(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
木製構造材に貫通形成された貫通穴に配設された緊結ボルトに螺着される、筒状ナット部と座金部とからなる座金付きナットの座金部を、木製構造材の表面に突出させることなく締着させるための、回転基盤部を備えるナット締着具であって、
前記座金付きナットには、前記座金部に、前記回転基盤部を係合させる貫通係合部が複数箇所に形成されており、
前記回転基盤部には、前記座金部が装着される側の下面部から下方に突出して、前記貫通係合部に各々係合される複数の切削係合突起が、前記貫通係合部と対応する位置に設けられていると共に、前記座金部が装着される側と反対側の上面部に、インパクトレンチ等の回転工具に連結される連結係合部が設けられており、
且つ前記回転基盤部には、前記下面部における前記座金部の装着領域の外周部分から下方に突出して、前記木製構造材の表面に当接させる当接凸部が、周方向に連続して、又は断続して設けられており、
前記切削係合突起は、前記座金部の前記貫通係合部の貫通長さよりも長い長さで突出していることで、前記貫通係合部に挿入係合された際に、先端の切削刃が、前記座金部の下面よりも下方に突出可能となっており、
前記当接凸部は、前記切削係合突起よりも短い長さで突出していることで、前記当接凸部の先端と前記切削係合突起の先端との間に、前記座金部の厚さ以上の高低差が保持されているナット締着具。
前記回転基盤部は、前記座金付きナットの座金部よりも一回り小さな平面形状を備えるように形成されており、前記当接凸部は、前記回転基盤部よりも外側に張り出した状態で設けられている請求項1記載のナット締着具。
木製構造材に貫通形成された貫通穴に配設された緊結ボルトに螺着される、筒状ナット部と座金部とからなる座金付きナットの座金部を、ナット締着具を用いて、木製構造材の表面に突出させることなく締着させるための座金付きナットの締着方法であって、
前記座金付きナットには、前記座金部に、前記ナット締着具の回転基盤部を係合させる貫通係合部が複数箇所に形成されており、
前記ナット締着具は、インパクトレンチ等の回転工具に連結される連結係合部と、前記回転工具による駆動力によって回転する前記回転基盤部とを備えており、該回転基盤部には、前記座金部が装着される側の下面部から下方に突出して、前記貫通係合部に各々係合される複数の切削係合突起が、前記貫通係合部と対応する位置に設けられており、
前記切削係合突起を前記貫通係合部に挿入係合して、前記座金部を前記回転基盤部に装着した状態で、前記座金部の下面から下方に突出させた、前記回転基盤部の前記切削係合突起の先端の切削刃によって、前記木製構造材の表面を切削しながら、前記座金付きナットを回転させつつ前記筒状ナット部を前記緊結ボルトに螺着させる工程と、
前記座金部が前記木製構造材の表面から突出しなくなる深さまで前記切削刃によって前記木製構造材の表面を切削した後に、前記回転基盤部の前記座金部が装着される側の下面部における、前記座金部の装着領域の外周部分から下方に突出して、周方向に連続して、又は断続して設けられた当接凸部を、前記木製構造材の表面に当接させることで、或いは前記ナット締着具が連結される前記回転工具の外周面から延設して取り付けられたストッパー部を、前記木製構造材の表面に当接させることで、又は前記回転基盤部の下面を前記木製構造材の表面に当接さてストッパー部として機能させることで、前記回転基盤部の下方への移動をストップさせて、前記座金付きナットのみを下方に移動させながら、前記座金付きナットを回転させつつ前記筒状ナット部を前記緊結ボルトに螺着させることで、前記座金部を、前記木製構造材の表面から突出させることなく、前記切削刃によって切削された座堀部の底面に締着させる工程とを含む座金付きナットの締着方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載された土台の固定方法や固定具では、土台の上面に形成された座堀部の底面に座金付きナットが締着されるまで、切削刃が座金部の下面から突出したままの状態となっているので、座金付きナットを十分に締め付けて締着させた後においても、切削刃から離れた部分においては、座堀部の底面と座金部の下面との間には僅かな隙間が生じていることになる。