(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0013】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0014】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
【0015】
(実施の形態1)
<シングルゲート型のメモリ素子>
本実施の形態の半導体装置を図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態の半導体装置の要部断面図である。
図2は、
図1の半導体装置の一部を拡大して示した部分拡大断面図である。
【0016】
本実施の形態の半導体装置は、不揮発性メモリ(不揮発性記憶素子、フラッシュメモリ、不揮発性半導体記憶装置)を備えた半導体装置である。
図1には、不揮発性メモリを構成するメモリ素子MC1が形成された領域であるメモリ素子形成領域の要部断面図が示されている。なお、
図1は、メモリ素子MC1を構成するゲート電極MG1の延在方向(
図1の紙面に垂直な方向)に垂直な断面が示されている。また、
図2には、
図1のうち、半導体基板SBとゲート電極MG1とそれらの間の絶縁膜MZとが拡大して示されている。
【0017】
図1に示される不揮発性メモリのメモリ素子(記憶素子、メモリセル)MC1は、シングルゲート型のメモリ素子である。このメモリ素子MC1は、電荷蓄積部にトラップ性絶縁膜(電荷を蓄積可能な絶縁膜)を用いている。また、メモリ素子MC1は、nチャネル型のトランジスタ(すなわちnチャネル型のMISFET)であるとして説明するが、導電型を反対にして、pチャネル型のトランジスタ(すなわちpチャネル型のMISFET)とすることもできる。
【0018】
図1に示されるように、例えば1〜10Ωcm程度の比抵抗を有するp型の単結晶シリコンなどからなる半導体基板(半導体ウエハ)SBには、素子を分離するための素子分離領域(図示せず)が形成されており、この素子分離領域で分離(規定)された活性領域に、p型ウエルPW1が形成されている。p型ウエルPW1は、p型不純物が導入されたp型の半導体領域である。p型ウエルPW1は、主としてメモリ素子形成領域の半導体基板SBに形成されている。メモリ素子形成領域のp型ウエルPW1には、
図1に示されるようなメモリ素子MC1が形成されている。
【0019】
以下、メモリ素子形成領域に形成されたメモリ素子MC1の構成を具体的に説明する。
【0020】
図1に示されるように、メモリ素子MC1は、半導体基板SB上(すなわちp型ウエルPW1上)に形成された絶縁膜MZと、絶縁膜MZ上に形成されたゲート電極(メモリゲート電極)MG1と、ゲート電極MG1の側壁上に形成されたサイドウォールスペーサSWと、半導体基板SBのp型ウエルPW1中に形成されたソースまたはドレイン用のn型の半導体領域(EX,SD)とを有している。すなわち、p型ウエルPW1の表面上には、電荷蓄積部を有するゲート絶縁膜として機能する絶縁膜MZを介して、ゲート電極MG1が形成されている。
【0021】
絶縁膜MZは、半導体基板SB(p型ウエルPW1)とゲート電極MG1との間に介在しており、ゲート絶縁膜として機能する膜であるが、内部に電荷蓄積部を有する絶縁膜である。この絶縁膜MZは、複数の絶縁膜を積層した積層絶縁膜である。具体的には、絶縁膜MZは、絶縁膜MZ1と、絶縁膜MZ1上に形成された絶縁膜MZ2と、絶縁膜MZ2上に形成された絶縁膜MZ3と、絶縁膜MZ3上に形成された絶縁膜MZ4と、絶縁膜MZ4上に形成された絶縁膜MZ5との積層膜からなる。ここでは、絶縁膜MZ1は、酸化シリコン膜(酸化膜)または酸窒化シリコン膜(酸窒化膜)からなり、絶縁膜MZ2は、窒化シリコン膜(窒化膜)からなり、絶縁膜MZ3は、酸化シリコン膜(酸化膜)からなり、絶縁膜MZ4は、酸窒化シリコン膜(酸窒化膜)からなり、絶縁膜MZ5は窒化シリコン膜(窒化膜)からなる。
【0022】
なお、図面を見やすくするために、
図1では、絶縁膜MZ1と絶縁膜MZ2と絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ4と絶縁膜MZ5との積層膜からなる絶縁膜MZを、単に絶縁膜MZとして図示している。実際には、
図2の拡大図に示されるように、絶縁膜MZは、絶縁膜MZ1と絶縁膜MZ2と絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ4と絶縁膜MZ5との積層膜からなる。
【0023】
絶縁膜MZのうち、絶縁膜MZ2は、電荷蓄積機能を有する絶縁膜である。すなわち、絶縁膜MZのうち、絶縁膜MZ2は、電荷を蓄積するための絶縁膜であり、電荷蓄積層(電荷蓄積部)として機能する。つまり、絶縁膜MZ2は、絶縁膜MZ中に形成されたトラップ性絶縁膜である。ここで、トラップ性絶縁膜とは、電荷の蓄積が可能な絶縁膜を指す。このように、トラップ準位を有する絶縁膜(電荷蓄積層)として、絶縁膜MZ2が用いられている。このため、絶縁膜MZは、その内部に電荷蓄積部(ここでは絶縁膜MZ2)を有する絶縁膜とみなすことができる。
【0024】
絶縁膜MZのうち、トラップ性絶縁膜である絶縁膜MZ2の上下に位置する絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ1とは、トラップ性絶縁膜に電荷を閉じ込めるための電荷ブロック層または電荷閉じ込め層として機能することができる。トラップ性絶縁膜である絶縁膜MZ2を、電荷ブロック層(または電荷閉じ込め層)として機能する絶縁膜MZ1,MZ3で挟んだ構造を採用することで、絶縁膜MZ2への電荷の蓄積が可能となる。
【0025】
メモリ素子形成領域に形成された絶縁膜MZは、メモリ素子MC1のゲート絶縁膜として機能し、電荷保持(電荷蓄積)機能を有している。従って、絶縁膜MZは、メモリトランジスタの電荷保持機能を有するゲート絶縁膜として機能できるように、少なくとも3層の積層構造を有し、電荷ブロック層として機能する外側の層(ここでは絶縁膜MZ1,MZ3)のポテンシャル障壁高さに比べ、電荷蓄積部として機能する内側の層(ここでは絶縁膜MZ2)のポテンシャル障壁高さが低くなる。これは、絶縁膜MZ1を酸化シリコン膜により形成し、絶縁膜MZ2を窒化シリコン膜により形成し、絶縁膜MZ3を酸化シリコン膜により形成することで、達成できる。
【0026】
絶縁膜MZは、電荷蓄積層(ここでは絶縁膜MZ2)をトップ絶縁膜とボトム絶縁膜とで挟んだ積層構造を有しており、ここでは、トップ絶縁膜として絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ4と絶縁膜MZ5との積層膜LMを用い、ボトム絶縁膜として、絶縁膜MZ1を用いている。
【0027】
絶縁膜MZにおいて、絶縁膜MZ2上の絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ2の下の絶縁膜MZ1のそれぞれのバンドギャップは、絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ1との間の電荷蓄積層(ここでは絶縁膜MZ2)のバンドギャップよりも大きい必要がある。すなわち、絶縁膜MZ1と絶縁膜MZ3のそれぞれのバンドギャップは、トラップ性絶縁膜である絶縁膜MZ2のバンドギャップよりも大きい。そうすることで、電荷蓄積層としての絶縁膜MZ2を挟む絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ1とが、それぞれ電荷ブロック層(または電荷閉じ込め層)として機能することができる。酸化シリコン膜は、窒化シリコン膜のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有しているため、絶縁膜MZ2として窒化シリコン膜を採用し、絶縁膜MZ1および絶縁膜MZ3としてそれぞれ酸化シリコン膜を採用することができるが、絶縁膜MZ1としては、酸窒化シリコン膜を採用してもよい。
【0028】
本実施の形態では、絶縁膜MZは、絶縁膜MZ1と絶縁膜MZ2と絶縁膜MZ3とに加えて、更に、絶縁膜MZ3上の絶縁膜MZ4と、絶縁膜MZ4上の絶縁膜MZ5も有している。絶縁膜MZ4は、絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ5との間に介在しており、絶縁膜MZ5は、絶縁膜MZ4とゲート電極MG1との間に介在している。絶縁膜MZ4は、絶縁膜MZ3のバンドギャップよりも小さなバンドギャップを有している。すなわち、絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ3のバンドギャップよりも小さい。絶縁膜MZ5は、絶縁膜MZ4のバンドギャップよりも小さなバンドギャップを有している。すなわち、絶縁膜MZ5のバンドギャップは、絶縁膜MZ4のバンドギャップよりも小さい。従って、絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ4と絶縁膜MZ5のそれぞれのバンドギャップを比べると、絶縁膜MZ3のバンドギャップが最も大きく、絶縁膜MZ5のバンドギャップが最も小さく、絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ3のバンドギャップよりも小さく、かつ、絶縁膜MZ5のバンドギャップよりも大きい。酸窒化シリコン膜のバンドギャップは、酸化シリコン膜のバンドギャップよりも小さく、かつ、窒化シリコン膜のバンドギャップよりも大きいため、絶縁膜MZ3として酸化シリコン膜を採用し、絶縁膜MZ4として酸窒化シリコン膜を採用し、絶縁膜MZ5として窒化シリコン膜を採用することができる。
【0029】
なお、絶縁膜MZ3としては、酸化シリコン膜がより好ましいが、酸窒化シリコン膜を用いることも可能である。但し、絶縁膜MZ3として酸窒化シリコン膜を用いる場合は、絶縁膜MZ3を構成する酸窒化シリコン膜の窒素(N)濃度を、絶縁膜MZ4を構成する酸窒化シリコン膜の窒素(N)濃度よりも小さくする。これにより、絶縁膜MZ3,MZ4としてそれぞれ酸窒化シリコン膜を用いる場合でも、絶縁膜MZ3のバンドギャップを、絶縁膜MZ4のバンドギャップよりも大きくし、かつ、絶縁膜MZ2のバンドギャップよりも大きくすることができる。これは、酸窒化シリコン膜のバンドギャップは、その酸窒化シリコン膜の窒素濃度が大きくなるほど、小さくなるからである。
【0030】
また、絶縁膜MZ5としては、窒化シリコン膜がより好ましいが、酸窒化シリコン膜を用いることも可能である。但し、絶縁膜MZ5として酸窒化シリコン膜を用いる場合は、絶縁膜MZ5を構成する酸窒化シリコン膜の窒素(N)濃度を、絶縁膜MZ4を構成する酸窒化シリコン膜の窒素(N)濃度よりも大きくする。これにより、絶縁膜MZ4,MZ5としてそれぞれ酸窒化シリコン膜を用いる場合でも、絶縁膜MZ5のバンドギャップを、絶縁膜MZ4のバンドギャップよりも小さくすることができる。
【0031】
ゲート電極MG1は、導電膜からなるが、ここではシリコン膜により形成されており、このシリコン膜は、好ましくはポリシリコン(多結晶シリコン)膜である。ゲート電極MG1を構成するシリコン膜は、n型不純物が導入されたドープトポリシリコン膜とすることができるが、他の形態として、p型不純物が導入されたドープトポリシリコン膜、あるいは、不純物を意図的には導入していないノンドープのポリシリコン膜とすることもできる。
【0032】
ゲート電極MG1の側壁上には、側壁絶縁膜としてサイドウォールスペーサ(側壁絶縁膜、サイドウォール)SWが形成されている。サイドウォールスペーサSWは、絶縁膜により形成されており、例えば、酸化シリコン膜、または窒化シリコン膜、あるいはそれらの積層膜により形成されている。
【0033】
メモリ素子形成領域のp型ウエルPW1には、メモリ素子MC1用のLDD(Lightly doped Drain)構造のソース・ドレイン領域(ソースまたはドレイン用の半導体領域)として、n
−型半導体領域(エクステンション領域、LDD領域)EXとそれよりも高不純物濃度のn
+型半導体領域(ソース・ドレイン領域)SDとが形成されている。n
+型半導体領域SDは、n
−型半導体領域EXよりも不純物濃度が高くかつ接合深さが深い。
【0034】
n
−型半導体領域EXはゲート電極MG1に自己整合的に形成され、n
+型半導体領域SDはゲート電極MG1の側壁上に設けられたサイドウォールスペーサSWに自己整合的に形成されている。このため、低濃度のn
−型半導体領域EXはゲート電極MG1の側壁上のサイドウォールスペーサSWの下に形成され、高濃度のn
+型半導体領域SDは低濃度のn
−型半導体領域EXの外側に形成されている。すなわち、n
−型半導体領域EXは、ゲート電極MG1の側壁上に形成されたサイドウォールスペーサSWの下に位置して、チャネル形成領域とn
+型半導体領域SDとの間に介在している。
【0035】
半導体基板SB(p型ウエルPW1)における、ゲート電極MG1の下の領域が、チャネルが形成される領域、すなわちチャネル形成領域となる。ゲート電極MG1下の絶縁膜MZの下のチャネル形成領域には、しきい値電圧調整用の半導体領域(p型半導体領域またはn型半導体領域)が必要に応じて形成されている。
【0036】
メモリ素子形成領域の半導体基板SB(p型ウエルPW1)において、チャネル形成領域を挟んで互いに離間する領域に、n
−型半導体領域EXが形成され、n
−型半導体領域EXの外側(チャネル形成領域から離れる側)に、n
+型半導体領域SDが形成されている。つまり、n
−型半導体領域EXは、チャネル形成領域に隣接しており、n
+型半導体領域SDは、チャネル形成領域からn
−型半導体領域EXの分だけ離間し(チャネル長方向に離間し)、かつn
−型半導体領域EXに接する位置に形成されている。
【0037】
n
+型半導体領域SDおよびゲート電極MG1の表面(上面)上には、サリサイド(Salicide:Self Aligned Silicide)技術を用いて、金属シリサイド層SLが形成されていれば、より好ましい。金属シリサイド層SLは、コバルトシリサイド層、ニッケルシリサイド層または白金添加ニッケルシリサイド層などとすることができる。金属シリサイド層SLは、不要であれば、その形成を省略することもできる。
【0038】
次に、メモリ素子MC1よりも上層の構造について説明する。
【0039】
半導体基板SB上には、ゲート電極MG1およびサイドウォールスペーサSWを覆うように、層間絶縁膜として絶縁膜IL1が形成されている。絶縁膜IL1は、酸化シリコン膜の単体膜、あるいは、窒化シリコン膜と該窒化シリコン膜上に該窒化シリコン膜よりも厚く形成された酸化シリコン膜との積層膜などからなる。絶縁膜IL1の上面は平坦化されている。
【0040】
絶縁膜IL1にはコンタクトホール(開口部、貫通孔)CTが形成されており、コンタクトホールCT内に、導電体部(接続用導体部)として導電性のプラグPGが埋め込まれている。
【0041】
プラグPGは、コンタクトホールCTの底部および側壁(側面)上に形成された薄いバリア導体膜と、このバリア導体膜上にコンタクトホールCTを埋め込むように形成された主導体膜とで形成されているが、図面の簡略化のために、
図1では、プラグPGを構成するバリア導体膜と主導体膜(タングステン膜)とを一体化して示してある。なお、プラグPGを構成するバリア導体膜は、例えば、チタン膜、窒化チタン膜、あるいはそれらの積層膜とすることができ、プラグPGを構成する主導体膜は、タングステン膜とすることができる。
【0042】
コンタクトホールCTおよびそれに埋め込まれたプラグPGは、n
+型半導体領域SDの上部や、ゲート電極MG1の上部などに形成される。コンタクトホールCTの底部では、半導体基板SBの主面の一部、例えばn
+型半導体領域SD(の表面上の金属シリサイド層SL)の一部や、ゲート電極MG1(の表面上の金属シリサイド層SL)の一部などが露出され、その露出部にプラグPGが接続される。なお、
図1においては、n
+型半導体領域SD(の表面上の金属シリサイド層SL)の一部が、コンタクトホールCTの底部で露出して、そのコンタクトホールCTを埋めるプラグPGと電気的に接続された断面が示されている。
【0043】
プラグPGが埋め込まれた絶縁膜IL1上には配線M1が形成されている。配線M1は、例えばダマシン配線(埋込配線)であり、絶縁膜IL1上に形成された絶縁膜IL2に設けられた配線溝に埋め込まれている。配線M1は、プラグPGを介して、n
+型半導体領域SDまたはゲート電極MG1などと電気的に接続される。なお、
図1においては、配線M1の例として、n
+型半導体領域SDにプラグPGを介して電気的に接続された配線M1が示されている。更に上層の配線および絶縁膜も形成されているが、ここではその図示および説明は省略する。また、配線M1およびそれよりも上層の配線は、ダマシン配線(埋込配線)に限定されず、配線用の導電体膜をパターニングして形成することもでき、例えばタングステン配線またはアルミニウム配線などとすることもできる。
【0044】
メモリ素子MC1は、内部に電荷蓄積部を有するゲート絶縁膜(ここでは絶縁膜MZ)を備えた電界効果トランジスタである。メモリ素子MC1は、絶縁膜MZ中の電荷蓄積層(電荷蓄積部)である絶縁膜MZ2に電荷を蓄積または保持することにより、情報の記憶が可能である。
【0045】
例えば、メモリ素子MC1の書き込み動作時には、絶縁膜MZ中の絶縁膜MZ2に電子を注入することによりメモリ素子MC1を書き込み状態とする。ここでは、半導体基板(p型ウエルPW1から絶縁膜MZ中の絶縁膜MZ2に電子を注入することにより、メモリ素子MC1を書き込み状態とすることができる。また、メモリ素子MC1の消去動作時には、絶縁膜MZ中の絶縁膜MZ2にホール(正孔)を注入することにより、メモリ素子MC1を消去状態とする。ここでは、ゲート電極MG1から絶縁膜MZ中の絶縁膜MZ2にホール(正孔)を注入することにより、メモリ素子MC1を消去状態とすることができる。消去動作時におけるゲート電極MG1から絶縁膜MZ中の絶縁膜MZ2への電荷(ここではホール)の注入は、FN(Fowler Nordheim)トンネリングを利用して行うことができる。メモリ素子MC1の読み出し動作時には、メモリ素子MC1のしきい値電圧が書き込み状態と消去状態とで異なることを利用して、メモリ素子MC1が書き込み状態と消去状態のいずれの状態であるかを判別することができる。
【0046】
次に、本実施の形態の半導体装置の製造方法について説明する。
【0047】
図3は、本実施の形態の半導体装置の製造工程の一部を示すプロセスフロー図である。
図4〜
図15は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図であり、上記
図1に相当する領域の断面図が示されている。
【0048】
半導体装置を製造するには、
図4に示されるように、まず、例えば1〜10Ωcm程度の比抵抗を有するp型の単結晶シリコンなどからなる半導体基板(半導体ウエハ)SBを用意(準備)する(
図3のステップS1)。それから、半導体基板SBの主面に、活性領域を規定(画定)する素子分離領域(図示せず)を形成する。この素子分離領域は、酸化シリコンなどの絶縁膜からなり、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)法などを用いて形成することができる。例えば、半導体基板SBの主面に素子分離用の溝を形成した後、この素子分離用の溝内に、例えば酸化シリコンなどからなる絶縁膜を埋め込むことで、素子分離領域を形成することができる。
【0049】
次に、
図5に示されるように、メモリ素子形成領域の半導体基板SBにp型ウエルPW1を形成する(
図3のステップS2)。
【0050】
p型ウエルPW1は、例えばホウ素(B)などのp型の不純物を半導体基板SBにイオン注入することなどによって形成することができる。p型ウエルPW1は、半導体基板SBの主面から所定の深さにわたって形成される。
【0051】
次に、例えばフッ酸(HF)水溶液を用いたウェットエッチングなどにより半導体基板SBの表面の自然酸化膜を除去することによって、半導体基板SBの表面を洗浄して清浄化する。これにより、半導体基板SB(p型ウエルPW1)の表面(シリコン面)が露出される。
【0052】
次に、
図6に示されるように、半導体基板SBの表面上に、すなわちp型ウエルPW1の表面上に、絶縁膜MZを形成する(
図3のステップS3)。
【0053】
絶縁膜MZは、メモリ素子(MC1)のゲート絶縁膜用の絶縁膜であり、内部に電荷蓄積層(電荷蓄積部)を有する絶縁膜である。この絶縁膜MZは、絶縁膜MZ1と、絶縁膜MZ1上に形成された絶縁膜MZ2と、絶縁膜MZ2上に形成された絶縁膜MZ3と、絶縁膜MZ3上に形成された絶縁膜MZ4と、絶縁膜MZ4上に形成された絶縁膜MZ5と、を有する積層膜(積層絶縁膜)からなる。
【0054】
なお、図面を見やすくするために、
図6では、絶縁膜MZ1と絶縁膜MZ2と絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ4と絶縁膜MZ5とからなる絶縁膜MZを、単に絶縁膜MZとして図示しているが、実際には、
