特許第6334401号(P6334401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334401
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】ラテックス凝集阻害免疫法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20180521BHJP
   G01N 33/545 20060101ALI20180521BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20180521BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20180521BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20180521BHJP
   C08L 79/02 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   G01N33/543 581J
   G01N33/543 583
   G01N33/545 B
   G01N33/53 G
   C08L101/00
   C08L71/02
   C08L79/02
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-528199(P2014-528199)
(86)(22)【出願日】2013年7月31日
(86)【国際出願番号】JP2013070775
(87)【国際公開番号】WO2014021387
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2016年6月13日
(31)【優先権主張番号】特願2012-170603(P2012-170603)
(32)【優先日】2012年7月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 恵子
(72)【発明者】
【氏名】北野 壮一
(72)【発明者】
【氏名】川本 道子
【審査官】 草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−121204(JP,A)
【文献】 特開2011−038903(JP,A)
【文献】 特表2002−502979(JP,A)
【文献】 特開昭62−071860(JP,A)
【文献】 特表平10−506184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
C08L 71/02
C08L 79/02
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表されるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重体、式(II)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル、式(III)で表されるポリオキシエチレン脂肪酸エステル、及び多価第四級アミン高分子化合物からなる群より選ばれる一種以上の化合物の存在下にラテックス凝集阻害測定法を行うことを特徴とする、ラテックス凝集阻害法における非特異的反応を回避する方法であって、
非特異的反応が、血液試料中に被検物質が存在しないときに、血清成分の存在により、本来生じるべき凝集が生じないという非特異反応である、前記方法。
HO(C24O)a−(C36O)b−(C24O)cH (I)
(式中、a,b,cは任意の整数を表し、a+cは4〜200単位の平均重合度の酸化エ
チレンとなるよう決定され、かつbは5〜100単位の平均重合度の酸化プロピレンとな
るよう決定される)

1O(C24O)nH (II)
(式中、R1は炭素数8〜20のアルキル基(当該アルキル基は、第1級、第2級のいず
れであってもよく、アルキル基中に二重結合を有していてもよい)を表し、nは7〜40
の任意の整数を表す。)

2COO(C24O)n3 (III)
(式中、R2は炭素数16〜18のアルキル基(当該アルキル基は、二重結合を有してい
てもよい)を表し、nは170〜180の任意の整数を表し、R3は水素原子を表すかま
たはR2COO基を表す。)
【請求項2】
多価第四級アミン高分子化合物が、ポリブレン(CAS番号:28728-55-4)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
血液試料の測定に用いられるラテックス凝集阻害測定法用の試薬であって、式(I)で表されるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重体、式(II)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル、式(III)で表されるポリオキシエチレン脂肪酸エステル、及び多価第四級アミン高分子化合物からなる群より選ばれる一種以上の化合物を以下(1)〜(4)のいずれか一つ以上に含有することを特徴とする試薬。
