(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御パターンは、電力−電圧特性における複数のピーク点のうちの一部のピーク点を含む制御範囲に限定するものであることを特徴とする請求項1記載の太陽光発電システム監視制御装置。
前記制御パターンは、電力−電圧特性における複数のピーク点のうち、いずれか1つのピーク点のみを含む制御範囲に限定するものであることを特徴とする請求項1記載の太陽光発電システム監視制御装置。
前記制御パターンは、電力−電圧特性における複数のピーク点のうち、いずれか1つのピーク点に固定するものであることを特徴とする請求項1記載の太陽光発電システム監視制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態の太陽光発電システムPを、
図1〜
図12を参照して説明する。この太陽光発電システムPは、
図1、
図2及び
図3に示すように、太陽電池モジュールM、マイクロインバータMIC、ゲートウェイ100、タブレット端末200を有する。
[構成]
[太陽電池モジュール]
太陽電池モジュールMは、
図3に示すように、複数の太陽電池セルCを直列に接続したサブストリングSTを、複数並列に接続することにより構成されている。各サブストリングSTには、サブストリングSTの発電量が極端に落ちた場合に、電路をバイパスさせてスルーするためのバイパスコンデンサDが挿入されている。
【0013】
さらに、数枚の太陽電池モジュールMが直列に接続されたものをストリング、ストリングがいくつも合わされて構成されたものをアレイと呼ぶ。家屋Hの屋根には、太陽電池セルCの受光面が上向きになるように、複数のアレイが、各アレイ毎に架台等により支持されて搭載されている。ここで、
図4(A)に示すように、太陽電池モジュールMにおける太陽電池セルCの受光面が配置された面を表面とし、これと反対側の
図4(B)に示す面を裏面とする。
【0014】
[マイクロインバータ]
各太陽電池モジュールMの裏面には、
図4(B)に示すように、マイクロインバータMICが設置されている。このマイクロインバータMICは、各太陽電池モジュールMに対するインバータ機能とMPPT機能を有する制御装置である。インバータ機能は、太陽電池モジュールMからの直流(DC)を、交流(AC)に変換して出力する機能である。MPPT機能は、日射量の変化に応じて、出力電力が最大となる動作点を追従する機能である。
【0015】
このようなマイクロインバータMICの入力側は、ケーブルを介して、太陽電池モジュールMの出力側に接続されている。また、マイクロインバータMICの出力側は、ケーブルを介して、図示しない系統連系装置等に接続され、この系統連系装置を介して、各マイクロインバータMICが系統に連系される。
【0016】
[ゲートウェイ]
ゲートウェイ100は、
図1に示すように、太陽光発電システムPの監視制御装置である。このゲートウェイ100は、コンピュータを所定のプログラムで制御することによって、若しくは専用の電子回路によって実現できる。この場合のプログラムは、コンピュータのハードウェアを物理的に活用することで、以下に述べるような各部の処理を実現するものである。なお、各部の処理を実行する方法、プログラム及びプログラムを記録した記録媒体も、実施形態の一態様である。また、ハードウェアで処理する範囲、プログラムを含むソフトウェアで処理する範囲をどのように設定するかは、特定の態様には限定されない。
【0017】
より具体的には、ゲートウェイ100は、
図2に示すように、通信部10、記憶部20、制御部30を有する。
(通信部)
通信部10は、外部との間で太陽光発電システムPの監視制御に必要な情報の送受信を行う処理部である。通信に使用されるネットワーク、プロトコル等は、特定のものには限定されない。
【0018】
本実施形態では、通信部10は、各マイクロインバータMICとの間で、無線によって個別に通信することができる。また、通信部10は、LAN及びインターネットへの接続機能を有する。このため、いわゆるクラウドからの情報収集が可能となる。さらに、無線LANにより、後述するタブレット端末200との通信も可能である。
