(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
空調設備として、今回該当しない中小規模や湿度制御にあまりこだわらない空調対象では、フロン冷媒を用いた冷凍サイクルの蒸発器や凝縮器に直接温調すべき空気を当てる、直膨コイルを用いたパッケージ型空調機を用いる設備があるが、今回該当するのは中〜大規模の空調対象で、その制御性のよさから冷凍サイクルの蒸発器と温調すべき空気との間に水を搬送熱媒として利用する冷凍機を冷熱源とする空調システムである。
一般に、事務所ビルや工場など施設全体の冷熱源を1箇所にまとめ、各階などに分散した空調機などに搬送熱媒である冷水を供給循環する中央熱源方式の空調熱源配管システムにおいて、複数の冷凍機出入り配管と複数の供給系統とを水の分配性良く接続するヘッダを境界として、空調機など熱負荷との熱交換器がある側の冷水配管系等を(空調)二次側、冷水を冷却する熱源の冷水配管系統を(熱源)一次側と呼ぶ。
【0003】
一次側には、外気負荷や建屋負荷など季節や時間によって負荷が大きく変動することを見越し、冷凍負荷を分割して不要な際に一部を停止し冷凍エネルギーを削減するため台数分割するので、通常、複数の熱源(冷凍機)が設置される。同一機種の熱源が設置される場合もあるが、緊急時を考慮して、複数の動力源(電力、ガス、重油)による異なる種類の熱源で構成されるオフィスビルや工場も多い。電力を動力とする熱源には定速ターボ冷凍機やインバータターボ冷凍機などがあり、ガスや重油、蒸気を動力とする熱源には吸収式冷温水機や吸収式冷凍機がある。
空調機などの熱負荷処理用の熱交換器が、二次側冷水往温度7℃、二次側冷水還温度12℃として設計される場合、冷凍機の蒸発器に出入りする水温度は、冷水入口温度12℃、冷水出口温度7℃という設計になる。各熱源には、個別に冷水を搬送するために冷水ポンプが設置される。
【0004】
蒸発器側で冷水が冷却されると、一方で冷凍サイクルにより凝縮器側で冷却水に付与する冷却水熱量が発生し、これを大気に排熱する必要がある。冷凍機には凝縮器に直接大気を当てる空冷式もあるが、今回は冷却水を用いる水冷タイプ、つまり凝縮器側に冷却水と冷却塔を用いる冷凍機である。
一台の熱源に注目すると、一次側冷水配管に接続される冷水系統と、冷却水熱量を冷却塔で大気に放熱するための冷却水系統がある。
冷却水系統には、冷却水を搬送循環させるための冷却水ポンプと、冷却水熱量を水と空気による熱交換により大気に排熱させるための冷却塔ファンが設置されている。
従来の多くの設備では、冷却水流量は、常に冷凍機メーカが提示する冷却水流量設計値となる定流量であった。また、3台前後の複数の冷却塔が設置され、冷却塔出口温度による冷却塔台数制御方式が一般的であり、それぞれの冷却塔風量は定風量となる。
【0005】
冷凍機の冷凍サイクルにおいて、冷水側の蒸発器でガス状になった例えばフロン冷媒は、圧縮機で高圧とされ、冷却水側の凝縮器で冷却されて液体となる。冷媒は、膨張弁で低圧となり、蒸発器に流入する。圧力−比エンタルピー線図(ph線図)に基づいて知られているように、冷却水温度が低いと、凝縮器内の圧力を低下させることができ、圧縮機で上げるべき圧力を低くできるので、蒸発器で同じ冷熱量を得るにも圧縮機の仕事が減り省エネルギーでの冷凍運転ができ(成績係数COPが良くなることを指す)有利である。しかし、冷却水温度が低すぎると、凝縮器内の圧力がさらに低下し、凝縮圧力と蒸発圧力との差が小さくなりすぎて、膨張弁での低圧化が適切にできなくて蒸発器で蒸発しきれずに圧縮機に液バックしたり、冷凍能力不足になったりして冷凍サイクル内フロン冷媒の循環不良が発生する。そのため、凝縮圧力が低下しすぎないように、冷凍機メーカによって冷却水入口温度の下限値が設けられている。
【0006】
冷凍機で発生する冷却水熱量は、冷却塔内で冷却水と冷却水より湿球温度が低温の外気との熱交換にて大気に放熱される。
