特許第6334402号(P6334402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6334402乾式スクラバー内での定常状態の間の乾式吸着剤の投入
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334402
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】乾式スクラバー内での定常状態の間の乾式吸着剤の投入
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/50 20060101AFI20180521BHJP
   B01D 46/04 20060101ALI20180521BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20180521BHJP
   F23L 15/00 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   B01D53/50 100
   B01D46/04 102
   B01D46/04 103
   B01D46/04 104
   F23J15/00 ZZAB
   F23L15/00 A
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-533644(P2014-533644)
(86)(22)【出願日】2012年9月25日
(65)【公表番号】特表2014-534897(P2014-534897A)
(43)【公表日】2014年12月25日
(86)【国際出願番号】US2012057070
(87)【国際公開番号】WO2013049036
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2015年7月1日
【審判番号】不服2017-3412(P2017-3412/J1)
【審判請求日】2017年3月7日
(31)【優先権主張番号】61/540,795
(32)【優先日】2011年9月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/548,147
(32)【優先日】2012年7月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509106500
【氏名又は名称】ザ・バブコック・アンド・ウイルコックス・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Babcock&Wilcox Company
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・ジェイ・ジャンクラ
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・エイ・シルバ
(72)【発明者】
【氏名】エドワード・ジェイ・カンポベネデット
【合議体】
【審判長】 豊永 茂弘
【審判官】 山本 雄一
【審判官】 新居田 知生
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−108132(JP,A)
【文献】 特開2000−317263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34-53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
F23J 13/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼システム内で、通常の作動状態の間に生成される燃焼排出物を低減させる方法であって、前記燃焼システムが、燃焼チャンバーからSCRシステム、空気予熱器、微粒子収集装置及び噴霧乾式吸収装置を連続的に通って、該噴霧乾式吸収装置の下流側のバグハウスへ運ぶガス流路を有し、前記方法が、
前記燃焼チャンバーの下流側、かつ、前記バグハウスの上流側の投入位置で、水酸化カルシウムの乾燥粉末を、燃焼排ガス中に混合させること、
前記噴霧乾式吸収装置内で、前記燃焼排ガス中に水(H2O)を噴霧し、加湿するとともに、前記燃焼排ガスの温度を下げること、および、
前記燃焼排ガスをバグハウスに通し、そこで前記水酸化カルシウムの粉末が、前記燃焼排ガス中の汚染物質を捕捉すること
を備え、
前記投入位置が、前記SCRシステムの下流側で前記空気予熱器の上流側にある方法。
【請求項2】
