特許第6334277号(P6334277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334277
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】染毛剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20180521BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20180521BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   A61K8/49
   A61Q5/06
   A61Q5/10
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-117907(P2014-117907)
(22)【出願日】2014年6月6日
(65)【公開番号】特開2015-229667(P2015-229667A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】福原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 真主
(72)【発明者】
【氏名】齊宮 宏美
(72)【発明者】
【氏名】野尻 昌良
【審査官】 松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−342139(JP,A)
【文献】 特開2010−024158(JP,A)
【文献】 特開2007−326818(JP,A)
【文献】 特開2005−162752(JP,A)
【文献】 特開2004−107343(JP,A)
【文献】 特開2011−190187(JP,A)
【文献】 特開2013−075865(JP,A)
【文献】 特開2014−101290(JP,A)
【文献】 特開2015−229668(JP,A)
【文献】 特開2015−229669(JP,A)
【文献】 特開2015−229670(JP,A)
【文献】 特開2016−011298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/49
A61Q 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のアゾ染料(R)、(B)及び(Y)を含有し、それらの全組成物中における質量比率〔(R)+(Y)〕/(B)が0.2以上5以下である、使用時のpH(25℃)が7.5〜12である染毛剤組成物。
【化1】
【請求項2】
更にアルカリ剤を含有する請求項に記載の染毛剤組成物。
【請求項3】
全組成物中におけるアルカリ剤の含有量が、0.01質量%以上20質量%以下である請求項に記載の染毛剤組成物。
【請求項4】
アルカリ剤として、アンモニア及びその塩、モノエタノールアミン及びその塩、並びに2-アミノ-2-メチルプロパノールからなる群より選択される少なくとも1種を含有する請求項2又は3に記載の染毛剤組成物。
【請求項5】
更に界面活性剤を含有する請求項1〜のいずれか一項に記載の染毛剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の染毛剤組成物を毛髪に適用し、1〜60分間放置した後、洗い流す染毛方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染毛剤組成物及びそれを用いた染毛方法に関する。
【背景技術】
【0002】
染毛剤組成物は、使用される染料又はメラニンに対する脱色作用の有無によって分類することができる。染毛剤組成物の代表例としては、アルカリ剤、酸化染料、及び任意的にニトロ染料等の直接染料を含む第1剤と、酸化剤を含む第2剤とから成る二剤式の酸化型染毛剤組成物や、pH調整剤(酸又はアルカリ)と酸性染料、塩基性染料、ニトロ染料等の直接染料の少なくとも一種とを含む一剤式の非酸化型染毛剤組成物が挙げられる。
【0003】
上記染毛剤組成物に使用される直接染料は、その染料の分子サイズや構造に応じて毛髪への拡散性や脱離性が異なり、特に損傷を受けた毛髪において顕著である。このため、損傷が蓄積した毛先と新生の根元での染毛度と褪色度とを適度に調和させるために、分子サイズは異なるが同系統の色である二種以上の直接染料を組み合わせて一つの色を作り、以て染毛剤組成物とすることが推奨され、広く行われている(非特許文献1参照)。
【0004】
これに対し、化学構造や分子サイズが近接しつつも異なる系統の色である直接染料の群はほとんど知られておらず、染毛剤組成物において、そのような赤色、青色、黄色の3種の直接染料を組み合わせるという発想は、従来提案されていなかった。
【0005】
一方、特許文献1で提案されている解離性プロトンを含むアゾ染料(解離性アゾ染料)は、さまざまな色系統が提供可能であるとともに、異なる色系統間でも化学構造や分子サイズが近接したものであるが、上記考察に沿った解離性アゾ染料3種の具体的な組合せは示されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Clarence R. Robbins, Chemical and Physical Behavior of Human Hair Fourth Edition, p331-334, Springer-Verlag, 2002
