特許第6334469号(P6334469)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334469
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】外面塗装装置および外面塗装方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 12/16 20180101AFI20180521BHJP
   B05B 14/00 20180101ALI20180521BHJP
   B05B 13/04 20060101ALI20180521BHJP
   B05D 1/32 20060101ALI20180521BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20180521BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20180521BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   B05B15/04 103
   B05B13/04
   B05D1/32 E
   B05D1/02 H
   B05D3/00 C
   B05D7/00 K
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-141627(P2015-141627)
(22)【出願日】2015年7月15日
(65)【公開番号】特開2017-23888(P2017-23888A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2017年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】城山 一人
(72)【発明者】
【氏名】山本 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 宏正
(72)【発明者】
【氏名】網島 信吾
(72)【発明者】
【氏名】幸 琢久磨
(72)【発明者】
【氏名】藤本 昌士
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−185479(JP,U)
【文献】 実開昭56−080260(JP,U)
【文献】 特開平11−169764(JP,A)
【文献】 特開昭55−056860(JP,A)
【文献】 特開2013−198832(JP,A)
【文献】 特開平11−276949(JP,A)
【文献】 実開平07−017353(JP,U)
【文献】 特開平07−241517(JP,A)
【文献】 特開平10−235791(JP,A)
【文献】 特開昭55−5755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B1/00〜17/08
B05C1/00〜21/00
B05D1/00〜 7/26
F16L1/00〜59/22
Japio−GPG/FX
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体の外面に塗料を噴射する外面塗装装置であって、
前記外面塗装装置が、
前記管体の一方の端部の開口を閉鎖する閉鎖機構を備え、
前記閉鎖機構が、
前記管体の前記一方の端部の開口を覆うことが可能な遮蔽板と、
前記遮蔽板を、前記管体の前記一方の端部に向けて移動させる移動機構と、
前記遮蔽板を前記管体の端部に向かって付勢する付勢部材と
を備え
前記外面塗装装置は、前記管体を前記管体の軸方向に移動させながら前記管体の外面を塗装するように構成され、
前記閉鎖機構が、前記管体の移動方向側の端部を閉鎖し、前記管体の他方の端部側に、前記他方の端部から離れる方向の空気流を生じさせる集塵機構が設けられ、
前記集塵機構は、前記管体の軸方向への移動の際に、前記管体の一方の端部が閉鎖された状態で前記他方の端部から離れる方向の空気流を生じさせる外面塗装装置。