【0019】
(記憶部)
記憶部20は、ゲートウェイ100の処理に必要な各種の情報を記憶する処理部である。この情報は、通信部10やタブレット端末200を介して外部から入力されるか、後述する制御部30において生成される情報である。このような情報としては、識別情報、制御パターン、予測条件、選択条件を含む。
【0020】
識別情報は、各太陽光発電システムPに対応するマイクロインバータMICに付与され、各マイクロインバータMICを識別する情報である。制御パターンは、後述するように、少なくとも一つの太陽電池モジュールMに影がかかった場合の電力−電圧特性に応じて、当該太陽電池モジュールMのマイクロインバータMICの制御範囲を限定する情報である。
【0021】
制御パターンとしては、例えば、
図5の(B1)のBに示すように、電力−電圧特性における複数のピーク点のうち、いずれか1つのピーク点のみを含む制御範囲に限定する情報とする。
図5において、ピーク点は、小円で囲まれている。例えば、この1つのピーク点を挟んだ何ボルトから何ボルトといった電圧の範囲を制御範囲とする。また、制御パターンとしては、例えば、
図5の(C1)のCに示すように、電力−電圧特性における複数のピーク点のうちの、一部のピーク点を含む制御範囲に限定する情報とすることもできる。この例では、2つのピーク点を含む何ボルトから何ボルトといった電圧の範囲を制御範囲としている。
【0022】
さらに、制御パターンとしては、例えば、
図5の(B2)の固定値b、(C2)の固定値cに示すように、電力−電圧特性における複数のピーク点のうち、いずれか1つのピーク点に固定する情報とすることもできる。例えば、何ボルトといった電圧値を固定値とすることができる。
【0023】
いずれか1つのピーク点としては、いずれを選択して設定してもよい。但し、電力が最大のピーク点とすれば、出力の低減を抑えることができる。また、いずれか1つのピーク点として、電圧が最大のピーク点とすれば、電流の増大による損失を防止できる。これらのピーク点の決定基準は、複数のピーク点の出力値が同等の場合に役立つ。なお、記憶部20における識別情報、制御パターンの記憶領域は、設定部21として捉えることができる。
【0024】
予測条件は、太陽電池モジュールMに対する影の態様を予測するための条件である。この予測条件としては、例えば、太陽電池モジュールMの設置地点の高さ、緯度、経度、年月日、遮蔽物の緯度、経度、高さ、大きさ等を含む。なお、記憶部20における予測条件の記憶領域は、予測条件記憶部として捉えることができる。
【0025】
選択条件は、設定部21に設定された複数の制御パターンのいずれを選択するかの条件である。選択条件としては、例えば、
図5に示すように、年月日、時刻、場所、天気情報等を含む。場所の情報としては、例えば、緯度、経度、設置高度等を含む。なお、記憶部20における選択条件の記憶領域は、選択条件記憶部として捉えることができる。
【0026】
このような記憶部20は、典型的には、内蔵された若しくは外部接続された各種メモリにより構成できる。但し、ハードディスク、光ディスク等、現在又は将来において利用可能なあらゆる記憶媒体を利用可能である。演算に用いるレジスタ等も、記憶部20として捉えることができる。USBメモリ、メモリカード等のように、既に情報が記憶された記憶媒体を、読み取り装置に装着することにより、制御部30において利用可能となる態様でもよい。さらに、ネットワークを介して接続された外部のサーバ等の記憶装置であっても、記憶部20として機能する。
【0027】
(制御部)
制御部30は、通信部10から受信した情報及び記憶部20に記憶された情報に基づいて、ゲートウェイ100による太陽光発電システムPの監視制御に必要な処理を行う処理部である。この制御部30は、予測部31、作成部32、選択部33、指示部34を有する。
【0028】