図6において点線の円で囲まれた領域の拡大図に示されるように、絶縁膜MZは、絶縁膜MZ1と絶縁膜MZ2と絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ4と絶縁膜MZ5との積層膜からなる。
【0055】
このため、ステップS3の絶縁膜MZ形成工程は、絶縁膜MZ1形成工程と、絶縁膜MZ2形成工程と、絶縁膜MZ3形成工程と、絶縁膜MZ4形成工程と、絶縁膜MZ5形成工程とを含んでいる。ステップS3では、絶縁膜MZ1形成工程が行われ、それから、絶縁膜MZ2形成工程が行われ、それから、絶縁膜MZ3形成工程が行われ、それから、絶縁膜MZ4形成工程が行われ、それから、絶縁膜MZ5形成工程が行われる。
【0056】
ここで、絶縁膜MZ1と絶縁膜MZ3とは、それぞれ酸化シリコン膜(酸化膜)により形成することができ、絶縁膜MZ2と絶縁膜MZ5とは、窒化シリコン膜(窒化膜)により形成することができ、絶縁膜MZ4は、酸窒化シリコン膜(酸窒化膜)により形成することができる。
【0057】
ステップS3の絶縁膜MZ形成工程の具体例について説明する。ステップS3の絶縁膜MZ形成工程は、次のようにして行うことができる。
【0058】
すなわち、まず、半導体基板SBの表面上に、すなわちp型ウエルPW1の表面上に、絶縁膜MZ1を形成する。
【0059】
絶縁膜MZ1は、酸化シリコン膜からなり、熱酸化処理により形成することができる。この際の酸化処理(熱酸化処理)には、ISSG(In Situ Steam Generation)酸化を用いれば、より好ましい。絶縁膜MZ1としての酸化シリコン膜の膜厚(形成膜厚)は、例えば2〜5nm程度とすることができる。他の形態として、熱酸化により酸化シリコン膜(絶縁膜MZ1)を形成した後に、熱窒化処理またはプラズマ窒化処理を行うことで、その酸化シリコン膜(絶縁膜MZ1)を窒化して、窒素を導入することもできる。
【0060】
それから、絶縁膜MZ1上に絶縁膜MZ2を形成する。絶縁膜MZ2は、窒化シリコン膜からなり、LPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法などを用いて形成することができる。そのときの成膜温度は、例えば600〜800℃程度とすることができる。形成された窒化シリコン膜(絶縁膜MZ2)は、膜中に多量のトラップ準位を有している。絶縁膜MZ2としての窒化シリコン膜の膜厚(形成膜厚)は、例えば4〜8nm程度とすることができる。
【0061】
それから、絶縁膜MZ2上に、絶縁膜MZ3を形成する。絶縁膜MZ3は、酸化シリコン膜からなり、LPCVD法などを用いて形成することができる。そのときの成膜温度は、例えば600〜800℃程度とすることができる。他の形態として、LPCVD法などを用いて窒化シリコン膜(絶縁膜MZ2)を形成した後に、熱酸化処理を行ってその窒化シリコン膜(絶縁膜MZ2)の表面に酸化シリコン膜(絶縁膜MZ3)を形成することも可能である。そのときの熱酸化温度は、例えば800〜1000℃程度とすることができる。
【0062】
絶縁膜MZ3の膜厚は、比較的薄くすることが望ましく、1〜2nm程度であれば特に好適である。絶縁膜MZ3の膜厚が薄すぎると、絶縁膜MZ2に蓄積された電荷がゲート電極MG1側へ抜けてしまう現象が生じやすくなり、絶縁膜MZ2の電荷の保持機能が劣化する虞がある。一方、絶縁膜MZ3が厚すぎると、消去動作時にゲート電極MG1側から絶縁膜MZ2への電荷(ここではホール)の注入が阻害されて、消去速度が低下する虞がある。このため、絶縁膜MZ3の膜厚を最適化することにより、具体的には、1〜2nm程度にすることにより、絶縁膜MZ2の電荷の保持機能の向上と、消去速度の向上とを、両立しやすくなる。絶縁膜MZ3のバンドギャップの大きさ(幅)は、絶縁膜MZ2のバンドギャップの大きさ(幅)よりも大きい。具体的には、酸化シリコン膜からなる絶縁膜MZ3のバンドギャップは8〜9eVであり、これは、窒化シリコン膜(絶縁膜MZ2)のバンドギャップ(5.5eV程度)よりも大きい。
【0063】
それから、絶縁膜MZ3上に、絶縁膜MZ4を形成する。絶縁膜MZ4は、酸窒化シリコン膜からなり、LPCVD法などを用いて形成することができる。そのときの成膜温度は、例えば600〜800℃程度とすることができ、成膜用のガスは、例えば、シリコン源(シリコンソースガス)としてジクロロシラン(H
2SiCl
2)を用い、酸素源(酸素ソースガス)として一酸化二窒素(N
2O)を用い、窒素源(窒素ソースガス)としてアンモニア(NH
3)を用いることができる。
【0064】
詳細は後述するが、絶縁膜MZ4は、絶縁膜MZ3,MZ5の各膜厚を抑制しながら、絶縁膜MZ3,MZ4,MZ5の合計膜厚を稼ぐための膜である。このため、絶縁膜MZ4の膜厚は、目標とする特性または性能に応じて幅広く選択可能な範囲を有しているが、絶縁膜MZ3,MZ5の各膜厚よりも厚いことがより好ましく、例えば4〜6nm程度とすることができる。また、絶縁膜MZ4を構成する酸窒化シリコン膜の窒素濃度は、絶縁膜MZ3の窒素濃度よりも大きく、かつ、絶縁膜MZ2,MZ5の窒素濃度よりも小さいが、例えば10〜30原子%程度とすることができ、これを屈折率に換算すると、1.5〜1.7程度である。
【0065】
それから、絶縁膜MZ4上に、絶縁膜MZ5を形成する。絶縁膜MZ5は、窒化シリコン膜からなり、LPCVD法などを用いて形成することができる。そのときの成膜温度は、例えば600〜800℃程度とすることができる。
【0066】
絶縁膜MZ5の膜厚は、比較的薄くすることが望ましく、2〜3nm程度であれば特に好適である。絶縁膜MZ5の膜厚が薄すぎると、所望のエネルギーバンド構造が形成されにくくなり、絶縁膜MZ5の膜厚が厚すぎると、後述するように、絶縁膜MZの信頼性が低下する懸念がある。また、絶縁膜MZ5を窒化シリコン膜により形成した場合は、絶縁膜MZ5の膜厚が厚すぎると、絶縁膜MZ5に電荷が蓄積されてしまう虞がある。このため、絶縁膜MZ5の膜厚を最適化することが望ましく、具体的には、2〜3nm程度にすることが望ましい。
【0067】
絶縁膜MZ5に、電荷蓄積層である絶縁膜MZ2と同じ膜(ここでは窒化シリコン膜)を用いることにより、絶縁膜MZ5のバンドギャップの大きさを抑制することができ、それによって、後でゲート電極MG1を形成したときに、ゲート電極MG1と絶縁膜MZ5との間に形成される価電子帯側のエネルギー障壁を低くすることができ、例えば1.8eV程度にすることができる。
【0068】
このようにしてステップS3が行われ、メモリ素子形成領域において、半導体基板SB(p型ウエルPW1)上に、絶縁膜MZ1、絶縁膜MZ2、絶縁膜MZ3、絶縁膜MZ4および絶縁膜MZ5が下から順に積層された状態となる。すなわち、メモリ素子形成領域において、半導体基板SB(p型ウエルPW1)上に、絶縁膜MZ1と絶縁膜MZ2と絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ4と絶縁膜MZ5との積層膜からなる絶縁膜MZが形成された状態となる。
【0069】
次に、
図7に示されるように、半導体基板SBの主面(主面全面)上に、すなわち絶縁膜MZ上に、ゲート電極MG1形成用の導電膜として、シリコン膜PSを形成する(
図3のステップS4)。
【0070】
シリコン膜PSは、多結晶シリコン膜からなり、LPCVD法などを用いて形成することができる。そのときの成膜温度は、例えば600℃程度とすることができ、成膜用のガス(ソースガス)は、例えばシラン(SiH
4)ガスを用いることができる。シリコン膜PSの膜厚は、好ましくは30〜200nm、例えば100nm程度とすることができる。成膜時はシリコン膜PSをアモルファスシリコン膜として形成してから、その後の熱処理でアモルファスシリコン膜を多結晶シリコン膜とすることもできる。シリコン膜PSは、n型不純物が導入されたドープトポリシリコン膜とすることができるが、他の形態として、p型不純物が導入されたドープトポリシリコン膜、あるいは、不純物を意図的には導入していないノンドープのポリシリコン膜とすることもできる。シリコン膜PSにn型またはp型の不純物を導入する場合は、シリコン膜PSの成膜時または成膜後にn型またはp型の不純物を導入することができる。シリコン膜PSの成膜時にn型またはp型の不純物を導入する場合には、シリコン膜PSの成膜用ガスにドーピングガス(n型またはp型不純物添加用のガス)を含ませることで、n型またはp型不純物が導入されたシリコン膜PSを成膜することができる。シリコン膜PSの成膜後にn型またはp型の不純物を導入する場合は、シリコン膜PSを成膜した後に、イオン注入によりn型またはp型不純物をシリコン膜PSに導入する。この際、シリコン膜PS全体に対してイオン注入を行うか、あるいはイオン注入阻止マスクとしてのフォトレジスト層をシリコン膜PS上に形成してから、メモリ素子形成領域のシリコン膜PSに対してイオン注入を行うことができる。
【0071】
次に、
図8に示されるように、シリコン膜PSをフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングすることにより、ゲート電極MG1を形成する(
図3のステップS5)。このステップS5のパターニング工程は、例えば次のようにして行うことができる。
【0072】
すなわち、まず、シリコン膜PS上にフォトレジストパターン(図示せず)をフォトリソグラフィ法を用いて形成する。このフォトレジストパターンは、メモリ素子形成領域におけるゲート電極MG1形成予定領域に形成される。それから、このフォトレジストパターンをエッチングマスクとして用いて、シリコン膜PSをエッチング(好ましくはドライエッチング)してパターニングする。その後、このフォトレジストパターンを除去し、
図8には、この状態が示されている。
【0073】
このようにして、ステップS5でシリコン膜PSがパターニングされ、
図8に示されるように、パターニングされたシリコン膜PSからなるゲート電極MG1が形成される。つまり、メモリ素子形成領域では、ゲート電極MG1となる部分以外のシリコン膜PSがエッチングされて除去されることで、ゲート電極MG1が形成される。ゲート電極MG1は、絶縁膜MZ上に形成される。すなわち、パターニングされたシリコン膜PSからなるゲート電極MG1が、p型ウエルPW1の表面上に、絶縁膜MZを介して形成される。
【0074】
次に、
図9に示されるように、絶縁膜MZのうち、ゲート電極MG1で覆われずに露出する部分をエッチングによって除去する(
図3のステップS6)。このステップS6では、好ましくはウェットエッチングを用いることができる。エッチング液としては、例えばフッ酸溶液などを用いることができる。
【0075】
ステップS6では、ゲート電極MG1の下に位置する絶縁膜MZは、除去されずに残存して、メモリ素子MC1のゲート絶縁膜となる。すなわち、ゲート電極MG1の下に残存する絶縁膜MZが、メモリ素子MC1のゲート絶縁膜(電荷蓄積部を有するゲート絶縁膜)となる。つまり、ステップS6で、ゲート電極MG1の下に残存してゲート電極MG1と半導体基板SB(p型ウエルPW1)との間に介在する絶縁膜MZが、メモリ素子MC1のゲート絶縁膜(電荷蓄積部を有するゲート絶縁膜)となる。
【0076】
また、ステップS5でシリコン膜PSをパターニングする際のドライエッチングによってゲート電極MG1で覆われない部分の絶縁膜MZの一部がエッチングされる場合もあり得る。すなわち、ステップS5でシリコン膜PSをパターニングする際のドライエッチングと、ステップS6のエッチング(好ましくはウェットエッチング)とにより、ゲート電極MG1で覆われない部分の絶縁膜MZが除去される場合もあり得る。
【0077】
なお、図面を見やすくするために、
図9でも、絶縁膜MZ1と絶縁膜MZ2と絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ4と絶縁膜MZ5とからなる絶縁膜MZを、単に絶縁膜MZとして図示しているが、実際には、
図9において点線の円で囲まれた領域の拡大図に示されるように、絶縁膜MZは、絶縁膜MZ1と絶縁膜MZ2と絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ4と絶縁膜MZ5との積層膜からなる。
【0078】
次に、
図10に示されるように、イオン注入法などにより、メモリ素子形成領域の半導体基板SB(p型ウエルPW1)にn
−型半導体領域EXを形成する(
図3のステップS7)。
【0079】
すなわち、ステップS7では、メモリ素子形成領域におけるp型ウエルPW1のゲート電極MG1の両側の領域に、リン(P)またはヒ素(As)などのn型不純物をイオン注入することにより、n
−型半導体領域EXを形成する。このn
−型半導体領域EXを形成するためのイオン注入の際には、ゲート電極MG1がマスク(イオン注入阻止マスク)として機能することができるため、n
−型半導体領域EXは、ゲート電極MG1の側壁に自己整合して形成される。従って、メモリ素子形成領域の半導体基板SB(p型ウエルPW1)において、ゲート電極MG1の両側(ゲート長方向での両側)にn
−型半導体領域EXが形成されることになる。
【0080】
次に、
図11に示されるように、ゲート電極MG1の側壁上に、側壁絶縁膜として、絶縁膜からなるサイドウォールスペーサSWを形成する(
図3のステップS8)。
【0081】
ステップS8のサイドウォールスペーサSW形成工程は、例えば次のようにして行うことができる。すなわち、半導体基板SBの主面全面上に、ゲート電極MG1を覆うように、サイドウォールスペーサSW形成用の絶縁膜を形成する。このサイドウォールスペーサSW形成用の絶縁膜は、例えば、酸化シリコン膜または窒化シリコン膜、あるいはそれらの積層膜などからなり、CVD法などを用いて形成することができる。それから、このサイドウォールスペーサSW形成用の絶縁膜を、異方性エッチング技術によりエッチバック(エッチング、ドライエッチング、異方性エッチング)する。これにより、
図11に示されるように、ゲート電極MG1の側壁上に選択的にサイドウォールスペーサSW形成用の絶縁膜が残存して、サイドウォールスペーサSWが形成される。
【0082】
次に、イオン注入法などにより、メモリ素子形成領域の半導体基板SB(p型ウエルPW1)にn
+型半導体領域SDを形成する(
図3のステップS9)。
【0083】
すなわち、ステップS9では、メモリ素子形成領域におけるp型ウエルPW1のゲート電極MG1およびサイドウォールスペーサSWの両側の領域に、リン(P)またはヒ素(As)などのn型不純物をイオン注入することにより、n
+型半導体領域SDを形成する。このn
+型半導体領域SDを形成するためのイオン注入の際には、ゲート電極MG1とその側壁上のサイドウォールスペーサSWとがマスク(イオン注入阻止マスク)として機能することができるため、n
+型半導体領域SDは、ゲート電極MG1の側壁上のサイドウォールスペーサSWの側面に自己整合して形成される。従って、メモリ素子形成領域の半導体基板SB(p型ウエルPW1)において、ゲート電極MG1とその側壁上のサイドウォールスペーサSWとからなる構造体の両側(ゲート長方向での両側)にn
+型半導体領域SDが形成されることになる。n
+型半導体領域SDは、n
−型半導体領域EXよりも不純物濃度が高くかつ接合深さが深い。
【0084】
このようにして、n
−型半導体領域EXとそれよりも高不純物濃度のn
+型半導体領域SDとにより、メモリ素子形成領域の半導体基板SB(p型ウエルPW1)に、メモリ素子MC1のソースまたはドレイン用の半導体領域(ソース・ドレイン領域)として機能するn型の半導体領域が形成される。
【0085】
また、ゲート電極MG1を構成するシリコン膜は、n
−型半導体領域EX形成用のイオン注入工程やn
+型半導体領域SD形成用のイオン注入工程でn型の不純物が導入され得る。
【0086】
次に、ソースまたはドレイン用の半導体領域(n
−型半導体領域EXおよびn
+型半導体領域SD)などに導入された不純物を活性化するための熱処理である活性化アニールを行う(
図3のステップS10)。ステップS10の熱処理は、例えば、900℃〜1100℃の熱処理温度で、不活性ガス雰囲気中、より好ましくは窒素雰囲気中で行うことができる。
【0087】
このようにして、メモリ素子MC1が形成される。ゲート電極MG1がメモリ素子MC1のゲート電極として機能し、ゲート電極MG1の下の絶縁膜MZが、メモリ素子MC1のゲート絶縁膜として機能する。そして、メモリ素子MC1のソースまたはドレインとして機能するn型の半導体領域(不純物拡散層)が、n
+型半導体領域SDおよびn
−型半導体領域EXにより形成される。
【0088】
次に、サリサイド(Salicide:Self Aligned Silicide)プロセスにより、金属シリサイド層SLを形成する。金属シリサイド層SLは、次のようにして形成することができる。
【0089】
まず、必要に応じてエッチング(例えば希フッ酸などを用いたウェットエッチング)を行う。これにより、n
+型半導体領域SDの上面(表面)とゲート電極MG1の上面とを清浄化(露出)させる。このときのエッチングは、自然酸化膜を除去する程度の軽いエッチングとすることができる。それから、
図12に示されるように、n
+型半導体領域SDおよびゲート電極MG1の各上面(表面)上を含む半導体基板SBの主面全面上に、ゲート電極MG1およびサイドウォールスペーサSWを覆うように、金属膜MEを形成(堆積)する。金属膜MEは、単体の金属膜(純金属膜)または合金膜とすることができ、例えばコバルト(Co)膜、ニッケル(Ni)膜、または、ニッケル白金合金膜などからなる。金属膜MEは、スパッタリング法などを用いて形成することができる。
【0090】
それから、半導体基板SBに対して熱処理を施すことによって、n
+型半導体領域SDおよびゲート電極MG1の各上層部分(表層部分)を金属膜MEと反応させる。これにより、
図13に示されるように、n
+型半導体領域SDおよびゲート電極MG1の各上部(上面、表面、上層部)に、シリコンと金属の反応層である金属シリサイド層SLがそれぞれ形成される。金属シリサイド層SLは、例えばコバルトシリサイド層(金属膜MEがコバルト膜の場合)、ニッケルシリサイド層(金属膜MEがニッケル膜の場合)、または、白金添加ニッケルシリサイド層(金属膜MEがニッケル白金合金膜の場合)とすることができる。ここで、白金添加ニッケルシリサイドとは、白金を含有するニッケルシリサイド、すなわちニッケル白金シリサイドに対応している。その後、未反応の金属膜MEを除去する。
図13には、この段階の断面図が示されている。未反応の金属膜MEを除去した後に、更に熱処理を行うこともできる。
【0091】
このように、いわゆるサリサイドプロセスを行うことによって、金属シリサイド層SLを形成することができる。n
+型半導体領域SDおよびゲート電極MG1の上部に金属シリサイド層SLを形成することによって、ソース、ドレインやゲート電極の抵抗(拡散抵抗やコンタクト抵抗など)を低抵抗化することができる。金属シリサイド層SLは、不要であれば、その形成を省略することもできる。
【0092】
次に、
図14に示されるように、半導体基板SBの主面全面上に、ゲート電極MG1およびサイドウォールスペーサSWを覆うように、層間絶縁膜として絶縁膜(層間絶縁膜)IL1を形成(堆積)する。
【0093】
絶縁膜IL1は、酸化シリコン膜の単体膜、あるいは、窒化シリコン膜と該窒化シリコン膜上に該窒化シリコン膜よりも厚く形成された酸化シリコン膜との積層膜などからなり、例えばCVD法などを用いて形成することができる。絶縁膜IL1の形成後、必要に応じてCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)法などを用いて絶縁膜IL1の上面を平坦化する。
【0094】
次に、フォトリソグラフィ法を用いて絶縁膜IL1上に形成したフォトレジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとして、絶縁膜IL1をドライエッチングすることにより、絶縁膜IL1にコンタクトホール(開口部、貫通孔)CTを形成する。コンタクトホールCTは、絶縁膜IL1を貫通するように形成される。
【0095】
次に、コンタクトホールCT内に、接続用の導電体部として、タングステン(W)などからなる導電性のプラグPGを形成する。
【0096】
プラグPGを形成するには、例えば、コンタクトホールCTの内部(底部および側壁上)を含む絶縁膜IL1上に、バリア導体膜を形成する。このバリア導体膜は、例えば、チタン膜、窒化チタン膜、あるいはそれらの積層膜からなる。それから、このバリア導体膜上にタングステン膜などからなる主導体膜をコンタクトホールCTを埋めるように形成してから、絶縁膜IL1上の不要な主導体膜およびバリア導体膜をCMP法またはエッチバック法などによって除去することにより、プラグPGを形成することができる。なお、図面の簡略化のために、
図14では、プラグPGを構成するバリア導体膜および主導体膜(タングステン膜)を一体化して示してある。
【0097】
コンタクトホールCTおよびそれに埋め込まれたプラグPGは、n
+型半導体領域SDおよびゲート電極MG1の上部などに形成される。コンタクトホールCTの底部では、半導体基板SBの主面の一部が露出される。例えば、n
+型半導体領域SD(の表面上の金属シリサイド層SL)の一部、ゲート電極MG1(の表面上の金属シリサイド層SL)の一部などが露出される。なお、
