特許第6334292号(P6334292)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334292
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】管状体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 3/06 20060101AFI20180521BHJP
   G21C 3/30 20060101ALI20180521BHJP
   C04B 35/56 20060101ALI20180521BHJP
   C04B 35/80 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   G21C3/06 B
   G21C3/30 V
   C04B35/56 070
   C04B35/80 600
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-137016(P2014-137016)
(22)【出願日】2014年7月2日
(65)【公開番号】特開2016-13950(P2016-13950A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 修一
(72)【発明者】
【氏名】高木 俊
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5-43364(JP,A)
【文献】 特開平7-206535(JP,A)
【文献】 特表2001-507769(JP,A)
【文献】 特表2008-501977(JP,A)
【文献】 特開2009-210266(JP,A)
【文献】 特表2013-507605(JP,A)
【文献】 特表2013-529298(JP,A)
【文献】 特表2014-514230(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0034655(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0192949(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/06
G21C 3/30
C04B 35/56
C04B 35/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多角形の管状体の製造方法であって
長手方向の辺にR面形状部を有する多角形マンドレルにセラミック繊維を巻回し、マンドレルの軸線に対する巻き角度の異なる複数層のセラミック繊維層が積層された巻回体を得る巻回工程と、
前記巻回体にセラミック−CVDを被覆し、被覆体を形成するCVD工程と、
前記被覆体からマンドレルを除去するマンドレル除去工程と、
からなり、前記セラミック繊維層は、最外層のセラミック繊維層が、最外層セラミック繊維層直下のセラミック繊維層よりもマンドレルの軸線に対する巻き角度が小さいことを特徴とするセラミック/セラミック複合材からなる多角形の管状体の製造方法。
【請求項2】
多角形の管状体の製造方法であって
長手方向の辺にR面形状部を有する多角形マンドレルにSiC繊維を巻回し、マンドレルの軸線に対する巻き角度の異なる複数層のSiC繊維層が積層された巻回体を得る巻回工程と、
前記巻回体にSiC−CVDを被覆し、被覆体を形成するCVD工程と、
前記被覆体からマンドレルを除去するマンドレル除去工程と、
からなり、前記SiC繊維層は、最外層のSiC繊維層が、最外層SiC繊維層直下のSiC繊維層よりもマンドレルの軸線に対する巻き角度が小さいことを特徴とするSiC/SiC複合材からなる多角形の管状体の製造方法。
【請求項3】
前記巻回工程と、前記CVD工程との間に
前記巻回体にコーティング材を塗布後、焼成するコーティング工程をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の管状体の製造方法。
【請求項4】
前記最外層のSiC繊維層は、マンドレルの軸線に対する巻き角度が30〜60度であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の管状体の製造方法