予測部31は、予測条件に基づいて、太陽電池モジュールMにかかる影の態様及びこれに対応する電力−電圧特性を予測する処理部である。つまり、予測部31は、予測条件に基づいて、電力−電圧特性のカーブのピーク点の位置をシミュレートすることができる。一般的な傾向として、影の位置と広さが、ピーク点の数や位置に影響を与え、影の濃さが、ピーク点の高さに影響を与える。このため、影の態様に応じた電力−電圧特性の予想は可能である。あらかじめ行う試験や、設置後のデータ採取によって、影の態様と電力−電圧特性の関係を経験的に求めて、予測に用いることもできる。
【0029】
作成部32は、予測部31による予測結果に基づいて、各太陽電池モジュールMのマイクロインバータMICによる制御パターンを作成する処理部である。作成された制御パターンは、設定部21に設定される。
【0030】
選択部33は、選択条件に基づいて、いずれの制御パターンにより制御すべきかを選択する処理部である。指示部34は、太陽電池モジュールMに影がかかった場合に、設定部21に設定された制御パターンによる制御指示を、当該太陽電池モジュールMのマイクロインバータMICに対して出力する処理部である。
【0031】
[タブレット端末]
タブレット端末200は、
図2に示すように、ゲートウェイ100に対して情報の入出力を行う装置である。このタブレット端末200は、出力部40、入力部50を有する。
【0032】
出力部40は、太陽電池モジュールM、マイクロインバータMIC、電力−電圧特性、制御範囲等の各種の情報を、管理者、操作者等を含むユーザが認識可能となるように表示するディスプレイである。入力部50は、ゲートウェイ100に必要な情報の入力、処理の選択や指示を入力するタッチパネルである。上記の識別情報、制御パターン、選択条件、予測条件等は、ユーザが入力部50から入力することもできる。
【0033】
なお、タブレット端末200の代わりに、スマートフォンやパーソナルコンピュータ等の端末装置を用いることもできる。これに対応して、出力部40や入力部50も、キーボード、マウス、ディスプレイ、プリンタ等、現在又は将来において利用可能なあらゆる装置を含む。
【0034】
[作用]
[概要]
通常の太陽光発電システムPにおいては、影の影響によってシステム全体の発電量低下が懸念される場合、影が太陽電池モジュールMの一部分でもかかることがあらかじめ分かっている場所には、太陽電池モジュールMの設置は行わないことが多い。これは、時間帯によって、太陽電池モジュールMに影がかかる部分がある場合も含まれる。
【0035】
ところが、マイクロインバータMICのように、太陽電池モジュールM毎に、個別にMPPTを行う機器は、太陽電池モジュールMを個別で制御することができる。このため、個別の太陽電池モジュールMの発電量が低下しても、他の太陽電池モジュールMへの影響が比較的少ない。従って、太陽光発電システムP全体の発電量の大幅な低下を抑えることができるので、太陽電池モジュールMを設置するメリットはある。
【0036】
但し、一部の太陽電池モジュールMに影がかかって電力−電圧特性のピーク点が複数となるような場合には、正常時と同様に、マイクロインバータMICが、広い制御範囲でのMPPTを継続すると、マイクロインバータMICに大きな負荷がかかる。
【0037】
一方、影の態様が既知であれば、電力−電圧特性の最大電力点であるピーク点の位置が特定できる。このため、例えば、影がかかる時間帯や規則性等が分かっている場合、影のかかる位置と、それに伴う最大電力点の位置、範囲を特定し、これに応じて制御範囲を制限することで、負荷を抑えつつ最適な最大電力を得ることができる。
【0038】
[影の態様と電力−電圧特性]
ここで、影の態様と電力−電圧特性の関係について説明する。上記のように、太陽電池モジュールMは、いくつかのサブストリングSTによって構成されている。仮に、太陽電池モジュールMのサブストリングSTの一部に影がかかると、日射が遮られることによって電流値が低下する。すると、その部分の発電量、つまり電力が減少するので、太陽電池モジュールM全体の電力−電圧特性を示すカーブは、ピーク点が2つ以上の段差を持った特性となる。
【0039】
また、太陽電池モジュールMが数枚直列接続されたストリングにおいて、1枚の太陽電池モジュールMに影がかかった場合にも、サブストリングSTの場合と同じく、電力−電圧特性カーブにピーク点が2つ以上できる。
