(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態に係る高周波用受信モジュールについて、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る高周波用受信モジュールの構成を示すブロック図である。
図1に示す高周波用受信モジュール1000は、高周波信号を受信するアンテナ1001に接続されており、受信した高周波信号(受信信号)を増幅して、出力する。また、アンテナ1001と後段受信回路1002との間には、第1スイッチ1003、および第1のスイッチ1003に同期する第2のスイッチ1004を介して、前段の受信回路である2系統の増幅系1005、1006が並列に設けられている。なお、「第1のスイッチ1003に同期する第2のスイッチ1004」とは、完全に同時に動作する必要はなく、第1のスイッチ1003を増幅系1005、1006のいずれかの系統に接続したときに、第2のスイッチ1004を同じ系統に接続していればよい。
【0012】
高周波用受信モジュール1000がアンテナ1001で高周波信号を受信すると、その受信信号は、選択されるいずれか一方の増幅系1005、1006で増幅されて、後段受信回路1002に入力される。
【0013】
このような高周波用受信モジュール1000において、一方の増幅系1005は、感度は高くないが常温で受信信号を増幅する第1の増幅系1005である。第1の増幅系1005は、通常使用される増幅系であり、アンテナ1001側から後段受信回路1002側に向かって、リミッタ素子1007、バンドパスフィルタ1008、および第1の増幅素子1009、が直列に接続されることによって構成されている。第1の増幅素子1009は、例えば常温(室温)で動作する低雑音増幅素子である。
【0014】
第1の増幅系1005はリミッタ素子1007を有するため、第1の増幅素子1009は大電力から保護されるが、リミッタ素子1007を通過した受信信号のNF(Noise Figure)は増加する。しかし、この増幅系1005は、比較的大きな受信信号が入力されるときに運用されるため、リミッタ素子1007でNFが増加しても、後段受信回路1002において正常な信号処理が阻害されるほどには増加しない。したがって、この増幅系1005にリミッタ素子1007が使用されても、実質的な問題は生じない。
【0015】
また、他方の増幅系1006は、極低温までの冷却を必要とするが、第1の増幅系1005より高い感度を有する第2の増幅系1006である。第2の増幅系1006は、微弱な受信信号を増幅する。ここで、「微弱な受信信号」とは、例えば、第1の増幅系1005を介して信号を受信した場合に、第1の増幅系1005が発生する熱雑音よりも弱い受信信号を意味する。したがって、第2の増幅系1006には、熱雑音が生じにくい高周波半導体増幅モジュール100が適用される。高周波半導体増幅モジュール100は、アンテナ1001側から後段受信回路1002側に向かって、第1の電磁結合部19、バンドパスフィルタ16´、第2の増幅素子15、および第2の電磁結合部20、が直列に接続されることによって構成されている。第2の増幅素子15は、少なくとも第1の増幅素子1009より低温で動作する増幅素子である。より具体的に、第2の増幅素子15は、例えばNF特性が良好な低温(例えば80K程度)で動作する低雑音増幅素子である。
【0016】
第2の増幅系1006に適用される高周波半導体増幅モジュール100は、冷却体と、この冷却体上に配置された高周波半導体増幅装置と、冷却体および高周波半導体増幅装置を内部に収容する断熱容器と、を具備する。高周波半導体増幅装置は冷却体によって例えば80K程度の低温にされる。そして、冷却体および高周波半導体増幅装置が断熱容器で覆われているため、外部からの熱の流入が抑制され、低温状態を効率的に維持することができる。したがって、高周波半導体増幅装置は低温で動作することができ、増幅動作によるNF低下を抑制することができる。以下に、このような高周波半導体増幅モジュール100の詳細な構造について、図面を参照して説明する。
【0017】
図2は、第2の増幅系を構成する高周波半導体増幅モジュールの冷却体および高周波半導体増幅装置を示す分解斜視図である。
図2に示すように、高周波半導体増幅装置10は、冷却体11上に配置されている。
【0018】
