(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
給水源から供給される水を通水するように地中に埋設されている給水管に接続され、地上の出水部に通じる通水路を開閉すると共に、凍結を防止できるように自動的に水抜きを行うことができる自動水抜き機構を備える不凍水栓柱であって、
前記給水管に接続される接続部の上側に設けられて水抜き機構を備える通水弁機構と、該通水弁機構の上側に連通される立上げ通水路と、該立上げ通水路に連通されて出水できるように設けられた前記出水部と、前記通水弁機構を操作する操作部とが設けられ、
出水の際には前記立上げ通水路と前記出水部との連通部を開けて連通させ、止水の際や水抜きの際には前記出水部と前記立上げ通水路との連通部を閉じて該出水部から該立上げ通水路への通気を阻止する吸気遮断弁と、
前記立上げ通水路に連通するように設けられた自動水抜き用の吸気開閉機構とを備え、
該自動水抜き用の吸気開閉機構が、外部に連通する吸気口を有し、前記立上げ通水路に前記連通部の下方に設けられた吸気用連通部を介して連通する通気路を有すると共に、出水の際には水が前記吸気口の側へ洩れることを阻止するように前記通気路を閉じ、水抜きの際には前記吸気口からの吸気を許容するように前記通気路を開ける吸気逆止弁と、前記吸気口の側に設けられ、外気温度が設定温度より高いときは該吸気口からの吸気を前記吸気逆止弁の前で阻止するように前記通気路を閉じ、外気温度が設定温度以下のときは該吸気口からの吸気を許容して水抜きが自動的にできるように前記通気路を開ける吸気用の温度感知弁部とを具備することを特徴とする自動水抜き機構を備える不凍水栓柱。
前記出水部が、出水路及び出水口が設けられた出水部本体と、該出水部本体に内蔵された筒状本体と、該筒状本体に内蔵された前記自動水抜き用の吸気開閉機構とを具備し、該自動水抜き用の吸気開閉機構が、前記出水路の先端側で外部に連通する前記吸気口を有すると共に、前記立上げ通水路に前記吸気用連通部を介して連通するように前記出水部本体の根元部から先端部の間で貫通孔状に形成された前記通気路を有することを特徴とする請求項1記載の自動水抜き機構を備える不凍水栓柱。
前記吸気用の温度感知弁部が、物質の熱による体積変化を利用して開閉弁体として機能するサーモエレメントを構成要素として備え、外気温度が設定温度より高いときは該サーモエレメントが前記通気路を閉じ、外気温度が設定温度以下のときは該サーモエレメントが前記通気路を開けるように設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の自動水抜き機構を備える不凍水栓柱。
前記サーモエレメントが、開閉弁体としての圧接方向の両側に配されたそれぞれのコイルスプリングを介して保持され、該サーモエレメントによる開閉弁体としての動作が適切になされると共に圧接の圧力の調整がなされていることを特徴とする請求項3記載の自動水抜き機構を備える不凍水栓柱。
前記吸気逆止弁が、該吸気逆止弁の開閉弁体がコイルスプリングによって通気路を閉じる方向に付勢され、常時は閉じるように構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の自動水抜き機構を備える不凍水栓柱。
前記通水弁機構が、前記給水管に上下方向に連通する入水口、及び該入水口と前記立上げ通水路とを連通する通水路を備える通水弁本体と、該通水弁本体の内部で上下方向に貫く貫通部を形成するように設けられたスリーブ部に内嵌して上下方向に所要の長さ範囲で移動できるように配されたスプール弁とを具備し、