前記投入位置と前記噴霧乾式吸収装置との間で、前記燃焼排ガスに液体が添加されない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バグハウスが、パルスジェット繊維性フィルター、振動圧縮繊維性フィルター、または、逆流ガス繊維性フィルターである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記燃焼排ガス中に混合される水酸化カルシウムの乾燥粉末の量が、当該燃焼排ガスの排出レベルに応じて、時間とともに変化する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記噴霧乾式吸収装置に流入する前記燃焼排ガスが、220°F(104.4℃)以上の温度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記燃焼チャンバーから流出する前記燃焼排ガスが、400°F(204.4℃)以上の温度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記燃焼システムが、ボイラー、キルン、加熱炉、溶鉱炉、ロースター、加熱炉を有するボイラーを用いる発電システムのバッテリー、ヒーター、オーブン、および、焼却炉からなるグループから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
噴霧乾式吸収装置を用いて、燃焼排ガスを清浄なものとする燃焼システムを作動させるための方法であって、前記燃焼システムが、燃焼チャンバーからSCRシステム、空気予熱器、微粒子収集装置及び噴霧乾式吸収装置を連続的に通って、該噴霧乾式吸収装置の下流側のバグハウスへ運ぶガス流路を有し、該方法が、
燃焼チャンバーの下流側、かつ、前記バグハウスの上流側の投入位置で、前記燃焼排ガス中に、水酸化カルシウムの乾燥粉末を混合させること、
前記噴霧乾式吸収装置内で、前記燃焼排ガス中に水(H2O)を噴霧し、微粒子を含む清浄な燃焼排ガスとすること、および、
バグハウス内で、前記微粒子を含む清浄な燃焼排ガス中の該微粒子を堆積させ、燃焼排出物を低減させるフィルターケーキを形成すること
を備え、
前記投入位置が、前記SCRシステムの下流側、かつ、前記燃焼チャンバーと前記噴霧乾式吸収装置との間に位置する空気予熱器の上流側にある方法。
【請求項9】
前記燃焼排ガス中に投入される水酸化カルシウムの乾燥粉末の量が、排出レベルを所定値と比較することにより決定される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記投入位置と前記噴霧乾式吸収装置との間で、前記燃焼排ガス中に液体が添加されない、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記噴霧乾式吸収装置内で噴霧される前記水が、補助ノズルを通って噴霧され、前記噴霧乾式吸収装置の噴霧器が作動してない、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記噴霧乾式吸収装置に流入する前記燃焼排ガスが、220°F(104.4℃)以上の温度を有する、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記燃焼チャンバーを流出する燃焼排ガスが、400°F(204.4℃)以上の温度を有する、請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記燃焼システムが、ボイラー、キルン、加熱炉、溶鉱炉、ロースター、加熱炉を有するボイラーを用いる発電システムのバッテリー、ヒーター、オーブン、および、焼却炉からなるグループから選択される、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2011年9月29日に出願された米国仮特許出願番号61/540,795号の優先権を主張するものである。これにより、この出願の開示は、その全体を参照により完全に取り込まれる。
【0002】
本開示は概して、通常の作動中に、乾式スクラバー燃焼排ガス脱硫システムを用いる燃焼の間にわたって生成される燃焼排ガスから、微粒子および、その他の汚染物質を除去することに関するものである。特に、この開示は、ガス流中に乾式吸着剤を投入するとともに、ガス流を噴霧乾式吸収装置に通過させて、燃焼システム内で汚染物質を形成する化石燃料を使用する間、バグハウス内に吸着剤を分散させることにより、二酸化硫黄(SO2)、三酸化硫黄(SO3)、HClおよび、その他の酸性ガスを捕捉するための、新しく有用な方法およびシステムに関するものである。
【背景技術】
【0003】
燃焼の間にわたって、燃料中の化学エネルギーは、熱ヒート(thermal heat)に変換され、これは、異なる利用のために様々な形態で使用することができる。燃焼プロセスで使用される燃料には、様々な固体、液体およびガス状物質が含まれることがあり、ここには、石炭、石油(軽油、第2号、Bunker Cまたは第6号)、天然ガス、木材、タイヤ、バイオマス等が含まれる。
【0004】
燃焼により燃料は多数の化合物に変換される。水(H2O)および二酸化炭素(CO2)は、完全燃焼の一次生成物である。しかしながら、燃料中の化学成分を含む他の燃焼反応は、望ましくない副生成物をもたらす。使用される燃料に応じて、そのような副生成物には、微粒子(飛散灰)、硫黄酸化物(SOX)もしくは酸化窒素(NOX)のような酸性ガス、水銀もしくはヒ素のような金属、一酸化炭素(CO)、および、炭化水素(HC)が含まれることがある。これらの多くの副生成物の排出レベルは、アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)のような政府事業体によって規制されている。
【0005】
