(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
同期機の励磁電源を供給する励磁機と、前記同期機の交流出力電圧を調整する自動電圧調整器と、前記自動電圧調整器が出力する指令に応じて前記励磁機を励磁する電力を供給する蓄電装置とを具備する、同期機の励磁装置において、
前記蓄電装置が、交流電圧を整流して直流電圧を生成する蓄電整流手段と、前記蓄電整流手段が出力する直流電圧を電源として蓄電手段を充電する蓄電充電手段と、前記蓄電手段の充電電圧が所定の範囲に入るように前記蓄電手段の充電電流を制御する蓄電制御手段と、前記蓄電手段に蓄えた電力を前記励磁機の界磁巻線に放電するスイッチング手段と、前記自動電圧調整器が出力する指令に応じて前記スイッチング手段の出力電圧を制御するスイッチング駆動手段と、を備えていることを特徴とする同期機の励磁装置。
同期機の励磁電源を供給する励磁機と、前記同期機の交流出力電圧を調整する自動電圧調整器と、前記自動電圧調整器が出力する指令に応じて前記励磁機を励磁する電力を供給する蓄電装置とを具備する励磁装置に適用される、同期機の励磁方法であって、
蓄電整流手段により、交流電圧を整流して直流電圧を生成し、
蓄電充電手段により、前記蓄電整流手段が出力する直流電圧を電源として蓄電手段を充電し、
蓄電制御手段により、前記蓄電手段の充電電圧が所定の範囲に入るように前記蓄電手段の充電電流を制御し、
スイッチング手段により、前記蓄電手段に蓄えた電力を前記励磁機の界磁巻線に放電できるようにし、
スイッチング駆動手段により、前記自動電圧調整器が出力する指令に応じて前記スイッチング手段の出力電圧を制御する
ことを特徴とする同期機の励磁方法。
【背景技術】
【0002】
同期機の励磁方式は、サイリスタ励磁方式と並んでブラシレス励磁方式が広く採用されている。
【0003】
以下、従来の技術について、他励式と自励式のブラシレス励磁装置を例にして説明する。
【0004】
他励式ブラシレス励磁装置は、副励磁機の出力電圧を励磁用変圧器を介してサイリスタ整流器に入力し、自動電圧調整器からのゲート信号によりサイリスタ整流器が出力する直流電圧で交流励磁機の界磁巻線に励磁機界磁電流を流し、交流励磁機の電機子巻線に誘起された交流出力電圧を回転整流器で整流して同期機の界磁巻線に界磁電流を流し、同期機を励磁するものである(特許文献1参照)。
【0005】
一方、自励式ブラシレス励磁装置は、他励式ブラシレス励磁装置において励磁電源を副励磁機から同期機の交流出力電圧に変更し、初期励磁回路を追加したものである(特許文献2参照)。
【0006】
上述した他励式ブラシレス励磁装置では、同期機が並列運転中に電力系統で短絡事故または地絡事故が発生すると、電力系統の電圧が低下するとともに同期機の交流出力電圧も低下する。これに対し、自動電圧調整器がサイリスタ整流器へ出力するゲート信号の位相を進めて励磁機界磁電圧を増加させ、励磁機界磁電流、励磁機の交流出力電圧の増加を経て同期機の界磁電圧を増加させようとするが、交流励磁機の界磁回路時定数により同期機の界磁電圧の増加に遅延が生じるために、事故期間中に同期機の界磁磁束が低下することで事故復帰後の界磁電流が低下して脱調に至る可能性が、サイリスタ励磁方式より高くなる。すなわち、他励式ブラシレス励磁装置では、交流励磁機の界磁回路の時定数による同期機の界磁電圧増加の遅延が過渡安定度を低下させる原因となっている。
【0007】
一方、自励式ブラシレス励磁装置では励磁電源を同期機の交流出力電圧から得ており、系統事故中の励磁電源電圧が低下するため、系統事故後に脱調に至る可能性が、他励式ブラシレス励磁方式よりも高くなる。すなわち、自励式ブラシレス励磁装置では、交流励磁機の界磁回路の時定数による同期機の界磁電圧増加の遅延に加えて、事故期間中の励磁電源電圧の低下が過渡安定度をより低下させる原因となっている。
【0008】
他励式ブラシレス励磁方式において過渡安定度を向上させる技術としては、副励磁機の出力電圧をより高くするもの(特許文献1参照)が知られている。
【0009】
自励式ブラシレス励磁方式において過渡安定度を向上させる技術を記載した特許文献は見当たらなかったが、自励式サイリスタ励磁方式において励磁電源電圧が低下しているときに何らかの手段で界磁回路に供給する電力を維持または補う技術としては、サイリスタ整流器の交流側にAC/DC変換器、コンデンサ(または電力貯蔵装置)、DC/AC変換器を設置し、コンデンサ(または電力貯蔵装置)に電圧維持機能を持たせたもの(特許文献3の
図1〜
図3、特許文献6の
図2)、サイリスタ整流器の交流側にAC/DC変換器、コンデンサ(または電力貯蔵装置)を設置し、コンデンサに電圧維持機能を持たせたもの(特許文献3の
図4、特許文献6の
図3,
図4)、サイリスタ整流器の出力側に双方向の自己消弧型スイッチング素子(GTO)を介してコンデンサを設置して通常時に充電し、系統事故時に放電することで電圧維持機能を持たせたもの(特許文献3の
図5,
図6)、励磁用変圧器の2次側電圧または所内交流電源を整流してコンデンサに充電し、系統事故時に自己消弧型スイッチング素子を介してサイリスタ整流器の出力側に放電するもの(特許文献3の
図7,