図14においては、n
+型半導体領域SD(の表面上の金属シリサイド層SL)の一部が、コンタクトホールCTの底部で露出して、そのコンタクトホールCTを埋めるプラグPGと電気的に接続された断面が示されている。
【0098】
次に、プラグPGが埋め込まれた絶縁膜IL1上に第1層目の配線である配線(配線層)M1を形成する。この配線M1を、ダマシン技術(ここではシングルダマシン技術)を用いて形成する場合について説明する。
【0099】
まず、
図15に示されるように、プラグPGが埋め込まれた絶縁膜IL1上に、絶縁膜IL2を形成する。絶縁膜IL2は、複数の絶縁膜の積層膜で形成することもできる。それから、フォトレジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとしたドライエッチングによって絶縁膜IL2の所定の領域に配線溝(配線用の溝)を形成した後、配線溝の底部および側壁上を含む絶縁膜IL2上にバリア導体膜を形成する。このバリア導体膜は、例えば、窒化チタン膜、タンタル膜または窒化タンタル膜などからなる。それから、CVD法またはスパッタリング法などによりバリア導体膜上に銅のシード層を形成し、さらに電解めっき法などを用いてシード層上に銅めっき膜を形成して、銅めっき膜により配線溝の内部を埋め込む。それから、配線溝以外の領域の主導体膜(銅めっき膜およびシード層)とバリア導体膜をCMP法により除去して、配線溝に埋め込まれた銅を主導電材料とする第1層目の配線M1を形成する。
図15では、図面の簡略化のために、配線M1は、バリア導体膜、シード層および銅めっき膜を一体化して示してある。
【0100】
配線M1は、プラグPGを介して、メモリ素子MC1のソース・ドレイン領域(n
+型半導体領域SD)や、メモリ素子MC1のゲート電極MG1などと電気的に接続される。
【0101】
その後、デュアルダマシン法などにより2層目以降の配線を形成するが、ここでは図示およびその説明は省略する。また、配線M1およびそれよりも上層の配線は、ダマシン配線に限定されず、配線用の導電体膜をパターニングして形成することもでき、例えばタングステン配線またはアルミニウム配線などとすることもできる。
【0102】
以上のようにして、本実施の形態の半導体装置が製造される。
【0103】
<スプリットゲート型のメモリ素子>
上記「シングルゲート型のメモリ素子」の欄では、本実施の形態をシングルゲート型のメモリ素子に適用した場合について説明したが、ここでは、本実施の形態を、スプリットゲート型のメモリ素子に適用した場合について説明する。
【0104】
図16は、本実施の形態の半導体装置の要部断面図であり、不揮発性メモリのメモリセル領域の要部断面図が示されている。
図17は、メモリ素子MC2の等価回路図である。なお、
図16では、絶縁膜IL1,IL2、コンタクトホールCT、プラグPGおよび配線M1については、図示を省略している。
【0105】
図16に示されるように、半導体基板SBには、メモリトランジスタおよび制御トランジスタからなる不揮発性メモリのメモリ素子(記憶素子、メモリセル)MC2が形成されている。実際には、半導体基板SBには、複数のメモリ素子MC2がアレイ状に形成されている。
【0106】
図16および
図17に示されるように、不揮発性メモリのメモリ素子(メモリセル)MC2は、スプリットゲート型のメモリ素子(メモリセル)であり、制御ゲート電極CGを有する制御トランジスタとメモリゲート電極MG2を有するメモリトランジスタとの2つのMISFETを接続したものである。
【0107】
ここで、電荷蓄積部(電荷蓄積層)を含むゲート絶縁膜およびメモリゲート電極MG2を備えるMISFETをメモリトランジスタといい、また、ゲート絶縁膜および制御ゲート電極CGを備えるMISFETを制御トランジスタという。なお、制御トランジスタは、メモリセル選択用トランジスタであるため、選択トランジスタとみなすこともできる。メモリトランジスタは、記憶用トランジスタである。
【0108】
以下に、メモリ素子MC2の構成を具体的に説明する。
【0109】
図16に示されるように、不揮発性メモリのメモリ素子MC2は、半導体基板SBのp型ウエルPW2中に形成されたソースおよびドレイン用のn型の半導体領域MS,MDと、半導体基板SB(p型ウエルPW2)の上部に形成された制御ゲート電極CGと、半導体基板SB(p型ウエルPW2)の上部に形成されて制御ゲート電極CGと隣合うメモリゲート電極MG2とを有している。そして、不揮発性メモリのメモリ素子MC2は、更に、制御ゲート電極CGおよび半導体基板SB(p型ウエルPW2)間に形成された絶縁膜(ゲート絶縁膜)GIと、メモリゲート電極MG2および半導体基板SB(p型ウエルPW2)間とメモリゲート電極MG2および制御ゲート電極CG間とに形成された絶縁膜MZとを有している。
【0110】
制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MG2は、それらの対向側面の間に絶縁膜MZを介した状態で、半導体基板SBの主面に沿って延在し、並んで配置されている。制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MG2は、半導体領域MDおよび半導体領域MS間の半導体基板SB(p型ウエルPW2)の上部に絶縁膜GIまたは絶縁膜MZを介して形成されており、半導体領域MS側にメモリゲート電極MG2が位置し、半導体領域MD側に制御ゲート電極CGが位置している。但し、制御ゲート電極CGは絶縁膜GIを介し、メモリゲート電極MG2は絶縁膜MZを介して、半導体基板SB上に形成されている。制御ゲート電極CGとメモリゲート電極MG2とは、間に絶縁膜MZを介在して互いに隣合っている。
【0111】
制御ゲート電極CGと半導体基板SB(p型ウエルPW2)の間に形成された絶縁膜GI、すなわち制御ゲート電極CGの下の絶縁膜GIが、制御トランジスタのゲート絶縁膜として機能する。絶縁膜GIは、例えば酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜などにより形成することができる。
【0112】
上記
図1および
図2のメモリ素子MC1においては、絶縁膜MZは、ゲート電極MG1と半導体基板SB(p型ウエルPW1)との間に形成されていたが、
図16のメモリ素子MC2においては、絶縁膜MZは、メモリゲート電極MG2と半導体基板SB(p型ウエルPW2)の間の領域と、メモリゲート電極MG2と制御ゲート電極CGの間の領域の、両領域にわたって延在している。
【0113】
絶縁膜MZの構成(積層構成)については、
図16に示されるメモリ素子MC2の場合も、上記
図1および
図2のメモリ素子MC1の場合と同様であるので、ここではその繰り返しの説明は省略する。従って、上記
図1および
図2のメモリ素子MC1の場合と同様に、
図16に示されるメモリ素子MC2の場合も、絶縁膜MZは、絶縁膜MZ1と、絶縁膜MZ1上に形成された絶縁膜MZ2と、絶縁膜MZ2上に形成された絶縁膜MZ3と、絶縁膜MZ3上に形成された絶縁膜MZ4と、絶縁膜MZ4上に形成された絶縁膜MZ5との積層膜からなる。
【0114】
メモリゲート電極MG2と半導体基板SB(p型ウエルPW2)の間の絶縁膜MZ、すなわちメモリゲート電極MG2の下の絶縁膜MZが、メモリトランジスタのゲート絶縁膜(内部に電荷蓄積部を有するゲート絶縁膜)として機能する。絶縁膜MZは、その内部に電荷蓄積部(ここでは絶縁膜MZ2)を有する絶縁膜とみなすことができる。なお、メモリゲート電極MG2と半導体基板SB(p型ウエルPW2)との間の絶縁膜MZは、メモリトランジスタのゲート絶縁膜として機能するが、メモリゲート電極MG2と制御ゲート電極CGとの間の絶縁膜MZは、メモリゲート電極MG2と制御ゲート電極CGとの間を絶縁(電気的に分離)するための絶縁膜として機能する。
【0115】
なお、図面を見やすくするために、
図16では、絶縁膜MZ1と絶縁膜MZ2と絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ4と絶縁膜MZ5との積層膜からなる絶縁膜MZを、単に絶縁膜MZとして図示している。実際には、
図16において点線の円で囲まれた領域の拡大図に示されるように、絶縁膜MZは、絶縁膜MZ1と絶縁膜MZ2と絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ4と絶縁膜MZ5との積層膜からなる。
【0116】
制御ゲート電極CGは、導電膜からなり、例えば、n型ポリシリコン膜(n型不純物を導入した多結晶シリコン膜、ドープトポリシリコン膜)のようなシリコン膜からなる。具体的には、制御ゲート電極CGは、パターニングされたシリコン膜からなる。
【0117】
メモリゲート電極MG2は、導電膜からなり、例えば、n型ポリシリコン膜(n型不純物を導入した多結晶シリコン膜、ドープトポリシリコン膜)のようなシリコン膜からなる。メモリゲート電極MG2を構成するシリコン膜は、n型不純物が導入されたドープトポリシリコン膜とすることができるが、他の形態として、p型不純物が導入されたドープトポリシリコン膜、あるいは、不純物を意図的には導入していないノンドープのポリシリコン膜とすることもできる。メモリゲート電極MG2は、制御ゲート電極CGの一方の側壁上に絶縁膜MZを介してサイドウォールスペーサ状に形成されている。
【0118】
半導体領域MSおよび半導体領域MDは、ソースまたはドレイン用の半導体領域である。すなわち、半導体領域MSは、ソース領域またはドレイン領域の一方として機能する半導体領域であり、半導体領域MDは、ソース領域またはドレイン領域の他方として機能する半導体領域である。ここでは、半導体領域MSはソース領域として機能する半導体領域、半導体領域MDはドレイン領域として機能する半導体領域である。半導体領域MS,MDは、n型の不純物が導入された半導体領域よりなり、それぞれLDD構造を備えている。すなわち、ソース用の半導体領域MSは、n
−型半導体領域EX1(エクステンション領域)と、n
−型半導体領域EX1よりも高い不純物濃度を有するn
+型半導体領域SD1(ソース領域)とを有している。また、ドレイン用の半導体領域MDは、n
−型半導体領域EX2(エクステンション領域)と、n
−型半導体領域EX2よりも高い不純物濃度を有するn
+型半導体領域SD2(ドレイン領域)とを有している。
【0119】
半導体領域MSは、ソースまたはドレイン用の半導体領域であり、メモリゲート電極MG2とゲート長方向(メモリゲート電極MG2のゲート長方向)に隣接する位置の半導体基板SBに形成されている。また、半導体領域MDは、ソースまたはドレイン用の半導体領域であり、制御ゲート電極CGとゲート長方向(制御ゲート電極CGのゲート長方向)に隣接する位置の半導体基板SBに形成されている。
【0120】
メモリゲート電極MG2および制御ゲート電極CGの互いに隣接していない側の側壁上には、絶縁体(絶縁膜)からなるサイドウォールスペーサSWが形成されている。
【0121】
ソース部のn
−型半導体領域EX1はメモリゲート電極MG2に対して自己整合的に形成され、n
+型半導体領域SD1はメモリゲート電極MG2の側壁上のサイドウォールスペーサSWに対して自己整合的に形成されている。このため、製造された半導体装置においては、低濃度のn
−型半導体領域EX1は、メモリゲート電極MG2の側壁上のサイドウォールスペーサSWの下方に形成され、高濃度のn
+型半導体領域SD1は、低濃度のn
−型半導体領域EX1の外側に形成されている。従って、低濃度のn
−型半導体領域EX1は、メモリトランジスタのチャネル領域に隣接するように形成され、高濃度のn
+型半導体領域SD1は、低濃度のn
−型半導体領域EX1に隣接し、メモリトランジスタのチャネル領域からn
−型半導体領域EX1の分だけ離間するように形成されている。
【0122】
ドレイン部のn
−型半導体領域EX2は制御ゲート電極CGに対して自己整合的に形成され、n
+型半導体領域SD2は制御ゲート電極CGの側壁上のサイドウォールスペーサSWに対して自己整合的に形成されている。このため、製造された半導体装置においては、低濃度のn
−型半導体領域EX2は、制御ゲート電極CGの側壁上のサイドウォールスペーサSWの下方に形成され、高濃度のn
+型半導体領域SD2は、低濃度のn
−型半導体領域EX2の外側に形成されている。従って、低濃度のn
−型半導体領域EX2は、制御トランジスタのチャネル領域に隣接するように形成され、高濃度のn
+型半導体領域SD2は、低濃度のn
−型半導体領域EX2に隣接し、制御トランジスタのチャネル領域からn
−型半導体領域EX2の分だけ離間するように形成されている。
【0123】
メモリゲート電極MG2下の絶縁膜MZの下にメモリトランジスタのチャネル領域が形成され、制御ゲート電極CG下の絶縁膜GIの下に制御トランジスタのチャネル領域が形成される。
【0124】
n
+型半導体領域SD1,SD2の上部とメモリゲート電極MG2の上部と制御ゲート電極CGの上部には、サリサイド技術などにより、金属シリサイド層SLが形成されている。金属シリサイド層SLは、不要であれば、その形成を省略することもできる。また、n
+型半導体領域SD1,SD2の上部に金属シリサイド層SLを形成する一方、メモリゲート電極MG2と制御ゲート電極CGのうちの一方または両方の上部に金属シリサイド層SLを形成しない場合もあり得る。
【0125】
また、
図16では図示を省略しているが、後述の
図31に示されるように、半導体基板SB上には、制御ゲート電極CG、メモリゲート電極MG2およびサイドウォールスペーサSWを覆うように、層間絶縁膜として絶縁膜IL1が形成されている。そして、絶縁膜IL1にはコンタクトホールCTが形成され、コンタクトホールCT内にプラグPGが埋め込まれている。プラグPGが埋め込まれた絶縁膜IL1上には絶縁膜IL2および配線M1が形成されている。
【0126】
次に、不揮発性のメモリ素子MC2の動作例について、
図18を参照して説明する。
【0127】
図18は、「書込」、「消去」および「読出」時における選択メモリセルの各部位への電圧の印加条件の一例を示す表である。
図18の表には、「書込」、「消去」および「読出」時のそれぞれにおいて、
図16および
図17に示されるようなメモリセル(選択メモリセル)の各部位に印加する電圧(Vd,Vcg,Vmg,Vs,Vb)が示されている。ここで、電圧Vmgは、メモリゲート電極MG2に印加する電圧Vmgである。また、電圧Vsは、半導体領域MS(ソース領域)に印加する電圧Vsである。また、電圧Vcgは、制御ゲート電極CGに印加する電圧Vcgである。また、電圧Vdは、半導体領域MD(ドレイン領域)に印加する電圧Vdである。また、ベース電圧Vbは、p型ウエルPW2に印加されるベース電圧Vbである。なお、
図18の表に示したものは電圧の印加条件の好適な一例であり、これに限定されるものではなく、必要に応じて種々変更可能である。また、本実施の形態では、メモリトランジスタの絶縁膜MZ中の電荷蓄積部(ここでは絶縁膜MZ2)への電子の注入を「書込」、ホール(hole:正孔)の注入を「消去」と定義する。
【0128】
書込み方式は、いわゆるSSI(Source Side Injection:ソースサイド注入)方式と呼ばれる、ソースサイド注入によるホットエレクトロン注入で書込みを行う書込み方式(ホットエレクトロン注入書込み方式)を好適に用いることができる。
【0129】
SSI方式の書込みでは、例えば
図18の「書込」の欄に示されるような電圧を、書込みを行う選択メモリセルの各部位に印加し、選択メモリセルの絶縁膜MZ中の電荷蓄積層(ここでは絶縁膜MZ2)に電子を注入することで書込みを行う。この際、ホットエレクトロンは、2つのゲート電極(メモリゲート電極MG2および制御ゲート電極CG)間の下のチャネル領域(ソース、ドレイン間)で発生し、メモリゲート電極MG2の下の絶縁膜MZ中の電荷蓄積層(ここでは絶縁膜MZ2)にホットエレクトロンが注入される。このため、SSI方式では、絶縁膜MZの制御ゲート電極CG側に電子が注入される。注入されたホットエレクトロン(電子)は、絶縁膜MZ中の電荷蓄積層(ここでは絶縁膜MZ2)のトラップ準位に捕獲され、その結果、メモリトランジスタのしきい値電圧が上昇する。すなわち、メモリトランジスタは書込み状態となる。
【0130】
消去方式は、いわゆるFN方式と呼ばれる、FN(Fowler Nordheim)トンネリングにより消去を行う消去方式(トンネリング消去方式)を好適に用いることができる。
【0131】
FN方式の消去では、例えば
図18の「消去」の欄に示されるような電圧(Vmgが正電圧でVd,Vcg,Vs,Vbがゼロボルト)を、消去を行う選択メモリセルの各部位に印加し、選択メモリセルにおいて、メモリゲート電極MG2からホール(正孔)をトンネリングさせて絶縁膜MZ中の電荷蓄積層(ここでは絶縁膜MZ2)に注入することで消去を行う。この際、ホールはメモリゲート電極MG2からFNトンネリング(FNトンネル効果)により絶縁膜MZ5,MZ4,MZ3をトンネリングして絶縁膜MZ中に注入され、絶縁膜MZ中の電荷蓄積層(ここでは絶縁膜MZ2)のトラップ準位に捕獲され、その結果、メモリトランジスタのしきい値電圧が低下する(消去状態となる)。
【0132】
読出し時には、例えば
図18の表の「読出」の欄に示されるような電圧を、読出しを行う選択メモリセルの各部位に印加する。読出し時のメモリゲート電極MG2に印加する電圧Vmgを、書込み状態におけるメモリトランジスタのしきい値電圧と消去状態におけるメモリトランジスタのしきい値電圧との間の値にすることで、書込み状態と消去状態とを判別することができる。
【0133】
また、消去方式として、いわゆるBTBT方式と呼ばれるBTBT(Band-To-Band Tunneling:バンド間トンネル現象)によるホットホール注入により消去を行う消去方式(ホットホール注入消去方式)もある。BTBT方式の消去では、BTBT(Band-To-Band Tunneling)により発生したホール(正孔)を半導体基板(SB)側から絶縁膜MZ中の電荷蓄積層(ここでは絶縁膜MZ2)に注入することにより消去を行う。
【0134】
しかしながら、本実施の形態では、消去方式として、BTBT方式(BTBT消去方式)ではなく、FN方式(トンネリング消去方式)を用いることが好ましい。BTBT方式(BTBT消去方式)よりもFN方式(トンネリング消去方式)の方が、消去時の消費電流(消費電力)が少なくて済む。本実施の形態では、消去方式として、FN方式(トンネリング消去方式)を用いることで、すなわち、メモリゲート電極MG2から絶縁膜MZの絶縁膜MZ2に(トンネリングにより)ホールを注入することによって選択メモリセルの消去を行うことで、消去時の消費電流(消費電力)を低減することができる。
【0135】
次に、
図16および
図17に示される不揮発性のメモリ素子MC2を備える半導体装置の製造方法について、
図19〜
図31を参照して説明する。
図19および
図20は、本実施の形態の半導体装置の製造工程の一部を示すプロセスフロー図である。
図21〜
図31は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【0136】
図21に示されるように、まず、上記
図21の場合と同様の半導体基板SBを用意する(
図19のステップS21)。それから、半導体基板SBの主面に、活性領域を規定する素子分離領域(図示せず)を形成する。
【0137】
次に、
図22に示されるように、メモリセル形成領域の半導体基板SBにp型ウエルPW2を形成する(
図19のステップS22)。p型ウエルPW2は、イオン注入法により形成することができ、半導体基板SBの主面から所定の深さにわたって形成される。
【0138】
次に、希釈フッ酸洗浄などによって半導体基板SB(p型ウエルPW2)の表面を清浄化した後、半導体基板SBの主面(p型ウエルPW2の表面)に、制御トランジスタのゲート絶縁膜用の絶縁膜GIを形成する(
図19のステップS23)。それから、半導体基板SBの主面(主面全面)上に、すなわち絶縁膜GI上に、制御ゲート電極CG形成用の導電体膜としてシリコン膜PS1を形成(堆積)してから、このシリコン膜PS1をフォトリソグラフィ法およびドライエッチング法を用いてパターニングすることにより、パターニングされたシリコン膜PS1からなる制御ゲート電極CGを形成する(
図19のステップS24)。
【0139】
シリコン膜PS1は、多結晶シリコン膜(ポリシリコン膜)からなり、CVD法などを用いて形成することができるが、成膜時はシリコン膜PS1をアモルファスシリコン膜として形成してから、その後の熱処理でアモルファスシリコン膜を多結晶シリコン膜とすることもできる。シリコン膜PS1は、n型不純物が導入されて低抵抗率とされている。シリコン膜PS1は、成膜時の段階ではノンドープのシリコン膜とし、成膜後に不純物をイオン注入で導入することができる。このため、制御ゲート電極CGは、n型のドープトポリシリコン膜により形成される。
【0140】
メモリセルを形成する領域において、制御ゲート電極CGで覆われた部分以外の絶縁膜GI(すなわちゲート絶縁膜となる部分以外の絶縁膜GI)は、シリコン膜PS1のパターニング工程で行うドライエッチングや、あるいはそのドライエッチング後にウェットエッチングを行うことによって除去され得る。
