特許第6334419号(P6334419)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334419
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/02 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
   D06F33/02 J
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-5488(P2015-5488)
(22)【出願日】2015年1月15日
(65)【公開番号】特開2016-129633(P2016-129633A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2017年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立アプライアンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】橋本 翔太
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 真理
(72)【発明者】
【氏名】綿引 伸一
(72)【発明者】
【氏名】吉野 知也
【審査官】 柿沼 善一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−194090(JP,A)
【文献】 特開2001−137596(JP,A)
【文献】 特開2006−141566(JP,A)
【文献】 特開2002−166089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外枠内に配される外槽と,
前記外槽内に回転可能に設けられるとともに洗濯物を収容する内槽と,
前記内槽を駆動するモータと,
前記モータの回転速度を検知する回転速度検知手段と,
前記モータの減速率を制御する運転制御手段を具備し,
前記運転制御手段は、前記モータの減速開始時点の回転速度と閾値との大小を比較し、該比較結果に応じて、前記モータの減速率を切り替えることを特徴とした洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載の洗濯機であって,
前記運転制御手段は、前記モータの複数の回転数領域毎に減速率のテーブルを保持し,前記テーブルを基に、対応した減速率に切り替えることを特徴とした洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗濯機は、槽内に水をためて攪拌動作を実行する洗い行程やすすぎ行程と、槽を高速回転させる脱水行程がある。脱水行程では、規定回転数・規定時間にて槽回転動作させ、動作終了時にはモータブレーキにより減速し、モータが完全に停止したことをセンサによって確認した上で次の行程に移行する。脱水行程での槽回転動作の際、モータの共振により特定の回転数にて振動が大きくなる場合があり、振動により騒音が大きくなる可能性がある。特開2006−141566号公報(特許文献1)では槽の振動量と回転速度を基に目標回転数や最大回転数を調整している。
【0003】
脱水時の槽回転加速動作において共振区間を通過させる場合、回転加速度が小さいと共振区間の実行時間が長くなるため振動が大きくなる傾向があり、また、振動大となる時間も長い。そのため、共振区間付近の加速率を大きくしてより短い時間で共振区間を通過させることにより、脱水行程で発生する振動・騒音を抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−141566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、脱水行程の槽回転動作が終了してモータを停止させる場合、減速率が大きい程モータに流れる電流が大きいため電磁加振力が大きくなる。そのため、モータの特性によっては大きい減速率で共振区間を通過させても振動・騒音を低減できない場合がある。一方、モータの減速率を小さくし過ぎてしまうと、脱水行程の実行時間が長くなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を鑑みて、騒音を低減すると共に、脱水行程の実行時間の長期化を防ぐことが可能な洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため,その一例として、外枠内に配される外槽と,前記外槽内に回転可能に設けられるとともに洗濯物を収容する内槽と,前記内槽を駆動するモータと,前記モータの回転速度を検知する回転速度検知手段と,前記モータの減速率を制御する運転制御手段を具備し,前記運転制御手段は、前記モータの減速開始時点の回転速度と閾値との大小を比較し、該比較結果に応じて、前記モータの減速率を切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、騒音を低減すると共に、脱水行程の実行時間の長期化を防ぐことが可能な洗濯機を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例の形態を示す洗濯機の構造図
図2】本発明の実施例の形態を示すブロック図
図3】本発明の実施例における制御内容を示すフローチャート
図4】本発明の実施例における回転数閾値と減速率設定値
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
以下,実施例を、図面を用いて説明する。
【0011】
図1は本実施例の洗濯機の構造図である。
【0012】
図1において,1は洗濯機の筐体である。筐体1内には外槽2が取り付けられている。外槽2内には内槽3が収納され,内槽3はメインモータ5と同軸に接続され、回転可能である。クラッチ11は、メインモータ5と内槽3を固定して内槽3全体を回転させる、もしくは、パルセータ4と固定してパルセータを回転させるように切り替える目的で使用され、メインモータ5の上部に接続されている。