【請求項2】
前記外面塗装装置が、前記管体を、管体の軸回りに回転させる回転装置を備え、
前記遮蔽板が、前記管体の回転に応じて回転可能に設けられている請求項1記載の外面塗装装置。
【請求項3】
前記外面塗装装置が、
前記管体の両端から管体をクランプする一対のクランプ部を備え、
前記一対のクランプ部は、前記一対のクランプ部を前記管体の端部に向かって移動可能に構成され、
前記一対のクランプ部のうちの一方のクランプ部に、前記閉鎖機構が設けられ、
前記クランプ部により前記管体をクランプする前の状態において、前記遮蔽板が、前記一方のクランプ部から離間して配置され、前記遮蔽板と前記一方のクランプ部との間に、前記付勢部材が設けられている請求項1記載の外面塗装装置。
【請求項4】
前記遮蔽板が、円盤状の遮蔽板基体と、前記遮蔽板基体に取り付けられ、前記管体の端部と当接する当接部とを備え、前記当接部が、低摩擦部材により形成されている請求項1または2に記載の外面塗装装置。
【請求項5】
前記遮蔽板が、円盤状の遮蔽板基体と、前記遮蔽板基体に取り付けられ、前記管体の端部と当接する当接部とを備え、前記当接部が耐摩耗ゴムにより形成されている請求項1〜のいずれか1項に記載の外面塗装装置。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の外面塗装装置を用いて、管体の外面を塗装する外面塗装方法であって、
前記管体を所定の位置に配置する工程、
配置された前記管体の一方の端部に向かって前記遮蔽板を移動させる工程、
前記遮蔽板を前記管体の一方の端部に当接させるとともに、前記付勢部材により、前記遮蔽板を前記端部に向かって押圧し、前記管体の一方の端部の開口を閉鎖する工程、
前記管体の他方の端部側に、前記他方の端部から離れる方向の空気流を生じさせる工程、および
前記管体を前記管体の軸方向に移動させ、前記管体を軸回りに回転させながら、前記管体の外面に塗料を噴射する工程
を備え
前記管体の軸方向への移動の際に、前記管体の移動方向側の端部が閉鎖された状態で前記他方の端部から離れる方向の空気流を生じさせて塗装を行う、
塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管体の外面塗装装置および外面塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水道管などに広く使用される鋳鉄管などの管体は、管体の内面および外面に防食性を付与するために、塗料により塗装されている。たとえば、水道管などに使用される鋳鉄管においては、管内面は、防食性や衛生性を考慮して、たとえば、モルタルライニングやエポキシ樹脂粉体塗装が施され、管外面は、たとえば、亜鉛系溶射が施され、その上に封孔処理剤や合成樹脂塗料が塗布される。
【0003】
管外面の塗装は、たとえば、塗料をスプレーガンから噴射するスプレー塗装などにより行われる。管体の両端側は開放しているため、外面塗装を行う際のミスト状の塗料や、外面塗装により生じた粉末や固形物が管体の内面に入ってしまうことがある。この場合、ミスト状の塗料や、塗装により生じた塗料の粉末や固形物(以下、まとめて単に塗料という)が管体の内面に入ると、管内面への塗料の残留により生じる衛生上の問題から好ましくない。
【0004】
特許文献1には、図7に示されるように、管の外面塗装を行う際に管内面を塗装から保護する塗装用マスキング100が開示されている。この塗装用マスキング100は、管端開口面101の内径にほぼ等しい外径を有した弾性体製円板102の外周縁に管端内周面に沿って密接する短筒状の縁体103が一体に形成され、弾性体製円板102の表面に把手ハンドル104が設けられている。この塗装用マスキング100は、内面塗装が終了した管に対して外面塗装をする場合に、作業者が把手ハンドル104を持って管端開口面101に塗装用マスキング100を押し込み、両側の管端を閉鎖する。管の外面塗装が完了すると、作業者は把手ハンドル104を持って、塗装用マスキング100を両側の管端から引き抜く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−169764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の塗装用マスキング100では、作業者が管1本毎に把手ハンドル104を持って、塗装用マスキング100を管端開口面101に押し込み、塗装が完了すると塗装用マスキング100を管端開口面101から引き抜く必要がある。管の塗装の際には、次々と送られてくる多量の管を処理する必要があるため、特許文献1の塗装用マスキング100は非効率であり、管の塗装におけるスループットが大きく低下する。