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-342139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、根元と毛先の色調に違いの少ない染毛剤組成物及び染毛方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特許文献1に開示された多数の解離性アゾ染料を種々組合せた染毛剤組成物について、染色された毛髪での根元と毛先の色調上の染毛度の違いに着目し、詳細に研究を進めた。その結果、弱アルカリ性ないしアルカリ性条件下、プロトンを解離してアニオン性となった特定の解離性アゾ染料を組み合わせて配合した染毛剤組成物では、毛髪の損傷度にかかわらず、根元と毛先の染毛度の違いがほとんどないことを見いだし、本発明を完成した。
【0010】
本発明は、下記のアゾ染料(R)、(B)及び(Y)を含有し、使用時のpH(25℃)が7.5〜12である染毛剤組成物を提供するものである。
【0011】
【化1】
【0012】
更に、本発明は、上記の染毛剤組成物を毛髪に適用し、1〜60分間放置した後、洗い流す染毛方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の染毛剤組成物及び染毛方法によれば、根元と毛先の色調に違いの少ない、自然な髪色に染毛することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<アゾ染料>
本発明の染毛剤組成物は、上記アゾ染料(R)、(B)、及び(Y)を含有する。
【0015】
なお、アゾ染料(R)、(B)、及び(Y)のpKaは、それぞれ6.0、6.0及び7.5である。よって、pH(25℃)が7.5〜12である本発明の染毛剤組成物中では、これらアゾ染料のほぼ8割以上は、プロトンを解離したアニオン性の状態で存在する。そのときアゾ染料(R)は赤色、(B)は青色、(Y)は黄色を呈する。
【0016】
アゾ染料(R)、(B)及び(Y)の3種を併用するに際し、全組成物中におけるアゾ染料相互の質量比率〔(R)+(Y)〕/(B)は、根元と毛先の色調の均一性、処方配合の安定性、及び幅広い色調を調色可能にするために、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3.75以下、更に好ましくは3.5以下であり、また、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上、更に好ましくは1以上、更に好ましくは1.5以上、更に好ましくは2以上、更に好ましくは2.5以上である。
【0017】
上記アゾ染料の全組成物中における総含有量は、毛髪の均染性、及び処方配合の安定性の観点から、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、更に好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上であり、また好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。なお、本発明の染毛剤組成物には、アゾ染料(R)、(B)、及び(Y)以外の染料を併用することもできる。ただし、成分(A)による染色性に影響を与えない観点より、アゾ染料(R)、(B)、及び(Y)の総含有量が、全染料中の1質量%以上100質量%以下、更には5質量%以上100質量%以下、更には10質量%以上100質量%以下、更には20質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
【0018】
上記アゾ染料は、染毛剤組成物が二剤式染毛剤の場合、第1剤、第2剤のいずれに配合してもよいが、処方配合の安定性の観点から、第1剤中に含有することが好ましい。
【0019】
<界面活性剤>
本発明の染毛剤組成物には、界面活性剤を配合することができる。界面活性剤としては、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、及びアニオン界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、処方配合の安定性の観点から、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤が好ましい。
【0020】
アニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホ脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸塩、リン酸モノ又はジエステル、スルホコハク酸エステル等が挙げられる。アルキルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が挙げられる。これらアニオン界面活性剤のアニオン性基の対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;炭素数2又は3のアルカノール基を1〜3個有するアルカノールアミン塩(例えばモノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩等)が挙げられる。