該スプール弁が、スプール本体の下端部に設けられ、下方に位置する際に前記入水口に内嵌シールすることで該入水口を閉じて止水する通水開閉弁部と、該通水開閉弁部によって止水された状態における水抜きのためにスプール本体の中途部に設けられ、下方に位置する際に、前記スリーブ部の中途部で該スリーブ部の内部に連通して設けられた排水路と前記通水路とを連通させる排水連通口を開ける排水開閉弁部と、スプール本体の上端部側に設けられ、前記スリーブ部の前記貫通部の上端部側に内嵌シールした状態を維持して上下方向に所要の長さ範囲で位置できるスプールのシール部とを具備し、前記立上げ通水路に挿入されて上下方向に所定の長さの範囲で移動できる操作軸体を介して連係されて前記操作部によって操作されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の自動水抜き機構を備える不凍水栓柱。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る自動水抜き機構を備える不凍水栓柱の形態例を添付図面(
図1〜10)と共に詳細に説明する。先ず、
図1〜3に基づいて、本発明に関連する不凍水栓柱の形態例を説明する。この
図1〜3に示した不凍水栓柱は、本発明に係る自動水抜き機構を備えるものではないが、給水源から供給される水を通水するように地中に埋設されている給水管に接続され、地上の出水部に通じる通水路を開閉すると共に、凍結を防止できるように水抜きを行うことができるものであって、
図4〜10に示した本発明に係る自動水抜き機構を備える不凍水栓柱に適切に適用できる通水弁機構10の形態例を備えるものである。なお、給水源の典型例は水道である。
【0017】
この不凍水栓柱には、基本的な構成として、
図1などに示すように、前記給水管に接続される接続部11の上側に設けられて水抜き機構を備える通水弁機構10と、その通水弁機構10の上側に連通される立上げ通水路30と、その立上げ通水路30に連通されて出水できるように設けられた出水部50と、通水弁機構10を操作する操作部40とが設けられている。なお、本形態例において、立上げ通水路30は鉛直に設置されるように設けられ、出水部50は水平に延びる状態に設置されるように設けられている。
【0018】
そして、この不凍水栓柱は、通水弁機構10が、前記給水管に上下方向に連通する入水口12、及びその入水口12と立上げ通水路30とを連通する通水路15を備える通水弁本体13と、その通水弁本体13の内部で上下方向に貫く貫通部17を形成するように設けられたスリーブ部16に内嵌して上下方向に所要の長さ範囲で移動できるように配されたスプール弁20とを具備する。
【0019】
さらに、そのスプール弁20が、スプール本体20aの下から上に向かって順に、そのスプール本体20aと一体化した形態で、通水開閉弁部21と、排水開閉弁部22と、スプールのシール部25とを具備する。
通水開閉弁部21は、スプール本体20aの下端部に設けられ、下方に位置する際に入水口12に内嵌シールすることでその入水口12を閉じて止水するように設けられている。
なお、本形態例の入水口12は、不凍水栓柱の下端部であって、給水源である水道などの給水管に接続される通水弁機構10の下端部を構成する接続部11の下端開口部11aから連続して、その下端開口部11aの内径を絞った形状に形成されている。また、この入水口12は、水道管などの給水管から下端開口部11aを通して連通する開口であると共に、上下方向に所要の長さ範囲で同径の内径となるように設けられている。
【0020】
本形態例の通水開閉弁部21では、下端から上方に向かって拡径するテーパ状に設けられたテーパ部21aと、そのテーパ部21aの上部に節状に形成された周状シール部21bと、その周状シール部21bの上側に設けられて下方への移動を阻止するストッパー座面21cとを備えている。すなわち、本形態例の通水開閉弁部21における入水口12の内周に内嵌シールする部分については、周状シール部21bの直径が最大径となっていて、その上側がくびれて、さらにその上側が、ストッパー座面21c(平坦な面)が形成されるように拡径している。これによれば、周状シール部21bのリング状外周による線的なシールになるため、小さな力の操作によってシールができ、そのシールの確実性を向上させることができる。
【0021】
