(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明に係るクレーンの一実施の形態について説明する。なお、以下では、図示するように、
図1の姿勢を基準にクレーンの上下および前後左右方向を定義する。
【0011】
−第1の実施の形態−
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るクレーン100の側面模式図である。クレーン100は、走行体101と、旋回輪を介して走行体101上に旋回可能に設けられた旋回体103と、基端部が旋回体103に回動可能に軸支されたブーム104とを有する。
【0012】
旋回体103の前部には運転室108が設けられ、旋回体103の後部にはカウンタウエイト109が取り付けられている。旋回体103には、ブーム起伏用のウインチである起伏ウインチ107が搭載されている。ブーム104には、主フック巻き上げ用のウインチである主巻ウインチ105および補フック巻き上げ用のウインチである補巻ウインチ106が搭載されている。各ウインチは、回転軸がクレーンの左右方向に延在するように配置されている。
【0013】
主巻ウインチ105にはワイヤロープ105aが巻回され、補巻ウインチ106にはワイヤロープ106aが巻回されている。主巻ウインチ105の回転駆動によりワイヤロープ105aが巻き取りまたは繰り出され、主フック115が昇降する。補巻ウインチ106の回転駆動によりワイヤロープ106aが巻き取りまたは繰り出され、補フック116が昇降する。
【0014】
ブーム104の先端にはペンダントロープ107bの一端が接続され、ペンダントロープ107bの他端はブライドル196に接続されている。起伏ウインチ107に巻回された起伏ロープ107aはガントリ195の頂部を経由してブライドル196とハンガ197の間に複数回掛け回されている。起伏ウインチ107を駆動するとハンガ197とブライドル196の間隔が変化し、ブーム104が起伏する。主巻ウインチ105、補巻ウインチ106および起伏ウインチ107は、図示しない油圧モータの駆動により回転する。
【0015】
ブーム104は、ラチス構造をなし、複数の単位ブーム(141,142,104B,104C)が、それぞれ隣接する他の単位ブームと連結部180で着脱自在に連結されている。ブーム104は、ブーム104の基端部(根元部)を構成する基端ブーム104A(141,142)と、ブーム104の先端部を構成する先端ブーム104Bと、基端ブーム104Aと先端ブーム104Bとの間に配設される中間ブーム104Cとを含んで構成されている。
【0016】
本明細書において、中間ブーム104Cとは、ブーム104の全長を調整できるように、仕様に応じて追加、削除、変更され得るブーム構成体のことをいう。つまり、中間ブーム104Cに代えて、中間ブーム104Cよりも長い中間ブーム(不図示)あるいは短い中間ブーム(不図示)を採用することで、ブーム104の全長を長くあるいは短くすることができる。基端ブーム104Aと中間ブーム104Cとの間および/または中間ブーム104Cと先端ブーム104Bとの間に、1以上の他の中間ブーム(不図示)を配設することで、ブーム104の全長を長くすることができる。中間ブーム104Cを省略し、基端ブーム104Aに先端ブーム104Bを直接に連結することでブーム104の全長を短くすることができる。
【0017】
これに対して、基端ブーム104Aとは、旋回体103に回動可能に軸支され、中間ブーム104Cに連結されるブーム構成体のことをいう。
【0018】
図2および
図3を参照して、基端ブーム104Aの構成について説明する。
図2は基端ブーム104Aを示す外観斜視図であり、基端ブーム104Aがほぼ水平となるように倒伏された状態を示している。
図3は
図2の基端ブーム104Aを示す分解斜視図である。基端ブーム104Aは、仮想的に、腹面、背面および左右側面を有している。本明細書において、ブームの腹面とは、ブームを起立させた状態において、フック(115,116)が吊り下げられる側に位置するブームの面のことをいう。すなわち、ブームの腹面とは、ブームを倒伏させた状態において接地面と対向するブームの面のことをいう。これに対して、ブームの背面とは、ブームの腹面と反対側の面のことをいう。ブームの左右側面とは、それぞれ、腹面および背面の双方に直交するブームの面のことをいう。