【0021】
カチオン界面活性剤としては、染毛後の毛髪に対して優れた感触を付与させる観点から、塩化モノアルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、臭化モノアルキルトリメチルアンモニウムが好ましく、なかでも塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(ステアルトリモニウムクロリド)、塩化セチルトリメチルアンモニウム(セトリモニウムクロリド)、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム(ラウリルトリモニウムクロリド)がより好ましく、2種以上を混合することも好ましい。
【0022】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、高級脂肪酸ショ糖エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸モノ又はジエタノールアミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、アルキルサッカライド、アルキルアミンオキサイド、アルキルアミドアミンオキサイド等が挙げられる。これらのうち、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルサッカライドが好ましく、ポリオキシエチレンアルキル(12〜14)エーテル、アルキルポリグルコシドがより好ましい。
【0023】
両性界面活性剤としては、イミダゾリン、カルボベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン、ヒドロキシスルホベタイン、アミドスルホベタイン等が挙げられ、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン等のベタイン界面活性剤がより好ましく、脂肪酸アミドプロピルベタインが更に好ましい。
【0024】
界面活性剤は、染毛剤組成物が二剤式染毛剤の場合、第1剤、第2剤のいずれに配合してもよい。
【0025】
これら界面活性剤は、いずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、全組成物中の含有量は、良好な感触、乳化性能の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、また好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下である。
【0026】
<酸化染料>
本発明の染毛剤組成物が二剤式染毛剤である場合、第1剤中には上記解離性アゾ染料に加え、酸化染料を配合することもできる。本発明の染毛剤組成物に好適な酸化染料としては、通常染毛剤に使用されている公知のプレカーサー及びカップラーを用いることができる。
【0027】
プレカーサーとしては、例えばパラフェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン、2-クロロパラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、パラメチルアミノフェノール、オルトアミノフェノール、2,4-ジアミノフェノール、N-フェニルパラフェニレンジアミンとこれらの塩等が挙げられる。
【0028】
また、カップラーとしては、例えばメタフェニレンジアミン、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、メタアミノフェノール、2-メチル-5-アミノフェノール、2-メチル-5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)フェノール、レゾルシン、1-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、ヒロドキノンとこれらの塩等が挙げられる。
【0029】
プレカーサーとカップラーは、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、それらの使用量は、上記アゾ染料の染色性に影響を与えない程度の量であることが好ましい。具体的には、全組成物中におけるプレカーサーとカップラーの総含有量として、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。
【0030】
<アゾ染料(R)、(B)、及び(Y)以外の直接染料>