通常の冷却塔の場合、冷却塔ファンの風量が変化しない定風量方式となり、冷却塔は冷却水の冷却塔出口温度を冷却水配管内温度計によって計測され、当該冷却塔出口温度によって、冷却塔の運転台数を制御されて台数が変化する。3台の冷却塔で構成される場合、冷却水熱量が小さい場合は1台運転となる。さらに、外気湿球温度が低いと、冷却塔出口温度が低温となり、冷却水入口温度の下限値を下回るおそれがある。この対策として、冷却塔バイパス配管とバイパス弁とを設ける。バイパス弁開度を制御することで、冷却塔を通過しない高温の冷却水量を調整することができるため、冷凍機の冷却水入口温度が低温にならないように保護することができる。
【0007】
冷却塔変風量制御の場合は、空調機など二次側の熱負荷がある程度在れば、外気湿球温度が低い際には冷却塔ファンが停止し、外気を動かさないので冷却水との熱交換が阻害され、基本的に冷却水入口温度の下限値を下回ることはない。
ただし、古い熱源設備の更新時や、制御機器の故障時の対策、二次側の熱負荷の暫定的な停止などの理由により、冷却塔変風量制御であっても、冷却塔バイパス配管とバイパス弁とが設置されることもある。
バイパス回路により、冷却塔で冷却する水と冷却塔入口配管系統から直接冷却塔出口配管系統へ流れる水とに分けることができる。これにより、冷却塔で冷却された水とバイパスされた(冷却されない)水が冷却塔出口配管系統で混合されることで、冷凍機の冷却水入口温度を調整することができる。
【0008】
このように、従来の冷却水ポンプ定流量方式や、冷却塔ファン定風量の台数制御方式では、省エネルギーというよりも、冷凍機を安定的に運転するための制御であった。冷却水流量が冷凍機メーカの設計値の100%とするために、冷却水熱量が小さくなると、比例して冷却水ΔT(ΔTは温度差を意味する。)が小さくなる制御となる。冷却水ポンプ動力は、常時最大値となり、冷却塔運転台数に応じて冷却塔ファン動力が多少小さくなる。
【0009】
一方、冷却水が循環する冷凍機の一次側(本発明でいう冷却水系統)に冷却水ポンプ及び冷却塔を含む一次側設備(本発明でいう冷却水系統設備)が設けられ、冷水が循環する二次側(本発明でいう冷水配管系統一次側及び二次側を含めたもの)に熱負荷となる二次側設備(本発明で言う冷水配管系統)が設けられた冷凍機の冷却水制御方法において、冷凍機システム全体の熱源総合COP(Coeffident of Performance)を(冷凍機生産熱量÷熱源総合消費電力)により演算し、この熱源総合COPに基づいて冷却水ポンプ及び冷却塔ファンを制御する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、特許文献1では、冷凍機生産熱量を、冷水ΔT×冷水流量に基づいて演算し、熱源総合消費電力を、(冷凍機電力+冷水ポンプ電力+冷却水ポンプ電力+冷却塔ファン電力)に基づいて演算している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1では、冷水ポンプ電力を含む熱源総合消費電力が最小となるような冷却水出口温度設定値を算出しているが、本来、冷却水出口温度設定値と冷水ポンプ電力とには、直接的な関係はない。冷水ポンプ電力は、冷水流量と吐出圧力とに依存するため、冷却塔出口温度を上下させても、冷水ポンプ電力は変化しない。
【0012】
また、特許文献1では、冷凍機生産熱量、熱源総合消費電力(設備別電力)を、段落0022に記載のような瞬時値としている。
入力である生成熱量と、出力である消費電力(特に冷凍機電力)とには、ある程度の機械的もしくは機構的なタイムラグが存在するため、瞬時値では相関性が悪い。
定常状態であれば相関が取れるが、冷水負荷や冷水ポンプ圧力状態、外気湿球温度自体が変動するし、特許文献1の制御そのものが、冷却水出口温度を変化させるため、必然的に安定した定常状態にはなり得ないと思われる。
【0013】
そのため、見かけ上の瞬時値による熱源総合COP自体は良くなるのかもしれないが、積算値による正確な熱源総合COPを見ると、省エネルギー運転にはならないと予想される。その結果、むしろ最も省エネルギーになるポイントからずれたところで運転していると思われる。
また、特許文献1は、冷却水出口温度を積極的に変動させて、熱源総合COP(瞬時値)の動きを見つつ、さらに冷却水出口温度を変動させている。さらに言えば、指標としている熱源総合COPが瞬時値の時点で、どこまで真の熱源総合COPに近いのか怪しい。
また、特許文献1では、冷却水ΔTもフリーと思われるため、冷却水ΔT、冷却水流量ともに変動する不安定な制御方式と言える。