なお、この通水開閉弁部21の他の形態例としては、先端が入水口12に挿入されるためテーパ状に形成されて根元側が円柱状に形成されたニードル状の形状とし、入水口12の内周をリング状に線的に接触してシールできる形状とすることができる。つまり、入水口12の内周に、リング状に突出した節状部を設け、その中に円柱状に形成された部分が挿入されて上下方向に移動できる構造とすることができる。これによっても線的なシールになるため、小さな力の操作で簡単にシールがなされ、そのシールの確実性を向上させることができる。
【0022】
そして、排水開閉弁部22は、通水開閉弁部21によって止水された状態における水抜きのためにスプール本体20aの中途部に設けられ、下方に位置する際に、スリーブ部16の中途部でそのスリーブ部16の内部に連通して設けられた排水路18と、通水路15とを連通させる排水連通口19を開けるように設けられている。なお、排水路18は、水抜きの際の排水を外部(地中)へ放出するための水路であり、地中に排水口18bが配されて埋設されるように設けられている。
【0023】
また、スプールのシール部25は、スプール本体20aの上端部側に設けられ、スリーブ部16の貫通部17の上端部側に内嵌シールした状態を維持して上下方向に所要の長さ範囲で位置できるように設けられている。
これによれば、通水弁機構10が適切に機能するように、スプール本体20aのシールがなされ、通水路15から貫通部17を通して排水路18へ通水がなされることを適切に阻止できると共に、貫通部17の側から通水路15へ連通して水が洩れ出ることも適切に阻止できる。
【0024】
そして、スプール弁20は、立上げ通水路30に挿入されて上下方向に所定の長さの範囲で移動できる操作軸体35を介して連係されて操作部40によって操作されるように設けられている。なお、本形態例では、入水口12、スプール弁20、立上げ通水路30及び操作軸体35の軸心を一致させて、上下方向へ一本に整列した形態となっており、さらに詳細には鉛直方向に一直線に延びる形態になっている。
【0025】
以上の構成による不凍水栓柱によれば、
図1の状態では、通水開閉弁部21が入水口12を開けて通水の状態になり、
図2及び
図3に示すように、操作部40によって操作軸体35を下方へ移動させると、通水開閉弁部21が入水口12を塞いで止水された状態にすることができる。また、反対に、止水の状態(
図2参照)から通水状態(
図1参照)に操作すると、通常の水栓と同じように出水が即座になされ、通常の不凍栓のようなタイムラグが生じない。そして、
図3に示すように、通水開閉弁部21を最下点に位置させた状態では、排水開閉弁部22が排水連通口19を開けることで水抜き状態になる。
これによれば、通水弁機構10は複雑な構成や形態となることなく、操作部40を通常の水栓のように操作するだけで、通水と、止水及び水抜きとが簡単にできると共に、スプール弁20によるため、小さな力で確実な操作を行うことができる。
【0026】
なお、本形態例では、スプール弁20が操作軸体35の下端に連結固定され、操作軸体35の上端に操作部40の操作ハンドル42が連結固定されており、一本の棒体状に一体化された形態になっている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、返しスプリングとの組み合わせによって押圧動作によって操作される形態の場合は、連結固定によって一体化されている必要はなく、連係動作がなされる構成であればよい。
【0027】
ここで、本形態例の操作部40の構成と、その操作部40と操作軸体35との連結形態など、各部材の装着形態について詳細に説明する。
先ず、本形態例では、スプール弁20を上下動させる操作軸体35の上下動機構が、ネジ機構41によって構成されている。すなわち、操作ハンドル42を開栓の側へ回せば、ネジ機構41によって操作軸体35が上昇して通水開閉弁部21が入水口12を開けると共に排水開閉弁部22が排水連通口19を閉じるように作動し、反対に操作ハンドル42を閉栓の側に回せば、ネジ機構41によって操作軸体35が下降して通水開閉弁部21が入水口12を閉じると共に排水開閉弁部22が排水連通口19を開ける方向に作動する。これによれば、簡易な構成であるが信頼性が高いと共に、操作ハンドル42によって確実且つ容易に操作を行うことができる。また、操作ハンドル42を回すことによって開栓している範囲において、その回す度合いを調整することで、通常の水栓と同様に出水の流量調整をすることができる。なお、本発明は、ネジ機構41に限定されず、例えば、押圧することで所要の長さを押し下げるプッシュ式の操作方法やレバー式の操作方法を採用することなど、既存の上下動機構を適宜選択的に利用できるのは勿論である。
