特許第6334306号(P6334306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334306
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】キャスター
(51)【国際特許分類】
   B60B 33/00 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
   B60B33/00 503D
   B60B33/00 F
   B60B33/00 501C
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-149155(P2014-149155)
(22)【出願日】2014年7月22日
(65)【公開番号】特開2016-22862(P2016-22862A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】上田 智士
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−97778(JP,A)
【文献】 実開昭56−127002(JP,U)
【文献】 実開昭57−188501(JP,U)
【文献】 特開2003−118307(JP,A)
【文献】 特開平11−180103(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0042430(US,A1)
【文献】 特開2013−249001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 1/00−41/06
91/00−97/08
A47C 7/00−7/74
17/00−23/34、29/00
B60B 33/00−33/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車軸保持孔を有する車輪と、
前記車輪保持孔の長さより大きな長さを有し、前記車軸保持孔に挿入されて前記車輪を回転可能に保持する車軸と、を備え、
前記車軸は、
前記車軸の外周面に、前記車軸の軸心方向に配された異なる摩擦係数を有する少なくとも2つの摺動面を有し、
前記車軸の軸心方向に移動することにより、前記車軸保持孔の内周面と摺接する摺動面を切換可能である
ことを特徴とするキャスター。
【請求項2】
請求項1に記載のキャスターであって、
前記車軸の外周面に配された少なくとも2つの摺動面は、それぞれの表面粗さが異なる
ことを特徴とするキャスター。
【請求項3】
請求項1または2に記載のキャスターであって、
前記車軸の外周面に配された少なくとも2つの摺動面は、それぞれの前記車軸保持孔の内周面とのクリアランスが異なる
ことを特徴とするキャスター。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のキャスターであって、
前記車軸の外周面に配された少なくとも2つの摺動面は、それぞれの材料が異なる
ことを特徴とするキャスター。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のキャスターであって、
前記車輪は、
円環状の車輪本体と、
前記車輪本体に装着された軸受ブッシュと、を有し、
前記車軸保持孔は、前記軸受ブッシュに設けられている
ことを特徴するキャスター。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載のキャスターであって、
前記車軸を前記車軸の軸心方向に移動可能に保持する保持手段をさらに備え、
前記車輪は、
前記保持手段の前記車軸の軸心方向の両側にそれぞれ一つ配されており、
前記車軸は、
前記車輪の前記車軸保持孔の長さの3倍の長さと、前記保持手段の前記車軸の軸心方向の長さと、の合計値より大きな長さを有する
ことを特徴とするキャスター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具、什器、ピアノ、コピー機等の設置物の移動を容易にするために用いられるキャスターに関し、特に免震機能を有するキャスターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家具、什器、ピアノ、コピー機等の設置物の底面、脚部等に取り付けられ、車輪の回転により設置物の移動を容易にするとともに、設置物の設置後においては、車輪の回転をロックして、設置物の移動を規制することができるストッパー付きキャスターが知られている。例えば、特許文献1には、停止ペダルまたは解除ペダルの一回の踏み込み操作でタイヤの回転およびキャスターヘッドの旋回を同時に停止したり解除したりすることができるストッパー付き双輪キャスターが記載されている。このストッパー付き双輪キャスターによれば、設置物の移動時には、解除ペダルを踏み込んで、タイヤの回転およびキャスターヘッドの旋回を可能にすることにより、このキャスターが取り付けられた設置物の移動を容易にすることができ、設置物の設置後には、停止ペダルを踏み込んで、タイヤの回転およびキャスターヘッドの旋回を停止することにより、このキャスターが取り付けられた設置物の移動を規制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−249001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のストッパー付きキャスターにおいて、車輪の回転をロックして設置物の移動を規制した場合、つぎのような問題が生じていた。