【0141】
次に、洗浄処理を行って、半導体基板SBの主面を清浄化処理した後、
図23に示されるように、半導体基板SBの主面全面に、すなわち、半導体基板SBの主面(表面)上と制御ゲート電極CGの表面(上面および側面)上に、メモリトランジスタのゲート絶縁膜用の絶縁膜MZを形成する(
図19のステップS25)。
【0142】
なお、図面を見やすくするために、
図23では、絶縁膜MZ1と絶縁膜MZ2と絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ4と絶縁膜MZ5との積層膜からなる絶縁膜MZを、単に絶縁膜MZとして図示している。実際には、
図23において点線の円で囲まれた領域の拡大図に示されるように、絶縁膜MZは、絶縁膜MZ1と絶縁膜MZ2と絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ4と絶縁膜MZ5との積層膜からなる。
【0143】
図23の絶縁膜MZ形成工程(ステップS25)は、上記
図6の絶縁膜MZ形成工程(上記ステップS3)と基本的には同じであるので、ここではその繰り返しの説明は省略する。但し、
図23(ステップS25)の場合は、半導体基板SBの主面(表面)上だけでなく、制御ゲート電極CGの表面(上面および側面)上にも絶縁膜MZが形成される点が、上記
図6(ステップS3)の場合と相違している。
【0144】
次に、
図24に示されるように、半導体基板SBの主面(主面全面)上に、すなわち絶縁膜MZ上に、制御ゲート電極CGを覆うように、メモリゲート電極MG2形成用の導電体膜としてシリコン膜PS2を形成(堆積)する(
図19のステップS26)。
【0145】
シリコン膜PS2は、多結晶シリコン膜からなり、CVD法などを用いて形成することができる。成膜時はシリコン膜PS2をアモルファスシリコン膜として形成してから、その後の熱処理でアモルファスシリコン膜を多結晶シリコン膜とすることもできる。
【0146】
メモリゲート電極MG2は、導電膜からなり、例えば、n型ポリシリコン膜のようなシリコン膜PS2からなる。シリコン膜PS2は、n型不純物が導入されたドープトポリシリコン膜とすることができるが、他の形態として、p型不純物が導入されたドープトポリシリコン膜、あるいは、不純物を意図的には導入していないノンドープのポリシリコン膜とすることもできる。シリコン膜PS2にn型またはp型の不純物を導入する場合は、シリコン膜PS2の成膜後のイオン注入でシリコン膜PS2にn型またはp型不純物を導入することもできるが、シリコン膜PS2の成膜時にシリコン膜PS2にn型またはp型不純物を導入することもできる。
【0147】
次に、異方性エッチング技術により、シリコン膜PS2をエッチバック(エッチング、ドライエッチング、異方性エッチング)する(
図19のステップS27)。
【0148】
このステップS27のエッチバック工程では、シリコン膜PS2の堆積膜厚の分だけシリコン膜PS2を異方性エッチングによりエッチバックすることで、制御ゲート電極CGの両方の側壁上に(絶縁膜MZを介して)シリコン膜PS2をサイドウォールスペーサ状に残し、他の領域のシリコン膜PS2を除去する。これにより、
図25に示されるように、制御ゲート電極CGの両方の側壁のうち、一方の側壁上に絶縁膜MZを介してサイドウォールスペーサ状に残存したシリコン膜PS2により、メモリゲート電極MG2が形成され、また、他方の側壁上に絶縁膜MZを介してサイドウォールスペーサ状に残存したシリコン膜PS2により、シリコンスペーサPS2aが形成される。メモリゲート電極MG2は、絶縁膜MZ上に、制御ゲート電極CGと絶縁膜MZを介して隣り合うように形成される。シリコン膜PS2のエッチバック工程を行ってメモリゲート電極MG2およびシリコンスペーサPS2aを形成すると、メモリゲート電極MG2とシリコンスペーサPS2aで覆われていない領域の絶縁膜MZが露出される。
【0149】
次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、メモリゲート電極MG2が覆われかつシリコンスペーサPS2aが露出されるようなフォトレジストパターン(図示せず)を半導体基板SB上に形成してから、このフォトレジストパターンをエッチングマスクとしたドライエッチングにより、シリコンスペーサPS2aを除去する(
図20のステップS28)。その後、このフォトレジストパターンを除去し、
図26には、この段階が示されている。このエッチング工程により、
図26に示されるように、シリコンスペーサPS2aが除去されるが、メモリゲート電極MG2は、フォトレジストパターンで覆われていたので、エッチングされずに残存する。
【0150】
次に、
図27に示されるように、絶縁膜MZのうち、メモリゲート電極MG2で覆われずに露出する部分をエッチング(例えばウェットエッチング)によって除去する(
図20のステップS29)。この際、メモリゲート電極MG2の下とメモリゲート電極MG2および制御ゲート電極CG間とに位置する絶縁膜MZは、除去されずに残存し、他の領域の絶縁膜MZは除去される。
図27からも分かるように、メモリゲート電極MG2と半導体基板SB(p型ウエルPW2)の間の領域と、メモリゲート電極MG2と制御ゲート電極CGの間の領域の、両領域にわたって絶縁膜MZが連続的に延在している。
【0151】
次に、イオン注入法などを用いてn型の不純物を、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MG2をマスク(イオン注入阻止マスク)として用いて半導体基板SB(p型ウエルPW2)に導入することで、
図28に示されるように、n
−型半導体領域(不純物拡散層)EX1,EX2を形成する(
図20のステップS30)。
【0152】
この際、n
−型半導体領域EX1は、メモリゲート電極MG2の側壁(絶縁膜MZを介して制御ゲート電極CGに隣接している側とは反対側の側壁)に自己整合して形成される。また、n
−型半導体領域EX2は、制御ゲート電極CGの側壁(絶縁膜MZを介してメモリゲート電極MG2に隣接している側とは反対側の側壁)に自己整合して形成される。n
−型半導体領域EX1とn
−型半導体領域EX2とは、同じイオン注入工程で形成することができるが、異なるイオン注入工程で形成することも可能である。
【0153】
次に、
図29に示されるように、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MG2の側壁(絶縁膜MZを介して互いに隣合う側とは反対側の側壁)上に、側壁絶縁膜として、絶縁膜からなるサイドウォールスペーサSWを形成する(
図20のステップS31)。サイドウォールスペーサSWは、例えば、半導体基板SBの主面全面上に、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MG2を覆うように、サイドウォールスペーサSW形成用の絶縁膜を形成してから、この絶縁膜を、異方性エッチング技術によりエッチバックすることにより、形成することができる。サイドウォールスペーサSWは、制御ゲート電極CGの側壁のうち、絶縁膜MZを介してメモリゲート電極MG2に隣接している側の側壁とは反対側の側壁上と、メモリゲート電極MG2の側壁のうち、絶縁膜MZを介して制御ゲート電極CGに隣接している側の側壁とは反対側の側壁上とに形成される。
【0154】
次に、イオン注入法などを用いてn型の不純物を、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MG2とそれらの側壁上のサイドウォールスペーサSWとをマスク(イオン注入阻止マスク)として用いて半導体基板SB(p型ウエルPW2)に導入することで、n
+型半導体領域SD1,SD2を形成する(
図20のステップS32)。
【0155】
この際、n
+型半導体領域SD1は、メモリゲート電極MG2の側壁上のサイドウォールスペーサSWに自己整合して形成され、n
+型半導体領域SD2は、制御ゲート電極CGの側壁上のサイドウォールスペーサSWに自己整合して形成される。これにより、LDD構造が形成される。n
+型半導体領域SD1とn
+型半導体領域SD2とは、同じイオン注入工程で形成することができるが、異なるイオン注入工程で形成することも可能である。
【0156】
このようにして、n
−型半導体領域EX1とそれよりも高不純物濃度のn
+型半導体領域SD1とにより、メモリトランジスタのソース領域として機能するn型の半導体領域MSが形成され、n
−型半導体領域EX2とそれよりも高不純物濃度のn
+型半導体領域SD2とにより、制御トランジスタのドレイン領域として機能するn型の半導体領域MDが形成される。
【0157】
次に、ソースおよびドレイン用の半導体領域(n
−型半導体領域EX1,EX2およびn
+型半導体領域SD1,SD2)などに導入された不純物を活性化するための熱処理である活性化アニールを行う(
図20のステップS33)。
【0158】
このようにして、不揮発性メモリのメモリ素子MC2が形成される。
【0159】
次に、上記
図12および
図13を参照して説明したようなサリサイドプロセスを行うことにより、
図30に示されるように、金属シリサイド層SLを形成する。金属シリサイド層SLは、n
+型半導体領域SD1,SD2、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MG2の上部に形成することができ、それによって、ソース、ドレインや各ゲート電極(CG,MG2)の抵抗を低抵抗化することができる。
【0160】
以降の工程は、
図31の場合も、上記
図14および
図15の場合と基本的には同じである。
【0161】
すなわち、
図31に示されるように、半導体基板SBの主面全面上に、制御ゲート電極CG、メモリゲート電極MG2およびサイドウォールスペーサSWを覆うように、層間絶縁膜として絶縁膜IL1を形成する。絶縁膜IL1の形成後、必要に応じてCMP法などを用いて絶縁膜IL1の上面を平坦化する。それから、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング技術を用いて、絶縁膜IL1にコンタクトホールCTを形成してから、コンタクトホールCT内に導電性のプラグPGを形成する。それから、プラグPGが埋め込まれた絶縁膜IL1上に絶縁膜IL2を形成してから、この絶縁膜IL2に配線溝を形成した後、配線溝内に配線M1を形成する。
【0162】
その後、デュアルダマシン法などにより2層目以降の配線を形成するが、ここでは図示およびその説明は省略する。また、配線M1およびそれよりも上層の配線は、ダマシン配線に限定されず、配線用の導電体膜をパターニングして形成することもでき、例えばタングステン配線またはアルミニウム配線などとすることもできる。
【0163】
<エネルギーバンド構造について>
次に、メモリ素子MC1,MC2のエネルギーバンド構造について、図面を参照して説明する。
【0164】
図32は、メモリ素子MC1,MC2のエネルギーバンド構造を示す説明図である。
図32には、上記
図2のA−A線に沿った位置でのエネルギーバンド構造が示されているが、上記
図16のB−B線の位置でのエネルギーバンド構造も、
図32と同じである。すなわち、
図32は、上記
図2のメモリ素子MC1または上記
図16のメモリ素子MC2において、半導体基板SBとゲート電極(ゲート電極MG1またはメモリゲート電極MG2)とで挟まれた絶縁膜MZを、厚み方向(絶縁膜MZの厚み方向)に横切る位置でのエネルギーバンド図である。
図32の横が、厚み方向の位置に対応し、
図32の縦が、エネルギーに対応している。
【0165】
上記
図1および
図2のメモリ素子MC1においては、半導体基板SB上に、ゲート絶縁膜用の絶縁膜MZを介して、ゲート電極MG1が形成され、上記
図16のメモリ素子MC2においては、半導体基板SB上に、ゲート絶縁膜用の絶縁膜MZを介して、メモリゲート電極MG2が形成されている。メモリ素子MC1とメモリ素子MC2のいずれにおいても、絶縁膜MZは、絶縁膜MZ1と、絶縁膜MZ1上に形成された絶縁膜MZ2と、絶縁膜MZ2上に形成された絶縁膜MZ3と、絶縁膜MZ3上に形成された絶縁膜MZ4と、絶縁膜MZ4上に形成された絶縁膜MZ5とを有する積層絶縁膜からなる。絶縁膜MZを構成する絶縁膜MZ1,MZ2,MZ3、MZ4、MZ5のうち、絶縁膜MZ2は、電荷蓄積機能を有する絶縁膜である。
【0166】
図32のバンド構造からも分かるように、絶縁膜MZ1および絶縁膜MZ3のそれぞれのバンドギャップは、絶縁膜MZ2のバンドギャップよりも大きい。言い換えると、絶縁膜MZ2のバンドギャップは、絶縁膜MZ1および絶縁膜MZ3のそれぞれのバンドギャップよりも小さい。これにより、電荷蓄積層としての絶縁膜MZ2に電荷を保持させることができ、絶縁膜MZ2を挟む絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ1とが、それぞれ電荷ブロック層(または電荷閉じ込め層)として機能することができる。
【0167】
絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ3のバンドギャップよりも小さく、かつ、絶縁膜MZ5のバンドギャップは、絶縁膜MZ4のバンドギャップよりも小さい。言い換えると、絶縁膜MZ3のバンドギャップは、絶縁膜MZ4のバンドギャップよりも大きく、かつ、絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ5のバンドギャップよりも大きい。
【0168】
絶縁膜MZ2として窒化シリコン膜を用い、かつ、絶縁膜MZ3として酸化シリコン膜を用いた場合には、絶縁膜MZ2と絶縁膜MZ3との間に形成される価電子帯側のエネルギー障壁は、例えば2.5〜2.9eV程度となる。また、絶縁膜MZ5として窒化シリコン膜を用い、かつ、ゲート電極(MG1,MG2)としてシリコン膜を用いた場合には、絶縁膜MZ5とゲート電極(MG1,MG2)との間に形成される価電子帯側のエネルギー障壁は、例えば1.8eV程度となる。
【0169】
図33は、消去動作時におけるメモリ素子MC1,MC2のエネルギーバンド構造を示す説明図である。
図32と同様に、
図33においても、上記
図2のA−A線または上記
図16のB−B線に沿った位置でのエネルギーバンド構造が示されている。
【0170】
消去動作時は、消去電圧としてゲート電極(MG1,MG2)に正の電位(電圧)を印加することにより、ゲート電極(MG1,MG2)の電位が半導体基板SB(p型ウエルPW1,PW2)の電位よりも高くなり、それによって、
図33のようなエネルギーバンド構造が形成される。この場合、FNトンネリングにより、ゲート電極(MG1,MG2)からホール(正孔)HLが絶縁膜MZ5,MZ4,MZ3をトンネリングして絶縁膜MZ中に注入され、絶縁膜MZ中の電荷蓄積層である絶縁膜MZ2のトラップ準位に捕獲される。この際のホールHLの注入方向を、
図33において、矢印YG1で示してある。また、消去動作時は、ゲート電極(MG1,MG2)の電位が半導体基板SB(p型ウエルPW1,PW2)の電位よりも高いことから、ゲート電極(MG1,MG2)からホール(正孔)HLが絶縁膜MZ中に注入されるだけでなく、半導体基板SBから電子(エレクトロン)ELが絶縁膜MZ中に注入され得る。この際の電子ELの注入方向を、
図33において、矢印YG2で示してある。しかしながら、消去動作時には、ゲート電極(MG1,MG2)から絶縁膜MZ中に注入されるホールHLの量が、半導体基板SBから絶縁膜MZ中に注入される電子ELの量よりも多くなるようにしておくことで、ゲート電極(MG1,MG2)から絶縁膜MZ中に注入されたホールHLを絶縁膜MZ2のトラップ準位に捕獲させて、メモリ素子(MC1,MC2)を消去状態にすることができる。消去動作時において、ゲート電極(MG1,MG2)から絶縁膜MZ中に注入されるホールHLの量が、半導体基板SBから絶縁膜MZ中に注入される電子ELの量よりも多くなることは、例えば、絶縁膜MZを構成する各絶縁膜MZ1,MZ2,MZ3,MZ4,MZ5の膜厚や、消去電圧の値を調整することにより、実現できる。
【0171】
図34は、書き込み状態(書き込み後の電荷保持状態)におけるメモリ素子MC1,MC2のエネルギーバンド構造を示す説明図である。
図32と同様に、
図34においても、上記
図2のA−A線または上記
図16のB−B線に沿った位置でのエネルギーバンド構造が示されている。
【0172】
書き込み状態(書き込み後の電荷保持状態)においては、絶縁膜MZ中の電荷蓄積層である絶縁膜MZ2のトラップ準位に電子(エレクトロン)ELが捕獲されており、
図34のようなエネルギーバンド構造が形成される。消去動作を行うまで書き込み状態を保持するためには、絶縁膜MZ2に捕獲された電子ELが、ゲート電極(MG1,MG2)側あるいは半導体基板SB(p型ウエルPW1,PW2)側に抜けないようにすることが望ましい。そのためには、絶縁膜MZ1,MZ3の各バンドギャップを絶縁膜MZ2のバンドギャップよりも大きくし、それによって、絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ2との間にエネルギー障壁が形成され、かつ、絶縁膜MZ1と絶縁膜MZ2との間にエネルギー障壁が形成されるようにしておく。
【0173】
<検討例について>
図35は、本発明者が検討した第1検討例のメモリ素子MC101を示す部分拡大断面図であり、上記
図2に相当する領域が示されている。また、
図36は、
図35に示されるC−C線に沿った位置でのエネルギーバンド構造図であり、上記
図32に相当するものである。
【0174】
図35に示されるように、第1検討例のメモリ素子MC101では、半導体基板SB上に、上記絶縁膜MZに相当する絶縁膜MZ100を介して、上記ゲート電極MG1に相当するゲート電極MG101が形成されている。
【0175】
図35に示される第1検討例のメモリ素子MC101が、本実施の形態の上記メモリ素子MC1と相違しているのは、ゲート絶縁膜(絶縁膜MZ,MZ100)の積層構造である。すなわち、第1検討例の場合のメモリ素子用のゲート絶縁膜である絶縁膜MZ100の積層構造は、本実施の形態におけるメモリ素子用のゲート絶縁膜である絶縁膜MZの積層構造とは相違している。
【0176】
すなわち、
図35および
図36に示される第1検討例の場合、メモリ素子用のゲート絶縁膜である絶縁膜MZ100は、絶縁膜MZ101と、絶縁膜MZ101上の絶縁膜MZ102と、絶縁膜MZ102上の絶縁膜MZ103との積層膜からなる。絶縁膜MZ102が電荷蓄積層として機能する絶縁膜(トラップ性絶縁膜)である。すなわち、第1検討例の場合、メモリ素子用のゲート絶縁膜である絶縁膜MZ100は、3層構造であり、電荷蓄積層として機能する絶縁膜MZ102を絶縁膜MZ101と絶縁膜MZ103とで挟んだ構造を有している。絶縁膜MZ101および絶縁膜MZ103のそれぞれのバンドギャップは、絶縁膜MZ102のバンドギャップよりも大きい。これにより、絶縁膜MZ102は、電荷蓄積層として機能することができ、絶縁膜MZ102を挟む絶縁膜MZ103と絶縁膜MZ101とは、それぞれ電荷ブロック層(または電荷閉じ込め層)として機能することができる。このバンドギャップの関係を実現するために、絶縁膜MZ101としては、酸化シリコン膜を採用し、絶縁膜MZ102としては、窒化シリコン膜を採用し、絶縁膜MZ103としては、酸化シリコン膜を採用している。
【0177】
ところで、本発明者は、メモリ素子(MC1,MC2,MC101)の消去動作時に、メモリ素子用のゲート電極(MG1,MG2,MG101)からゲート絶縁膜(MZ,MZ100)中の電荷蓄積層(MZ2,MZ102)に電荷(ここではホール)を注入することにより、メモリ素子(MC1,MC2,MC101)を消去状態とすることを検討している。ここで、上記ゲート電極MG1、メモリゲート電極MG2およびゲート電極MG101と後述のゲート電極MG201は、それぞれ、メモリ素子用のゲート電極に対応している。
【0178】
すなわち、本発明者は、FNトンネリングによりゲート電極(MG1,MG2,MG101)からゲート絶縁膜(MZ,MZ100)中の電荷蓄積層(MZ2、MZ102)に電荷(ここではホール)を注入することにより、メモリ素子(MC1,MC2,MC101)の消去動作を行うことを検討している。しかしながら、この消去方式の場合、ゲート電極側の電荷ブロック層のエネルギー障壁が高ければ、消去動作時にゲート電極(MG1,MG2,MG101)から、ゲート電極側の電荷ブロック層を通って電荷蓄積層に電荷(ここではホール)を注入しにくくなる。これは、ゲート電極側の電荷ブロック層のエネルギー障壁が高いと、その電荷ブロック層における電荷(ここではホール)のトンネル確率が低下し、その電荷ブロック層をトンネリングする電荷(ここではホール)の数が少なくなってしまうためである。ここで、ゲート電極側の電荷ブロック層とは、電荷蓄積機能を有するゲート絶縁膜において、電荷蓄積層を挟む電荷ブロック層のうち、ゲート電極側に位置する電荷ブロック層のことである。
図35に示される第1検討例のメモリ素子MC101の場合は、絶縁膜MZ103が、ゲート電極側の電荷ブロック層に対応している。
【0179】