冷却体11上に配置される高周波半導体増幅装置10において、例えばCuによって構成されるキャリアプレートであるベース板12の上面上には、受信信号を増幅する増幅回路13が配置されている。増幅回路13は、絶縁基板14と、この基板14の上面上に設けられた第2の増幅素子である複数の低雑音増幅素子15(以下、LNA(Low Noise Amplifier)称する場合がある。)と、絶縁基板14の上面上に設けられ、複数のLNA15に接続される分岐・整合回路16および合成・整合回路17と、によって構成される。
【0019】
絶縁基板14は例えばアルミナ(Al
2O
3)によって構成される基板である。また、分岐・整合回路16および合成・整合回路17にはそれぞれ、バンドパスフィルタ16´として機能するとともに、受信信号を分岐または合成するランゲカプラ、および整合線路、等が含まれている。
【0020】
なお、図示は省略しているが、増幅回路13には、キャパシタ素子等も設けられている。
【0021】
このような増幅回路13に対して断熱容器18(
図8〜10)の外部から受信信号を入力する部分、および増幅回路13から出力される受信信号を断熱容器18の外部に出力する部分、はそれぞれ、電磁結合部19、20によって構成されている。電磁結合部19、20は、増幅回路13に電気的に接続されている。そして、電磁結合部19、20は、断熱容器18の内部と外部とを電磁結合によって電気的に接続すると同時に、断熱容器18の内部と外部とを非接触にする。以下に、電磁結合部19、20について詳述する。
【0022】
増幅回路13に対して断熱容器18(
図8〜10)の外部から受信信号を入力する入力側の電磁結合部19である第1の電磁結合部19は、増幅回路13に電気的に接続される内部入力回路21、および内部入力回路21の上方に配置された第1の電磁結合回路22、によって構成されている。
【0023】
内部入力回路21は、所望の基板23上にW字状の配線24を設けることによって構成されている。内部入力回路21の詳細については後述するが、この内部入力回路21は、ベース板12の上面上に配置され、ベース板12に設けられた板バネ等の固定具25によって、ベース板12に対して押し付けられている。そして、増幅回路13の分岐・整合回路16に、ワイヤー等の接続導体26によって電気的に接続されている。
【0024】
第1の電磁結合回路22は、内部入力回路21のW字状の配線24に対して電磁結合によって受信信号を供給する回路であって、内部入力回路21の上方に、内部入力回路21から離間するように配置されている。第1の電磁結合回路22は、例えば内部入力回路21から1mm程度上方に離間した位置に配置されている。なお、第1の電磁結合回路22は、後述する断熱容器18によって所定位置に支持される(
図8)。
【0025】
図3は、高周波半導体増幅装置の第1の電磁結合回路を示す斜視図である。
図3に示すように、第1の電磁結合回路22は、例えば厚さ1mm程度のアルミナ等によって構成される絶縁基板27の上面上に、I字状の配線28a、I字状の配線28aに接続される引き出し配線28b、および引き出し配線28bに接続されるパッド電極28c、を設けることによって構成されている。また、この上面上のうち、I字状の配線28a、引き出し配線28b、およびパッド電極28c、が設けられた領域およびこの周辺領域を除く全面には、接地金属29が設けられている。なお、上記周辺領域とは、接地金属29がI字状の配線28a、引き出し配線28b、およびパッド電極28cから絶縁されるのに必要な領域である。
【0026】
他方、絶縁基板27の下面上の全面には接地金属30が設けられており、接地金属30の一部は、U字状に除去されている。すなわち、接地金属30は、U字状の一部領域を除く下面全面に設けられている。
【0027】
絶縁基板27の周辺部には、この基板27を貫通するスルーホール31が設けられている。絶縁基板27の上面の接地金属29と下面の接地金属30とは、スルーホール31内に設けられる導体によって電気的に接続されている。
【0028】
次に、増幅回路13から出力される受信信号を断熱容器18(
図8〜10)の外部に出力する出力側の電磁結合部である第2の電磁結合部20は、増幅回路13に電気的に接続される内部出力回路32、および内部出力回路32の上方に配置された第2の電磁結合回路33、によって構成されている。
【0029】