図8)、励磁用変圧器の2次側にAC/DC変換器、コンデンサ、DC/DC変換器を設置し(元々あったサイリスタ整流器は削除)、コンデンサに電圧維持機能を持たせたもの(特許文献3の
図9)、系統事故時には、サイリスタ整流器の出力側に設けた電圧調整装置と電力貯蔵装置に切替えて同期機の交流出力電圧制御を行うもの(特許文献4の
図1,
図2)、サイリスタ整流器の出力側に電力貯蔵装置を設けて、通常運転時も系統事故時もサイリスタ出力電圧を一定に維持し、その一定電圧をDC/DC変換器を介して界磁巻線に接続し同期機の交流出力電圧制御を行うもの(特許文献5の
図1,
図2)、励磁用変圧器の2次電圧を整流し昇圧チョッパで所定の電圧に昇圧した直流電圧を降圧チョッパで降圧して同期機の界磁電圧とするもの(特許文献7の
図2)、キャパシタに充電しておいた電力を発電機電圧低下時に界磁巻線に直列接続しておいたダイオードに並列接続して放電し同期機の界磁電圧を増加させるもの(特許文献8の
図1,
図2)が知られている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
まず、
図1および
図2を参照して第1の実施形態について説明する。
(構成)
図1は、第1の実施形態に関わる同期機の励磁装置の構成を示す図である。
【0025】
1はブラシレス同期機であり、同期機1Aに回転電機子形の交流励磁機1Bを連結し、その回転部に回転整流器1Cを設けた構成としている。交流励磁機1Bは同期機1Aの励磁電源を回転整流器1Cを通じて供給する。2は同期機1Aの交流出力電圧Vgを系統電圧まで昇圧する主要変圧器であり、3は同期機1Aを電力系統4に連系する並列用遮断器である。
【0026】
5は3巻線の励磁用変圧器であり、同期機1Aに連結された副励磁機6から供給される交流電圧を2次巻線により所望の交流電圧V2に変圧し、界磁開閉器7を介してサイリスタ整流器8に供給するとともに、3次巻線により所望の交流電圧V3に変圧し、蓄電装置用開閉器9を介して蓄電装置電源回路10に供給する。
【0027】
サイリスタ整流器8は、交流電圧V2を整流して直流電圧を出力し、降圧チョッパ回路12の出力電圧と合わせて励磁機界磁電圧Vefを形成する。
【0028】
蓄電装置電源回路10は、励磁用変圧器5の3次巻線から得られる交流電圧V3を整流して直流電圧に変換するダイオード整流器(蓄電整流手段)10Aと、ダイオード整流器10Aが出力する直流電圧を平滑化して直流電圧Vdとして出力するキャパシタ10Bとで構成されている。蓄電装置電源回路10の出力である直流電圧Vdは蓄電装置主回路11に供給される。
【0029】
蓄電装置主回路11は、蓄電装置電源回路10が出力する直流電圧を電源として蓄電手段11Dを充電する蓄電充電手段の機能を有する。この蓄電装置主回路11は、ダイオード整流器10Aから出力された直流電圧Vdを時分割してスイッチング電圧Vsとして出力する半導体スイッチング素子11Aと、半導体スイッチング素子11Aがオフの時に充電電流Icを迂回させるバイパスダイオード11Bと、充電電流Icを平滑化するリアクトル11Cと、充電電流Icを入力し充電電圧Vcとして蓄える蓄電手段11Dと、充電電流Icを検出して充電電流検出値Icdを出力する充電電流検出器11Eとで構成されている。蓄電装置主回路11の出力である充電電圧Vcは降圧チョッパ回路12に供給される。
【0030】
励磁用変圧器5の3次巻線の交流電圧V3と、蓄電装置電源回路10および蓄電装置主回路11のそれぞれの定格電圧は、励磁機界磁巻線1Dに印加する必要がある最大電圧に応じて選定されている。また、蓄電手段11Dの静電容量は、系統事故が発生したときに励磁機界磁巻線1Dに印加する必要がある最大電圧の印加時間に応じて選定されている。
【0031】
降圧チョッパ回路12は、蓄電装置主回路11から出力された充電電圧Vcを順極性または逆極性で時分割した出力電圧Vchをサイリスタ整流器8の出力電圧VRに加算して励磁機界磁巻線1Dに印加する直流/直流変換器である。この降圧チョッパ回路12は、蓄電手段11Dに蓄えた電力を励磁機界磁巻線1Dに放電するスイッチング手段としての機能を備えている。具体的には、降圧チョッパ回路12は、蓄電手段11Dの正極を降圧チョッパ回路12の出力の正極に時分割して接続する半導体スイッチング素子12Aと、蓄電手段11Dの負極を降圧チョッパ回路12の出力の負極に時分割して接続する半導体スイッチング素子12Bと、アノード側が蓄電手段11Dの負極に接続されカソード側が降圧チョッパ回路12の出力の正極に接続されたバイパスダイオード12Cと、カソード側が蓄電手段11Dの正極に接続されアノード側が降圧チョッパ回路12の出力の負極に接続されたバイパスダイオード12Dとで構成されている。
【0032】