【請求項5】
前記管状体は、断面が四角形であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の管状体の製造方法。
【請求項6】
前記R面形状部の曲率半径は、5〜20mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の管状体の製造方法。
【請求項7】
前記SiC繊維は、繊維直径が5〜20μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の管状体の製造方法。
【請求項8】
前記コーティング材は、金属元素、シリコン、炭素、ホウ素から選択される1または2以上の元素を含有する化合物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の管状体の製造方法。
【請求項9】
前記管状体は、原子力用であることを特徴とする請求項1〜8に記載の管状体の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック/セラミック複合材及びSiC/SiC複合材からなる多角形の管状体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SiC/SiC複合材からなる管状体は、高強度のSiC繊維を骨材とし、主にSiCがマトリックスを構成する。SiCは、耐熱性を有するとともに耐酸化性のある素材であるので、C/Cコンポジット(炭素繊維強化炭素複合材)が使用できない酸化雰囲気下で使用できる特徴がある。
【0003】
特許文献1には、セラミック繊維からなる骨材と前記セラミック繊維間に充填された炭素質とからなる管状の繊維強化炭素質基材の少なくとも外表面にSiC層が形成され、
前記繊維強化炭素質基材と前記SiC層の境界領域から当該繊維強化炭素質基材の内部に向かってケイ素原子が拡散してなる管状体が記載されている。
このような管状体では、セラミック繊維の表面が、炭素質に接しているため、熱応力により発生するクラックを、セラミック繊維表面で止めることができ、管状体の内外を貫通するクラックが発生しにくい上、個々のセラミック繊維に被覆を設ける前処理が必要ないため工程が簡略化でき、性能向上によりさらには原子炉をより高温で運転できるため、エネルギー効率の高い原子炉を提供することができると共に使用寿命が長期化可能であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−210266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記記載のSiC/SiC複合材よりなる管状体は、円筒形の形状に関する記載があるのみで、四角形など多角形の管状体に関しては何の記載もない。
実際多角形の管状体を製造する際には、円筒形状の管状体には無い課題がある。本発明では、四角形など多角形のSiC/SiC複合材よりなる管状体を製造するための有効な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の管状体の製造方法は、
長手方向の辺にR面形状部を有する多角形マンドレルにセラミック繊維を巻回し、マンドレルの軸線に対する巻き角度の異なる複数層のセラミック繊維層が積層された巻回体を得る巻回工程と、
前記巻回体にセラミック−CVDを被覆し、被覆体を形成するCVD工程と、
前記被覆体からマンドレルを除去するマンドレル除去工程と、
からなり、前記セラミック繊維層は、最外層のセラミック繊維層が、最外層セラミック繊維層直下のセラミック繊維層よりもマンドレルの軸線に対する巻き角度が小さいことを特徴とする。
【0007】
前記課題を解決するための本発明の管状体の製造方法は、長手方向の辺にR面形状部を有する多角形マンドレルにSiC繊維を巻回し、マンドレルの軸線に対する巻き角度の異なる複数層のSiC繊維層が積層された巻回体を得る巻回工程と、前記巻回体にSiC−CVDを被覆し、被覆体を形成するCVD工程と、前記被覆体からマンドレルを除去するマンドレル除去工程と、からなり、前記SiC繊維層は、最外層のSiC繊維層が、最外層SiC繊維層直下のSiC繊維層よりもマンドレルの軸線に対する巻き角度が小さいことを特徴とする。
