(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記運転モード決定部は、前記室内温度の値及び前記室内湿度の値が前記快適性範囲に対応した温度及び湿度の範囲に含まれている場合、前記室内湿度の値が、予め設定された快適な湿度範囲に含まれているときには空調機の電源断と判断し、前記湿度範囲よりも高いときには除湿と判断し、前記湿度範囲よりも低いときには加湿と判断し、
前記設定送信部は、前記運転モード決定部が空調機の電源断と判断した場合、空調機の電源断の指示を送信し、空調機の電源断の指示を送信した後に前記運転モード決定部が加湿または除湿の運転モードを決定した場合、あるいは、前記温度設定決定部が前記温度設定値を決定した場合、前記運転モード決定部が決定した前記運転モード又は前記温度設定決定部が決定した前記温度設定値に加えて空調機の電源投入の指示を送信する請求項1に記載の空調制御装置。
前記取得部は、室内の複数の個所で測定された室内温度の値及び室内湿度の値を受信し、受信した複数の前記室内温度の値及び複数の前記室内湿度の値に基づいて、運転モードの判断及び温度設定値の決定に用いられる室内温度の値及び室内湿度の値を取得する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の空調制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の空調制御装置、空調制御方法、及びプログラムを、図面を参照して説明する。
以下では、空調制御装置による制御対象の空調機が、ビル用マルチシステムである場合を例に説明する。これは、近年、オフィスビルへのビル用マルチシステムの導入が増えており、運転モードが在室者またはビル管理人の操作によって変更されていたためである。
また、以下では、空調機の運転モードと、空調機が温度制御の目標とする室内温度である温度設定値を算出する際に、快適性指標を利用する場合を例に説明する。快適性指標は、人間が感じる快適さを定量的な値で表したものである。例えば、快適性指標には、PMV(Predicted Mean Vote:予測平均温冷感申告)、有効温度、修正有効温度、新有効温度、新標準有効温度、作用温度などを用いることができ、それらの任意の組み合わせを用いてもよい。以下では、快適性指標にPMVを用いた場合を例に説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態による空調制御システムの構成図である。同図に示すように、空調制御システムは、空調制御装置1と、中継装置2と、ビル用マルチシステム10とを備えて構成される。ビル用マルチシステム10は、室外機11と、室内機12と、運転装置13とを備えて構成される。室内機12は居室31に設置される。居室31は、空調機の制御対象である被空調室内である。居室31には、さらに、室内温度計41と、室内湿度計42とが設置される。
【0009】
ビル用マルチシステム10は、1台の室外機11と1台の室内機12とを有するシングルタイプの空調機である。ここでは、説明の簡略化のため、ビル用マルチシステム10を、室外機11と室内機12とを1台ずつ備えた構成としている。しかし、ビル用マルチシステム10は、1台の室外機11と複数の室内機12とを有するマルチタイプでもよい。
【0010】
空調制御装置1は、室内温度計41が測定した室内温度の現在値と、室内湿度計42が測定した室内湿度の現在値を取得する。空調制御装置1は、取得した室内温度の現在値及び室内湿度の現在値を用いてビル用マルチシステム10の運転モードと温度設定値を決定する。空調制御装置1は、決定した運転モード及び温度設定値を中継装置2に送信する。中継装置2は、空調制御装置1からビル用マルチシステム10の運転モードと温度設定値を受信し、受信した運転モードと温度設定値をビル用マルチシステム10の運転装置13に送信する。
【0011】
ビル用マルチシステム10は、中継装置2を介して空調制御装置1から運転モードと温度設定値を受信する。室外機11は、受信した運転モードと温度設定値に従って所定の温度に制御した冷媒14を室内機12に送る。このとき、運転装置13は、還気温度計18の現在値を取得する。還気温度計18は、居室31からの還気32の温度を計測する。運転装置13は、空調制御装置1から受信した温度設定値と還気温度計18から取得した現在値とに基づいて、冷媒バルブ16に開度制御信号を出力する。室内機12の冷却コイル15は、冷媒14と居室31からの還気32との熱交換により、還気32の温度を設定された温度とする。居室31からの還気32は、給気ファン17を駆動することに取り込まれる。このとき、運転装置13は、還気温度計18の現在値と、受信した温度設定値とを一致させるように、給気ファン17に風量制御信号を出力する。
【0012】
図2は、空調制御装置1の機能ブロック図であり、本実施形態と関係する機能ブロックのみを抽出して示してある。空調制御装置1は、例えば、コンピュータ装置により実現される。空調制御装置1は、現在値取得部51と、現在快適性演算部52と、快適性範囲設定部53と、運転モード決定部54と、温度設定演算部55と、設定送信部56とを備えて構成される。
【0013】
現在値取得部51は、居室31の室内温度の値、及び室内湿度計42から室内湿度の値を取得する取得部である。現在値取得部51は、室内温度計41から室内温度の現在値を取得し、室内湿度計42から室内湿度の現在値を取得する。
