(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334470
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンを有効成分とする香料組成物
(51)【国際特許分類】
C11B 9/00 20060101AFI20180521BHJP
A23G 3/34 20060101ALI20180521BHJP
A23L 2/02 20060101ALI20180521BHJP
A23L 27/20 20160101ALI20180521BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20180521BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
C11B9/00 X
A23G3/34 101
A23L2/02 B
A23L27/20 G
A61K8/49
A61Q13/00 101
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-143932(P2015-143932)
(22)【出願日】2015年7月21日
(65)【公開番号】特開2017-25182(P2017-25182A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2016年12月7日
【審判番号】不服2017-17475(P2017-17475/J1)
【審判請求日】2017年11月27日
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000214537
【氏名又は名称】長谷川香料株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大橋 輝久
(72)【発明者】
【氏名】北川 春奈
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 和
(72)【発明者】
【氏名】尾曲 美緒
(72)【発明者】
【氏名】高橋 貴俊
【合議体】
【審判長】
佐々木 秀次
【審判官】
木村 敏康
【審判官】
阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−91634(JP,A)
【文献】
特開昭61−65877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンを、香料組成物全質量に対して10−8ppm〜10−4ppmの範囲の濃度で有効成分として含んでなる、香料組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の香料組成物を、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンとして香粧品全質量に対して10−8ppb〜10−4ppbの範囲の濃度で含有する香粧品。
【請求項3】
請求項1に記載の香料組成物を、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンとして飲食品全質量に対して10−8ppb〜10−4ppbの範囲の濃度で含有する飲食品。
【請求項4】
請求項1に記載の香料組成物を、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンとして香粧品若しくは飲食品全質量に対して10−8ppb〜10−4ppbの範囲の濃度で含有させることによる、香粧品若しくは飲食品に香気を付与乃至増強する方法。
【請求項5】
付与乃至増強される香気が柑橘様の香気である請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種香粧品又は飲食品に天然感を付与する香料組成物に関し、更に詳しくは、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンを香粧品又は飲食品に添加することにより、従来にない良質な香気及び香味を付与する香料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の嗜好性が多様化してきていることに伴い、各種各様の香粧品並びに加工食品の開発が望まれている。香粧品や飲食品等に使用する香料においては、新規な香気を持つ素材に対して絶え間ない要求があり、従来の香料物質を組み合わせることではその要求に十分対応しきれていないのが現状であり、新しい香料素材に対する要望が高くなっている。
【0003】
これまで、香粧品又は加工食品の風味改善、風味増強に関する提案がいくつか行われている。例えば、グリーン感を伴ったミルク様、バター様、フルーツ様、ピーチ様、アプリコット様、パイナップル様、フローラル様、ジャスミン様などの香気香味特性ならびにこれら特性の持続性に優れたシス−3−デセン−5−オリドを有効成分として含有する新規な香料組成物(特許文献1)、1−アリルオキシ−2−プロパノール及び/又は2−アリルオキシプロパノールを有効成分として含有することを特徴とし、特にフローラル様及びフルーティー様の香気香味特性が強調され、さらにその持続性に優れており、香料物質として極めて有用な香料組成物(特許文献2)、果物様、ミート様、特にグレープ様の香気に優れたメルカプトアルコールカルボン酸エステル類、それを有効成分として含有する香料組成物及び該エステル類の製造方法(特許文献3)、3−エチルチオ酪酸エステル類を有効成分として含有し、発酵様、完熟様、特にチーズ様などの香気香味特性を有し、嗜好品、飲食品類などの広い分野において優れた且つユニークな持続性香気香味賦与乃至変調剤として極めて有用である香料組成物(特許文献4)、(E)−6−ノネナールを極微量添加することにより、柑橘特有の果皮様のボディー感のある香味を付与することができ、従来にない柑橘特有のフレッシュでピール感のある香味を付与する柑橘香味増強剤(特許文献5)、12−メチルトリデカナールをバター、チーズ、牛乳などの乳製品等に1ppt〜100ppmの濃度で含有させ、乳脂肪感、ボディー感、コク味などを増強する方法(特許文献6)、などの提案がある。