【0008】
SiC繊維は高強度、高弾性の繊維であるため、引っ張りに対しては高強度を発揮する一方、歪みに対しては発生する応力が大きく、折れやすい性質を持っている。このため、鋭い曲げ加工が必要な多角形の管状体では、コーナー部分で繊維が折れ、毛羽立ちができやすくなる。本発明では、マンドレルの長手方向の辺にR面を有しているので、SiC繊維の曲げに伴う応力を小さくでき折れにくくすることができる。
また、SiC繊維をマンドレルの軸線に対する巻き角度が小さくなるように、マンドレルに巻回することにより、SiC繊維の曲げの曲率半径をより大きくすることができ、曲げに伴う応力を緩和することができる。さらに、マンドレルの軸線に対する巻き角度が小さいSiC繊維層を最外層に配置することにより、最外層SiC繊維層直下のSiC繊維層よりも折れにくくできる。つまり毛羽立ちし易いSiC繊維層を、毛羽立ちしにくいSiC繊維層で覆い、毛羽立ちの発生を抑えることができる。
【0009】
また本発明の管状体の製造方法によれば、マンドレルの軸線に対する巻き角度が異なる複数層のSiC繊維層を有している。このため、管状体にかかる様々な方向の力に対し、いずれかのSiC繊維層に張力がかかるように配置される。このため、高強度の管状体を得ることができる。
【0010】
さらに、複数層のSiC繊維層は、隙間をCVD−SiCによって充填されるので、繊維どうしを強く結びつけることができる。
【0011】
さらに本発明の管状体の製造方法は、以下の態様であることが望ましい。
(1)前記巻回工程と、前記CVD工程との間に前記巻回体にコーティング材を塗布後、焼成するコーティング工程をさらに有する。
CVD工程では高温に曝されるため、熱膨張差でSiC繊維に負担が掛かり毛羽立ちの発生原因となりやすい。本発明では、SiC繊維の毛羽立ちの発生しやすいCVD工程の前に、コーティング工程を加えることでSiC繊維に繊維被覆層を形成するとともにSiC繊維を互いに結び付けているので、毛羽立ちの発生を抑えることができる。
CVD工程の原料ガスを流す段階で毛羽立ちがあると、毛羽立ちにもCVD−SiCが沈着し、原料ガスが巻回体の内部に充分行き渡らず、管状体にピンホールなど欠陥ができやすくなるが、このような構成にすることにより、一様にCVD−SiCが被覆され、毛羽立ちを原因とする欠陥の発生を抑止することができる。
また、コーティング工程により、SiC繊維の表面に繊維被覆層を形成する。繊維被覆層はCVD−SiCによるマトリックスとSiC繊維との界面に形成されるので、マトリックスから伸展するクラックをSiC繊維に伝達しないように応力を分散することができる。
これら作用により、高強度のSiC/SiC複合材よりなる管状体を得ることができる。
【0012】
(2)前記最外層のSiC繊維層は、マンドレルの軸線に対する巻き角度が30〜60度である。
最外層のSiC繊維層のマンドレルの軸線に対する巻き角度が、30度以上であると、最外層のSiC繊維層が管状体に強固に巻き付けられるので、SiC繊維層の剥離しにくい管状体を構成することができる。最外層のSiC繊維層のマンドレルの軸線に対する巻き角度が、60度以下であると、マンドレルの長手方向の辺に沿って曲げられるSiC繊維の曲げの曲率半径を大きくすることができ、歪みに伴う応力を緩和することができる。
【0013】
(3)前記管状体は、断面が四角形である。
四角形の管状体であれば、複数の管状体を規則的に配列することができる上に、管状体の内部に様々なものを収納することができ、空間を有効に利用できる。
【0014】
(4)前記R面形状部の曲率半径は、5〜20mmである。
R面形状部の曲率半径が、5mm以上であると、R面に沿って曲がるSiC繊維にかかる応力を緩和することができる。R面形状部の曲率半径が、20mm以下であると、R面形状部によってできる利用できない空間を少なくすることができる。
【0015】
(5)前記SiC繊維は、繊維直径が5〜20μmである。
SiC繊維の繊維直径が5μm以上であると繊維表面に発生する微少な傷などの欠陥の影響を小さくすることができ、折れにくくすることができる。SiC繊維の繊維直径が20μm以下であると、曲げに伴って延びる側の外表面に発生する張力を抑制することができ、折れにくくすることができる。
【0016】