【0019】
図2に示すように、ブームの背面を構成する一平面上には、左右一対の背面側主材143Bおよび左右一対の背面側主材146Bが配置されている。換言すれば、左右一対の背面側主材143B同士を結ぶ仮想平面、および、左右一対の背面側主材143B同士を結ぶ仮想平面がブームの背面を構成している。ブームの腹面を構成する一平面上には、左右一対の腹面側主材143Vおよび左右一対の腹面側主材146Vが配置されている。換言すれば、左右一対の腹面側主材143V同士を結ぶ仮想平面、および、左右一対の腹面側主材146V同士を結ぶ仮想平面がブームの腹面を構成している。
【0020】
ブームの左側面を構成する一平面上には、左側の背面側主材143B,146Bおよび左側の腹面側主材143V,146Vが配置されている。換言すれば、左側の背面側主材143Bと腹面側主材143Vとを結ぶ仮想平面、および、左側の背面側主材146Bと腹面側主材146Vとを結ぶ仮想平面がブームの左側面を構成している。ブームの右側面を構成する一平面上には、右側の背面側主材143B,146Bおよび右側の腹面側主材143V,146Vが配置されている。換言すれば、右側の背面側主材143Bと腹面側主材143Vとを結ぶ仮想平面、および、右側の背面側主材146Bと腹面側主材146Vとを結ぶ仮想平面がブームの右側面を構成している。
【0021】
基端ブーム104Aは、格子状に溶接されたラチス構造をなし、ブーム長さ方向に2分割されている。旋回体側の分割ブームを第1分割ブーム141と記し、中間ブーム側の分割ブームを第2分割ブーム142と記す。第1分割ブーム141および第2分割ブーム142は、それぞれ単位ブームを構成し、互いに連結部180で連結される。
【0022】
図3を参照して、第1分割ブーム141および第2分割ブーム142について説明する。なお、以下では、
図2に示すように、基端ブーム104Aの左側面と右側面とを結ぶ方向、すなわちクレーン100の左右方向であって、ウインチの回転軸と平行な方向のことをブーム幅方向と記す。また、基端ブーム104Aの背面と腹面とを結ぶ方向のことを、ブーム厚み方向と指す。
【0023】
図3に示すように、第1分割ブーム141は、互いに平行に配置される左右一対の背面側主材143Bと、互いに平行に配置される左右一対の腹面側主材143Vとを備える。なお、背面側主材143Bおよび腹面側主材143Vを総称して主材143とも記す。
【0024】
背面側主材143Bと腹面側主材143Vとは、ブーム厚み方向における互いの間隔が基端側に向かうにしたがって短くなるように配置され、背面側主材143Bの基端と腹面側主材143Vの基端とが結合ブラケット131で連結されている。結合ブラケット131にはピン孔が設けられており、結合ブラケット131はピン(不図示)で旋回体103に回動可能に連結される。
【0025】
左右一対の背面側主材143Bは、ブーム幅方向に延在する3本の背面側桟材144Bによって連結されている。3本の背面側桟材144Bは、連結部180近傍に配置される連結部側の桟材、結合ブラケット131近傍に配置される基端側の桟材、および、中央近傍に配置される桟材であり、それぞれが互いに平行となるように配置されている。
【0026】
左右一対の腹面側主材143Vは、ブーム幅方向に延在する3本の腹面側桟材144Vによって連結されている。3本の腹面側桟材144Vは、連結部180近傍に配置される連結部側の桟材、結合ブラケット131近傍に配置される基端側の桟材、および、中央近傍に配置される桟材であり、それぞれが互いに平行となるように配置されている。
【0027】
左側の背面側主材143Bおよび左側の腹面側主材143Vは、ブーム厚み方向に延在する2本の副材144Lによって連結されている。右側の背面側主材143Bおよび右側の腹面側主材143Vは、ブーム厚み方向に延在する2本の副材144Lによって連結されている。
【0028】
中央近傍の背面側桟材144Bと中央近傍の腹面側桟材144Vとの間には、複数本の基端側斜材145Mがジグザグ状に架け渡されている。
