特許第6334471号(P6334471)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6334471-ロータリトランス付きモータ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334471
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】ロータリトランス付きモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/01 20160101AFI20180521BHJP
【FI】
   H02K11/01
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-146249(P2015-146249)
(22)【出願日】2015年7月24日
(65)【公開番号】特開2017-28894(P2017-28894A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2016年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】加川 正樹
【審査官】 小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭51−025108(JP,A)
【文献】 特開昭63−175207(JP,A)
【文献】 特開平06−180801(JP,A)
【文献】 特開昭61−260402(JP,A)
【文献】 特開2015−076978(JP,A)
【文献】 特開2015−116115(JP,A)
【文献】 特開2015−109727(JP,A)
【文献】 特開平02−149901(JP,A)
【文献】 特開平03−037818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリトランス付きモータであって、
前記ロータリトランスの外側に配置され、前記ロータリトランスの周囲を囲むリング部材が設け、
前記リング部材が、磁性電波吸収材料である第1リング部材と、非鉄金属である第2リング部材と、を有し、
前記第2リング部材が前記ロータリトランスに近い側に位置し、
前記磁性電波吸収材料が、着磁していないフェライトマグネット材であり、
前記非鉄金属が、非磁性材料であることを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記第2リング部材が、円筒状の筒部と、前記筒部の他方側に形成された円盤状のフランジ部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロータリトランス付きモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、モータにロータリトランス(ステータ側のロータリトランス及びロータ側のロータリトランス)が設けられ、モータのロータに取付けられたセンサ(例えば、超音波振動子など)の信号が、ロータリトランスを経て、信号処理回路に送られる構成の装置がある(特許文献1参照)。
【0003】
一方、特許文献2には、このようなロータリトランスが設けられたモータにおいて、モータから漏洩する磁束がロータリトランスの信号伝送用コイルに到達してノイズ(以下、内部ノイズともいう)となる場合があることに鑑み、そのような内部ノイズの影響を抑制するようにしたモータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002―345822号公報
【特許文献2】特開2015−076978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2は、モータの外部からのノイズ(以下、外部ノイズともいう)を抑制することを目的とするものではない。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、ロータリトランスへの外部ノイズの影響を抑制したロータリトランス付きモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の構成によって把握される。
(1)本発明のモータは、ロータリトランス付きモータであって、前記ロータリトランスの外側に配置され、前記ロータリトランスの周囲を囲む第1リング部材が設けられている。
(2)上記(1)の構成において、前記第1リング部材が非鉄金属である。
(3)上記(1)の構成において、前記第1リング部材が磁性電波吸収材料である。
(4)上記(2)の構成において、さらに磁性電波吸収材料である第2リング部材を有し、前記第1リング部材が前記ロータリトランスに近い側に位置し、前記第2リング部材が第1リング部材よりも外側に位置する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロータリトランスへの外部ノイズの影響を抑制したロータリトランス付きモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る実施形態のロータリトランス付きモータの断面図である。