(6)前記コーティング材は、金属元素、シリコン、炭素、ホウ素から選択される1または2以上の元素を含有する化合物である。
これらの化合物は、焼成によってSiC繊維の表面に残留し、繊維被覆層を形成する。繊維被覆層が、CVD−SiCからなるマトリックスとSiC繊維との界面に介在することにより、マトリックスからのクラックの伸展を抑制する作用がある。
【0017】
(7)前記管状体は、原子力用である。
本発明から得られる管状体は、SiC/SiC複合材で構成され、耐熱性を有している上に、高い強度を備えているので、原子力燃料を収納するチャンネルボックスなど原子力用として好適に利用することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、マンドレルの長手方向の辺にR面を有しているので、SiC繊維の曲げに伴う応力を小さくでき折れにくくすることができ、毛羽立ちを防止することができる。
また、SiC繊維をマンドレルの軸線に対する巻き角度が小さくなるように、マンドレルに巻回することにより、SiC繊維の曲げの曲率半径をより大きくすることができる。このため曲げに伴う応力を緩和することができる。さらに、マンドレルの軸線に対する巻き角度が小さいSiC繊維層を最外層に配置することにより、最外層SiC繊維層直下のSiC繊維層よりも折れにくくできる。つまり毛羽立ちし易いSiC繊維層を、毛羽立ちしにくいSiC繊維層で覆い、毛羽立ちの発生を抑えることができる。
CVD工程の原料ガスを流す段階で毛羽立ちがあると、毛羽立ちにもCVD−SiCが沈着し、原料ガスが巻回体の内部に充分行き渡らず、管状体にピンホールなど欠陥ができやすくなるが、このような構成にすることにより、一様にCVD−SiCが被覆され、毛羽立ちを原因とする欠陥の発生を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態1の管状体の製造方法の工程フロー図
図2】本発明の実施形態1に用いるマンドレルの斜視図
図3】本発明の実施形態1の巻回工程の詳細工程フロー図
図4】本発明の実施形態1により得られた管状体の外観写真
図5】本発明の実施形態1により得られた管状体の断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書は、SiC繊維と、CVD−SiCのマトリックスにより構成されたSiC/SiC複合材を中心に説明するが、セラミック繊維と、セラミック−CVDのマトリックスよりなるセラミック/セラミック複合材についても作用効果は同一である。SiC繊維はセラミック繊維に対応し、CVD−SiCは、セラミック−CVDに対応し、置き換えて説明可能である。
セラミック繊維としては、SiC、チタンシリコンカーバイド、アルミナ、TaC、TaN、SiOなどの繊維が挙げられ特に限定されない。CVD−SiCとしては、SiC、チタンシリコンカーバイド、アルミナ、TaC、TaN、SiOなどが挙げられる。また、セラミック繊維、セラミック−CVDの組合せについては特に限定されない。
【0021】
本明細書において、マンドレルの軸線とは、マンドレルの長手方向の中心軸である。
本明細書において、マンドレルの軸線に対する巻き角度とは、SiC繊維がマンドレルの軸線に平行な線と交わる角度である。0度の場合、SiC繊維はマンドレルの長手方向に巻回され、90度の場合、マンドレルを周回するように巻回される。
【0022】
本発明の管状体の製造方法は、長手方向の辺にR面形状部を有する多角形マンドレルにSiC繊維を巻回し、マンドレルの軸線に対する巻き角度の異なる複数層のSiC繊維層が積層された巻回体を得る巻回工程と、前記巻回体にSiC−CVDを被覆し、被覆体を形成するCVD工程と、前記被覆体からマンドレルを除去するマンドレル除去工程と、からなり、前記SiC繊維層は、最外層のSiC繊維層が、最外層SiC繊維層直下のSiC繊維層よりもマンドレルの軸線に対する巻き角度が小さいことを特徴とする。
【0023】
SiC繊維は高強度、高弾性の繊維であるため、引っ張りに対しては高強度を発揮する一方、歪みに対しては発生する応力が大きく、折れやすい性質を持っている。このため、鋭い曲げ加工が必要な多角形の管状体では、コーナー部分で繊維が折れ、毛羽立ちができやすくなる。本発明では、マンドレルの長手方向の辺にR面を有しているので、SiC繊維の曲げに伴う応力を小さくでき折れにくくすることができる。
