【実施例】
【0032】
<比較例1> 濃度換算用標準物質を、ヒト血清成分を全く含まない緩衝液で希釈した場合の検量線と、被検物質を含まないヒト血清で希釈した場合の検量線の比較
1.試薬
(1)テイコプラニン(Sigma Aldrich社製)
(2)テイコプラニン非投与ヒトから得た血清(100名のプール血清。以下、ベース血清という)
(3)濃度換算用標準物質希釈液(以下、標準物質希釈液という):5%BSA−PBS(pH7.2)、0.002% オフロキサシン
PBS錠剤(DULBECCO’S PBS TABLETS(−)(DSファーマバイオメディカル社製))1錠、BSA(Probumin(商標) Reagent Grade (k)(MILLIPORE社製))5gおよびオフロキサシン2mgを水で100mLにメスアップし、標準物質希釈液を調製した。
なお、PBS錠剤を100mLの溶液とした場合の組成は以下である。
800mgNaCl、20mgKCl、115mgリン酸一水素ナトリウム(無水)、リン酸二水素カリウム(無水)
(4)抗テイコプラニン抗体液(2.8mg/mL抗テイコプラニンヒツジポリクローナル抗体及び0.5%BSA含有。pH7.0。以下、抗体液という)
(5)テイコプラニン感作ラテックス試液(pH7.2.以下、ラテックス試液という)
2.方法
テイコプラニンを標準物質希釈液で0、5、10、25、50、100μg/mLになるように希釈し、キャリブレータとした。また、110μg/mLとなるようテイコプラニンを添加したベース血清を、テイコプラニン非添加のベース血清または標準物質希釈液で10段階(0、11、22、33、44、55、66、77、88、99、110μg/mL)に希釈し、それぞれ模擬検体溶液1、模擬検体溶液2とした。2.4μLのキャリブレータ、模擬検体溶液1あるいは模擬検体溶液2と、180μLの抗テイコプラニン抗体液を混合し、37℃、5分混和した。続いて、60μLのラテックス試液を混合し、37℃、1分後(吸光度I)、1分20秒後(吸光度II)、3分後(吸光度III)、3分20秒後(吸光度IV)に、それぞれ700nmの吸光度を測定した。(吸光度IIと吸光度Iの平均値)と(吸光度IVと吸光度IIIの平均値)の差を求め、吸光度変化量(以下、dabsという)とした。
3.結果
結果を
図1に示す。テイコプラニン非添加のベース血清で希釈した模擬検体溶液1(▲)では、ベース血清それ自体(テイコプラニン濃度0μg/mL)のdabsが、テイコプラニン濃度0μg/mLのキャリブレータ(標準物質希釈液それ自体)のdabsよりも低く、また11〜110μg/mLの濃度範囲でのキャリブレータ(×)および模擬検体溶液2(○)のdabsと比較して、いずれも低いdabsとなり、何らかの血清成分による非特異的反応が疑われた。
【0033】
<実施例1> 非特異的反応回避化合物の探索検討
1.試薬
(1)テイコプラニン非投与ヒトから得た血清(ベース血清)
(2)抗テイコプラニン抗体液(抗体液)
(3)テイコプラニン感作ラテックス試液(ラテックス試液)
以上(1)〜(3)は比較例1と同様のものを使用した。
(4)10%BSA−2×PBS(pH7.0)
PBS錠剤1錠とBSA5gを水で50mlにメスアップし、10%BSA−2×PBSとした。
(5)探索した化合物
表1に示した。
(a)ブロッキングN101、N102(ともに日油社製)。合成ポリマーを主成分とする免疫学的測定用ブロッキング試薬である。
(b)エパン750(POE−POPブロック共重合体。第一工業製薬社製)
(1)ポリオキシエチレン含量50%、ポリオキシプロピレンの分子量およそ2000
(2)EO数−PO数:(23x2)−34
(c)プルロニックL34(POE−POPブロック共重合体。ADEKA社製)
(1)ポリオキシエチレン含量40%、ポリオキシプロピレンの分子量およそ870
(2)EO数−PO数:(7x2)−15
(d)プルロニックF68(POE−POPブロック共重合体。ADEKA社製)
(e)ノイゲンDS601(POE脂肪酸エステル。第一工業製薬社製)
(f)ニッコールBC40TX(POEアルキルエーテル。日光ケミカルズ社製)
(g)ニッコールBO−10TX(POEアルキルエーテル。日光ケミカルズ社製)
(h)ニッコールBT−7(POEアルキルエーテル。日光ケミカルズ社製)
(i)ニッコールBT−9(POEアルキルエーテル。日光ケミカルズ社製)
(j)PEG6000(H(OCH
2CH
2)
nOH 平均分子量:7300〜9300、和光純薬社製)
(k)マンニトール(キシダ化学社製)
(l)ポリブレン(Sigma Aldrich社製)