【0014】
本発明は、斯かる従来の問題点を解決するために為されたもので、その目的は、冷凍機メーカが提示する冷凍機の冷却水入口温度下限値及び冷却水ΔTとを用いて、冷却塔ファンの変風量制御及び冷却水ポンプの変流量制御を行うという単純明快な制御系を用いることで、熱源設備(特に、冷凍機、冷却水ポンプ、冷却塔ファン)が消費する冷凍機動力、冷却水ポンプ動力及び冷却塔ファン動力の総和である単独熱源総合消費エネルギーの最小化が図れる冷却水温度制御を行う冷凍機システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に係る発明は、冷凍機と、前記冷凍機の凝縮器の出口と入口とにそれぞれ接続される高温側冷却水配管及び低温側冷却水配管と、前記低温側冷却水配管の途中に設けられ吐出側を前記凝縮器の入口側に向けて配置される冷却水ポンプと、前記冷却水ポンプの吸込み側にある前記低温側冷却水配管及び前記高温側冷却水配管にそれぞれ接続される冷却塔と、前記冷却塔に設けられる冷却塔ファンと、前記冷却塔に接続される前記低温側冷却水配管に設けられ冷却水出口水温を計測する第一温度計と、前記第一温度計と前記冷却水ポンプとの間の前記低温側冷却水配管に設けられる第二温度計と、前記高温側冷却水配管に設けられる第三温度計と、前記冷凍機の冷却水入口温度下限値を冷却塔出口水温設定値として予め設定され、前記第一温度計の冷却塔出口水温の計測値と前記冷却塔出口水温設定値との偏差に基づいて演算し、前記冷却塔出口水温が前記冷却塔出口水温設定値になるように前記冷却塔ファンの風量を制御する変風量制御装置と、前記冷凍機の冷却水出口設定温度演算器と、前記冷凍機の冷却水出口温度調節器とからなる前記冷却水ポンプの流量を制御する変流量制御装置とを備え、前記冷凍機の冷却水出口設定温度演算器は、前記冷凍機の凝縮器の出口と入口とのあるべき温度差である冷却水温度差設計値を予め加算補正値として設定し、前記第二温度計の計測値である前記冷凍機の前記凝縮器の冷却水入口温度に、前記加算補正値つまり前記冷却水温度差設計値を加算した値を前記冷凍機の冷却水出口温度設定値として出力し、前記冷凍機の冷却水出口温度調節器は、前記第三温度計で計測される前記冷凍機の冷却水出口温度の計測値と、前記冷却水出口
設定温度演算器から都度入力されてくる冷却水出口温度設定値との偏差に基づいて演算し、前記冷凍機の冷却水出口温度の計測値が前記冷却水出口温度設定値になるように前記冷却水ポンプの流量を制御することを特徴とする。
【0016】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の冷凍機システムにおいて、前記変風量制御装置は、前記冷却塔出口水温設定値が、採用される冷凍機種類によって冷却水入口温度下限値が所定の範囲を持って設定され、その範囲から一値を選択し、当該冷却塔出口水温設定値になるように前記冷却塔ファンの風量を制御することを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の冷凍機システムにおいて、前記変風量制御装置は、前記冷却塔出口水温設定値を、インバータターボ冷凍機の冷却水入口温度下限値である12℃〜15℃の何れかの値とすることを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の冷凍機システムにおいて、前記変風量制御装置は、前記冷却塔出口水温設定値を、定速ターボ冷凍機の冷却水入口温度下限値である18℃〜22℃の何れかの値とすることを特徴とする。
【0017】
請求項5に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の冷凍機システムにおいて、前記変風量制御装置は、前記冷却塔出口水温設定値を、吸収式冷凍機の冷却水入口温度下限値である15℃〜26℃の何れかの値とすることを特徴とする。
請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の冷凍機システムにおいて、前記冷凍機の冷却水出口設定温度演算器は、前記冷凍機の凝縮器設計での冷却水温度条件であり前記冷凍機の凝縮器の出口と入口との温度差である冷却水温度差設計値を5℃、又は5.5℃のどちらかの値を取ることを特徴とする。