(1)濃度換算用標準物質
(2)抗被検物質抗体を含む溶液
(3)抗原が固定化されたラテックス粒子を含む溶液
(4)濃度換算用標準物質を溶解または希釈するための溶液
HO(C24O)a−(C36O)b−(C24O)cH (I)
(式中、a,b,cは任意の整数を表し、a+cは4〜200単位の平均重合度の酸化エ
チレンとなるよう決定され、かつbは5〜100単位の平均重合度の酸化プロピレンとな
るよう決定される)

1O(C24O)nH (II)
(式中、R1は炭素数8〜20のアルキル基(当該アルキル基は、第1級、第2級のいず
れであってもよく、アルキル基中に二重結合を有していてもよい)を表し、nは7〜40
の任意の整数を表す。)

2COO(C24O)n3 (III)
(式中、R2は炭素数16〜18のアルキル基(当該アルキル基は、二重結合を有してい
てもよい)を表し、nは170〜180の任意の整数を表し、R3は水素原子を表すかま
たはR2COO基を表す。)
【請求項4】
ヒト血液試料中のテイコプラニン測定に用いるものである請求項に記載の試薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液試料中の何らかの成分により生じる、ラテックス免疫凝集測定法における非特異的な反応の回避方法、及び当該回避方法に用いられる試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
ラテックス免疫凝集測定法(以下、LTIAということがある)は、抗原あるいは抗体を固定化したラテックス粒子を用いて、被検物質を測定する方法であり、臨床検査の分野で広く使用されている。LTIAにより被検物質である抗原を測定する方法としては、被検物質に対する抗体を固定化したラテックス粒子と、被検物質である抗原とを反応させ、サンドイッチ型の免疫複合体を形成させ、免疫複合体形成に伴う当該ラテックス粒子の凝集の程度から被検物質(抗原)を測定する方法(以下、サンドイッチLTIAということがある)と、抗原を固定化したラテックス粒子と被検試料中の抗原(被検物質)とを競合させて、当該ラテックス粒子と抗体との免疫複合体の形成を阻害し、免疫複合体の形成阻害に伴う当該ラテックス粒子の凝集阻害の程度から被検物質(抗原)を測定する方法(以下、凝集阻害LTIAということがある)に大別することができる。
【0003】
LTIAにおいては、血清などの被検試料中に被検物質が存在していないにもかかわらず、被検試料中に含まれる何らかの成分により抗原あるいは抗体を固定化したラテックス粒子に生じるべきでない凝集が生じたり、あるいは生じるべき凝集が生じなかったりすることがしばしば発生する。これらは非特異的反応と呼ばれ、様々な測定誤差の原因となることが知られている。
【0004】
非特異的反応の回避方法として、反応系に様々な物質を添加する方法が知られている。
特許文献1には、サンドイッチLTIAにおける非特異性混濁(非特異的凝集と同義)を除去する方法として、無機ホウ素化合物を緩衝系と組み合わせて試料溶液に添加する方法が記載されている。しかしながら当該方法は、抗体を固定化したラテックス粒子を使用する測定する方法において生じるべきでない凝集が生じることを除去する方法であって、凝集阻害LTIAにおいて、生じるべき凝集が生じないことに対応できる方法ではない。
【0005】
凝集阻害LTIAで血液試料を測定する場合、血液試料中の何らかの成分の影響により、被検物質を含まない血液試料であるにもかかわらず、血液成分を全く含まない緩衝液を被検試料として測定した際に得られる凝集度よりも低い凝集度しか得られない場合がある。また、被検試料中の被検物質の濃度換算用の標準物質(以下、濃度換算用標準物質ということがある)を緩衝液で希釈した場合と血液成分を含む緩衝液で希釈した場合とで、凝集度(吸光度)が一致せずに乖離することがある。しかしながら上記のように、現在においても、凝集阻害LTIAにおいて、生じるべき凝集が生じないという非特異的反応を回避できる方法は確立しておらず、新たな方法の開発が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭64−044855公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、凝集阻害LTIAにおいて、生じるべき凝集が生じないという非特異的反応を回避できる方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、凝集阻害LTIAにおける上記課題を解決するため、鋭意検討を行ったところ、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体(以下、POE−POPブロック共重体ということがある)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(以下、POEアルキルエーテルということがある)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(以下、POE脂肪酸エステルということがある)、多価第四級アミン高分子化合物からなる群より選ばれる一種以上の非特異的反応回避化合物を、濃度換算用標準物質を希釈するための緩衝液中に添加しておくと、当該緩衝液それ自体を被検試料として測定した場合に得られる凝集度と、被検物質を含まない血液試料を測定した場合の凝集度との差を縮小させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、以下の構成を有する。