また、SiC繊維をマンドレルの軸線に対する巻き角度が小さくなるように、マンドレルに巻回することにより、SiC繊維の曲げの曲率半径をより大きくすることができ、曲げに伴う応力を緩和することができる。さらに、マンドレルの軸線に対する巻き角度が小さいSiC繊維層を最外層に配置することにより、最外層SiC繊維層直下のSiC繊維層よりも折れにくくできる。つまり毛羽立ちし易いSiC繊維層を、毛羽立ちしにくいSiC繊維層で覆い、毛羽立ちの発生を抑えることができる。
【0024】
また本発明の管状体の製造方法によれば、マンドレルの軸線に対する巻き角度が異なる複数層のSiC繊維層を有している。このため、管状体にかかる様々な方向の力に対し、いずれかのSiC繊維層に張力がかかるように配置される。このため、高強度の管状体を得ることができる。
【0025】
さらに、複数層のSiC繊維層は、隙間をCVD−SiCによって充填されるので、繊維どうしを強く結びつけることができる。
【0026】
さらに本発明の管状体の製造方法は、以下の態様であることが望ましい。
(1)前記巻回工程と、前記CVD工程との間に前記巻回体にコーティング材を塗布後、焼成するコーティング工程をさらに有する。
CVD工程では高温に曝されるため、熱膨張差でSiC繊維に負担が掛かり毛羽立ちの発生原因となりやすい。本発明では、SiC繊維の毛羽立ちの発生しやすいCVD工程の前に、コーティング工程を加えることでSiC繊維に繊維被覆層を形成するとともにSiC繊維を互いに結び付けているので、毛羽立ちの発生を抑えることができる。
【0027】
CVD工程の原料ガスを流す段階で毛羽立ちがあると、毛羽立ちにもCVD−SiCが沈着し、原料ガスが巻回体の内部に充分行き渡らず、管状体にピンホールなど欠陥ができやすくなるが、このような構成にすることにより、一様にCVD−SiCが被覆され、毛羽立ちを原因とする欠陥の発生を抑止することができる。
また、コーティング工程により、SiC繊維の表面に繊維被覆層を形成する。繊維被覆層はCVD−SiCによるマトリックスとSiC繊維との界面に形成されるので、マトリックスから伸展するクラックをSiC繊維に伝達しないように応力を分散することができる。
これら作用により、高強度のSiC/SiC複合材よりなる管状体を得ることができる。
【0028】
(2)前記最外層のSiC繊維層は、マンドレルの軸線に対する巻き角度が30〜60度である。
最外層のSiC繊維層のマンドレルの軸線に対する巻き角度が、30度以上であると、最外層のSiC繊維層が管状体に強固に巻き付けられるので、SiC繊維層の剥離しにくい管状体を構成することができる。最外層のSiC繊維層のマンドレルの軸線に対する巻き角度が、60度以下であると、マンドレルの長手方向の辺に沿って曲げられるSiC繊維の曲げの曲率半径を大きくすることができ、歪みに伴う応力を緩和することができる。
【0029】
(3)前記管状体は、断面が四角形である。
四角形の管状体であれば、複数の管状体を規則的に配列することができる上に、管状体の内部に様々なものを収納することができ、空間を有効に利用できる。
【0030】
(4)前記R面形状部の曲率半径は、5〜20mmである。
R面形状部の曲率半径が、5mm以上であると、R面に沿って曲がるSiC繊維にかかる応力を緩和することができる。R面形状部の曲率半径が、20mm以下であると、R面形状部によってできる利用できない空間を少なくすることができる。
【0031】
(5)前記SiC繊維は、繊維直径が5〜20μmである。
SiC繊維の繊維直径が5μm以上であると繊維表面に発生する微少な傷などの欠陥の影響を小さくすることができ、折れにくくすることができる。SiC繊維の繊維直径が20μm以下であると、曲げに伴って延びる側の外表面に発生する張力を抑制することができ、折れにくくすることができる。
【0032】
(6)前記コーティング材は、金属元素、シリコン、炭素、ホウ素から選択される1または2以上の元素を含有する化合物である。
これらの化合物は、焼成によってSiC繊維の表面に残留し、繊維被覆層を形成する。繊維被覆層が、CVD−SiCからなるマトリックスとSiC繊維との界面に介在することにより、マトリックスからのクラックの伸展を抑制する作用がある。
【0033】
(7)前記管状体は、原子力用である。