現在快適性演算部52は、現在値取得部51が取得した室内温度の現在値及び室内湿度の現在値を用いて、居室31の現在の快適性指標を演算する。本実施形態においては、現在快適性演算部52は、現在のPMVを演算する。
現在快適性演算部52は、例えば、特開2002−21375号公報(参考文献1)に開示されている技術を適用してPMVを演算する。快適性指標PMVは、人間の温熱感覚を表す指標としてISO7730により規定され、温度、湿度、平均輻射温度、気流速度、活動量、着衣量の6つの変数を利用して算出される。参考文献1の技術を利用すれば、簡易、かつ、精度よく快適性指標であるPMVを求めることができる。具体的には、PMV演算に必要な既知の変数のうち、所定の変数を除いた変数から独立変数を導出して、PMV簡易演算式を作成する。そして、このPMV簡易演算式に用いるPMV線形モデルの各係数を、重回帰分析の手法を用いて予め求めておく。現在快適性演算部52は、PMV簡易演算式に室内温度の現在値及び室内湿度の現在値を代入してPMVを演算する。
【0014】
快適性範囲設定部53は、ユーザの入力に従って居室31の快適性範囲を設定する。快適性範囲は、ビル用マルチシステム10の制御目標となる快適さを快適性指標の範囲で示したものである。本実施形態においては、快適性範囲設定部53は、快適性範囲として、PMV範囲を設定する。PMVは、−3(寒い)から+3(暑い)の範囲をとる。PMVの値が0のときは95%の人が快適に感じるとされており、PMVの値が−0.5〜+0.5の範囲内であれば、90%の人が快適に感じるとされている。このような基準により、ユーザは設定するPMVの範囲を決定する。本実施形態では、ユーザが入力したPMVの範囲が−0.5〜+0.5として説明する。
【0015】
運転モード決定部54は、現在値取得部51が取得した室内温度の現在値及び室内湿度の現在値と、快適性範囲設定部53がユーザの入力に従って設定したPMV範囲とを利用して、ビル用マルチシステム10の運転モードを決定する。本実施形態では、例として、ビル用マルチシステム10の運転モードを、冷房、暖房、送風の3種類とする。送風の場合、ビル用マルチシステム10は、還気32の熱交換を行わずに給気ファン17を駆動する。
【0016】
温度設定演算部55は、運転モード決定部54が決定した運転モードと、室内湿度計42が取得した室内温度の現在値及び室内湿度の現在値とを利用して、ビル用マルチシステム10の温度設定値を演算する。
より具体的には、現在快適性演算部52と同様に、参考文献1に開示されている技術を適用することが可能である。この技術によれば、上述したPMV簡易演算式に目標PMVを与えて逆算により室内温度設定値を算出することができる。目標PMVは、ビル用マルチシステム10の運転モードが冷房の場合は、設定された快適性範囲の上限値となり、暖房の場合は、快適性範囲の下限値となり、送風の場合は、快適性範囲の中間値となる。ここでは、運転モードが送風の場合の目標PMVは、快適性範囲の中間値としたが、上限値、あるいは、下限値でもよく、温度設定値を演算しなくてもよい。送風の場合は、温度設定値と関係なく運転するためである。以下では、運転モードが送風のときには、現在快適性演算部52は温度設定値を演算しない場合を説明する。
【0017】
設定送信部56は、運転モード決定部54が決定した運転モードと、温度設定演算部55が演算した温度設定値とを中継装置2に送信する。中継装置2は、受信した運転モードと温度設定値をビル用マルチシステム10の運転装置13に送信する。
【0018】
続いて空調制御装置1の動作について説明する。
図3は、空調制御装置1の空調制御処理を示すフローチャートである。空調制御装置1は、空調制御周期毎に各室外機11について同図に示す空調制御処理を実行する。空調制御装置1の快適性範囲設定部53は、ユーザの入力に従って予め快適性範囲を設定している。例えば、ユーザは、コンピュータ端末からインターネットなどのネットワークを介して空調制御装置1が提供するウェブサイトにアクセスし、快適性範囲を送信する。あるいは、ユーザは、コンピュータ端末からネットワークを介して中継装置2が提供するウェブサイトにアクセスして快適性範囲を送信し、中継装置2が受信した快適性範囲を空調制御装置1に通知してもよい。なお、快適性範囲は随時、設定変更が可能である。
【0019】
まず、空調制御装置1の現在値取得部51は、居室31に設置されている室内温度計41から室内温度の現在値を取得し、室内湿度計42から室内湿度の現在値を取得する(ステップS1)。続いて、現在快適性演算部52は、現在値取得部51が取得した室内温度及び室内湿度の現在値から、居室31の現在の快適性指標を演算する(ステップS2)。現在快適性演算部52は、演算結果の快適性指標を、空調制御装置1が備えるディスプレイ、あるいは、ネットワークを介して接続されるコンピュータ端末へ表示させる。
【0020】
運転モード決定部54は、現在値取得部51が取得した室内温度及び室内湿度の現在値と、快適性範囲設定部53から取得した快適性範囲とを利用して、ビル用マルチシステム10の運転モードを決定する(ステップS3)。温度設定演算部55は、ビル用マルチシステム10の温度設定値を演算する(ステップS4)。この演算により、温度設定演算部55は、快適性範囲に対応した温度及び湿度の範囲内における温度を温度設定値として決定する。温度設定演算部55は、温度設定値の演算に、運転モード決定部54が決定した運転モードと、現在値取得部51が取得した室内温度及び室内湿度の現在値と、快適性範囲設定部53が設定した快適性範囲とを利用する。ステップS3及びステップS4の処理の詳細については、