本発明の染毛剤組成物には、アゾ染料(R)、(B)、及び(Y)以外の直接染料を更に配合することができる。本発明の染毛剤組成物が二剤式染毛剤である場合は、第1剤中にアゾ染料(R)、(B)、及び(Y)以外の直接染料を更に配合することができる。この直接染料としては、染毛剤に利用可能である公知の酸性染料、塩基性染料、分散染料等を用いることができる。
【0031】
酸性染料としては、例えば青色1号、紫色401号、黒色401号、だいだい色205号、赤色227号、赤色106号、黄色203号、酸性橙3等が挙げられる。塩基性染料としては、例えば塩基性青99、塩基性茶16、塩基性茶17、塩基性赤76、塩基性黄57等が挙げられる。
【0032】
酸性染料及び塩基性染料以外の直接染料としては、例えば2-ニトロ-p-フェニレンジアミン、2-アミノ-6-クロロ-4-ニトロフェノール、3-ニトロ-p-ヒドロキシエチルアミノフェノール、4-ニトロ-o-フェニレンジアミン、4-アミノ-3-ニトロフェノール、4-ヒドロキシプロピルアミノ-3-ニトロフェノール、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-ニトロ-p-フェニレンジアミン、分散紫1、分散青1、分散黒9、HC青2、HC橙1、HC赤1、HC赤3、HC黄2、HC黄4、HC黄5等が挙げられる。
【0033】
これらアゾ染料(R)、(B)、及び(Y)以外の直接染料は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、全組成物中におけるアゾ染料(R)、(B)、及び(Y)以外の直接染料の総含有量は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であり、また好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。
【0034】
<アルカリ剤>
本発明の染毛剤組成物には、更にアルカリ剤を含有させることができる。本発明の染毛剤組成物が二剤式染毛剤である場合は、アルカリ剤は第1剤に含有させる。アルカリ剤としては、アンモニア及びその塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール、2-アミノブタノール等のアルカノールアミン及びその塩、1,3-プロパンジアミン等のアルカンジアミン及びその塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸グアニジン等の炭酸塩等が挙げられる。これらのアルカリ剤のうち、アンモニア及びその塩、モノエタノールアミン及びその塩、並びに2-アミノ-2-メチルプロパノールからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0035】
アルカリ剤は、2種以上を併用してもよく、全組成物中の含有量は、十分な染毛効果の点から、0.01質量%以上、更には0.05質量%以上、更には0.1質量%以上、更には0.2質量%以上、更には0.5質量%以上、更には1質量%以上が好ましく、また、毛髪損傷や頭皮刺激の低減の点から、20質量%以下、更には10質量%以下、更には5質量%以下、更には4質量%以下が好ましい。
【0036】
<pH>
本発明の染毛剤組成物の使用時のpH(25℃)は、一剤式染毛料の場合、好ましくは8以上、より好ましくは8.5以上、更に好ましくは9以上であり、また、好ましくは11.5以下、より好ましくは更には11以下、更に好ましくは10.5以下である。
【0037】
また、本発明の染毛剤組成物が二剤式染毛剤である場合、第1剤のpH(25℃)は好ましくは8〜12、第2剤のpH(25℃)は好ましくは2〜5である。第1剤と第2剤の混合物の使用時のpH(25℃)は、染毛効果と皮膚刺激性の点から、好ましくは8以上、より好ましくは8.5以上、更に好ましくは9以上であり、また、好ましくは11.5以下、より好ましくは11以下、更に好ましくは10.5以下である。
なお、本明細書において、染毛剤組成物のpHは、株式会社堀場製作所製pHメーターF-22を用いて室温(25℃)で測定した値である。
【0038】
<pH調整剤>
本発明の染毛剤組成物は、pH調整剤として、塩酸、リン酸等の無機酸、クエン酸、グリコール酸、リンゴ酸、乳酸等の有機酸、塩酸モノエタノールアミン等の塩酸塩、リン酸二水素一カリウム、リン酸一水素二ナトリウム等のリン酸塩等を使用することができる。
【0039】
これらpH調整剤は、二剤式染毛剤にあっては、第1剤中に配合しても第2剤中に配合してもよい。またその全組成物中の含有量は、十分な染色効果の点、及び毛髪損傷や頭皮刺激の低減の点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、また好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0040】
<過酸化水素>
本発明の染毛剤組成物が二剤式染毛剤又は三剤式染毛剤である場合、第2剤に過酸化水素を含有させることができる。全組成物中の過酸化水素の含有量は、十分な染毛効果の点から、0.1質量%以上、更には0.5質量%以上、更には1.0質量%以上が好ましく、また、毛髪損傷や頭皮刺激の低減の点から、12.0質量%以下、更には9.0質量%以下、更には6.0質量%以下、更に好ましくは4.0質量%以下が好ましい。