【0013】
外槽2には,給水ホース15から給水弁12およびソフナ弁13を介して水道水が供給される。外槽2に溜まった水は,排水弁6を開けることで,排水ホース7を介して排水口8に排出できるようになっている。排水弁6の開閉は排水弁駆動用モータ9によって操作する。
【0014】
図2は,本実施例の洗濯機のブロック図である。
【0015】
洗濯機はマイクロコンピュータ104により制御され,操作パネルの操作スイッチ131の入力内容に応じて,負荷駆動回路103を介して,メインモータ111,循環ポンプ112,風呂水ポンプ113,給水弁114,排水弁115,ソフナ弁116,フタロック117を駆動させて洗濯動作を行う。
【0016】
また,水位センサ121による水位監視,温度センサ122による温度監視,回転センサ123によるモータ回転速度の監視,揺れを検知して洗濯槽の外枠当りを防止するための安全レバー124,不揮発記憶メモリ125による運転設定や情報の記憶,LED表示回路132による運転状態の表示を行う。
【0017】
電源101からはマイクロコンピュータ104および負荷駆動回路103,各センサなどへ電力が供給される。
【0018】
図3は本実施例の洗濯機の脱水行程動作のフローを示したものである。また、図4は本実施例における回転数閾値・減速率設定値を示したものである。図4において、回転数がR3〜R2の区間を共振区間とし、減速率br13は減速率br11とbr12とbr14とbr15より小さく、減速率br23は減速率br21とbr22とbr24とbr25より小さいとする。
【0019】
脱水行程ではまず洗濯槽にたまった水を排水口より排水する(図3−S301)。排水が終了した時点でメインモータにより内槽の回転を開始し、衣類を脱水する(図3−S302)。槽回転動作はあらかじめ回転速度・加速度等が回転パターンとして設定されており、設定されている回転パターンと脱水の実行時間を基に適切な目標回転速度・加速度等でメインモータを動作させる。回転パターンが終了した場合はメインモータの減速を開始する(図3−S303)。
【0020】
メインモータの高速回転状態から停止まで減速させた場合、モータの共振により騒音が発生する場合がある。そこで、モータの回転数を検知して減速率を適切に選択するためのモータ回転数判定(図3−S311〜S314,図3−S321〜S324)を実施する。モータ回転数区間の判定後、その回転数に応じた減速率を設定する(図3−S315〜S319,図3−S325〜S329)。前記減速率の大小関係より、減速率br13もしくはbr23の使用区間である共振区間は小さい減速率で動作するため低騒音の動作となり、共振区間以外はより大きい減速率が使用されるため停止までの時間が長くなることを防止できる。また、これ以外の区間は、減速率br13よりも大きい減速率で動作させるため、脱水行程の実行時間の長期化を防ぐことも可能となる。
【0021】
その後、モータ停止かどうかを判定し(図3−S331)、モータが停止している場合脱水行程を終了し、停止していない場合は上記の動作[図3−304〜329]を繰り返す。
【0022】
また、回転数センサによる回転数情報により減速率を設定する際、モータ減速開始時の回転数を閾値STと比較し判定する(図3−S304)。これは、同一の回転数・減速率でもモータ減速開始時の回転数によりモータの騒音の出方が違う場合があるためであり、図3−S304の判定結果により図4−減速率設定(1)と図4−減速率設定(2)の内、適切な減速率のパターンを選択することができる。
【0023】
また、図4において、回転数がR3〜R2の区間を騒音が最も大きくなる共振区間とし、R4〜R3の区間を騒音がその次に大きくなる共振区間となる場合がある。この場合、減速率br13は減速率br11とbr12とbr14とbr15より小さく、かつ、br14はbr11とbr12とbr15より小さくし、また、減速率br23は減速率br21とbr22とbr24とbr25より小さく、かつ、br24はbr21とbr22とbr25より小さくする。このように多段階で減速率を設定することで、確実に単一の減速率設定でのモータ停止動作よりも騒音の低減と共に脱水行程の実行時間の長期化を防ぐことが可能となる。
【0024】
また、減速時の回転数によって共振区間が異なる場合がある。この場合、減速時の回転数によって、モータの実回転数と減速率の大小関係を異ならせることが望ましい。例えば、図4において、モータ減速時の回転数が閾値よりも小さい減速率設定の場合と、モータ減速時の回転数が閾値よりも大きい減速率設定の場合とで、モータの実回転数と減速率の大小関係を異ならせる。これにより、減速時の回転数によって共振区間が異なる場合にも対応が可能である。
【0025】
以上により,脱水行程でのモータ高速回転状態からの停止処理において,運回転数センサによる回転数情報を基に適切なモータ減速率を設定することで,減速率一定のモータ停止動作よりも騒音を低減することが可能となる。また、共振区間以外の区間は、共振区間の減速率よりも大きい減速率で動作させるため、脱水行程の実行時間の長期化を防ぐことも可能となる。
【符号の説明】
【0026】
1:本体・外枠, 2:外槽, 3:内槽,
4:パルセータ, 5:メインモータ, 6:排水弁,
7:排水ホース, 8:排水口, 9:排水弁駆動用モータ,
10:制御基板, 11:クラッチ, 12:給水弁,
13:ソフナ弁, 14:操作パネル, 15:給水ホース,
16:安全レバー,

101:電源, 102:オートオフリレー,
103:駆動回路, 104:マイクロコンピュータ,
111:メインモータ, 112:循環ポンプ,
113:風呂水ポンプ, 114:給水弁,
115:排水弁, 116:ソフナ弁,
117:フタロック,
121:水位センサ, 122:温度センサ,
123:回転センサ, 124:安全レバー,
125:不揮発性記憶装置,
131:操作スイッチ, 132:LED表示回路,
図1
図2
図3
図4