図2】本発明に係る実施形態のリング部材の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、添付図面に基づいて詳細に説明する。
なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0010】
図1は、本発明に係る実施形態のロータリトランス付きモータの断面図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態のロータリトランス付きモータ10は、いわゆるアウターロータ型のモータであり、シャフト11と、シャフト11の外周に固定されたステータ20と、シャフト11の一方側(図上側)に設けられるロータリトランス50が配置されたベアリング部80及びシャフト11の他方側(図下側)に設けられるロータリトランス60が配置されたベアリング部90によってシャフト11に対して回転可能に設けられたロータ30と、を備え、ステータ20とロータ30とでモータ部40が構成されている。
【0012】
また、本実施形態のロータリトランス付きモータ10は、ロータリトランス50の外側に配置されるように、一方側(図上側)のロータ30上に設けられたロータリトランス50の周囲を囲むリング部材70と、を備えている。
【0013】
(ステータ20)
ステータ20は、中央にシャフト11を受け入れる貫通孔が形成されたステータコア21とステータコア21に巻回されたコイル22とを備え、シャフト11の外周にステータ20が固定された状態となるように、シャフト11がステータコア21の貫通孔に圧入固定若しくは接着固定される。
【0014】
(ロータ30)
ロータ30は、有底カップ状のロータケース31とロータケース31の内側に装着されたロータマグネット32とを備える。
より具体的には、ロータケース31は、中央に開口31cが形成された底部31aとステータ20の外周を囲う側壁部31bを有し、そして、ロータマグネット32が、ステータ20に対向するようにロータケース31の側壁部31bの内面に装着されている。
なお、ロータケース31には、センサが取付けられているが、図1は、センサが見えない方向の断面になっているため、センサ自体は図示されていない。
【0015】
そして、ロータケース31の開口31cには、開口31cに圧入固定若しくは接着固定される外周の一部に段差が形成されるとともに、中央に貫通孔33aが形成された円板状の取付部材33が設けられ、後述するように、その取付部材33が、シャフト11の一方側(図上側)に設けられるベアリング部80に接着固定される。
【0016】
また、有底カップ状のロータケース31の他方側(図下側)のカップ開口31dにも、ロータケース31の側壁部31bの内面に圧入固定若しくは接着固定される、中央に貫通孔34aが形成された円盤状の取付部材34が設けられ、後述するように、その取付部材34が、シャフト11の他方側(図下側)に設けられるベアリング部90に固定される。
【0017】
なお、取付部材34は、図1に示すように、取付部材13が載置される外側部分よりもベアリング部90に固定される内側部分が他方側(図下側)に突出した形状を有している。
【0018】
(ベアリング部80)
ベアリング部80は、ベアリング81と、ベアリングホルダ82と、を備えている。
ベアリングホルダ82は、ベアリング81の内輪81aをシャフト11に対して固定する第1ベアリングホルダ83と、ロータケース31の開口31cに固定される取付部材33をベアリング81の外輪81bに対して固定する第2ベアリングホルダ84とからなる。
【0019】
第1ベアリングホルダ83は、円筒状の筒部83aと筒部83aの一方側(図上側)に形成された円盤状のフランジ部83bと、を備えており、筒部83aには、中央にシャフト11が圧入固定若しくは接着固定される貫通孔が形成されている。
【0020】
そして、第1ベアリングホルダ83の筒部83aがベアリング81の内輪81aに圧入固定若しくは接着固定されるとともに、シャフト11が筒部83aの貫通孔に圧入固定若しくは接着固定される。
この結果、ベアリング81の内輪81aが、第1ベアリングホルダ83を介してシャフト11に対して固定されることになる。
【0021】
また、第1ベアリングホルダ83の円盤状のフランジ部83bには、他方側(図下側)に延出するリング状壁部83cが、ベアリング81の外輪81bよりも外側に位置するように設けられている。
そして、ロータリトランス50の固定側ロータリトランス52が、このリング状壁部83cの外周面及びリング状壁部83cよりも外側のフランジ部83bの他方側(図下側)の面(以下、底面83dともいう)に当接することで位置合わせされるようにして第1ベアリングホルダ83に固定されている。
【0022】
より具体的には、固定側ロータリトランス52は、リング状のコイル収容凹部52aを有するリング状のコイル収容部52bとコイル収容凹部52aに収容されるコイル52cとからなる。