このため、消去動作時にゲート電極から電荷蓄積層に電荷を注入する観点では、ゲート電極側の電荷ブロック層のエネルギー障壁は低いことが望ましく、従って、ゲート電極側の電荷ブロック層のバンドギャップは小さいことが望ましい。
【0180】
しかしながら、メモリ素子の電荷保持特性(リテンション特性)を向上させるという観点では、ゲート電極側の電荷ブロック層のエネルギー障壁は高いことが望まく、従って、ゲート電極側の電荷ブロック層のバンドギャップは大きいことが望ましい。これは、ゲート電極側の電荷ブロック層のエネルギー障壁が低いと、電荷蓄積層に保持されている電荷がゲート電極側に抜けてしまう現象が生じやすくなるため、メモリ素子の電荷保持特性(リテンション特性)が低下してしまうからである。
【0181】
このため、
図35に示される第1検討例のメモリ素子MC101の場合は、メモリ素子の消去特性の向上とリテンション特性の向上とを両立させることは困難である。すなわち、ゲート電極側の電荷ブロック層である絶縁膜MZ103について、酸化シリコン膜により構成するなどしてバンドギャップを大きくすると、メモリ素子MC101のリテンション特性は向上するが、ゲート電極MG101から電荷蓄積層である絶縁膜MZ102に電荷(ここではホール)を注入しにくくなるため、消去特性が低くなってしまう。一方、ゲート電極側の電荷ブロック層である絶縁膜MZ103について、酸窒化シリコン膜により構成するなどしてバンドギャップを小さくすると、ゲート電極MG101から電荷蓄積層である絶縁膜MZ102に電荷(ここではホール)を注入しやすくなるため、消去特性は向上するが、メモリ素子MC101のリテンション特性が低くなってしまう。そこで、
図37および
図38に示される第2検討例のメモリ素子MC201が考えられる。
【0182】
図37は、本発明者が検討した第2検討例のメモリ素子MC201を示す部分拡大断面図であり、上記
図2に相当する領域が示されている。また、
図38は、
図37に示されるD−D線に沿った位置でのエネルギーバンド構造図であり、上記
図32に相当するものである。
【0183】
図37に示されるように、第2検討例のメモリ素子MC201では、半導体基板SB上に、上記絶縁膜MZに相当する絶縁膜MZ200を介して、上記ゲート電極MG1に相当するゲート電極MG201が形成されている。
【0184】
図37に示される第2検討例のメモリ素子MC201が、本実施の形態の上記メモリ素子MC1と相違しているのは、ゲート絶縁膜(絶縁膜MZ,MZ200)の積層構造である。すなわち、第2検討例の場合のメモリ素子用のゲート絶縁膜である絶縁膜MZ200の積層構造は、本実施の形態におけるメモリ素子用のゲート絶縁膜である絶縁膜MZの積層構造とは相違している。
【0185】
すなわち、
図37および
図38に示される第2検討例の場合、メモリ素子用のゲート絶縁膜である絶縁膜MZ200は、絶縁膜MZ201と、絶縁膜MZ201上の絶縁膜MZ202と、絶縁膜MZ202上の絶縁膜MZ203と、絶縁膜MZ203上の絶縁膜MZ204との積層膜からなる。絶縁膜MZ202が電荷蓄積層として機能する絶縁膜(トラップ性絶縁膜)である。すなわち、第2検討例の場合、メモリ素子用のゲート絶縁膜である絶縁膜MZ200は、4層構造であり、電荷蓄積層として機能する絶縁膜MZ202を絶縁膜MZ201と絶縁膜MZ203,MZ204とで挟んだ構造を有している。絶縁膜MZ201および絶縁膜MZ203のそれぞれのバンドギャップは、絶縁膜MZ202のバンドギャップよりも大きい。これにより、絶縁膜MZ202は、電荷蓄積層として機能することができ、絶縁膜MZ202を挟む絶縁膜MZ203と絶縁膜MZ201とは、それぞれ電荷ブロック層(または電荷閉じ込め層)として機能することができる。また、絶縁膜MZ204のバンドギャップは、絶縁膜MZ203のバンドギャップよりも小さい。このバンドギャップの関係を実現するために、絶縁膜MZ201としては、酸化シリコン膜を採用し、絶縁膜MZ202としては、窒化シリコン膜を採用し、絶縁膜MZ203としては、酸化シリコン膜を採用し、絶縁膜MZ204としては、窒化シリコン膜を採用している。
【0186】
図37および
図38に示される第2検討例の場合、電荷蓄積層として機能する絶縁膜MZ202とゲート電極MG201との間に、絶縁膜MZ203と絶縁膜MZ204との積層膜LM200が介在しており、電荷蓄積層(MZ202)側に位置する絶縁膜MZ203のバンドギャップが、ゲート電極MG201側に位置する絶縁膜MZ204のバンドギャップよりも大きくなっている。言い換えると、ゲート電極MG201側に位置する絶縁膜MZ204のバンドギャップが、電荷蓄積層(MZ202)側に位置する絶縁膜MZ203のバンドギャップよりも小さくなっている。
【0187】
このため、
図37および
図38に示される第2検討例の場合、電荷蓄積層として機能する絶縁膜MZ202に隣接する絶縁膜MZ203のバンドギャップを大きくすることができることで、メモリ素子のリテンション特性を向上させることができるとともに、ゲート電極MG201に隣接する絶縁膜MZ204のバンドギャップを小さくすることができることで、消去特性を向上させることができる。すなわち、第1検討例と第2検討例とを比べた場合、絶縁膜MZ103と絶縁膜MZ203とでバンドギャップの大きさが同じであれば、リテンション特性は第1検討例と第2検討例とでほぼ同等であるのに対して、絶縁膜MZ204のバンドギャップを絶縁膜MZ103のバンドギャップより小さくすることができる分、消去特性は、第1検討例よりも第2検討例の方が良好となる。
【0188】
しかしながら、本発明者の検討によれば、
図37および
図38に示される第2検討例の場合、絶縁膜MZ204のバンドギャップを小さくしたことに伴い、半導体装置の信頼性が低下する虞があることが分かった。
【0189】
図37および
図38に示される第2検討例において、電荷蓄積層として機能する絶縁膜MZ202とゲート電極MG201との間に、絶縁膜MZ203と絶縁膜MZ204との積層膜LM200が介在しているが、この積層膜LM200の厚みは、ある程度の厚みを確保する必要がある。その理由は、次のようなものである。
【0190】
ゲート電極MG201から電荷蓄積層(MZ202)への電荷(ここではホール)の注入による消去動作を行うためには、ゲート電極MG201と半導体基板SBとの間に消去用の電圧を印加する必要がある。この消去用の電圧は、ゲート電極MG201から電荷蓄積層(MZ202)への電荷(ここではホール)の注入だけでなく、半導体基板SBから電荷蓄積層(MZ202)への電荷(ここでは電子)の注入も生じさせる可能性がある。なお、消去用の電圧によって、ゲート電極MG201から電荷蓄積層(MZ202)へ注入され得る電荷(ここではホール)の極性と、半導体基板SBから電荷蓄積層(MZ202)へ注入され得る電荷(ここでは電子)の極性とは、互いに反対である。このため、消去動作を的確に行うためには、消去動作時において、ゲート電極MG201から電荷蓄積層(MZ202)への電荷(ここではホール)の注入を促進するとともに、半導体基板SBから電荷蓄積層(MZ202)への電荷(ここでは電子)の注入を抑制する必要がある。消去動作時にゲート電極MG201から電荷蓄積層(MZ202)への電荷(ここではホール)の注入を促進するには、消去動作時において、電荷蓄積層(MZ202)とゲート電極MG201との間に介在する積層膜LM200に印加される電位差を大きくする必要がある。一方、消去動作時に半導体基板SBから電荷蓄積層(MZ202)への電荷(ここでは電子)の注入を抑制するには、消去動作時において、ゲート電極MG201と半導体基板SBとの間に介在する絶縁膜MZ201に印加される電位差を小さくする必要がある。このため、消去動作時においては、積層膜LM200に印加される電位差をある程度大きくし、絶縁膜MZ201に印加される電位差をある程度小さくする必要があるが、そのためには、積層膜LM200の厚みをある程度厚くすることが必要になる。
【0191】
すなわち、消去動作時にゲート電極MG201と半導体基板SBとの間に所定の電圧を印加したときに、電荷蓄積層(MZ202)と半導体基板SBとの間の絶縁膜MZ201に印加される電位差と、電荷蓄積層(MZ202)とゲート電極MG201との間の積層膜LM200に印加される電位差とは、各々の厚みに依存したものとなる。例えば、消去動作時にゲート電極MG201と半導体基板SBとの間に印加する消去用の電圧は一定であり、かつ、絶縁膜MZ201および絶縁膜MZ202の各厚みも一定であるが、積層膜LM200の厚みを変える場合を仮定する。この場合、積層膜LM200の厚みが薄い場合と厚い場合とを比べると、積層膜LM200の厚みが薄い場合よりも厚い場合の方が、絶縁膜MZ201に印加される電位差は小さくなり、かつ、積層膜LM200に印加される電位差は大きくなる。換言すると、積層膜LM200の厚みが薄い場合と厚い場合とを比べると、積層膜LM200の厚みが厚い場合よりも薄い場合の方が、絶縁膜MZ201に印加される電位差は大きくなり、かつ、積層膜LM200に印加される電位差は小さくなる。
【0192】
つまり、積層膜LM200の厚みが薄くなることは、消去動作時に絶縁膜MZ201に印加される電位差が大きくなり、かつ、積層膜LM200に印加される電位差が小さくなることにつながるが、これは、上述のように、消去動作には不利に作用する。このため、積層膜LM200の厚みをある程度確保する必要があり、それによって、消去動作時に絶縁膜MZ201に印加される電位差を小さくし、かつ、積層膜LM200に印加される電位差を大きくすることができる。これにより、消去動作時において、ゲート電極MG201から電荷蓄積層(MZ202)への電荷(ここではホール)の注入を促進するとともに、半導体基板SBから電荷蓄積層(MZ202)への電荷(ここでは電子)の注入を抑制することができる。
【0193】
しかしながら、
図37および
図38に示される第2検討例において、積層膜LM200の厚みを厚くするためには、絶縁膜MZ203の厚みを厚くするか、あるいは、絶縁膜MZ204の厚みを厚くする必要がある。しかしながら、電荷蓄積層(MZ202)に隣接しかつバンドギャップが大きな絶縁膜MZ203の厚みを厚くすることは、消去時において、バンドギャップが大きな絶縁膜MZ203のトンネル確率を低下させるように作用するため、ゲート電極MG201から電荷蓄積層(MZ202)への電荷(ここではホール)の注入を阻害し、消去特性を低下させる虞がある。例えば、消去速度の低下を招いてしまう。かといって、絶縁膜MZ204の厚みを厚くすることは、ゲート絶縁膜である絶縁膜MZ200の信頼性の低下を招く虞がある。
【0194】
すなわち、消去動作時に、半導体基板SBから絶縁膜MZ200に電荷(ここでは電子)が注入されると、その電子の一部は電荷蓄積層(MZ202)に捕獲されるとしても、その電子のかなりの部分は、電荷蓄積層(MZ202)を通り抜けて、ゲート電極MG201側に移動する。消去動作時に半導体基板SBから注入されて絶縁膜MZ200中を移動する電子は、ゲート電極MG201と半導体基板SBとの間に印加される電位差によってエネルギーを得るため、絶縁膜MZ200中を移動してゲート電極MG201に近づくにつれて電子が有するエネルギーが大きくなる。そして、消去動作時に半導体基板SBから注入されて絶縁膜MZ200中をゲート電極MG201側へ移動する電子が有するエネルギーが、その電子が存在する絶縁膜のバンドギャップよりも大きくなると、その絶縁膜中で電子・正孔対が発生し、発生した正孔(ホール)が絶縁膜中の格子(原子の結合)を切断して、絶縁膜の破壊または劣化を引き起こす現象が生じてしまう。このため、積層膜LM200の厚みを確保するために、バンドギャップが小さな絶縁膜MZ204の厚みを厚くすると、消去動作時に半導体基板SBから注入されて絶縁膜MZ200中をゲート電極MG201側へ移動する電子が、厚い絶縁膜MZ204中で電子・正孔対を発生させやすくなり、絶縁膜MZ204の格子が切断されて、絶縁膜MZ200の信頼性が低下する懸念がある。絶縁膜MZ204のバンドギャップを大きくすれば、そのような懸念を改善できるが、絶縁膜MZ204のバンドギャップを大きくすることは、ゲート電極MG201と絶縁膜MZ204との間に形成されるエネルギー障壁(価電子帯側のエネルギー障壁)を高くすることにつながる。ゲート電極MG201と絶縁膜MZ204との間に形成されるエネルギー障壁(価電子帯側のエネルギー障壁)が高いことは、消去動作時にゲート電極MG201から電荷蓄積層(MZ202)へ電荷(ここではホール)を注入しにくくするように作用するため、消去特性の低下につながってしまう。
【0195】
<主要な特徴と効果について>
本実施の形態の半導体装置は、半導体基板SBと、半導体基板SB上に形成されたメモリ素子(MC1,MC2)用のゲート絶縁膜である絶縁膜MZと、絶縁膜MZ上に形成されたメモリ素子(MC1,MC2)用のゲート電極(MG1,MG2)とを有している。絶縁膜MZは、絶縁膜MZ1(第1絶縁膜)と、絶縁膜MZ1上の絶縁膜MZ2(第2絶縁膜)と、絶縁膜MZ2上の絶縁膜MZ3(第3絶縁膜)と、絶縁膜MZ3上の絶縁膜MZ4(第4絶縁膜)と、絶縁膜MZ4上の絶縁膜MZ5(第5絶縁膜)とを有し、絶縁膜MZ2は、電荷蓄積機能を有する絶縁膜である。そして、絶縁膜MZ1および絶縁膜MZ3のそれぞれのバンドギャップは、絶縁膜MZ2のバンドギャップよりも大きく、絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ3のバンドギャップよりも小さく、絶縁膜MZ5のバンドギャップは、絶縁膜MZ4のバンドギャップよりも小さい。このことは、上記
図1および
図2のメモリ素子MC1と上記
図16のメモリ素子MC2とで共通である。すなわち、上記
図1および
図2のメモリ素子MC1の場合は、半導体基板SB上に、メモリ素子MC1用のゲート絶縁膜である絶縁膜MZを介して、メモリ素子MC1用のゲート電極MG1が形成され、上記
図16のメモリ素子MC2の場合は、半導体基板SB上に、メモリ素子MC2用のゲート絶縁膜である絶縁膜MZを介して、メモリ素子MC2用のメモリゲート電極MG2が形成されている。
【0196】
本実施の形態の半導体装置は、不揮発性のメモリ素子を有する半導体装置である。すなわち、本実施の形態の半導体装置は、メモリ素子を有しており、そのメモリ素子のゲート絶縁膜(ここでは絶縁膜MZ)は、電荷蓄積機能を有する絶縁膜(ここでは絶縁膜MZ2)を含んでいる。この電荷蓄積機能を有する絶縁膜に電荷を蓄積または保持することにより、情報の記憶が可能である。また、電荷蓄積機能を有する絶縁膜MZ2を、絶縁膜MZ2のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有する絶縁膜MZ1と絶縁膜MZ3とで挟むことにより、絶縁膜MZ2は、電荷蓄積層として機能することができ、絶縁膜MZ2を挟む絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ1とは、それぞれ電荷ブロック層(または電荷閉じ込め層)として機能することができる。
【0197】
本実施の形態の主要な特徴のうちの一つは、電荷蓄積機能を有する絶縁膜MZ2とゲート電極(MG1,MG2)との間に、絶縁膜MZ3とその上の絶縁膜MZ4とその上の絶縁膜MZ5とを有する積層膜LMが介在し、絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ3のバンドギャップよりも小さく、絶縁膜MZ5のバンドギャップは、絶縁膜MZ4のバンドギャップよりも小さいことである。すなわち、絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ4と絶縁膜MZ5とは、絶縁膜MZ2側からゲート電極(MG1,MG2)側に向かって、この順で積層されており、かつ、この順でバンドギャップの大きさが小さくなっている。
【0198】
このため、絶縁膜MZ3のバンドギャップは、絶縁膜MZ4および絶縁膜MZ5のそれぞれのバンドギャップよりも大きく、かつ、絶縁膜MZ5のバンドギャップは、絶縁膜MZ3および絶縁膜MZ4のそれぞれのバンドギャップよりも小さい。このため、電荷蓄積層として機能する絶縁膜MZ2に隣接する絶縁膜MZ3のバンドギャップを大きくすることで、メモリ素子(MC1,MC2)の電荷保持特性(リテンション特性)を向上させることができるとともに、ゲート電極(MG1、MG2)に隣接する絶縁膜MZ5のバンドギャップを小さくすることで、消去特性を向上させることができる。
【0199】
すなわち、電荷蓄積機能を有する絶縁膜MZ2とゲート電極(MG1,MG2)との間に、絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ4と絶縁膜MZ5との積層膜LMを介在させ、電荷保持特性に最も寄与するのは電荷蓄積層である絶縁膜MZ2に隣接する絶縁膜MZ3であることから、絶縁膜MZ3のバンドギャップを絶縁膜MZ4,MZ5の各バンドギャップよりも大きくして、電荷保持特性を向上させる。つまり、電荷保持特性を向上させるには、電荷蓄積機能を有する絶縁膜MZ2と積層膜LMとの界面に形成されるエネルギー障壁を高くすることが特に有効であるが、それは、絶縁膜MZ2に隣接する絶縁膜MZ3のバンドギャップを大きくすることで達成できる。そして、消去動作時にゲート電極(MG1,MG2)から絶縁膜MZ中に電荷(ここではホール)を注入しやすくするためには、ゲート電極(MG1,MG2)に隣接する絶縁膜MZ5のバンドギャップを小さくすることが最も有効であることから、絶縁膜MZ5のバンドギャップを絶縁膜MZ3,MZ4の各バンドギャップよりも小さくして、消去特性を向上させる。つまり、消去動作時にゲート電極(MG1,MG2)から絶縁膜MZ中に電荷(ホール)を注入しやすくするためには、ゲート電極(MG1,MG2)と絶縁膜MZとの界面に形成されるエネルギー障壁(価電子帯側のエネルギー障壁)を低くすることが特に有効であるが、それは、ゲート電極(MG1,MG2)に隣接する絶縁膜MZ5のバンドギャップを小さくすることで達成できる。これにより、電荷保持特性(リテンション特性)の向上と、消去特性を向上とを両立させることができる。
【0200】
すなわち、電荷蓄積層(MZ2,MZ102,MZ202)とゲート電極(MG1,MG2,MG101,MG201)との間に介在し、かつ、その電荷蓄積層に隣接する絶縁膜(MZ3,MZ103,MZ203)のバンドギャップが小さいと、電荷蓄積層に保持されている電荷がゲート電極側に抜ける現象が生じやすくなり、電荷保持特性が低下してしまう。また、電荷蓄積層(MZ2,MZ102,MZ202)とゲート電極(MG1,MG2,MG101,MG201)との間に介在し、かつ、そのゲート電極に隣接する絶縁膜(MZ5,MZ103,MZ204)のバンドギャップが大きいと、消去動作時にそのゲート電極からゲート絶縁膜(MZ,MZ100,MZ200)側に電荷(ここではホール)を注入しにくくなる。このため、本実施の形態では、電荷蓄積機能を有する絶縁膜MZ2とゲート電極(MG1,MG2)との間に介在する絶縁膜MZ3,MZ4,MZ5のうち、絶縁膜MZ2に隣接する絶縁膜MZ3のバンドギャップを最も大きくして、電荷保持特性を向上させ、ゲート電極(MG1,MG2)に隣接する絶縁膜MZ5のバンドギャップを最も小さくして、消去特性を向上させている。
【0201】
更に、本実施の形態では、電荷蓄積機能を有する絶縁膜MZ2に隣接する絶縁膜MZ3と、ゲート電極(MG1,MG2)に隣接する絶縁膜MZ5との間に、絶縁膜MZ4を介在させ、この絶縁膜MZ4のバンドギャップを、絶縁膜MZ3のバンドギャップよりも小さく、かつ、絶縁膜MZ5のバンドギャップよりも大きくしている。これにより、ゲート絶縁膜である絶縁膜MZの信頼性を向上させることができ、その理由は、以下のようなものである。
【0202】
すなわち、電荷蓄積機能を有する絶縁膜MZ2とゲート電極(MG1、MG2)との間に、絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ4と絶縁膜MZ5との積層膜LMが介在しているが、この積層膜LMの厚みは、ある程度の厚みを確保する必要がある。その理由は、上記
図37および
図38の第2検討例で説明した、積層膜LM200の厚みをある程度確保する必要があることと同様である。すなわち、上記
図37および
図38の第2検討例でも説明したように、積層膜LMの厚みが薄くなることは、消去動作時に絶縁膜MZ1に印加される電位差が大きくなり、かつ、積層膜LMに印加される電位差が小さくなることにつながる。これは、消去動作時に、ゲート電極(MG1,MG2)側から絶縁膜MZ側への電荷(ここではホール)の注入を抑制し、半導体基板SB側から絶縁膜MZ側への電荷(ここでは電子)の注入を促進するように作用するため、消去動作には不利に働く。なお、消去用の電圧によって、ゲート電極(MG1、MG2)から電荷蓄積層である絶縁膜MZ2へ注入され得る電荷(ここではホール)の極性と、半導体基板SBから電荷蓄積層である絶縁膜MZ2へ注入され得る電荷(ここでは電子)の極性とは、互いに反対である。
【0203】
このため、積層膜LMの厚みをある程度確保する必要があり、それによって、消去動作時に、絶縁膜MZ1に印加される電位差を小さくし、かつ、積層膜LMに印加される電位差を大きくすることができる。
【0204】
