特許第6334446号(P6334446)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334446
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】動く歩道
(51)【国際特許分類】
   B66B 23/14 20060101AFI20180521BHJP
   B66B 23/02 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   B66B23/14 Z
   B66B23/02 B
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-60301(P2015-60301)
(22)【出願日】2015年3月24日
(65)【公開番号】特開2016-179877(P2016-179877A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2017年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏光
(72)【発明者】
【氏名】宇津宮 博文
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和彰
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−229774(JP,A)
【文献】 特開2008−247547(JP,A)
【文献】 特開平06−247678(JP,A)
【文献】 特開昭64−011615(JP,A)
【文献】 特開2012−193025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 23/14
B66B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結されて循環移動する複数のステップと、前記ステップと前輪を接続する軸部と、前記軸部に設けられて前記ステップを駆動するようにスプロケットの間を移動する無端状のステップ鎖とを備えた動く歩道において、
前記ステップ鎖は、前記ステップの幅方向の左側に配置された左側ステップ鎖と、前記ステップの幅方向の右側に配置された右側ステップ鎖とを有するとともに、
前記左側ステップ鎖と前記右側ステップ鎖の各々に沿って設けられた平板部と、前記各々の平板部に載置して前記前輪の外側への移動を抑制するように支えるL字型の前輪レールを有し、
前記左側ステップ鎖の下方と前記右側ステップ鎖の下方との両方に、前記スプロケットの一方近傍から他方近傍に渡って、前記平板部に載置されて前記ステップ鎖に沿って配置され前記L字型の前輪レールが前記前輪の荷重を支えた状態で前記ステップ鎖のたるみを抑制するチェーンガイドを有することを特徴とする動く歩道。
【請求項2】
前記チェーンガイドは、前記ステップ鎖の往路側と復路側との両方に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の動く歩道。
【請求項3】
前記チェーンガイドは、前記ステップ鎖の全長の8割以上の範囲に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の動く歩道。
【請求項4】
前記動く歩道は、水平型の動く歩道であることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の動く歩道。
【請求項5】
前記動く歩道は、傾斜角度が15度以下の傾斜型の動く歩道であることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の動く歩道。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動く歩道に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、動く歩道は、無端状に連結されて循環移動する複数のステップと、このステップを駆動する無端状のステップ鎖とを備えている。動く歩道には、水平型の動く歩道と、傾斜型の動く歩道とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−43180号公報
【特許文献2】特開平4−125290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、動く歩道では、エスカレータとは異なり、ステップ鎖が水平、または、例えば15度以下の小さい傾斜角で延在する範囲が長いことから、ステップ鎖の自重によりステップ鎖にたるみが生じやすいという問題がある。
【0005】
これを防止するため、ステップ鎖が巻き掛けられる従動スプロケットにバネ等にて力を加え、ステップ鎖に適切な力で引張り力を与えることにより、ステップ鎖のたるみを抑制しているのが一般的である。しかしながら、動く歩道の有効長さが長い場合や、ステップ鎖の容量が大きく、単位長さ当たりのステップ鎖の重量が大きい場合等には、従動スプロケットに与える引張り力を非常に大きい力にする必要があり、装置の大型化を招くという問題がある。
【0006】