<1>ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、多価第四級アミン高分子化合物からなる群より選ばれる一種以上の化合物の存在下にラテックス凝集阻害測定法を行うことを特徴とする、ラテックス凝集阻害法における非特異的反応を回避する方法。
<2>非特異的反応が、被検試料中に被検物質が存在しないときに、生じるべき凝集が生じないという非特異的反応である、<1>の方法。
<3>ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重体が、式(I)で表されるものである、<1>または<2>の方法。
HO(C24O)a−(C36O)b−(C24O)cH (I)
(式中、a,b,cは任意の整数を表し、a+cは4〜200単位の平均重合度の酸化エチレンとなるよう決定され、かつbは5〜100単位の平均重合度の酸化プロピレンとなるよう決定される)
<4>ポリオキシエチレンアルキルエーテルが、式(II)で表されるものである、<1>または<2>の方法。
1O(C24O)nH (II)
(式中、R1は炭素数8〜20のアルキル基(当該アルキル基は、第1級、第2級のいずれであってもよく、アルキル基中に二重結合を一つ以上有していてもよい)を表し、nは7〜40の任意の整数を表す。)
<5>ポリオキシエチレン脂肪酸エステルが、式(III)で表されるものである、<1>または<2>の方法。
2COO(C24O)n3 (III)
(式中、R2は炭素数16〜18のアルキル基(当該アルキル基は、二重結合を一つ以上有していてもよい)を表し、nは170〜180の任意の整数を表し、R3は水素原子を表すかまたはR2COO基を表す。)
<6>多価第四級アミン高分子化合物が、ポリブレン(CAS番号:CB1327317)である、<1>または<2>の方法。
<7>ラテックス凝集阻害法用の試薬であって、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、多価第四級アミン高分子化合物からなる群より選ばれる一種以上の化合物を以下(1)〜(4)のいずれか一つ以上に含有することを特徴とする試薬。
(1)濃度換算用標準物質
(2)抗被検物質抗体を含む溶液
(3)抗原が固定化されたラテックス粒子を含む溶液
(4)濃度換算用標準物質を溶解または希釈するための溶液
<8>ヒト血液試料中のテイコプラニン測定に用いるものである、<7>の試薬。
<9>ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、多価第四級アミン高分子化合物からなる群より選ばれる一種以上の化合物を有効成分とするラテックス凝集阻害法用非特異的反応回避剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、凝集阻害LTIAにおいて、生じるべき凝集が生じないという非特異的反応を回避できる方法が提供される。本発明により、凝集阻害LTIAによる血液試料中の被検物質の正確な測定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】濃度換算用標準物質をヒト血清成分を全く含まない緩衝液で希釈した場合の検量線(×)、被検物質を添加したヒト血清をヒト血清成分を全く含まない緩衝液で希釈した場合の検量線(○)及び被検物質を添加したヒト血清を被検物質を添加していないヒト血清で希釈した場合の検量線(▲)である。
図2】本発明の非特異的反応回避化合物を含む濃度換算用標準物質希釈液の組成を検討した結果の図である。
図3】濃度換算用標準物質を本発明の濃度換算用標準物質希釈液で希釈した場合の検量線(×)、及び被検物質を添加したヒト血清を被検物質を添加していないヒト血清で希釈した場合の検量線(▲)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(非特異的反応回避化合物)
本発明の非特異的反応回避化合物としては、POE−POPブロック共重体、POEアルキルエーテル、POE脂肪酸エステル、多価第四級アミン高分子化合物からなる群より選ばれる一種以上の化合物が挙げられる。
【0013】
本発明のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体(POE−POPブロック共重体)は、下記式(I)に示す構造を有する。
[化1]
HO(C24O)a−(C36O)b−(C24O)cH (I)
(式中、a,b,cは任意の整数を表し、a+cは4〜200単位の平均重合度の酸化エチレン(以下、EOと表記することがある)となるよう決定され、かつbは5〜100単位の平均重合度の酸化プロピレン(以下、POと表記することがある)となるよう決定される)