また特に、座金付きナットを回転させて締着させる締着具に、座金部の下面から突出する切削刃が設けられている場合には、締着具を切削刃と共に座金付きナットから取り外した際に、座堀部の底面と座金部の下面との間には、略全体に亘って隙間が生じることになる。座堀部の底面と座金部の下面との間に隙間が生じていると、座金付きナットの土台への締着による引張り力(テンション)を、アンカーボルトに十分に付与することができなくなって、例えば土台が痩せた際に、緩みを発生させる要因となる。
【0007】
本発明は、土台等の木製構造材の表面に形成された座堀部に座金付きナットを締着させた際に、座堀部の底面と座金部の下面とを隙間なく密着させることを可能にして、アンカーボルト等の緊結ボルトに十分な引張り力を付与することのできるナット締着具及び座金付きナットの締着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、木製構造材に貫通形成された貫通穴に配設された緊結ボルトに螺着される、筒状ナット部と座金部とからなる座金付きナットの座金部を、木製構造材の表面に突出させることなく締着させるための、回転基盤部を備えるナット締着具であって、前記座金付きナットには、前記座金部に、前記回転基盤部を係合させる貫通係合部が複数箇所に形成されており、前記回転基盤部には、前記座金部が装着される側の下面部から下方に突出して、前記貫通係合部に各々係合される複数の切削係合突起が、前記貫通係合部と対応する位置に設けられていると共に、前記座金部が装着される側と反対側の上面部に、インパクトレンチ等の回転工具に連結される連結係合部が設けられており、且つ前記回転基盤部には、前記下面部における前記座金部の装着領域の外周部分から下方に突出して、前記木製構造材の表面に当接させる当接凸部が、周方向に連続して、又は断続して設けられており、前記切削係合突起は、前記座金部の前記貫通係合部の貫通長さよりも長い長さで突出していることで、前記貫通係合部に挿入係合された際に、先端の切削刃が、前記座金部の下面よりも下方に突出可能となっており、前記当接凸部は、前記切削係合突起よりも短い長さで突出していることで、前記当接凸部の先端と前記切削係合突起の先端との間に、前記座金部の厚さ以上の高低差が保持されているナット締着具を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
本発明のナット締着具は、前記回転基盤部が、前記座金付きナットの座金部よりも一回り小さな平面形状を備えるように形成されており、前記当接凸部は、前記回転基盤部よりも外側に張り出した状態で設けられていることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、木製構造材に貫通形成された貫通穴に配設された緊結ボルトに螺着される、筒状ナット部と座金部とからなる座金付きナットの座金部を、ナット締着具を用いて、木製構造材の表面に突出させることなく締着させるための座金付きナットの締着方法であって、前記座金付きナットには、前記座金部に、前記ナット締着具の回転基盤部を係合させる貫通係合部が複数箇所に形成されており、前記ナット締着具は、インパクトレンチ等の回転工具に連結される連結係合部と、前記回転工具による駆動力によって回転する前記回転基盤部とを備えており、該回転基盤部には、前記座金部が装着される側の下面部から下方に突出して、前記貫通係合部に各々係合される複数の切削係合突起が、前記貫通係合部と対応する位置に設けられており、前記切削係合突起を前記貫通係合部に挿入係合して、前記座金部を前記回転基盤部に装着した状態で、前記座金部の下面から下方に突出させた、前記回転基盤部の前記切削係合突起の先端の切削刃によって、前記木製構造材の表面を切削しながら、前記座金付きナットを回転させつつ前記筒状ナット部を前記緊結ボルトに螺着させる工程と、前記座金部が前記木製構造材の表面から突出しなくなる深さまで前記切削刃によって前記木製構造材の表面を切削した後に、