【0041】
<高級アルコール>
本発明の染毛剤組成物には、感触改善、安定性の観点から、炭素数12以上の高級アルコールを含有させることが好ましい。高級アルコールは、本発明の染毛剤組成物が二剤式染毛剤である場合には、第1剤、第2剤のいずれの剤に含有させてもよい。
【0042】
高級アルコールとしては、炭素数12以上、更には16以上、また、炭素数30以下、更には22以下のものが好ましく、具体的には、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、オレイルアルコール等が挙げられる。
【0043】
高級アルコールは、2種以上を併用してもよく、またその全組成物中の含有量は、染毛剤組成物の粘度及び安定性の観点より、3.0質量%以上、更には4.0質量%以上が好ましく、また、11.0質量%以下、更には9.0質量%以下が好ましい。
【0044】
<有機溶剤>
本発明の染毛剤組成物は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等の低級アルカノール;ベンジルアルコール、2-ベンジルオキシエタノール、フェノキシエタノール等の芳香族アルコール;プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、グリセリン等のポリオール;エトキシエタノール、エトキシジグリコール、メトキシエタノール等のエーテルアルコール;N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン等のN-アルキルピロリドン;炭酸プロピレン等の炭酸アルキレン;γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン等のラクトンが挙げられる。
【0045】
これら有機溶剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができ、またその全組成物中の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、また好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
【0046】
<水溶性高分子>
本発明の染毛剤組成物には、使用時のたれ落ち防止、頭皮などへの汚着防止の目的で、水溶性高分子を含有させることができる。水溶性高分子としては、例えばアラビアガム、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、キャロブガム、クインスシード(マルメロ)、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルメチルエーテル(PVM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ナトリウム、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリントガム、ジアルキルジメチルアンモニウム硫酸セルロース、キサンタンガム、変性キサンタンガム、ウェランガム、ラボールガム、ジェランガム、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸/メタクリル酸エステル共重合体、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体の1,9-デカジエンによる部分架橋物、ポリエチレングリコール、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ベントナイト等が挙げられる。これらのうち、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、変性キサンタンガムが好ましい。
【0047】
これらの水溶性高分子は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、全組成中における含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0048】
<コンディショニング成分>
本発明の染毛剤組成物は、毛髪への適用に好適なコンディショニング成分を含むことができる。コンディショニング成分は、染毛剤組成物に溶解又は分散可能なポリマー又はオイル類であり、染毛剤組成物を洗い流す際、又は水やシャンプーで希釈された際に毛髪へ付着する。
【0049】
本発明の染毛剤組成物に使用される好適なコンディショニング成分としては、カチオン性ポリマー、シリコーン(例えばシリコーンオイル、カチオン性シリコーン、シリコーンガム、シリコーン樹脂)、有機コンディショニングオイル(例えば、炭化水素オイル、ポリオレフィン、脂肪酸エステル)、脂肪族アミド、ポリアルキレングリコール等が挙げられる。
【0050】
これらコンディショニング成分は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができ、またその全組成物中の含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0051】