【0040】
例えば、
図6(A)に示すように、1セル分を覆う影1がかかった場合には、
図6(B)に示すように、影が全くない場合のピーク点を基準とすると、電力が4分の1程度に低下する。そして、基準のピーク点を挟んで低電圧側に1つ、高電圧側に1つのピーク点が生じる。
【0041】
図6(A)に示すように、1サブストリングSTである16セル分を覆う影2がかかった場合には、
図6(B)に示すように、基準のピーク点から電力が2分の1程度に低下する。そして、基準のピーク点を挟んで低電圧側に1つ、高電圧側に1つのピーク点が生じる。
【0042】
図6(A)に示すように、2サブストリングSTにまたがる8セル分を覆う影3がかかった場合には、
図6(B)に示すように、基準のピーク点から電力が4分の1程度に低下する。そして、基準のピーク点を挟んで低電圧側に2つ、高電圧側に1つのピーク点が生じる。
【0043】
また、太陽電池モジュールMが、遮蔽物の近辺に設置された場合に、影が生じる場合の例を、
図7に示す。つまり、
図7に示すように、煙突等の遮蔽物Fの近辺に設置された太陽電池モジュールMには、時間によって異なる位置に影SAがかかる。
【0044】
これに対応する太陽電池モジュールMの電力−電圧特性カーブの例を、
図8に示す。例えば、
図8(A)に示すように、正午など太陽が遮蔽物Fの真上にある状態では、太陽電池モジュールMに影SAはかからず、通常のピーク点が一つの電力−電圧特性のカーブとなる。そして、
図8(B)に示すように、正午を過ぎて太陽光が遮蔽物Fに斜めから差すようになると、影SAの先端が太陽電池モジュールMにかかる。すると、ピーク点が二つの電力−電圧特性のカーブとなる。
【0045】
さらに、
図8(C)に示すように、時間が経過して、太陽光が遮蔽物Fの横方向から差すようになると、太陽電池モジュールMのより広い面積に影がかかるようになる。すると、ピーク点が三つの電力−電圧特性のカーブとなる。なお、上記のような影SAの態様及び電力−電圧特性は、あくまでも例示であり、必ず上記のようになるという法則が確定しているわけではない。
【0046】
[ゲートウェイの処理]
本実施形態におけるゲートウェイ100の処理を説明する。まず、予測部31は、通信部10が外部から受信し又は入力部50から入力され、記憶部20が記憶した予測条件に基づいて、影の態様を予測する。
【0047】
上記のように、太陽電池モジュールMにかかる影の態様は、種々の状況によって異なる。このような影の態様の変化により、電力−電圧特性のカーブのピーク点の数が変化する。つまり、遮蔽物Fによる影のかかり方及びこれによる電力−電圧特性は、太陽電池モジュールMの設置地点の高さ、緯度、経度、年月日と、遮蔽物Fの大きさ等の予測条件に基づいて予測することができる。設置高度、緯度、経度、年月日などの情報は、GPS等から得ることができる。遮蔽物Fの大きさは、あらかじめ入力しておくことができる。これらの情報は、一般的には、太陽電池モジュールMの設置施工時、メンテナンス時等に把握できる。
【0048】
作成部32は、予測部31の予測結果に基づいて、電力‐電圧特性に応じた制御パターンを作成する。上記の
図5に示したように、ピーク点の数は同じであっても、ピーク点の位置は、影で覆われたサブストリングSTの数、太陽電池セルCの数によって異なる。
【0049】
例えば、太陽電池モジュールMに影がかかっていない場合、
図5の(A)に示すように、マイクロコンバータMICに設定されたMPPTの電圧の制御範囲Aの中で、日射量などに応じて動作している。
【0050】
しかし、年月日、時刻、場所、天気に応じて、太陽電池モジュールMに影がかかることにより、
図5の(B1)(B2)(C1)(C2)に示すように、電力−電圧特性のピーク点が2つ以上できる場合がある。この場合、それぞれの電力−電圧特性に応じて、次のような制御パターンとすることが考えられる。
【0051】
(B1)に示すように、電力のレベルが異なる2つのピーク点が生じる場合には、電力が最大となるピーク点を含む電圧の制御範囲Bを、制御パターンとする。