本発明から得られる管状体は、SiC/SiC複合材で構成され、耐熱性を有している上に、高い強度を備えているので、原子力燃料を収納するチャンネルボックスなど原子力用として好適に利用することができる。
【0034】
本発明の管状体の製造方法の実施形態1について説明する。(図1
実施形態1の管状体の製造方法は、巻回工程(a)、コーティング工程(b)、CVD工程(c)、マンドレル除去工程(d)とからなる。
【0035】
<巻回工程>図1(a)
本発明のマンドレルは、SiC繊維を巻回したまま焼成、CVD処理がされるので耐熱性を有するものであればよく、特に限定されない。例えば、黒鉛、SiCなどが利用できる。黒鉛としては、等方性黒鉛材などが利用でできる。等方性黒鉛材は、SiCと熱膨張係数が近いので加熱、冷却の過程で熱歪みが発生しにくい。
また、黒鉛は後のマンドレル除去工程で、空気酸化させて除去することができる利点もある。
黒鉛のマンドレルを回転させながら、複数のSiC繊維を束ねたストランドの形態で巻回する。SiC繊維は特に限定されない。例えば、宇部興産社製SiC繊維「チラノSA」を用いることができる。繊維直径は7.5μmである。
黒鉛のマンドレル1は、断面が130mmの辺の長さの正方形であり、コーナー部分は10mmのR面形状部2がなされている。また、黒鉛のマンドレルの長さは1000mmである。図2にそのマンドレルの斜視図を示す。マンドレル1の長手方向の4辺にはR面形状部を有している。
【0036】
実施形態1の巻回工程を、図3を用いて説明する。
1層目(a)では、SiC繊維をマンドレルの軸線に対し45度となるようにマンドレルの長手方向に交互に移動させながら巻回する。交互に移動しながら巻回するので、表面に菱形の模様が形成されるヘリカル巻きとなる。
2層目(b)では、マンドレルの軸線に対し0度となるように、複数のSiC繊維を束ねたストランドの形態で巻回する。
3層目(c)では、マンドレルの軸線に直交するように、複数のSiC繊維を束ねたストランドの形態で巻回する。このような巻き方は、フープ巻きである。
4層目(d)では、SiC繊維をマンドレルの軸線に対し45度となるように交互に移動させながら巻回する。交互に移動しながら巻回するので、表面に菱形の模様が形成されるヘリカル巻きとなる。
このように4層のSiC繊維層を有する巻回体が得られる。
【0037】
最外層である4層目のSiC繊維層は、マンドレルの軸線に対し45度の巻き角度であり、最外層SiC繊維層直下の3層目のSiC繊維層は、マンドレルの軸線に対し90度の巻き角度である。このような構成にすることにより最外層のSiC繊維層が、最外層SiC繊維層直下のSiC繊維層よりもマンドレルの軸線に対する巻き角度が小さい巻回体がえられる。
長辺にR面形状部を有するマンドレルにSiC繊維を巻回するので、SiC繊維に大きな曲げ応力が加わりにくくすることができる。
また、3層目のSiC繊維は、マンドレルの軸線に直交するようにSiC繊維が巻回されるのでマンドレルのR面形状部の曲率半径と同等の曲率半径で巻回される。これに対し、最外層の4層目のマンドレルでは、マンドレルの軸線に対し45度の角度で巻回されるので、実際巻回されるSiC繊維の曲率半径は(1/cos45°)倍、すなわち1.41倍に緩和され、より折れにくくすることができる。
このような構成にすることにより、より折れにくくなったSiC繊維層で最外層が構成されるので、毛羽立ちを効率良く防止することができる。
【0038】
<コーティング工程>図1(b)
コーティング工程は必須ではないが、SiC/SiC複合材を破壊しにくくする効果があるため、管状体の製造方法に用いることが望ましい。この効果について以下に説明する。
巻回体に、コーティング材を塗布した後焼成する。コーティング材としては、金属元素、シリコン、炭素、ホウ素から選択される1または2以上の元素を含有する化合物である。
実施形態1ではコーティング材として、フェノール樹脂を用い、焼成によって、SiC繊維の表面に繊維被覆層を形成する。
これらの化合物は、焼成によってSiC繊維の表面に残留し、繊維被覆層を形成する。繊維被覆層が、CVD−SiCからなるマトリックスとSiC繊維との界面に介在することにより、マトリックスからのクラックの伸展を抑制する作用がある。