しかしながら、本実施の形態とは異なり、絶縁膜MZ4を設けずに、電荷蓄積層(MZ2)に隣接しかつバンドギャップが大きな絶縁膜MZ3の厚みを厚くすることによって積層膜LMの厚みを確保することは、ゲート電極(MG1、MG2)から電荷蓄積層(MZ2)への電荷(ここではホール)の注入を阻害し、消去特性を低下させる虞がある。かといって、本実施の形態とは異なり、絶縁膜MZ4を設けずに、ゲート電極(MG1,MG2)に隣接しかつバンドギャップが小さな絶縁膜MZ5の厚みを厚くすることによって積層膜LMの厚みを確保することは、ゲート絶縁膜である絶縁膜MZの信頼性の低下を招く虞がある。ここで、本実施の形態とは異なり、絶縁膜MZ4を設けない場合は、上記
図37および
図38に示される第2検討例に相当している。
【0205】
すなわち、本実施の形態とは異なり、絶縁膜MZ4を設けずに、電荷蓄積層(MZ2)に隣接しかつバンドギャップが大きな絶縁膜MZ3の厚みを厚くすることによって積層膜LMの厚みを確保した場合は、上記
図37および
図38に示される第2検討例において、絶縁膜MZ203の厚みを厚くすることによって積層膜LM200の厚みを確保した場合に相当している。この場合、上記
図37および
図38の第2検討例でも説明したように、電荷蓄積層(MZ202,MZ2)に隣接しかつバンドギャップが大きな絶縁膜(MZ203,MZ3)のトンネル確率が低くなるため、ゲート電極(MG201,MG1,MG2)から電荷蓄積層(MZ202,MZ2)へ電荷(ここではホール)が注入されにくくなり、消去特性が低下する虞がある。例えば、消去速度の低下を招いてしまう。
【0206】
また、本実施の形態とは異なり、絶縁膜MZ4を設けずに、ゲート電極(MG1,MG2)に隣接しかつバンドギャップが小さな絶縁膜MZ5の厚みを厚くすることによって積層膜LMの厚みを確保した場合は、上記
図37および
図38に示される第2検討例において、絶縁膜MZ204の厚みを厚くすることによって積層膜LM200の厚みを確保した場合に相当している。この場合、上記
図37および
図38の第2検討例でも説明したように、消去動作時に半導体基板SBから注入されてゲート絶縁膜(MZ200,MZ)中をゲート電極(MG201,MG1,MG2)側へ移動する電子が、その電子が存在する絶縁膜のバンドギャップよりも大きなエネルギーを有することにより、その絶縁膜中で電子・正孔対が発生しやすくなる。このときに発生した正孔が絶縁膜中の格子(原子の結合)を切断して、ゲート絶縁膜(MZ200,MZ)信頼性を低下させる懸念がある。
【0207】
それに対して、本実施の形態では、絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ5との間に絶縁膜MZ4を介在させており、この絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ3のバンドギャップよりも小さく、かつ、絶縁膜MZ5のバンドギャップよりも大きい。すなわち、電荷蓄積層(MZ2)に隣接しかつバンドギャップが大きな絶縁膜MZ3と、ゲート電極(MG1,MG2)に隣接しかつバンドギャップが小さな絶縁膜MZ5との間に、絶縁膜MZ3のバンドギャップよりも小さくかつ絶縁膜MZ5のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有する絶縁膜MZ4を配置している。
【0208】
絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ5との間に絶縁膜MZ4を設けない場合に比べて、絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ5との間に絶縁膜MZ4を設けた場合は、絶縁膜MZ4の厚みの分だけ、電荷蓄積層(MZ2)とゲート電極(MG1,MG2)との間に介在する積層膜LMの厚みを厚くすることができる。このため、絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ5との間に絶縁膜MZ4を設けることにより、絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ5の各厚みを厚くしなくとも、積層膜LMの厚みを稼ぐことができる。絶縁膜MZ4を設けることにより積層膜LMの厚みを稼ぐことができることで、消去動作時において、絶縁膜MZ1に印加される電位差を小さくし、かつ、積層膜LMに印加される電位差を大きくすることができる。これにより、消去動作時において、ゲート電極(MG1、MG2)から絶縁膜MZ2(電荷蓄積層)への電荷(ここではホール)の注入を促進するとともに、半導体基板SBから絶縁膜MZ2(電荷蓄積層)への電荷(ここでは電子)の注入を抑制することができる。従って、メモリ素子(MC1,MC2)の消去特性を向上させることができる。
【0209】
本実施の形態では、絶縁膜MZ4を設けることにより積層膜LMの厚みを稼ぐことができるため、積層膜LMの厚みを確保しながら、絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ5の各厚みを抑制することができる。そして、絶縁膜MZ4のバンドギャップを、絶縁膜MZ3のバンドギャップよりも小さくしている分、消去動作時にゲート電極(MG1,MG2)から絶縁膜MZ2(電荷蓄積層)へ電荷(ここではホール)を注入しやすくすることができる。これにより、例えば、消去速度を向上させることができる。また、絶縁膜MZ4のバンドギャップを、絶縁膜MZ5のバンドギャップよりも大きくしている分、消去動作時に半導体基板SBから注入されてゲート絶縁膜(絶縁膜MZ)中をゲート電極(MG1,MG2)側へ移動する電子が電子・正孔対を発生しにくくなるため、電子・正孔対の発生に起因してゲート絶縁膜中の格子(原子の結合)が切断される現象を抑制または防止することができる。
【0210】
すなわち、絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ5との間に絶縁膜MZ4を設け、この絶縁膜MZ4のバンドギャップを絶縁膜MZ5のバンドギャップよりも大きくしたことで、絶縁膜MZ中での電子・正孔対の発生を抑止し、絶縁膜MZ3のバンドギャップよりも小さくしたことで、消去動作時のゲート電極(MG1,MG2)側から絶縁膜MZ2への電荷(ここではホール)のトンネル確率を高めている。これにより、ゲート絶縁膜の信頼性を高めることができるとともに、消去特性の向上を図ることができる。従って、絶縁膜MZを用いたメモリ素子(MC1,MC2)を有する半導体装置の信頼性を向上させることができる。また、絶縁膜MZを用いたメモリ素子(MC1,MC2)を有する半導体装置の性能を向上させることができる。
【0211】
このように、本実施の形態では、電荷蓄積機能を有する絶縁膜MZ2とゲート電極(MG1,MG2)との間に、絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ4と絶縁膜MZ5とを有する積層膜LMを介在させるとともに、絶縁膜MZ4のバンドギャップを、絶縁膜MZ3のバンドギャップよりも小さくし、絶縁膜MZ5のバンドギャップを、絶縁膜MZ4のバンドギャップよりも小さくしている。電荷蓄積機能を有する絶縁膜MZ2に隣接する位置に、バンドギャップが大きな絶縁膜MZ3を配置することにより、電荷保持特性(リテンション特性)を向上させることができる。また、ゲート電極(MG1,MG2)に隣接する位置に、バンドギャップが小さな絶縁膜MZ5を配置することにより、消去動作時にゲート電極(MG1,MG2)側から絶縁膜MZ側に電荷(ここではホール)を注入しやすくなり、消去特性を向上させることができる。そして、積層膜LMの中間層である絶縁膜MZ4のバンドギャップを、絶縁膜MZ3のバンドギャップより小さく、かつ、絶縁膜MZ5のバンドギャップより大きくしたことで、消去動作時に、ゲート電極(MG1,MG2)から絶縁膜MZ2へ注入される電荷のトンネル確率の低下を防ぎながら、絶縁膜MZ中での電子・正孔対の発生を抑制または防止して、絶縁膜MZの劣化を防ぐことができる。これらにより、絶縁膜MZを用いたメモリ素子(MC1,MC2)を有する半導体装置の性能を向上させることができる。また、絶縁膜MZを用いたメモリ素子(MC1,MC2)を有する半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0212】
このように、本実施の形態では、メモリ素子(MC1,MC2)のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜MZの積層構造について、バンド構造を工夫し、それによって、メモリ素子(MC1,MC2)を有する半導体装置の性能や信頼性を向上させている。
【0213】
また、本実施の形態では、上述したバンドギャップの関係が成り立つように、絶縁膜MZ1,MZ2,MZ3,MZ4,MZ5のそれぞれについて、次のような材料を用いている。
【0214】
すなわち、絶縁膜MZ1は、酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜からなり、絶縁膜MZ2は、窒化シリコン膜からなり、絶縁膜MZ3,MZ4,MZ5は、それぞれ、酸素(O)と窒素(N)とのうちの少なくとも一方とシリコン(Si)とを構成元素として含む膜からなる。そして、絶縁膜MZ4の窒素(N)濃度は、絶縁膜MZ3の窒素(N)濃度よりも大きく、絶縁膜MZ5の窒素(N)濃度は、絶縁膜MZ4の窒素(N)濃度よりも大きい。
【0215】
ここで、窒化シリコン膜のバンドギャップは、酸窒化シリコン膜のバンドギャップよりも小さく、酸窒化シリコン膜のバンドギャップは、酸化シリコン膜のバンドギャップよりも小さい。そして、酸窒化シリコン膜のバンドギャップは、その酸窒化シリコン膜の窒素(N)濃度が大きくなるほど、小さくなる。このため、高窒素濃度の酸窒化シリコン膜のバンドギャップは、低窒素濃度の酸窒化シリコン膜のバンドギャップよりも小さくなる。なお、ある膜の窒素(N)濃度に言及する場合、その膜における窒素(N)の濃度(含有率)を原子%で表したものが、その膜の窒素(N)濃度に対応している。例えば、窒素(N)濃度が30原子%の酸窒化シリコン膜は、窒素(N)濃度が20原子%の酸窒化シリコン膜よりも、窒素(N)濃度が大きい(高い)ことになる。
【0216】
また、絶縁膜MZ4の窒素濃度は、絶縁膜MZ3の窒素濃度よりも大きく、絶縁膜MZ5の窒素濃度は、絶縁膜MZ4の窒素濃度よりも大きいが、これを別の表現で言うと、絶縁膜MZ4における窒素(N)の組成比は、絶縁膜MZ3における窒素(N)の組成比よりも大きく、絶縁膜MZ5における窒素(N)の組成比は、絶縁膜MZ4における窒素(N)の組成比よりも大きい。更に別の表現で言うと、絶縁膜MZ4の窒素(N)含有率は、絶縁膜MZ3の窒素(N)含有率よりも大きく、絶縁膜MZ5の窒素(N)含有率は、絶縁膜MZ4の窒素(N)含有率よりも大きい。
【0217】
本実施の形態では、絶縁膜MZ3,MZ4,MZ5を、それぞれ、酸素(O)と窒素(N)とのうちの少なくとも一方とシリコン(Si)とを構成元素として含む膜として形成するとともに、絶縁膜MZ4の窒素(N)濃度を、絶縁膜MZ3の窒素(N)濃度よりも大きくし、絶縁膜MZ5の窒素(N)濃度を、絶縁膜MZ4の窒素(N)濃度よりも大きくしている。これにより、絶縁膜MZ4のバンドギャップを、絶縁膜MZ3のバンドギャップよりも小さくし、絶縁膜MZ5のバンドギャップを、絶縁膜MZ4のバンドギャップよりも小さくすることができる。また、絶縁膜MZ1を酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜により形成し、絶縁膜MZ2を窒化シリコン膜により形成し、絶縁膜MZ3を、酸素(O)と窒素(N)とのうちの少なくとも一方とシリコン(Si)とを構成元素として含む膜として形成することにより、絶縁膜MZ1および絶縁膜MZ3のそれぞれのバンドギャップを、絶縁膜MZ2のバンドギャップよりも大きくすることができる。このようなバンドギャップの関係を実現することで、上述したような効果を得ることができる。
【0218】
また、本実施の形態では、絶縁膜MZ3,MZ4,MZ5を、それぞれ、酸素(O)と窒素(N)とのうちの少なくとも一方とシリコン(Si)とを構成元素として含む膜として形成し、絶縁膜MZ4の窒素(N)濃度を、絶縁膜MZ3の窒素(N)濃度よりも大きくし、絶縁膜MZ5の窒素(N)濃度を、絶縁膜MZ4の窒素(N)濃度よりも大きくしている。酸化シリコン膜と酸窒化シリコン膜と窒化シリコン膜とは、いずれも、「酸素(O)と窒素(N)とのうちの少なくとも一方とシリコン(Si)とを構成元素として含む膜」に該当している。このため、絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ4との両方を酸窒化シリコン膜により形成するとともに、絶縁膜MZ4の窒素(N)濃度を絶縁膜MZ3の窒素(N)濃度よりも大きくした場合も許容でき、これにより、絶縁膜MZ4のバンドギャップを、絶縁膜MZ3のバンドギャップよりも小さくすることができる。また、絶縁膜MZ4と絶縁膜MZ5との両方を酸窒化シリコン膜により形成するとともに、絶縁膜MZ5の窒素(N)濃度を絶縁膜MZ4の窒素(N)濃度よりも大きくする場合も許容でき、これにより、絶縁膜MZ5のバンドギャップを、絶縁膜MZ4のバンドギャップよりも小さくすることができる。
【0219】
但し、電荷保持特性をできるだけ向上させるためには、電荷蓄積機能を有する絶縁膜MZ2に隣接する絶縁膜MZ3のバンドギャップはできるだけ大きくすることが望ましく、また、消去動作時にゲート電極(MG1,MG2)から絶縁膜MZ中に電荷を注入しやすくするためには、ゲート電極に隣接する絶縁膜MZ5のバンドギャップはできるだけ小さくすることが望ましい。このため、絶縁膜MZ3は、酸化シリコン膜からなることが、より好ましく、絶縁膜MZ4は、酸窒化シリコン膜からなることがより好ましく、絶縁膜MZ5は、窒化シリコン膜からなることがより好ましい。これは、絶縁膜MZ3を酸窒化シリコン膜により形成した場合よりも、絶縁膜MZ3を酸化シリコン膜により形成した場合の方が、絶縁膜MZ3のバンドギャップを大きくすることができ、また、絶縁膜MZ5を酸窒化シリコン膜により形成した場合よりも、絶縁膜MZ5を窒化シリコン膜により形成した場合の方が、絶縁膜MZ5のバンドギャップを小さくすることができるからである。
【0220】
ここで、絶縁膜MZを構成する各絶縁膜MZ1,MZ2,MZ3,MZ4,MZ5の窒素(N)濃度分布の一例を示すグラフを、
図39に示してある。
図39のグラフの横軸は、絶縁膜MZの厚み方向の位置に対応し、
図39のグラフの縦軸は、窒素(N)濃度に対応している。
図39のグラフは、絶縁膜MZ1を酸化シリコン膜により形成し、絶縁膜MZ2を窒化シリコン膜により形成し、絶縁膜MZ3を酸化シリコン膜により形成し、絶縁膜MZ4を酸窒化シリコン膜により形成し、絶縁膜MZ5を窒化シリコン膜により形成した場合に対応している。
【0221】
絶縁膜MZ1を酸窒化シリコン膜により形成した場合は、
図39のグラフにおいて、絶縁膜MZ1の窒素濃度は、ゼロよりも大きく、かつ、絶縁膜MZ2の窒素濃度よりも小さくなる。また、絶縁膜MZ3を酸窒化シリコン膜により形成した場合は、
図39のグラフにおいて、絶縁膜MZ3の窒素濃度は、ゼロよりも大きく、かつ、絶縁膜MZ4の窒素濃度よりも小さくなる。また、絶縁膜MZ5を酸窒化シリコン膜により形成した場合は、
図39のグラフにおいて、絶縁膜MZ5の窒素濃度は、絶縁膜MZ4の窒素濃度よりも大きく、かつ、絶縁膜MZ2の窒素濃度よりも小さくなる。いずれにしても、
図39のグラフにおいて、絶縁膜MZ2の窒素濃度が、絶縁膜MZ1,MZ3のそれぞれの窒素濃度よりも大きく、かつ、絶縁膜MZ4の窒素濃度が絶縁膜MZ3の窒素濃度よりも大きく、かつ、絶縁膜MZ5の窒素濃度が絶縁膜MZ4の窒素濃度よりも大きいという関係は、維持される。絶縁膜MZ5の好適な窒素濃度としては、例えば40原子%以上(40〜57原子%程度)を例示できる。また、絶縁膜MZ4の好適な窒素濃度としては、例えば10〜30原子%程度を例示できる。
【0222】
また、
図39のグラフのように、絶縁膜MZ2,MZ5をそれぞれ窒化シリコン膜により形成した場合は、その窒化シリコン膜の組成がSi
3N
4であれば、その窒化シリコン膜の窒素濃度は約57原子%である。但し、窒化シリコン膜の組成比が化学量論比(ストイキオメトリ)のSi
3N
4からずれる場合もあり得、その場合は、窒化シリコン膜の窒素濃度は約57原子%からずれた値になる。また、絶縁膜MZ2を構成する窒化シリコン膜の組成比と、絶縁膜MZ5を構成する窒化シリコン膜の組成比とが相違している場合もあり得る。
【0223】
消去動作時にゲート電極(MG1,MG2)から絶縁膜MZ中に電荷を注入しやすくするためには、ゲート電極に隣接する絶縁膜MZ5のバンドギャップはできるだけ小さくすることが望ましい。このため、絶縁膜MZ5のバンドギャップは、電荷蓄積機能を有する絶縁膜MZ2のバンドギャップと同じか、電荷蓄積機能を有する絶縁膜MZ2のバンドギャップよりも小さいことが、より好ましい。これにより、消去動作時にゲート電極(MG1,MG2)から絶縁膜MZ中に電荷を、より注入しやすくすることができる。また、絶縁膜MZ5を、絶縁膜MZ2と同種の材料により形成すれば、例えば、絶縁膜MZ2を窒化シリコン膜により形成した場合には、絶縁膜MZ5も窒化シリコン膜により形成すれば、絶縁膜MZ5のバンドギャップを、電荷蓄積機能を有する絶縁膜MZ2のバンドギャップと同じか、それよりも小さくすることができる。
【0224】
なお、絶縁膜MZ2と絶縁膜MZ5の両方を窒化シリコン膜により形成した場合は、絶縁膜MZ5を構成する窒化シリコン膜におけるシリコン(Si)の組成比を、絶縁膜MZ2を構成する窒化シリコン膜におけるシリコン(Si)の組成比よりも大きくすることで、絶縁膜MZ5のバンドギャップを、電荷蓄積機能を有する絶縁膜MZ2のバンドギャップよりも小さくすることができる。これにより、絶縁膜MZ5のバンドギャップを更に小さくすることができるため、消去動作時にゲート電極(MG1,MG2)から絶縁膜MZ中に更に電荷を注入しやすくすることができるようになる。
【0225】
ここで、「絶縁膜MZ5を構成する窒化シリコン膜におけるシリコンの組成比を、絶縁膜MZ2を構成する窒化シリコン膜におけるシリコンの組成比よりも大きくする」ことを別の表現で言うと、次のようになる。すなわち、絶縁膜MZ5を構成する窒化シリコン膜におけるシリコン(Si)の濃度(原子%表記)を、絶縁膜MZ2を構成する窒化シリコン膜におけるシリコン(Si)の濃度(原子%表記)よりも大きくする。更に別の表現で言うと、絶縁膜MZ5を構成する窒化シリコン膜の組成をSi
xN
yと表したときのx/(x+y)の値を、絶縁膜MZ2を構成する窒化シリコン膜の組成をSi
xN
yと表したときのx/(x+y)の値よりも大きくする。
【0226】
また、上記
図37および
図38に示される第2検討例の場合、ゲート電極MG201に隣接する絶縁膜MZ204に、窒化シリコン膜を用いた場合を仮定する。この場合、絶縁膜MZ204に窒化シリコン膜を用いることは、絶縁膜MZ204のバンドギャップを小さくする上では有効であるが、窒化シリコン膜はトラップ準位を有している。このため、窒化シリコン膜からなる絶縁膜MZ204の厚みを厚くすると、消去動作時にゲート電極MG201から絶縁膜MZ200に注入された電荷(ここではホール)が、電荷蓄積層として機能すべき絶縁膜MZ202に到達する前に絶縁膜MZ204で捕獲されやすくなってしまい、消去動作を行いにくくなる虞がある。すなわち、絶縁膜MZ204に窒化シリコン膜を用いた場合は、窒化シリコン膜からなる絶縁膜MZ204の厚みを厚くすることは、上述したような電子・正孔対の発生に起因したゲート絶縁膜(絶縁膜MZ200)の信頼性の低下に加えて、ゲート電極MG201からの電荷が窒化シリコン膜からなる絶縁膜MZ204に捕獲されてしまうことに起因した消去特性の劣化の問題も発生してしまう。しかしながら、上述のように積層膜LM200の厚みはある程度確保する必要があるため、窒化シリコン膜からなる絶縁膜MZ204の厚みを薄くする代わりに絶縁膜MZ203の厚みを厚くしてしまうと、消去時において、バンドギャップが大きな絶縁膜MZ203のトンネル確率を低下させるように作用するため、消去特性を低下させる虞がある。
【0227】
それに対して、本実施の形態では、上述したように、絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ5との間に絶縁膜MZ4を介在させており、絶縁膜MZ4を設けた分、絶縁膜MZ5の厚みを抑制することができる。このため、絶縁膜MZ5に窒化シリコン膜を用いた場合でも、窒化シリコン膜からなる絶縁膜MZ5の厚みを抑制できることで、消去動作時にゲート電極(MG1、MG2)から絶縁膜MZに注入された電荷(ここではホール)が、電荷蓄積機能を有する絶縁膜MZ2に到達する前に絶縁膜MZ5で捕獲されてしまう現象を抑制または防止することができる。絶縁膜MZ4は、絶縁膜MZ5よりも窒素(N)濃度が低いため、絶縁膜MZ5よりもトラップ準位が形成されにくい。このため、ゲート電極(MG1,MG2)に隣接する絶縁膜MZ5に、トラップ準位が形成されやすい窒化シリコン膜を用いた場合でも、絶縁膜MZ5の厚みを厚くせずに絶縁膜MZ4を設けた分、絶縁膜MZ5,MZ4への電荷の捕獲を抑制または防止して、消去動作を的確に行うことができるようになる。