13は蓄電装置制御回路であり、蓄電手段11Dの充電電圧Vcが所定の範囲に入るように蓄電手段11Dの充電電流Icを制御する蓄電制御手段である。この蓄電装置制御回路は、充電電圧Vcを検出して充電電圧検出値Vcdを出力する電圧検出手段13Aと、あらかじめ設定した充電電圧指令値Vcrを与える電圧設定手段13Bと、充電電圧指令値Vcrから充電電圧検出値Vcdを減算して充電電圧偏差信号Vceを出力する減算器13Cと、充電電圧偏差信号Vceを増幅して電流指令上限値IULと電流指令下限値ILLの範囲内に制限した充電電流指令値Icrを出力する電圧制御手段13Dと、充電電流指令値Icrから充電電流検出値Icdを減算して充電電流偏差信号Iceを出力する減算器13Eと、充電電流偏差信号Iceを増幅して充電電流制御信号Vcgを出力する電流制御手段13Fと、充電電流指令値Icrが電流指令下限値ILLより大きいときに充電指令Ccをオン出力する下限比較器13Gと、運転指令Ocと充電指令Ccの論理積を演算して動作指令Opを出力するアンド回路13Hと、動作指令Opと充電電流制御信号Vcgに基づいて半導体スイッチング素子11Aをオンオフ制御するゲート信号Pcを出力する充電用駆動回路13Iとで構成される。
【0033】
充電用駆動回路13Iは、動作指令Opがオフの時は半導体スイッチング素子11Aを常時オフとする。逆に、動作指令Opがオンの時は充電電流制御信号Vcgに対応したデューティー比で半導体スイッチング素子11Aをオンオフ制御(いわゆるパルス幅変調)することで、スイッチング電圧Vsの平均値が充電電流制御信号Vcgに比例した値になるようにしている。
【0034】
なお、運転指令Ocは蓄電手段11Dの充電を要求する指令であり、蓄電装置用開閉器9が投入されている状態でオンするようにする。蓄電装置用開閉器9は、副励磁機6の出力電圧が所定の値以上になった後に投入しても良いし、界磁開閉器7を投入する時に投入しても良い。
【0035】
充電電圧指令値Vcrは、系統事故が発生したときにサイリスタ整流器8の出力電圧VRに加算して励磁機界磁巻線1Dに印加すべき電圧の大きさに応じて設定する。また、電流指令上限値IULは、蓄電手段11Dの充電に要する時間要求に応じて設定し、この充電電流を連続的に供給できるように励磁用変圧器5の3次巻線、蓄電装置用開閉器9、蓄電装置電源回路10および蓄電装置主回路11の定格電流を選定しておく。
【0036】
14は自動電圧調整器(AVR)であり、同期機1Aの交流出力電圧を調整する。この自動電圧調整器14は、
図2に示すように、計器用変圧器15を介して同期機1Aの交流出力電圧Vgに比例した交流電圧検出値Vgdを出力する交流電圧検出手段14Aと、電圧設定値Vrを与える交流電圧設定手段14Bと、励磁機界磁電流検出器16によって検出した励磁機界磁電流検出値Iefdを入力して安定化信号Vstを出力する安定化手段14Cと、電圧設定値Vrから交流電圧検出値Vgdと安定化信号Vstを減算して電圧偏差信号Veを出力する減算器14Dと、電圧偏差信号Veを増幅して励磁機界磁電流指令上限値IeULと励磁機界磁電流指令下限値IeLLの範囲内に制限した励磁機界磁電流の指令値である励磁機界磁電流指令Iefrを出力する交流電圧制御手段14Eと、励磁機界磁電流指令Iefrから励磁機界磁電流検出値Iefdを減算して電流偏差信号Ieを出力する減算器14Fと、電流偏差信号Ieを増幅して励磁機界磁電圧Vefの指令値である励磁機界磁電圧指令Vefrを出力する界磁電流制御手段14Gと、励磁機界磁電圧指令Vefrを入力してサイリスタ整流器8の最大出力電圧に対応する上限値ULと最小出力電圧に対応する下限値LLで制限した電圧制御信号Vthをパルス発生回路17に出力する制限手段14Hと、励磁機界磁電圧指令Vefrを入力して正の不感帯幅を上限値ULとし負の不感帯幅を下限値LLとして不感帯演算を行い放電電圧制御信号Vdcとして放電用駆動回路18に出力する不感帯演算手段14Iとで構成される。
【0037】
制限手段14Hは、界磁電流制御手段14Gが出力する励磁機界磁電圧指令Vefrのうち、サイリスタ整流器8が出力可能な範囲の指令をパルス発生回路17に出力し、一方、不感帯演算手段14Iは、励磁機界磁電圧指令Vefrからパルス発生回路17に出力する指令を減算した指令を放電用駆動回路18に出力する。なお、図示はしないが、蓄電手段11Dの充電電圧Vcが所定のレベルに到達していない時や、並列用遮断器3が開放されている時には、不感帯演算手段14Iの出力を0に保持するようにしてもよい。
【0038】
パルス発生回路17は、自動電圧調整器14が出力する指令に応じてサイリスタ整流器8の出力電圧を制御するパルス発生手段である。このパルス発生回路17は、界磁開閉器7が投入された状態において、サイリスタ整流器8の出力電圧VRの平均値が電圧制御信号Vthに対応した値となるようにサイリスタ整流器8にゲート信号Pを与える。
【0039】
放電用駆動回路18の詳細について
図3を参照して説明する。
放電用駆動回路18は、自動電圧調整器14が出力する指令に応じて降圧チョッパ回路12の出力電圧を制御するスイッチング駆動手段である。この放電用駆動回路18は、最小値が0で最大値が蓄電手段11Dの定格電圧に対応する値Eの三角波VTを出力する三角波発生器18Aと、放電電圧制御信号Vdcと三角波VTを入力して放電電圧制御信号Vdcの方が大きいときのみ半導体スイッチング素子12A用のゲート信号PdAをオン出力する比較器18Bと、放電電圧制御信号Vdcに値Eのバイアス信号VBを加算して半導体スイッチング素子12B用の放電電圧制御信号Vdcnを出力する加算器18Cと、放電電圧制御信号Vdcnと三角波VTを入力して放電電圧制御信号Vdcnの方が大きいときのみ半導体スイッチング素子12B用のゲート信号PdBをオン出力する比較器18Dとで構成される。