図4を用いて後述する。
【0021】
設定送信部56は、運転モード決定部54が決定した運転モードと、温度設定演算部55が演算した温度設定値を中継装置2に送信する(ステップS5)。ただし、設定送信部56は、運転モードが送風の場合、温度設定値を送信しない。現在値取得部51あるいは運転モード決定部54は、処理を継続しないかどうかを判断する(ステップS6)。現在値取得部51あるいは運転モード決定部54が処理を継続すると判断した場合(ステップS6:NO)、空調制御装置1はステップS1に戻る。現在値取得部51あるいは運転モード決定部54が処理を継続しないと判断した場合(ステップS6:YES)、空調制御装置1は処理を終了する。
【0022】
この結果、空調制御装置1は、受信した室内温度及び室内湿度の現在値に応じて、快適性を考慮しつつ消費エネルギーを低減する設定を運転装置13に送信する。
【0023】
図4は、空調機の運転モード及び温度設定値の決定方法を説明するための図である。同図に示す空気線図を利用して、運転モード決定部54が運転モードを決定し、温度設定演算部55が温度設定値を決定する方法を具体的に説明する。同図においては、一般的な空気線図のうち、相対温度、相対湿度、及び絶対温度の目盛りのみを示し、他の目盛りについては省略している。ここでは、例として、夏期にユーザがPMV範囲を−0.5〜+0.5と設定した場合について説明する。このとき、室内湿度が10%〜90%の範囲でPMVが−0.5〜+0.5となるのは、同図に示す空気線図における領域A1の部分である。なお、室内湿度は、相対湿度で示される。一般的にオフィスビルでは、室内湿度が10%以下または90%以上となるケースは存在しないため、ここでは領域A1の対象外としている。運転モード決定部54は、ユーザが入力したPMV範囲となる室内温度及び室内湿度の範囲を算出し、算出した範囲のうち室内湿度が10%〜90%の範囲を領域A1とする。なお、運転モード決定部54は、ユーザによりPMV範囲が新たに設定された場合や変更された場合に、領域A1を算出すればよい。
【0024】
点B1は、居室31の現在の室内温度28℃、室内湿度60%を空気線図にプロットしたときの点である。点B1は、ユーザが設定したPMV範囲に対応した領域A1に入っていない。そして、点B1の温度は、領域A1内における点B1と同じ絶対湿度の温度範囲L1よりも高く、居室31は暑くなっている。このため、運転モード決定部54は、設定されたPMV範囲内にするために、運転モードを冷房と判断する。
運転モードが冷房の場合、温度設定演算部55は、快適性範囲において最も暑さを感じるときの値から所定の範囲内の値に対応した温度を温度設定値とする。本実施形態では、快適性範囲の上限値である+0.5に対応した温度を温度設定値とする。これにより、温度設定演算部55は、点B1と同じ絶対湿度の領域A1内の温度範囲L1の中で最も高い温度、つまり、温度範囲L1の中で点B1に最も近い温度を温度設定値として決定する。
【0025】
点B2は、居室31の現在の室内温度22℃、室内湿度40%を空気線図にプロットしたときの点である。点B2は、ユーザが設定したPMV範囲に対応した領域A1に入っていない。そして、点B2の温度は、領域A1内における点B2と同じ絶対湿度の温度範囲L2よりも低く、居室31は寒くなっている。このため、運転モード決定部54は、設定されたPMV範囲内にするために、運転モードを暖房と判断する。
運転モードが暖房の場合、温度設定演算部55は、快適性範囲において最も寒さを感じるときの値から所定の範囲内の値に対応した温度を温度設定値とする。本実施形態では、快適性範囲の下限値である−0.5に対応した温度を温度設定値とする。これにより、温度設定演算部55は、点B2と同じ絶対湿度の領域A1内の温度範囲L2の中で最も低い温度、つまり、温度範囲L2の中で点B2に最も近い温度を温度設定値として決定する。
【0026】
点B3は、居室31の現在の室内温度25℃、室内湿度60%を空気線図にプロットしたときの点である。点B3は、ユーザが設定したPMV範囲に対応した領域A1に入っている。このため、ビル用マルチシステム10は、冷房または暖房をする必要がない。よって、運転モード決定部54は、運転モードを送風と判断する。
運転モードが送風の場合、温度設定演算部55は、温度設定なしと判断し、温度設定値を算出しない。
【0027】
上記のように、運転モード決定部54は、居室31の現在の室内温度及び室内湿度と、ユーザが設定したPMVの範囲によって、ビル用マルチシステム10の冷房、暖房、送風などの運転モードを決定する。そして、温度設定演算部55は、ユーザが設定したPMVの範囲と、運転モード決定部54が決定した運転モードと、居室31の現在の室内温度及び室内湿度によって温度設定値を決定する。
なお、運転モード決定部54は、冷房、暖房、送風のうち一部の運転モードのみを決定してもよい。
【0028】
本実施形態の空調制御装置は、快適性指標の目標範囲に対応した温度及び湿度の範囲を算出しておき、各制御周期においては、算出した範囲と、現在の居室の室内温度及び室内湿度との関係によって運転モードを決定する。よって、本実施形態の空調制御装置は、少ない演算量により、空調機の運転モードを居室の環境に応じて決定することができる。そして、従来のような在室者やビル管理人による運転モードの切り替え操作も不要となる。