内部出力回路32は、例えば増幅回路13から延在するアルミナ等の絶縁基板14の表面上に、金(Au)によって、増幅回路13の合成・整合回路17から延在するように、W字状の配線34を設けることによって構成されている。この内部出力回路32は増幅回路13とともにベース板12の上面上に配置され、ベース板12に設けられた板バネ等の固定具25によって、増幅回路13とともにベース板12に対して押し付けられている。
【0030】
第2の電磁結合回路33は、内部出力回路32のW字状の配線34から電磁結合によって受信信号が供給される回路であって、内部出力回路32の上方に、内部出力回路32から離間するように配置されている。第2の電磁結合回路33は、例えば内部出力回路32から1mm程度上方に離間した位置に配置されている。なお、第2の電磁結合回路33の具体的な構成は、
図3に示す第1の電磁結合回路22と同様に構成されており、絶縁基板の上面上に、I字状の配線35a、引き出し配線35b、およびパッド電極35cが設けられており、また、これらの周囲を囲うように接地金属36が設けられている。このような第2の電磁結合回路33は、第1の電磁結合回路22と同様に、後述する断熱容器18によって所定位置に支持される(
図8)。
【0031】
このような第2の電磁結合回路33の下方に配置される内部出力回路32のW字状の配線34に受信信号が入力されると、その受信信号は、電磁結合によって、第2の電磁結合回路33の表面のI字状の配線35aに伝達される。
【0032】
以上に説明したように、第1、第2の電磁結合部19、20は、断熱容器18の内部と外部とを電磁結合によって電気的に接続する。さらに、第1、第2の電磁結合部19、20は、上述したように断熱容器18の内部と外部とを非接触にするが、これについては後述する。
【0033】
第1の電磁結合部19の第1の電磁結合回路22は、高周波半導体増幅モジュール100の外部から受信信号を受け取る第1の外部信号線37を有する外部回路である外部入力回路38に電気的に接続される。また、第2の電磁結合部20の第2の電磁結合回路33は、高周波半導体増幅モジュール100の外部に受信信号を送出する第2の外部信号線39を有する外部回路である外部出力回路40に電気的に接続される。外部入力回路38および外部出力回路40はそれぞれプリント基板であって、絶縁基板41の上面上に第1の外部信号線37または第2の外部信号線39を設けることによって構成されている。外部入力回路38および外部出力回路40はそれぞれ、後述する断熱容器18の外周面上に配置される(
図8、
図10)。なお、外部入力回路38および外部出力回路40にはそれぞれ、接地される接地用線路42も設けられている。
【0034】
第1の電磁結合回路22と、外部入力回路38と、の高さ方向における位置は異なっている。この理由については後述するが、このように高さ方向における位置が互いに異なるため、これらの回路22、38間を、例えばワイヤー等の第1の接続導体で接続することを考えると、第1の接続導体の長さが長くなる。この結果、第1の接続導体でのインダクタンス(または抵抗、放射損)が大きくなる。
【0035】
また、一般に、第1の電磁結合回路22の各配線28a、28bおよびパッド電極28cは50Ωのインピーダンスを有するように設計されており、外部入力回路38の第1の外部信号線37も同様に50Ωのインピーダンスを有するように設計されている。一方、パッド電極28cと第1の外部信号線37とを接続する第1の接続導体をワイヤーとすると、そのインピーダンスが50Ωから乖離し、その結果、パッド電極28cと第1の外部信号線37との間にインピーダンスの不整合が発生する。第1の接続導体の長さが短いときには、インピーダンスの不整合は小さいが、上記のように第1の接続導体の長さが長くなると、第1の接続導体によるインピーダンスの不整合が大きくなり、反射損が大きくなる。
【0036】
このように、第1の電磁結合回路22と、外部入力回路38と、の高さ方向における位置が異なっていると、上記問題が生じ、入力損失が増大する。
【0037】