前記回転基盤部の前記座金部が装着される側の下面部における、前記座金部の装着領域の外周部分から下方に突出して、周方向に連続して、又は断続して設けられた当接凸部を、前記木製構造材の表面に当接させることで、或いは前記ナット締着具が連結される前記回転工具の外周面から延設して取り付けられたストッパー部を、前記木製構造材の表面に当接させることで、又は前記回転基盤部の下面を前記木製構造材の表面に当接さてストッパー部として機能させることで、前記回転基盤部の下方への移動をストップさせて、前記座金付きナットのみを下方に移動させながら、前記座金付きナットを回転させつつ前記筒状ナット部を前記緊結ボルトに螺着させることで、前記座金部を、前記木製構造材の表面から突出させることなく、前記切削刃によって切削された座堀部の底面に締着させる工程とを含む座金付きナットの締着方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のナット締着具又は座金付きナットの締着方法によれば、土台等の木製構造材の表面に形成された座堀部に座金付きナットを締着させた際に、座堀部の底面と座金部の下面とを隙間なく密着させることを可能にして、アンカーボルト等の緊結ボルトに十分な引張り力を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい一実施形態に係るナット締着具10及び座金付きナットの締着方法は、
図1及び
図2(a)〜(e)に示すように、例えば木造の住宅建築物において、骨組み構造を構成する木製構造材として、例えば鉄筋コンクリート製の基礎30の上に設置される土台31を、緊結ボルトである複数本のアンカーボルト32を用いて固定する際に、基礎30の上端面から上方に突出させたアンカーボルト32のボルト部32aに螺着した座金付きナット20を、土台31の上面に強固に且つ安定した状態で締着させるための器具や方法として用いられる。すなわち、本実施形態では、アンカーボルト32は、下部を基礎30の中に埋設して、基礎30の上端面からボルト部32aを上方に突出させた状態で取り付けらており、土台31には、アンカーボルト32の取り付け位置と対応する部分に、複数の貫通穴31aが形成されている。これらの貫通穴31aに、アンカーボルト32のボルト部32aを挿通し、挿通したボルト部32aの上端部分に座金付きナット20を螺着して土台31の上面に締着させることによって、基礎30の上端面に土台31を固定するようになっている。
【0016】
また、本実施形態では、ナット締着具10に設けられた切削係合突起12,13の先端の切削刃12a,13aを、座金付きナット20の座金部21の下面から突出させた状態で、座金付きナット20を回転させつつ、アンカーボルト32のボルト部32aが配設された土台31の貫通穴31aに向けて押し込むことで、座金付きナット20をボルト部32aに螺着させながら土台31の上面に座堀部33を形成すると共に、形成した座堀部33において、座金付きナット20を、土台31の上面から突出させることなく土台31に締着させるようになっている。さらに、本実施形態では、座金部21を座堀部33の底面33aに強固に密着させた状態で、座金付きナット20を土台31に締着させることを可能にして、アンカーボルトに十分な引張り力(テンション)を付与した状態で、基礎30の上端面に土台31を固定できるようになっている。
【0017】
そして、本実施形態のナット締着具10は、
図1及び
図2(a)〜(e)に示すように、土台31に貫通形成された貫通穴31aに配設されたアンカーボルト32に螺着される、筒状ナット部22と座金部21とからなる座金付きナット20の座金部21を、土台31の上面(表面)に突出させることなく締着させるための、回転基盤部11を備える締付け用の器具であって、座金付きナット20には、座金部21に、回転基盤部11を係合させる貫通係合部23,24が複数箇所に形成されており、回転基盤部11には、座金部21が装着される側の下面部から下方に突出して、貫通係合部23,24に各々係合される複数の切削係合突起12,13が、貫通係合部23,24と対応する位置に設けられていると共に、座金部21が装着される側と反対側の上面部に、インパクトレンチ等の回転工具50(