【0040】
上述した蓄電装置電源回路10、蓄電装置主回路11、降圧チョッパ回路12、蓄電装置制御回路13および放電用駆動回路18と、を合わせて蓄電装置19と称する。蓄電装置19は、自動電圧調整器14が出力する指令に応じて交流励磁機1Bを励磁する電力を供給する。なお、蓄電装置制御回路13は、自動電圧調整器14と同一の制御装置で構成してもよい。
【0041】
サイリスタ整流器8と降圧チョッパ回路12の出力は直列に接続されており、出力電圧VRと出力電圧Vchが加算されて励磁機界磁巻線1Dに印加される。
【0042】
サイリスタ整流器8の出力電圧VRの最大値と降圧チョッパ回路の出力電圧Vchの最大値の和は、要求される過渡安定度を満足できるように選定する。また出力電圧VRの最大値はサイリスタ整流器8のみの出力電圧で励磁機界磁電流Iefの最大値を連続的に供給できるように選定するのが望ましい。
【0043】
なお、本実施形態おいて「〜手段」と称した個々の要素は、ハードウェアで実現してもよいが、少なくとも一部をソフトウェアで実現してもよい。
(作用)
同期機1Aの回転速度が上昇し所定の回転速度に到達した時点で、界磁開閉器7が投入され、サイリスタ整流器8へのゲート信号Pの印加が開始される。サイリスタ整流器8が励磁用変圧器5の2次巻線の交流電圧V2を整流することで励磁機界磁電圧Vefが発生し、励磁機界磁巻線1Dに励磁機界磁電流Iefが供給されることで同期機1Aの交流出力電圧Vgが上昇する。その後、自動電圧調整器14により同期機1Aの交流出力電圧Vgが定格値まで上昇して電圧確立が完了すると、同期操作の後に並列用遮断器3を投入し、同期機1Aの出力電力を所定の値まで上昇させて通常の運用に入る。
【0044】
界磁開閉器7が投入されると蓄電装置用開閉器9も投入され、蓄電装置制御回路13の運転指令Ocがオンし蓄電装置主回路11が充電動作を開始する。この時に蓄電手段11Dが放電した状態、すなわち充電電圧検出値Vcdがあらかじめ設定した充電電圧指令値Vcr以下であった場合の作用について説明する。
【0045】
この時、充電用駆動回路13Iにより半導体スイッチング素子11Aのオンオフ制御が開始され、励磁用変圧器5の3次巻線の交流電圧V3を入力しダイオード整流器10Aとキャパシタ10Bによって整流、平滑化された直流電圧Vdは、半導体スイッチング素子11Aがオンの期間のみスイッチング電圧Vsに現れる。逆に、半導体スイッチング素子11Aがオフの期間は、スイッチング電圧Vs=0となる。スイッチング電圧Vsと充電電圧Vcとの差電圧がリアクトル11Cに印加されるため、スイッチング電圧Vs=直流電圧Vdの期間は充電電流Icが増加し、スイッチング電圧Vs=0の期間は充電電流Icが減少するが、スイッチング電圧Vsの平均値が充電電圧Vcより高ければ充電電流Icは増減を繰り返しながら増加方向へ移行し、逆にスイッチング電圧Vsの平均値が充電電圧Vcより低ければ充電電流Icは増減を繰り返しながら減少方向へ移行する。充電電圧検出値Vcdが充電電圧指令値Vcrより大きく下回っている状態では電圧制御手段13Dの出力である充電電流指令値Icrは電流指令上限値IULとなっており、電流制御手段13Fによって充電電流Icが電流指令上限値IULと一致するように半導体スイッチング素子11Aのオンオフ制御のデューティー比が制御される。充電電圧検出値Vcdが充電電圧指令値Vcr近づいてくると充電電流指令値Icrが減少し始め、これに伴い充電電流Icも減少する。充電電圧検出値Vcdが充電電圧指令値Vcrにほぼ一致すると充電電圧指令値Vcrは電流指令下限値ILLとなり、充電指令Ccと動作指令Opがオフすることで半導体スイッチング素子11Aがオフして充電電流Icが0になり充電動作が完了する。降圧チョッパ回路12が動作して蓄電手段11Dの電荷が交流励磁機1Bの界磁回路に放電して充電電圧Vcが低下すると、上述したような蓄電手段11Dの充電動作が繰り返される。
【0046】
なお、半導体スイッチング素子11Aのオンオフ時に現れる充電電流Icの増減(リップル電流)は、リアクトル11Cのインダクタンスを大きくすることや半導体スイッチング素子11Aのスイッチング周波数を高くすることで所望のレベル以下に低減することができる。
【0047】
次に、降圧チョッパ回路12の動作について
図4を参照して説明する。
区間1,2および3は各々放電電圧制御信号Vdcが負の値、0および正の値に対する半導体スイッチング素子12A用のゲート信号PdA、半導体スイッチング素子12B用のゲート信号PdBおよび降圧チョッパ回路12の出力電圧Vchの動きを示している。区間1では放電電圧制御信号Vdcが負の値であり、三角波発生器17Aが出力する三角波VTより常に低いレベルであるためゲート信号PdAは常時オフとなり、ゲート信号PdBは放電電圧制御信号Vdcnが三角波VTより大きいときのみオンとなる。この時、出力電圧Vchはゲート信号PdBがオンの時に0、ゲート信号PdBがオフの時に−Vcとなる。区間2では放電電圧制御信号Vdcが0であり、三角波発生器17Aが出力する三角波VTより常に低いレベルであるためゲート信号PdAは常時オフとなり、放電電圧制御信号Vdcnは三角波VTより常に高いレベルであるためゲート信号PdBは常にオンとなる。この時、出力電圧Vchは0となる。区間3では放電電圧制御信号Vdcが正の値であり、ゲート信号PdAは放電電圧制御信号Vdcが三角波VTより大きいときのみオンとなり、放電電圧制御信号Vdcnは三角波VTより常に高いレベルであるためゲート信号PdBは常にオンとなる。このとき、出力電圧Vchはゲート信号PdAがオンの時にVc、ゲート信号PdAがオフの時に0となる。結果として、いずれの区間においても降圧チョッパ回路12の出力電圧Vchの平均値は放電電圧制御信号Vdcに比例した値となる。