そこで、第1の電磁結合回路22の上面上には、第1の電磁結合回路22と外部入力回路38とを電気的に接続する第1の接続配線43を有する第1の高さ調整回路44が、例えば銀ナノ粒子によって固定されている。第1の電磁結合回路22上に、この回路22に電気的に接続されるように第1の高さ調整回路44を設けることによって、第1の接続配線43が、第1の電磁結合回路22のパッド電極28cを、外部入力回路38が配置される高さ位置まで電気的に引き出す。第1の接続配線43のインピーダンスを、第1の電磁結合回路22のパッド電極28cおよび外部入力回路38の第1の外部信号線37に整合するように、例えば50Ωに設計することにより、第1の接続配線43を、パッド電極28cおよび第1の外部信号線37、と整合させることができる。そして、第1の接続配線43と外部入力回路38の第1の外部信号線37とは同じ高さ位置に存在するため、これらを電気的に接続する後述の第1の接続導体45の長さを短くでき、第1の接続導体45のインダクタンス(または抵抗、放射損)を小さくできるとともに、第1の接続配線43と第1の外部信号線37とのインピーダンスの不整合を小さくすることができる。その結果、第1の電磁結合回路22と外部入力回路38との間の配線(第1の接続配線43および第1の接続導体45によって構成される受信信号の線路)においてインピーダンスが不連続になることを抑制することができる。
【0038】
図4Aは、第1の高さ調整回路を斜め上方から見た場合の斜視図である。また、
図4Bは、第1の高さ調整回路を斜め下方から見た場合の斜視図である。
図4Aおよび
図4Bに示すように、第1の高さ調整回路44は、筒状の第1の誘電体60に、第1の接続配線43および接地金属51を設けることによって構成されている。第1の誘電体60は例えばセラミック、アルミナ等によって構成され、第1の接続配線43および接地金属51はそれぞれ、例えば金等の金属薄膜によって構成される。
【0039】
第1の誘電体60には、上面から下面に向かって第1の誘電体60を貫通する貫通孔61が設けられている。そして、この貫通孔61の内壁はメタライズされており、これが配線43aとして機能する。そして、貫通孔61の上端を含む第1の誘電体60上面の一部には、貫通孔61の内部の配線43aに接続される島状の配線43bが設けられており、貫通孔61の下端を含む第1の誘電体60の下面の一部には、貫通孔61の内部の配線43aに接続される島状の配線43cが設けられている。第1の接続配線43は、貫通孔61の内部の配線43a、第1の誘電体60の上面の島状の配線43b、および第1の誘電体60の側壁の下面の島状の配線43c、によって構成されている。
【0040】
他方、接地金属51は、第1の誘電体60の上面、下面、および外側面の略全面に、第1の接続配線43に接しないように設けられている。なお、接地金属51は、さらに、第1の誘電体60の内側面に、第1の接続配線43に接しないように設けられてもよいが、製造コストが高くなるため、第1の誘電体60の内側面には設けないことが好ましい。
【0041】
図5は、第1の高さ調整回路および第1の電磁結合回路を示す分解斜視図である。また、
図6は、
図5の一点鎖線X−X´に沿った、第1の高さ調整回路および第1の電磁結合回路の部分断面図である。
図5および
図6に示すように、第1の高さ調整回路44は、第1の誘電体60の側壁の下面の島状の配線43cが、第1の電磁結合回路22のパッド電極28cに、例えば銀ナノ粒子(不図示)を介して接続され、第1の誘電体60の下面の接地金属51が、第1の電磁結合回路22の接地金属29に、例えば銀ナノ粒子(不図示)を介して接続されるように、第1の電磁結合回路22上に設けられる。このようにして、第1の高さ調整回路44の第1の接続配線43は、第1の電磁結合回路22のパッド電極28cに電気的に接続される。
【0042】
なお、第1の誘電体60の上面の島状の配線43bには、
図2等に示す第1の接続用基板49上に設けられた第1の信号用リード線45が接続され、第1の誘電体60の上面の接地金属51には、
図2等に示す接地用リード線50が接続される。このように、第1の高さ調整回路44の第1の接続配線43は、第1の接続用基板上49の第1の信号用リード線45を介して、外部入力回路38の第1の外部信号線37に電気的に接続される。
【0043】
以上に説明した第1の高さ調整回路44を、第1の電磁結合回路22に整合するように第1の電磁結合回路22上に設けることによって、第1の電磁結合回路22のI字状の配線28aは、外部入力回路38が配置される高さ位置まで引き出されている。そして、第1の高さ調整回路44と外部入力回路38とを第1の接続導体45で接続することにより、第1の接続導体45でのインダクタンス(または抵抗、放射損)を小さくできるとともに、第1の高さ調整回路44と外部入力回路38との間のインピーダンスの不整合を小さくすることができる。この結果、第1の電磁結合回路22と外部入力回路38との間のインピーダンスの不整合を小さくすることができる。
【0044】