本発明において使用するPOE−POPブロック共重体を含有する市販品の具体的な例としては、一般に「プルロニック(登録商標)」の名称で販売されている非イオン性界面活性剤のうち「F」で括られる製品、または「エパン(登録商標)」の名称で販売されている非イオン界面活性剤を挙げることができる。
なお、POE−POPブロック共重合体の成分としての表記は数種類存在し、各表記間で相互に同一性、類似性を確認できるが、同一名称の市販品であっても各表記間での数値が完全に一致しない場合がある。これらは重合性高分子に特有のものであり当業者は当然に理解しうる。
【0014】
より具体的な市販品の例を、確認できる成分としての表記(1),(2)とともに挙げる。
プルロニックF77:
(1)ポリオキシエチレン含量70%、ポリオキシプロピレンの分子量およそ2306
(2)EO数−PO数:(52x2)−35
プルロニックF87:
(1)ポリオキシエチレン含量70%、ポリオキシプロピレンの分子量およそ2644
(2)EO数−PO数:(62x2)−39
プルロニックF88:
(1)ポリオキシエチレン含量80%、ポリオキシプロピレンの分子量およそ2644
(2)EO数−PO数:(97x2)−39
プルロニックF68:
(1)ポリオキシエチレン含量80%、ポリオキシプロピレンの分子量およそ1967
(2)EO数−PO数:(75x2)−30
エパン485
(1)ポリオキシエチレン含量85%、ポリオキシプロピレンの分子量およそ1200
(2)EO数−PO数:(80x2)−21
エパン680
(1)ポリオキシエチレン含量80%、ポリオキシプロピレンの分子量およそ1750
(2)EO数−PO数:(84x2)−30
エパン785
(1)ポリオキシエチレン含量85%、ポリオキシプロピレンの分子量およそ2000
(2)EO数−PO数:(140x2)−34
エパン750
(1)ポリオキシエチレン含量50%、ポリオキシプロピレンの分子量およそ2000
(2)EO−PO数:(23x2)−34
これらのうち、プルロニックF88およびプルロニックF68は、医薬部外品原料規格2006にも収載されている。
【0015】
本発明のポリオキシエチレンアルキルエーテル(POEアルキルエーテル)は、下記式(II)に示す構造を有する。
[化2]
1O(C24O)nH (II)
(式中、R1は炭素数8〜20のアルキル基(当該アルキル基は、第1級、第2級のいずれであってもよく、アルキル基中に二重結合を一つ以上有していてもよい)を表し、nは7〜40の任意の整数を表す。)
本発明において使用するPOEアルキルエーテルを含有する市販品の具体的な例としては、一般に「NIKKOL(登録商標)」の名称で販売されている非イオン性界面活性剤のうち「BT」、「BC」あるいは「BO」で括られる製品を挙げることができる。
より具体的な市販品の例を、確認できる成分としての表記(3)、(4)とともに挙げる。
ニッコールBC40TX:
(3)ポリオキシエチレンセチルエーテル
(4)R1:炭素数16、n:40
ニッコールBO10TX:
(3)ポリオキシエチレンオレイルエーエル
(4)R1:炭素数18、n:10
ニッコールBT−7:
(3)ポリオキシエチレンアルキルエーテル
(4)R1:炭素数12〜14(2級アルキル)、n:7
ニッコールBT−9:
(3)ポリオキシエチレンアルキルエーテル
(4)R1:炭素数12〜14(2級アルキル)、n:9
【0016】
本発明のポリオキシエチレン脂肪酸エステル(POE脂肪酸エステル)は、下記式(III)に示す構造を有する。
2COO(C24O)n3 (III)
(式中、R2は炭素数16〜18のアルキル基(当該アルキル基は、二重結合を有していてもよい)を表し、nは170〜180の任意の整数を表し、R3は水素原子を表すかまたはR2COO基を表す。)
本発明において使用するPOE脂肪酸エステルを含有する市販品の具体的な例としては、一般に「ノイゲン(登録商標)」の名称で販売されている非イオン性界面活性剤のうち「DS」で括られる製品を挙げることができる。
より具体的な市販品の例を、確認できる成分としての表記(5)、(6)とともに挙げる。
ノイゲンDS−601:
(5)ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル
(6)R1:炭素数17、n:175
【0017】
多価第四級アミン高分子化合物としては、ポリブレン(CAS番号:CB1327317)が挙げられる。
【0018】
これらのうち、プルロニックF88、ニッコールBT―7、ニッコールBT−9が好適である。
【0019】
本発明の非特異的反応回避化合物は、濃度換算用標準物質(いわゆるキャリブレータ)、抗被検物質抗体を含む溶液、抗原が固定化されたラテックス粒子を含む溶液、濃度換算用標準物質を溶解または希釈するための溶液など、凝集阻害LTIAを行うための試薬の一以上に添加して使用することができる。なかでも濃度換算用標準物質に添加することが好ましい。
【0020】
非特異的反応回避化合物の好ましい濃度は、濃度換算用標準物質、抗被検物質抗体、抗原が固定化されたラテックス粒子の3成分が反応系中に共存した状態での濃度(反応系中での終濃度)として0.003〜0.078%(v/v、以下同じ)、さらに好ましくは0.006〜0.034%、特に好ましくは0.007〜0.024%である。