他にステップ鎖に関連するものとしては、特許文献1には、エスカレータのステップ鎖が屈曲する部位に円弧状のチェーンガイドを設置し、ステップ鎖の脈動を防止するものが記載されている。しかしながら、特許文献1では、動く歩道については考慮されておらず、ステップ鎖のたるみについても考慮されていない。
【0007】
また、特許文献2には、エスカレータのステップ鎖の下方にチェーンガイドを設置し、ステップ鎖の左右の移動量を減少させるものが記載されており、動く歩道に適用してもよいことも記載されている。しかしながら、特許文献2のチェーンガイドは、ステップ鎖のリンクプレートの左右の動きを抑制してステップ鎖及びステップが蛇行するのを防止するのが目的であるため、ステップの幅方向の左右のステップ鎖のうち片側のみに設置すればよいものである。したがって、特許文献2においても、動く歩道のステップ鎖のたるみについては考慮されていない。
【0008】
本発明の目的は、ステップ鎖のたるみを抑制した動く歩道を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、例えば、無端状に連結されて循環移動する複数のステップと、前記ステップと前輪を接続する軸部と、前記軸部に設けられて前記ステップを駆動するようにスプロケットの間を移動する無端状のステップ鎖とを備えた動く歩道において、前記ステップ鎖は、前記ステップの幅方向の左側に配置された左側ステップ鎖と、前記ステップの幅方向の右側に配置された右側ステップ鎖とを有するとともに、前記左側ステップ鎖と前記右側ステップ鎖の各々に沿って設けられた平板部と、前記各々の平板部に載置して前記前輪の外側への移動を抑制するように支えるL字型の前輪レールを有し、前記左側ステップ鎖の下方と前記右側ステップ鎖の下方との両方に、前記スプロケットの一方近傍から他方近傍に渡って、前記平板部に載置されて前記ステップ鎖に沿って配置され前記L字型の前輪レールが前記前輪の荷重を支えた状態で前記ステップ鎖のたるみを抑制するチェーンガイドを有することを特徴

【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、動く歩道において、ステップ鎖のたるみを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】動く歩道の基本構成を示す側面図。
図2図1におけるA方向矢視図。
図3図2におけるB方向矢視図。
図4図3におけるステップ鎖にたるみが発生している状態を示す図。
図5】本発明の実施例1を説明するための図2の一部に対応する図。
図6図5のC部の拡大図。
図7】実施例1の動く歩道の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施例を、図面を参照しながら説明する。尚、各図および各実施例において、同一又は類似の構成要素には同じ符号を付し、説明を省略する。
【実施例1】
【0013】
図1は、動く歩道の基本構成を示す側面図である。図2は、図1におけるA方向矢視図である。図3は、図2におけるB方向矢視図である。図4は、図3におけるステップ鎖にたるみが発生している状態を示す図である。尚、図1では、水平型の動く歩道を示している。
【0014】
動く歩道1は、無端状に連結されて循環移動する複数のステップ3と、このステップ3を駆動する無端状のステップ鎖7とを備えている。ステップ鎖7は、ステップ3の幅方向の左側に配置された左側ステップ鎖(図2の左側のステップ鎖7)と、ステップ3の幅方向の右側に配置された右側ステップ鎖(図2の右側のステップ鎖7)とを有する。
【0015】
より具体的には、動く歩道1は、建築構造物に設置された主枠2と、主枠2内に設置された前輪レール13上を案内されて循環移動する複数のステップ3と、これらステップ3を駆動し、主枠2に設置された駆動装置4と、ステップ3の移動方向に沿って両側に位置する欄干5とを有する。
【0016】
ステップ3は、幅方向の両側を左右一対の無端状のステップ鎖7に連結されているため、結果的に複数個のステップ3は無端状に連結されている。これら左右のステップ鎖7は、主枠2内に軸支された駆動スプロケット8と、同じく主枠2内に軸支された従動スプロケット9との間に巻き掛けられている。
【0017】
駆動スプロケット8は、駆動装置4と駆動チェーン6を介して巻き掛けられており、駆動装置4が運転することによりステップ鎖7が移動し、ステップ3が移動することができる。従動スプロケット9は、主枠2に固定されておらず、従動スプロケット引張り軸15にて常に引張り力を受けている。引張り力を与えているのは、従動スプロケット引張りバネ16であり、従動スプロケット引張りバネ16の他方は主枠2に支えられている。従動スプロケット引張り軸15近傍には、主枠2に固定されたステップ鎖安全スイッチ17があり、ステップ鎖7の思わぬ切断や伸び等の異常を検出することができる。ステップ鎖7の異常を検出すると、乗客コンベアは停止する。
【0018】
一方、ステップ鎖7には、ステップのピッチに合わせて前輪軸11が一定間隔で取り付けられており、前輪軸11に回転可能に設置してあるステップ軸受10を介して、ステップ3が取り付けられている。
【0019】