【0048】
同期機1Aが通常運転しているときは自動電圧調整器14の電圧偏差信号Veの絶対値が小さく、励磁機界磁電圧指令Vefrがサイリスタ整流器8の最大出力電圧に対応する上限値ULと最小出力電圧に対応する下限値LLの範囲内に収まっているため、放電電圧制御信号Vdcは0となっている。このため、降圧チョッパ回路12の出力電圧Vchは0であり、励磁機界磁巻線1Dにはサイリスタ整流器8の出力電圧VRが印加されている。
【0049】
上述した通常運転中に系統事故が発生して同期機1Aの交流出力電圧Vgが大きく低下すると、自動電圧調整器14の交流電圧制御手段14Eの出力が励磁機界磁電流指令上限値IeULとなり、界磁電流制御手段14Gの出力である励磁機界磁電圧指令Vefrが増加する。励磁機界磁電圧指令Vefrがサイリスタ整流器8の最大出力電圧に対応する上限値ULを超えるとサイリスタ整流器8の出力電圧VRが正の最大値となり、また放電電圧制御信号Vdcが正の値となるため、これに比例した出力電圧Vchが降圧チョッパ回路12から出力される。結果として出力電圧VRと出力電圧Vchの加算値が励磁機界磁巻線1Dに印加されるので、励磁機界磁電流Iefの急速な増加に伴い同期機1Aの界磁電圧を急増させることができ、所望の過渡安定度が得られる。
【0050】
また、系統事故中に増加した同期機1Aの内部相差角が事故復帰後に減少して安定点に戻る際に交流出力電圧Vgが定格電圧を超えて増加すると、自動電圧調整器14の交流電圧制御手段14Eの出力が励磁機界磁電流指令下限値IeLLとなり、界磁電流制御手段14Gの出力である励磁機界磁電圧指令Vefrが減少する。励磁機界磁電圧指令Vefrがサイリスタ整流器8の最小出力電圧に対応する下限値LLを下回るとサイリスタ整流器8の出力電圧VRが負の最小値となり、また放電電圧制御信号Vdcが負の値となるため、これに比例した出力電圧Vchが降圧チョッパ回路12から出力される。結果として出力電圧VRと出力電圧Vchの加算値が励磁機界磁巻線1Dに印加されるので、励磁機界磁電流Iefの急速な減少に伴い同期機1Aの界磁電圧を急減させることができ、同期機1Aの交流出力電圧Vgの過電圧を抑制することができる。なお、降圧チョッパ回路12の出力電圧Vchの平均値が負の時は、降圧チョッパ回路12の出力電流により蓄電手段11Dが充電されるので、次の放電機会に備えた蓄電手段11Dの再充電がより早く行える。
(効果)
以上述べたように、本実施形態によれば、蓄電装置制御回路13により充電電圧Vcおよび充電電流Icを所定の値以下に抑制するので、蓄電装置主回路11、蓄電装置電源回路10、及び励磁用変圧器5の3次巻線の設備容量を必要最小限に抑えることができる。また、副励磁機6と励磁用変圧器5の容量を大きく増加させることなく、系統事故発生中の励磁機界磁電圧Vefを所望の値まで急速に増加させることができるので、同期機1Aの過渡安定度を向上させることができる。さらに、降圧チョッパ回路12の出力電圧Vchを同期機1Aの交流出力電圧Vgの低下量及び上昇量に応じて調整制御するので、励磁機界磁電圧Vefの増減を制御遅れなく行うことができ、系統事故時の過渡安定度向上に寄与するとともに、系統事故復帰時の同期機1Aの交流出力電圧Vgの上昇も抑制することができる。さらに、降圧チョッパ回路12の出力電圧Vchの平均値が負の時は、降圧チョッパ回路12の出力電流により蓄電手段11Dが充電されるので、次の放電機会に備えた蓄電手段11Dの再充電がより早く行える。
[第2の実施形態]
次に、前述した
図3を参照するとともに
図5および
図6を参照して第2の実施形態について説明する。以下では、前述した第1の実施形態と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
(構成)
図5は、第2の実施形態による放電用駆動回路の構成を示す図である。
【0051】
本実施形態は、上述した第1の実施形態(
図3参照)における放電用駆動回路18を放電用駆動回路18’に代えたものである。すなわち、放電用駆動回路18から加算器18Aを削除し、三角波発生器18Aの代わりに最大値が蓄電手段11Dの定格電圧に対応する値Eで最小値が−Eの三角波VTを出力する三角波発生器18A’を設け、比較器18Dの代わりに放電電圧制御信号Vdcと三角波VTを入力して放電電圧制御信号Vdcの方が大きいときのみ半導体スイッチング素子12B用のゲート信号PdBをオン出力する比較器18D’を設けることで、放電用駆動回路18’を構成している。
(作用)
第1の実施形態との相違点は、放電電圧制御信号Vdcに対する降圧チョッパ回路12の出力電圧Vchの波形であり、出力電圧Vchの平均値は変わらない。従って、基本的な作用は第1の実施形態と同様である。