このような構造は、出力側においても同様になっている。すなわち、第2の電磁結合回路33の上面上には、第2の電磁結合回路33と外部出力回路40とを電気的に接続する第2の接続配線46を有する第2の高さ調整回路47が、例えば銀ナノ粒子によって固定されている。第2の電磁結合回路33上に、この回路33に整合した状態で電気的に接続されるように第2の高さ調整回路47を設けることによって、第2の電磁結合回路33のI字状の配線35aは、外部出力回路40が配置される高さ位置まで引き出されている。そして、第2の高さ調整回路47と外部出力回路40とを第2の接続導体48で接続することにより、第2の接続導体48の長さを短くでき、インダクタンス(または抵抗、放射損)を小さくできるとともに、第2の高さ調整回路47と外部出力回路40との間のインピーダンスの不整合を小さくすることができる。この結果、第2の電磁結合回路33と外部出力回路40との間のインピーダンスの不整合を小さくすることができる。
【0045】
第1の高さ調整回路44と外部入力回路38とは同じ高さに設けられているため、これらを接続する第1の接続導体45として、ワイヤーが適用されてもよい。しかしながら、本実施形態において、第1の接続導体45は、後述する断熱容器18の外周面上に配置される第1の接続用基板49上に設けられた第1の信号用リード線45が適用されている(
図2)。第1の信号用リード線45は、第1の高さ調整回路44の第1の接続配線43と外部入力回路38の第1の外部信号線37とを接続する。なお、第1の接続用基板49上において、第1の信号用リード線45の両側には、接地用リード線50も設けられており、これらの接地用リード線50は、第1の高さ調整回路44の接地金属51と、外部入力回路38の接地用線路42と、を接続する。
【0046】
同様に、第2の高さ調整回路47と外部出力回路40とは同じ高さに設けられているため、これらを接続する第2の接続導体48として、ワイヤーが適用されてもよい。しかしながら、本実施形態において、第2の接続導体48は、後述する断熱容器18の外周面上に配置される第2の接続用基板52上に設けられた第2の信号用リード線48が適用されている(
図2)。第2の信号用リード線48は、第2の高さ調整回路47の第2の接続配線46と外部出力回路40の第2の外部信号線39とを接続する。なお、第2の接続用基板52上において、第2の信号用リード線48の両側には、接地用リード線53も設けられており、これらの接地用リード線53は、第2の高さ調整回路47の接地金属54と、外部出力回路40の接地用線路42と、を接続する。
【0047】
図7は、以上に説明した高周波半導体増幅モジュールの冷却体および高周波半導体増幅装置を示す斜視図である。以上説明した高周波半導体増幅装置10(以下、半導体増幅装置10と称する場合もある。)は、実際には、
図7に示すように組み立てられて構成される。このような半導体増幅装置10は、冷却体11上に配置されている。したがって、半導体増幅装置10は、低温下において動作することができ、NF特性を向上させることができる。
【0048】
図8は、以上に説明した高周波半導体増幅モジュールの一断面図である。
図8に示すように、高周波半導体増幅モジュール100において、冷却体11上に配置された半導体増幅装置10は、その一部を除いて、内部が実質的に真空状態となっている断熱容器18に覆われている。断熱容器18は、例えばステンレス鋼(SUS)によって構成される金属容器である。
【0049】
冷却体11内には、冷却用の媒体(例えば液体窒素)の流路となるパイプ55が設けられており、このパイプ55は、冷却体11の側面から外部方向に延在している。断熱容器18は、冷却体11から延在するパイプ55に、断熱材56を介して固定されている。すなわち、冷却体11を含む半導体増幅装置10は、パイプ55によって、断熱容器18内の所定位置に固定されている。なお、冷却体11は、熱を能動的に外部に放熱する、いわゆる冷凍機であってもよい。
【0050】
図9は、高周波半導体増幅モジュールに適用される断熱容器の一部を示す斜視図であり、
図10は、半導体増幅装置に断熱容器を設けることによって構成される高周波半導体増幅モジュールの要部を示す斜視図である。なお、
図9に示す断熱容器の一部は、半導体増幅装置上に配置される断熱容器である。上述の
図8、および
図9、
図10にそれぞれ示すように、断熱容器18の2箇所には開口部57が設けられている。そして、断熱容器18は、第1、第2の高さ調整回路44、47の各々が開口部57内に配置されるようにして、半導体増幅装置10上に配置されている。なお、