【0228】
このため、絶縁膜MZ5の材料として、電荷蓄積機能を有する絶縁膜MZ2と同種の材料を用いた場合には、絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ5との間に絶縁膜MZ4を設けることは、上述したような電子・正孔対の発生を抑制または防止してゲート絶縁膜(絶縁膜MZ)の信頼性を向上させる効果に加えて、絶縁膜MZ5に電荷が捕獲される現象を抑制または防止する効果も奏する。
【0229】
また、本実施の形態は、上述のように、ゲート電極(MG1,MG2)から絶縁膜MZの絶縁膜MZ2に電荷を注入することによって、メモリ素子(MC1、MC2)の消去動作を行う場合に適用すれば、効果が極めて大きい。これは、本実施の形態では、ゲート絶縁膜用の絶縁膜MZの積層構造を工夫することによって、ゲート電極(MG1,MG2)からゲート絶縁膜中のトラップ性絶縁膜(ここでは絶縁膜MZ2)に電荷を注入することによって消去動作を行う場合に生じ得る課題を解決し、半導体装置の性能向上を図ることができるためである。
【0230】
また、本実施の形態では、絶縁膜MZ1の厚みよりも、積層膜LMの厚みが厚いことが、より好ましい。すなわち、絶縁膜MZ1の厚みよりも、絶縁膜MZ3の厚みと絶縁膜MZ4の厚みと絶縁膜MZ5の厚みとの合計が大きいことが、より好ましい。なお、絶縁膜MZ1の厚み、絶縁膜MZ2の厚み、絶縁膜MZ3の厚み、絶縁膜MZ4の厚み、絶縁膜MZ5の厚み、あるいは積層膜LMの厚みに言及する場合、半導体基板SBとゲート電極(MG1,MG2)との間におけるその膜の厚みのことを指している。
【0231】
上述のように、消去動作時には、絶縁膜MZ1に印加される電位差を小さくして半導体基板SBから絶縁膜MZ側への電荷(ここでは電子)の注入を抑制し、積層膜LMに印加される電位差を大きくしてゲート電極(MG1,MG2)から絶縁膜MZ側への電荷(ここではホール)の注入を促進することが望ましい。この観点で、絶縁膜MZ1の厚みよりも、積層膜LMの厚みが厚いことが、より好ましく、これにより、半導体基板SBとゲート電極(MG1,MG2)との間に消去用の電圧を印加したときに、半導体基板SBから絶縁膜MZ側への電荷(ここでは電子)の注入をより的確に抑制することができるようになる。従って、消去動作を、より的確に行うことができるようになる。
【0232】
また、絶縁膜MZ3,MZ4,MZ5の各厚みのうち、絶縁膜MZ3の厚みは、電荷蓄積機能を有する絶縁膜MZ2側への電荷(ここではホール)のトンネル確率に与える影響が最も大きい。このため、絶縁膜MZ3,MZ4,MZ5の各厚みのうち、絶縁膜MZ3の厚みを厚くすることは、消去特性の劣化につながってしまう。このため、不揮発性メモリとしての機能を十分に発揮させるためには、絶縁膜MZ3の厚みを厚くすることは、できるだけ避けることが望ましい。
【0233】
このため、本実施の形態では、絶縁膜MZ3,MZ4,MZ5のうち、絶縁膜MZ3を最も薄くすることが、より好ましい。すなわち、絶縁膜MZ3の厚みは、絶縁膜MZ4の厚みよりも薄く、かつ、絶縁膜MZ5の厚みよりも薄いことが、より好ましい。これにより、絶縁膜MZ3の厚みを抑制することができるため、消去動作時において、電荷蓄積機能を有する絶縁膜MZ2側への電荷(ここではホール)のトンネル確率を高めることができ、消去特性を的確に向上させることができる。このため、不揮発性メモリとしての機能を、より的確に発揮させることができるようになる。
【0234】
また、上述したように、絶縁膜MZ3,MZ4,MZ5のうち、バンドギャップが最も小さい絶縁膜MZ5の厚みを厚くすることは、上記電子・正孔対の発生に伴う絶縁膜MZの劣化を招きやすくし、ゲート絶縁膜である絶縁膜MZの信頼性を低下させる虞がある。このため、絶縁膜MZ3の厚みだけでなく、絶縁膜MZ5の厚みも抑制することが望ましい。一方、絶縁膜MZ4は、電荷蓄積機能を有する絶縁膜MZ2にもゲート電極(MG1,MG2)にも隣接しておらず、かつ、絶縁膜MZ3のバンドギャップよりも小さく、かつ、絶縁膜MZ5のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有している。このため、絶縁膜MZ4の厚みを厚くすることは、絶縁膜MZ3の厚みを厚くすることや、絶縁膜MZ5の厚みを厚くすることに比べて、不利益が生じにくい。このため、積層膜LMの厚みは、絶縁膜MZ4によって稼ぐことが望ましい。
【0235】
このため、本実施の形態では、絶縁膜MZ3,MZ4,MZ5のうち、絶縁膜MZ4の厚みを最も厚くすることが、より好ましい。すなわち、絶縁膜MZ4の厚みは、絶縁膜MZ3の厚みよりも厚く、かつ、絶縁膜MZ5の厚みよりも厚いことが、より好ましい。これにより、絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ5の各厚みを抑制しながら、積層膜LMの厚みを確保することができる。
【0236】
また、上述したように、消去動作時に絶縁膜MZ2側への電荷のトンネル確率を高めるためには、絶縁膜MZ3の厚みを抑制することが望ましい。この観点では、絶縁膜MZ3の厚みは、2nm以下であれば、より好ましい。また、絶縁膜MZ3の厚みが1nmであれば、絶縁膜MZ3を的確に形成しやすくなる。このため、絶縁膜MZ3の厚みは、1nm以上で2nm以下、すなわち1〜2nmが最も好ましい。
【0237】
また、上述したように、絶縁膜MZの信頼性を向上するためには、絶縁膜MZ5の厚みを抑制することが望ましい。この観点では、絶縁膜MZ5の厚みは、3nm以下であれば、より好ましい。また、絶縁膜MZ5の厚みが2nm以上であれば、バンドギャップを上手く形成しやすくなる。このため、絶縁膜MZ5の厚みは、2nm以上で3nm以下、すなわち2〜3nmが最も好ましい。
【0238】
また、絶縁膜MZ4の厚みは、トラップ性絶縁膜である絶縁膜MZ2とゲート電極(MG1,MG2)との間に介在する積層膜LMとして相応しい厚みを得られるように、様々な値に設定することができる。一例を挙げれば、絶縁膜MZ4の厚みは、4〜6nm程度に設定することができる。
【0239】
(実施の形態2)
本実施の形態2は、絶縁膜MZのうちの絶縁膜MZ4の構成が相違している点以外は、上記実施の形態1と基本的には同じである。このため、本実施の形態2のメモリ素子の構成は、絶縁膜MZ4以外は、上記実施の形態1のメモリ素子MC1またはメモリ素子MC2と同様である。このため、ここでは、上記実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0240】
図40は、本実施の形態2のメモリ素子のエネルギーバンド構造を示す説明図であり、上記実施の形態1の上記
図32に対応するものである。上記
図32と同様に、
図40は、上記
図2のA−A線に沿った位置でのエネルギーバンド構造または上記
図16のB−B線の位置でのエネルギーバンド構造を示している。
【0241】
上記実施の形態1では、上記
図32に示されるように、絶縁膜MZ4のバンドギャップはほぼ一定である。すなわち、絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ4の厚み方向の位置によらず、ほぼ一定である。そして、絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ3のバンドギャップよりも小さく、かつ、絶縁膜MZ5のバンドギャップよりも大きい。
【0242】
それに対して、本実施の形態2では、
図40からも分かるように、絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ3側から絶縁膜MZ5側に、連続的に減少している。すなわち、絶縁膜MZ4のバンドギャップを厚み方向に見ると、絶縁膜MZ3側から絶縁膜MZ5側に向かって、連続的に(徐々に、なだらかに)減少している。別の表現をすると、本実施の形態2では、絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ5側から絶縁膜MZ3側に、連続的に増加している。
【0243】
つまり、本実施の形態2では、絶縁膜MZ4のバンドギャップを厚み方向に見たとき、絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ4との界面付近で、絶縁膜MZ4のバンドギャップは最も大きくなり、絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ4との界面から絶縁膜MZ4と絶縁膜MZ5との界面側に向かうにしたがって、絶縁膜MZ4のバンドギャップは連続的に減少する。そして、絶縁膜MZ4と絶縁膜MZ5との界面付近で、絶縁膜MZ4のバンドギャップは最も小さくなる。
【0244】
なお、絶縁膜MZ3のバンドギャップはほぼ一定であり、また、絶縁膜MZ5のバンドギャップはほぼ一定であるが、これは、本実施の形態2と上記実施の形態1とで共通である。また、絶縁膜MZ1のバンドギャップはほぼ一定であり、また、絶縁膜MZ2のバンドギャップはほぼ一定であるが、これも、本実施の形態2と上記実施の形態1とで共通である。
【0245】
絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ3のバンドギャップよりも小さく、かつ、絶縁膜MZ5のバンドギャップよりも大きいが、これも、本実施の形態2と上記実施の形態1とで共通である。なぜなら、本実施の形態2では、絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ4との界面付近で、絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ3のバンドギャップとほぼ同等の大きさであるが、そこから絶縁膜MZ5側に向かうにしたがって絶縁膜MZ4のバンドギャップは連続的に減少するため、絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ3のバンドギャップよりも小さいと言うことができる。また、本実施の形態2では、絶縁膜MZ4と絶縁膜MZ5との界面付近で、絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ5のバンドギャップとほぼ同等の大きさであるが、そこから絶縁膜MZ3側に向かうにしたがって絶縁膜MZ4のバンドギャップは連続的に増加するため、絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ5のバンドギャップよりも大きいと言うことができる。このため、本実施の形態2においても、絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ3のバンドギャップよりも小さく、かつ、絶縁膜MZ5のバンドギャップよりも大きいと言うことができる。
【0246】
このような絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ4の窒素濃度分布を制御することで、実現することができる。
【0247】
図41は、本実施の形態2における絶縁膜MZを構成する各絶縁膜MZ1,MZ2,MZ3,MZ4,MZ5の窒素(N)濃度分布の一例を示すグラフであり、上記実施の形態1の上記
図39に対応するものである。上記
図39のグラフと同様に、
図41のグラフの横軸は、絶縁膜MZの厚み方向の位置に対応し、
図41のグラフの縦軸は、窒素(N)濃度に対応している。
【0248】
図41のグラフは、絶縁膜MZ1を酸化シリコン膜により形成し、絶縁膜MZ2を窒化シリコン膜により形成し、絶縁膜MZ3を酸化シリコン膜により形成し、絶縁膜MZ5を窒化シリコン膜により形成した場合に対応しており、これは、上記実施の形態1の上記
図39のグラフと共通である。このため、絶縁膜MZ1,MZ2,MZ3,MZ5の各窒素濃度の分布については、上記実施の形態1の上記
図39のグラフと本実施の形態2の
図41のグラフとで同様である。すなわち、上記
図39のグラフと
図41のグラフのいずれにおいても、厚み方向における絶縁膜MZ1の窒素濃度分布はほぼ一定であり、厚み方向における絶縁膜MZ2の窒素濃度分布はほぼ一定であり、厚み方向における絶縁膜MZ3の窒素濃度分布はほぼ一定であり、厚み方向における絶縁膜MZ5の窒素濃度分布はほぼ一定である。上記実施の形態1の上記
図39のグラフと
図41のグラフとで相違しているのは、絶縁膜MZ4の窒素濃度の分布である。
【0249】
すなわち、上記実施の形態1の上記
図39のグラフの場合は、厚み方向における絶縁膜MZ4の窒素濃度分布はほぼ一定であった。それに対して、本実施の形態2の
図41のグラフの場合は、絶縁膜MZ4の窒素濃度は、絶縁膜MZ3側から絶縁膜MZ5側に連続的に増加している。すなわち、本実施の形態2の
図41のグラフの場合は、厚み方向における絶縁膜MZ4の窒素濃度分布は、絶縁膜MZ3側から絶縁膜MZ5側に連続的に(徐々に、なだらかに)増加している。別の表現をすると、本実施の形態2の
図41のグラフの場合は、厚み方向における絶縁膜MZ4の窒素濃度分布は、絶縁膜MZ5側から絶縁膜MZ3側に連続的に減少している。
【0250】
つまり、本実施の形態2の
図41のグラフの場合は、絶縁膜MZ4の窒素濃度を厚み方向に見たとき、絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ4との界面付近で、絶縁膜MZ4の窒素濃度は最も小さくなり、絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ4との界面から絶縁膜MZ4と絶縁膜MZ5との界面側に向かうにしたがって、絶縁膜MZ4の窒素濃度は連続的に増加する。そして、絶縁膜MZ4と絶縁膜MZ5との界面付近で、絶縁膜MZ4の窒素濃度は最も大きくなる。
【0251】
絶縁膜MZ4の窒素濃度は、絶縁膜MZ3の窒素濃度よりも大きく、かつ、絶縁膜MZ5の窒素濃度よりも小さいことは、上記実施の形態1の上記
図39のグラフと本実施の形態2の
図41のグラフとで共通である。なぜなら、本実施の形態2の
図41のグラフの場合は、絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ4との界面付近で、絶縁膜MZ4の窒素濃度は、絶縁膜MZ3の窒素濃度とほぼ同等の大きさであるが、そこから絶縁膜MZ5側に向かうにしたがって絶縁膜MZ4の窒素濃度は連続的に増加するため、絶縁膜MZ4の窒素濃度は、絶縁膜MZ3の窒素濃度よりも大きいと言うことができる。また、本実施の形態2の
図41のグラフの場合は、絶縁膜MZ4と絶縁膜MZ5との界面付近で、絶縁膜MZ4の窒素濃度は、絶縁膜MZ5の窒素濃度とほぼ同等の大きさであるが、そこから絶縁膜MZ3側に向かうにしたがって絶縁膜MZ4の窒素濃度は連続的に減少するため、絶縁膜MZ4の窒素濃度は、絶縁膜MZ5の窒素濃度よりも小さいと言うことができる。このため、上記実施の形態1と同様に、本実施の形態2においても、絶縁膜MZ3,MZ4,MZ5を、それぞれ、酸素(O)と窒素(N)とのうちの少なくとも一方とシリコン(Si)とを構成元素として含む膜により構成した場合は、絶縁膜MZ4の窒素濃度は、絶縁膜MZ3の窒素濃度よりも大きく、かつ、絶縁膜MZ5の窒素濃度よりも小さいと言うことができる。
【0252】
次に、本実施の形態2における絶縁膜MZ形成工程の一例について説明する。
【0253】
本実施の形態2では、絶縁膜MZを形成する工程のうち、絶縁膜MZ1を形成する工程と、絶縁膜MZ2を形成する工程と、絶縁膜MZ3を形成する工程と、絶縁膜MZ5を形成する工程とについては、上記実施の形態1と同様とすることができるが、絶縁膜MZ4を形成する工程は、上記実施の形態1と相違している。このため、ここでは、絶縁膜MZ4を形成する工程のみを説明する。
【0254】
本実施の形態2でも、上記実施の形態1と同様に、絶縁膜MZ3上に、絶縁膜MZ4を形成するが、この絶縁膜MZ4は、酸窒化シリコン膜からなり、LPCVD法などを用いて形成することができる。そのときの成膜温度は、例えば600〜800℃程度とすることができ、成膜用のガスは、例えば、シリコン源(シリコンソースガス)としてジクロロシラン(H
2SiCl
2)を用い、酸素源(酸素ソースガス)として一酸化二窒素(N
2O)を用い、窒素源(窒素ソースガス)としてアンモニア(NH
3)を用いることができる。但し、絶縁膜MZ4の成膜初期は、半導体基板SBを配置した成膜用チャンバ内に導入するアンモニア(NH
3)ガスの流量をゼロにし、成膜用チャンバに導入する一酸化二窒素(N
2O)ガスの流量は所定の流量にしておく。そして、絶縁膜MZ4の成膜が進むにしたがって、アンモニア(NH
3)ガスの流量を徐々に連続的に増加させるとともに、一酸化二窒素(N
2O)ガスの流量は徐々に連続的に減少させ、絶縁膜MZ4の成膜終了時点では、一酸化二窒素(N
2O)ガスの流量がゼロになるようにする。これにより、絶縁膜MZ4が形成される。その後、絶縁膜MZ4上に絶縁膜MZ5を形成するが、絶縁膜MZ5の形成法は、上記実施の形態1と同様とすることができる。このようにして、酸窒化シリコン膜からなり、かつ、窒素濃度が絶縁膜MZ3側から絶縁膜MZ5側に連続的に増加するような絶縁膜MZ4を形成することができる。
【0255】
なお、後述の実施の形態3の場合は、絶縁膜MZ4の成膜が進むにしたがって、アンモニア(NH
3)ガスの流量を階段状に増加させるとともに、それに連動させて、一酸化二窒素(N
2O)ガスの流量を階段状に減少させればよい。
【0256】
本実施の形態2でも、上記実施の形態1とほぼ同様の効果を得ることができるのに加えて、更に次のような効果も得ることができる。
【0257】
すなわち、上記実施の形態1の上記
図32のエネルギーバンド構造と本実施の形態2の
図40のエネルギーバンド構造とを比べると分かるように、上記
図32のエネルギーバンド構造よりも
図40のエネルギーバンド構造の方が、消去動作時にゲート電極(MG1,MG2)から電荷蓄積機能を有する絶縁膜MZ2に電荷(ここではホール)を注入しやすい。すなわち、上記
図32のエネルギーバンド構造の場合、絶縁膜MZ5と絶縁膜MZ4との間に形成されるエネルギー障壁(価電子帯側のエネルギー障壁)が高い分、ゲート電極(MG1,MG2)から注入される電荷(ここではホール)のトンネル現象がそのエネルギー障壁によって阻害され、その分、トンネル確率が低くなる。それに対して、
図40のエネルギーバンド構造の場合、絶縁膜MZ4が絶縁膜MZ5から絶縁膜MZ3にかけて連続的に増加しているため、絶縁膜MZ5と絶縁膜MZ4との間に高いエネルギー障壁(価電子帯側のエネルギー障壁)が形成されずに済む分、ゲート電極(MG1,MG2)から注入される電荷(ここではホール)のトンネル確率を増大させることができる。このため、本実施の形態2は、上記実施の形態1に比べて、消去特性を更に向上させることができ、例えば、消去速度を更に向上させることができる。
【0258】
(実施の形態3)
本実施の形態3は、絶縁膜MZのうちの絶縁膜MZ4の構成が相違している点以外は、上記実施の形態1と基本的には同じである。このため、本実施の形態のメモリ素子の構成は、絶縁膜MZ4以外は、上記実施の形態1のメモリ素子MC1またはメモリ素子MC2と同様である。このため、ここでは、上記実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0259】
図42は、本実施の形態3のメモリ素子のエネルギーバンド構造を示す説明図であり、上記実施の形態1の上記
図32や上記実施の形態2の上記
図40に対応するものである。上記
図32や上記
図40と同様に、
図42は、上記
図2のA−A線に沿った位置でのエネルギーバンド構造または上記
図16のB−B線の位置でのエネルギーバンド構造を示している。
【0260】
上記実施の形態1では、上記
図32に示されるように、絶縁膜MZ4のバンドギャップはほぼ一定である。また、上記実施の形態2では、上記
図40に示されるように、絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ3側から絶縁膜MZ5側に、連続的に減少している。
【0261】
それに対して、本実施の形態3では、
図42からも分かるように、絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ3側から絶縁膜MZ5側に、階段状に減少している。すなわち、絶縁膜MZ4のバンドギャップを厚み方向に見ると、絶縁膜MZ3側から絶縁膜MZ5側に向かって、階段状に減少している。別の表現をすると、本実施の形態3では、絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ5側から絶縁膜MZ3側に、階段状に増加している。
【0262】