請求項7に係る発明は、請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の冷凍機システムにおいて、前記低温側冷却水配管の第一温度計及び第二温度計の間と、前記高温側冷却水配管と、の間には、バイパス弁を備え前記冷却塔を通過しないバイパス管が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、冷却塔ファンと冷却水ポンプやとを、それぞれインバータを付与して回転数制御可能化し、汎用の温度計や調節器を制御器として追加するだけで、冷却塔ファンの変風量制御及び冷却水ポンプの変流量制御が行えるので、特別な機器(例えば、熱量と電力量の計測が必要で都度多数データの収集演算が必要なCOP演算や、最適解を演算によってリアルタイム探索するシミュレータ演算を回路に有するコントローラ)が不要で、安価な一般的な制御機器だけで、省エネルギー性能の高い冷却水温度制御が可能な冷凍機システムを構築できる。
【0019】
本発明によれば、計算により求められた年間消費エネルギーが、定速ターボ冷凍機の場合、冷却水ポンプと冷却塔ファンが定流量及び定風量である定流量方式を100%とすると、冷却水ポンプを変流量及び冷却塔ファンを変流量として、システムCOPの最適解をシミュレーションして求めながら制御した理想的な変流量制御方式の、理想年間消費エネルギーが85%と計算される場合、本発明の年間消費エネルギーは86%と、比較しても1〜2%程度の差しか生じないことから、本発明による省エネルギー性能が、従来提案されている複雑な制御システムと比較してもなんら劣らない省エネルギー性能を有していることが確認された。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係る冷却水温度制御を行う冷凍機システムを示す。
冷凍機11は、冷却水が循環する冷却水側配管15に連絡する凝縮器13と、冷水が循環する冷水側配管19とに連絡する蒸発器17とを備えている。冷凍機11は、冷水側配管19の入口出口冷水温度は、空調機など図示しない熱負荷冷却熱交換器の設計などと関係して決められるが、通常の空調用途の冷水ならば、12℃入口、7℃出口の冷水温度にする場合が多い。この冷水温度によって、冷却水入口温度も決まる場合がある。本実施形態では、冷却水入口温度の下限値=12℃として説明する。ここで、冷却水入口温度の下限値=12℃については、冷凍機の機種や同様機種でもメーカによって異なる場合がある。前述のように、冷凍機11は冷却水を用いて凝縮器での排熱を熱交換する水冷タイプである。
【0022】
冷却水側配管15は、高温側冷却水配管15a及び低温側冷却水配管15bを介して冷却水を大気と直接又は間接的に接触させて冷却する冷却塔21に連絡している。冷却塔21は、インバータ(INVとも称する)23aを設けた冷却塔ファン23を備えている。
冷却塔21の出口側に連なる低温側冷却水配管15bには、冷却塔21の出口側に第一温度計が設けられている。第一温度計25は、変風量制御装置27に連絡している。変風量制御装置27は、指示調節計(役割としては、温度指示調節計:Temperature Indicating Controller、略してTIC)であっても、その指示調節計と同じ演算回路をラダー回路で組んだPLC(Programmable Logic Controller)であっても、演算回路を通常のコンピュータプログラム言語で作成するコントローラであるDDC(Direct Didital Control)などであってもよく、第一温度計25の冷却塔出口水温の計測値と指示調節計の冷却塔出口水温設定値との偏差を演算し、その偏差に基づいて出力値を演算し、冷却塔出口水温が冷却塔出口水温設定値になるように冷却塔ファン23のインバータ23aの風量を調節する。
【0023】
本実施形態では、変風量制御装置27において設定値を12℃としてある。従って、変風量制御装置27は、第一温度計25の計測値(冷却塔出口温度)と設定値12℃との偏差を演算し、その偏差に基づいてPID制御演算を行って出力値を算出し、冷却塔ファン23のインバータ23aへ周波数に割り付けた出力信号を入力させて、冷却塔ファン23のインバータ23aの周波数を調整し、冷却塔ファン23の回転数を制御して冷却塔ファン23の風量を調節する。
