(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外装缶と封口板とが絶縁ガスケットを介してカシメ封口されて形成された空間内に、正極活物質、導電助剤およびバインダを含有する正極合剤層を有する正極と負極とがセパレータを介して積層された電極体を有する扁平形非水二次電池の製造方法であって、
前記正極合剤層の厚みが0.1mm以上であり、
前記セパレータとして、延伸加工されたポリオレフィン製のフィルムにより構成された多孔質層(I)と、前記多孔質層(I)の一方の面に一体化され、かつ前記多孔質層(I)の熱収縮を抑制する多孔質層(II)とを有し、前記正極合剤層よりも大きな面積を有するセパレータを用い、
前記セパレータの前記多孔質層(I)が正極側となるよう、前記正極と前記セパレータとを重ね合わせる工程と、
前記正極と重ね合わせたセパレータを加熱して、正極合剤層と対向しないセパレータの端部を正極側に曲げる工程とを有していることを特徴とする扁平形非水二次電池の製造方法。
前記セパレータの加熱時の温度を、前記多孔質層(I)を構成するポリオレフィンの融点未満の温度とする請求項1〜4のいずれかに記載の扁平形非水二次電池の製造方法。
正極側に曲げられている前記セパレータの端部の幅を、前記正極合剤層の厚みの50%以上、2mm以下とする請求項1〜5のいずれかに記載の扁平形非水二次電池の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に、本発明法により得られる扁平形非水二次電池の一例を模式的に表す縦断面図を示す。
図1に示す扁平形非水二次電池1は、正極5と負極6とを、それらの平面が電池の扁平面に略平行(平行を含む)となるようにセパレータ7を介して積層した電極体と、非水電解液(図示しない)とが、外装缶2、封口板3および絶縁ガスケット4により形成される空間(密閉空間)内に収容されている。封口板3は、外装缶2の開口部に絶縁ガスケット4を介して嵌合しており、外装缶2の開口端部が内方に締め付けられ、これにより絶縁ガスケット4が封口板に当接することで、外装缶2の開口部が封口されて電池内部が密閉構造となっている。外装缶2および封口板3は、ステンレス鋼などの金属製であり、絶縁ガスケット4は、ポリプロピレンなどの絶縁性を有する樹脂製である。
【0013】
図1に示す扁平形非水二次電池1では、外装缶2がその内面で正極5の片面と接触していて正極端子を兼ねており、封口板3がその内面で負極6の片面と接触していて負極端子を兼ねている。なお、電極体の構成などによっては、外装缶が負極端子を兼ね、封口板が正極端子を兼ねていてもよい。
【0014】
セパレータ7は、延伸加工されたポリオレフィン製の多孔質層(I)71と、前記多孔質層(I)の一方の面に一体化され、かつ前記多孔質層(I)の熱収縮を抑制する多孔質層(II)72とを有している。また、セパレータ7は、正極合剤層(正極5と同じ)よりも大きな面積を有し、多孔質層(I)71が正極側、多孔質層(II)72が負極側になるように配置されている。そして、多孔質層(I)71の内部応力によって、正極合剤層と負極6との対向部分からはみ出したセパレータの端部7aが、正極側に曲げられている。
【0015】
本発明の扁平形非水二次電池の製造に用いるセパレータが有する多孔質層(I)は、ポリオレフィン製で、延伸加工を経て形成されたフィルムにより構成されており、延伸時の応力が残留しているため、例えば60℃以上でありかつ含有するポリオレフィンの融点未満の温度に加熱することで収縮しようとする。一方、多孔質層(II)は、多孔質層(I)と一体化されたときに、多孔質層(I)の熱収縮を抑制することができるよう、耐熱性の高い材料で構成されており、多孔質層(I)が熱収縮しようとする前記の温度では殆どまたは全く収縮しない。よって、本発明法で使用するセパレータは、多孔質層(I)のポリオレフィンの融点未満の温度では、熱収縮をほとんど生じない。一方、多孔質層(I)の残留応力により、加熱時にはセパレータが多孔質層(I)の側にカールするため、多孔質層(I)が正極側、多孔質層(II)が負極側になるようにセパレータを配置し、例えば、正極上でセパレータを押さえた状態で加熱することにより、セパレータの正極合剤層と対向しない部分(セパレータの端部)を、正極側(負極と反対側)に曲げることができる。
【0016】
すなわち、本発明の電池の製造方法では、セパレータをカップ状に成形加工する工程を簡素化することが可能となり、かつ、正極にカップ状のセパレータを嵌める際の不良発生を防ぐことができるので、電池の生産性を高めることが可能となる。
【0017】
また、本発明法により得られる電池では、正極合剤層と負極との対向部分から周囲にはみ出すセパレータの端部が、正極側に曲げられて絶縁ガスケットとの間に存在していることから、正極の位置ずれが生じ難く、内部短絡の発生または電池の容量低下を良好に抑えることが期待できる。