【0007】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑みて、管内面への塗料の侵入を防止することができ、かつ、管の外面塗装を効率よく進めることが可能な外面塗装装置および外面塗装方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の外面塗装装置は、管体の外面に塗料を噴射する外面塗装装置であって、前記外面塗装装置が、前記管体の少なくとも一方の端部の開口を閉鎖する閉鎖機構を備え、前記閉鎖機構が、前記管体の少なくとも一方の端部の開口を覆うことが可能な遮蔽板と、前記遮蔽板を、前記管体の端部に向けて移動させる移動機構と、前記遮蔽板を前記管体の端部に向かって付勢する付勢部材とを備えていることを特徴とする。
【0009】
また、前記外面塗装装置が、前記管体を、管体の軸回りに回転させる回転装置を備え、前記遮蔽板が、前記管体の回転に応じて回転可能に設けられていることが好ましい。
【0010】
また、前記閉鎖機構が、前記管体の一方の端部側に設けられ、前記管体の他方の端部側に、前記他方の端部から離れる方向の空気流を生じさせる集塵機構が設けられていることが好ましい。
【0011】
また、前記外面塗装装置が、前記管体の両端から管体をクランプする一対のクランプ部を備え、前記一対のクランプ部は、前記一対のクランプ部を前記管体の端部に向かって移動可能に構成され、前記一対のクランプ部のうちの一方のクランプ部に、前記閉鎖機構が設けられ、前記クランプ部により前記管体をクランプする前の状態において、前記遮蔽板が、前記一方のクランプ部から離間して配置され、前記遮蔽板と前記一方のクランプ部との間に、前記付勢部材が設けられていることが好ましい。
【0012】
また、前記遮蔽板が、円盤状の遮蔽板基体と、前記遮蔽板基体に取り付けられ、前記管体の端部と当接する当接部とを備え、前記当接部が、低摩擦部材により形成されていることが好ましい。
【0013】
また、前記遮蔽板が、円盤状の遮蔽板基体と、前記遮蔽板基体に取り付けられ、前記管体の端部と当接する当接部とを備え、前記当接部が耐摩耗ゴムにより形成されていることが好ましい。
【0014】
本発明の外面塗装方法は、上記外面塗装装置を用いて、管体の外面を塗装する外面塗装方法であって、前記管体を所定の位置に配置する工程、配置された前記管体の端部に向かって前記遮蔽板を移動させる工程、前記遮蔽板を前記管体の一方の端部に当接させるとともに、前記付勢部材により、前記遮蔽板を前記端部に向かって押圧し、前記管体の端部の開口を閉鎖する工程、および前記管体を軸回りに回転させながら、前記管体の外面に塗料を噴射する工程を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、管内面への塗料の侵入を防止することができ、かつ、管の外面塗装を効率よく進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態の外面塗装装置を示す概略図である。
図2図1の外面塗装装置に配置された管体の横断面図である。
図3図1の外面塗装装置の遮蔽板およびシャフトを示す部分断面図である。
図4】遮蔽板が複数の管体に当接した状態を示す上面図である。
図5】他の実施形態の外面塗装装置を示す概略図である。
図6図5の外面塗装装置のクランプ部により管体がクランプされた状態を示す概略図である。