すなわち、設置物がストッパー付きキャスターを介して設置場所に固定されるため、地震等による設置場所の揺れがストッパー付きキャスターを介して設置物に伝わる。このため、家具、什器等においては、食器、展示品等の収容物が倒れたり、家具、什器等から落下したりすることがあった。また、大きな揺れでは、設置物自体が倒れることもあった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、免震機能を備えたキャスターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のキャスターでは、車軸の長さをこの車軸が挿入される車輪の車軸保持孔の長さよりも大きくするとともに、車軸の外周面に、異なる摩擦係数を有する少なくとも2つの摺動面を、車軸の軸心方向に並べて形成する。そして、車軸保持孔に挿入された車軸を車軸の軸心方向に移動させ、車軸保持孔の内周面と摺接する車軸の摺動面を切換可能とすることにより、車輪の回転トルクを可変とした。
【0007】
例えば、本発明のキャスターは、
車軸保持孔を有する車輪と、
前記車輪保持孔の長さより大きな長さを有し、前記車軸保持孔に挿入されて前記車輪を回転可能に保持する車軸と、を備え、
前記車軸は、
前記車軸の外周面に、前記車軸の軸心方向に配された異なる摩擦係数を有する少なくとも2つの摺動面を有し、
前記車軸の軸心方向に移動することにより、前記車軸保持孔の内周面と摺接する摺動面を切換可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るキャスターが取り付けられた設置物の移動時に、車軸を軸心方向に移動して、車軸の外周面に設けられた摩擦係数の小さい摺動面を車輪の車軸保持孔の内周面と摺接させることにより、車輪の回転トルクを小さくして、この設置物の移動を容易にすることができる。また、本発明に係るキャスターが取り付けられた設置物の設置後に、車軸を軸心方向に移動して、車軸の外周面に設けられた摩擦係数の大きい摺動面を車輪の車軸保持孔の内周面と摺接させることにより、車輪の回転トルクを大きくして、設置物が設置場所から容易に移動しないようにするとともに、車輪にこの回転トルク以上のトルクが加わった場合には車輪が回転することにより、地震等による設置場所の揺れが設置物に伝わる際にこの揺れを減衰させることができる。したがって、本発明によれば、免震機能を備えたキャスターを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(A)および図1(B)は、本発明の一実施の形態に係るキャスター1の正面図および側面図であり、図1(C)は、図1(A)に示すキャスター1のA−A断面図である。
図2図2(A)および図2(B)は、車輪2の正面図および背面図であり、図2(C)は、図2(A)に示す車輪2のB−B断面図である。
図3図3は、車軸3の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
【0011】
図1(A)および図1(B)は、本実施の形態に係るキャスター1の正面図および側面図であり、図1(C)は、図1(A)に示すキャスター1のA−A断面図である。
【0012】
図示するように、本実施の形態に係るキャスター1は、一対の車輪2a、2b(以下、単に車輪2とも称する)と、これらの車輪2a、2bを回転可能に保持する車軸3と、車軸3を軸心O方向に移動可能に保持する保持部4と、止め輪5と、を備えている。
【0013】
一対の車輪2a、2bは、保持部4を軸心O方向の両側から挟み込むように配置されており、車軸3により回転可能に保持されている。
【0014】
図2(A)および図2(B)は、車輪2の正面図および背面図であり、図2(C)は、図2(A)に示す車輪2のB−B断面図である。図示するように、車輪2は、円環状の車輪本体20と、車輪本体20の内周面200に装着され、車軸3が挿入される軸受ブッシュ21と、を備えている。
【0015】
図3は、車軸3の正面図である。図示するように、車軸3は、円柱状の車軸本体30と、車軸本体30の一方の端部31に一体的に形成されたフランジ33と、車軸本体30の他方の端部32に形成された止め輪5装着用の環状溝34と、を備えている。ここで、フランジ33の直径は、車輪2の軸受ブッシュ21の内径より大きく形成されている。同様に、車軸本体30の環状溝34に装着される止め輪5の外径は、車輪2の軸受ブッシュ21の内径より大きく形成されている。
【0016】
車軸本体30は、車軸本体30とフランジ33との連結部分の段差面38から車軸本体30の環状溝34までの長さL1が、車輪2の軸心O方向の厚みL2の3倍の長さと、保持部4の軸心O方向の長さL3と、の合計値よりも長く形成されている(L1>3×L2+L3)。
【0017】