【0018】
本発明法により得られる扁平形非水二次電池では、セパレータが有する多孔質層(I)によってシャットダウン機能を確保することもできる。扁平形非水二次電池が多孔質層(I)の主体となる成分であるポリオレフィンの融点以上に達したときには、多孔質層(I)に係るポリオレフィンが溶融してセパレータの空孔を塞ぎ、電気化学反応の進行を抑制するシャットダウンを生じる。
【0019】
多孔質層(I)はポリオレフィン製、すなわち、ポリオレフィンを主体とする層である。多孔質層(I)を構成するポリオレフィンとしては、融点、すなわち、JIS K 7121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度が、80℃以上170℃以下のものが好ましく、具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体などが挙げられる。
【0020】
多孔質層(I)を構成するポリオレフィン製のフィルムは、延伸加工を経て得られたものであり、例えば、一軸延伸や二軸延伸によって孔形成された微多孔膜(非水二次電池用のセパレータに汎用されている微多孔性フィルム)が挙げられる。
【0021】
なお、多孔質層(I)は、PEのみを使用したものやPPのみを使用したものであってもよく、また、PE製の微多孔膜とPP製の微多孔膜との積層体(PP層とPE層とを有する2層構造の微多孔膜や、PP層/PE層/PP層の3層構造の微多孔膜など)で構成されていてもよい。
【0022】
多孔質層(I)の構成成分の全体積(空孔部分を除く全体積。以下同じ。)中において、主体となるポリオレフィンの割合は、50体積%以上であり、70体積%以上であることがより好ましく、100体積%であってもよい。なお、例えば多孔質層(I)を前記PEの微多孔膜で形成する場合は、ポリオレフィンの割合が100体積%となる。
【0023】
多孔質層(I)は、ポリオレフィンの他に、例えば、無機微粒子などのフィラーを含有していてもよい。
【0024】
セパレータに係る多孔質層(II)は、非水二次電池の内部温度が上昇してシャットダウンを生じる温度に達した場合でも、正極と負極との直接の接触による短絡を防止することができる。すなわち、電池が高温となった場合には、電池内において多孔質層(I)が収縮しようとするが、高温でも形状が安定に保持される多孔質層(II)によって、セパレータ全体の熱収縮が抑制され、多孔質層(I)が溶融しシャットダウンを生じても、多孔質層(II)により正極と負極の絶縁が保たれる。
【0025】
多孔質層(II)は、耐熱性の高い樹脂、例えば、JIS K 7121の規定に準じて、DSCを用いて測定される融解温度が180℃以上である樹脂や、熱硬化性樹脂、熱分解温度が200℃以上の樹脂などで構成することができ、具体的には、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、セルロース、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン、架橋ポリジビニルベンゼン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体架橋物、ポリイミド、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアセタールなどが挙げられ、ポリイミド、ポリアミドイミド、全芳香族ポリアミド(アラミド)、セルロースが好ましく用いられる。
【0026】
前記樹脂により多孔質層を形成する方法としては、前記樹脂を溶媒に溶解させた塗液を、多孔質層(I)の表面に塗布し乾燥させる方法、前記樹脂を溶媒に溶解させた塗液を多孔質層(I)の表面に塗布し、貧溶媒により相分離させる方法などが挙げられ、また、一旦別の基板上に塗膜を形成した後、多孔質層(I)の表面に転写させる方法を使用することもできる。
【0027】
また、空孔率や空孔径を調整するために、アルミナ、シリカ、チタニアなどの無機微粒子を塗液に混合することもできる。前記無機微粒子の粒径は、平均粒子径で、例えば、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、また、2μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。
【0028】
なお、本明細書でいう各種粒子の平均粒子径は、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分布測定装置「HRA9320」を用いて前記の装置を用いて、粒度分布の小さい粒子から積分体積を求める場合の体積基準の積算分率における50%径の値(d