そのような副生成物を燃焼排ガスから除去するため、様々な異なる技術が存在する。噴霧乾式化学吸収または乾式洗浄として知られる一つの方法では、細かい霧状にされたアルカリ性水溶液またはスラリーを、燃料が燃焼される燃焼チャンバーの下流側で、高温の燃焼排ガスに噴霧する。汚染物質を含むアルカリ性試薬、および、微粒子が形成される。水は、蒸発するとともに、高温の燃焼排ガスを冷却する。排出される清浄な燃焼排ガスは一般に、水含有量が約10%〜約15%である。そして、燃焼排ガスは、微粒子収集装置、通常はバグハウスに移動し、そこでは、燃焼排ガスから微粒子が除去される。その後、スタックへと送られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
加熱炉を有するボイラー等の燃焼システムが、周辺温度のような冷却状態から起動される場合、加熱炉は通常、天然ガスまたはディーゼル(第2号)油を燃焼させ、石炭に切り替える前にボイラーを暖機運転(“warm up”)させる。石炭の燃焼が始まり得る前に、約400°F〜約500°Fの加熱炉温度が必要である。様々な始動状態および安全要件に応じて、加熱炉は、定常状態に至る前に、数回にわたって起動および停止させることができる。完全な始動を達成するには、遭遇する問題に応じて、8時間から最大2日ほどかかることがある。
【0007】
乾式洗浄脱硫プロセスは、低い温度では十分に稼働しない。特に、噴霧乾式吸収装置を用いるため、燃焼排ガスの温度は通常、少なくとも220°F必要であり、それにより、水を完全に蒸発させることができる。始動の間、SOX及び、その他の汚染物質がまだ生成されているにも関わらず、噴霧乾式吸収装置を通過する燃焼排ガスの温度は、この閾値温度を下回ることがある。また、加熱炉は一般に、燃焼排ガスが噴霧乾式吸収装置内で220°Fの温度に到達する前に、400°F〜500°Fの石炭作動温度に達する。このことは、始動の間におけるSOXのより高い排出量をもたらす。また、バグハウスは一般に、噴霧乾式吸収装置が、大量のアルカリ性物質を堆積させるとともに、大量のSO2の除去を実現し始めた後、30〜60分の作動を必要とする。
【0008】
これまでは、排出規制は、始動、停止および誤作動等の、「想定外」(“upset”)の期間に及んでいなかった。しかしながら、規制上の制限の拡大により、そのような排出量を低減させることが望ましい。始動の間におけるそのような排出を低減させることのできる方法は、極めて有益なものとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここでは、脱硫のための乾式スクラバーを用いる汚染制御システム内で、定常作動状態の間におけるSOX排出量を低減させるための様々な方法およびシステムを開示する。簡単に述べると、燃焼チャンバーが通常作動状態(すなわち高温)にある間に、水酸化カルシウムの乾燥粉末を、燃焼排ガス中に投入する。かかる粉末は、噴霧乾式吸収装置の上流側に投入される。その結果としての水酸化カルシウム粉末はその後、バグハウスの下流側で収集されて、SOX排出量の低減に有効なフィルターケーキを形成する。これは、乾式スクラバーの脱硫能力を増大させること、または、排出量を削減することに用いることができる。
【0010】
実施形態では、燃焼システム内での通常の作動状態の間に生成される燃焼排出物を低減させるための方法を開示する。この燃焼システムは、燃焼チャンバーから噴霧乾式吸収装置を通って、その噴霧乾式吸収装置の下流側のバグハウスに延びるガス流路を有するものである。燃焼チャンバーにより生成される燃焼排ガスは、上記のガス流路を通って流れる。水酸化カルシウムの乾燥粉末は、一般的には空気であるキャリヤガス中に混合され、空気圧で、燃焼チャンバーの下流側かつバグハウスの上流側の投入位置へと搬送される。ここでは、水酸化カルシウムの乾燥粉末は、ガス流路内で、燃焼排ガス中に吹き込まれて、これと混合する。噴霧乾式吸収装置内では、燃焼排ガス中に水を噴霧し、加湿するとともに、燃焼排ガスの温度を下げる。そして、燃焼排ガスは、バグハウスを通過し、バグハウス内では、水酸化カルシウムの粉末が堆積して、燃焼排出物を低減させるフィルターケーキを形成する。
【0011】
特定の実施形態では、上記の投入位置と噴霧乾式吸収装置との間で、燃焼排ガスに液体を添加しない。
【0012】
噴霧乾式スクラバー内で噴霧される水は、バグハウスから固体を再利用するための再利用システムによりもたらされ得る。当該水はまた、単なる水とするよりも、アルカリ性スラリーの形態とすることができる。
【0013】
ガス流路は、燃焼チャンバーと噴霧乾式吸収装置との間に位置する空気予熱器を通って延びることがある。上記の投入位置は、空気予熱器と噴霧乾式吸収装置との間に位置させることができる。あるいは、投入位置は、空気予熱器の上流側とする。微粒子収集装置もまた、その微粒子収集装置の下流側の投入位置を有する空気予熱器と、噴霧乾式吸収装置との間に位置させることができる。
【0014】
上記の投入位置はまた、噴霧乾式吸収装置とバグハウスとの間とすることもできる。
【0015】
噴霧乾式吸収装置の下流側のバグハウスは、パルスジェット繊維性フィルターまたは逆流ガス繊維性フィルターとすることができる。
【0016】
燃焼排ガス中に混合される水酸化カルシウムの乾燥粉末の量は、燃焼排ガスの排出レベル(すなわち削減シナリオ)に応じて、時間とともに変化する。