(B2)に示すように、電力のレベルが大きく異なる2つのピーク点が生じる場合には、電力が最大となるピーク点を含む電圧の制御範囲B’又はこのピーク点に対応する電圧の固定値bを、制御パターンとする。
(C1)に示すように、電力のレベルが同等の3つのピーク点が生じる場合には、電圧が最大となるピーク点を含む電圧の制御範囲Cを、制御パターンとする。制御範囲Cに示すように、複数のピーク点を含んでいてもよい。
(C2)に示すように、電力のレベルが一つだけ高い3つのピーク点が生じる場合には、高い電力のピーク点を含む電圧の制御範囲C’又はこのピーク点に対応する電圧の固定値cを、制御パターンとする。
【0052】
このように、ピーク点が2つ以上できた場合のMPPTの制御範囲を、B、B’、C、C’のように狭め制御パターンとしたり、(B2)(C2)のように一つのピーク点が突出して高い場合には、固定値b、cを制御パターンとすることで、制御の簡易化が可能となる。
【0053】
作成部32は、各太陽電池モジュールMについて、通常の晴天時における影の態様とこれによる電力−電圧特性のピーク点に対応して狭めた制御範囲又は固定値を制御パターンとして作成して、太陽電池モジュールMの識別情報とともに設定部21に登録する。なお、これらの制御パターンは、年月日、時刻、場所、天気等の選択されるべき選択条件と関連付けられている。
【0054】
そして、選択部33は、選択条件に基づいて制御パターンを選択する。例えば、選択部33は、コンピュータの内部時計又は外部から受信した時間情報から、あらかじめ設定された制御パターンに対応する年月日及び時刻が到来したと判定した場合に、当該制御パターンを選択してもよい。
【0055】
また、天気情報から、曇りや雨天である場合には、全ての太陽電池モジュールMの発電量が大きく低下するので、制御パターンに対応する年月日及び時刻が到来しても、当該制御パターンを選択しないこともできる。なお、天気情報は、クラウド上からより正確な情報を取得すれば、より正確なMPPT制御が可能となる。
【0056】
指示部34は、選択部33が選択した制御パターンによる制御の指示を、その識別情報に対応する太陽電池モジュールMを制御するマイクロコンバータMICに出力する。この制御指示は、通信部10から、対応するマイクロコンバータMICに個別に送信される。
【0057】
例えば、
図9に示すように、識別情報bと識別情報hの太陽電池モジュールMに対して影SAがかかってピーク点が複数生じている場合に、これらを制御しているマイクロコンバータMICに対して、設定された制御パターンによる制御指令が送信される。なお、
図9は、タブレット端末200の出力部40に、監視対象である太陽電池モジュールMのうち、影SAがかかっているものを、模擬的に画面表示することにより、ユーザに分かりやすく示した例である。
【0058】
これにより、一部の太陽電池モジュールMに影がかかっている状態でも、マイクロコンバータMICは、最適な制御を行うことができる。つまり、制御指令を受けたマイクロコンバータMICは、MPPTのピーク点の探索範囲を、そのピーク点が存在する蓋然性の高い範囲に限定するか、ピーク点を特定の固定値とした制御を行う。このため、マイクロコンバータMICの制御負担は大幅に低減される。
【0059】
また、制御パターンの作成は、上記の態様には限定されない。実際の電力‐電圧特性パターンに基づいて、ユーザが入力した情報に応じた制御パターンを用いることもできる。例えば、ユーザが、入力部50から、任意の制御範囲、固定値等のパラメータを入力することにより、これを制御パターンとして設定部21に設定してもよい。
【0060】
さらに、
図10に示すように、タブレット端末200の出力部40に、ピーク点が複数生じている太陽電池モジュールMの電力−電圧特性カーブが表示されている場合に、入力部50により、ユーザが所望のピーク点を選択してもよい。このように選択すると、作成部32が、そのピーク点を含む所定の制御範囲又はそのピーク点を固定値とする制御パターンを作成して、設定部21に設定する。そして、指示部34が、当該太陽電池モジュールMのマイクロコンバータMICに、当該制御パターンによる制御指令を出力する。
【0061】