<媒体>
本発明の染毛剤組成物には、媒体として水が使用される。染毛剤組成物中の水の含有量は、10質量%以上、更には20質量%以上、更に30質量%以上、更には40質量%以上、更には50質量%以上が好ましく、また、95質量%以下、更には90質量%以下、更には85質量%以下が好ましい。
【0052】
<その他の任意成分>
本発明の染毛剤組成物には、上記成分のほかに、通常化粧品原料として用いられる他の成分を加えることができる。
【0053】
このような任意成分の配合目的としては、パール化、防腐、金属封鎖、安定化、酸化防止、紫外線吸収、保湿、製品着色、付香等を挙げることができ、具体的な任意成分としては、動植物油脂、高級脂肪酸、タンパク質加水分解物、タンパク質誘導体、アミノ酸、植物抽出物、ビタミン、色素、香料等が挙げられる。
【0054】
<剤型>
本発明の染毛剤組成物は、一剤式、二剤式、又は三剤式の各種染毛剤として使用できる。一剤式染毛剤組成物は、アゾ染料(R)、(B)、及び(Y)を含有する単一の剤からなる。二剤式染毛剤組成物は、アゾ染料(R)、(B)、及び(Y)並びにアルカリ剤を含有する第1剤と、過酸化水素を含有する第2剤からなることが好ましい。三剤式染毛剤組成物は、アルカリ剤を含有する第1剤と、過酸化水素を含有する第2剤と、アゾ染料(R)、(B)、及び(Y)を含有する第3剤からなるか、又はアゾ染料(R)、(B)、及び(Y)並びにアルカリ剤を含有する第1剤と、過酸化水素を含有する第2剤と、その他の成分を含有する第3剤からなることが好ましい。上記のその他の成分を含有する第3剤としては脱色力向上のために過硫酸塩(過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等)等の造粒物からなる粉末状酸化剤を用いることが好ましい。
なお、本発明において「全組成物」とは、染毛処理の使用時の組成物全体をいい、上述の二剤式染毛剤にあっては、第1剤と第2剤を混合した後の混合物を意味し、三剤式染毛剤にあっては、第1剤と第2剤と第3剤を混合した後の混合物を意味する。
【0055】
本発明の染毛剤組成物は、例えば、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、ムース状などの形態で用いられるものとすることができ、エアゾール形態とすることもできる。これらの場合における全組成物の粘度は、毛髪に塗布したときに液だれしにくいように調整することが望ましい。この全組成物の粘度(25℃)は、ヘリカルスタンド付きB型回転粘度計(モデル;デジタル粘度計TVB-10、東機産業株式会社)により、ローターT-Cを用いて10rpmで1分間回転させた後の測定値として、好ましくは2,000〜200,000mPa・s、より好ましくは4,000〜150,000mPa・s、更に好ましくは6,000〜100,000mPa・s、更に好ましくは8,000〜80,000mPa・sである。なお、二剤式又は三剤式の場合には、各剤の混合後3分経過後に測定するものとする。
【0056】
また、本発明の染毛剤組成物は、毛髪に塗布するときにノンエアゾール型のフォーマー容器から吐出させたり、カップ内でシェークして発泡させたりすることで泡状として使用することもできる。この場合における発泡前の全組成物の粘度も、泡状として毛髪に塗布したときに液だれしにくいように調整することが望ましい。この全組成物の粘度(25℃)は、B型回転粘度計(モデル;デジタル粘度計TV-10、東機産業株式会社)により、ローターNo.1を用いて30rpmで1分間回転させた後の測定値(但し、粘度が160mPa・sを超える場合は、12rpmで1分間回転させた後の測定値)として、好ましくは1〜800mPa・s、より好ましくは1〜600mPa・s、更に好ましくは1〜500mPa・s、更に好ましくは1〜300mPa・sである。なお、二剤式又は三剤式の場合には、各剤の混合後3分経過後に測定するものとする。
【0057】
<染毛方法>
本発明の染毛剤組成物を用いて染毛処理するには、例えば本発明の染毛剤組成物(二剤式の場合は第1剤と第2剤を使用直前に混合した後)を毛髪に適用し、所定時間放置後、水を用いて洗い流し、乾燥すればよい。毛髪への適用温度は15〜45℃、適用時間は1〜60分間、更には5〜45分間、更には10〜30分間が好ましい。
【0058】
以上述べた実施形態に関し、以下に本発明の好ましい態様を更に開示する。
【0059】
<1> 下記のアゾ染料(R)、(B)及び(Y)を含有し、使用時のpH(25℃)が7.5〜12である染毛剤組成物。
【0060】
【化2】
【0061】
<2> アゾ染料(R)、(B)、及び(Y)の全組成物中における質量比率〔(R)+(Y)〕/(B)が、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3.75以下、更に好ましくは3.5以下であり、また、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上、更に好ましくは1以上、更に好ましくは1.5以上、更に好ましくは2以上、更に好ましくは2.5以上である<1>に記載の染毛剤組成物。
【0062】