図7参照)に連結される連結係合部14が設けられている。
【0018】
また、回転基盤部11には、下面部における座金部21の装着領域の外周部分から下方に突出して、土台31の上面(表面)に当接させる当接凸部15が、周方向に連続して、又は断続して設けられており、切削係合突起12,13は、座金部21の貫通係合部23,24の貫通長さよりも長い長さで突出していることで、貫通係合部23,24に挿入係合された際に、先端の切削刃12a,13aが、座金部21の下面よりも下方に突出可能となっており、当接凸部15は、切削係合突起12,13よりも短い長さで突出していることで、当接凸部15の先端と切削係合突起12,13の先端との間に、座金部21の厚さ以上の高低差が保持されている。
【0019】
なお、上述の記載内容及び後述する記載内容おいて、ナット締着具10の回転基盤部11の下面や、座金付きナット20の座金部21の下面は、ナット締着具10や座金付きナット20を緊結ボルト32に向けて押し込む際に、木製構造材31と対向させる側の面を意味するものであり、例えば座金付きナット20を木製構造材31の下面に締着させる場合には、回転基盤部11の上面や座金付きナット20の上面を、切削係合突起12,13や切削刃12a,13aが突出する側の面である下面とすることができる。
【0020】
そして、本実施形態の座金付きナットの締着方法は、土台31に貫通形成された貫通穴31aに配設されたアンカーボルト32のボルト部32aに螺着される、筒状ナット部22と座金部21とからなる座金付きナット20の座金部21を、ナット締着具10を用いて、土台31の上面(表面)に突出させることなく締着させるための締着方法であって、座金付きナット20には、座金部21に、ナット締着具10の回転基盤部11を係合させる貫通係合部23,24が複数箇所に形成されており、ナット締着具10は、インパクトレンチ等の回転工具50(
図7参照)に連結される連結係合部14と、回転工具50による駆動力によって回転する回転基盤部11とを備えており、回転基盤部11には、座金部21が装着される側の下面部から下方に突出して、貫通係合部23,24に各々係合される複数の切削係合突起12,13が、貫通係合部23,24と対応する位置に設けられており、切削係合突起12,13を貫通係合部23,24に挿入係合して、座金部21を回転基盤部11に装着した状態で(
図2(a)、(b)参照)、座金部21の下面から下方に突出させた、回転基盤部11の切削係合突起12の先端の切削刃12aによって、土台31の上面を切削しながら、座金付きナット20を回転させつつ筒状ナット部22をアンカーボルト32のボルト部32aに螺着させる工程と(
図2(b)、(c)参照)、座金部21が土台31の上面から突出しなくなる深さまで切削刃12aによって土台31の上面を切削した後に(
図2(c)参照)、回転基盤部11の下方への移動をストップさせて、座金付きナット20のみを下方に移動させながら、座金付きナット20を回転させつつ筒状ナット部22をアンカーボルト32のボルト部32aに螺着させることで、座金部21を、土台31の上面から突出させることなく、切削刃12a、13aによって切削された座堀部33の底面33aに締着させる工程とを含んでいる(
図2(d)、(e)参照)。
【0021】
さらに、本実施形態では、座金部21が土台31の上面(表面)から突出しなくなる深さまで切削刃12a,13aによって土台31の表面を切削した後に、回転基盤部11の座金部21が装着される側の下面部における、座金部21の装着領域の外周部分から下方に突出して、周方向に連続して、又は断続して設けられた当接凸部15を、土台31の上面に当接させることで、回転基盤部11の下方への移動をストップさせるようになっている。
【0022】
本実施形態では、