【0028】
また、本形態例の操作軸体35は、スプール弁20の上端部に連続して下端部で固定された連結ロッド35aと、その連結ロッド35aの上端部に連続して固定されている軸体であって立上げ通水路30の上端部においてその軸体を通すための開口36をシールする軸体シール部35bと、その軸体シール部35bの上端部に連続して固定されている軸体であってネジ機構41の雄螺子部41aになっている部分とが、一体的且つ一直線(同一軸)に連結されていることで構成されている。そして、その雄螺子部41aの上側の部分であって操作軸体35の上端部が、操作ハンドル42に固定されており、本形態例の操作ハンドル42には、操作用の突起部43が設けられている。なお、44は操作部上面キャップであり、操作ハンドル42の上面に装着されてカバーしている。また、軸体シール部35bには、O‐リング35cが外嵌されており、そのO‐リング35cが開口36に内嵌シールされている。
【0029】
また、本形態例の立上げ通水路30は、立上げ管31と、その立上げ管31の上側に連続して装着された二段の管継手部32によって構成されている。なお、この立上げ通水路30の構成は、本形態例に限定されず、適宜に設計・構成できることは勿論である。そして、管継手部32の上端部には、ネジ機構41の雌螺子部41bが設けられており、その管継手部32の上端にはカバーキャップ34が装着されている。
また、39はカバー筒体であり、立上げ管31をカバーするように、通水弁機構10から出水部50の下側までの間に渡って、立上げ管31や操作軸体35と同心に装着されている。
【0030】
そして、本形態例では、スプール弁20の通水開閉弁部21が下方に位置して入水口12に対して内嵌シールすることで止水をした第1の段階では、排水開閉弁部22によって排水路18と通水路15との連通が閉じられた状態を維持し、通水開閉弁部21が入水口12に対する内嵌シールを維持して止水した状態でさらに下方に位置した第2の段階では、排水開閉弁部22が下方に位置することによって排水路18と通水路15とを連通する排水連通口19が開いて水抜きがなされるように、通水開閉弁部21と排水開閉弁部22との位置関係が設けられている。
【0031】
これによれば、不凍栓機能のない通常の水栓のように操作部40を操作するだけで、
図1に示すように出水のための通水ができると共に、
図2に示すように、通水開閉弁部21を下方の第1の段階の位置(中途位置)に保持させて止水状態とするが、排水開閉弁部22が排水連通口19を閉じた状態を維持して水抜き状態にはならない。そして、
図3に示すように、通水開閉弁部21をさらに下方の第2の段階の位置(最下点)に移動すると、止水状態を維持し、排水開閉弁部22が排水連通口19を開けることで水抜き状態になる。
これによれば、通水弁機構10は複雑な構成や形態となることなく、操作部40を通常の水栓のように操作するだけで、通水(
図1参照)と、止水(
図2参照)と、水抜き(
図3参照)とが簡単にできると共に、スプール弁20によるため、小さな力で確実な操作を容易に行うことができる。
【0032】
次に、通水弁本体13に設けられた通水路15及び排水路18の具体的な形態例について、詳細に説明する。
先ず、通水弁本体13の通水路15と、立上げ通水路30とは、通水弁本体13の上部に上下方向に開口する通水連通口29を通して連通している。
【0033】
本形態例の通水弁本体13の通水路15は、スリーブ部16の貫通部17を迂回する通路として入水口12と立上げ通水路30とを連通するように設けられている。この通水路15の下端部は、スリーブ部16の通水ポート部15aにもなっており、前記給水管との接続部11に形成された下端開口部11aを給水インポートとすると、この通水ポート部15a(通水路15の下端部)は給水アウトポートになっている。さらに、この通水ポート部15aは、排水路18と連通する排水インポートにもなっている。
