【実施例1】
【0013】
図1は、動く歩道の基本構成を示す側面図である。
図2は、
図1におけるA方向矢視図である。
図3は、
図2におけるB方向矢視図である。
図4は、
図3におけるステップ鎖にたるみが発生している状態を示す図である。尚、
図1では、水平型の動く歩道を示している。
【0014】
動く歩道1は、無端状に連結されて循環移動する複数のステップ3と、このステップ3を駆動する無端状のステップ鎖7とを備えている。ステップ鎖7は、ステップ3の幅方向の左側に配置された左側ステップ鎖(
図2の左側のステップ鎖7)と、ステップ3の幅方向の右側に配置された右側ステップ鎖(
図2の右側のステップ鎖7)とを有する。
【0015】
より具体的には、動く歩道1は、建築構造物に設置された主枠2と、主枠2内に設置された前輪レール13上を案内されて循環移動する複数のステップ3と、これらステップ3を駆動し、主枠2に設置された駆動装置4と、ステップ3の移動方向に沿って両側に位置する欄干5とを有する。
【0016】
ステップ3は、幅方向の両側を左右一対の無端状のステップ鎖7に連結されているため、結果的に複数個のステップ3は無端状に連結されている。これら左右のステップ鎖7は、主枠2内に軸支された駆動スプロケット8と、同じく主枠2内に軸支された従動スプロケット9との間に巻き掛けられている。
【0017】
駆動スプロケット8は、駆動装置4と駆動チェーン6を介して巻き掛けられており、駆動装置4が運転することによりステップ鎖7が移動し、ステップ3が移動することができる。従動スプロケット9は、主枠2に固定されておらず、従動スプロケット引張り軸15にて常に引張り力を受けている。引張り力を与えているのは、従動スプロケット引張りバネ16であり、従動スプロケット引張りバネ16の他方は主枠2に支えられている。従動スプロケット引張り軸15近傍には、主枠2に固定されたステップ鎖安全スイッチ17があり、ステップ鎖7の思わぬ切断や伸び等の異常を検出することができる。ステップ鎖7の異常を検出すると、乗客コンベアは停止する。
【0018】
一方、ステップ鎖7には、ステップのピッチに合わせて前輪軸11が一定間隔で取り付けられており、前輪軸11に回転可能に設置してあるステップ軸受10を介して、ステップ3が取り付けられている。
【0019】
前輪12は、前輪軸11の両端に設置してあり、ステップ鎖7の移動に連動して移動することができる。前輪12の移動方向を案内しているのは前輪レール13であり、前輪レール13は主枠2に固定されている。前輪レール13は、ステップ3上の乗客を搭乗させる往路側及び乗客を搭乗させない復路側のいずれにも設置されており、ステップ鎖7及びステップ3は常に前輪レール13に案内されている。尚、ステップ3には、図示しない後輪が設けられている場合もあるし、隣のステップ3の前輪12が後輪を兼ねている場合もあるので、「前輪」「前輪軸」「前輪レール」は単に「ガイドローラ」「軸」「ガイドレール」と呼ばれる場合もある。
【0020】
図3は、前輪レール13、前輪12、ステップ鎖7の関係を示した図である。機器が正常な状態であれば
図3の如くステップ鎖7はスラスト方向へ引張り力を受けているため、直線状となっている。
【0021】
ところが、ステップ鎖7に加わる引張り力が不足すると、
図4のように隣接する前輪12間にてステップ鎖7がたるんでしまう場合がある。前輪12部近傍のステップ鎖7は、前輪12が前輪レール13に案内されているため下降せず正常な高さ寸法のところにとどまることができる。しかし前輪12から遠い位置のステップ鎖7は前輪レール13に案内されていないため、ステップ鎖7の自重によりたるみを生じてしまう。
【0022】
そこで、これを解消するための構造を、
図5〜
図7を用いて説明する。
図5は、本発明の実施例1を説明するための
図2の一部に対応する図である。
図6は、
図5のC部の拡大図である。
図7は、実施例1の動く歩道の側面図である。
【0023】
図5〜
図7に示すように、ステップ鎖7の下方に、ステップ鎖7に沿って配置されステップ鎖7のたるみを抑制するチェーンガイド14を設ける。チェーンガイド14の幅方向寸法は、ステップ鎖のリンクプレート7Aに挟まれているステップ鎖の鎖ローラ7Bの幅寸法以下とする。その結果、ステップ鎖7の鎖ローラ7Bは、チェーンガイド14上面を転がることが可能となる。
図5では、左側のチェーン鎖7の下方に設けられたチェーンガイド14を示しているが、図示しない右側のチェーン鎖7においても同様に、右側のチェーン鎖7の下方にチェーンガイド14を設けている。これにより、ステップ鎖7のたるみを抑制することができる。
【0024】
また、
図6に示すように、ステップ鎖7の鎖ローラ7Bと、チェーンガイド14上面との隙間寸法αは、ゼロに限りなく近い寸法とするのが望ましい。仮に隙間寸法αが完全なゼロでなくとも、ステップ鎖7には一定値以上のたるみが発生しなくなるため、充分な効果が期待できる。隙間寸法αは、1mm以下であることが望ましい。
【0025】
さらに、上述のチェーンガイド14は、
図7の如くステップ鎖7の移動範囲全域もしくはおおむね全域に対して設置するのが望ましい。また、チェーンガイド14は、ステップ鎖7の往路側と復路側との両方に設けられていることが望ましい。例えば、チェーンガイド14は、ステップ鎖7の全長の8割以上の範囲に設けられていることが望ましい。
【0026】
ステップ鎖7がたるむと、従動スプロケット9が変位し、それが一定以上大きくなると、ステップ鎖安全スイッチ17が作動して動く歩道1が停止してしまう可能性があるが、実施例1によれば、ステップ鎖7のたるみを抑制することでステップ鎖7の全長変位量を小さくすることができるため、その結果、従動スプロケット9の移動量も小さくすることができ、ステップ鎖7のたるみを原因とするステップ鎖安全スイッチ17の不要動作は発生しないため、それを原因とする動く歩道1の不要停止を回避できる。
【0027】
さらに、従動スプロケット引張りバネ16での引張り力を大きい力にする必要が無い為、ステップ鎖7及び周辺機器を大きな引張り力に耐えられるのに必要な、強靭な構造とする必要性が無くなり、簡素な構造にできることが期待できる。