図8に示すように、上述の第1、第2の電磁結合回路22、33は、断熱容器18の開口部57を封止するように配置され、例えば銀ナノ粒子によって固定される。第1、第2の電磁結合回路22、33がこのように固定されることによって、第1、第2の電磁結合回路22、33は、内部入力回路21、内部出力回路32の上方に、これらの回路21、32から離間するように配置される。さらに、第1、第2の電磁結合回路22、33をこのように固定することによって、断熱容器18の内部は密閉される。
【0051】
また、
図8および
図10にそれぞれ示すように、第1、第2の接続用基板49、52および外部入出力回路38、40は、開口部57近傍の断熱容器18の外周面上に配置されている。
【0052】
ここで、第1、第2の電磁結合回路22、33の上面と、断熱容器18の外周面上に配置される外部入出力回路38、40の上面と、が同程度の高さとなる程度に断熱容器18の厚さが薄ければ、前述した第1、第2の高さ調整回路44、47は不要となる。しかし、このように断熱容器18を薄くすると、十分な断熱効果が補償されないばかりか、断熱容器18の機械的強度も極めて弱くなり、高周波半導体増幅モジュール100の信頼性を損なう恐れがある。したがって、断熱容器18は、十分に厚い金属によって構成される必要がある。この結果、第1、第2の電磁結合回路22、33の上面と、断熱容器18の外周面上に配置される外部入出力回路38、40の上面と、の高さ位置は異なってしまう。したがって、上述したように、第1、第2の高さ調整回路44、47が必要となる。
【0053】
なお、
図8および
図9に示すように、断熱容器18の内面には、断熱容器18の内部方向に延在する複数の遮蔽板58が設けられている。他方、
図2、
図7、および
図8に示すように、ベース板12のうち、内部入力回路21を挟む複数個所と、増幅回路13および内部出力回路32を略囲う複数個所と、にはそれぞれ、溝59が設けられている。そして、断熱容器18は、
図8に示すように、各遮蔽板58がベース板12の各溝59内に、溝59に接触しないように挿入されるようにして配置される。このように遮蔽板58を有する断熱容器18を配置することによって、断熱容器18と半導体増幅装置10とを接触させずに、半導体増幅装置10と断熱容器18との間の空間を電磁空間的に細かく分離することができる。この結果、断熱容器18から半導体増幅装置10への熱の流入を抑制し、かつ半導体増幅装置10と断熱容器18との間の空間の共振周波数を、使用周波数帯において無視できる程度に高くすることができる。
【0054】
なお、本実施形態において、遮蔽板58および溝59は、半導体増幅装置10の内部入力回路21上の空間と、増幅回路13および内部出力回路32上の空間と、を電磁空間的に分離しているが、さらに、増幅回路13上の空間と内部出力回路32上の空間とを電磁空間的に分離するように、遮蔽板58および溝59が設けられていてもよい。
【0055】
図11は、ベース板の上面上に配置される高周波回路を示す上面図である。
図11に示すように、内部入力回路21、増幅回路13、および内部出力回路32、によって構成される高周波回路62のうち、増幅回路13および内部出力回路32は上述したように一体的に設けられている。しかしながら、内部入力回路21は、増幅回路13および内部出力回路32とは別に設けられている。
【0056】
上述の高周波半導体増幅モジュール100において、内部入力回路21は、超伝導回路である。超伝導回路は、超伝導基板23(酸化マグネシウム(MgO)基板等の基板上に、YBCO薄膜(不図示)と保護層となる金(Au)薄膜(不図示)が設けられた基板)上のYBCO薄膜及び金薄膜をドライエッチングすることにより、超伝導基板23にW字状の配線24を設けることによって構成されている。
【0057】
この超伝導回路において、W字状の配線24である超伝導配線は、常温下においては極めて高い(例えば金の1000倍程度)の抵抗値を有し、極めて低い温度(例えば80K)下においては実質的に抵抗値が0となる配線である。したがって、このような超伝導回路によって構成される内部入力回路21は、常温下においては高抵抗の保護回路として機能する一方、極めて低い温度下においては、NFをほとんど低下させない回路として機能する。
【0058】