【0034】
また、スリーブ部16の通水ポート部15aの上側には、排水開閉弁部22が内嵌シールできるように排水連通口19が設けられている。この排水連通口19は、通水ポート部15aと排水路18とが連通するようにスリーブ部16の中途部に設けられた排水アウトポート部18aとの間を連通する通路となっている。また、この排水連通口19は、上下方向に所要の長さ範囲で同径の内径となるように設けられている。これによれば、排水開閉弁部22については、上下方向の所定の長さ範囲で内嵌シールして排水連通口19を閉じた状態を維持して、通水開閉弁部21と同様にスプール本体20aと一体的にスライド移動できるようになっている。
【0035】
排水アウトポート部18aは、排水路18の一部を形成しており、その排水路18には、上下に延長されている上下排水路部18cがあって、その上下排水路部18cには、重力を利用して排水路18を閉じる重量タイプの排水用の逆止弁18dが挿入されて配されている。
【0036】
スプールのシール部25は、スリーブ部16の上部側で上下方向に貫通した案内口17aに挿入されて内嵌シールするように配されている。案内口17aは、上下方向に所要の長さ範囲で同径の内径となるように設けられており、この案内口17aを閉じた状態を維持して、スプールのシール部25が上下方向の所定の長さ範囲でスライド移動できるようになっている。
【0037】
また、本形態例の排水開閉弁部22とスプールのシール部25とのスリーブ部16の貫通部17(排水連通口19、案内口17a)に内嵌してシールされる部位が、O−リング22a、25aによって構成されている。これによれば、リング状の線的シールになるため、シールを確実に行うことができると共に、操作のための力を小さくすることができるため、操作性を向上できる。
【0038】
23は圧抜き孔であり、O−リング22aが嵌められたリング状溝を形成する縁部の上側の部分に、前記リング状溝から上方外側に開口する貫通孔として、複数が設けられている。これによれば、O−リング22aにかかる圧力を適切に抜いて、そのO−リング22aが前記リング状溝から離脱することを防止するように作用する。
【0039】
次に、
図4〜10に基づいて、本発明に係る自動水抜き機構(自動水抜き用の吸気開閉機構55)を備える不凍水栓柱の形態例について詳細に説明する。
先ず、
図4などに示すように、自動水抜き用の吸気開閉機構55が作動するために、出水の際には立上げ通水路30と出水部50との連通部33を開けて連通させ、止水の際や水抜きの際には出水部50と立上げ通水路30との連通部33を閉じて出水部50から立上げ通水路30への通気を阻止する吸気遮断弁37が設けられている。本形態例の吸気遮断弁37は、操作軸体35の上部にリング状の開閉弁体37aが設けられ、その開閉弁体37aによって円管状の立上げ通水路30の上端部になっている連通部33を開閉できるように構成されている。
この吸気遮断弁37によれば、通水状態から、開閉弁体37aが立上げ通水路30の上端部を塞いで連通部33が閉じられることで止水状態になると、立上げ通水路30が密封されるため、その立上げ通水路30内に水が充填された止水状態が、設定温度よりも高い場合には、維持されることになる(
図7参照)。
【0040】
また、本形態例では、出水部50が、出水路52及び出水口53が設けられた出水部本体51と、該出水部本体51に内蔵された筒状本体56と、該筒状本体56に内蔵された自動水抜き用の吸気開閉機構55とを具備する。そして、この自動水抜き用の吸気開閉機構55は、吸気逆止弁60及び吸気用の温度感知弁部70と具備する。
【0041】