【0029】
左右一対の背面側主材143B間には、複数本の背面側斜材145Bがジグザグ状に架け渡されている。左右一対の腹面側主材143Vには、複数本の腹面側斜材145Vがジグザグ状に架け渡されている。左側の背面側主材143Bと左側の腹面側主材143Vとの間には、複数本の側面側斜材145Sがジグザグ状に架け渡されている。右側の背面側主材143Bと右側の腹面側主材143Vとの間には、複数本の側面側斜材145Sがジグザグ状に架け渡されている。なお、背面側斜材145B、腹面側斜材145V、側面側斜材145Sおよび基端側斜材145Mを総称して斜材145とも記す。
【0030】
基端側の背面側桟材144Bと中央近傍の背面側桟材144Bとの間には、左右一対のブラケット161が架け渡され、溶接されている。補巻ウインチ106は、ドラム本体(回転体)160と、ドラム本体160を回転軸を介して回転可能に支持する左右一対のドラム支持板162と、ドラム本体160を回転駆動する油圧モータ163とを備えている。
【0031】
左右一対のドラム支持板162は、それぞれV字状に形成され、左右一対のドラム支持板162の一端部同士が連結板165で連結されて一体とされている。左右一対のドラム支持板162は、それぞれ両端部がブラケット161にピンで結合される。これにより、補巻ウインチ106は、ブーム背面において支持され、ブーム外側に配置されている。
【0032】
連結部側の背面側桟材144Bと、連結部側の腹面側桟材144Vとの間には、左右一対のブラケット151が架け渡され、溶接されている。主巻ウインチ105は、補巻ウインチ106と同様の構成とされており、ドラム本体(回転体)150と、ドラム本体150を回転軸を介して回転可能に支持する左右一対のドラム支持板152と、ドラム本体150を回転駆動する油圧モータ153とを備えている。
【0033】
左右一対のドラム支持板152は、それぞれV字状に形成され、左右一対のドラム支持板152の一端部同士が連結板155で連結されて一体とされている。左右一対のドラム支持板152は、それぞれ両端部がブラケット151にピンで結合される。
【0034】
このように、主巻ウインチ105は、第1分割ブーム141と第2分割ブーム142との境界部に配置される第1分割ブーム141の背面側桟材144Bおよび腹面側桟材144Vにブラケット151およびドラム支持板152を介して支持され、ドラム本体150の全体が第1分割ブーム141の外側に配置されている。
【0035】
ドラム本体150を第1分割ブーム141から第2分割ブーム142側に向けて突出させるように設け、第1分割ブーム141における連結部側の背面側桟材144B、腹面側桟材144V、および、左右一対の副材144Lによって形成される開口面よりも、第2分割ブーム142側にドラム本体150の全体を配置させる構成とすることで、ウインチの取り付け、取り外し作業を容易に行うことができる。
【0036】
主巻ウインチ105を第1分割ブーム141に取り付ける手順の一例は以下のとおりである。第1分割ブーム141は、ほぼ水平となるように倒伏させておく。主巻ウインチ105を補助クレーン等により吊り、ブラケット151の上側のピン孔と、ドラム支持板152のピン孔とを合わせるように位置決めして、ピンで結合する。このピンを回動中心として、主巻ウインチ105を回動させて、ブラケット151の下側のピン孔とドラム支持板152のピン孔とを合わせるように位置決めして、ピンで結合する。これにより、主巻ウインチ105が第1分割ブーム141に取り付けられる。主巻ウインチ105の取り外し作業は、組立の順序と逆の順序で行えばよい。主巻ウインチ105が第1分割ブーム141から第2分割ブーム142側に向けて突出するように設けられているので、主巻ウインチ105の取り付け、取り外し作業を簡単に行うことができる。したがって、本実施形態によれば、レール等の治具を用いて主巻ウインチ105をブーム内に搬入し、取り付ける作業に比べて、組立・分解作業性がよい。
【0037】