【0052】
本実施形態による降圧チョッパ回路12の動作について
図6を参照して説明する。
区間1,2および3は各々放電電圧制御信号Vdcが負の値、0および正の値に対する半導体スイッチング素子12A用のゲート信号PdA、半導体スイッチング素子12B用のゲート信号PdBおよび降圧チョッパ回路12の出力電圧Vchの動きを示している。いずれの区間においても、放電電圧制御信号Vdcが三角波VTより大きいときのみゲート信号PdAとゲート信号PdBが同時にオンオフする。このとき、出力電圧Vchはゲート信号PdAとゲート信号PdBがオンの時にVc、ゲート信号PdAとゲート信号PdBがオフの時に−Vcとなる。結果として、いずれの区間においても降圧チョッパ回路12の出力電圧Vchの平均値は放電電圧制御信号Vdcに比例した値となる。
(効果)
本実施形態によれば、放電用駆動回路の構成を簡易なものとすることができるとともに、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
[第3の実施形態]
次に、前述した
図1および
図3を参照するとともに
図7を参照して第3の実施形態について説明する。以下では、前述した第1の実施形態と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
(構成)
本実施形態は、上述した第1の実施形態(
図1および
図3参照)における降圧チョッパ回路12を降圧チョッパ回路12’(図示せず)に代え、放電用駆動回路18を放電用駆動回路18”(図示せず)に代えたものである。すなわち、降圧チョッパ回路12から半導体スイッチング素子12Bを削除して切り離された電路の両端を短絡するとともにダイオード12Dを削除することで降圧チョッパ回路12’を構成し、また、放電用駆動回路18から加算器18Cと比較器18Dとを削除することで放電用駆動回路18”を構成している。
(作用)
第1の実施形態との相違点は、降圧チョッパ回路12’の構成要素を減らして簡略化したことである。これにより、降圧チョッパ回路12’の出力電圧Vchは正の電圧のみとなるが、それ以外の作用は第1の実施形態と同様である。
【0053】
本実施形態による降圧チョッパ回路12’の動作について
図7を参照して説明する。区間1,2および3は各々放電電圧制御信号Vdcが負の値、0および正の値に対する半導体スイッチング素子12A用のゲート信号PdAおよび降圧チョッパ回路12’の出力電圧Vchの動きを示している。いずれの区間においても、放電電圧制御信号Vdcが三角波VTより大きいときのみゲート信号PdAがオンする。このとき、出力電圧Vchはゲート信号PdAオンの時にVc、ゲート信号PdAがオフの時に0となる。結果として、区間1,2では降圧チョッパ回路12’の出力電圧Vchは0となり、区間3では降圧チョッパ回路12’の出力電圧Vchの平均値は放電電圧制御信号Vdcに比例した値となる。
(効果)
本実施形態によれば、蓄電装置制御回路13により充電電圧Vcおよび充電電流Icを所定の値以下に抑制するので、蓄電装置主回路11、蓄電装置電源回路10、及び励磁用変圧器5の3次巻線の設備容量を必要最小限に抑えることができる。また、副励磁機6と励磁用変圧器5の容量を大きく増加させることなく、系統事故発生中の励磁機界磁電圧Vefを所望の値まで急速に増加させることができるので、同期機1Aの過渡安定度を向上させることができる。さらに、降圧チョッパ回路12’の出力電圧Vchを同期機1Aの交流出力電圧Vgの低下量及び上昇量に応じて調整制御するので、励磁機界磁電圧Vefの増減を制御遅れなく行うことができ、系統事故時の過渡安定度向上に寄与するとともに、系統事故復帰時の同期機1Aの交流出力電圧Vgの上昇も抑制することができる。
[第4の実施形態]
次に、前述した
図1および
図2を参照するとともに
図8および
図9を参照して第4の実施形態について説明する。以下では、前述した第1の実施形態と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
(構成)
図8は、第4の実施形態に関わる同期機の励磁装置の構成を示す図である。
【0054】
本実施形態は、上述した第1の実施形態(
図1参照)に関わる同期機の励磁装置からサイリスタ整流器8、パルス発生回路17、および界磁開閉器7を削除し、3巻線の励磁用変圧器5を2巻線の励磁用変圧器5Aに代えて交流電圧V4を出力するようにしたものである。また、
図9に示すように、上述した第1の実施形態(
図2参照)における自動電圧調整器14から制限手段14Hと不感帯演算手段14Iとを削除し、励磁機界磁電圧指令Vefrを放電電圧制御信号Vdcとして出力するように構成している。
【0055】
本実施形態では、副励磁機6の出力電圧が所定の値以上になった後に蓄電装置用開閉器9が投入される。充電電圧指令値Vcrは、系統事故が発生したときに励磁機界磁巻線1Dに印加すべき電圧の大きさに応じて設定され、この電圧に応じて励磁用変圧器5A、蓄電装置電源回路10および蓄電装置主回路11の定格電圧が選定されている。また、電流指令上限値IULは、同期機1Aが定格運転しているときの励磁機界磁電流Iefを降圧チョッパ回路12が連続的に供給中に蓄電手段11Dの充電電圧Vcが低下しないような充電電流Ic以上の値が設定され、この充電電流を連続的に供給できるように励磁用変圧器5A、蓄電装置用開閉器9、蓄電装置電源回路10および蓄電装置主回路11の定格電流が選定されている。