【0017】
噴霧乾式吸収装置内で燃焼排ガス中に噴霧される水は、特に、アルカリ性スラリーが噴霧乾式吸収装置内で噴霧されていないとき(すなわち、誤作動または増大シナリオ)、水の形態をなすものとすることができる。
【0018】
噴霧乾式吸収装置に流入する燃焼排ガスは、約220°F以上の温度を有することがある。加熱炉を流出する燃焼排ガスは、400°F以上の温度を有することがある。
【0019】
またここでは、燃焼排ガスを清浄なものとするために噴霧乾式吸収装置を用いるボイラーを作動させる方法を開示する。水酸化カルシウムの乾燥粉末は、ボイラーの下流側かつ噴霧乾式吸収装置の上流側の投入位置で、燃焼排ガス中に混合される。そして水は、噴霧乾式吸収装置内で燃焼排ガス中に噴霧されて、微粒子を含む清浄な燃焼排ガスを生じさせる。微粒子を含む燃焼排ガス中の微粒子はその後、バグハウス内に堆積し、燃焼排出物を低減させるフィルターケーキを形成する。これは、脱硫を確保すること、または、噴霧乾式吸収装置の定期的なメンテナンスの間のレベルの変化への迅速な応答を可能にする方法で排出レベルを削減すること、または、一般に燃焼排ガスの脱硫に用いられる石灰スラリーを補完ないし置換することのバックアップ(a back-up)として用いることができる。
【0020】
燃焼排ガス中に投入される水酸化カルシウムの乾燥粉末の量は、排出レベルを所定値と比較することにより決定することができる。
【0021】
噴霧乾式吸収装置中に噴霧される水は、単なる水(すなわちH2O)の形態、または、アルカリ性スラリー(すなわち、水に、水酸化カルシウムのようなアルカリ性吸着剤を添加したもの)の形態とすることができる。水はまた、バグハウスから固体を再利用するための再利用システムにより、または、噴霧器が作動していないときは補助ノズルを通って、もたらされるものとすることができる。いくつかの実施形態では、噴霧乾式吸収装置に流入する燃焼排ガスは、220°F以上の温度を有する。つまり、アルカリ性スラリーが、十分に蒸発し得る状態の間である。加熱炉から流出する燃焼排ガスは、400°F以上の温度を有することがある。
【0022】
以下に、これらの、及び他の非限定的な特徴事項を、より詳細に説明する。
【0023】
以下の図面の簡単な説明は、ここに開示する例示的な実施形態を説明する目的で示すものであり、これを限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】乾式脱硫システムを有する従来のボイラーを示す図である。
図2】本開示で説明するような乾式脱硫システムと水酸化カルシウム投入システムとを組み合わせたシステムを示す図である。
図3】パルスジェット繊維性フィルター内のフィルターバッグの図である。
図4】噴霧乾式吸収装置の断面図である。
図5】乾式吸収剤投入システムの主な要素の図である。
図6】水酸化カルシウムの投入がある実際の排出量と、水酸化カルシウムの投入がない推定排出量を示す排出量―時間のグラフである。
図7】本開示の方法を示す一般的なプロセス図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付図面を参照することにより、ここに開示する要素、プロセス及び装置をより完全に理解することができる。これらの図は、本開示を明示することの便利さ及び容易さに基く、単なる略図に過ぎず、それ故に、装置ないしその要素の相対的なサイズ及び寸法を示すこと、及び/又は、例示的な実施形態の範囲を規定もしくは制限することを意図するものではない。
【0026】
以下の説明においては、明瞭さのために具体的な用語を用いるが、それらの用語は、図面に図示するために選択された実施形態の特定の構造だけに言及することを意図するものであり、本開示の範囲を規定もしくは限定することを意図するものではない。図面及び下記の説明では、類似の数字表示は、類似の機能の要素を指し示すものと理解される。
【0027】
単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が他の場合を明確に規定しない限り、複数表示を含むものとする。
【0028】
明細書及び特許請求の範囲では、「〜を備える」との用語は、「〜からなる」及び「実質的に〜からなる」という実施形態を含むことができる。
【0029】
ここに開示される全ての範囲は、列挙される端点を含み、独立して結合可能である(たとえば、「250°F〜400°F」の範囲は、端点である250°F及び400°F並びに、中間値を含む)。ここに開示される任意の値及び範囲の端点は、正確な範囲もしくは値に限定されない。それらは、これらの範囲及び/又は値の近似値を含み得るほど、厳密でないものである。
【0030】
ここでは、近似する語は、関連する基本的な機能の変化をもたらすことなしに変化し得る任意の定量的な表現に変更するために適用することができる。従って、「約」及び「実質的に」のような単一の用語又は複数の用語によって変更された値は、場合によっては、特定された正確な値に限定されないことがある。少なくともいくつかの例では、近似する語は、当該値を測定するための機器の精度に対応し得る。「約」との修飾語句は、二つの端点の明白な値によって規定される範囲を開示するものと考えられるべきである。たとえば、「約2〜約4」との表現はまた、「2〜4」の範囲も開示する。