他のコーティング材としては、例えば、ポリカルボシラン、ポリオルガノボロンシラザン、フラン樹脂などの有機物、有機金属化合物、ナノシリカなどのセラミック微細粒子などが利用できる。
焼成は、例えば400〜1000℃で処理することができる。焼成雰囲気は、形成する繊維被覆層の形態によって適宜選択することができ、例えば、カーボン系の繊維被覆層の場合には還元性雰囲気、酸化物系の繊維被覆層には酸化性雰囲気とすることにより、望ましい繊維被覆層を得ることができる。
【0039】
<CVD工程>
こうして得られた巻回体を、CVD炉に入れ、CVD−SiCにより被覆する。
成膜温度は、例えば1000〜1800℃が利用できる。原料ガスは特に限定されない。例えば、シランガス/メタンガスの混合ガス、シランガス/メタンガスの混合ガス、メチルトリクロロシラン(MTS)などが利用できる。他に炉内分圧を調整するための水素ガスなどを適宜利用することができる。
CVDの形式は特に限定されないが、炉内のヒーターの輻射で炉内全体を暖めるホットウォール型、マンドレル内部に組み込まれたヒーターにより、巻回体のみを暖めるコールドウォール型のいずれでも利用することができる。コールドウォール型を用いた場合には、原料ガスを供給するノズルに被膜は形成されにくいので、効率良く成膜することができ、厚い被膜を容易に得ることができる。
なお、CVD−SiCは、SiC繊維間を充填するだけではなく、さらに沈積することによって、CVD−SiCのみからなる表層部を有している。
【0040】
<マンドレル除去工程>
こうして得られたマンドレルを除去することにより、四角形のSiC/SiC複合材よりなる管状体を得ることができる。
マンドレルの除去の方法は、特に限定されない。機械的に切削加工して除去する切削法、酸化雰囲気炉で燃焼させる燃焼法、油圧など外部からの力で引き抜く引き抜き法など、どのような方法でも利用でき、これらを併用しても良い。
さらに、管状体の両端を切断し、形状を整える。
【0041】
次に得られた管状体について説明する。図4は実施形態1の製造方法で得られた管状体の外観写真である。図5は、実施形態1の製造方法で得られた管状体の断面図である。
SiC繊維層4と、CVD−SiCからなるマトリックス5を有している。CVD−SiCからなるマトリックス5は、繊維間を充填するのみならず、さらに沈積し、CVD−SiCのみからなる表層部を有している。
このようにして得られた管状体は、複数層のSiC繊維層4と、前記複数層のSiC繊維層を被覆する繊維被覆層8と、前記SiC繊維層の隙間を充填するとともに外表面を構成するCVD−SiC5とからなるSiC/SiC複合材からなる多角形の管状体であって、前記管状体の長手方向の辺は、R面6を有し、前記SiC繊維層4は、最外層のSiC繊維層が、最外層SiC繊維層直下のSiC繊維層よりもマンドレルの軸線に対する巻き角度が小さい。
【0042】
また実施形態1の製造方法により得られる管状体10は、マンドレルの軸線に対する巻き角度が異なる複数層のSiC繊維層4を有している。このため、管状体10にかかる様々な方向の力に対し、いずれかのSiC繊維層4に張力がかかるように配置される。
【0043】
複数層のSiC繊維層4は、隙間をCVD−SiC5によって充填されるので、繊維どうしを強く結びつくことができる。このため高強度の管状体10を得ることができる。
また、管状体10の長手方向の辺は、R面6を有しているので、SiC繊維が緩やかに曲がり、延びる側の繊維表面にかかる張力を小さくすることができる。SiC繊維層4は、最外層のSiC繊維層が、最外層SiC繊維層直下のSiC繊維層よりもマンドレルの軸線に対する巻き角度が小さい。このため、繊維の毛羽立ちが少なく、CVDによって形成されるマトリックスは、毛羽立ちしたSiC繊維7への付着が少なく、ピンホールの少ないSiC/SiC複合材よりなる管状体を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
原子力用途の燃料集合体材料にとして用いられる薄肉長尺角筒、薄肉長尺円筒などの様々な形状にも利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 マンドレル
2 R面形状部
3 マンドレルの軸線
4 SiC繊維層
5 CVD−SiC(マトリックス)
6 R面
7 SiC繊維
8 繊維被覆層
10 管状体
図1
図2
図3
図4
図5