第2分割ブーム142は、互いに平行に配置される左右一対の背面側主材146Bと、互いに平行に配置される左右一対の腹面側主材146Vとを備える。なお、背面側主材146Bおよび腹面側主材146Vを総称して主材146とも記す。
【0038】
背面側主材146Bと腹面側主材146Vとは、ブーム厚み方向における互いの間隔が基端側に向かうにしたがって短くなるように配置されている。
【0039】
左右一対の背面側主材146Bは、両端部のそれぞれにおいて、ブーム幅方向に延在する背面側桟材147Bによって連結されている。2本の背面側桟材147Bは、それぞれが互いに平行となるように配置されている。
【0040】
左右一対の腹面側主材146Vは、両端部のそれぞれにおいて、ブーム幅方向に延在する腹面側桟材147Vによって連結されている。2本の腹面側桟材147Vは、それぞれが互いに平行となるように配置されている。
【0041】
左側の背面側主材146Bおよび左側の腹面側主材146Vは、ブーム厚み方向に延在する2本の副材147Lによって連結されている。右側の背面側主材146Bおよび右側の腹面側主材146Vは、ブーム厚み方向に延在する2本の副材147Lによって連結されている。副材147Lは、中間ブーム104Cとの連結部180近傍、および、第1分割ブーム141との連結部180近傍のそれぞれにおいて、2本ずつ設けられている。
【0042】
左右一対の背面側主材146B間には、複数本の背面側斜材148Bがジグザグ状に架け渡されている。左右一対の腹面側主材146Vには、複数本の腹面側斜材148Vがジグザグ状に架け渡されている。左側の背面側主材146Bおよび左側の腹面側主材146V間には、複数本の側面側斜材148Sがジグザグ状に架け渡されている。右側の背面側主材146Bおよび右側の腹面側主材146V間には、複数本の側面側斜材148Sがジグザグ状に架け渡されている。
【0043】
第2分割ブーム142における中間ブーム104Cとの連結部180近傍に設けられる背面側桟材147B、腹面側桟材147Vおよび左右一対の副材147Lによって画成される矩形状開口14aには、対角線上に、先端側斜材148Mが設けられている。これに対して、第2分割ブーム142における第1分割ブーム141との連結部180近傍に設けられる背面側桟材147B、腹面側桟材147Vおよび左右一対の副材147Lによって画成される矩形状開口14bには、斜材は設けられていない。なお、背面側斜材148B、腹面側斜材148V、側面側斜材148Sおよび先端側斜材148Mを総称して斜材148とも記す。
【0044】
第2分割ブーム142のブーム背面には、ワイヤロープ105aを案内するためのガイド装置170が配設されている。ガイド装置170は、ワイヤロープ105aを案内するガイドシーブ171と、ガイドシーブ171を回転可能に支持する支持軸172とを有している。支持軸172は、ブーム幅方向に延在するように、左右一対の背面側主材146Bに架け渡され、溶接されている。
【0045】
図4は、単位ブーム間を連結する連結部180を示す模式図である。各単位ブーム(141,142,104B,104C)は、端部において連結ピン190により隣接する単位ブームに連結されている。各単位ブームの連結部180の構成は、略同一であるため、代表して、第1分割ブーム141と、第2分割ブーム142とを連結する連結部180について説明する。なお、
図4では、ブラケット151や主巻ウインチ105の図示は省略している。
【0046】
図4(a)に示すように、第1分割ブーム141の第2分割ブーム142側の端部の四隅のそれぞれ、すなわち第1分割ブーム141を構成する4本の主材143の端部のそれぞれには、二股形状の接続板を有する二股接続部182が設けられている。第2分割ブーム142の第1分割ブーム141側の端部の四隅のそれぞれ、すなわち第2分割ブーム142を構成する4本の主材146の端部のそれぞれには、第1分割ブーム141の二股接続部182を構成する一対の接続板間に挿入される接続片186が設けられている。
【0047】
図4(a)および