図7】従来の塗装用マスキングを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照し、本発明の一実施形態の外面塗装装置を説明する。なお、本発明の外面塗装装置は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。
【0018】
<第1の実施形態>
図1に示されるように、本実施形態の外面塗装装置1は、たとえば、水道管などに使用される鋳鉄管などの管体Pの外面を塗装する際に用いられる。なお、管体Pの内面の塗装は、外面塗装の前後のいずれでも構わないが、本実施形態では、管体Pの内面塗装が行なわれた後、外面塗装が行なわれる場合を例にあげて説明する。内面塗装の方法は特に限定されないが、防食性や衛生性の観点から、管体Pの内面にはモルタルライニングやエポキシ樹脂粉体塗装が施される。管体Pの外面塗装の方法は特に限定されないが、たとえば、亜鉛系溶射が施された後、その上に封孔処理剤や合成樹脂塗料が塗布される。以下に示す実施形態では、管体Pの外面に合成樹脂塗料を塗布する際の外面塗装装置1を例にあげて説明する。
【0019】
図1に示されるように、本実施形態の外面塗装装置1は、管体Pが設置され、管体Pを管体Pの軸回りに回転させる回転装置2と、管体Pに塗料を噴射する噴射装置3とを備えている。噴射装置3は、たとえばスプレーガン31などの噴射部によりミスト状の塗料を噴射する。噴射装置3から噴射される塗料は、管体Pに防食性を付与することができれば特に限定されないが、たとえば、日本水道協会規格のJWWA K 139「水道用ダクタイル鉄管合成樹脂塗料」に規定される合成樹脂塗料などの水系塗料が用いられる。
【0020】
噴射装置3は、本実施形態では、図1に示されるように、管体Pの上方に設けられ、噴射装置3が管体Pの軸方向に移動することにより、管体Pの外面に塗料を噴射する。本実施形態では、図1に示されるように、スプレーガン31が、設置された管体Pの上方に、管体Pの軸方向に沿って延びるガイド32に沿って移動しながら、管体Pの外面にミスト状の塗料を噴射する。なお、噴射装置3を管体Pの軸方向に移動させずに、後述するように台車Cなどによって管体Pを軸方向に移動させて管体Pの外面を塗装してもよい。
【0021】
回転装置2は、管体Pの周方向に塗料を塗布するために、管体Pを軸回りに回転させる。本実施形態では、回転装置2は、図1および図2に示されるように、ローラ21を有しており、管体Pは、管体Pの挿し口P1側および受口P2側のそれぞれにおいて、一対のローラ21に支持され、ローラ21が回転することにより、管体Pを回転させる。また、本実施形態では、図1に示されるように、管体Pを支持する支持体となる回転装置2は、管体Pを支持した状態で管体Pの軸方向に移動可能な台車Cに設けられている。本実施形態では、噴射装置3のスプレーガン31が移動する方向(たとえば、図1中、左側)とは反対方向に、台車Cが管体Pを支持した状態で移動する(たとえば、図1中、右側に移動する)ことにより、管体Pの外面を塗装する。なお、噴射装置3の構造、噴射方法や、管体Pの軸方向での移動方法、回転方法は、本実施形態に示すものに限定されず、他の構造、方法であってもよい。
【0022】
また、本実施形態の外面塗装装置1は、図1に示されるように、管体Pの少なくとも一方の端部(挿し口P1側の端部)の開口を閉鎖する閉鎖機構4を備えている。閉鎖機構4は、図1および図3に示されるように、管体Pの少なくとも一方の端部の開口を覆うことが可能な遮蔽板41と、遮蔽板41を、管体Pの端部に向けて移動させる移動機構42と、遮蔽板41を管体Pの端部に向かって付勢する付勢部材43とを備えている。本実施形態では、閉鎖機構4は、図1に示されるように、架台44と、架台44から水平方向に延び、その先端側において遮蔽板41が接続されるシャフト45とをさらに備えている。
【0023】