そして、このコイル収容部52bがリング状壁部83cの外周面及びリング状壁部83cよりも外側のフランジ部83bの底面83dに当接するように、リング状壁部83cをコイル収容部52bに圧入する、若しくは、コイル収容部52bをリング状壁部83cの外周面及びリング状壁部83cよりも外側のフランジ部83bの底面83dに対して接着固定することによって、固定側ロータリトランス52が第1ベアリングホルダ83に固定される。
【0023】
なお、固定側ロータリトランス52のコイル収容部52bには、コイル収容凹部52aの外壁の一部に図示しない切り欠きが設けられている。
そして、固定側ロータリトランス52のコイル52cからの引き出し線が、その切り欠きを通じて外部に引き出され、固定側ロータリトランス52が受信した信号(ロータリトランス50の回転側ロータリトランス51からの信号)を外部に伝達できるようになっている。
【0024】
一方、第2ベアリングホルダ84は、円筒状の筒部84aと筒部84aの他方側(図下側)に形成された円盤状のフランジ部84bと、を備えており、筒部84aには、中央にベアリング81の外輪81bが圧入固定若しくは接着固定される貫通孔が形成されている。
【0025】
そして、ロータリトランス50の回転側ロータリトランス51が、筒部84aの外周面と円盤状のフランジ部84bの一方側(図上側)の面(以下、底面84cともいう)に当接することで位置合わせされるようにして第2ベアリングホルダ84に固定されている。
【0026】
なお、回転側ロータリトランス51も、固定側ロータリトランス52と同様に、リング状のコイル収容凹部51aを有するリング状のコイル収容部51bとコイル収容凹部51aに収容されるコイル51cとからなり、このコイル収容部51bに対して第2ベアリングホルダ84の筒部84aを圧入する、若しくは、コイル収容部51bを筒部84aの外周面及びフランジ部84bの底面84cに対して接着固定することによって、回転側ロータリトランス51が第2ベアリングホルダ84に固定される。
【0027】
ここで、第1ベアリングホルダ83を介してシャフト11に固定されているベアリング81の内輪81aに対して外輪81bは回転可能であり、その外輪81bに固定されている第2ベアリングホルダ84のフランジ部84bの他方側(図下側)の面84dに、ロータケース31の開口31cに固定された取付部材33が接着固定されている。
【0028】
この結果、ロータリトランス50の回転側ロータリトランス51及びロータ30は、シャフト11に対して一体的に回転可能になっている。
なお、回転側ロータリトランス51のコイル収容部51bにも、固定側ロータリトランス52と同様に、コイル収容凹部51aの外壁の一部に図示しない切り欠きが設けられている。
そして、その切り欠きを通じてコイル51cからの引き出し線がロータケース31に取付けられている図示しないセンサに接続されており、回転側ロータリトランス51は、この引き出し線を通じて送られてくるセンサからの信号を固定側ロータリトランス52へと伝達する。
【0029】
本実施形態では、ステータ20のステータコア21の一方側(図上側)には、コイル22が設けられる部分から一方側に延在するコイル22が設けられる部分よりも外径の小さい延出部21aが形成されている。
そして、その延出部21aの一方側(図上側)の端面でベアリング81の内輪81aの他方側(図下側)の端面を受けるようにしている。
このような延出部21aは必ずしも設ける必要はないが、このようにすることでステータ20に対するベアリング部80の位置精度を高めることができるので好適である。
【0030】
(ベアリング部90)
ベアリング部90は、ベアリング91と、ベアリングホルダ92と、を備えている。
ベアリングホルダ92は、ベアリング91の内輪91aをシャフト11に対して固定する第1ベアリングホルダ93と、ロータケース31のカップ開口31dに固定される取付部材34をベアリング91の外輪91bに対して固定する第2ベアリングホルダ94からなる。
【0031】
必ずしも限定されるものではないが、第1ベアリングホルダ93は、上述した第1ベアリングホルダ83と同様の形状として構成されており、このように同形状の部材とすることで、第1ベアリングホルダ93と第1ベアリングホルダ83との部材の共通化が行えるため好適である。
【0032】
具体的には、第1ベアリングホルダ93は、円筒状の筒部93aと筒部93aの他方側(図下側)に形成される円盤状のフランジ部93bと、を備えており、筒部93aには、中央にシャフト11が圧入固定若しくは接着固定される貫通孔が形成されている。
【0033】
そして、第1ベアリングホルダ93の筒部93aがベアリング91の内輪91aに圧入固定若しくは接着固定されるとともに、シャフト11が筒部93aの貫通孔に圧入固定若しくは接着固定される。
この結果、ベアリング91の内輪91aが、第1ベアリングホルダ93を介してシャフト11に対して固定されることになる。
【0034】
また、第1ベアリングホルダ93の円盤状のフランジ部93bにも、一方側(図上側)に延出するリング状壁部93cが、ベアリング91の外輪91bよりも外側に位置するように設けられている。