図4(b)に示すように、二股接続部182および接続片186のそれぞれには、連結ピン190が挿通される円形状のピン挿通孔185が設けられている。二股接続部182に接続片186を挿入し、連結ピン190をピン挿通孔185に挿通させることで、第1分割ブーム141と第2分割ブーム142とが連結される。同様に、第2分割ブーム142と中間ブーム104Cとが連結され、中間ブーム104Cと先端ブーム104Bとが連結される。
【0048】
連結ピン190は、円柱部191と、円柱部191の一端に設けられる係止部192と、円柱部191の他端に設けられるテーパ部193とを有している。円柱部191は、二股接続部182および接続片186に設けられるピン挿通孔185よりも僅かに小さい径となるように形成されている。連結ピン190には、円柱部191から先細りの形状のテーパ部193が設けられているので、ピン挿通孔185に対する挿入性が向上されている。係止部192は、ピン挿通孔185よりも大きい径の円板状の部位である。円柱部191のテーパ部193近傍には、止めピン(松葉ピン)199が挿通される貫通孔194が穿設されている。
【0049】
図4(b)に示すように、連結ピン190を二股接続部182および接続片186に設けられたピン挿通孔185に挿通し、止めピン199を貫通孔194に挿通させることで、連結ピン190は、係止部192と止めピン199とによって、ピン挿通孔185からの脱落が防止され、所定位置で保持される。
【0050】
第1分割ブーム141と第2分割ブーム142とが連結部180で連結されると、基端ブーム104Aが構成される(
図2参照)。第2分割ブーム142を第1分割ブーム141に取り付ける手順の一例は以下のとおりである。第1分割ブーム141は、ほぼ水平となるように倒伏させておく。第2分割ブーム142を補助クレーン等により吊り、第1分割ブーム141の前方に配置する。吊り上げた第2分割ブーム142を第1分割ブーム141に近づける。主巻ウインチ105は、第2分割ブーム142の矩形状開口14bから第2分割ブーム142の内側に挿入される。二股接続部182に接続片186を挿入し、それぞれのピン孔の位置を合わせ、連結ピン190で結合する。
【0051】
第1分割ブーム141に第2分割ブーム142が連結されると、第1分割ブーム141に支持されている主巻ウインチ105は、第2分割ブーム142の内側に配置される。なお、本明細書において、第2分割ブーム142の内側とは、ブームの背面、腹面、左右側面、矩形状開口14aを含む仮想平面、および、矩形状開口14bを含む仮想平面とで囲まれる空間の内部のことをいう。別の言い方をすると、第2分割ブーム142の内側とは、4本の主材146と、主材146の両端部において隣り合う主材146同士を連結する連結部材(背面側桟材147B、腹面側桟材147Vおよび副材147L)とで囲まれた空間の内部のことをいう。
【0052】
上述した第1の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)クレーン100は、複数の単位ブームにより構成され、基端部が旋回体103に回動可能に軸支されたブーム104と、ワイヤロープ(巻上ロープ)を巻き取る主巻ウインチ105とを備えている。主巻ウインチ105は、一の単位ブームである第1分割ブーム141に、他の単位ブームである第2分割ブーム142が連結されている状態において、第2分割ブーム142の内側に配置されるように、第1分割ブーム141に支持されている。特許文献1に記載のブームでは、ブームの背面において、ブームの外側からブームの内側にウインチを搬入するための大きな開口部を設ける必要があったが、本実施の形態によれば、主巻ウインチ105を搬入するための大きな開口部をブーム背面に設ける必要が無い。これにより、本実施の形態では、基端ブーム104Aに複数の斜材145,148を設けることができるため、ウインチをブーム内に搭載するクレーンにおいて、ねじれに強い構造のブームを備えたクレーンを提供することができる。また、斜材145,148を設けることができるため、ブームの各構成部材(主材、桟材、斜材、副材)の軽量化を図ることもできる。
【0053】