また、本実施形態の空調制御装置は、決定した運転モードが室内温度の温度制御を行う運転モードである場合、居室が快適性指標の目標範囲内に収まるように温度設定値を決定し、運転モードとともに中継装置を介して空調機に送信する。よって、過剰な冷房または暖房をしないように空調機を制御して、消費エネルギーを低減することができる。オフィスビルでは、ビル全体の消費エネルギーの中で空調の消費エネルギーが大きな割合を占めている。本実施形態の空調制御装置により、空調の省エネルギー化が推進され、オフィスビルの省エネルギーに大きく貢献する。
また、本実施形態の空調制御装置は、決定された運転モードを利用することで、一回の演算で温度設定値を算出することができる。よって、本実施形態の空調制御装置は、少ない演算量により、空調機の温度設定値を居室の環境に応じて決定することができる。
【0029】
室外機と室内機から構成される空調機の一つであるビル用マルチシステムは、室内機ごとに室内温度設定値や運転モードを制御する。しかし、各室内機を制御するための演算量が多いと、特に大規模ビルでは全ての空調機を制御するため演算量は膨大となる。在室者の快適性を維持するためには所定の制御周期で各空調機を制御することが望ましい。しかし、空調制御装置が1回の制御周期内に全ての空調機を制御するための演算を終えられない場合は、快適性を維持できない可能性がある。本実施形態の空調制御装置によれば、上記のように各制御周期における演算量を抑え、ビル用マルチシステムのように制御対象の空調機が多い場合でも、エネルギーを低減しながら全ての居室の快適性を維持するように時間をかけずに制御することが可能となる。そして、運転モードと温度設定値による空調機の自動制御が可能となるため、ビルにおける空調機の運用に慣れていない人でも、快適性の範囲を変更するだけで容易に居室の環境を調整することができる。
【0030】
また、空調制御装置1は、中継装置2を介して、ビル用マルチシステム10の室内機12ごとに室内温度設定値を送信する。このため、大規模ビルにおけるテナント工事などで、会議室や個室などが作られた場合でも、会議室や個室の室内機ごとに、消費エネルギーを低減できる運転モードと室内温度設定値を送信できる。このように、テナント工事などによる間仕切りの変更にも柔軟に対応することができる。
【0031】
図1に示す空調制御システムでは、居室31に室内温度計と室内湿度計が1個ずつ設置されている。しかし、同一居室の場合でも、場所によって室内温度計と室内湿度計の現在値が異なる場合がある。そこで、居室31に、複数の室内温度計と室内湿度計を設置する変形例について説明する。
【0032】
図5は、本実施形態の変形例の空調制御システムの構成図である。同図において、
図1に示す空調制御システムと同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。同図においては、居室31に室内温度計43と室内湿度計44をさらに設置している。このように室内温度計及び室内湿度計をそれぞれ2個ずつ設置することで、より正確に居室31の室内環境を取得することができる。
【0033】
室内温度計と室内湿度計がそれぞれ2個設置されている場合、
図3のステップS1において、現在値取得部51は、室内温度計41及び室内温度計43から室内温度の現在値を取得し、室内湿度計42及び室内湿度計44から室内湿度の現在値を取得する。現在値取得部51は、室内温度計41及び室内温度計43から室内温度の現在値を取得し、室内湿度計42及び室内湿度計44から室内湿度の現在値を取得する。現在値取得部51は、室内温度計41及び室内温度計43から取得した室内温度の現在値の平均値、ならびに、室内湿度計42及び室内湿度計44から取得した室内湿度の現在値の平均値を出力する。ステップS2以降の処理において、現在快適性演算部52、運転モード決定部54、及び温度設定演算部55は、現在値取得部51が出力した室内温度の現在値の平均値、ならびに、現在値取得部51が出力した室内湿度の現在値の平均値を演算に用いる。
【0034】
なお、居室31に室内温度計と室内湿度計がそれぞれ3個以上設置されている場合、現在値取得部51は、室内温度や室内湿度の現在値の平均値を出力してもよく、中間値を出力してもよい。中間値を利用することで、例えば、ある1つの室内温度計または室内湿度計が故障して異常な値を計測した場合でも、異常値を考慮しない演算が可能となる。このように複数個所で測定された室内温度計の現在値及び室内湿度の現在値を用いることにより、より信頼性の高い空調制御装置を実現することができる。
【0035】
また、
図1に示す空調制御システムでは、ビル用マルチシステム10の運転装置13は、中継装置2から受信した温度設定値と、居室31からの還気32の温度を計測する還気温度計18の現在値とを取得し、冷媒バルブ16に開度制御信号を出力している。しかし、ビル用マルチシステム10の室内機に、還気温度計18が設置されていない場合が考えられる。そこで、室内機に還気温度計18が設置されていない変形例について説明する。
【0036】
図6は、本実施形態の他の変形例の空調制御システムの構成図である。同図において、
図1に示す空調制御システムと同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。同図においては、ビル用マルチシステム10の室内機12aに、還気温度計18が設置されていない。