架台44は、図1に示されるように、台車Cに取り付けられた支持台5上に移動可能に接続されている。より具体的には、台車Cから略水平方向に延びる支持台5には、略水平方向に延びるガイド部51が形成され、ガイド部51に架台44がガイドされ、移動機構42が駆動されることにより、架台44(および遮蔽板41)が、管体Pの一方の端部(挿し口P1の端面)に対して遠近自在となっている。また、架台44には、図1に示されるように、シャフト45の上下位置を操作可能なハンドルとして示された高さ調整機構46が設けられており、管体Pの大きさや、設置高さに応じて、遮蔽板41の位置を調整することができる。
【0024】
移動機構42は、本実施形態では、エアシリンダが用いられており、エアシリンダの一端(図1中、右側の端部)が支持台5に固定され、他端(図1中、左側の端部)が架台44に固定されて、エアシリンダのロッドの伸縮により、架台44(遮蔽板41)を、管体Pの端部に向けて移動させている。しかし、移動機構42の構造は、架台44(遮蔽板41)を移動させることができれば、特に限定されず、他の公知の機構を用いても構わない。
【0025】
本実施形態では、図3に示されるように、シャフト45は、シャフト45の一部が架台44に固定された筒状体47に挿入され、筒状体47に対して軸方向に移動できるように取り付けられている。また、シャフト45の先端部は遮蔽板41の中央部に取り付けられ、詳細は後述するが、本実施形態では、図3に示されるように、ベアリング48を介してシャフト45の先端部が遮蔽板41に取り付けられ、シャフト45に対して遮蔽板41が回転できるように構成されている。
【0026】
遮蔽板41は、図1および図2に示されるように、管体Pの受口P1または挿し口P2の開口を覆うことができる大きさに形成されている。遮蔽板41の形状は特に限定されないが、本実施形態では、図2に示されるように、円盤状に形成されている。また、本実施形態の遮蔽板41は、図3に示されるように、円盤状の遮蔽板基体41aと、遮蔽板基体41aに取り付けられ、管体Pの端部と当接する当接部41bとを備えている。遮蔽板基体41aには、本実施形態では、図2に示されるように、ベアリング48が取り付けられる円板状の部材の周縁に、当接部41bを係止させて、当接部41bが遮蔽板基体41aから脱落することを防止する係止部Eが環状に形成されている。
【0027】
当接部41bの材料は特に限定されないが、本実施形態では、たとえば、MCナイロン(登録商標)などの低摩擦部材により形成されている。当接部41bが低摩擦部材により形成されていることにより、当接部41bが管体Pの端面に当接したときの、管体Pの摩擦による摩耗や破損を抑制することができる。また、当接部41bは、耐摩耗ゴムとしてもよい。当接部41bに耐摩耗ゴムを用いた場合、当接部41bが摩耗しにくいため、当接部41bの長寿命化が可能となる。なお、本実施形態では、当接部41bは一層として示されているが、当接部41bは一層のものに限定されず、複層構造であってもよい。
【0028】
また、本実施形態では、図1および図3に示されるように、遮蔽板41と架台44との間には、遮蔽板41を管体Pの端部(挿し口P1の端面)に向かって付勢する付勢部材43が介装されている。付勢部材43は本実施形態では、シャフト45の外周側に設けられた圧縮コイルバネとして示されており、バネの両端が、シャフト45の先端側のフランジ部45aと、架台44側のバネ座45bとの間に配置されて、遮蔽板41を管体Pの端部に向かって付勢している。なお、付勢部材43は圧縮コイルバネに限定されるものではなく、遮蔽板41を管体Pの端部に向かって付勢することができれば、他の公知の付勢部材であってもよく、また、付勢部材の配置位置や固定方法も特に限定されるものではない。
【0029】
このように、閉鎖機構4が、遮蔽板41と、遮蔽板41を管体Pの端部に向けて移動させる移動機構42と、遮蔽板41を管体Pの端部に向かって付勢する付勢部材43とを備えている。したがって、管体Pが設置された状態で、移動機構42により遮蔽板41が管体Pの端部に当接するまで移動して、管体Pの端部の開口を閉鎖することができ、噴射装置3による塗装時に、空中に浮遊したミスト状の塗料が管内面に侵入することを防止することができる。さらに、遮蔽板41を移動機構42により管体Pの端部に向けて移動させるだけで、管体Pの端部の開口を閉鎖することができ、塗装後には、遮蔽板41を管体Pの端部から離れる方向に移動させるだけでよいため、管体Pの連続した処理が容易となり、管体Pの外面塗装を効率よく進めることができる。