自動水抜き用の吸気開閉機構55は、出水路52の先端側で外部に連通する吸気口57を有すると共に立上げ通水路30に連通部33の下方に設けられた吸気用連通部38を介して連通するように出水部本体51の根元部から先端部の間で貫通孔状に形成された通気路58を有するように設けられている。本形態例の吸気用連通部38は、連通部33及び吸気遮断弁37や水平に延びた通気路58よりも下側に設けられている。つまり、この吸気用連通部38は、止水の際に、水が溜まることができる部分の可及的に高い位置にある根元部側の通気路58aよりも低い位置にあって、排水の際に空気が適切に流れる位置にある。
なお、自動水抜き用の吸気開閉機構55は、出水部本体51に内蔵されることに限定されず、吸気用連通部38を介して立上げ通水路30に連通し、その吸気用連通部38よりも上方に位置する構成とすれば、他の位置にも適切に配置することができる。
【0042】
吸気逆止弁60は、筒状本体56に内蔵されて吸気用連通部38の側に設けられ、出水の際には水が吸気口57の側へ洩れることを阻止するように通気路58を閉じ、水抜きの際には吸気口57からの吸気を許容するように通気路58を開ける構成になっている。
【0043】
吸気用の温度感知弁部70は、筒状本体56に内蔵されて吸気口57の側に設けられ、外気温度が設定温度より高いときはその吸気口57からの吸気を吸気逆止弁60の前で阻止するように通気路58を閉じ、外気温度が設定温度以下のときは吸気口57からの吸気を許容して水抜きが自動的にできるように通気路58を開けるように開閉弁体機構として機能する。
【0044】
これによれば、外気温度が設定温度以下のときに、吸気口57からの吸気を許容するように通気路58を自動的に開けることで、立上げ通水路30と通水路15内の真空が破壊されて、その立上げ通水路30と通水路15を満たした水が、排水連通口19及び排水路18を通って、排水口18bから排水されて自動的に水抜きがなされる。すなわち、使用者がハンドルなどの操作部40の一つの操作をするだけで、凍結するおそれがある必要な気象条件のときのみに水抜きが自動的になされ、常時は、立上げ通水路30と通水路15を水が満たした状態となっているため、不凍栓の機能のない通常の蛇口のように操作部40で開栓する操作を行うと、即座に水が出ることになる。従って、通常の不凍水栓の場合には空気が抜けるまでの間について出水を待つ必要があるのに対して、本形態例によれば、外気温度が設定温度よりも高いときは即座に水がでるため快適に利用できると共に、外気温度が設定温度以下のときは水抜きの操作が自動的になされるため、使用者は単純に操作部40で開け閉めの操作を行うだけでよく、その操作が容易であり、利便性を向上できる。
【0045】
本形態例の吸気用の温度感知弁部70は、物質の熱による体積変化を利用して開閉弁体として機能するサーモエレメント71を構成要素として備え、外気温度が設定温度より高いときはそのサーモエレメント71によって、筒状本体56に設けられた通気路58を閉じ、外気温度が設定温度以下のときはその通気路58を開けるように設けられている。
【0046】
本形態例のサーモエレメント71は、ワックスの体積膨張と収縮を利用して温度感知と駆動とを共存させた部品で、温度が高くなればピストン71bが突出して全体長が伸び、温度が低くなればピストン71bが外力によって引き込まれて全体長が短くなることができるものを用いている。さらに詳細には、ある温度より高くなると液体化して体積が膨張し、逆にある温度以下になると固体化して体積を縮小するワックスの性質を利用したワックスエレメントを用いている。また、本形態例のサーモエレメント71は、水とお湯を混合して温水の温度調整を行うことができる水栓などに利用されているものであり、価格を含めて容易に入手できる利点もある。
【0047】
なお、本発明に係る吸気用の温度感知弁部70については、上述したようなサーモエレメント71に限定されるものではなく、例えば、形状記憶合金によって設けられた部材を構成要素として用い、通気路58の開閉を行う開閉弁の駆動機構とすることができる。
【0048】
また、本形態例の吸気用の温度感知弁部70は、筒状本体56の筒の長さ方向の中途部であってその筒の軸心に小径の貫通孔として形成された絞り孔状の通気孔59を開閉することで、通気路58を開閉できるように構成されている。この通気孔59の開口径は、立上げ通水路30と通水路15内の真空を破壊する際に適切に大気と連通できる大きさであれば良く、より小径であることでシールを行い易くなる利点がある。