【0021】
本発明の非特異的反応回避化合物は、本発明の効果に影響を与えないこと、製剤としての性能が担保できることを限度として、LTIAで通常使用される緩衝液、タンパク質、塩類、防腐剤などと混合して使用することができる。
【0022】
(緩衝液)
緩衝液としては、例えば、中性pH付近、好ましくはpH6.5〜7.8、より好ましくはpH6.8〜7.5に緩衝作用を有する緩衝液(リン酸緩衝液、グッド緩衝液、グリシン緩衝液、ホウ酸緩衝液、及び複数の緩衝剤を組み合わせた広域緩衝液など)が好適である。これらの緩衝液中の緩衝剤の濃度としては、0.1mM〜1Mが好ましく、さらに好ましくは1mM〜800mM、特に好ましくは5mM〜500mMである。
なお、製剤としての性能担保の観点から、例えば、抗原が後述実施例のテイコプラニンである場合には、テイコプラニンの保存安定性に望ましくない影響をあたえるので、分子内にアミン構造を有する緩衝剤(例えば、Tris)の使用は好適ではない。本発明の非特異的反応回避化合物以外の成分は、被検物質それぞれの特性を考慮して、実験などにより選択することができる。
【0023】
(タンパク質)
タンパク質としては、ウシ血清アルブミン(BSA)およびカゼインなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、抗体や抗原が固定化されたラテックス粒子の保存安定性向上のため、あるいは、血液試料が反応系に持ち込むタンパク成分の濃度と近似させ反応環境をそろえるためなどの目的で使用されている。
【0024】
(塩類)
塩類としては、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0025】
(防腐剤)
防腐剤としては、オフロキサシンなどの抗菌剤や、アジ化ナトリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
(測定方法)
本発明の非特異的反応回避化合物を用いる凝集阻害LTIAの測定方法としては、被検試料中の被検物質の濃度に応じて抗原が固定化されたラテックス粒子の凝集度が減少するラテックス競合法を使用することができ、生じた凝集の程度を光学的あるいは電気化学的に観察することにより被検物質を測定できる。光学的に観察する方法としては、散乱光強度、吸光度、又は透過光強度を光学機器で測定する方法が挙げられる。
【0027】
(被検試料・被検物質)
本発明の非特異的反応回避化合物を用いたラテックス凝集阻害測定法が測定対象とする被検試料は、血清、血漿などの血液試料である。被検試料中の被検物質(検出対象)としては、ペプチド抗原、ハプテンといった低分子抗原が挙げられ、例えば、テイコプラニン、アルベカシン、バンコマイシンのようなペプチド系抗生物質、オフロキサシンのような合成抗菌剤、卵白や豆類由来のアレルゲンなど、競合免疫測定法に好適な被検物質が挙げられる。これらのなかでもテイコプラニンが好適である。
【0028】
(抗体)
本発明に用いる抗体は、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよい。本発明の抗体としては、抗体分子全体のほかに抗原抗体反応活性を有する抗体の機能性断片を使用することも可能であり、一般的な動物(マウス、ヤギ、ヒツジなど)への免疫工程を経て得られたもののほか、遺伝子組み換え技術を使用して得られるものやキメラ抗体を用いることも可能である。抗体の機能性断片としては抗原抗体反応活性を有する断片であるF(ab')2、Fab'などが挙げられる。これらの抗体の機能性断片は前記のようにして得られた抗体をタンパク質分解酵素(例えば、ペプシンやパパインなど)で処理することにより製造できる。また、これらの抗体は、ラテックス粒子に固定化されていてもよいし、固定化されていなくてもよい。
【0029】
(ラテックス粒子)
本発明に用いるラテックス粒子としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体、メタクリル酸重合体、アクリル酸重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニルアクリレートなどが挙げられる。ラテックス粒子の平均粒径は、被検物質の被検試料中での濃度あるいは測定機器の検出感度などを考慮し、0.1μm〜0.4μmのものが適宜選択される。
【0030】
(抗原を固定化したラテックス粒子)
本発明に用いる抗原を固定化したラテックス粒子における抗原の固定化方法は、固定化しようとする抗原の特性に応じて物理吸着(疎水結合)法、化学結合法のいずれかを適宜選択することができる。物理吸着(疎水結合)法においては、ポリハプテンを形成させて吸着させる方法、化学結合法においてはマレイミド基などの結合性の官能基を抗原に導入したり、抗原が糖を有する場合にはこれを利用してラテックス粒子表面の結合性の官能基に結合させ固定化することができる。
【0031】
(凝集阻害LTIA用試薬)
本発明の非特異的反応回避化合物を含有する凝集阻害LTIA用試薬は、通常使用される以下の形態のいずれか一以上で提供することができるが、これに限定されない。