以上に説明した第1の実施形態に係る高周波用受信モジュール1000によれば、微弱な受信信号を増幅する第2の増幅系1006に、損失が大きいリミッタ素子を適用せず、第2の増幅系1006を構成する高周波半導体増幅モジュール100の内部入力回路21に、超伝導回路が適用されている。超伝導回路は、通常使用される常温時には極めて高い抵抗になる。したがって、常温時に、サージ、大電力信号等の大電力が第2の増幅系1006に入力されても、内部入力回路21が、この回路21の後段に配置される第2の増幅素子15を保護する。また、第2の増幅系1006が微弱な受信信号を受信するときに、第2の増幅系1006を構成する高周波半導体増幅装置10は、例えば80Kまで低温にされるため、超伝導回路によって構成される内部入力回路21の抵抗を、実質的に0にすることができる。したがって、内部入力回路21による受信信号のNF増加を抑制することができる。
【0059】
このように、第1の実施形態に係る高周波用受信モジュール1000によれば、微弱な受信信号を増幅する第2の増幅系1006に使用される第2の増幅素子15の破損を抑制し、かつ受信感度を向上させることができる。
【0060】
<第2の実施形態>
図12は、第2の実施形態に係る高周波用受信モジュールの構成を示すブロック図である。
図12に示す高周波用受信モジュール2000において、第1の増幅系1005の構成は、第1の実施形態に係る高周波用受信モジュール1000と同様である。したがって、第1の増幅系1005の構成の説明は省略する。
【0061】
高周波用受信モジュール2000の第2の増幅系2001には、第1の電磁結合部19´の内部入力回路21´と、バンドパスフィルタ16´と、の間の増幅回路に超伝導回路63を配置することにより構成された、NF増加が生じにくい高周波半導体増幅モジュール200が適用される。なお、超伝導回路63の膜構成は、超伝導配線64の形状を除いて、第1の実施形態において説明した内部入力回路21と同様であるため、詳しい説明は省略する。
【0062】
図13は、第2の実施形態に係る高周波用受信モジュールの高周波半導体増幅モジュールに適用される高周波回路を示す上面図である。
図13に示すように、内部入力回路21´、増幅回路65、および内部出力回路32、によって構成される高周波回路66は、例えばアルミナ等によって構成される絶縁基板67に一体的に設けられている。特に内部入力回路21´は、超伝導回路ではなく、増幅回路65および内部出力回路32と同一の絶縁基板67の上面上に、W字状の配線24´を設けることによって構成されている。しかしながら、増幅回路65のうち、分岐・整合回路16の前段には、超伝導回路63が適用されており、この回路63の超伝導配線64は、周囲の配線68と、ワイヤー69によって接続されている。
【0063】
以上に説明した第2の実施形態に係る高周波用受信モジュール2000においても、微弱な受信信号を増幅する第2の増幅系2001に、損失が大きいリミッタ素子を適用せず、第2の増幅系2001を構成する高周波半導体増幅モジュール200の増幅回路65の一部に、超伝導回路63が適用されている。したがって、第1の実施形態に係る高周波用受信モジュール1000と同様の理由により、微弱な受信信号を増幅する第2の増幅系2001に使用される第2の増幅素子15の破損を抑制し、かつ受信感度を向上させることができる。
【0064】
<第3の実施形態>
図14は、第3の実施形態に係る高周波用受信モジュールの構成を示すブロック図である。
図14に示す高周波用受信モジュール3000において、第1の増幅系1005の構成は、第1の実施形態に係る高周波用受信モジュール1000と同様である。したがって、第1の増幅系1005の構成の説明は省略する。
【0065】
高周波用受信モジュール3000の第2の増幅系3001には、増幅回路の分岐・整合回路のランゲカプラによって構成されるバンドパスフィルタ70を、超伝導回路とすることにより構成された、NF増加が生じにくい高周波半導体増幅モジュール300が適用される。
【0066】
図15は、第3の実施形態に係る高周波用受信モジュールの高周波半導体増幅モジュールに適用される高周波回路を示す上面図である。
図15に示すように、内部入力回路21´、増幅回路71、および内部出力回路32、によって構成される高周波回路72は、例えばアルミナ等によって構成される絶縁基板73に一体的に設けられている。しかしながら、増幅回路71のうち、分岐・整合回路172のランゲカプラによって構成されるバンドパスフィルタ70には、超伝導回路が適用されており、この回路70は、周囲の配線173と、ワイヤー74によって接続されている。