【0049】
本形態例のサーモエレメント71は、筒状本体56の内部で、開閉弁体としての圧接方向の両側に配されたそれぞれのコイルスプリング(一方のコイルスプリング73、他方のコイルスプリング74)を介して保持され、そのサーモエレメント71による開閉弁体としての動作が適切になされると共に、その圧接の圧力が過剰にならないように調整がなされる状態に設けられている。
【0050】
さらに具体的には、本形態例のサーモエレメント71の一方の面が通気孔59の孔縁59aに圧接してシールする弁の面71aとなっており、設定された所要の温度より高くなった場合にサーモエレメント71の他方の面の側でピストン71bが突出するように設けられ、サーモエレメント71が全体として開閉弁体を構成する形態となっている。そして、一方のコイルスプリング73は、サーモエレメント71を弁の面71aの側から付勢して設定された所要の温度以下となった場合にピストン71bを引き込ませて突出前の状態に戻るように作用する。また、他方のコイルスプリング74は、一方のコイルスプリング73とは反対の方向からソケット72を介して付勢できるものになっており、ピストン71bが突出して弁の面71aが通気孔59の孔縁59aに圧接する際にその圧接の圧力が過剰にならないように、その力を受けて逃がすために縮むことができるように配されている。なお、本形態例では、二つのコイルスプリング73、74によって、サーモエレメント71は筒状本体56の内部で水平に配された状態で保持されている。
【0051】
さらに詳細には、一方のコイルスプリング73は、筒状本体56の通気路58の通気孔59側の段部とサーモエレメント71の中途部に形成された拡径部の段部の間に配され、他方のコイルスプリング74は、サーモエレメント71のピストン71bが出入する側に外嵌めされたソケット72の鍔部と筒状本体56の通気路58の先端側に固定された押えリング75との間に配されている。なお、本形態例の筒状本体56は、サーモエレメント71を内蔵する筒状本体先端部56aと、吸気逆止弁60を内蔵する筒状本体根元部56bとが軸心を一致させた状態で連結一体化されて構成されており、その筒状本体先端部56a、サーモエレメント71及び二つのコイルスプリング73、74などによって吸気用の温度感知弁部70が構成されている。また、本形態例の筒状本体先端部56aは、その先端側で吸気口57に連通する共に出水路52とは隔離されるように、出水部本体51の内部にシールされて固定されており、その筒状本体先端部56aの先端面側を覆うように、出水部先端キャップ76が装着されている。
【0052】
これによれば、サーモエレメント71を用いることで、その駆動感度が高いことから、温度設定に関する誤差を極めて小さくすることができ、吸気用の温度感知弁部70の開閉を所望の温度範囲において正確に行うことができる。このため、水抜きの自動化を、適切な温度範囲で好適に実現することができる。例えば、設定温度を4℃とすると、誤差範囲をプラス・マイナス2℃程度とすることができるため、水抜きの温度管理を確実且つ適切に行うことができる。
【0053】
また、本形態例の吸気逆止弁60は、その吸気逆止弁60の開閉弁体61がコイルスプリング62によって通気路58を閉じる方向に付勢され、常時は閉じるように構成されている。本形態例では、筒状本体56の根元側の部分である筒状本体根元部56bと、筒状本体先端部56aの根元側が重なって接合された部分に渡って、吸気逆止弁60が内蔵された形態になっている。また、本形態例の吸気逆止弁60は、筒状のケーシング63の中に、開閉弁体61が、その筒状のケーシング63の先端側に設けられた内周の段部に当接して開閉できるように軸方向に移動可能に配され、根元側に内嵌された内嵌固定部64によって形成された受け部との間にコイルスプリング62が配された構成になっている。この吸気逆止弁60としては、汎用性のある安価で信頼性の高い市販品を適宜選択的に採用することができ、作動性能と確実性を向上させることができる。