このような制御パターンによる制御は、日時の変化に応じて、適宜行われる。その具体例を、
図11及び
図12を参照して説明する。例えば、
図11に示すように、太陽の位置から、遮蔽物Fのために“j”の太陽電池ジュールMに規則的な影SA1がかかる。この場合、“j”に対応する電力−電圧特性[1]は、ピーク点が2つとなるが、これに対応した制御パターンにより、制御範囲を限定した制御を行う。
【0062】
続いて、
図12に示すように、時間の変化により、太陽の位置、影のかかり方が変化すると“a”の太陽電池モジュールMにも建物Bの影SA2がかかり、さらには“j”の太陽電池モジュールMにかかる影SA3は大きくなる。新たに影SA2がかかった“a”の太陽電池モジュールMは、[1]とは違うピーク点が2つの電力−電圧特性[2]を示すので、これに対応した制御パターンにより、制御範囲を限定した制御を行う。一方、“j”の太陽電池モジュールMは、先ほどのピーク点が2つの特性から、3つの特性[3]に切り替わるので、これに対応した制御パターンに変更する。
【0063】
[3.効果]
MPPT制御は、山登り制御をはじめとして、種々のアルゴリズムが存在する。但し、一般的には、制御装置の最大限の範囲を制御幅としてピーク点を見つけ出すことになる。しかし、太陽電池モジュールMに影がかかり、ピーク点が複数発生する場合には、最大範囲を制御幅とすると、装置にかかる負荷が増大するとともに、ピーク点を見つけ出すことに時間がかかる。
【0064】
(1)本実施形態は、複数の太陽電池モジュールMに対して、個別にMPPT制御を行うマイクロインバータMICについて、少なくとも一つの太陽電池モジュールMに影がかかった場合の電力−電圧特性に応じて、当該太陽電池モジュールMのマイクロインバータMICの制御範囲を限定する制御パターンを設定する設定部21と、当該太陽電池モジュールMに影がかかった場合に、設定部21に設定された制御パターンによる制御を、当該太陽電池モジュールMのマイクロインバータMICに指示する指示部34とを有する。
【0065】
このように、本実施形態では、制御範囲を限定するので、ピーク点を効率良く短時間で見つけ出すことができ、マイクロインバータMICにかかる負荷を低減しつつ、発電量の低下を最小限に抑えることができる。これにより、マイクロインバータMICのコストを抑えつつ、安定した制御を実現できる。しかも、影に応じた最適な制御パターンを設定しておけば、最適な制御が可能となる。
【0066】
(2)制御パターンは、電力−電圧特性における複数のピーク点のうちの一部のピーク点を含む制御範囲に限定するので、いずれかのピーク点を必ず見つけ出すことができる。
【0067】
(3)特に、制御パターンを、電力−電圧特性における複数のピーク点のうち、いずれか1つのピーク点のみを含む制御範囲に限定すれば、より高速に且つ確実にピーク点を見つけ出すことができる。
【0068】
(4)さらに、制御パターンを、電力−電圧特性における複数のピーク点のうち、いずれか1つのピーク点に固定すれば、制御の負荷は大幅に軽減される。つまり、何ボルトといった固定値で制御する定電圧制御に移行させることにより、処理を簡素化することができる。
【0069】
(5)制御パターンにおける1つのピーク点を、電力が最大のピーク点とすることにより、当該太陽電池モジュールMの発電電力の低下を最小限に抑えることができる。つまり、影がかかった太陽電池モジュールMの発電電力は定格以下となるが、この定格以下の運転の中での複数のピーク点のうち、電力が最大のピーク点とすることにより、比較的高い電力を維持できる。
【0070】
(6)制御パターンにおける1つのピーク点を、電圧が最大のピーク点とすることにより、損失を低減することができる。複数のピーク点のうち、低い電圧のピーク点を制御範囲とすると、電流が増大して損失も増える。定格以下の運転の中での複数のピーク点のうち、電圧が最大のピーク点とすることにより、損失を抑えることができる。これは、ピーク点が同等の高さである場合の選択の基準となる。
【0071】