【0067】
なお、
図15においては、分岐・整合回路172の全体が超伝導回路によって構成されている。実際の分岐・整合回路172は、ランゲカプラ、および整合パターンによって構成されるが、超伝導回路は、このような分岐・整合回路172のうち、ランゲカプラにのみ適用されている。もちろん、図示するようにランゲカプラ、および整合パターンによって構成される分岐・整合回路172の全体が超伝導回路によって構成されてもよい。
【0068】
以上に説明した第3の実施形態に係る高周波用受信モジュール3000においても、微弱な受信信号を増幅する第2の増幅系3001に、損失が大きいリミッタ素子を適用せず、第2の増幅系3001を構成する高周波半導体増幅モジュール300の増幅回路71の一部に、超伝導回路が適用されている。したがって、第1の実施形態に係る高周波用受信モジュール1000と同様の理由により、微弱な受信信号を増幅する第2の増幅系3001に使用される第2の増幅素子15の破損を抑制し、かつ受信感度を向上させることができる。
【0069】
<第4の実施形態>
図16は、第4の実施形態に係る高周波用受信モジュールの構成を示すブロック図である。
図16に示す高周波用受信モジュール4000において、第1の増幅系1005の構成は、第1の実施形態に係る高周波用受信モジュール1000と同様である。したがって、第1の増幅系1005の構成の説明は省略する。
【0070】
高周波用受信モジュール4000の第2の増幅系4001には、ランゲカプラによって構成されるバンドパスフィルタ16´を含む分岐・整合回路16と、第2の増幅素子15と、の間の増幅回路に超伝導回路75を配置することにより構成された、NF増加が生じにくい高周波半導体増幅モジュール400が適用される。
【0071】
図17は、第4の実施形態に係る高周波用受信モジュールの高周波半導体増幅モジュールに適用される高周波回路を示す上面図である。
図17に示すように、内部入力回路21´、増幅回路76、および内部出力回路32、によって構成される高周波回路77は、例えばアルミナ等によって構成される絶縁基板78に一体的に設けられている。しかしながら、増幅回路76のうち、分岐・整合回路16と第2の増幅素子15の間には、超伝導回路75が適用されており、この回路75の超伝導配線178は、周囲の配線79と、ワイヤー80によって接続されている。
【0072】
以上に説明した第4の実施形態に係る高周波用受信モジュール4000においても、微弱な受信信号を増幅する第2の増幅系4001に、損失が大きいリミッタ素子を適用せず、第2の増幅系4001を構成する高周波半導体増幅モジュール400の増幅回路76の一部に、超伝導回路75が適用されている。したがって、第1の実施形態に係る高周波用受信モジュール1000と同様の理由により、微弱な受信信号を増幅する第2の増幅系4001に使用される第2の増幅素子15の破損を抑制し、かつ受信感度を向上させることができる。
【0073】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0074】
例えば、第1の高さ調整回路の接地金属51は、第1の誘電体60の内面には設けられなくてもよい。また、第1の誘電体60の内部には、さらに誘電体が設けられていてもよい。また、第1の誘電体の形状についても箱状に限定されず、筒状であってもよいし、板状であってもよい。さらに、第1の接続配線43は、第1の誘電体60を貫通するように設けられなくてもよく、例えば第1の誘電体の表面に設けられてもよい。このように、第1の高さ調整回路の構造は、上述の構造に限定されない。第2の高さ調整回路の構造についても同様である。
【0075】
また、第1、第2の高さ調整回路の構造によっては、第1、第2の電磁結合回路22、33に対して電磁シールドの効果を有さない場合があり、この場合には、第1、第2の電磁結合回路22、33に電磁シールドを設けてもよい。
【0076】
また、内部入力回路21、増幅回路13、および内部出力回路32はそれぞれベース板12上に配置されており、固定具25によって上方から押さえつけられることによってベース板12に固定されているが、上記各回路21、13、32は、ベース板12に対して接着剤等によって固定されてもよい。
【0077】
また、断熱容器18に設けられる遮蔽板58は、受信信号が通り抜けないように設けられた金属製のばね等であってもよい。