低温側冷却水配管15bには、当該配管の途中に設けられ吐出側を凝縮器13の入口側に向けて配置される冷却水ポンプ31と、第一温度計25と冷却水ポンプ31との間の低温側冷却水配管15bに設けられる第二温度計29が設けられている。
高温側冷却水配管15aには、第三温度計33が設けられている。
【0024】
第二温度計29及び第三温度計33の計測値は、変流量制御装置35に入力される。変流量制御装置35は、
図2に示されるように、冷却水出口設定温度演算器1と冷却水出口温度調節器2とで構成される。冷却水出口設定温度演算器1も、冷却水出口温度調節器2も、例えば、それぞれ指示調節計(役割としては、温度指示調節計:Temperature Indicating Controller、略してTIC)であっても、その2つの指示調節計と同じ演算回路をラダー回路で組んだPLC(Programmable Logic Controller)であっても、演算回路を通常のコンピュータプログラム言語で作成するコントローラであるDDC(Direct Didital Control)などであってもよい。
冷却水出口設定温度演算器35aには、第二温度計29によって計測された冷凍機11の冷却水入口温度の計測値PVが入力される。ここで、PVはProcess Valueの略号である。
【0025】
また、冷却水設定温度演算器35aには、冷凍機11の凝縮器13の出口と入口とのあるべき温度差であるメーカの冷却水温度差設計値(空調用途の通常値は5℃、又は、5.5℃)が予め加算補正値として設定入力されている。この冷却水設定温度演算器35aでは、第二温度計29の冷却水入口水温の計測値PVに、逐一メーカの冷却水温度差設計値(空調用途の通常値は5℃、又は、5.5℃)である加算補正値が加算演算され、その算出値に基づいて、受け取る冷却水出口温度調節器35bに設定された取りうる冷却水設定温度範囲に割り付けられた出力信号を演算し出力する。
冷却水出口温度調節器35bには、第三温度計33によって計測される冷凍機11の冷却水出口温度の計測値PVが入力される。また、冷却水出口温度調節器35bには、冷却水設定温度演算器35aから、第二温度計29の冷却水入口水温の計測値PVに、逐一メーカの冷却水温度差設計値(空調用途の通常値は5℃、又は、5.5℃)である加算補正値が加算演算された出力信号として、冷凍機の冷却水出口設定温度が設定値SPとして入力される。ここで、SPはSet Pointの略号である。
【0026】
冷却水出口温度調節器35bは、第二温度計29の冷却水入口水温の計測値PVと、冷却水設定温度演算器35aから冷却水出口温度調節器35bに送られてきて逐一設定される冷却水出口設定温度の設定値SPとの偏差を演算し、その偏差に基づいてPID(PI,PD含む)制御演算を行って出力値を算出し、冷却水ポンプ31のインバータ31aへ周波数に割り付けた出力信号を入力させて、冷却水ポンプ31のインバータ31aの周波数を調整し、冷却水ポンプ31の回転数を制御して冷凍機11の凝縮器13の冷却水出口水温が冷却水出口設定温度値になるように制御を行う。ここで、冷却水ΔTである冷却水温度設計値(この場合5℃)については、冷凍機の機種や同様機種でもメーカによって異なる場合がある。
【0027】
変流量制御装置35は全体として、冷凍機11の冷却水出入口温度差を所定値に保つように冷却水ポンプ31のインバータ31aの周波数を調整し、冷却水ポンプ31の回転数を制御して変流量制御を行う。変流量制御装置35は、第三温度計33で冷凍機11の冷却水出口温度を計測して冷却水出口温度PVを得ると共に、第二温度計29で冷凍機11の冷却水入口温度PVを得て、且つ逐一メーカの冷却水温度差設計値である加算補正値を加算して、冷凍機11の冷却水出口温度SPを算出する。変流量制御装置35は、第三温度計33による冷凍機11の冷却水出口温度PVと、前記逐一演算して得られる冷却水出口温度SPとの偏差に基づいて、PID(PI,PD含む)制御演算を行って出力値を算出し、冷却水ポンプ31のインバータ31aへ周波数に割り付けた出力信号を入力させて、冷却水ポンプ31のインバータ31aの周波数を調整し、冷却水ポンプ31の回転数を決定する。