【0004】
これらの提案は、香粧品の香気や飲食品の風味の付与または増強を目的とした提案であるが、さらに良質な香気や風味の付与または増強を行える提案が求められていた。
【0005】
一方4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンは慣用名としてα,β−アカリオライドとも呼ばれる公知化合物であり、例えば、コナダニ分泌物中の成分(非特許文献1)、ミルセンをヒラタケ培養物で処理した際の生成物中成分(非特許文献2−4)などから見出されたことが報告されている。
【0006】
しかしながら、従来、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンの香気について記述のある報告はなく、調合香料の香料素材としては全く使用されていなかった。
【0007】
なお、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンの構造式は[化1]で示される。
【0008】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2639746号公報
【特許文献2】特開2001−40384号公報
【特許文献3】特許第3913594号公報
【特許文献4】特許第4527989号公報
【特許文献5】特許第4183142号公報
【特許文献6】特許第5399083号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Biosci. Biotechnol. Biochem.,66(1),135−140 (2002)
【非特許文献2】Appl. Microbiol. Biotechnol.,78,533−541(2008)
【非特許文献3】Biocatal. Biotransform.,26(4),288−295(2008)
【非特許文献4】Bioresour. Technol.,100,2855−2860(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は従来にはない良質な香気及び香味を付与することができる香料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究を行ってきた結果、意外なことに従来は香気化合物とは認識されていなかった、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンは、従来にはない拡散性のある柑橘様の香気を有することを見出した。さらには香料組成物中に極微量添加することにより、従来にはないフレッシュな柑橘様の香味を付与することができることを見いだし、さらにその香料組成物を香粧品または飲食品に有効量添加することにより従来にはない良質な香気及び香味を付与することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0013】
なお、前記非特許文献1〜4を始めとする従来技術には、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンが天然に存在することは開示されているが、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンの香気および香料としての利用の可能性に関しては記載も示唆もされていない。
【0014】
かくして、本発明は以下のものを提供する。(1)4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンを有効成分として含有する香料組成物、(2)4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンを有効成分として含んでなる香料組成物を含有する香粧品、(3)4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンを有効成分として含んでなる香料組成物を含有する飲食品、(4)4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンを有効成分として含有する香料組成物を含有させることによる、香粧品若しくは飲食品に香気を付与乃至増強する方法、(5)付与乃至増強される香気が柑橘様の香気である4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンを有効成分として含有する香料組成物を含有させることによる、香粧品若しくは飲食品に香気を付与乃至増強する方法。
【0015】
