とする付記14に記載の受信方法。
(付記16)
所定の試験信号を前記第2の光信号として受信し、前記所定の試験信号を監視することを特徴とする付記14または15いずれかに記載の受信方法。
(付記17)
前記第1の光信号の異常を検知したときに、通信回線を介して前記第1の光信号の送信元の送信装置に、前記第2の光信号への切り替えを要求する信号を送信することを特徴とする付記14から16いずれかに記載の受信方法。
(付記18)
付記10から13いずれかに記載の送信方法で前記第1の光信号および前記第2の光信号を送信し、
付記14から17いずれかに記載の受信方法で前記第1の光信号および前記第2の光信号を受信することを特徴とする通信方法。