「消石灰(hydrated lime)」との用語は、水酸化カルシウムについて言及しており、これはまた、Ca(OH)2として知られている。ここで用いる「水和(hydrated)」との用語は、水分子が存在することを意味するものではない。
【0031】
「石灰スラリー」との用語は、水を含む水酸化カルシウムの混合物について言及するために用いられる。他のカルシウム吸着剤は、たとえば、石灰石または生石灰を含む。「石灰石」との用語は、CaCO3としても知られる炭酸カルシウムについて言及している。「生石灰」との用語は、酸化カルシウム、すなわちCaOについて言及している。
【0032】
本開示は、他の要素「上流側」および「下流側」である要素について言及する。これらの二つの用語は、他の指定要素に関連する。特定の要素は、流路が、指定要素を通過する前にその特定の要素を通過する場合、当該指定要素の「上流側」である。同様に、特定の要素は、流路が、指定要素を通過する後にその特定の要素を通過する場合、当該指定要素の「下流側」である。
【0033】
本開示は、乾式スクラバーを脱硫に用いる汚染防止システムの定常作動状態の間におけるSOX排出量を減らすための様々な方法及びシステムに関するものである。極めて一般的には、内部で燃料が燃焼される燃焼チャンバーを含む燃焼システムにより、燃焼排ガスが生成される。燃焼チャンバーが、正常作動状態(すなわち高い温度)にある間は、燃焼排ガス中に、水酸化カルシウムの乾燥粉末が投入される。かかる粉末は、噴霧乾式吸収装置の上流側に投入される。結果として生じる水酸化カルシウム粉末は、下流側のバグハウスに収集されて、SOX排出量の低減に有効なフィルターケーキを形成する。
【0034】
一般に、そのような方法は、内部で燃焼が起こるどのようなシステムにも用いることができると考えられている。たとえば、発電したり、特定の製品を製造したり、または、単に特定の燃料を焼却処分したりするといったどのような目的にも、当該燃焼は用いられ得る。本方法を適用することのできる例示的な燃焼システムには、上述した燃焼チャンバーとして加熱炉を有するボイラーを用いる発電システムが含まれ、これには、セメントキルン、アーク炉、ガラス炉、溶鉱炉(銅、金、チタン等)、ペレタイザー・ロースター、高炉、コークスオーブンバッテリー、化学的燃焼ヒーター(chemical fired heaters)、精錬オーブン、および、焼却炉(医療廃棄物、都市固形廃棄物等)がある。ここでは、「燃料チャンバー」との用語は、内部で燃焼が起こるシステム内の特定の構造に言及するために用いている。
【0035】
図1に、ボイラー100および下流側の脱硫システム110を有する例示的な発電システムを大まかに示す。粉砕機111からの石炭等の化石燃料112、および、空気114は、加熱炉105内で燃焼されて、燃焼排ガス120を生成させる。燃焼排ガス120は、エコノマイザー116を通過し、このエコノマイザー116は、ボイラー内で用いられる水の予熱に用いられ、蒸気を生成するとともに、燃焼排ガス120を冷却する。エコノマイザー116の上流側の他の熱伝達面は図示しない。そして、燃焼排ガス120は、存在してもしなくてもよい選択接触還元(SCR)システム130に流入し、ここでは、燃焼排ガス120から酸化窒素(NOX)を除去する。次いで、燃焼排ガス120は、空気予熱器140を通過し、それにより、さらに燃焼排ガス120を冷却するとともに、加熱炉105に流入する空気114を加熱する。この空気予熱器140を通過した後、燃焼排ガス120は通常、約250〜約400°F(121〜204℃)の温度を有する。そして、燃焼排ガス120は、微粒子収集装置150を通過することがあり、ここで、飛散灰及び他の大粒子を収集する。続いて燃焼排ガスは、乾式スクラバーまたは噴霧乾式吸収装置160内に入る。ここでは、霧状のアルカリ性スラリー162を燃焼排ガス中に噴射し、硫黄酸化物(SOX)と反応させるとともに、燃焼排ガス120を、約140〜約210°F(60〜99℃)の範囲に更に冷却する。上記のスラリー中の水は蒸発し、その結果として清浄なものとなって粒子を含む燃焼排ガス120は、バグハウスまたは電気集塵装置等の微粒子収集装置170に運ばれ、燃焼排ガス120から当該粒子が除去される。そして、清浄なものとなった燃焼排ガス120は、スタック180に送られる。バグハウスからのアルカリ性粒子を収集し、それらを再利用タンク180内で水176と混合させて、噴霧乾式吸収装置160内で用いることのできるアルカリ性スラリー162を生成するため、必要に応じて、微粒子収集装置170からの再循環流172を利用することができる。あるいは、噴霧乾式吸収装置160では、新たなスラリー164を用いることができる。粒子はまた、参照数字174で示すように、廃棄するために微粒子収集装置170から除去することができる。
【0036】