本発明の香料組成物の配合の対象はその種類を問わない。当該対象としては、例えば、香料、香粧品、飲食品およびその他の工業製品などが例示される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンは従来にはない拡散性のある柑橘様の香気を有し、香料組成物中に配合することで、従来にはない柑橘様の香気を付与することができる。また、柑橘様の香気の付与のみでなく、例えば、ボディ感、ミルキーな芯のある残香、フローラル感、自然な果物様の香気が香料組成物にもたらされ、香料組成物全体の天然感、拡散性および残香性が増す。また、その香料組成物を香粧品または飲食品に有効量添加することにより従来にはない香気および香味を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の態様について更に詳しく説明する。本発明で使用される4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンは、公知文献による方法で合成することができる。例えば、α−ブロモ−γ−ブチロラクトンを原料として用いて5工程で合成することができる(前記非特許文献1参照)。
【0018】
4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンは、香粧品または飲食品に対して単独で使用しても良いが、好ましくは4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンを配合した香料組成物を香粧品や飲食品に添加することで、従来にはない香気および香味を付与することができる。かかる香料組成物の素材としては、例えば、オシメン、リモネン、α−フェランドレン、テルピネン、3−カレン、ビサボレン、バレンセンなどの炭化水素類;1−ウンデカノール、2−ウンデカノール、1−ドデカノール、プレノール、ジヒドロリナロール、ミルセノール、ジヒドロミルセノール、テトラヒドロミルセノール、オシメノール、テルピネオール、ベンジルアルコール、β−フェニルエチルアルコール、α−フェニルエチルアルコール、シンナミックアルコール、オイゲノール、イソオイゲノール、ジメチルベンジルカルビノールなどのアルコール類;アセトアルデヒド、n−ヘキサナール、n−ヘプタナール、n−オクタナール、n−ノナナール、2−メチルオクタナール、デカナール、ウンデカナール、2−メチルデカナール、ドデカナール、トリデカナール、テトラデカナール、トランス−2−ヘキセナール、トランス−4−デセナール、シス−4−デセナール、トランス−2−デセナール、10−ウンデセナール、トランス−2−ウンデセナール、トランス−2−ドデセナール、3−ドデセナール、トランス−2−トリデセナール、2,4−ヘキサジエナール、2,4−デカジエナール、2,4−ドデカジエナール、シトラール、ジメチルオクタナール、ミルテナール、ネラール、α−あるいはβ−シネンサール、フェニルアセトアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒドなどのアルデヒド類;オクタナールジメチルアセタール、ノナナールジメチルアセタール、デカナールジメチルアセタール、デカナールジエチルアセタール、シトラールジメチルアセタール、シトラールジエチルアセタール、シトラールプロピレングリコールアセタールなどのアセタール類;3−ヘプタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、2−ウンデカノン、2−トリデカノン、メチルヘプテノン、ジメチルオクテノン、ゲラニルアセトン、ヌートカトン、ジヒドロヌートカトン、ロタンドン、アセトフェノン、αあるいはβ−イオノンなどのケトン類;ギ酸リナリル、ギ酸シトロネリル、ギ酸ゲラニル、ギ酸ネリル、ギ酸テルピニル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸シス−3−ヘキセニル、酢酸トランス−2−ヘキセニル、酢酸オクチル、酢酸ノニル、酢酸デシル、酢酸ドデシル、酢酸オシメニル、酢酸ミルセニル、酢酸ジヒドロミルセニル、酢酸リナリル、酢酸シトロネリル、酢酸ゲラニル、酢酸ネリル、酢酸ラバンジュリル、酢酸テルピニル、プロピオン酸リナリル、プロピオン酸ゲラニル、プロピオン酸ネリル、プロピオン酸テルピニル、プロピオン酸スチラリル、酪酸オクチル、酪酸ネリル、酪酸シンナミル、イソ酪酸リナリル、イソ酪酸ネリル、イソ吉草酸リナリル、イソ吉草酸テルピニル、イソ吉草酸フェニルエチル、ケイヒ酸メチル、クエン酸トリエチルなどのエステル類;チモール、カルバクロール、β−ナフトールイソブチルエーテルなどのフェノール類;γ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトンなどのラクトン類;酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、2−デセン酸、ゲラン酸などの酸類;アントラニル酸メチル、アントラニル酸エチル、N−メチルアントラニル酸メチル、ドデカンニトリル、2−トリデセンニトリル、ゲラニルニトリル、シトロネリルニトリル、インドール、チオゲラニオール、リモネンチオール、P−メンチル−8−チオールなどの含窒素・含硫化合物類など公知の合成香料化合物及び圧搾、溶剤抽出、水蒸気蒸留などにより得られる各種天然香料などを挙げることができ、これらを任意に組み合わせて混合した香料組成物を挙げることができる。また、ここで天然香料とは、例えばオレンジ、スイートオレンジ、ビターオレンジ、ネロリ、プチグレン、ベルガモット、レモン、グレープフルーツ、ライム、ベルガモット、ユズ、シークワーサー、スダチ、カボス、温州ミカンなどの柑橘系天然香料や、ジャスミン、ラベンダー、イランイラン、ローズ、ヒヤシンス、ガルバナム、ベチバー、シダーウッド、シトロネラ、ゼラニウム、ラバンジン、サンダルウッドなどの天然精油を挙げることができる。
【0019】