前輪12は、前輪軸11の両端に設置してあり、ステップ鎖7の移動に連動して移動することができる。前輪12の移動方向を案内しているのは前輪レール13であり、前輪レール13は主枠2に固定されている。前輪レール13は、ステップ3上の乗客を搭乗させる往路側及び乗客を搭乗させない復路側のいずれにも設置されており、ステップ鎖7及びステップ3は常に前輪レール13に案内されている。尚、ステップ3には、図示しない後輪が設けられている場合もあるし、隣のステップ3の前輪12が後輪を兼ねている場合もあるので、「前輪」「前輪軸」「前輪レール」は単に「ガイドローラ」「軸」「ガイドレール」と呼ばれる場合もある。
【0020】
図3は、前輪レール13、前輪12、ステップ鎖7の関係を示した図である。機器が正常な状態であれば図3の如くステップ鎖7はスラスト方向へ引張り力を受けているため、直線状となっている。
【0021】
ところが、ステップ鎖7に加わる引張り力が不足すると、図4のように隣接する前輪12間にてステップ鎖7がたるんでしまう場合がある。前輪12部近傍のステップ鎖7は、前輪12が前輪レール13に案内されているため下降せず正常な高さ寸法のところにとどまることができる。しかし前輪12から遠い位置のステップ鎖7は前輪レール13に案内されていないため、ステップ鎖7の自重によりたるみを生じてしまう。
【0022】
そこで、これを解消するための構造を、図5図7を用いて説明する。図5は、本発明の実施例1を説明するための図2の一部に対応する図である。図6は、図5のC部の拡大図である。図7は、実施例1の動く歩道の側面図である。
【0023】
図5図7に示すように、ステップ鎖7の下方に、ステップ鎖7に沿って配置されステップ鎖7のたるみを抑制するチェーンガイド14を設ける。チェーンガイド14の幅方向寸法は、ステップ鎖のリンクプレート7Aに挟まれているステップ鎖の鎖ローラ7Bの幅寸法以下とする。その結果、ステップ鎖7の鎖ローラ7Bは、チェーンガイド14上面を転がることが可能となる。図5では、左側のチェーン鎖7の下方に設けられたチェーンガイド14を示しているが、図示しない右側のチェーン鎖7においても同様に、右側のチェーン鎖7の下方にチェーンガイド14を設けている。これにより、ステップ鎖7のたるみを抑制することができる。
【0024】
また、図6に示すように、ステップ鎖7の鎖ローラ7Bと、チェーンガイド14上面との隙間寸法αは、ゼロに限りなく近い寸法とするのが望ましい。仮に隙間寸法αが完全なゼロでなくとも、ステップ鎖7には一定値以上のたるみが発生しなくなるため、充分な効果が期待できる。隙間寸法αは、1mm以下であることが望ましい。
【0025】
さらに、上述のチェーンガイド14は、図7の如くステップ鎖7の移動範囲全域もしくはおおむね全域に対して設置するのが望ましい。また、チェーンガイド14は、ステップ鎖7の往路側と復路側との両方に設けられていることが望ましい。例えば、チェーンガイド14は、ステップ鎖7の全長の8割以上の範囲に設けられていることが望ましい。
【0026】
ステップ鎖7がたるむと、従動スプロケット9が変位し、それが一定以上大きくなると、ステップ鎖安全スイッチ17が作動して動く歩道1が停止してしまう可能性があるが、実施例1によれば、ステップ鎖7のたるみを抑制することでステップ鎖7の全長変位量を小さくすることができるため、その結果、従動スプロケット9の移動量も小さくすることができ、ステップ鎖7のたるみを原因とするステップ鎖安全スイッチ17の不要動作は発生しないため、それを原因とする動く歩道1の不要停止を回避できる。
【0027】
さらに、従動スプロケット引張りバネ16での引張り力を大きい力にする必要が無い為、ステップ鎖7及び周辺機器を大きな引張り力に耐えられるのに必要な、強靭な構造とする必要性が無くなり、簡素な構造にできることが期待できる。
【実施例2】
【0028】
実施例1において、ステップ鎖7の鎖ローラ7Bと、チェーンガイド14上面との隙間寸法αを完全なゼロとし、常にチェーンガイド14上面をステップ鎖7の鎖ローラ7Bが案内出来るようにすれば、前輪12が必要無くなる上、前輪レール13も無くすことが可能となり、大幅な構造の簡略化が望める。
【実施例3】
【0029】
実施例1では水平型の動く歩道1に対してチェーンガイド14を設置する例を示したが、これに代えて、傾斜角度が15度以下の傾斜型の動く歩道に適用してもよい。傾斜角度が大きい場合は、ステップ鎖7の自重の作用する方向がステップ鎖7のたるみを抑制する方向に働くためステップ鎖7はたるみにくいが、例えば傾斜角度が15度以下のように小さな傾斜角の動く歩道の場合にはステップ鎖7がたるみやすいので、チェーンガイド14によってたるみを抑制することが望ましい。
【0030】
以上、本発明の実施例を説明してきたが、これまでの各実施例で説明した構成はあくまで一例であり、本発明は、技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。また、それぞれの実施例で説明した構成は、互いに矛盾しない限り、組み合わせて用いても良い。
【符号の説明】
【0031】
1 動く歩道
2 主枠
3 ステップ
4 駆動装置
5 欄干
6 駆動鎖
7 ステップ鎖
7A ステップ鎖のリンクプレート
7B ステップ鎖の鎖ローラ
8 駆動スプロケット
9 従動スプロケット
10 ステップ軸受
11 前輪軸
12 前輪
13 前輪レール
14 チェーンガイド
15 従動スプロケット引張り軸
16 従動スプロケット引張りバネ
17 ステップ鎖安全スイッチ
α 鎖ローラとチェーンガイドとの隙間寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7