図1に示す空調制御システムの運転装置13は、空調制御装置1から受信した温度設定値と還気温度計18から取得した現在値とに基づいて、冷媒バルブ16に開度制御信号を出力する。本変形例では、運転装置13は、還気温度計18から取得した現在値に代えて、居室31の室内温度計41の現在値を取得する。そして、運転装置13は、中継装置2から受信した温度設定値と、居室31の室内温度計41の現在値とに基づいて、冷媒バルブ16の開度制御信号を出力する。
これにより、ビル用マルチシステム10の室内機12aが居室31からの還気32の温度を計測することができない場合でも、
図1に示す空調制御システムと同様の効果を得ることができる。
【0037】
(第2の実施形態)
本実施形態では、快適性湿度をさらに設定する。本実施形態を、第1の実施形態との差分を中心に説明する。本実施形態の空調制御システムは、第1の実施形態の空調制御システムが備える空調制御装置1を、
図7に示す空調制御装置1aに置き換えた構成である。
【0038】
図7は、本実施形態による空調制御装置1aの構成図である。同図において、
図2に示す第1の実施形態による空調制御装置1と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。同図に示す空調制御装置1aは、現在値取得部51と、現在快適性演算部52と、快適性範囲設定部53と、快適性湿度設定部61と、運転モード決定部54aと、温度設定演算部55と、設定送信部56とを備えて構成される。
【0039】
快適性湿度設定部61は、ユーザの入力に従って快適な湿度範囲である快適性湿度範囲を設定する。
運転モード決定部54aは、室内温度の現在値及び室内湿度の現在値とPMV範囲に加え、快適性湿度設定部61により設定された快適性湿度範囲を利用して、ビル用マルチシステム10の運転モードを決定する。本実施形態では、例として、ビル用マルチシステム10の運転モードを、冷房、暖房、送風に、除湿、加湿を加えた5種類とする。これにより、室内温度の温度制御を行わない運転モードは、送風、除湿、及び加湿となる。温度設定演算部55は、運転モード決定部54aが決定した運転モードが冷房または暖房の場合に、温度設定値を決定する。
【0040】
空調制御装置1aの空調制御処理は、
図3に示す第1の実施形態と同様である。ただし、ステップS3において、運転モード決定部54aは、以下のように空調機の運転モードを決定する。
図8は、空調機の運転モードの決定方法を説明するための図である。同図に示す空気線図を利用して、運転モード決定部54aが運転モードを決定する方法を具体的に説明する。同図においては、一般的な空気線図のうち、相対温度、相対湿度、及び絶対温度のみの目盛りのみを示し、他の目盛りについては省略している。ここでは、夏期にユーザがPMV範囲を−0.5〜+0.5、快適性湿度範囲を40%〜70%と設定した場合について説明する。運転モード決定部54aは、第1の実施形態と同様に、ユーザが入力したPMV範囲となる室内温度及び室内湿度の範囲を算出する。室内湿度が10%以下または90%以上となるケースは、一般的にオフィスビルでは存在しないため、運転モード決定部54aは、算出した範囲のうち室内湿度が10%〜90%の範囲を領域A1とする。
運転モード決定部54aは、領域A1のうち、快適性湿度設定部61が設定した快適性湿度範囲40%〜70%の領域を領域A11とする。また、運転モード決定部54aは、領域A1のうち、快適性湿度範囲の上限70%よりも高い領域を領域A12とし、快適性湿度範囲の下限40%よりも低い領域を領域A13とする。
【0041】
点B1が示す室内温度28℃、室内湿度60%の場合、及び、点B2が示す室内温度22℃、室内湿度40%の場合、運転モード決定部54aは、第1の実施形態の運転モード決定部54と同様に運転モードを決定する。そして、温度設定演算部55も、第1の実施形態と同様に温度設定値を決定する。
【0042】
点B3は、居室31の現在の室内温度25℃、室内湿度60%を空気線図にプロットしたときの点である。点B3は、領域A11に入っている。このため、ビル用マルチシステム10は、冷房または暖房をする必要がない。よって、運転モード決定部54aは、運転モードを送風と判断する。
点B4は、居室31の現在の室内温度24℃、室内湿度80%を空気線図にプロットしたときの点である。点B4は、ユーザが設定したPMV範囲の領域A1内ではあるが、湿度が高い状態の領域A12に入っている。このため、運転モード決定部54aは、ビル用マルチシステム10の運転モードを除湿と判断する。
点B5は、居室31の現在の室内温度25℃、室内湿度20%を空気線図にプロットしたときの点である。点B5は、ユーザが設定したPMV範囲の領域A1内ではあるが、湿度が低い状態の領域A13に入っている。このため、運転モード決定部54aは、ビル用マルチシステム10の運転モードを加湿と判断する。
【0043】
上記のように、運転モード決定部54aは、ビル用マルチシステム10の運転モードに冷房、暖房、送風に加え、除湿、加湿がある場合は、ユーザが設定したPMV及び快適性湿度範囲と、居室31の現在の室内温度及び室内湿度によって運転モードを判断する。
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。そしてさらに、快適性湿度の設定が可能となり、運転モードを除湿または加湿にすることができる。よって、第1の実施形態と比べ、湿度に関してもユーザが期待する快適性を満足する空調制御装置を実現することができる。