本発明の4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンの香料組成物中への配合量は、その目的あるいは香料組成物の種類によっても異なるが、例えば、香料組成物の全体重量に対して10
−8ppm〜10
2ppm、好ましくは、10
−6ppm〜1ppm、より好ましくは10
−5ppm〜10
−2ppmの範囲を例示することができる。これらの範囲内で配合することにより、香料組成物に対し、例えば、拡散性のある柑橘様のフレッシュ感、ボディ感、ミルキーな芯のある残香、フローラル感、スパイシー感、天然感および柑橘様、蜜様、シナモン様、干し草様、ラクトン様、自然な果物様などの香味を付与する優れた効果を有する。
【0020】
さらに、本発明は、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンを有効成分とする香料組成物を有効量香粧品または飲食品に添加することにより、該製品に従来にはない香気・香味を付与することができる。かかる香粧品または飲食品としては特に制限はなく、広い分野の各種香粧品または飲食品に配合利用することができる。香粧品としては、例えば香水、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロンなどのフレグランス製品;シャンプー、リンス、ヘアクリーム、ポマード、ヘアースプレー、養毛剤などのヘアケア製品;洗顔クリーム、マッサージクリーム、乳液、化粧水、美容液、ファウンデーション、おしろい、口紅、リップクリームなどの基礎・仕上げ化粧品;石鹸、洗濯用洗剤、消毒用洗剤、防臭洗剤などの保健・衛生用洗剤類;歯みがき、ティッシュー、トイレットペーパーなどの保健・衛生材料類;室内芳香剤、カーコロンなどの芳香製品を挙げることができる。また、飲食品としては、例えば、果汁飲料、野菜飲料などの果実飲料類;コーラ飲料、果汁入炭酸飲料、乳類入炭酸飲料などの炭酸飲料類;スポーツドリンク、ハチミツ飲料、豆乳、ビタミン補給飲料、ミネラル補給飲料、栄養ドリンク、滋養ドリンクなどの食系飲料類、乳酸菌飲料などの乳飲料類;緑茶、紅茶、ウーロン茶、ハーブティー、コーヒー飲料、ノンアルコールチューハイ、ノンアルコールカクテル、ノンアルコールワイン、ノンアルコールビールなどの嗜好飲料類、チューハイ、カクテルドリンク、発泡酒、果実酒、薬味酒などのアルコール飲料類;アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓、ヨーグルト、プリン、ゼリー、デイリーデザートなどのデザート類;キャラメル、キャンディー、錠菓、クラッカー、ビスケット、クッキー、パイ、チョコレート、スナックなどの菓子類;パン、ケーキミックス、デザートミックス、スープ、各種インスタント食品;などの飲食品を挙げることができる。
【0021】
また、本発明の4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンの香粧品への配合量は、その目的あるいは香粧品の種類によっても異なるが、前記香料組成物を有効量添加することにより、例えば、従来にはない拡散性のある柑橘様のフレッシュ感、フローラル感、ミルキーな芯のある残香、スパイシー感を付与することができる。その際の香粧品の4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノン含有量は、例えば、香粧品の全体重量に対して10
−8ppb〜10
2ppb、好ましくは、10
−6ppb〜1ppb、より好ましくは10
−5ppb〜10
−2ppbの範囲を例示することができる。
【0022】
また、本発明の4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンの飲食品への配合量は、その目的あるいは飲食品の種類によっても異なるが、前記香料組成物を有効量添加することにより、例えば、従来にはない拡散性のある柑橘様のフレッシュ感、ボディ感を付与することができる。その際の飲食品の4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノン含有量は、例えば、飲食品の全体重量に対して10
−8ppb〜10
2ppb、好ましくは、10
−6ppb〜1ppb、より好ましくは10
−5ppb〜10
−2ppbの範囲を例示することができる。
【0023】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明を詳しく説明する。
【実施例】
【0024】
実施例1(オレンジ様香料の調合)
オレンジ様の調合香料組成物として下記(表1)の各成分(重量部)を調合した(比較品1)。
【0025】
【表1】
【0026】
上記オレンジ調合香料(比較品1)に対し、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンの添加量をさまざまに変えて添加したものを本発明品1〜4とした。それぞれの発明品および比較品の調製に当たっては、表2に示した濃度の4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンのエタノール希釈液を調製し、表2に示した量を添加した。それぞれの調合香料は、専門のパネラー10名により、官能評価を行った。その平均的な香気評価結果を表2に示す。
【0027】
【表2】
【0028】
表2に示した通り、オレンジ様調合香料組成物に対し、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンを10
−8ppm、10
−6ppm、10
−4ppm、10
−1ppm添加した本発明品1〜4は拡散性のある柑橘様のフレッシュ感、ボディ感が付与され、良好なオレンジ様香気が強調されているとの評価であり、香料組成物中に僅か10