本開示の方法では、水酸化カルシウムは、バグハウス内に堆積し、通常の作動(すなわち定常作動状態)の間にわたって、酸の高効率除去をもたらすとともに、これを向上させる。この点において、燃焼排ガスは、バグハウス内のフィルター上のフィルターケーキを通って移動しなければならならず、このことは、燃焼排ガスとアルカリ性の水酸化カルシウム生成物との密接な接触をもたらし、フィルターケーキにより、燃焼排ガス中の気相酸性ガス(SOX等)の吸収を促進させる。作動状況に応じて、水酸化カルシウムの乾燥粉末は、脱硫システムの脱硫能力を増大させるために用いることができ、または、発電システム全体の排出レベルを削減するために用いることができる。より一般的には、本方法は、燃焼排ガスから微粒子を除去するために用いることができる。
【0037】
ここでは、「定常作動状態」との用語は、噴霧乾式吸収装置を通過する燃焼排ガスの温度が、220°F(おおよそ104℃)以上であるときの期間について言及している。
【0038】
図2に、燃焼システム200、下流側の脱硫システム210および、水酸化カルシウムの乾燥粉末投入システム290を有する本開示の例示的なシステムを大まかに示す。図1と同様に、空気214及び、粉砕機211からの石炭212は、燃焼チャンバー205内で燃焼されて、燃焼排ガス220の生成をもたらす。一般的に言えば、燃焼排ガスは、ガス流路に沿って移動するキャリヤガスである。燃焼排ガスは、エコノマイザー216(エコノマイザーの上流側の他の熱伝達面は図示しない)及び、存在してもしなくてもよいSCRシステム230を通る。このSCRシステム230では、燃焼排ガスからNOXを除去する。燃焼排ガスは、空気予熱器240を通過し、続いて噴霧乾式吸収装置260内に入る。必要に応じて、選択的な微粒子収集装置250を、空気予熱器240と噴霧乾式吸収装置260との間に配置することができ、それにより、飛散灰及び他の大粒子を収集する。噴霧乾式吸収装置260内では、霧状のアルカリ性スラリー262、たとえば石灰スラリーを、燃焼排ガス220中に噴霧し、燃焼排ガスを清浄なものとし、また冷却する。その結果として清浄なものとなって粒子を含む燃焼排ガス220は、バグハウス270に運ばれて、燃焼排ガスから粒子を除去する。そして、清浄な燃焼排ガス220はスタック280へと送られる。必要に応じて、バグハウスからの未反応の粒子を収集するとともに、それらを再利用タンク280内の水276と混合させて、噴霧乾式吸収装置内で用いられるアルカリ性スラリー262を生成するため、バグハウス270からの再循環流272を利用することができる。あるいは、噴霧乾式吸収装置260では、新たなスラリー264を用いることができる。バグハウスからの粒子はまた、参照数字274で示すように、廃棄することができる。
【0039】
燃焼チャンバー205は、空気予熱器240の上流側にあり、ここは、噴霧乾式吸収装置260の上流側である。バグハウス270は、噴霧乾式吸収装置260の下流側にある。言い換えれば、噴霧乾式吸収装置260は、空気予熱器240とバグハウス270との間に位置する。SCRシステム230は、存在する場合は、加熱炉205と空気予熱器240との間に位置する。
【0040】
本方法は、流路220が、燃焼システムと脱硫システムとの間に存在することを検討するものである。燃焼排ガスは、ガス流路に沿って流動ないし移動する。水酸化カルシウムの粉末は、燃焼チャンバー205の下流側かつ、バグハウス270の上流側の投入位置で、燃焼排ガス中に投入される。噴霧乾式吸収装置260内の当該キャリヤガス中には、水を噴霧して、燃焼排ガスを冷却するとともに加湿する。この水は、単なる水(すなわちH2O)または、(水及びアルカリ性吸着剤を含む)アルカリ性スラリーとすることができる。そして、水酸化カルシウム粉末は、バグハウス270内に堆積し、排出量の低減に用いるフィルターケーキを形成する。
【0041】
水酸化カルシウムの粉末投入システム290は、水酸化カルシウム供給源292を含む。水酸化カルシウム粉末は、三箇所の異なる位置A、B、Cで、脱硫システム内に投入することができると考えられる。これらの三箇所の投入位置は全て、燃焼チャンバー205の下流側で、バグハウス270の上流側である。特に、燃焼排ガスないしキャリヤガスの温度は、1000°F未満とすべきであり、それにより、消石灰の安定性を維持することができる。
【0042】
第一投入位置Aは、空気予熱器240の下流側で、噴霧乾式吸収装置260の上流側である。言い換えれば、投入位置Aは、空気予熱器240と噴霧乾式吸収装置260との間にある。選択的な微粒子収集装置250は、投入位置Aの上流側とすべきである。
【0043】
第二投入位置Bは、燃焼チャンバー205の下流側で、空気予熱器240の上流側である。第二投入位置Bはまた、SCRシステム230の下流側と説明することもできる。
【0044】
第三投入位置Cは、噴霧乾式吸収装置260の下流側である。言い換えれば、投入位置Cは、噴霧乾式吸収装置260とバグハウス270との間にある。
【0045】
水酸化カルシウムの乾燥粉末はまた、上記の様々な位置で同時に投入することができる。図2に戻って参照すると、噴霧乾式吸収装置260内で噴霧される水は、異なる水源によってもたらされるものとすることができ、あるいは、いくつかの実施形態では、再利用システム280によってもたらされ、または、アルカリ性スラリー262によってもたらされるものとすることができる。
【0046】