(作用)
第1の実施形態との相違点は、サイリスタ整流器8を削除し、蓄電装置19のみで励磁機界磁巻線1Dの励磁を行うようにした点である。これにより、励磁機界磁電圧指令Vefrが放電電圧制御信号Vdcとして放電用駆動回路18に直接入力されるため、励磁機界磁電圧指令Vefrに比例する電圧が降圧チョッパ回路12から出力されるようになる。
(効果)
本実施形態によれば、蓄電装置制御回路13により充電電圧Vcおよび充電電流Icを所定の値以下に抑制するので、降圧チョッパ回路12の運転状態に依らず、蓄電装置主回路11、蓄電装置電源回路10、励磁用変圧器5Aおよび副励磁機6の設備容量を必要最小限に抑えることができる。また、系統事故発生中の励磁機界磁電圧Vefを所望の値まで急速に増加させることができるので、同期機1Aの過渡安定度を向上させることができる。さらに、降圧チョッパ回路12の出力電圧Vchを同期機1Aの交流出力電圧Vgの低下量及び上昇量に応じて調整制御するので、励磁機界磁電圧Vefの増減を制御遅れなく行うことができ、系統事故時の過渡安定度向上に寄与するとともに、系統事故復帰時の同期機1Aの交流出力電圧Vgの上昇も抑制することができる。さらにまた、降圧チョッパ回路12の出力電圧Vchの平均値が負の時は、降圧チョッパ回路12の出力電流により蓄電手段11Dが充電されるので、次の放電機会に備えた蓄電手段11Dの再充電がより早く行える。
【0056】
なお、第1の実施形態に対する本実施形態のような変更は第2の実施形態に対しても適用することができ、上記と同様の作用と効果が得られる。
[第5の実施形態]
次に、前述した
図2を参照するとともに
図10を参照して第5の実施形態について説明する。以下では、前述した第1の実施形態と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
(構成)
図10は、第5の実施形態による自動電圧調整器の構成を示す図である。
【0057】
本実施形態は、上述した第1の実施形態(
図2参照)における自動電圧調整器14の中に、不感帯演算手段14Iが出力する補正前放電電圧制御信号Vdcxを電圧検出手段13Aが出力する充電電圧検出値Vcdで除算して放電電圧制御信号Vdcとして出力する除算器14Jを追加したものである。
(作用)
第1の実施形態との相違点は、蓄電手段11Dの充電電圧Vcの値に応じて放電電圧制御信号Vdcを補正して、降圧チョッパ回路12の出力電圧Vchを補正前放電電圧制御信号Vdcxに一致させる手段を備えた点である。これにより、例えば充電電圧Vcが充電電圧指令値Vcrの1/m倍に低下した場合は、除算器14Jにより放電電圧制御信号Vdcをm倍することにより、降圧チョッパ回路12の出力電圧Vchを補正前放電電圧制御信号Vdcxと一致させることができる。
(効果)
本実施形態によれば、蓄電手段11Dの充電電圧Vcが低下した場合でも補正前放電電圧制御信号Vdcxに応じた降圧チョッパ回路12の出力電圧Vchを励磁機界磁巻線1Dに印加することができ、自動電圧調整器14の制御特性を均一にすることができる。
【0058】
なお、本実施形態による除算器14Jは第2乃至第4の実施形態に対しても適用することができ、上記と同様の作用と効果が得られる。第4の実施形態に適用する場合は、界磁電流制御手段14Gが出力する励磁機界磁電圧指令Vefrを充電電圧検出値Vcdで除算して放電電圧制御信号Vdcとして出力する除算器14Jを自動電圧調整器14に追加した構成とする。
[第6の実施形態]
次に、前述した
図1を参照するとともに
図11を参照して第6の実施形態について説明する。以下では、前述した第1の実施形態と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
(構成)
図11は、第6の実施形態による蓄電装置制御回路の構成を示す図である。
【0059】
本実施形態は、上述した第1の実施形態(
図1参照)の蓄電装置制御回路13から電圧設定手段13Bと、減算器13Cと電圧制御手段13Dと、下限比較器13Gとを削除し、下限比較器13Jと、上限比較器13Kとフリップフロップ13Lと、電流設定手段13Mとを追加したものである。
【0060】
本実施形態による蓄電装置制御回路13は、蓄電手段11Dの充電電圧Vcに比例する充電電圧検出値Vcdを出力する電圧検出手段13Aと、充電電圧検出値Vcdがあらかじめ設定した下限値以下になったときに充電開始指令Conを出力する下限比較器13Jと、充電電圧検出値Vcdがあらかじめ設定した上限値以上になったときに充電停止指令Coffを出力する上限比較器13Kと、充電開始指令Conで充電指令Ccをオンし充電停止指令Coffで充電指令Ccをオフするフリップフロップ13Lと、運転指令Ocと充電指令Ccの論理積を演算して動作指令Opを出力するアンド回路13Hと、充電電流指令値Icrを与える電流設定手段13Mと、充電電流指令値Icrから充電電流検出値Icdを減算して充電電流偏差信号Iceを出力する減算器13Eと、充電電流偏差信号Iceを増幅して充電電流制御信号Vcgを出力する電流制御手段13Fと、動作指令Opと充電電流制御信号Vcgとに基づいて半導体スイッチング素子11Aをオンオフ制御するゲート信号Pcを出力する充電用駆動回路13Iとで構成される。なお、充電電圧の上限値および下限値は、系統事故が発生したときに励磁機界磁巻線1Dに印加すべき電圧の大きさに応じて設定する。