冷水側配管19には、冷水ポンプ41が設けられている。
【0028】
次に、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態では、冷凍機11の冷却水入口温度の下限値を、冷凍機メーカの冷却水入口温度の下限値として、冷却塔21の出口温度の設定値に、例として12℃を設定し、通年冷却塔21の出口温度を12℃以上として、冷却塔ファン23の変風量を行い、冷却水温度差は、冷凍機メーカの凝縮器出入り口温度差設計値を目指して冷却水ポンプ31を制御することで、夏場ピーク時には冷凍機11は定格近くで運転され、冷却水温度も夏場の高温となっていても、冷却塔出口水温は成り行きながらできるだけ低温になるように制御されながら、冷却水変流量制御ができ、中間期やそれよりも外気湿球温度が低い時期には、冷凍機11のトラブルのない範囲で、外気湿球温度に応じて変化する冷却水入口温度に応じて凝縮温度を低下させ、単独熱源総合消費エネルギーを、単純な制御機器で最小化させることができる。
【0029】
本実施形態でももちろん、冷却水量は絞りすぎると凝縮器13での排熱が取りきれず凝縮器内が高圧になって安全装置が働き、停止してはいけない冷凍機を緊急停止させてしまうので冷凍機メーカの指定する冷却水量下限値(例えば、定格の冷却水量の50%量を下限とする)以上で運転を行う。
このように、本実施形態によれば、冷却塔ファン23をインバータ化し、冷却塔ファン23の変風量制御を行うと共に、冷却水ポンプ31をインバータ化し、冷却水ポンプ31の変流量制御を行うことが可能となるので、冷凍機11の更なる省エネルギーを行うことが可能となる。
本実施形態では、メーカの冷却水流量の下限値を50%とし、冷却水流量50%に相当する冷却水ポンプ31のインバータ31aを実測などよって求め、冷却水ポンプ31のインバータ31aの下限値周波数として設定する。同様に、冷却水流量上限値を100%とし、冷却水流量100%に相当する冷却水ポンプ31のインバータ31aを実測などよって求め、冷却水ポンプ31のインバータ31aの上限値周波数として設定する。
【0030】
本実施形態では、冷却水の流量、温度場ともに、冷凍機メーカの設計条件を基準とするために、安定する動きになる。
また、本実施形態において、単独熱源総合消費エネルギーは、冷水熱量と外気湿球温度との2つで、決定できるので、単独熱源総合消費エネルギー=(冷凍機動力+冷却水ポンプ動力+冷却塔ファン動力)として表現できる。従って、特許文献1のように、熱源総合消費電力に冷水ポンプ動力を加味しない。本実施形態では、冷水ポンプ動力は、冷水流量だけではなく、空調二次側の制御状況や熱源運転台数によって変動する圧力にも依存するため、本実施形態では、クローズした冷却水側と切り離している。
しかも、外気湿球温度はそれほど変化しないと考えると、せいぜい冷凍機負荷に応じて、冷却水流量がほぼ比例して変動するに過ぎず、特許文献1に比して安定した制御方法である。
【0031】
なお、上記実施形態では、動力が電力である冷凍機を想定して説明したが、本発明はこれに限らず、ガスや重油が動力である冷凍機にも適用される。
動力が電力の場合、補機動力を含めて、電力(kW)の単位で統一できる。
動力が電力以外の場合、単純に合算できないため、一次エネルギーに換算(MJ/h)してその総和で評価することができる。
以上を踏まえて、本発明では、熱源総合消費電力を『熱源総合消費エネルギー』として表現できる。
上述したように、評価関数である『単独熱源総合消費エネルギー』の単位は、基本的にはエネルギー(kW又はMJ/h)とするが、二次エネルギー(電力であればkW、ガスであればm
3/h)に換算係数を乗じることでコスト(円/h)やCO
2排出量(kg−CO
2/h)としての最適化の検討や評価を行うことができる。
【0032】
次に、本実施形態における冷却塔ファン23の変風量制御について説明する。
図1に示すように、冷却塔21の出口温度が冷凍機メーカ下限値になるように、冷却塔ファン23の回転数をインバータ23aによる変風量制御を行う。
冷却水入口温度と冷凍機本体の動力特性を
図3に示す。冷凍機11の冷却水入口温度が低いほど、冷凍機本体消費電力率が小さくなる。
図3において冷水熱量比率(冷凍機負荷率)は80%である。