(1)濃度換算用標準物質(キャリブレータなどの名称で呼ばれる場合がある)
(2)被検物質に対する抗体を含む溶液(抗体液、第一試液などの名称で呼ばれる場合がある)
(3)抗原が固定化されたラテックス粒子溶液(ラテックス試液、第二試液などの名称で呼ばれる場合がある)
(4)濃度換算用標準物質を溶解または希釈するための溶液(キャリブレータ希釈液などの名称で呼ばれる場合がある)
このうち、(1)濃度換算用標準物質に、本発明の非特異的反応回避化合物を含有させる場合には、本発明の非特異的反応回避化合物を含有させたのち、これを溶液のまま提供しても、あるいは凍結乾燥などの手段により固形化して提供してもよい。また、本発明の非特異的反応回避化合物を含有しない状態で提供し、使用時に本発明の非特異的反応回避化合物を含有する緩衝液等で復元あるいは希釈して使用できるように提供してもよい。前記本発明の非特異的反応回避化合物を含有する緩衝液等は、濃度換算用標準物質(キャリブレータ)希釈液、検体希釈液等の名称で提供される場合もあり、前記(4)の形態に相当する。
(2)被検物質に対する抗体を含む溶液あるいは(3)抗原が固定化されたラテックス粒子溶液に、本発明の非特異的反応回避化合物を含有させる場合には、本発明の非特異的反応回避化合物を含有させた溶液として提供することができる。
上記(1)〜(4)は、凝集阻害LTIAを実施する際に、一連で使用されるものであれば、それぞれが独立して提供されても、キットなどのように一括提供されても構わない。
【実施例】
【0032】
<比較例1> 濃度換算用標準物質を、ヒト血清成分を全く含まない緩衝液で希釈した場合の検量線と、被検物質を含まないヒト血清で希釈した場合の検量線の比較
1.試薬
(1)テイコプラニン(Sigma Aldrich社製)
(2)テイコプラニン非投与ヒトから得た血清(100名のプール血清。以下、ベース血清という)
(3)濃度換算用標準物質希釈液(以下、標準物質希釈液という):5%BSA−PBS(pH7.2)、0.002% オフロキサシン
PBS錠剤(DULBECCO’S PBS TABLETS(−)(DSファーマバイオメディカル社製))1錠、BSA(Probumin(商標) Reagent Grade (k)(MILLIPORE社製))5gおよびオフロキサシン2mgを水で100mLにメスアップし、標準物質希釈液を調製した。
なお、PBS錠剤を100mLの溶液とした場合の組成は以下である。
800mgNaCl、20mgKCl、115mgリン酸一水素ナトリウム(無水)、リン酸二水素カリウム(無水)
(4)抗テイコプラニン抗体液(2.8mg/mL抗テイコプラニンヒツジポリクローナル抗体及び0.5%BSA含有。pH7.0。以下、抗体液という)
(5)テイコプラニン感作ラテックス試液(pH7.2.以下、ラテックス試液という)
2.方法
テイコプラニンを標準物質希釈液で0、5、10、25、50、100μg/mLになるように希釈し、キャリブレータとした。また、110μg/mLとなるようテイコプラニンを添加したベース血清を、テイコプラニン非添加のベース血清または標準物質希釈液で10段階(0、11、22、33、44、55、66、77、88、99、110μg/mL)に希釈し、それぞれ模擬検体溶液1、模擬検体溶液2とした。2.4μLのキャリブレータ、模擬検体溶液1あるいは模擬検体溶液2と、180μLの抗テイコプラニン抗体液を混合し、37℃、5分混和した。続いて、60μLのラテックス試液を混合し、37℃、1分後(吸光度I)、1分20秒後(吸光度II)、3分後(吸光度III)、3分20秒後(吸光度IV)に、それぞれ700nmの吸光度を測定した。(吸光度IIと吸光度Iの平均値)と(吸光度IVと吸光度IIIの平均値)の差を求め、吸光度変化量(以下、dabsという)とした。
3.結果
結果を図1に示す。テイコプラニン非添加のベース血清で希釈した模擬検体溶液1(▲)では、ベース血清それ自体(テイコプラニン濃度0μg/mL)のdabsが、テイコプラニン濃度0μg/mLのキャリブレータ(標準物質希釈液それ自体)のdabsよりも低く、また11〜110μg/mLの濃度範囲でのキャリブレータ(×)および模擬検体溶液2(○)のdabsと比較して、いずれも低いdabsとなり、何らかの血清成分による非特異的反応が疑われた。
【0033】
<実施例1> 非特異的反応回避化合物の探索検討
1.試薬
(1)テイコプラニン非投与ヒトから得た血清(ベース血清)
(2)抗テイコプラニン抗体液(抗体液)
(3)テイコプラニン感作ラテックス試液(ラテックス試液)
以上(1)〜(3)は比較例1と同様のものを使用した。
(4)10%BSA−2×PBS(pH7.0)
PBS錠剤1錠とBSA5gを水で50mlにメスアップし、10%BSA−2×PBSとした。
(5)探索した化合物
表1に示した。
(a)ブロッキングN101、N102(ともに日油社製)。合成ポリマーを主成分とする免疫学的測定用ブロッキング試薬である。
(b)エパン750(POE−POPブロック共重合体。第一工業製薬社製)
(1)ポリオキシエチレン含量50%、ポリオキシプロピレンの分子量およそ2000
(2)EO数−PO数:(23x2)−34
(c)プルロニックL34(POE−POPブロック共重合体。ADEKA社製)