【0044】
(第3の実施形態)
本実施形態は、居室の在室人数に応じて温度設定値を補正する。ここでは、第1の実施形態との差分を中心に説明するが、第2の実施形態に適用することもできる。本実施形態の空調制御システムは、第1の実施形態の空調制御システムが備える空調制御装置1を、
図9に示す空調制御装置1bに置き換えた構成である。
【0045】
図9は、本実施形態による空調制御装置1bの構成図である。同図において、
図2に示す第1の実施形態による空調制御装置1と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。同図に示す空調制御装置1bは、現在値取得部51と、現在快適性演算部52と、快適性範囲設定部53と、運転モード決定部54と、温度設定演算部55と、人数閾値設定部72と、人数情報取得部73と、温度設定補正部74と、設定送信部56と構成される。
【0046】
人数閾値設定部72は、中継装置2へ送信する温度設定値を補正する閾値を設定する。この閾値は、居室の在室人数に関する閾値である。
人数情報取得部73は、居室31の在室人数を取得する。具体的には、人数情報取得部73は、居室31に設置された人数計測手段71が計測した居室の在室人数を示す在室人数情報を受信する。人数計測手段71は、例えば、赤外線センサ、カメラを利用したセンサまたは、CO
2濃度から居室の在室人数を推定する装置であってもよい。
温度設定補正部74は、人数情報取得部73が取得した居室の在室人数と、人数閾値設定部72が設定した閾値とを利用して、温度設定演算部55が演算した温度設定値を、中継装置2へ送信する温度設定値に補正する。
【0047】
空調制御装置1bの動作を説明する。
まず、人数閾値設定部72は、温度設定値を補正する場合に用いる在室人数の閾値を予め設定しておく。空調制御装置1bは、
図3に示す第1の実施形態のステップS1〜ステップS4までの処理を実行する。ステップS4においてさらに、人数情報取得部73は以下の処理を行なう。
【0048】
人数情報取得部73は、居室31に設置された人数計測手段71から居室31の在室人数が設定された居室人数情報を受信し、温度設定補正部74に出力する。温度設定補正部74は、人数閾値設定部72が設定した閾値を取得する。
例えば、居室人数情報が示す在室人数が「10人」であり、人数閾値設定部72が設定した閾値が「5人」であるとする。温度設定補正部74は、在室人数が閾値を超えているため、温度設定演算部55から取得した温度設定値をそのまま設定送信部56に出力する。
一方、在室人数が「1人」であり、閾値が「5人」であるとする。温度設定補正部74は、在室人数が閾値以下であるため、温度設定演算部55から取得した温度設定値を補正して、設定送信部56に出力する。例えば、温度設定補正部74は、運転モードが冷房のとき、温度設定値を例えば1℃など所定温度だけ上げる補正を行う。また、温度設定補正部74は、運転モードが暖房のとき、温度設定値を例えば1℃など所定温度だけ下げる補正を行う。
【0049】
あるいは、温度設定補正部74は、補正後の温度設定値を指定してもよい。例えば、温度設定補正部74は、在室人数が閾値以下である場合、運転モードが冷房のときは温度設定値を28℃など冷房に対応した所定温度に補正する。また、例えば、温度設定補正部74は、在室人数が閾値以下である場合、運転モードが暖房のときは温度設定値を20℃など暖房に対応した所定温度に補正する。
【0050】
その他の補正として、人数閾値設定部72に、在室人数と温度補正値との対応付けを示す関数テーブルを予め登録しておき、温度設定補正部74は、この関数テーブルから在室人数に従って読み出した温度補正値を用いて温度設定値を補正してもよい。関数テーブルは、運転モード別に在室人数と温度補正値の対応付けを示すものでもよい。温度設定補正部74は、関数テーブルから運転モードと在室人数に従って温度補正値を読み出す。
【0051】
設定送信部56が温度設定補正部74から温度設定値を受信すると、空調制御装置1bは、
図4のステップS5以降の処理を行う。
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、現在の居室の在室人数によって温度設定値を補正するため、第1の実施形態と比較して、さらに消費エネルギーを削減することが可能な空調制御装置を実現することができる。
【0052】
(第4の実施形態)
本実施形態は、負荷調整の実施指示を受信した場合に、温度設定値を補正する。ここでは、第1の実施形態との差分を中心に説明するが、第2、第3の実施形態に適用することもできる。本実施形態の空調制御システムは、第1の実施形態の空調制御システムが備える空調制御装置1を、
図10に示す空調制御装置1cに置き換えた構成である。
【0053】
図10は、本実施形態による空調制御装置1cの構成図である。同図において、
図2に示す第1の実施形態による空調制御装置1と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。同図に示す空調制御装置1cは、現在値取得部51と、現在快適性演算部52と、快適性範囲設定部53と、運転モード決定部54と、温度設定演算部55と、DR(Demand Response)信号受信部81と、温度設定補正部82と、設定送信部56とを備えて構成される。DRとは、電力系統からの指令・要求に基づいた負荷調整の実施のことである。
【0054】