(7)太陽電池モジュールMに対する影の態様を予測するための予測条件を記憶する記憶部20と、予測条件に基づいて、太陽電池モジュールMに対する影の態様及び電力−電圧特性を予測する予測部31と、予測部31による予測に基づいて、制御パターンを作成する作成部32を有する。これにより、個別の状況によって異なる影の態様及び電力−電圧特性を計測する手間がかからず、最適な制御パターンを作成できる。
【0072】
(8)複数の制御パターンのいずれを選択するかの選択条件を記憶する記憶部20と、選択条件を満たす制御パターンを選択する選択部33を有する。これにより、時々刻々と変化する影の態様に応じて、常に最適な制御パターンを適用することができる。
【0073】
(9)制御パターン又は制御パターンを作成するための情報を入力する入力部50を有している。これにより、ユーザが制御範囲、固定値、ピーク点等を任意に入力することで、所望の制御パターンによる制御が可能となる。
【0074】
(10)影がかかっている太陽電池モジュールM又はその電力−電圧特性を表示する出力部40を有する。これにより、ユーザは、影がかかっている太陽電池モジュールMを容易に把握することができる。
【0075】
(11)制御パターンは、比較的情報量が少なくて済むため、太陽光発電システムPにおけるゲートウェイ100とマイクロインバータMICの通信性能を拡張する必要がなく、本実施形態を適用することができる。さらに、本実施形態を実現するためのコンピュータプログラムを、既存のゲートウェイ100にインストールすることによって、本実施形態を構成してもよい。
【0076】
[E.他の実施形態]
(1)本実施形態は、上記のような態様には限定されない。例えば、太陽電池モジュールMを個別に制御する制御装置は、マイクロインバータMICには限定されない。MPPT制御が可能な制御装置であればよい。例えば、DC−DCオプティマイザー、ACモジュールと呼ばれる装置も、制御装置とすることができる。制御装置の設置位置についても、太陽電池モジュールMの裏面には限定されない。例えば、太陽電池モジュールMを設置する架台に、制御装置を取り付けてもよい。
【0077】
(2)指示部34による制御指令は、より簡素なものであってもよい。例えば、ある家の特定の太陽電池モジュールMは、何時から何時までの間、この制御パターンで制御するという設定がされていれば、その時間に設定された制御パターンによる制御指令を、指示部34が出力すればよい。また、指示部34は、通常運転をしていて、所定のしきい値以下となる場合のように、急激に出力が落ちたことを検出した場合に、影がかかったと判断して、設定された制御パターンによる制御指令を出力してもよい。
【0078】
(3)制御パターンを限定された制御範囲とする場合には、制御装置における通常運転時の制御範囲又は最大、定格若しくデフォルトの制御範囲よりも狭い範囲に制限すればよい。どの程度の範囲とするかは自由である。あらかじめ適用する制御範囲を固定的に設定しておいてもよいし、ピーク点の位置、その他の条件に応じて、適宜、適用する制御範囲を変動させてもよい。また、制御パターンを固定値とする場合に、ピーク点に固定するとしても、実際の電力−電圧特性が示すピーク点は時々刻々と変化する。このため、ピーク点に固定するとは、ピーク点を基準にして固定値を決めることをいい、実際にはピーク点に近似する値となっていればよい。
【0079】
(4)各制御装置の制御対象となる太陽電池モジュールMは、複数の太陽電池セルの集合体を広く含む。このため、その集合体が、一般的にはストリングやアレイ等と呼ばれていても、本実施形態の太陽電池モジュールMとして捉えることができる。一般的に太陽電池モジュールと呼ばれるものを複数接続したものも、本実施形態の太陽電池モジュールMとして捉えることもできる。
【0080】
(5)実施形態に用いられる情報の具体的な内容、値は自由であり、特定の内容、数値には限定されない。実施形態において、しきい値に対する大小判断、一致不一致の判断等において、以上、以下として値を含めるように判断するか、より大きい、上回る、より小さい、下回るとして値を含めないように判断するかも自由である。
【0081】
(6)本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。