(2)主巻ウインチ105は、主巻ウインチ105を構成するドラム本体150の全体が第1分割ブーム141の外側に配置されるように、第1分割ブーム141に支持されている。すなわち、主巻ウインチ105のドラム本体150の全体が、第1分割ブーム141の連結部180近傍に設けられる背面側桟材144B、腹面側桟材144V、左右一対の副材144Lによって画成される矩形開口面よりも第2分割ブーム142側に位置している。これにより、ドラム本体150の一部、あるいは全部が第1分割ブーム141の内側に配置される場合に比べて、ブームに対するウインチの組立・分解作業性がよい。
【0054】
(3)主巻ウインチ105は、第1分割ブーム141と第2分割ブーム142との境界部に配設される第1分割ブーム141の連結部材である背面側桟材144Bおよび腹面側桟材144Vに、支持部材であるブラケット151を介して連結されている。これにより、主材143や斜材145にブラケットを設ける場合に比べて、簡単な構成で主巻ウインチ105を第1分割ブーム141に取り付けることができる。
【0055】
−第2の実施の形態−
図5を参照して、第2の実施の形態に係るクレーン200を説明する。なお、図中、第1の実施の形態と同一もしくは相当部分には同一の参照番号を付し、相違点を主に説明する。第1の実施の形態では、補巻ウインチ106が、基端ブーム104Aの背面に取り付けられていた(
図1参照)。これに対して、第2の実施の形態では、
図5に示すように、補巻ウインチ106が中間ブーム104Cの内側に配置されている。
【0056】
第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様、主巻ウインチ105は、一の単位ブームである第1分割ブーム141に他の単位ブームである第2分割ブーム142が連結されている状態において、他の単位ブームである第2分割ブーム142の内側に配置されるように、一の単位ブームである第1分割ブーム141に支持されている。
【0057】
第2の実施の形態では、補巻ウインチ106が主巻ウインチ105と同様の方式で取り付けられている。すなわち、補巻ウインチ106は、一の単位ブームである第2分割ブーム142に他の単位ブームである中間ブーム104Cが連結されている状態において、他の単位ブームである中間ブーム104Cの内側に配置されるように、一の単位ブームである第2分割ブーム142に支持されている。
【0058】
このような第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の作用効果に加え、補巻ウインチ106を基端ブーム104Aの外側に配置する場合に比べて、基端ブーム104Aの外形寸法を短くすることができ、輸送制限高さ規制に有利である。
【0059】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
(変形例1)
図6に示すように、ラッフィングクレーン300に本発明を適用してもよい。
図6に示す例では、ジブ302を起伏させるジブ起伏ウインチ310が第1分割ブーム141の背面上に配置されている。変形例1では、主巻ウインチ105および補巻ウインチ106は、第2の実施の形態と同様に配置されている。このように、ウインチの個数、各ウインチの配置は、上述した実施の形態に限定されることなく、クレーンの仕様に応じて、種々変更することができる。また、タワークレーンに本発明を適用してもよい。移動式クレーンに限定されることもなく、固定式クレーンに本発明を適用してもよい。
【0060】
(変形例2)
ウインチの支持構造は、上述した実施の形態に限定されない。たとえば、
図7に示すように、L字状のブラケット451を介して主巻ウインチ105を第1分割ブーム141に取り付けてもよい。L字状のブラケット451は、第1分割ブーム141の連結部側の背面側桟材144Bと腹面側桟材144Vとの間に架け渡され、溶接される基部451bと、基部451bの下端部近傍からブーム長さ方向外方に延在する取付部451aとを有している。取付部451aには、一対のピン孔が設けられており、ドラム支持板152の両端部が取付部451aにピンで結合される。このような構成とすることで、上述した実施の形態に比べて、組立・分解作業性の効率向上を図ることができる。
【0061】
(変形例3)