図1(a)、(b)に示すように、土台31が固定される鉄筋コンクリート製の基礎30は、例えばべた基礎の立上り部であって、鉄筋が配筋された型枠の内部にコンクリートを打設することによって、容易に形成することができる。型枠を組み付ける際に、基礎30の延設方向に所定のピッチで複数のアンカーボルト32を配置することで、打設されたコンクートにアンカーボルト32の下部を埋設させた状態で、ボルト部32aが、基礎30の上端面から上方に突出して、所定の間隔をおいて複数箇所に取り付けられる。これらのアンカーボルト32のボルト部32aは、基礎30の上端面から、土台31の高さと同じか、又はこれよりも僅かに低い高さで突出して設けられている。これによって、ボルト部32aを貫通穴31aに挿通して、土台31を基礎30の上端面に設置した際に、ボルト部32aの先端が、土台31の上面から上方に突出しないようになっている。
【0023】
基礎30の上端面に固定される土台31は、好ましくは正方形の断面形状を備える木製の角材である。土台31には、アンカーボルト32の取り付け位置と対応する箇所として、これの長手方向にアンカーボルト32のボルト部32aのピッチと同様の中心間ピッチで配置されて、複数の貫通穴31aが貫通形成されている。これらの貫通穴31aは、座金付きナット20の筒状ナット部22の外径よりも一回り大きな内径を備えるように形成されている。これによって、座金付きナット20の筒状ナット部22を、貫通穴31aの中空内部において、アンカーボルト32のボルト部32aにスムーズに螺着することができるようになっている。
【0024】
アンカーボルト32のボルト部32aに螺着される座金付きナット20は、上述のように、筒状ナット部22と座金部21とからなる。筒状ナット部22は、
図1(a)、(b)及び
図3(a)、(b)に示すように、土台31に形成された貫通穴31aの内径よりも一回り小さな外径を備える中空円筒形状の部分であって、これの内側には、アンカーボルト32のボルト部32に設けられた雄ネジ部と同様のネジ径を有する、雌ネジ部が形成されている。筒状ナット部22の上端部から外側に張り出すようにして、座金部21が、一体として接合されて設けられている。
【0025】
座金部21は、本実施形態では、筒状ナット部22と同心円状に配置されて設けられた、円盤形状を備える部分であって、これの中央部分に、筒状ナット部22の中空内部と連通する連通口21aが開口していると共に、連通口21aよりも径方向外側部分に、ナット締着具10の切削係合突起12,13を挿通させて係合させる複数の貫通係合部23,24が、各々複数箇所(本第1実施形態では、第1貫通係合部23及び第2貫通係合部24が、2箇所ずつ合計4箇所)に形成されている。座金部21の下面は、切削刃の無い平滑な面となっている。
【0026】
本実施形態では、座金部21の径方向内側に配置される一対の第1貫通係合部23は、略矩形の断面形状を備える貫通穴となっており、長手方向を径方向に沿わせて配置して、連通口21aを挟んだ両側に各々設けられている。径方向外側に配置される一対の第2貫通係合部24は、座金部21の周縁部から径方向内側に向けて切り欠かれた、略コの字の断面形状を備える切欠き貫通穴となっており、切欠き方向を、一対の第1貫通係合部23が配置された径方向とは垂直な径方向に沿わせて配置して、連通口21aを挟んだ両側に各々設けられている。
【0027】
また、これらの第1貫通係合部23と第2貫通係合部24とは、筒状ナット部22の回転に伴って第1貫通係合部23が回転する際の径方向外側の縁部の回転軌跡23aと、第2貫通係合部24が回転する際の径方向内側の縁部の回転軌跡24aとが、重なるように形成されている。これによって、これらの第1貫通係合部23や第2貫通係合部24に、ナット締着具10の切削係合突起12,13を挿通させて、先端の切削刃12a,13aによって土台31の上面を切削する際に、筒状ナット部22の外側領域における座金部21の下面と対向する部分の全体を、むらなく略均等に切削させて、座金部21を形成することが可能になる。
【0028】
座金付きナット20を土台31の上面に締着させるナット締着具10は、上述のように、回転基盤部11と、切削係合突起12,13と、連結係合部14と、当接凸部15とを含んで形成されている。回転基盤部11は、座金付きナット20の座金部21よりも一回り大きな直径の、円盤形状を備える部分であって、これの平坦な下面から垂直下方に突出して、複数の切削係合突起12,13が設けられている。また、回転基盤部11における、座金付きナット20の座金部21よりも一回り大きくなった領域である外周縁部分から下方に突出して、当該外周縁部分に沿って円弧形状に延設する、一対の壁板状の当接凸部15が、対向配置されて設けられている。一対の壁板状の当接凸部15によって囲まれる、これらの内側部分が、座金付きナット20の座金部21を装着させる装着領域となっている。