そして、ロータリトランス60の固定側ロータリトランス62が、このリング状壁部93cの外周面及びリング状壁部93cよりも外側のフランジ部93bの一方側(図上側)の面(以下、底面93dともいう)に当接することで位置合わせされるようにして第1ベアリングホルダ93に固定されている。
【0035】
さらに、固定側ロータリトランス62も固定側ロータリトランス52と同様の構成を有し、具体的には、固定側ロータリトランス62は、リング状のコイル収容凹部62aを有するリング状のコイル収容部62bとコイル収容凹部62aに収容されるコイル62cとからなる。
【0036】
そして、固定側ロータリトランス62のコイル収容部62bが、第1ベアリングホルダ93のリング状壁部93cの外周面及びリング状壁部93cよりも外側のフランジ部93bの底面93dに当接するように、リング状壁部93cをコイル収容部62bに圧入する、若しくは、コイル収容部62bをリング状壁部93cの外周面及びリング状壁部93cよりも外側のフランジ部93bの底面93dに対して接着固定することによって、固定側ロータリトランス62が第1ベアリングホルダ93に固定される。
【0037】
なお、固定側ロータリトランス62のコイル収容部62bには、一方側(図上側)の固定側ロータリトランス52のコイル収容部52bと同様に、コイル収容凹部62aの外壁の一部に図示しない切り欠きが設けられている。
そして、固定側ロータリトランス62のコイル62cからの引き出し線が、その切り欠きを通じて外部に引き出され、固定側ロータリトランス62が受信した信号(ロータリトランス61の回転側ロータリトランス61からの信号)を外部に伝達できるようになっている。
【0038】
一方、第2ベアリングホルダ94は、必ずしも限定されるものではないが、上述した第2ベアリングホルダ84と同様の形状として構成されており、このように同形状の部材とすることで、第2ベアリングホルダ94と第2ベアリングホルダ84との部材の共通化が行えるため好適である。
【0039】
具体的には、第2ベアリングホルダ94は、円筒状の筒部94aと筒部94aの一方側(図上側)に形成される円盤状のフランジ部94bと、を備えており、筒部94aには、中央にベアリング91の外輪91bが圧入固定若しくは接着固定される貫通孔が形成されている。
【0040】
そして、ロータリトランス60の回転側ロータリトランス61が、筒部94aの外周面と円盤状のフランジ部94bの他方側(図下側)の面(以下、底面94cともいう)に当接することで位置合わせされるようにして第2ベアリングホルダ94に固定されている。
【0041】
なお、回転側ロータリトランス61も、一方側(図上側)の回転側ロータリトランス51と同様に、リング状のコイル収容凹部61aを有するリング状のコイル収容部61bとコイル収容凹部61aに収容されるコイル61cとからなり、このコイル収容部61bに対して第2ベアリングホルダ94の筒部94aを圧入する、若しくは、コイル収容部61bを筒部94aの外周面及びフランジ部94bの底面94cに対して接着固定することによって、回転側ロータリトランス61が第2ベアリングホルダ94に固定される。
【0042】
ここで、第1ベアリングホルダ93を介してシャフト11に固定されているベアリング91の内輪91aに対して外輪91bは回転可能であり、その外輪91bに固定されている第2ベアリングホルダ94のフランジ部94bの一方側(図上側)の面94dに、ロータケース31のカップ開口31dに固定された取付部材34が接着固定されている。
【0043】
この結果、ロータリトランス60の回転側ロータリトランス61及びロータ30は、シャフト11に対して一体的に回転可能になっている。
なお、回転側ロータリトランス61のコイル収容部61bにも、固定側ロータリトランス62と同様に、コイル収容凹部61aの外壁の一部に図示しない切り欠きが設けられている。
そして、その切り欠きを通じてコイル61cからの引き出し線がロータケース31に取付けられている図示しないセンサに接続されており、回転側ロータリトランス61は、この引き出し線を通じて送られてくるセンサからの信号を固定側ロータリトランス62へと伝達する。
【0044】
上述のように、ベアリング部80とベアリング部90とは、部材構成及び各部材の形状が同じになっており、部材の共通化が図られているので必要な部材の種類が少なくて済む好適な態様になっている。
【0045】
取付部材13は、円筒状の筒部13aと、筒部13aの一方側(図上側)に形成された円盤状のフランジ部13bと、を備えており、上述のように、第2ベアリングホルダ84と同形状に形成された第2ベアリングホルダ94を安定してロータ30に固定するために設けられている部材である。
なお、第2ベアリングホルダ94自体が、ロータケース31のカップ開口31dに固定された取付部材34に接着固定されているので取付部材13は省略しても良い。
【0046】
筒部13aには、中央にベアリング部90の第2ベアリングホルダ94の円盤状のフランジ部94bを圧入固定若しくは接着固定するためのフランジ部94bの外径と略等しい内径の貫通孔が形成されている。