上述した実施の形態では、左右一対のブラケット151がそれぞれ1枚の平板状部材で構成されている例について説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、2枚の平板状部材でブラケットを構成してもよい。
図3では、左側に1枚のブラケット151が配設され、右側に1枚のブラケット151が配設されているが、これに代えて、左側に2枚のブラケット151を配設し、右側に2枚のブラケット151を配設してもよい。この場合、ドラム支持板152が2枚のブラケット151間に挿入され、ピンで結合される。また、
図8に示すように、2枚のブラケット151を設けず、1枚のブラケット151に、平板をL字状に屈曲させた板材551を溶接し、ピン結合する部分だけ、2枚構成となるようにしてもよい。
【0062】
(変形例4)
第1の実施の形態では、基端ブーム104Aをブーム長さ方向に2分割して、旋回体103側の第1分割ブーム141に主巻ウインチ105を支持させ、中間ブーム104C側の第2分割ブーム142の内側に主巻ウインチ105を配置する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0063】
たとえば、第1の実施の形態に係るクレーン100において、基端ブーム104Aを分割せずに、主巻ウインチ105を、基端ブーム104Aと中間ブーム104Cとの境界部に配設される基端ブーム104Aの構成部材である背面側桟材147Bおよび腹面側桟材147Vに、
図3に示すブラケット151と同様の支持部材を介して支持させることもできる。
【0064】
変形例4では、基端ブーム104Aを分割させていないため、組立・分解性が第1の実施の形態に比べてよい。なお、変形例4では、仕様に応じて変更される各中間ブームにガイド装置170を設ける必要があるが、上述した第1の実施の形態では、ガイド装置170を第2分割ブーム142にのみ設ければよく、仕様に応じて変更される各中間ブームにガイド装置170を設ける必要がないというメリットがある。
【0065】
(変形例5)
上述した実施の形態では、基端ブーム104Aをブーム長さ方向に2分割する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。基端ブーム104Aは、3分割以上に分割してもよい。たとえば、超大型のクレーンにおいて、
図9に示すように、基端ブーム104Aをブーム長さ方向に3分割して、基端側の第1分割ブーム941、先端側の第3分割ブーム943、第1分割ブーム941と第3分割ブーム943との間の第2分割ブーム942により基端ブーム104Aを構成して、基端ブーム内において、主巻ウインチ105および補巻ウインチ106を配置させたクレーン100を構成することができる。この場合、第1分割ブーム941と第2分割ブーム942との境界部において、第2分割ブーム942内に主巻ウインチ105が位置するように主巻ウインチ105を第1分割ブーム941によって支持する。さらに、第2分割ブーム942と第3分割ブーム943との境界部において、第3分割ブーム943内に補巻ウインチ106が位置するように補巻ウインチ106を第2分割ブーム942によって支持する。
【0066】
(変形例6)
第1の実施の形態では、ドラム本体150を第1分割ブーム141から第2分割ブーム142側に向けて突出させるように設け、ドラム本体150の全体を第1分割ブーム141の外側に配置されるようにした例について説明したが、本発明はこれに限定されない。ドラム本体150の一部が第1分割ブーム141の内側に位置していてもよい。
【0067】
(変形例7)
第1の実施の形態では、主巻ウインチ105が、第2分割ブーム142の内側に配置されるように、第1分割ブーム141に支持されている例について説明したが、本発明はこれに限定されない。第1分割ブーム141と第2分割ブーム142とに分割される基端ブーム104Aにおいて、
図10に示すように、主巻ウインチ105が第1分割ブーム141の内側に配置されるように、第2分割ブーム142に主巻ウインチ105を支持させる構成とすることもできる。
【0068】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。