【0029】
回転基盤部11の下面から下方に突出する切削係合突起12,13は、本第1実施形態では、座金付きナット20の座金部21に形成された第1貫通係合部23と対応する位置として、回転基盤部11の径方向内側に配置された一対の第1切削係合突起12と、第2貫通係合部24と対応する位置として、回転基盤部11の径方向外側に配置された一対の第2切削係合突起13とからなる。第1切削係合突起12は、第1貫通係合部23に挿通可能な大きさの、第1貫通係合部23と同様の略矩形の断面形状を備える棒状突起となっており、断面の長手方向を径方向に沿わせて配置して、回転基盤部11の中央部分を挟んだ両側に各々設けられている。第2切削係合突起12は、第2貫通係合部24に挿通可能な大きさの、略矩形の断面形状を備える棒状突起となっており、断面の長手方向を、一対の第1切削係合突起12が配置された径方向とは垂直な径方向に沿わせて配置して、回転基盤部11の中央部分を挟んだ両側に各々設けられている。
【0030】
また、第1切削係合突起12及び第2切削係合突起13は、その先端に切削刃12a,13aを備えると共に、座金部21における貫通係合部23,24の貫通長さに相当する、座金付きナット20の座金部21の厚さよりも、大きな突出長さで、回転基盤部11の下面から下方に突出して設けられている。これによって、第1切削係合突起12及び第2切削係合突起13を、第1貫通係合部23や第2貫通係合部24に各々挿通し、且つ回転基盤部11の下面に座金部21の上面を当接させて、当接凸部15の内側部分の装着領域に座金付きナット20の座金部21を装着した際に、少なくとも切削刃12a,13aの刃先を座金部21の下面から下方に突出させることで、ナット締着具10及び座金付きナット20を回転させながら、土台31の上面を切削できるようになっている。
【0031】
回転基盤部11の外周縁部分から下方に突出して設けられた当接凸部15は、上述のように、外周縁部分に沿って円弧形状に延設する、一対の壁板状の部分となっている。一対の当接凸部15は、これらの両側の端部の間に、切削屑を排出口となる切欠き部分16を各々形成して、断続させた状態で、径方向に対向配置されて設けられている。一対の切欠き部分16に臨むようにして、一対の第2切削係合突起13が各々配置されている。当接凸部15の円弧形状の先端面15aは、平滑な面となっており、これによって、当接凸部15の先端面15aを土台31の上面に当接させて、回転基盤部11の下方への移動をストップさせた後に、回転基盤部11をさらに回転させて座金付きナット20を締め付ける際に、当接凸部15を土台31の上面に沿ってスムーズに回転させることが可能になる。
【0032】
また、本実施形態では、当接凸部15は、回転基盤部11の平坦な下面から、切削係合突起12,13よりも短い長さで突出していることで、当接凸部15の先端と切削係合突起12,13の先端との間には、座金付きナット20の座金部21の厚さ以上の高低差が保持されるようになっている。これによって、回転基盤部11の下方への移動がストップするまで、座金部21の下面に突出させた切削係合突起12,13の切削刃12a,13aにより土台31の上面を切削した際に、土台31の上面から座金部21が突出しなくなる深さまで座堀部33を切削すること可能になって、土台31の上面から突出させることなく、座金部21を座堀部33の底面33aに締着させることが可能になる。
【0033】
回転基盤部11の切削係合突起12,13や当接凸部15が突出する側と反対側の上面部に設けられた連結係合部14は、インパクトレンチ等の回転工具50にナット締着具10を着脱可能に、且つ回転可能に連結する機能を有する公知の部分であって、例えば4角形又は6角形の断面形状を有する回転軸部や、回転工具50への着脱機構等を備えている。