【0030】
つぎに、本実施形態の外面塗装装置1の作用効果を説明する。
【0031】
図1に示されるように、管体Pを所定の位置、すなわちローラ21上に配置した後、移動機構42が駆動される。移動機構42が駆動されると、閉鎖機構4の架台44が支持台5のガイド部51にガイドされて、管体Pの挿し口P1の端面に向かって移動する。これにより、架台44とともに遮蔽板41が管体Pの挿し口P1の端面に向かって移動して、遮蔽板41が挿し口P1の端面に当接する。この当接の際、遮蔽板41は付勢部材43を圧縮しながら軸方向に移動して当接時の衝撃が吸収され、管体Pや閉鎖機構4の破損を防止することができる。
【0032】
遮蔽板41が挿し口P1の端面に当接した後、遮蔽板41が挿し口P1の端面に当接した状態で付勢部材43を圧縮しながら架台44はさらに移動して、所定の位置で停止する。遮蔽板41は挿し口P1の端面に向かって付勢部材43により押圧され、管体Pの挿し口P1の開口を閉鎖する。このとき、図4に示されるように、管体Pの設置位置(軸方向での位置)が、複数の管体Pごとでずれている場合であっても、管体Pの端面の軸方向での位置のずれを、付勢部材43の圧縮量がずれに応じて変動することにより吸収することができ、管体Pの端面を確実に閉鎖することができる。なお、本実施形態では、図4に示されるように、平行に配置された複数の管体Pの端部の開口を複数の閉鎖機構4により閉鎖するように構成しているが、1つの管体Pを1つの閉鎖機構4により閉鎖するものでもよい。設置される1つの管体Pは、塗装が完了した管体と、次に設置される管体とで、軸方向の位置がずれる場合があるので、この場合にも、前回塗装された管体と、その次に塗装される管体との間の軸方向での位置のずれを付勢部材43により吸収することができる。
【0033】
管体Pの挿し口P1の開口が遮蔽板41により閉鎖されると、噴射装置3のスプレーガン31による塗装が開始される。塗装が開始されると、ミスト状の塗料がスプレーガン31から噴霧されるが、挿し口P1の開口は遮蔽板41により閉鎖されているため、塗料が挿し口P1の内側に侵入することが防止される。特に、管体Pの両端が閉鎖されていない場合、管体Pを管体Pの軸方向(たとえば図1中、右側)に沿って移動させると、管体Pの移動方向と逆方向の気流(たとえば図1中、左側への気流)が管体Pの内側に生じて、その気流により、浮遊したミスト状の塗料が挿し口P1の開口から管体Pの内側に侵入するが、本実施形態では、その気流を管体Pの端部の少なくとも一方を遮蔽板41により閉鎖しているので、管体Pの内側に気流が生じることが防止される。したがって、管体Pの内面への塗料の付着が防止される。また、塗装は、回転装置2のローラ21が回転することにより、管体Pを軸回りに回転させながら行われる。それとともに、台車Cが管体Pの軸方向(図1中、右側)に移動し、同時にスプレーガン31がガイド32に沿って台車Cの移動方向とは反対方向(図1中、左側)に移動する。このとき、管体Pの回転や、台車Cの移動に伴って、管体Pが軸方向に移動したり、振動する場合があるが、その場合であっても、付勢部材43が挿し口P1の端面に向かって付勢されながら、付勢部材43の圧縮量が変動することにより、塗装中においても挿し口P1の端面への遮蔽板41の当接が維持されて、塗料の侵入を防止することができる。
【0034】
また、図1および図2に示されるように、遮蔽板41の外径は管体Pの端部の外径よりも大きく、付勢部材43の付勢力により遮蔽板41を管体Pの端面へ押し当てることによって、管体Pの端部の開口を閉鎖しているため、管体Pの内径や、管体Pの内部の形状に左右されることなく複数種類の管体Pに容易に適用することができる。
【0035】
また、遮蔽板41は、図3に示されるように、ベアリング48により、管体Pの回転に応じて回転可能に設けられている。したがって、遮蔽板41が管体Pの回転に追従して回転可能であるため、遮蔽板41と管体Pの端部との間の擦れによる、管体Pの端部の破損が抑制され、管体Pの端部をより良い状態に保つことができる。また、遮蔽板41の当接部41bを低摩擦部材により形成した場合は、より摩擦による摩耗や破損が軽減され、管体Pの端部をさらに良い状態に保つことができる。