DR信号受信部81は、負荷調整の実施を指示する信号である負荷調整実施信号としてDR信号を外部から受信する信号受信部である。
温度設定補正部82は、DR信号受信部81がDR信号を受信した場合、温度設定演算部55が演算した温度設定値を中継装置2へ送信する温度設定値に補正する。
【0055】
空調制御装置1cの動作を説明する。
空調制御装置1cは、
図3に示す第1の実施形態のステップS1〜ステップS4までの処理を実行する。ステップS4においてさらに、DR信号受信部81は以下の処理を行なう。
すなわち、DR信号受信部81がDR信号を受信していない場合、温度設定補正部82は、温度設定演算部55から取得した温度設定値をそのまま設定送信部56に出力する。
一方、DR信号受信部81がDR信号を受信した場合、DR信号の受信を温度設定補正部82に出力する。温度設定補正部82は、DR信号の受信が通知された場合、運転モードが冷房のときは、温度設定演算部55から取得した温度設定値を1℃など所定温度だけ上げる補正を行い、設定送信部56に出力する。また、温度設定補正部82は、DR信号の受信が通知された場合、運転モードが暖房のときには、温度設定演算部55から取得した温度設定値を1℃など所定温度だけ下げる補正を行い、設定送信部56に出力する。
設定送信部56が温度設定補正部82から温度設定値を受信すると、空調制御装置1cは、
図3のステップS5以降の処理を行う。
【0056】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、DR信号の受信時には、温度設定値を補正し、第1の実施形態と比較して、さらに消費エネルギーを低減することが可能な空調制御装置を実現することができる。
【0057】
(第5の実施形態)
本実施形態は、居室の在室人数に応じて快適性範囲を補正する。ここでは、第1の実施形態との差分を中心に説明するが、第2から第4の実施形態に適用することもできる。本実施形態の空調制御システムは、第1の実施形態の空調制御システムが備える空調制御装置1を、
図11に示す空調制御装置1dに置き換えた構成である。
【0058】
図11は、本実施形態による空調制御装置1dの構成図である。同図において、
図2に示す第1の実施形態による空調制御装置1と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。同図に示す空調制御装置1dは、現在値取得部51と、現在快適性演算部52と、快適性範囲設定部53と、人数閾値設定部92と、人数情報取得部93と、快適性範囲補正部94と、運転モード決定部54と、温度設定演算部55と、設定送信部56とを備えて構成される。
【0059】
人数閾値設定部92は、運転モード決定部54へ出力する快適性範囲を補正する閾値を設定する。この閾値は、居室の在室人数に関する閾値である。
人数情報取得部93は、居室31の在室人数を取得する。具体的には、人数情報取得部93は、居室31に設置された人数計測手段91が計測した居室の在室人数を示す在室人数情報を受信する。人数計測手段91は、例えば、赤外線センサ、カメラを利用したセンサまたは、CO
2濃度から居室の在室人数を推定する装置であってもよい。
快適性範囲補正部94は、快適性範囲設定部53が設定した快適性範囲を、人数情報取得部93が取得した居室の在室人数と、人数閾値設定部92が設定した閾値とを利用して補正し、補正した快適性範囲を運転モード決定部54へ出力する。
【0060】
空調制御装置1dの動作を説明する。
まず、人数閾値設定部92は、快適性範囲を補正する場合に用いる在室人数の閾値を予め設定しておく。人数情報取得部93は、居室31に設置された人数計測手段91から居室31の在室人数が設定された居室人数情報を受信し、快適性範囲補正部94に出力する。快適性範囲補正部94は、人数閾値設定部92が設定した閾値を取得する。
【0061】
例えば、居室人数情報が示す在室人数が「10人」であり、人数閾値設定部92が設定した閾値が「5人」であるとする。快適性範囲補正部94は、在室人数が閾値を超えているため、快適性範囲設定部53から取得した快適性範囲をそのまま運転モード決定部54に出力する。
一方、在室人数が「1人」であり、閾値が「5人」であるとする。快適性範囲補正部94は、在室人数が閾値以下であるため、快適性範囲設定部53から取得した快適性範囲を補正して、運転モード決定部54に出力する。例えば、快適性範囲補正部94は、運転モードが冷房のとき、PMV範囲の上限を例えば0.2など所定だけ上げる補正を行う。また、快適性範囲補正部94は、運転モードが暖房のとき、PMV範囲の下限を例えば0.2など所定だけ下げる補正を行う。
【0062】
あるいは、快適性範囲補正部94は、補正後のPMV範囲を指定してもよい。例えば、快適性範囲補正部94は、在室人数が閾値以下である場合、運転モードが冷房のときはPMV範囲の上限を0.7など所定の上限値に補正する。また、例えば、快適性範囲補正部94は、在室人数が閾値以下である場合、運転モードが暖房のときはPMV範囲の下限を−0.7など所定の下限値に補正する。
その他の補正として、在室人数が閾値以下である場合、快適性範囲補正部94は、運転モードに関わらず、PMV範囲の上限及び下限を所定だけ不快方向の範囲に広げてもよい。
【0063】
空調制御装置1dの動作は、運転モード決定部54及び温度設定演算部55が、上記に処理により快適性範囲補正部94が出力した快適性範囲を用いる以外は、
図3に示す第1の実施形態と同様である。