50)を意味している。
【0029】
また、多孔質層(II)は、耐熱性の高い無機微粒子を主体〔多孔質層(II)の構成物中の割合が50質量%以上〕として構成することもでき、無機微粒子をバインダにより結着して多孔質層としたものであってもよい。前記無機微粒子としては、アルミナ、シリカ、チタニア、マグネシア、ベーマイトなど、電気化学的に安定な無機酸化物が好ましく用いられる。
【0030】
無機微粒子の形状については特に制限はなく、略球状(真球状を含む)、略楕円体状(楕円体状を含む)、板状などの各種形状のものを使用できる。また、無機微粒子の平均粒子径は、小さすぎるとイオンの透過性が低下することから、0.05μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましい。一方、平均粒子径が大きすぎると、層の構造が不均一になり、高温での形状保持性が低下する虞があるため、その平均粒子径は、3μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。
【0031】
無機微粒子を結着するためにバインダを用いる場合には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、アクリル樹脂など、電極の合剤層を形成するときに用いられる樹脂バインダを使用することができる。前記バインダは、2種以上を併用してもよい。
【0032】
多孔質層(II)中でのバインダの割合は、無機微粒子同士の結着性を高め、高温での形状保持性を向上させるため、無機微粒子との総量中、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、多孔質層(II)の空孔率を一定以上(例えば、40%以上)として、電池の負荷特性を良好にするために、30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0033】
前記無機微粒子を主体とする多孔質層(II)を構成する方法としては、無機微粒子のゾルを含む塗液を多孔質層(I)の表面に塗布し熱処理する方法、無機微粒子とバインダとを含む塗液を多孔質層(I)の表面に塗布し乾燥する方法などが挙げられ、また、一旦別の基板上に塗膜を形成した後、多孔質層(I)の表面に転写させる方法を使用することもできる。
【0034】
なお、前記の樹脂バインダを多孔質層(II)に使用する場合には、前記塗液を構成する溶媒に溶解させるか、または分散させたエマルジョンの形態で用いればよい。
【0035】
また、セパレータを正極上で固定し、セパレータの位置ずれを防止して電池の組み立てを容易化するために、セパレータを接着性樹脂により正極と一体化することが望ましい。
【0036】
前記接着性樹脂は、あらかじめ正極上に存在させることもでき、また、セパレータの多孔質層(I)の表面に存在させることもできる。接着性樹脂としては、電極の合剤層を形成するときに用いられる樹脂バインダを使用することができるが、あらかじめ多孔質層(I)の表面に存在させる場合には、セパレータを加熱してセパレータの端部を正極側に曲げる工程において、接着性を発現する樹脂を用いることが望ましい。すなわち、加熱により接着性を発現する樹脂を用いることにより、セパレータと正極とを一体化する工程より前の工程においては、セパレータ表面が接着性を有さないため、セパレータの送給などに支障をきたすのを防ぐことができる。
【0037】
また、セパレータと正極との一体化をより確実なものとするために、セパレータの加熱時に、更に加圧してセパレータを正極に押しつけることが望ましい。更に、負極とセパレータとを一体化する場合には、セパレータの、負極と対向させることが予定されている面にも、接着性樹脂を存在させてもよい。
【0038】
前記の接着性樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ−α−オレフィン〔PP、ポリブテン−1など〕、EVAなどのポリオレフィン;ポリアクリル酸エステル、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−ブチルアクリレート共重合体(EBA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)などのアクリル系樹脂;アイオノマー樹脂;ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデンとフッ素を含有する重合性ビニルモノマーとの共重合体などのフッ素樹脂;などが挙げられる。また、フッ化ビニリデンとフッ素を含有する重合性ビニルモノマーとの共重合体の具体例としては、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(PVDF−CTFE)、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体(PVDF−TFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体(PVDF−HFP−TFE)などが挙げられる。接着性樹脂には、前記例示の樹脂のうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