【0033】
冷却塔ファン23の風量が大きいほど、冷凍機11の冷却水入口温度を低くすることができるが、冷却塔ファン23の動力は大きくなる。
冷凍機11の冷却水入口温度と各機器動力の関係を表1に示す。この表より、冷却水入口温度が低いほど、単独熱源総合消費エネルギーは小さくなる。このことから、冷却水入口温度を低くするために、できるだけ冷却塔21の風量を大きくする。ただし、冷却水入口温度の下限値以上とする。
これらの関係を表1に示す。
【0035】
次に、本実施形態における冷却水ポンプ31の変流量制御について説明する。
図1に示すように、冷却水ΔTが冷凍機メーカ設計値になるように、冷却水ポンプ31の回転数をインバータ31aによる変流量制御とする。
冷却水流量は、冷凍機メーカ下限値以上、定格流量以下とする。
冷却水ΔTを設計値の5℃より大きくすると、冷却水流量が小となり、冷却水ポンプ動力が小さくなる。
一方、冷却水流量が小となると、
図4に示すように、冷凍機本体消費電力率が大きくなる。
図4において冷水熱量比率(冷凍機負荷率)は80%である。
冷却水ΔTと各機器動力の関係を表2に示す。この表より、冷却水ΔTは大きくしても小さくしても必ずしも単独熱源総合消費エネルギーが小さくなるとは限らない。冷却水ΔTは設計値(通常5℃)とする。
【0037】
次に、
図1に示す本発明の第1実施形態に係る冷凍機システムと、
図5に示す通常の制御方式を採用した冷凍機システムと、
図6に示す理想単独熱源総合消費エネルギー値を求めるために想定した冷凍機システムとを対比し、本発明の第一実施形態に係る冷凍機システムの省エネルギー性能について説明する。
計算条件:
冷水生成能力500USRT(1758kW、6330MJ/h)のインバータターボ冷凍機を対象とし、外気湿球温度12℃、冷水熱量比率70%(冷水熱量350USRT)の場合で想定する。
また、冷凍機メーカの条件は、冷却水入口温度≧12℃、冷却水ΔTの設計値=5℃とする。
表3は、
図1に示す本発明の第1実施形態に係る冷凍機システムと、
図5に示す通常の制御方式を採用した冷凍機システムと、
図6に示す理想単独熱源総合消費エネルギー値を求めるために想定した冷凍機システムとを対比した結果をしめす。
【0039】
図5に示す通常の制御方式を採用した冷凍機システムを説明する。
冷却塔は3台構成とし、通常制御では冷却塔出口温度による台数制御とする。
冷却塔風量は、1台あたりの風量比率である。
通常制御では、定風量制御であり風量は100%固定である。
冷却塔ファン制御は、冷却塔出口温度による台数制御を行う方式が採用されている。実際の制御ではヒステリシスな台数制御とするが、シミュレーションでは定常状態として下記条件で運転台数を決める。冷却塔出口温度をPVとする。
【0040】
PV<16.5℃の場合に、1台運転とし、16.5℃≦PV≦21.5℃の場合に2台運転とし、PV≦21.5℃の場合に3台運転とする。
バイパス弁制御は、冷凍機冷却水入口温度が13.5℃以上になるようにバイパス弁を開閉する。
冷却水ポンプ制御は、冷凍機と連動でON/OFFするのみ。設計冷却水流量の一定流量とする。
【0041】
次に、
図5に示す通常の制御方式を採用した冷凍機システムと本発明の第一実施形態に係る冷凍機システムとの比較を行う。
通常の制御方法制御では、冷却塔2台運転となり、本発明の第一実施形態に係る冷凍機システムより消費電力は小さく、冷却塔出口温度は高い。
冷却塔出口温度は、本実施形態の方が低く、冷凍機冷却水入口温度も低いため、冷却塔ファン動力は大きいが、冷凍機の動力は小さい。
冷却水流量は、本発明の第一実施形態に係る冷凍機システムの方が小さく、冷却水ポンプ動力は小さい。
冷却塔ファン、冷却水ポンプ、冷凍機本体の中で、最も消費エネルギーが大きいのは冷凍機本体である。
【0042】
冷凍機本体動力は、
図5に示す通常の制御方法では146kW、本発明の第一実施形態に係る冷凍機システムでは118kWであるから、本発明の第一実施形態に係る冷凍機システムの方が小さく、合計した単独熱源総合消費エネルギーも
図5に示す通常の制御方法では182kW、本発明の第一実施形態に係る冷凍機システムでは144kWであるから、本発明の第一実施形態に係る冷凍機システムの方が小さい。