【0036】
噴射装置3のスプレーガン31による塗装は、管体Pの受口P2の立ち上がり部分Rまで行われ、塗装が完了すると噴射装置3や回転装置2は停止する。受口P2の立ち上がり部分Rの塗装時に、ミスト状の塗料は受口P2の周囲に浮遊しているが、受口P2の反対側の挿し口P1が閉鎖されているため、受口P2から挿し口P1に向かう気流が生じることなく、管体Pの一方の端部を閉鎖するだけで、他方の端部を閉鎖することなく、管体Pの内側への塗料の侵入を防止することができる。また、本実施形態では、受口P2に対向する位置に、受口P2から離れる方向(図1中、左側)の空気流を生じさせる集塵機構(集塵ダクト)6が設けられている。これにより、浮遊したミスト状の塗料を受口P2から離れる方向に排出させて、より管体Pの内面への塗料の侵入が防止される。なお、閉鎖機構4は、管体Pの挿し口P1および受口P2の両方に設けても構わないが、閉鎖機構4を一方のみに設けることにより、低コストで塗料の管体P内面への侵入を防止することができる。
【0037】
<第2の実施形態>
つぎに、図5および図6を参照し、第2の実施形態を説明する。上述した実施形態では、ローラ21により管体Pを回転させたものを示したが、第2の実施形態では、ローラ21は設けられておらず、一対のクランプ部により管体Pを挟み込み、一対のクランプ部により管体Pを回転させる点で異なっている。以下、相違点を中心に第2の実施形態について説明する。
【0038】
図5に示されるように、本実施形態の外面塗装装置10は、管体Pの両端から管体Pをクランプする一対のクランプ部CL1、CL2を備えている。一対のクランプ部CL1、CL2は、一対のクランプ部CL1、CL2を管体Pの端部に向かって移動可能に構成されている。一対のクランプ部CL1、CL2は、移動機構42a、42bにより管体Pの軸方向に移動可能に構成されている。本実施形態では、移動機構42a、42bは、クランプ部CL1、CL2を上下動可能かつ軸回りに回転可能に構成されている。
【0039】
管体Pは、管体Pの挿し口P1、受口P2側から一対のクランプ部CL1、CL2によりクランプされて持ち上げられた後、管体Pの軸回りに回転され、噴射装置3のスプレーガン31によりミスト状の塗料が塗装される。一対のクランプ部CL1、CL2は、図5に示されるように、本実施形態では、管体Pの端面に対向する底部Bと、底部Bから管体Pの軸方向に沿って延び、クランプ部CL1、CL2による管体Pのクランプ時に管体Pの端部の外周を覆う筒状部CYとを有している。
【0040】
本実施形態では、図5に示されるように、一方のクランプ部CL1に閉鎖機構40が設けられている。本実施形態の閉鎖機構40は、図5に示されるように、遮蔽板41と、移動機構42aと、付勢部材43とを備えている。遮蔽板41は、第1の実施形態と同様のものを用いることができるが、管体Pを確実にクランプし、かつ摩耗による劣化を防ぐ観点から、耐摩耗ゴムを用いることが好ましい。また、本実施形態では、遮蔽板41に接続されるシャフト45の一端は、クランプ部CL1の底部Bに固定され、他端は、管体Pのクランプ時に遮蔽板41がシャフト45に対してシャフト45の軸方向に移動可能に取り付けられている。なお、閉鎖機構40は、両方のクランプ部CL1、CL2に設けられていてもよい。
【0041】
また、遮蔽板41は、図5に示されるように、クランプ部CL1により管体Pをクランプする前の状態において、クランプ部CLの底部Bから離間して配置され、遮蔽板41とクランプ部CLの底部Bとの間に、付勢部材43が設けられている。付勢部材43は、遮蔽板41を管体Pの受口P2側に向かって付勢している。なお、本実施形態では、図5に示されるように、遮蔽板41の軸方向での位置が、クランプ部CL1の筒状部CYの自由端を越えるように配置されているが、遮蔽板41の位置は図5に示される位置に限定されるものではない。
【0042】