【0034】
上述の構成を備える本実施形態のナット締着具10を用いて、土台31に形成された貫通穴31aに配設されたアンカーボルト32のボルト部32aに座金付きナット20を螺着することで、座金付きナット20の座金部21を土台31の上面に締着するには、インパクトレンチ等の回転工具50(図示せず)に連結係合部14を介してナット締着具10を連結した状態で、
図2(a)〜(e)に示すように、例えば作業員の手作業によって筒状ナット部22の下端部をボルト部32aの上端部に僅かに螺着させることにより、座金部21の下面を土台31の上面と離間させて立設させた座金付きナット20に対して、ナット締着具10の切削係合突起12,13を座金付きナット20の貫通係合部23,24に挿入係合すると共に、回転基盤部11の下面に座金部21の上面を当接させることによって、座金部21を回転基盤部11の装着領域に装着する(
図2(a)、(b)参照)。
【0035】
なお、座金付きナット20は、筒状ナット部22をボルト部32aに螺着させてから、座金部21をナット締着具10の回転基盤部11に装着させる必要は必ずしも無く、例えば、ナット締着具10の回転基盤部11に取り付けられた磁石を介して、回転基盤部11の下面に座金部21の上面を当接させると共に、切削係合突起12,13を貫通係合部23,24に挿入係合させて、座金部21をナット締着具10に予め装着してから、座金付きナット20をナット締着具10と共に回転させつつ土台31の貫通穴31aに向けて押し込むことで、筒状ナット部22をアンカーボルト32のボルト部32aに螺着させることもできる。
【0036】
貫通係合部23,24に挿入係合された切削係合突起12,13は、回転基盤部11の下面に座金部21の上面が当接するまで挿入された際に、先端の切削刃12a,13aを、座金部21の下面から下方に突出させることになる。これによって、座金付きナット20をナット締着具10と共に回転させつつ土台31の貫通穴31aに向けてさらに押し込むことで、切削刃12a,13aによって土台31の上面を切削しながら、筒状ナット部22をアンカーボルト32のボルト部32aにさらに螺着させてゆくことが可能になる(
図2(b)参照)。
【0037】
座金付きナット20をナット締着具10と共に回転させつつ、筒状ナット部22をボルト部32aにさらに螺着させてゆくことで、座金付きナット20とナット締着具10とは、切削刃12a,13aによって土台31の上面を切削しながら、下方に移動して行くことになる。ナット締着具10の下方への移動によって、ナット締着具10の当接凸部15が土台31の上面に当接すると、ナット締着具10の下方への移動がストップすると共に、切削係合突起12,13の切削刃12a,13aによる切削によって、土台31の上面には、当該上面から突出させない状態で座金部21を収容するのに十分な深さの座堀部33が形成される(
図2(c)参照)。
【0038】
ナット締着具10の当接凸部15が土台31の上面に当接すると共に、切削係合突起12,13の切削刃12a,13aによって十分な深さの座堀部33が形成された状態から、座金付きナット20とナット締着具10とを引き続き回転させて、ボルト部32aに筒状ナット部22をさらに螺着させてゆくと、ナット締着具10は、当接凸部15を土台31の上面に当接させつつ、回転基盤部11の下方への移動をストップさせた状態で回転し続ける。また、座金付きナット20は、筒状ナット部22をボルト部32aにさらに螺着させながら、座金部21の下面が座堀部33の底面33aに密着するまで、下方に移動してゆく(
図2(d)参照)。これによって、座金付きナット20は、座金部21の下面の全体を座堀部33の底面33aに安定した状態で隙間なく密着させて、土台31の上面に形成された座金部21に、強固に締着されることになる。またこれによって、座金付きナット20を介してボルト部32aの先端が座堀部33に締着されたアンカーボルト32に、十分な引張り力を付与することが可能になる。
【0039】