(1)ポリオキシエチレン含量40%、ポリオキシプロピレンの分子量およそ870
(2)EO数−PO数:(7x2)−15
(d)プルロニックF68(POE−POPブロック共重合体。ADEKA社製)
(e)ノイゲンDS601(POE脂肪酸エステル。第一工業製薬社製)
(f)ニッコールBC40TX(POEアルキルエーテル。日光ケミカルズ社製)
(g)ニッコールBO−10TX(POEアルキルエーテル。日光ケミカルズ社製)
(h)ニッコールBT−7(POEアルキルエーテル。日光ケミカルズ社製)
(i)ニッコールBT−9(POEアルキルエーテル。日光ケミカルズ社製)
(j)PEG6000(H(OCHCHOH 平均分子量:7300〜9300、和光純薬社製)
(k)マンニトール(キシダ化学社製)
(l)ポリブレン(Sigma Aldrich社製)
(m)ヘパリンナトリウム(Sigma Aldrich社製)
2.方法
2.4μLのベース血清あるいは10%BSA−2×PBSと、表1中に記載の終濃度の2倍濃度に調製した探索した化合物を容量比1:1で混合した溶液(試験溶液1)を、180μLの抗体液と混合し、37℃、5分混和した。続いて、60μLのラテックス試液を混合し、37℃、1分後(吸光度I)、1分20秒後(吸光度II)、3分後(吸光度III)、3分20秒後(吸光度IV)にそれぞれ700nmの吸光度を測定した。(吸光度IIと吸光度Iの平均値)と(吸光度IVと吸光度IIIの平均値)の差を求め、dabsとした。下記式(A)で差がマイナスとなる場合を効果ありと判定した。
(ベース血清のdabs)−(試験溶液1のdabs)・・・式(A)
なお、非特異的反応回避化合物の代わりに精製水を添加した物をコントロールとした。
3.結果
プルロニックF68、ノイゲンDS601、ニッコールBC40TX、ニッコールBO−10TX、ニッコールBT−7、ニッコールBT−9で効果ありと判定し、非特異的反応回避化合物とした。またベース血清との差から、エパン750とポリブレンも非特異的反応回避化合物候補とした。
【0034】
【表1】
注:表1に記載の終濃度中、「1/2」の記載は、市販品原液を1とした場合の希釈度(2倍希釈)を表している。
【0035】
<実施例2> 非特異的反応回避化合物(候補)の有効濃度範囲の検討−1
実施例1の結果から絞込んだ非特異的反応回避化合物候補について、有効な濃度範囲を検討した。
1.試薬
(1)テイコプラニン非投与ヒトから得た血清(ベース血清)
(2)抗テイコプラニン抗体液(抗体液)
(3)テイコプラニン感作ラテックス試液(ラテックス試液)
以上(1)〜(3)は比較例1と同様のものを使用した。
(4)10%BSA−2×PBS(pH7.0)
(5)非特異的反応回避化合物(候補)
表2に示した。
(a)エパン485(POE−POPブロック共重合体。第一工業製薬社製)
(b)プルロニックF68
(c)プルロニックF88
(d)ノイゲンDS601
(e)ニッコールBT−7
(f)ニッコールBT−9
(g)ポリブレン
2.方法
2.4μLのベース血清あるいは10%BSA−2×PBSと、表2中に記載の終濃度の2倍濃度に調製した添加化合物を1:1で混合した溶液(試験溶液2)を180μLの抗体液と混合し、37℃、5分混和した。続いて、60μLのラテックス試液を混合し、37℃、1分後(吸光度I)、1分20秒後(吸光度II)、3分後(吸光度III)、3分20秒後(吸光度IV)にそれぞれ700nmの吸光度を測定した。(吸光度IIと吸光度Iの平均値)と(吸光度IVと吸光度IIIの平均値)の差を求め、dabsとした。下記式(B)で比が95%〜105%となる場合を効果ありと判定した。
(ベースの血清のdabs)/(試験溶液2のdabs)・・・式(B)
3.結果
プルロニックF68、プルロニックF88、ノイゲンDS601、ニッコールBT−7、ニッコールBT−9、ポリブレンで効果ありと判定した。また、エパン485についても、終濃度を上げることで効果があることが推測された。以上より、これらを非特異的反応回避化合物と判断した。
【0036】
【表2】
注:空欄は試験を実施しなかった。
【0037】
<実施例3> 非特異的反応回避化合物の濃度範囲の検討−2
1.試薬
(1)テイコプラニン非投与ヒトから得た血清(ベース血清)
(2)抗テイコプラニン抗体液(抗体液)
(3)テイコプラニン感作ラテックス試液(ラテックス試液)
以上(1)〜(3)は比較例1、2と同様のものを使用した。
(4)10%BSA−2×PBS(pH7.0)
(5)非特異的反応回避化合物
(a)プルロニックF88
(b)ニッコールBT−9
2.方法
2.4μLのベース血清ならびに10%BSA−2×PBSと、表3中に記載の終濃度の2倍濃度に調製した添加化合物を1:1で混合した溶液(試験溶液3)を180μLの抗体液と混合し、37℃、5分混和した。続いて、60μLのラテックス試液を混合し、37℃、1分後(吸光度I)、1分20秒後(吸光度II)、3分後(吸光度III)、3分20秒後(吸光度IV)にそれぞれ700nmの吸光度を測定した。(吸光度IIと吸光度Iの平均値)と(吸光度IVと吸光度IIIの平均値)の差を求め、dabsとした。
下記式(C)で比が最も小さくなる濃度を単回帰分析から算出した。