選択的な微粒子収集装置250は、様々な実施形態で、電気集塵装置(ESP)またはバグハウスのいずれかである。当該技術分野では、たとえば、逆流ガス繊維性フィルター(a reverse gas fabric filter)、振動圧縮繊維性フィルター(a shake deflate fabric filter)および、パルスジェット繊維性フィルター(a pulse jet fabric filter)等の異なるタイプのバグハウスが知られている。
【0047】
噴霧乾式吸収装置260の下流側のバグハウス270は、パルスジェット繊維性フィルター(PJFF)または逆流ガス繊維性フィルターであることが望ましい。この点において、ESPと比較したバグハウスの脱硫能力により、この位置ではバグハウスはESPより好ましい。言い換えれば、バグハウスは、気相にある汚染物質を捕集することができ、この一方で、ESPは、粒子を捕まえるだけで、気相汚染物質を有意に捕集しない。一般に、バグハウス270に流入する燃焼排ガスは、フィルターケーキを通過すべきであり、それにより、SO2、SO3およびHClのような酸性ガスを除去することができる。
【0048】
図3は、パルスジェット繊維性フィルターの略図である。バグハウスは一般に、多数の区画を含み、それぞれの区画には、最大数百もの長さで、鉛直方向に支持された小径繊維バッグが含まれる。パルスジェット繊維性フィルター(PJFF)では、バッグ320は、管板330から垂下している。微粒子を含む燃焼排ガスは、(実線の矢印で示すように)当該バッグの外側から、(白抜き矢印で示すように)バッグの内部へと流動する。燃焼排ガスは、多孔性バッグ材料を通過し、微粒子は取り残されて、バッグの外部にフィルターケーキ340を形成する。圧縮空気のパルスは、開口上部322からバッグ内に向いており、衝撃波をもたらしてバッグ長さの下方に進行して、フィルターケーキを除去する。
【0049】
水酸化カルシウムは、その塩が水に溶解しないことから用いられる。一方、ナトリウム吸着剤は一般に可溶であり、それ故に、あまり望ましくない。また、水酸化カルシウムは、生石灰よりも安全であり、水と結合した際に熱を発する。
【0050】
出願人は、粉末状の水酸化カルシウムの反応性が、石灰スラリー内の水酸化カルシウムの反応性に相当することを見出した。このことは、乾式脱硫システムが、様々な条件下で十分有効に作動することを可能にする。特に、水酸化カルシウムの乾燥粉末投入システムは、アルカリ性スラリー供給システムでは失敗する場合の、ボイラーの通常運転を可能にする。水酸化カルシウム粉末は、アルカリ性スラリーと比較した場合に大量に添加することができ、それにより、アルカリ性スラリーの損失を補填し、許容範囲の排出レベルを維持できる。たとえば、噴霧器が詰まった場合、噴霧器を取り外すことができ、また、予備の噴霧器を取り付けて、燃焼排ガス中への水の噴霧を継続することができる。あるいは、補助ノズルを介して水を導入することができる。水酸化カルシウム粉末は、バグハウスの脱硫能力を維持するために用いることができる。
【0051】
他の動作シナリオは、噴霧乾式吸収装置内でのアルカリ性スラリーの噴霧を作動させ、それにより、排出レベルを所定値に近づけるべく維持するものである。排出が所定値に近づく、または超えるにつれて、排出レベルを許容レベルに戻すべく調整するため、水酸化カルシウム粉末を即座に添加することができる。
【0052】
更なる他の作動シナリオは、作動プラントがアルカリ性スラリーの供給不足である場合に起こる。ここでは、噴霧器スラリーを増やして許容排出レベルに維持するため、水酸化カルシウム粉末を用いることができる。
【0053】
典型的には、噴霧乾式吸収装置260の上流側(すなわち、投入位置AまたはB)に水酸化カルシウム粉末を投入することが望ましい。これは、噴霧乾式吸収装置が、当該粉末をバグハウス270の至る箇所に適切に散布することを促進させるからである。図4は、通常は脱硫システム内で使用される噴霧乾式吸収装置400の断面図である。噴霧乾式吸収装置は通常、吸収装置の底部に円錐の頂点を有する円錐台形状(a frustoconical shape)のハウジング410を有する。しかしながら、噴霧乾式吸収装置はまた、当該円錐に代えて平坦な底部を有するものとすることができる。空気加熱器から流れてきた燃焼排ガス420は、二つの流れ422、424に分かれることができる。但し、このことは常に当てはまるわけではなく、本開示に必須ではない。一方の流れ422は、環状をなす上方側ガス分散機430に向けられている。他方の流れ424は、下方側ガス分散機440に向けられている。噴霧器450は、吸収装置ハウジングの頂部の中央を通って延びて、燃焼排ガス中に石灰スラリーを噴霧する。燃焼排ガスは、ガス分散機を介して、噴霧乾式吸収装置400に流入する。噴霧乾式吸収装置は、燃焼排ガスの、スラリーとの良好な混合を確保するよう設計されるものであり、また、スラリーを乾燥するのに十分な滞留時間を与え、内部の堆積なしに、自由流動固形物を生成することのできる大きさとする。噴霧乾式吸収装置によって水酸化カルシウム粉末に与えられる混合および乱流は、水酸化カルシウムが、バグハウス内のフィルターバッグの至る箇所で、より望ましく分散することを確保する。噴霧乾式吸収装置内では、噴霧器450により、水酸化カルシウムの乾燥粉末に水が添加されて、水酸化カルシウムスラリーが形成される。SO2の吸収のための反応機構が水分子の存在を必要とするので、バグハウス内で、十分な脱硫能力を得るため、フィルターケーキには、そのような水が必要である。蒸発した水酸化カルシウムスラリーは、排出口460を通って噴霧乾式吸収装置から排出されて、バグハウスへと向かう。