<3> アゾ染料(R)、(B)、及び(Y)の全組成物中における総含有量が、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、更に好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である、<1>又は<2>に記載の染毛剤組成物。
【0063】
<4> 好ましくは、更にアルカリ剤を含有する<1>〜<3>のいずれか一項に記載の染毛剤組成物。
【0064】
<5> 全組成物中におけるアルカリ剤の含有量が、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、更に好ましくは4質量%以下である<4>に記載の染毛剤組成物。
【0065】
<6> アルカリ剤として、アンモニア及びその塩、モノエタノールアミン及びその塩、並びに2-アミノ-2-メチルプロパノールからなる群より選択される少なくとも1種を含有する<4>又は<5>に記載の染毛剤組成物。
【0066】
<7> 二剤式染毛剤又は三剤式染毛剤であり、好ましくは第2剤に過酸化水素を含有する<1>〜<6>のいずれか一項に記載の染毛剤組成物。
【0067】
<8> 全組成物中における過酸化水素の含有量が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上であり、また、好ましくは12.0質量%以下、より好ましくは9.0質量%以下、更に好ましくは6.0質量%以下、更に好ましくは4.0質量%以下である<7>に記載の染毛剤組成物。
【0068】
<9> 好ましくは、更に界面活性剤を含有する<1>〜<8>のいずれか一項に記載の染毛剤組成物。
【0069】
<10> 全組成物中における界面活性剤の含有量が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下である<9>に記載の染毛剤組成物。
【0070】
<11> 一剤式染毛剤であって、25℃におけるpHが、好ましくは8以上、より好ましくは8.5以上、更に好ましくは9以上であり、また、好ましくは11.5以下、より好ましくは11以下、更に好ましくは10.5以下である<1>〜<6>、<9>及び<10>のいずれか一項に記載の染毛剤組成物。
【0071】
<12> 二剤式染毛剤であって、第1剤と第2剤の混合物のpH(25℃)が、好ましくは8以上、より好ましくは8.5以上、更に好ましくは9以上であり、また、好ましくは11.5以下、より好ましくは11以下、更に好ましくは10.5以下である<1>〜<10>のいずれか一項に記載の染毛剤組成物。
【0072】
<13> <1>〜<12>のいずれか一項に記載の染毛剤組成物を毛髪に適用し、1〜60分間放置した後、洗い流す染毛方法。
【実施例】
【0073】
実施例1〜3及び比較例1
表1に示す組成からなる染毛剤組成物(一剤式染毛剤)を常法により調製した。得られた染毛剤組成物について、測色によって、根元と毛先の色調の均一性を評価した。
【0074】
[色調の均一性]
中国人白髪毛1gの毛束(ダメージを受けていない白髪の毛束)と、1gのサロン用パウダーブリーチ剤(ゴールドウェルジャパン社製ゴールドウェルブリーチとトップシックローション6%を質量比1:1で混合したもの)で処理した中国人白髪毛1gの毛束(ダメージを受けた白髪の毛束)とを用意した。染毛剤組成物をそれぞれの毛束に浴比(剤:毛髪)=1:1で塗布し、30℃で20分放置した後、約40℃の水ですすぎ、市販のシャンプーで洗浄、水洗した。次いで、市販のリンスを塗布した後、約40℃の水ですすぎ、タオルで拭き、ドライヤーで乾燥させた。
上記のパウダーブリーチ剤で処理した中国人白髪(ダメージを受けた白髪)に対する染毛後の色合いを毛先に対する仕上がりとし、一方パウダーブリーチ剤処理を施さない中国人白髪(ダメージを受けていない白髪)に対する染毛後の色合いを根元に対する仕上がりとした。得られた染毛直後の毛束の色合いを、色差計(コニカミノルタセンシング社製色彩色差計CR-400)を用いてCIE表色系(L*,a*,b*)で計測し、色相角を数式1より求めた。根元と毛先の色相角の差(数式2)を求めて色調の均一性Δh0とした。Δh0が小さいほど色調の均一性に優れていることを示す。
【0075】
【数1】
【0076】
【数2】
【0077】
〔式中、hro及びht0は、それぞれパウダーブリーチ剤処理を施さない毛束に対する染色直後のhの値、及びパウダーブリーチ剤処理を施した毛束に対する染色直後のhの値を示す。〕
【0078】
【表1】
【0079】
*表1中のアゾ染料(A)は、下記の化合物である。
【0080】
【化3】
【0081】
表1に示すとおり、実施例1の染毛剤組成物は、比較例1の染毛剤組成物に比べ、染色直後の色調の均一性に優れていた。
【0082】
実施例4及び比較例2
表2に示す組成からなる染毛剤組成物(二剤式染毛剤)の第1剤と第2剤とを常法により調製した。表2に示す第1剤と第2剤とを1:1で混合した染毛剤組成物を用いて、上記と同様に、色調の均一性評価を行った。評価結果を表2に併せて示した。
【0083】
【表2】
【0084】
表2に示すとおり、実施例4の染毛剤組成物は、比較例2の染毛剤組成物に比べ、染色直後の色調の均一性に優れていた。