(m)ヘパリンナトリウム(Sigma Aldrich社製)
2.方法
2.4μLのベース血清あるいは10%BSA−2×PBSと、表1中に記載の終濃度の2倍濃度に調製した探索した化合物を容量比1:1で混合した溶液(試験溶液1)を、180μLの抗体液と混合し、37℃、5分混和した。続いて、60μLのラテックス試液を混合し、37℃、1分後(吸光度I)、1分20秒後(吸光度II)、3分後(吸光度III)、3分20秒後(吸光度IV)にそれぞれ700nmの吸光度を測定した。(吸光度IIと吸光度Iの平均値)と(吸光度IVと吸光度IIIの平均値)の差を求め、dabsとした。下記式(A)で差がマイナスとなる場合を効果ありと判定した。
(ベース血清のdabs)−(試験溶液1のdabs)・・・式(A)
なお、非特異的反応回避化合物の代わりに精製水を添加した物をコントロールとした。
3.結果
プルロニックF68、ノイゲンDS601、ニッコールBC40TX、ニッコールBO−10TX、ニッコールBT−7、ニッコールBT−9で効果ありと判定し、非特異的反応回避化合物とした。またベース血清との差から、エパン750とポリブレンも非特異的反応回避化合物候補とした。
【0034】
【表1】
注:表1に記載の終濃度中、「1/2」の記載は、市販品原液を1とした場合の希釈度(2倍希釈)を表している。
【0035】
<実施例2> 非特異的反応回避化合物(候補)の有効濃度範囲の検討−1
実施例1の結果から絞込んだ非特異的反応回避化合物候補について、有効な濃度範囲を検討した。
1.試薬
(1)テイコプラニン非投与ヒトから得た血清(ベース血清)
(2)抗テイコプラニン抗体液(抗体液)
(3)テイコプラニン感作ラテックス試液(ラテックス試液)
以上(1)〜(3)は比較例1と同様のものを使用した。
(4)10%BSA−2×PBS(pH7.0)
(5)非特異的反応回避化合物(候補)
表2に示した。
(a)エパン485(POE−POPブロック共重合体。第一工業製薬社製)
(b)プルロニックF68
(c)プルロニックF88
(d)ノイゲンDS601
(e)ニッコールBT−7
(f)ニッコールBT−9
(g)ポリブレン
2.方法
2.4μLのベース血清あるいは10%BSA−2×PBSと、表2中に記載の終濃度の2倍濃度に調製した添加化合物を1:1で混合した溶液(試験溶液2)を180μLの抗体液と混合し、37℃、5分混和した。続いて、60μLのラテックス試液を混合し、37℃、1分後(吸光度I)、1分20秒後(吸光度II)、3分後(吸光度III)、3分20秒後(吸光度IV)にそれぞれ700nmの吸光度を測定した。(吸光度IIと吸光度Iの平均値)と(吸光度IVと吸光度IIIの平均値)の差を求め、dabsとした。下記式(B)で比が95%〜105%となる場合を効果ありと判定した。
(ベースの血清のdabs)/(試験溶液2のdabs)・・・式(B)
3.結果
プルロニックF68、プルロニックF88、ノイゲンDS601、ニッコールBT−7、ニッコールBT−9、ポリブレンで効果ありと判定した。また、エパン485についても、終濃度を上げることで効果があることが推測された。以上より、これらを非特異的反応回避化合物と判断した。
【0036】
【表2】
注:空欄は試験を実施しなかった。
【0037】
<実施例3> 非特異的反応回避化合物の濃度範囲の検討−2
1.試薬
(1)テイコプラニン非投与ヒトから得た血清(ベース血清)
(2)抗テイコプラニン抗体液(抗体液)
(3)テイコプラニン感作ラテックス試液(ラテックス試液)
以上(1)〜(3)は比較例1、2と同様のものを使用した。
(4)10%BSA−2×PBS(pH7.0)
(5)非特異的反応回避化合物
(a)プルロニックF88
(b)ニッコールBT−9
2.方法
2.4μLのベース血清ならびに10%BSA−2×PBSと、表3中に記載の終濃度の2倍濃度に調製した添加化合物を1:1で混合した溶液(試験溶液3)を180μLの抗体液と混合し、37℃、5分混和した。続いて、60μLのラテックス試液を混合し、37℃、1分後(吸光度I)、1分20秒後(吸光度II)、3分後(吸光度III)、3分20秒後(吸光度IV)にそれぞれ700nmの吸光度を測定した。(吸光度IIと吸光度Iの平均値)と(吸光度IVと吸光度IIIの平均値)の差を求め、dabsとした。
下記式(C)で比が最も小さくなる濃度を単回帰分析から算出した。
(ベース血清のdabs)/(試験溶液3のdabs)・・・式(C)
3.結果
プルロニックF88は、1.75%で、ベース血清との差が最も小さくなった。ニッコールBT−9では、2.5%でベース血清との差が最も小さくなった。