座金付きナット20の座金部21を、土台31の上面の座堀部33に締着させたら、座金部21の貫通係合部23,24から切削係合突起12,13を引き抜いて、ナット締着具10を座金付きナット20から取り外す。切削係合突起12,13を引き抜く際に、ナット締着具10に引き続き回転力を加えることで、座金付きナット20をアンカーボルト32のボルト部32aに増し締めして、座金付きナット20を座金部21にさらに強固に締着させることが可能になる。
【0040】
これらによって、本実施形態のナット締着具10や座金付きナットの締着方法によれば、土台31上面に形成された座堀部33に座金付きナット20を締着させた際に、座堀部33の底面33aと座金部21の下面とを隙間なく密着させることを可能にして、アンカーボルト32に十分な引張り力を付与することが可能になる。
【0041】
図4は、ナット締着具17の他の好ましい形態を例示するものである。
図4に示すナット締着具17では、回転基盤部18は、座金付きナット25の座金部26よりも一回り小さな平面形状を備えるように形成されており、当接凸部19は、回転基盤部18よりも外側に張り出した状態で設けられている。また
図4に示す形態では、座金付きナット25の座金部26の下面は、下方に向けて扁平な円錐形状となるように突出する、テーパー形状の下面となっている。座堀部34に、座金部26のテーパー形状の下面に対応させたテーパー形状の底面34aを、効率良く形成できるように、切削係合突起18a,18bが設けられた回転基盤部18の下面もまた、テーパー形状の下面となっている。
【0042】
図4に示すナット締着具17によれば、上記実施形態のナット締着具17と同様の作用効果を奏する他、回転基盤部18が、座金付きナット25の座金部26よりも一回り小さな平面形状を備えていることで、切削係合突起18a,18bによる切削で生じた座堀屑を排出し易くなる。
【0043】
図5は、本発明の他の好ましい座金付きナットの締着方法を例示するものである。
図5に示す締着方法では、ナット締着具51が連結される、ナット締着具51を回転駆動させる回転工具50に、これの外周面から延設して、回転基盤部52の下方への移動をストップさせるストッパー部53が設けられている。そして、座金付きナット54の座金部55が土台56の表面から突出しなくなる深さまで、切削係合突起57の切削刃57aによって土台56の表面を切削して座堀部58を形成した後に、回転工具50の外周面から延設して取り付けられたストッパー部53を、土台56の表面に当接させることで、回転基盤部52の下方への移動をストップさせるようになっている。
【0044】
図5に示す座金付きナットの締着方法によれば、上記実施形態の締着方法と同様の作用効果を奏する他、ストッパー部53を、回転させることなく土台56の表面に当接させて、回転基盤部52の下方への移動をストップすることができるので、さらに安定した状態で、座金付きナット54の座金部55を座堀部58に締着させることが可能になる。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、座金付きナットの座金部が締着される木製構造材は、土台である必要は必ずしも無く、梁や柱等の、その他の種々の骨組み構造を形成する構造材であっても良い。また、筒状ナット部が螺着される緊結ボルトは、アンカーボルトの他、羽子板ボルト等の、その他の種々の緊結ボルトであっても良い。さらに、回転基盤部の下面部における、座金部の装着領域の外周部分から下方に突出して設けられた当接凸部は、壁板状の部分である必要は必ずしもなく、突起状等の部分であっても良い。
【0046】
また、本発明の座金付きナットの締着方法は、例えば
図6(a)〜(c)に示すように、ナット締着具60の回転基盤部61には、当接凸部を設けることなく、切削係合突起62のみを、座金付きナット63の座金部64の厚さよりも僅かに大きな長さで、回転基盤部61の下面から下方に突出させておき、座金付きナット63の座金部64が土台65の表面から突出しなくなる深さまで、切削係合突起62の切削刃62aによって土台65の表面を切削して座堀部66を形成した後に、回転基盤部61の下面を土台65の表面に当接させることにより、ストッパー部として機能させて、回転基盤部61の下方への移動をストップさせるようにすることもできる。