本実施形態の外面塗装装置10は、設置された管体Pを、図6に示されるように、移動機構42a、42bを駆動することにより、両側からクランプする。管体Pの挿し口P1側はクランプ部CL2によりクランプされ、受口P2側はクランプ部CL1によりクランプされる。より具体的には、受口P2側のクランプ部CL1が管体Pの受口P2に装着され、次に挿し口P1側のクランプ部CL2が装着されて、管体Pをクランプする。クランプ時には、クランプ部CL1が受口P2の端面に向かって移動すると、遮蔽板41が受口P2の端面に当接する。
【0043】
遮蔽板41が受口P2の端面に当接した後、遮蔽板41が受口P2の端面に当接した状態で付勢部材43を圧縮しながらクランプ部CL1はさらに移動して、付勢部材43が圧縮限度(図6に示す縮みきった状態)まで圧縮されると、管体Pはクランプ部CL1およびCL2によりクランプされ、管体Pが一対のクランプ部CL1、CL2により支持される。クランプ部CL1、CL2により管体Pが支持されると、クランプ部CL1が移動機構42aにより回転駆動されて、管体Pを回転させる。つぎに、管体Pを回転させながら噴射装置3により受口P2側から挿し口P1側に向かって塗装を行う。塗装が開始されると、ミスト状の塗料がスプレーガン31から噴霧されるが、受口P2の開口は遮蔽板41により閉鎖されているため、塗料が受口P2の内側に侵入することが防止される。
【0044】
また、クランプ部CL1のたとえば、クランプ部CL1の底部Bや筒状部CYには、複数の管体Pを塗装することによる粉末状の塗料が付着しており、この粉末状の塗料がクランプ部CL1によるクランプ時に剥落することがある。本実施形態の外面塗装装置10では、管体Pのクランプ時に、受口P2の端面にまず遮蔽板41が当接し、その後クランプされるため、管体Pをクランプしたときに加わる衝撃によって剥落する塗料は、衝撃が加わったときには既に遮蔽板41により管体Pの端部が閉鎖されているため、受口P2に侵入することを防ぐことができる。また、管体Pが一対のクランプ部CL1、CL2の間に配置されてからクランプが完了するまでの間(図5の状態から図6の状態までの間)、そして、遮蔽板41が受口P2の端面に当接し、管体Pをクランプした状態からクランプを解除するまでの間(図6の状態から図5の状態までの間)、付勢部材43により、遮蔽板41が受口P2の端面に当接し続ける。したがって、クランプ着脱時の受口P2の開口が閉鎖されていない状態となる暴露時間を短くすることができ、ミスト状の塗料の管体P内面への侵入を抑制することができる。
【0045】
また、連続する管体Pの処理の間に、空中にミスト状の塗料が浮遊しているため、管体Pの両側に閉鎖機構40を設けることが好ましいが、本実施形態では、受口P2側のクランプ部CL1を装着(受口P2側の開口を閉鎖)した後、挿し口P1側のクランプ部CL2を装着し、塗装後は、挿し口P1側のクランプ部CL2を離脱した後、受口P2側のクランプ部CL1を離脱する。そのため、挿し口P1側の開口が開放しているときには、受口P2側の開口が閉鎖されており、ミスト状の塗料は挿し口P1の開口の外側から管体Pの内側に向かう気流が生じない。したがって、クランプ部CL1、CL2を上述したように駆動することにより、受口P2側のクランプ部CL1のみに閉鎖機構40を設けるだけで、ミスト状の塗料の管体Pの内側への侵入を効果的に抑制することができ、製造コストを低減することができる。
【符号の説明】
【0046】
1、10 外面塗装装置
2 回転装置
21 ローラ
3 噴射装置
31 スプレーガン
32 ガイド
4、40 閉鎖機構
41 遮蔽板
41a 遮蔽板基体
41b 当接部
42、42a、42b 移動機構
43 付勢部材
44 架台
45 シャフト
45a フランジ部
45b バネ座
46 高さ調整機構
47 筒状体
48 ベアリング
5 支持台
51 ガイド部
6 集塵機構
B 底部
C 台車
CL1、CL2 クランプ部
CY 筒状部
E 係止部
P 管体
P1 挿し口
P2 受口
R 立ち上がり部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7