【0043】
次に、
図6に示す理想単独熱源総合消費エネルギー値を求めるために想定した冷凍機システムを説明する。
図6で求められる理想単独熱源総合消費エネルギー値は、冷却塔ファン風量と冷却水流量と2つの制御変数として想定される全ての組み合わせについて熱量収支や各温度条件の計算を行い、単独熱源総合消費エネルギーが最小となる組み合わせをピックアップすることで算出する。専用のシミュレータを用いると実現できるが、制御装置が高価となり現実的ではないため、具体的な制御装置や制御方法は考慮しない。
冷凍機メーカの冷却水流量下限値を50%とすると、50%≦L≦100%、1%刻みで全ての計算を行う。
冷却塔ファンの風量は、10%≦L≦100%、1%刻みで全ての計算を行う。
【0044】
通常の制御方式の単独熱源総合消費エネルギーを100%とすると、本実施形態で79%、理想値を求めた想定システムでは78%となる。省エネルギー率としては
、100%−79%=31%、また理想値78%と比べても1%の差しかないため、十分な省エネルギー性能であることが分かる。
本発明の第一実施形態に係る冷凍機システムの簡単な制御で、ほぼ理想値と同程度の省エネルギー運転を実現できることがわかる。
ここで、簡単な制御と言うのは、一般的な市販の温度指示調節計(TIC)で実現できるということである。COPを計算するコントローラや最適解を探索するシミュレータといった特別な仕組みが不要である。これは、制御に用いる設定値が『冷却水△T=設計値一定』と『冷却塔出口温度SP=冷凍機メーカ下限値』とに単純化しているためである。
【0045】
図7は、本発明の第二実施形態に係る冷凍機システムを示す。
本実施形態では、中間や冬において、冷却水の冷え過ぎに留意して、立ち上げ時のトラブルを回避するために、バイパス弁15dを備えた冷却水の冷却塔バイパス管15cを設け、冷却水出口混合後の温度を第四温度計15eで計測してバイパス弁15dの開閉をTIC15fで制御する、冬期温度補償回路を設けた例を示す。
本実施形態においても、
図1に示す実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0046】
なお、上記各実施形態では、冷却水入口温度の下限値=12℃として、あるメーカのインバータターボ冷凍機などの低温冷却水を受け入れる冷凍機を例に説明したが、本発明はこれに限らず、部分負荷特性に優れたインバータターボ冷凍機と呼ばれる、熱負荷に対して圧縮機の容量制御を、圧縮機の回転速度変化で行うタイプの冷凍機では、冷却水入口温度の下限値は、12〜15℃のいずれかの値を取る。また、圧縮機の容量制御を、圧縮機の回転を一定速として別な手立てで行う、定速ターボ冷凍機の場合では、冷却水入口温度の下限値は、18〜22℃のいずれかの値を取る。また、吸収式冷凍機の場合では、冷却水入口温度の下限値は、15〜26℃のいずれかの値を取る。
【0047】
また、上記各実施形態では、冷却水ΔT(設計値、通常5℃)として説明した。冷却水ΔTは、一般的に、設計条件として、入口温度32℃、出口温度37℃が採用されるため、温度差としては5℃となる。なお、設計条件とは、夏期の最も暑い条件(外気湿球温度27℃想定)における冷水生成能力最大(つまり100%負荷)である。冷却水入口温度、冷却水出口温度ともに、最も高温時である。JISの『B 8621:2011』の『遠心冷凍機』の『表 A.3・標準定格性能試験の温度条件』に冷凍能力試験が記載されており、冷却水入口温度は32±0.3℃、出口温度37℃とある。
【0048】
また、上記各実施形態では、冷却水量は冷凍機メーカの下限値(例えば、冷却水量の下限値50%)以上で運転を行うと説明した。その理由を説明する。
上記各実施形態において、冷却水流量の上限値は、設計流量である100%である。また、冷却水流量の下限値は、40%〜60%を想定している。凝縮器チューブ内の流速が早すぎると圧力損失が増加し、冷却水ポンプ動力増大、チューブ内面にエコージョン発生するという問題がある。チューブ内流速が遅いと、伝熱性能の低下と冷却水内の異物沈殿による腐食発生という問題がある。以上の理由により、チューブ内流速は通常1m/s〜3.6m/sの範囲となり、冷却水流量の下限は一般に50%程度、上限は100%である。