接着性樹脂は、セパレータの表面〔多孔質層(I)や多孔質層(II)の表面〕において、空孔を有しない層状で存在していてもよいが、電池の負荷特性を高める観点からは、多孔質の層状であるか、または、平面視で規則的または不規則に配置された点状であることが好ましく、前記のように点状に配置されていることがより好ましい。
【0040】
セパレータの表面における接着性樹脂の目付けは、セパレータの片面あたり、0.05〜1.5g/m
2であることが好ましい。
【0041】
セパレータの表面に前記接着性樹脂を存在させる場合には、前記接着性樹脂の溶液や分散液を、セパレータの表面に塗布し乾燥すればよい。
【0042】
セパレータの厚みは、電池の正極と負極とをより確実に隔離する観点から、6μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。他方、セパレータが厚すぎると、電池としたときのエネルギー密度が低下してしまうことがあるため、その厚みは、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。
【0043】
また、多孔質層(II)の厚みは、1〜20μmであることが好ましい。更に、多孔質層(I)の厚みは、5〜30μmであることが好ましい。
【0044】
セパレータ全体の空孔率は、30〜70%であることが好ましい。また、多孔質層(I)の空孔率は、30〜70%であることが好ましく、多孔質層(II)の空孔率は、20〜70%であることが好ましい。
【0045】
本発明法により得られる扁平形非水二次電池に係る正極は、正極活物質、導電助剤およびバインダなどを含有する正極合剤層を有するものである。正極は、正極合剤層のみで構成されたもの(正極合剤成形体)であってもよく、正極合剤層が集電体の片面に形成された構造のものであってもよい。
【0046】
正極活物質には、従来から知られているリチウムイオン二次電池などの非水二次電池に用いられている正極活物質、すなわち、Liイオンを吸蔵放出可能な活物質であれば特に制限はない。例えば、Li
1+xMO
2(−0.1<x<0.1、M:Co、Ni、Mn、Al、Mgなど)で表される層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物、LiMn
2O
4やその元素の一部を他元素で置換したスピネル構造のリチウムマンガン酸化物、LiMPO
4(M:Co、Ni、Mn、Feなど)で表されるオリビン型化合物などを用いることが可能である。
【0047】
前記層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物の具体例としては、LiCoO
2やLiNi
1−xCo
x−yAl
yO
2(0.1≦x≦0.3、0.01≦y≦0.2)などの他、少なくともCo、NiおよびMnを含む酸化物(LiMn
1/3Ni
1/3Co
1/3O
2、LiMn
5/12Ni
5/12Co
1/6O
2、LiNi
3/5Mn
1/5Co
1/5O
2など)などを例示することができる。
【0048】
また、正極の導電助剤としては、例えば、カーボンブラックなどの炭素材料などが挙げられ、正極のバインダとしては、PVDFなどのフッ素樹脂やSBR、CMCなどが挙げられる。
【0049】
正極は、正極合剤層のみで構成する場合、すなわち正極合剤の成形体の場合には、例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダなどを混合して調製した正極合剤を所定の形状に加圧成形することで製造することができる。
【0050】
また、正極合剤層と集電体とを有する形態の正極の場合には、例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダなどを水またはN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの有機溶媒に分散させて正極合剤含有組成物(スラリー、ペーストなど)を調製し(バインダは溶媒に溶解していてもよい)、これを集電体上に塗布し乾燥し、必要に応じてカレンダ処理などのプレス処理を施す工程を経て製造することができる。