【0054】
次に、本発明に係る自動水抜き用の吸気開閉機構55を備える不凍水栓柱の形態例の作動状態について、
図4〜10に基づいて説明する。なお、図中において、実線の矢印で水の流れを示し、点線で空気の流れを示すと共に、灰色に塗った部分によって水が満たしている状況を示している。
図4〜6は、本形態例の不凍水栓柱がいずれも通水状態にある状況を示しており、
図4及び5では、吸気逆止弁60がコイルスプリング62の付勢と通水された水の給水圧によって閉栓されていると共に、気温が設定温度より高い場合であってサーモエレメント71が通気孔59を閉じることで通気路58を塞いでいる状況である。また、
図6では、吸気逆止弁60がコイルスプリング62の付勢と通水された水の給水圧によって閉栓されているが、気温が設定温度以下の場合であってサーモエレメント71が通気孔59を開けることで通気路58を開いている状況を示しており、この状態でも通水が適切になされる。なお、
図6の状態で通水が連続すると、通水される水の水温によってサーモエレメント71のケースが暖められることによって、気温が設定温度以下の場合であってサーモエレメント71のピストン71bが突出することでサーモエレメント71が全体長として伸長して
図5に示すように通気孔59を閉じて通気路58を塞ぐことになる。
【0055】
図7及び8は、本形態例の不凍水栓柱が止水状態にある状況であって、吸気及び排水をしない状況を示しており、通水弁機構10は排水路19が開いて排水(水抜き)をできる状態(
図7参照)にあるが、吸気遮断弁37によって出水路52が閉じられていると共に自動水抜き用の吸気開閉機構55によって通気路58が閉じられていることから、通水路内の全体(通水路15及び立上げ通水路30)が負圧になっているために排水されず、水抜き状態には至っていない。すなわち、
図7及び8の状況では、気温が設定温度より高い場合であって、吸気逆止弁60は通水路内の全体の負圧(水頭差)によって開栓しているが、サーモエレメント71は通気孔59を閉じることで通気路58を塞いでいるため、外気が吸気されることなく、水抜き状態には至らない。
【0056】
図9及び10は、本形態例の不凍水栓柱が水抜き状態にある状況を示しており、通水弁機構10の排水路19が開いていると共に、自動水抜き用の吸気開閉機構55によって通気路58が開いているため、通水路内の全体の真空が破壊されて、水抜きがなされる状態に至っている。すなわち、
図9及び10の状態では、気温が設定温度以下の場合であって、吸気逆止弁60は通水路内の全体の負圧(水頭差)によって開栓していると共に、サーモエレメント71は全体長が短くなって通気孔59を開くことで通気路58を開けているため、外気が吸気され、水抜き状態になっている。
【0057】
次に、
図11及び
図12に基づいて自動水抜き用の吸気開閉機構55に係る他の装着例を説明する。
いずれの装着例も、自動水抜き用の吸気開閉機構55が、外部に連通する吸気口57を有し、立上げ通水路30に連通部33の下方に設けられた吸気用連通部38を介して連通する通気路58を有すると共に、吸気逆止弁60と、吸気用の温度感知弁部70とを具備する。
【0058】
図11の形態例については、自動水抜き用の吸気開閉機構55が、操作部40の操作ハンドル42内に内蔵された構成になっている。また、この形態例では、吸気用連通部38及び通気路58が、操作軸体35に設けられた構成になっている。
また、
図12の形態例については、自動水抜き用の吸気開閉機構55が、立上げ通水路30の上端部であって出水部50の出水部本体51が設けられた方向とは別の方向に突き出た状態に装着された構成になっている。
どちらの形態例についても、自動水抜き用の吸気開閉機構55の構成は、
図4〜10に示した形態例と同様に設けられており、同様に作動する。
【0059】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明は以上の形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。