(作用)
第1の実施形態との相違点は、蓄電装置制御回路13が、充電電圧Vcの値に応じて充電指令Ccをオンオフする手段と、蓄電手段11Dの充電電流Icを一定に制御する手段を備えた点である。これにより、運転指令Ocがオンの状態で充電電圧Vcがあらかじめ設定した下限値を下回ると、下限比較器13Jが充電開始指令Conをオン出力する。これに伴いフリップフロップ13Lが充電指令Ccをオン出力し、アンド回路13Hが運転指令Opをオン出力して充電用駆動回路13Iの運転を開始する。充電用駆動回路13Iが運転を開始すると、電流制御手段13Fは充電電流Icが充電電流指令値Icrと一致するように充電電流制御信号Vcgを調整し、充電用駆動回路13Iを介して半導体スイッチング素子11Aのオンオフのデューティー比を制御する。
(効果)
本実施形態によれば、蓄電装置制御回路13により充電電圧Vcおよび充電電流Icを所定の値以下に抑制するので第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0061】
なお、本実施形態による蓄電装置制御回路13は第2乃至第5の実施形態に対しても適用することができ、上記と同様の作用と効果が得られる。
[第7の実施形態]
次に、前述した
図1を参照するとともに
図12を参照して第7の実施形態について説明する。以下では、前述した第1の実施形態と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
(構成)
図12は、第7の実施形態に関わる同期機の励磁装置の構成を示す図である。
【0062】
本実施形態は、上述した第1の実施形態(
図1参照)における蓄電装置制御回路13に、充電電流検出値Icdが所定の値を超えた場合に蓄電装置用開閉器9の開放信号Ctpoを出力する上限比較器13Nを追加したものである。
(作用)
第1の実施形態との相違点は、充電電流検出値Icdが所定の値を超えた場合に蓄電装置19の入力電源を遮断する手段を備えた点である。これにより、例えば半導体スイッチング素子11Aが短絡故障した場合には充電電流Icが異常に増加するが、これを上限比較器13Nが検知して蓄電装置用開閉器9を開放することで蓄電装置19の充電動作を停止する。
(効果)
本実施形態によれば、充電電流検出値Icdが異常に大きくなった場合に蓄電装置用開閉器9を開放することで蓄電装置19の入力電源を遮断できるので、蓄電装置19の事故拡大を防止することができる。
【0063】
なお、本実施形態による上限比較器13Nは第2乃至第6の実施形態に対しても適用することができ、上記と同様の作用と効果が得られる。
[第8の実施形態]
次に、前述した
図1を参照するとともに
図13を参照して第8の実施形態について説明する。以下では、前述した第1の実施形態と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
(構成)
図13は、第8の実施形態に関わる同期機の励磁装置の構成を示す図である。
【0064】
本実施形態は、上述した第1の実施形態(
図1参照)における蓄電装置制御回路13に、充電電圧検出値Vcdが所定の値を超えた場合に蓄電装置用開閉器9の開放信号Ctpoを出力する上限比較器13Pを追加したものである。
(作用)
第1の実施形態との相違点は、充電電圧検出値Vcdが所定の値を超えた場合に蓄電装置19の入力電源を遮断する手段を備えた点である。これにより、例えば半導体スイッチング素子11Aが短絡故障した場合には充電電圧Vcが異常に増加するが、これを上限比較器13Pが検知して蓄電装置用開閉器9を開放することで蓄電装置19の充電動作を停止する。
(効果)
本実施形態によれば、充電電圧検出値Vcdが異常に大きくなった場合に蓄電装置用開閉器9を開放することで蓄電装置19の入力電源を遮断できるので、蓄電装置19の事故拡大を防止することができる。
【0065】
なお、本実施形態による上限比較器13Pは第2乃至第7の実施形態に対しても適用することができ、上記と同様の作用と効果が得られる。
【0066】
上述した実施形態では、副励磁機を励磁電源とする他励式ブラシレス励磁方式を例にとって説明したが、同期機の交流出力電圧を励磁電源とする自励式ブラシレス励磁方式にも適用することができ、同様の効果が得られる。さらには、ブラシレス励磁方式以外の励磁機方式にも適用することができ、同様の効果が得られる。
【0067】
以上詳述したように、各実施形態によれば、設備容量を抑えつつ、系統事故時の過渡安定度を向上させることができ、系統事故復帰時の同期機の交流出力電圧上昇を抑制できる。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。