【0051】
正極に集電体を使用する場合、その集電体としては、アルミニウムなどの金属の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、厚みが10〜30μmのアルミニウム箔が好適に用いられる。
【0052】
また、正極には、常法に従って電池内の他の部材と電気的に接続するためのリード体を設けることもできる。
【0053】
ただし、正極は、前記の各方法で製造されたものに限定されず、他の方法で製造したものであってもよい。
【0054】
正極に係る正極合剤中の組成としては、正極活物質の量が80〜90質量%であることが好ましく、導電助剤の含有量が1.5〜10質量%であることが好ましく、バインダの含有量が0.3〜10質量%であることが好ましい。
【0055】
正極合剤層の厚みは、0.1mm以上であり、0.2mm以上であることが好ましく、また、1mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましい。
【0056】
本発明法により得られる扁平形非水二次電池に係る負極としては、負極活物質およびバインダなどを含有する負極合剤層を、集電体の片面または両面に有する構造のものや、前記の負極合剤層のみで構成したもの(負極合剤の成形体)が挙げられる。また、負極活物質が金属や合金の場合には、これらの金属や合金のシートをそのまま負極として用いたり、これらの金属や合金のシートを集電体の片面または両面に貼り付けたりした構造の負極とすることもできる。
【0057】
負極活物質としては、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などの炭素材料;リチウムまたはリチウム合金;リチウムと合金化可能な金属(Si、Snなど)またはその合金;Li
3/4Ti
5/3O
4;SiO、SiO
2などのシリコン酸化物;などが挙げられる。また、バインダには、正極に使用し得るものとして先に例示したものと同じものが使用できる。
【0058】
負極合剤層には、必要に応じて導電助剤を含有させてもよい。負極合剤層の導電助剤には、正極に使用し得るものとして先に例示したものと同じものが使用できる。
【0059】
負極は、例えば、負極活物質およびバインダ、更には必要に応じて導電助剤などを、水やNMPなどの溶剤に分散させたペースト状やスラリー状の負極合剤含有組成物を調製し(ただし、バインダは溶剤に溶解していてもよい)、これを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥した後に、必要に応じてカレンダ処理などのプレス処理を施す工程を経て製造される。
【0060】
ただし、負極は、前記の製造方法で製造されたものに限定される訳ではなく、他の方法で製造したものであってもよい。例えば、前記の通り、金属や合金を負極活物質とする負極においては、これらのシートをそのまま負極としたり、これらのシートを集電体の片面または両面に貼り付けて負極としたりすることもできる。また、負極合剤層のみで構成した負極(負極合剤成形体)の場合には、例えば、負極活物質およびバインダなどを混合して調製した負極合剤を所定の形状に加圧成形することで製造することができる。
【0061】
負極に集電体を用いる場合には、集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、銅箔が用いられる。この負極集電体は、高エネルギー密度の電池を得るために負極全体の厚みを薄くする場合、厚みの上限は30μmであることが好ましく、下限は5μmであることが望ましい。
【0062】
また、負極には、常法に従って電池内の他の部材と電気的に接続するためのリード体を設けることもできる。
【0063】
ただし、負極は、前記の各方法で製造されたものに限定されず、他の方法で製造したものであってもよい。
【0064】
負極に係る負極合剤中の組成としては、負極活物質の量が80〜95質量%であることが好ましく、バインダの量が1〜20質量%であることが好ましく、導電助剤を使用する場合には、その量が1〜10質量%であることが好ましい。
【0065】
また、負極合剤層の厚み(負極合剤層のみで負極を構成する場合、すなわち、負極合剤成形体の場合は、負極合剤成形体の厚みであり、集電体の両面に負極合剤層を有する負極の場合は、集電体の片面あたりの厚みである。)は、0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましく、また、1mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましい。
【0066】