(ベース血清のdabs)/(試験溶液3のdabs)・・・式(C)
3.結果
プルロニックF88は、1.75%で、ベース血清との差が最も小さくなった。ニッコールBT−9では、2.5%でベース血清との差が最も小さくなった。
【0038】
【表3】
【0039】
<参考例1> バッファー組成の検討
1.試薬
(1)テイコプラニン非投与ヒトから得た血清(ベース血清)
(2)抗テイコプラニン抗体液(抗体液)
(3)テイコプラニン感作ラテックス試液(ラテックス試液)
以上(1)〜(3)は比較例1、2と同様のものを使用した。
(4)非特異的反応回避化合物
プルロニックF88
2.方法
以下の6通りの試験溶液4を調製した。
・BSA0%、PB−
1.75gの塩化ナトリウム、0.7gのプルロニックF88、2mgのオフロキサシンを秤量し100mLにメスアップした。
・BSA5%、PB−
1.75gの塩化ナトリウム、0.7gのプルロニックF88、5gのBSA、2mgのオフロキサシンを秤量し100mLにメスアップした。
・BSA10%、PB−
1.75gの塩化ナトリウム、0.7gのプルロニックF88、10gのBSA、2mgのオフロキサシンを秤量し100mLにメスアップした。
・BSA0%、PB+
PBS錠剤1錠、0.7gのプルロニックF88、2mgのオフロキサシンを秤量し100mLにメスアップした。
・BSA5%、PB+
PBS錠剤1錠、0.7gのプルロニックF88、5gのBSA、2mgのオフロキサシンを秤量し100mLにメスアップした。
・BSA10%、PB+
PBS錠剤1錠、0.7gのプルロニックF88、10gのBSA、2mgのオフロキサシンを秤量し100mLにメスアップした。
2.4μLのベース血清ならびに上記6種類の試験溶液4を180μLの抗体液と混合し、37℃、5分混和した。続いて、60μLのラテックス試液を混合し、37℃1分後(吸光度I)、1分20秒後(吸光度II)、3分後(吸光度III)、3分20秒後(吸光度IV)にそれぞれ700nmの吸光度を測定した(吸光度I、吸光度II、吸光度III、吸光度IV)。(吸光度IIと吸光度Iの平均値)と(吸光度IVと吸光度IIIの平均値)の差を求め、dabsとした。下記式(D)で比を計算し、バッファー組成の効果を確認した。
(ベース血清のdabs)/(試験溶液4のdabs)・・・式(D)
3.結果
結果を図2に示す。PBSは、本発明の非特異的反応回避化合物の効果を向上させることが確認された。一方、BSAは非特異的反応回避化合物の効果には影響を与えなかった。
【0040】
以上、比較例1、実施例1〜3、参考例1の結果より、POE−POPブロック共重体、POEアルキルエーテル、POE脂肪酸エステル、多価第四級アミン高分子化合物に、凝集阻害LTIAにおける生じるべき凝集が生じないという非特異的反応を回避できることが確認された。
また、本発明の非特異的反応回避化合物は、濃度換算用標準物質(キャリブレータ)に添加することでその効果を発揮するという従来にない特徴を有していることが確認された。
【0041】
<実施例4> 濃度換算用標準物質を、本発明の非特異的反応回避化合物を含む緩衝液で希釈した場合の検量線と、被検物質を含まないヒト血清で希釈した場合の検量線の比較
1.試薬
(1)テイコプラニン(Sigma Aldrich社製)
(2)テイコプラニン非投与ヒトから得た血清(以下、ベース血清という)
(3)濃度換算用標準物質希釈液(以下、標準物質希釈液という):5%BSA−PBS(pH7.2)、0.002% オフロキサシン、0.7%プルロニックF88
(4)抗テイコプラニン抗体液(抗体液)
(5)テイコプラニン感作ラテックス試液(ラテックス試液)
2.方法
テイコプラニンを標準物質希釈液で0、5、10、25、50、100μg/mLになるように希釈し、キャリブレータとした。また、110μg/mLとなるようテイコプラニンを添加したベース血清を、テイコプラニン非添加のベース血清で10段階(0、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100μg/mL)に希釈し、模擬検体溶液3とした。2.4μLのキャリブレータ、模擬検体溶液3と、180μLの抗テイコプラニン抗体液を混合し、37℃、5分混和した。続いて、60μLのラテックス試液を混合し、37℃、1分後(吸光度I)、1分20秒後(吸光度II)、3分後(吸光度III)、3分20秒後(吸光度IV)に、それぞれ700nmの吸光度を測定した。(吸光度IIと吸光度Iの平均値)と(吸光度IVと吸光度IIIの平均値)の差を求め、dabsとした。
3.結果
結果を図3に示す。テイコプラニン非添加のベース血清で希釈した模擬検体溶液3(▲)とキャリブレータ(×)のdabsはテイコプラニン濃度0μg〜110μg/mLの濃度範囲すべてで一致した。以上により、本発明の効果が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明により、凝集阻害LTIAにおいて、生じるべき凝集が生じないという非特異的反応を回避できる方法が提供される。本発明により、凝集阻害LTIAによる血液試料中の被検物質の正確な測定が可能になる。
図1
図2
図3