つまり、本実施の形態3では、絶縁膜MZ4のバンドギャップを厚み方向に見たとき、絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ4との界面付近で、絶縁膜MZ4のバンドギャップは最も大きくなり、絶縁膜MZ3と絶縁膜MZ4との界面から絶縁膜MZ4と絶縁膜MZ5との界面側に向かうにしたがって、絶縁膜MZ4のバンドギャップは階段状に減少する。そして、絶縁膜MZ4と絶縁膜MZ5との界面付近で、絶縁膜MZ4のバンドギャップは最も小さくなる。
【0263】
絶縁膜MZ1,MZ2,MZ3,MZ5の各バンドギャップについては、本実施の形態3も上記実施の形態1,2と同様であるので、ここではその説明は省略する。
【0264】
また、絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ3のバンドギャップよりも小さく、かつ、絶縁膜MZ5のバンドギャップよりも大きいが、これも、本実施の形態3と上記実施の形態1,2とで共通である。また、
図42では、絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ3側から絶縁膜MZ5側に階段状に減少しているが、この階段の段数は、
図42の場合に限定されず、種々変更可能である。
【0265】
このような絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ4の窒素(N)濃度分布を制御することで、実現することができる。
【0266】
図43は、本実施の形態3における絶縁膜MZを構成する各絶縁膜MZ1,MZ2,MZ3,MZ4,MZ5の窒素(N)濃度分布の一例を示すグラフであり、上記実施の形態1の上記
図39や上記実施の形態2の上記
図41に対応するものである。上記
図39や
図41のグラフと同様に、
図43のグラフの横軸は、絶縁膜MZの厚み方向の位置に対応し、
図43のグラフの縦軸は、窒素(N)濃度に対応している。
【0267】
図43のグラフは、絶縁膜MZ1を酸化シリコン膜により形成し、絶縁膜MZ2を窒化シリコン膜により形成し、絶縁膜MZ3を酸化シリコン膜により形成し、絶縁膜MZ5を窒化シリコン膜により形成した場合に対応しており、これは、上記実施の形態1の上記
図39のグラフや上記実施の形態2の上記
図41のグラフと共通である。このため、絶縁膜MZ1,MZ2,MZ3,MZ5の各窒素濃度の分布については、上記実施の形態1の上記
図39のグラフや上記実施の形態2の上記
図41のグラフと本実施の形態3の
図43のグラフとで同様である。本実施の形態3の
図43のグラフが、上記実施の形態1の上記
図39のグラフや上記実施の形態2の上記
図41のグラフと相違しているのは、絶縁膜MZ4の窒素濃度の分布である。
【0268】
本実施の形態3の
図43のグラフの場合は、絶縁膜MZ4の窒素濃度は、絶縁膜MZ3側から絶縁膜MZ5側に階段状に増加している。すなわち、本実施の形態3の
図43のグラフの場合は、厚み方向における絶縁膜MZ4の窒素濃度分布は、絶縁膜MZ3側から絶縁膜MZ5側に階段状に増加している。別の表現をすると、本実施の形態3の
図43のグラフの場合は、厚み方向における絶縁膜MZ4の窒素濃度分布は、絶縁膜MZ5側から絶縁膜MZ3側に階段状に減少している。
【0269】
絶縁膜MZ4の窒素濃度は、絶縁膜MZ3の窒素濃度よりも大きく、かつ、絶縁膜MZ5の窒素濃度よりも小さいことは、上記実施の形態1の上記
図39のグラフや上記実施の形態2の上記
図41のグラフと本実施の形態3の
図43のグラフとで共通である。このため、上記実施の形態1,2と同様に、本実施の形態3においても、絶縁膜MZ3,MZ4,MZ5を、それぞれ、酸素(O)と窒素(N)とのうちの少なくとも一方とシリコン(Si)とを構成元素として含む膜により構成した場合は、絶縁膜MZ4の窒素濃度は、絶縁膜MZ3の窒素濃度よりも大きく、かつ、絶縁膜MZ5の窒素濃度よりも小さいと言うことができる。
【0270】
本実施の形態3でも、上記実施の形態1とほぼ同様の効果を得ることができるのに加えて、更に次のような効果も得ることができる。
【0271】
すなわち、本実施の形態3の
図42のエネルギーバンド構造の場合、絶縁膜MZ4のバンドギャップが絶縁膜MZ5から絶縁膜MZ3にかけて階段状に増加している。このため、絶縁膜MZ5と絶縁膜MZ4との間に高いエネルギー障壁(価電子帯側のエネルギー障壁)が形成されずに済む分、消去動作時にゲート電極(MG1,MG2)から電荷蓄積機能を有する絶縁膜MZ2に電荷(ここではホール)を注入しやすく、ゲート電極(MG1,MG2)から注入される電荷(ここではホール)のトンネル確率を増大させることができる。従って、本実施の形態3は、上記実施の形態1に比べて、消去特性を更に向上させることができ、例えば、消去速度を更に向上させることができる。
【0272】
また、本実施の形態3と上記実施の形態2とを組み合わせることもできる。この場合、絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ3側から絶縁膜MZ5側に、連続的に減少する領域と、階段状に減少する領域とが混在することになる。
【0273】
(実施の形態4)
本実施の形態4は、絶縁膜MZの構成が相違している点以外は、上記実施の形態1と基本的には同じである。このため、本実施の形態のメモリ素子の構成は、絶縁膜MZ以外は、上記実施の形態1のメモリ素子MC1またはメモリ素子MC2と同様である。このため、ここでは、上記実施の形態1との相違点を中心に説明する。なお、図面については、上記
図2、
図6、
図16および
図32などを、本実施の形態4でも参照すればよい。
【0274】
本実施の形態4では、絶縁膜MZを構成する絶縁膜MZ1,MZ2,MZ3,MZ4,MZ5を、それぞれ高誘電率絶縁膜により形成する。なお、本願において、高誘電率絶縁膜、高誘電率膜、High−k膜、あるいは高誘電率ゲート絶縁膜と言うときは、窒化シリコン膜よりも誘電率(比誘電率)が高い膜を意味する。
【0275】
絶縁膜MZが、絶縁膜MZ1と、絶縁膜MZ1上に形成された絶縁膜MZ2と、絶縁膜MZ2上に形成された絶縁膜MZ3と、絶縁膜MZ3上に形成された絶縁膜MZ4と、絶縁膜MZ4上に形成された絶縁膜MZ5との積層膜からなる点は、本実施の形態4も、上記実施の形態1と共通である。また、絶縁膜MZ2が、電荷蓄積機能を有する絶縁膜である点と、絶縁膜MZ1,MZ2,MZ3,MZ4,MZ5のバンドギャップの関係についても、本実施の形態4は、上記実施の形態1と共通である。すなわち、本実施の形態4においても、絶縁膜MZ1および絶縁膜MZ3のそれぞれのバンドギャップは、絶縁膜MZ2のバンドギャップよりも大きく、絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ3のバンドギャップよりも小さく、絶縁膜MZ5のバンドギャップは、絶縁膜MZ4のバンドギャップよりも小さい。また、本実施の形態4においても、上記実施の形態2のように、絶縁膜MZ4のバンドギャップが、絶縁膜MZ3側から絶縁膜MZ5側に、連続的に減少していてもよく、また、上記実施の形態3のように、絶縁膜MZ4のバンドギャップが、絶縁膜MZ3側から絶縁膜MZ5側に、階段状に減少していてもよい。
【0276】
しかしながら、本実施の形態4では、絶縁膜MZを構成する絶縁膜MZ1,MZ2,MZ3,MZ4,MZ5は、それぞれ高誘電率絶縁膜により形成されているため、絶縁膜MZ1,MZ2,MZ3,MZ4,MZ5のそれぞれ構成する材料が、上記実施の形態1と相違している。
【0277】
具体的には、本実施の形態4では、絶縁膜MZ1は、酸化アルミニウム膜(代表的にはAl
2O
3膜)からなり、絶縁膜MZ2は、酸化ハフニウム膜(代表的にはHfO
2膜)からなり、絶縁膜MZ3は、酸化アルミニウム膜(代表的にはAl
2O
3膜)からなり、絶縁膜MZ4は、ハフニウムアルミネート膜(代表的にはHfAlO膜)からなる。また、絶縁膜MZ5は、酸化ハフニウム膜(代表的にはHfO
2膜)からなる。酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化アルミニウム膜、および酸化ハフニウムアルミニウム膜は、いずれも窒化シリコンよりも誘電率が高いため、高誘電率絶縁膜とみなすことができる。なお、ハフニウムアルミネート膜(HfAlO膜)は、ハフニウム(Hf)とアルミニウム(Al)と酸素(O)とを構成元素として含んでいる。ハフニウムアルミネート膜は、酸化ハフニウムアルミニウム膜と称することもできる。
【0278】
酸化アルミニウム膜のバンドギャップは、酸化ハフニウム膜のバンドギャップよりも大きく、ハフニウムアルミネート膜のバンドギャップは、酸化アルミニウム膜のバンドギャップよりも小さく、かつ、酸化ハフニウム膜のバンドギャップよりも大きい。このため、絶縁膜MZ1,MZ2,MZ3,MZ4,MZ5に上述の材料を用いることにより、絶縁膜MZ1および絶縁膜MZ3のそれぞれのバンドギャップを、絶縁膜MZ2のバンドギャップよりも大きくし、絶縁膜MZ4のバンドギャップを、絶縁膜MZ3のバンドギャップよりも小さくし、絶縁膜MZ5のバンドギャップを、絶縁膜MZ4のバンドギャップよりも小さくすることができる。
【0279】
本実施の形態4でも、上記実施の形態1とほぼ同様の効果を得ることができるのに加えて、更に次のような効果も得ることができる。
【0280】
すなわち、本実施の形態4では、ゲート絶縁膜を構成する絶縁膜MZ1,MZ2,MZ3,MZ4,MZ5に高誘電率絶縁膜を適用したことにより、高誘電率絶縁膜を適用しない場合と比べて、ゲート絶縁膜のEOT(Equivalent Oxide Thickness:酸化膜換算膜厚)を抑制することができる。このため、動作電圧(書き込み電圧または消去電圧)の低減などが可能になる。また、メモリ素子の動作速度の向上を図ることができる。また、消費電力を低減することができる。また、低い駆動電圧でもデータの書き込み時間や消去時間を短縮させることができるため、データ処理速度を高めることができる。従って、メモリ素子を有する半導体装置の性能を更に向上させることができる。
【0281】
また、本実施の形態4では、ゲート絶縁膜を構成する絶縁膜MZ1,MZ2,MZ3,MZ4,MZ5に高誘電率絶縁膜を適用したことにより、高誘電率絶縁膜を適用しない場合と比べて、ゲート絶縁膜のEOTを抑制しながら、絶縁膜MZ1,MZ2,MZ3,MZ4,MZ5のそれぞれの物理的膜厚を大きく(厚く)することも可能である。これにより、例えば、リークによる電荷保持特性(リテンション特性)の劣化を防止しやすくなる。このため、メモリ素子を有する半導体装置の性能を更に向上させることができる。
【0282】
また、本実施の形態4では、絶縁膜MZを構成する絶縁膜MZ1,MZ2,MZ3,MZ4,MZ5のいずれについても高誘電率絶縁膜を用いた場合について説明したが、他の形態として、絶縁膜MZを構成する絶縁膜MZ1,MZ2,MZ3,MZ4,MZ5について、高誘電率絶縁膜を用いた絶縁膜と、高誘電率絶縁膜を用いない絶縁膜とを混在させることもできる。例えば、本実施の形態4において、絶縁膜MZ2,MZ4,MZ5に上述のような高誘電率絶縁膜を適用するとともに、絶縁膜MZ1,MZ3には酸化シリコン膜を用いることも可能である。また、例えば、本実施の形態4において、絶縁膜MZ1,MZ3,MZ4に上述のような高誘電率絶縁膜を適用するとともに、絶縁膜MZ2,MZ5には窒化シリコン膜を用いることも可能である。また、本実施の形態4において、絶縁膜MZ1,MZ2,MZ3,MZ5に上述のように高誘電率絶縁膜を適用するとともに、絶縁膜MZ4には酸窒化シリコン膜を用いることも可能である。
【0283】
従って、本実施の形態4を包括的に捉えると、絶縁膜MZを構成する絶縁膜MZ1,MZ2,MZ3,MZ4,MZ5のうちの少なくとも1つを、高誘電率絶縁膜にしている。これにより、高誘電率絶縁膜を用いた分だけ、ゲート絶縁膜のEOTを抑制することができるため、メモリ素子の動作電圧の低減などが可能になる。また、メモリ素子の動作速度の向上を図ることができる。また、消費電力を低減することができる。また、低い駆動電圧でもデータの書き込み時間や消去時間を短縮させることができるため、データ処理速度を高めることができる。従って、メモリ素子を有する半導体装置の性能をより向上させることができる。
【0284】
次に、本実施の形態4における絶縁膜MZ形成工程の一例について説明する。
【0285】
酸化アルミニウム膜(ここでは絶縁膜MZ1形成工程および絶縁膜MZ3形成工程)は、例えば、材料ガスとしてTMA(Trimethyl Aluminum:トリメチルアルミニウム)とO
3(オゾン)またはH
2O(水蒸気)とを用いたALD(Atomic Layer Deposition:原子層堆積)法などを用いて形成することができ、そのときの成膜温度は、例えば200〜400℃程度とすることができる。この場合、TMAがアルミニウム源(アルミニウムソースガス)であり、O
3またはH
2Oが酸素源(酸素ソースガス)である。酸化ハフニウム膜(ここでは絶縁膜MZ2および絶縁膜MZ5)は、例えば、材料ガスとしてHfCl
4とO
3またはH
2Oとを用いたALD法などを用いて形成することができる。そのときの成膜温度は、例えば200〜400℃程度とすることができる。この場合、HfCl
4がハフニウム源(ハフニウムソースガス)であり、O
3またはH
2Oが酸素源(酸素ソースガス)である。あるいは、酸化ハフニウム膜(ここでは絶縁膜MZ2および絶縁膜MZ5)は、材料ガスとしてTDMAH(テトラキスジメチルアミノハフニウム)とO
3またはO
2とを用いたMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属気相成長)法などを用いて形成することもできる。そのときの成膜温度は、例えば300〜500℃程度とすることができる。この場合、TDMAHがハフニウム源(ハフニウムソースガス)であり、O
3またはO
2が酸素源(酸素ソースガス)である。ハフニウムアルミネート膜(ここでは絶縁膜MZ4)は、ここで述べたようなハフニウムソースガス、アルミニウムソースガスおよび酸素ソースガスを、所望の組成比のハフニウムアルミネート膜が得られるようなガス流量比で用いることにより、ALD法またはMOCVD法などを用いて形成することができる。
【0286】
また、本実施の形態4を上記実施の形態2に適用することもできる。この場合、高誘電率絶縁膜を適用した本実施の形態4の絶縁膜MZにおいて、絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ3側から絶縁膜MZ5側に、連続的に減少したものとなる。これを実現するためには、例えば、絶縁膜MZ4をハフニウムアルミネート膜(HfAlO膜)により形成するとともに、絶縁膜MZ4を構成するハフニウムアルミネート膜(HfAlO膜)の組成をHf
xAl
yO
zと表したときのx/(x+y)の値を、絶縁膜MZ3側から絶縁膜MZ5側に連続的に増加させる。これは、ハフニウムアルミネート膜(HfAlO膜)においては、Alの組成比を減らしてHfの組成比を増やすにしたがって、すなわち組成をHf
xAl
yO
zと表したときのx/(x+y)の値が大きくなるにしたがって、バンドギャップが小さくなるためである。
【0287】
あるいは、本実施の形態4を上記実施の形態3に適用することもできる。この場合、高誘電率絶縁膜を適用した本実施の形態4の絶縁膜MZにおいて、絶縁膜MZ4のバンドギャップは、絶縁膜MZ3側から絶縁膜MZ5側に、階段状に減少したものとなる。これを実現するためには、例えば、絶縁膜MZ4をハフニウムアルミネート膜(HfAlO膜)により形成するとともに、絶縁膜MZ4を構成するハフニウムアルミネート膜(HfAlO膜)の組成をHf
xAl
yO
zと表したときのx/(x+y)の値を、絶縁膜MZ3側から絶縁膜MZ5側に階段状に増加させる。これは、ハフニウムアルミネート膜(HfAlO膜)においては、Alの組成比を減らしてHfの組成比を増やすにしたがって、すなわち組成をHf
xAl
yO
zと表したときのx/(x+y)の値が大きくなるにしたがって、バンドギャップが小さくなるためである。
【0288】
本実施の形態4を上記実施の形態2または上記実施の形態3に適用する場合、例えば、ハフニウムアルミネート膜(HfAlO膜)からなる絶縁膜MZ4を次のようにして形成することができる。
【0289】
アルミニウム源(アルミニウムソースガス)としてTMAを、ハフニウム源(ハフニウムソースガス)としてTDMAHを、酸素源(酸素ソースガス)としてO
3を用いて、絶縁膜MZ4となるハフニウムアルミネート膜(HfAlO膜)を、ALD法を用いて成膜する。この場合、ALD法を用いているので、ハフニウムアルミネート膜の成膜初期は、TMAガスを成膜用チャンバ内に導入するステップと、O
3ガスを成膜用チャンバ内に導入するステップとを、交互に行う。但し、各ステップの間には、成膜用チャンバ内を希ガス(不活性ガス)によってパージするステップを行う。それから、TMAガスを成膜用チャンバ内に導入するステップと、O
3ガスを成膜用チャンバ内に導入するステップとに加えて、TDMAHガスを成膜用チャンバ内に導入するステップも行うようにし、絶縁膜MZ4の成膜が進むにしたがって、TDMAHガスを成膜用チャンバ内に導入するステップの割合(比率)を増加させる。これにより、ハフニウムアルミネート膜(HfAlO膜)からなる絶縁膜MZ4が成膜されるが、成膜されたハフニウムアルミネート膜(HfAlO膜)は、組成をHf
xAl
yO
zと表したときのx/(x+y)の値が、絶縁膜MZ3側から上面側(従って絶縁膜MZ5側)に徐々に増加したものとなる。成膜中における、TMAガスを成膜用チャンバ内に導入するステップと、TDMAHガスを成膜用チャンバ内に導入するステップとの割合の変え方によって、組成をHf
xAl
yO
zと表したときのx/(x+y)の値が絶縁膜MZ3側から絶縁膜MZ5側に、連続的に増加するか、あるいは、階段状に増加することになる。
【0290】
また、上記実施の形態1〜4では、電荷蓄積機能を有する絶縁膜MZ2とゲート電極(MG1,MG2)との間に介在する積層膜LMを、3層の絶縁膜MZ3,MZ4,MZ5によって形成しているが、他の形態として、電荷蓄積機能を有する絶縁膜MZ2とゲート電極(MG1,MG2)との間に介在する積層膜LMを、4層以上の絶縁膜によって形成することも可能である。積層膜LMを4層以上の絶縁膜により形成した場合には、積層膜LMを構成する各絶縁膜のバンドギャップは、絶縁膜MZ2に近い側の絶縁膜ほど大きく、ゲート電極(MG1,MG2)に近い側の絶縁膜ほど小さい。例えば、積層膜LMを、絶縁膜MZ2側から順に、1層目の絶縁膜、2層目の絶縁膜、3層目の絶縁膜、および4層目の絶縁膜の、合計4層の絶縁膜により形成した場合は、バンドギャップは、1層目の絶縁膜、2層目の絶縁膜、3層目の絶縁膜、および4層目の絶縁膜の順に小さくなる。但し、積層膜LMを構成する1層目の絶縁膜のバンドギャップは、電荷蓄積機能を有する絶縁膜MZ2のバンドギャップよりも大きい。また、例えば、積層膜LMを、絶縁膜MZ2側から順に、1層目の絶縁膜、2層目の絶縁膜、3層目の絶縁膜、4層目の絶縁膜および5層目の絶縁膜の、合計5層の絶縁膜により形成した場合は、バンドギャップは、1層目の絶縁膜、2層目の絶縁膜、3層目の絶縁膜、4層目の絶縁膜および5層目の絶縁膜の順に小さくなる。但し、積層膜LMを構成する1層目の絶縁膜のバンドギャップは、電荷蓄積機能を有する絶縁膜MZ2のバンドギャップよりも大きい。
【0291】
ここで、電荷蓄積機能を有する絶縁膜MZ2とゲート電極(MG1,MG2)との間に介在する積層膜LMを4層以上の絶縁膜により形成した場合は、絶縁膜MZ4を2層以上の絶縁膜により形成した場合に相当している。このため、他の形態として、絶縁膜MZ4を2層以上の絶縁膜の積層膜により形成することも可能である。絶縁膜MZ4を2層以上の絶縁膜の積層膜により形成した場合には、絶縁膜MZ4を構成する各絶縁膜のバンドギャップは、絶縁膜MZ3に近い側の絶縁膜ほど大きく、絶縁膜MZ5に近い側の絶縁膜ほど小さい。例えば、絶縁膜MZ4を、絶縁膜MZ3側から順に、1層目の絶縁膜および2層目の絶縁膜の、合計2層の絶縁膜により形成した場合を仮定する。この場合は、絶縁膜MZ4を構成する1層目の絶縁膜のバンドギャップは、絶縁膜MZ3のバンドギャップよりも小さくかつ絶縁膜MZ4を構成する2層目の絶縁膜のバンドギャップよりも大きく、絶縁膜MZ4を構成する2層目の絶縁膜のバンドギャップは、絶縁膜MZ4を構成する1層目の絶縁膜のバンドギャップよりも小さくかつ絶縁膜MZ5のバンドギャップよりも大きい。また、例えば、絶縁膜MZ4を、絶縁膜MZ3側から順に、1層目の絶縁膜、2層目の絶縁膜および3層目の絶縁膜の、合計3層の絶縁膜により形成した場合を仮定する。この場合は、絶縁膜MZ4を構成する1層目の絶縁膜のバンドギャップは、絶縁膜MZ3のバンドギャップよりも小さくかつ絶縁膜MZ4を構成する2層目の絶縁膜のバンドギャップよりも大きい。また、絶縁膜MZ4を構成する2層目の絶縁膜のバンドギャップは、絶縁膜MZ4を構成する1層目の絶縁膜のバンドギャップよりも小さくかつ絶縁膜MZ4を構成する3層目の絶縁膜のバンドギャップよりも大きい。そして、絶縁膜MZ4を構成する3層目の絶縁膜のバンドギャップは、絶縁膜MZ4を構成する2層目の絶縁膜のバンドギャップよりも小さくかつ絶縁膜MZ5のバンドギャップよりも大きい。
【0292】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。