本発明法により得られる扁平形非水二次電池に係る非水電解液には、リチウム塩を有機溶媒に溶解した溶液が用いられる。リチウム塩としては、溶媒中で解離してLi
+イオンを形成し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こしにくいものであれば特に制限はない。例えば、LiClO
4、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6、LiSbF
6 などの無機リチウム塩;LiCF
3SO
3、LiCF
3CO
2、Li
2C
2F
4(SO
3)
2、LiN(CF
3SO
2)
2、LiC(CF
3SO
2)
3、LiC
nF
2n+1SO
3(n≧2)、LiN(R
fOSO
2)
2〔ここでRfはフルオロアルキル基〕などの有機リチウム塩;を用いることができる。
【0067】
非水電解液に用いる有機溶媒としては、前記のリチウム塩を溶解し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)などの鎖状カーボネート;プロピオン酸メチルなどの鎖状エステル;γ−ブチロラクトンなどの環状エステル;ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、1,3−ジオキソラン、ジグライム、トリグライム、テトラグライムなどの鎖状エーテル;ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリルなどのニトリル類;エチレングリコールサルファイトなどの亜硫酸エステル類;などが挙げられ、これらは2種以上混合して用いることもできる。なお、より良好な特性の電池とするためには、エチレンカーボネートと鎖状カーボネートの混合溶媒など、高い導電率を得ることができる組み合わせで用いることが望ましい。また、これらの非水電解液に安全性や充放電サイクル特性、高温貯蔵性といった特性を向上させる目的で、ビニレンカーボネート類、1,3−プロパンサルトン、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、フルオロベンゼン、t−ブチルベンゼンなどの添加剤を適宜加えることもできる。
【0068】
このリチウム塩の非水電解液中の濃度としては、0.5〜1.5mol/lとすることが好ましく、0.9〜1.25mol/lとすることがより好ましい。
【0069】
また、非水電解液には、公知のゲル化剤を添加してゲル状としたもの(ゲル状電解質)を用いることもできる。
【0070】
本発明法では、正極とセパレータとを重ね合わせる工程と、その後に加熱して正極合剤層と対向しないセパレータの端部を正極側に曲げる工程とを経て、扁平形非水二次電池を製造する。
【0071】
前記の加熱処理は、正極とセパレータとを積層したものに施してもよく、正極と負極とをセパレータを介して積層した電極体に施しても構わない。なお、前記の通り、セパレータの表面に接着性樹脂を存在させている場合には、この加熱処理によって、セパレータと電極とを一体化することができる。また、正極側に曲げられたセパレータの端部は、正極合剤層の側面に接着され、固定されることが望ましい。
【0072】
セパレータのサイズは、正極合剤層の扁平面に重ねた際に、この扁平面からはみ出している幅が、セパレータのいずれの方向においても、正極合剤層の厚みの50%以上であることが好ましい。これにより、正極合剤層の側面のある程度の領域までセパレータで覆うことができるため、電極体の各構成要素の位置ずれによる問題をより良好に抑制することができる。
【0073】
ただし、セパレータのサイズが大きすぎると、セパレータの端部のうち、正極合剤層の側面を覆わない部分の割合が大きくなり、却って電池の生産性を損なう虞が生じる。よって、セパレータのサイズは、正極合剤層の扁平面に重ねた際に、この扁平面からはみ出している幅が、セパレータのいずれの方向においても2mm以下であることが好ましい。
【0074】
なお、セパレータに対する前記加熱処理は、セパレータがほとんど熱収縮しない温度で行われるので、前記の扁平面からはみ出している幅は、実質的に、電池の組み立て後にも維持される。
【0075】
正極とセパレータとを積層したものに加熱処理を施して正極の所定箇所をセパレータで覆った積層体を使用する場合には、例えば、絶縁ガスケットを装着した封口板に負極を入れた後に、前記積層体をセパレータ側が負極側となるように負極上に重ね、封口板に非水電解液を入れてから、封口板の開口部(絶縁ガスケットの開口部)に外装缶を被せ、カシメて扁平形非水二次電池とすることができる。
【0076】