【0054】
図5は、一般的な、消石灰の乾燥吸着剤投入システムの概略図である。消石灰は、符号510のように、トラックまたは鉄道のいずれによっても配送することができる(ここではトラックの積卸を図示している)。周辺空気512は、トラック内に引き込まれて、消石灰を取り出し、貯蔵サイロ520に試薬を移動させる。当該試薬は、貯蔵サイロ520から、一連のバルブ522、フィーダー524およびホッパー526、528を介して、ロータリー式エアロック530内へと流れる。ここでは、試薬は、キャリヤガス540と混合し、空気圧によりガス流路(図2参照)内の投入位置に搬送される。キャリヤガス、典型的には空気は、キャリヤガス送風機542によって与えられ、このキャリヤガス送風機542は、キャリヤガスを空気冷却器544に通して、空気の温度を減少させ、試薬の早期の焼成を防止する。注目すべきは、本システムでは、投入位置と噴霧乾式吸収装置との間のガス流路内で、液体が投入されないということである。これは、湿式もしくは乾式スクラバーの上流側で、燃焼排ガス中に溶液及びスラリーが投入される従来のシステム(たとえば、Wilhelmによる米国特許第6,126,910号参照)とは対照的である。これはまた、乾式カルシウム吸収剤が投入された後に、配管内の水により加湿するシステム(たとえば、Huntによる米国特許第5,165,903号参照)とも対照的である。これらの従来システムでは、脱硫システムに入る前に、選択された汚染物質を燃焼排ガスから除去することが、所望の目的である。この一方で、本方法の目的は、アルカリ性試薬(消石灰)の代替的な源を与えるとともに、噴霧乾式吸収装置内の消石灰濃度を増加させ、また、バグハウスを水酸化カルシウムで覆い、それにより、脱硫をもたらし、脱硫能力を高めることにある。噴霧乾式吸収装置に先立って、水ないし液体を添加することは、ガスから抽出されてバグハウスに移動できない水酸化カルシウムの望ましくない状態を引き起こすことがある。
【0055】
本開示の方法は、排出レベルの変化にタイミング良く対応する手段を与えることにより、許容可能な酸性ガス排出レベルに対処し、またそのレベル内で作動するために、脱硫システムの能力を改善するものである。燃焼システム作動をメンテナンスするなかで、繰り返し見られる一つのテーマは、ある問題を解決するために必要となる時間である。水酸化カルシウム粉末は、迅速に添加することができ、そして、優れた反応が得られる。この方法はまた、当該プロセスにおいて水を添加することを要しない乾式吸着剤をもたらす。
【0056】
図7は、本開示の方法を示す一般的なプロセス図である。燃焼システム700は、内部で燃焼が生じて燃焼排ガスの生成をもたらす燃焼チャンバー705を含む。燃焼排ガスは、ガス流路720に沿って、噴霧乾式吸収装置760を通って、その噴霧乾式吸収装置の下流側のバグハウス770へと移動する。水酸化カルシウムの乾燥粉末は、燃焼チャンバー705とバグハウス770との間で、(ガス流路720内の)燃焼排ガスと混合する。たとえば、水酸化カルシウム粉末は、噴霧乾式吸収装置の上流側(参照数字794)で、または、噴霧乾式吸収装置の下流側(参照数字796)で添加することができる。噴霧乾式吸収装置760の内部では、燃焼排ガス中に水(参照数字762)を噴霧し、燃焼排ガスを加湿および冷却する。燃焼排ガスはバグハウス770に移動する。水酸化カルシウムは、燃焼排ガス中の汚染物質または微粒子を捕捉する。清浄な燃焼排ガスは、スタック780または、それと同様の装置へと送られ、大気中に解放される。
【0057】
この開示の方法を実践するための設計は、当該技術の通常の能力の範囲内である。これらの方法の実践を可能するために必要となるバルブ、パイプ、センサー、接続部および付属品はまた、一般に市販されている。
【実施例】
【0058】
120MWg(グロスメガワット)のパワープラントは、図2に示すようなレイアウトであった。起動の間および、石灰スラリーに代替する間にわたって、水酸化カルシウム粉末の使用を行った。水酸化カルシウム粉末は、投入位置AおよびCで投入した。実際のスタックSO2排出量を図6に示す。y軸は、排出されたSO2の量であり、その単位はlb/MBtu(百万BTUs当たりのポンド)である。x軸は、時刻、すなわち、午前零時(0:00)〜12:00pmである。参考までに、規制されるスタックSO2排出量限度である0.09lb/MBtuを示している。二つの線を示しており、一方は実際の排出量であり、もう一方は、水酸化カルシウム粉末が投入されなかった場合の推定排出量である。注目すべきは、この図では、おおよそ12:30am、おおよそ2:45amおよび、おおよそ5:45amの三回の起動を試みたことである。
【0059】
例示的な実施形態を参照しつつ、本開示を説明した。前記の詳細な説明を読んで理解した上で、改良や変更が生じるであろうことは言うまでもない。そのような改良や変更が、添付の特許請求の範囲および、その均等なものの範囲内に入る限りにおいて、その全てが本開示に含まれるものとして解釈されることを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7