また、車軸本体30の外周面35には、車軸本体30の環状溝34に装着された止め輪5が車輪2aと当接するまで車軸3を軸心O方向(図1(C)の+方向)に移動させたときに、各車輪2a、2bの軸受ブッシュ21の内周面210とそれぞれ摺接する二つの第一摺動面36が形成され、かつ、フランジ33が車輪2bと当接するまで車軸3を軸心O方向(図1(C)の−方向)に移動させたときに、各車輪2a、2bの軸受ブッシュ21の内周面210とそれぞれ摺接する二つの第二摺動面37が形成されている。
【0018】
第一摺動面36および第二摺動面37は、異なる摩擦係数を有している。例えば、第一摺動面36および第二摺動面37の一方をローレット加工、エンボス加工等により粗く加工し、他方を滑らかに加工して、第一摺動面36および第二摺動面37の表面粗さを変えることにより、両者の摩擦係数を異ならせる。あるいは、第一摺動面36および第二摺動面37の一方と車輪2の軸受ブッシュ21の内周面210とのクリアランスを小さくし、第一摺動面36および第二摺動面37の他方と車輪2の軸受ブッシュ21の内周面210とのクリアランスを大きくして、第一摺動面36および第二摺動面37のそれぞれと車輪2の軸受ブッシュ21の内周面210とのクリアランスを変えることにより、両者の摩擦係数を異ならせる。あるいは、第一摺動面36および第二摺動面37の一方にフッ素等の摺動特性に優れた材料をコーティングし、第一摺動面36および第二摺動面37の他方にゴム等の摺動特性の劣る材料をコーティングして、第一摺動面36および第二摺動面37の材料を変えることにより、両者の摩擦係数を異ならせる。または、これらを組み合わせることにより、第一摺動面36および第二摺動面37の摩擦係数を異ならせる。なお、本実施の形態では、第一摺動面36の摩擦係数を小さくし、第二摺動面37の摩擦係数を大きくしている。
【0019】
保持部4は、保持部本体40と、取付部41と、を備える。保持部本体40は、一対の車輪2a、2bの間に挟まれて配置され、車軸3を軸心O方向に移動可能に保持するための貫通穴42を有する。取付部41は、キャスター1を家具、什器、ピアノ、コピー機等の設置物の底面、脚部等に取り付けるためのものである。ここでは、取付部41として、設置物の底面、脚部等に設けられたネジ穴と螺合するネジを設けている。しかし、設置物の取付構造に応じて取付部41は適宜変更可能である。また、軸受を介して取付部41を保持部本体40に取り付けることにより、保持部本体40を取付部41に対して回転自在にしてもよい。
【0020】
上記構成のキャスター1が取り付けられた設置物の移動時において、車軸3の車軸本体30の環状溝34に装着された止め輪5が車輪2aと当接するまで車軸3を軸心O方向(図1(C)の+方向)に移動させて、車軸3の車軸本体30の外周面35に形成された摩擦係数の小さい二つの第一摺動面36を車輪2a、2bの軸受ブッシュ21の内周面210にそれぞれ摺接させることにより、車輪2の回転トルクを小さくして、この設置物の移動を容易にすることができる。
【0021】
また、上記構成のキャスター1が取り付けられた設置物の設置後において、車軸3のフランジ33が車輪2bと当接するまで車軸3を軸心O方向(図1(C)の−方向)に移動させて、車軸3の車軸本体30の外周面35に形成された摩擦係数の大きい二つの第二摺動面37を車輪2a、2bの軸受ブッシュ21の内周面210にそれぞれ摺接させることにより、車輪2の回転トルクを大きくして、設置物が設置場所から容易に移動しないようにするとともに、車輪2にこの回転トルク以上のトルクが加わった場合には車輪2が回転することにより、地震等による設置場所の揺れが設置物に伝わる際にこの揺れを減衰させることができる。したがって、本実施の形態によれば、免震機能を備えたキャスター1を提供できる。
【0022】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0023】
例えば、上記の実施の形態では、車輪本体20の内周面200に軸受ブッシュ21を装着し、軸受ブッシュ21の内周面210を、車軸3の外周面35に形成された第一摺動面36あるいは第二摺動面37に摺接させているが、本発明はこれに限定されない。軸受ブッシュ21を省略し、車輪本体20の内周面200を、車軸3の外周面35に形成された第一摺動面36あるいは第二摺動面37に摺接させてもよい。
【0024】
また、上記の実施の形態では、車輪2を一対備えた双輪タイプのキャスター1を例にとり説明したが、本発明は車輪2が一つのみの単輪タイプのキャスターにも適用できる。この場合、車軸本体30とフランジ33との連結部分の段差面38から車軸本体30の環状溝34までの長さL1は、車輪2の軸心O方向の厚みL2と保持部4の軸心O方向の長さL3との合計値よりも長く形成されていればよく(L1>L2+L3)、好ましくは、車輪2の軸心O方向の厚みL2の2倍の長さと保持部4の軸心O方向の長さL3との合計値よりも長く形成されていればよい(L1>2×L2+L3)。
【符号の説明】
【0025】
1:キャスター、 2、2a、2b:車輪、 3:車軸、 4:保持部、 5:止め輪、 20:車輪本体、 21:軸受ブッシュ、 30:車軸本体、 31、32:車軸本体30の端部、 33:フランジ、 34:環状溝、 35:車軸本体の外周面、 36:第一摺動面、 37:第二摺動面、 38:段差面、 40:保持部本体、 41:取付部、 42:保持部本体40の貫通穴、 200:車輪本体20の内周面、210:軸受ブッシュ21の内周面
図1
図2
図3