また、正極と負極とをセパレータを介して積層した電極体に加熱処理を施して正極の所定箇所をセパレータで覆ったものを使用する場合には、例えば、絶縁ガスケットを装着した封口板に正極の所定箇所をセパレータで覆った後の電極体を入れ、封口板に非水電解液を入れてから、封口板の開口部(絶縁ガスケットの開口部)に外装缶を被せ、カシメて扁平形非水二次電池とすることができる。
【0077】
前記の加熱処理時においては、加熱温度を、多孔質層(I)を構成するポリオレフィンの融点未満とすることが好ましく、これにより加熱処理時にセパレータの孔が塞がれてしまうことを抑制することができる。
【0078】
本発明法により得られる扁平形非水二次電池の平面視での形状については特に制限はなく、円形、四角形などの多角形(角部を曲線状にしたものを含む)のいずれであってもよい。また、正極および負極の平面視での形状についても、扁平形非水二次電池の平面視での形状に応じた形状とすればよく、円形や、四角形などの多角形(角部を曲線状としたものを含む)とすることができる。更に、電池の製造に使用するセパレータの平面視での形状も、正極および負極の平面視での形状に応じた形状とすればよい。
【0079】
本発明法により得られる扁平形非水二次電池は、従来から知られている扁平形非水二次電池が適用されている用途と同じ用途に用いることができる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
【0081】
実施例1
(正極の作製)
コバルト酸リチウム粉末と黒鉛粉末とポリフッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに分散させることにより得られたペーストを、アルミニウムの金属多孔質体(開孔径:0.5mm、開口率:95%)からなる正極集電体に含浸させ、乾燥させた後、圧縮成形し、直径:13mmの円板状に打ち抜いて、厚みが0.5mmの正極を得た。
【0082】
(負極の作製)
黒鉛粉末とスチレンブタジエンゴムとカルボキシメチルセルロースを水に分散させることにより得られたペーストを、銅の金属多孔質体(開孔径:0.5mm、開口率:95%)からなる負極集電体に含浸させ、乾燥させた後、圧縮成形し、直径:14mmの円板状に打ち抜いて、厚みが0.5mmの負極を得た。
【0083】
(セパレータの作製)
ジメチルアセトアミドとトリプロピレングリコールとを質量比で1:1とした混合溶媒に、メタ型全芳香族ポリアミド(帝人テクノプロダクツ社製「コーネックス」)を溶解させ、更に、平均粒子径が0.5μmのアルミナ粒子を、前記全芳香族ポリアミドとの質量比が1:1となるように混合して、塗液を調製した。
【0084】
前記塗液を厚みが12μmのポリエチレン微多孔膜上に塗布し、水とジメチルアセトアミドとトリプロピレングリコールとを質量比で2:1:1とした混合溶媒に浸漬し、次いで、水洗・乾燥を行なうことにより、多孔質層(I)(ポリエチレン微多孔膜)の一方の面に、多孔質層(II)が形成されたセパレータ(厚み:18μm)を得た。
【0085】
前記セパレータの多孔質層(I)の表面に、ポリフッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解させた溶液を点状に塗布し、乾燥することにより、接着性樹脂のドットが規則的に配列したセパレータ(接着性樹脂の目付け:0.3g/m
2)とした。
【0086】
(電池の組み立て)
前記セパレータを直径:16mmの円板状に切断し、多孔質層(I)が正極と対向するように前記正極上に配置し、加圧しながら130℃に加熱することにより、正極と対向しないセパレータの端部を正極側に曲げ、かつ正極とセパレータを一体化させて積層体を形成した。
【0087】
前記負極を、絶縁ガスケットを装着した封口板内に配置し、その上に、前記積層体をセパレータ側が負極側となるようにして重ね、非水電解液を注入した後に封口板の開口部に外装缶を被せ、カシメることにより封止して、
図1に示す構造の扁平形非水二次電池を作製した。
【0088】
上記工程を用いたことにより、カップ状に成形したセパレータを正極に嵌める工程が不要となり、その際に不良が生じることを防ぐことができた。
【0089】
比較例1
負極を、絶縁ガスケットを装着した封口板内に配置した後、その上に、セパレータおよび正極を順に重ねた以外(すなわちセパレータに加熱処理を施さなかった以外)は、実施例1と同様にして扁平形非水二次電池を作製した。
【0090】
(電池の特性評価)
実施例1および比較例1の電池に対して充放電を行い、放電容量の平均を求めたところ、実施例1:16.6mAh、比較例1:16.5mAhとなり、セパレータをカップ状に成形しない従来の電池と同じ特性が得られ、正極上に配置したセパレータを加圧しながら加熱して、正極と対向しないセパレータの端部を正極側に曲げ、かつ正極とセパレータを一体化させる工程による電池特性の低下は見られなかった。