−8ppm存在するだけでも香気にフレッシュ感のある柑橘様の香気が付与されるという結果であった。
【0029】
実施例2(レモン様香料の調合)
レモン様の調合香料組成物として下記(表3)の各成分(重量部)を調合した(比較品2)。
【0030】
【表3】
【0031】
上記レモン様調合香料組成物(比較品2)100重量部に、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンの0.1ppmアルコール溶液0.1重量部を混合して新規レモン様調合香料組成物(本発明品5)を調製した。この本発明品5と該化合物を加えていない上記のレモン様調合香料組成物(比較品2)について、専門パネラー10人により比較した。その結果、専門パネラー10人の全員が4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンを加えた本発明品5は、フレッシュな柑橘様香気およびボディ感が付与され、良好なレモン様香気が強調されていると評価した。
【0032】
実施例3(ヒヤシンス様香料の調合)
ヒヤシンス様の調合香料組成物として下記(表4)の各成分(重量部)を調合した(比較品3)。
【0033】
【表4】
【0034】
上記ヒヤシンス様調合香料組成物1000重量部に、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンの0.01%アルコール溶液の0.01(重量部)を混合して新規ヒヤシンス様調合香料組成物(本発明品6)を調製した。この本発明品6と4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンを加えていない上記のヒヤシンス様調合香料組成物(比較品3)について、この新規調合香料組成物および該化合物を加えていない上記のヒヤシンス様調合香料組成物の香気について、専門パネラー10人により比較した。その結果、専門パネラー10人の全員が該化合物を加えた新規調合香料組成物は、フレッシュ感、フローラル感、ミルキーな芯のある残香および天然感あふれる香りが強調された天然ヒヤシンスの特徴をとらえ、持続性の点でも格段に優れていると評価した。
【0035】
実施例4(台所用液体洗剤への配合)
実施例1で得られたオレンジ様調合香料組成物(本発明品1〜4および比較品1)を下記処方(表5)の台所用液体洗剤に添加し、常法により台所用液体洗剤を調製した。
【0036】
【表5】
【0037】
これらの台所用液体洗剤について実際の台所洗浄時の香気を、良く訓練された専門パネラー10人により評価した。その平均的な香気評価結果を表6に示す。
【0038】
【表6】
【0039】
表6に示したとおり、本発明品1〜4および比較品1を添加した台所用液体洗剤を用いて洗浄した時の香気は、実施例1で調合香料を評価した時と同様の香気がそのまま再現されていた。すなわち4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンを洗剤中に10
−8ppb、10
−6ppb、10
−4ppb、10
−1ppb添加となる、本発明品1〜4の香料を配合した洗剤を用いて洗浄した場合、柑橘様のフレッシュな香気があり、良好なオレンジ様香気が感じられるとの評価であり、洗剤中に僅か10
−8ppb存在するだけでも香気にフレッシュ感が付与されるという結果であった。
【0040】
実施例5(消臭芳香剤ゲルへの配合)
実施例2で得られたレモン様調合香料組成物(本発明品5及び比較品2)を下記処方(表7)の油性ゲル状消臭芳香剤に添加し、常法により油性ゲル状消臭芳香剤を調製した。
【0041】
【表7】
【0042】
これらの消臭芳香剤を、専門パネラー10人により官能評価を行った。その結果、専門パネラー10人全員が、本発明品5を添加した消臭芳香剤は比較品2を添加した消臭芳香剤に比べて、フレッシュな柑橘様の香気やフローラル感が強調されていると評価した。
【0043】
実施例6(オレンジ果汁飲料への配合)
実施例1で得られたオレンジ様調合香料組成物(本発明品1〜4および比較品1)を下記処方(表8)の飲料基材に添加しオレンジ果汁飲料を調製した。
【0044】
【表8】
【0045】
これらのオレンジ果汁飲料を、専門パネラー10人により官能評価を行った。その平均的な風味評価結果を表9に示す。
【0046】
【表9】
【0047】
表9に示すとおり、本発明品1〜4および比較品1を添加したオレンジ果汁飲料は、実施例1で調合香料を評価した時と同様の風味が飲料中でもそのまま再現されていた。すなわち4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンの飲料中添加量が10
−8ppb、10
−6ppb、10
−4ppb、10
−1ppbとなる本発明品1〜4を添加した飲料はフレッシュな柑橘様の香味およびボディ感が付与され、良好なオレンジ様香気が強調されているとの評価であり、飲料中に僅か10
−8ppb存在するだけでも香気にフレッシュ感が付与されるという結果であった。
【0048】
実施例7(キャンディーへの配合)
実施例2で得られたレモン様調合香料組成物(本発明品5及び比較品2)を下記処方(表10)のキャンディー基材に添加し、常法によりキャンディーを調製した。
【0049】
【表10】
【0050】
これらのキャンディーを、専門パネラー10人により官能評価を行った。その結果、専門パネラー10人全員が、本発明品5を添加したキャンディーは比較品2を添加したキャンディーに比べて、フレッシュな柑橘様香味およびボディ感が強調されていると評価した。