【0064】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、現在の居室の在室人数によって快適性範囲を補正するため、第1の実施形態と比較して、さらに消費エネルギーを削減することが可能な空調制御装置を実現することができる。
【0065】
(第6の実施形態)
本実施形態は、負荷調整の実施指示を受信した場合に、快適性範囲を補正する。ここでは、第1の実施形態との差分を中心に説明するが、第2から第5の実施形態に適用することもできる。本実施形態の空調制御システムは、第1の実施形態の空調制御システムが備える空調制御装置1を、
図12に示す空調制御装置1eに置き換えた構成である。
【0066】
図12は、本実施形態による空調制御装置1eの構成図である。同図において、
図2に示す第1の実施形態による空調制御装置1と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。同図に示す空調制御装置1eは、現在値取得部51と、現在快適性演算部52と、快適性範囲設定部53と、DR信号受信部101と、快適性範囲補正部102と、運転モード決定部54と、温度設定演算部55と、設定送信部56とを備えて構成される。
【0067】
DR信号受信部101は、負荷調整の実施を指示する信号である負荷調整実施信号としてDR信号を外部から受信する信号受信部である。
快適性範囲補正部102は、DR信号受信部101がDR信号を受信した場合、快適性範囲設定部53が設定した快適性範囲を補正して運転モード決定部54へ出力する。
【0068】
空調制御装置1eの動作を説明する。
DR信号受信部101がDR信号を受信していない場合、快適性範囲補正部102は、快適性範囲設定部53が設定した快適性範囲をそのまま設定送信部56に出力する。
一方、DR信号受信部101がDR信号を受信した場合、DR信号の受信を快適性範囲補正部102に出力する。快適性範囲補正部102は、DR信号の受信が通知された場合、運転モードが冷房のときはPMV範囲の上限を0.2など所定だけ上げる補正を行う。また、快適性範囲補正部102は、運転モードが暖房のときはPMV範囲の下限を0.2など所定だけ下げる補正を行う。快適性範囲補正部102は、補正したPMV範囲を運転モード決定部54に出力する。
【0069】
空調制御装置1eの動作は、運転モード決定部54及び温度設定演算部55が、上記に処理により快適性範囲補正部102が出力した快適性範囲を用いる以外は、
図3に示す第1の実施形態と同様である。
【0070】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、DR信号を受信したとき快適性範囲を補正するため、第1の実施形態と比較して、さらに消費エネルギーを低減することが可能な空調制御装置を実現することができる。
【0071】
なお、上述した実施形態において、運転モード決定部54、54aは、運転モードを送風と判断する代わりに、ビル用マルチシステム10の電源OFF(電源断)と判断してもよい。例えば、運転モード決定部54は、室内温度の現在値及び室内湿度の現在値が
図4の領域A1に入っている場合に空調機の電源断と判断する。また、運転モード決定部54aは、室内温度の現在値及び室内湿度の現在値が
図8の領域A11に入っている場合に空調機の電源断と判断する。設定送信部56は、運転モード決定部54、54aが空調機の電源OFFと判断した場合、ビル用マルチシステム10の電源OFFの指示を、中継装置2を介して運転装置13に送信する。快適な状態では、居室を冷房または暖房する必要がない。そのため、ビル用マルチシステム10を停止させることで、より消費エネルギーを低減することができる。なお、設定送信部56は、運転モード決定部54、54aが送風以外の運転モードを決定した次の制御周期に電源OFFと判断したときのみ、空調機の電源OFFの指示を送信してもよい。
また、設定送信部56は、運転モード決定部54、54aが電源OFFと判断した次の制御周期に送風以外の運転モードを決定した場合、決定された運転モードに加えて空調機の電源ON(電源投入)の指示を送信する。つまり、設定送信部56は、空調機の電源断の指示を送信した後に運転モード決定部54が冷房または暖房の運転モードを決定した場合、空調機の電源投入の指示と、運転モードと、温度設定値とを送信する。また、設定送信部56は、空調機の電源断の指示を送信した後に運転モード決定部54aが冷房、暖房、加湿または除湿の運転モードを決定した場合、空調機の電源投入の指示と、運転モードと、運転モードが冷房または暖房のときには温度設定値とを送信する。
【0072】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、運転モード決定部を持つことにより、在室者の快適性を考慮しつつ、運転モードを少ない演算量で演算し、空調機を制御することができる。
また、以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、温度設定演算部を持つことにより、在室者の快適性を考慮しつつ、空調機の消費エネルギーを低減させるような温度設定値を少ない演算量で演算し、空調機を制御することができる。
【0073】
上述した実施形態における空調制御装置1、1a、1b、1c、1d、1eの機能をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。