【0038】
【表3】
【0039】
<参考例1> バッファー組成の検討
1.試薬
(1)テイコプラニン非投与ヒトから得た血清(ベース血清)
(2)抗テイコプラニン抗体液(抗体液)
(3)テイコプラニン感作ラテックス試液(ラテックス試液)
以上(1)〜(3)は比較例1、2と同様のものを使用した。
(4)非特異的反応回避化合物
プルロニックF88
2.方法
以下の6通りの試験溶液4を調製した。
・BSA0%、PB−
1.75gの塩化ナトリウム、0.7gのプルロニックF88、2mgのオフロキサシンを秤量し100mLにメスアップした。
・BSA5%、PB−
1.75gの塩化ナトリウム、0.7gのプルロニックF88、5gのBSA、2mgのオフロキサシンを秤量し100mLにメスアップした。
・BSA10%、PB−
1.75gの塩化ナトリウム、0.7gのプルロニックF88、10gのBSA、2mgのオフロキサシンを秤量し100mLにメスアップした。
・BSA0%、PB+
PBS錠剤1錠、0.7gのプルロニックF88、2mgのオフロキサシンを秤量し100mLにメスアップした。
・BSA5%、PB+
PBS錠剤1錠、0.7gのプルロニックF88、5gのBSA、2mgのオフロキサシンを秤量し100mLにメスアップした。
・BSA10%、PB+
PBS錠剤1錠、0.7gのプルロニックF88、10gのBSA、2mgのオフロキサシンを秤量し100mLにメスアップした。
2.4μLのベース血清ならびに上記6種類の試験溶液4を180μLの抗体液と混合し、37℃、5分混和した。続いて、60μLのラテックス試液を混合し、37℃1分後(吸光度I)、1分20秒後(吸光度II)、3分後(吸光度III)、3分20秒後(吸光度IV)にそれぞれ700nmの吸光度を測定した(吸光度I、吸光度II、吸光度III、吸光度IV)。(吸光度IIと吸光度Iの平均値)と(吸光度IVと吸光度IIIの平均値)の差を求め、dabsとした。下記式(D)で比を計算し、バッファー組成の効果を確認した。
(ベース血清のdabs)/(試験溶液4のdabs)・・・式(D)
3.結果
結果を
図2に示す。PBSは、本発明の非特異的反応回避化合物の効果を向上させることが確認された。一方、BSAは非特異的反応回避化合物の効果には影響を与えなかった。
【0040】
以上、比較例1、実施例1〜3、参考例1の結果より、POE−POPブロック共重体、POEアルキルエーテル、POE脂肪酸エステル、多価第四級アミン高分子化合物に、凝集阻害LTIAにおける生じるべき凝集が生じないという非特異的反応を回避できることが確認された。
また、本発明の非特異的反応回避化合物は、濃度換算用標準物質(キャリブレータ)に添加することでその効果を発揮するという従来にない特徴を有していることが確認された。
【0041】
<実施例4> 濃度換算用標準物質を、本発明の非特異的反応回避化合物を含む緩衝液で希釈した場合の検量線と、被検物質を含まないヒト血清で希釈した場合の検量線の比較
1.試薬
(1)テイコプラニン(Sigma Aldrich社製)
(2)テイコプラニン非投与ヒトから得た血清(以下、ベース血清という)
(3)濃度換算用標準物質希釈液(以下、標準物質希釈液という):5%BSA−PBS(pH7.2)、0.002% オフロキサシン、0.7%プルロニックF88
(4)抗テイコプラニン抗体液(抗体液)
(5)テイコプラニン感作ラテックス試液(ラテックス試液)
2.方法
テイコプラニンを標準物質希釈液で0、5、10、25、50、100μg/mLになるように希釈し、キャリブレータとした。また、110μg/mLとなるようテイコプラニンを添加したベース血清を、テイコプラニン非添加のベース血清で10段階(0、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100μg/mL)に希釈し、模擬検体溶液3とした。2.4μLのキャリブレータ、模擬検体溶液3と、180μLの抗テイコプラニン抗体液を混合し、37℃、5分混和した。続いて、60μLのラテックス試液を混合し、37℃、1分後(吸光度I)、1分20秒後(吸光度II)、3分後(吸光度III)、3分20秒後(吸光度IV)に、それぞれ700nmの吸光度を測定した。(吸光度IIと吸光度Iの平均値)と(吸光度IVと吸光度IIIの平均値)の差を求め、dabsとした。
3.結果
結果を
図3に示す。テイコプラニン非添加のベース血清で希釈した模擬検体溶液3(▲)とキャリブレータ(×)のdabsはテイコプラニン濃度0μg〜110μg/mLの濃度範囲すべてで一致した。以上により、本発明の効果が確認された。