一方、ロータケース31のカップ開口31dには、取付部材13の円盤状のフランジ部13bが圧入固定若しくは接着固定される円環状の段差部31eが形成されている。
【0047】
そして、取付部材13をロータケース31の段差部31eに圧入固定若しくは接着固定するとともに、取付部材13の筒部13aに第2ベアリングホルダ94のフランジ部94bを圧入固定若しくは接着固定することで、より安定して、第2ベアリングホルダ94がロータケース31に固定されている。
【0048】
なお、取付部材13のフランジ部13bの一方側(図上側)の面13dは、ロータケース31のカップ開口31dに固定される取付部材34の他方側(図下側)の面の外側部分34bと当接した状態となっており、この当接する部分で取付部材13と取付部材34とを接着固定するようにしても良い。
【0049】
ここで、モータ部40からの漏洩磁束がロータリトランス50及びロータリトランス60の信号に対するノイズ(内部ノイズ)とならないようにするために、ステータ20、ロータケース31の一方側(図上側)の開口31cに固定される取付部材33、ロータケース31及びロータケース31のカップ開口31dに固定される取付部材34で、第2ベアリングホルダ84及び第2ベアリングホルダ94を通らない磁路が形成され、モータ部40内で磁気回路が形成されるようにすることが好ましい。
【0050】
このために、取付部材33及び取付部材34は、磁性金属で形成されるのが好ましく、一方、第2ベアリングホルダ84及び第2ベアリングホルダ94は非磁性材料で形成されるのが好ましい。
【0051】
ところで、上記のような構成として、内部ノイズを抑制するようにしたロータリトランス付きモータにおいて、ロータリトランス50側にノイズの影響が見られる場合があり、その原因について調べたところ、外部ノイズの影響がロータリトランス50に出ていることがわかった。
【0052】
そこで、この外部ノイズの影響を低減すべく、検討した結果、ロータリトランス50の外側に配置するように、リング部材70を設ける構成に至った。
【0053】
(リング部材70)
図2は、リング部材70の分解斜視図である。
図2に示すように、リング部材70は、第1リング部材71と第1リング部材71が装着され、図1に示すように、ロータケース31の底部31aの外表面上に接着固定される第2リング部材72とからなる。
【0054】
図2に示すように、第2リング部材72は、中央に貫通開口を有する円筒状の筒部72aと、筒部72aの他方側(図1において図下側)に形成された円盤状のフランジ部72bと、を備えており、リング部材70のロータ30への固定は、このフランジ部72bの他方側(図1において図下側)の面が、ロータケース31の底部31aの外表面上に接着固定されることで行われている。
【0055】
なお、フランジ部72bは、外側部分の厚みが薄くされ、段差を有するような形状となっているが、このような段差を設ける必要は必ずしもなく、ほぼ均一の厚みの円盤状のフランジ部であっても良い。
【0056】
そして、第2リング部材72の筒部72aは、外径が第1リング部材71の内径とほぼ等しい外径とされ、圧入によって第1リング部材71が第2リング部材72に固定されるようになっているが、接着剤によって第1リング部材を第2リング部材72に固定するようにしても良い。
【0057】
また、図1に示すように、筒部72aの中央の貫通開口の内径は、第2ベアリングホルダ84のフランジ部84bの外径よりも大きい内径となるように形成されており、筒部72aの中央の貫通開口の内周面とロータリトランス50の外周面との間に隙間が形成されるようになっており、上述したロータリトランス50の回転側ロータリトランス51のコイルからの引き出し線が、この隙間を経由してロータケース31に取付けられるセンサに配線されている。
【0058】
なお、リング部材70とロータリトランス50との間に隙間があると、外部ノイズが入り易くなるため、リング部材70の内周面(本例では、筒部72aの内周面)がロータリトランス50の外周面の近くに位置し、リング部材70とロータリトランス50との間に大きな隙間ができないようにするのが好ましい。
【0059】
本実施形態では、回転側ロータリトランス51よりも少し高い程度の高さのリング部材70が、ロータリトランス50の外側の周囲を囲んでいる場合を示しているが、リング部材70の高さが、高い方が外部ノイズの侵入を防止する効果が高くなる。
このため、ロータリトランス50の高さ以上の高さのリング部材70でロータリトランス50の外側の周囲を囲むようにするのがより好適である。
【0060】
そして、リング部材70は、外部ノイズの磁界を抑制するために第1リング部材71が磁性電波吸収材料で形成され、外部ノイズの電界を抑制するために第2リング部材72が非磁性材料の非鉄金属で形成されている。
【0061】
第2リング部材72としては、例えば、黄銅にニッケルメッキを施したものやアルミ材にアルマイト処理を施した構成のものを好適に用いることができる。
【0062】
また、第1リング部材71としては、磁性電波吸収材料である焼結ソフトフェライトの他、着磁していない(磁化を帯びていない)プラスチックフェライトマグネットや着磁していない焼結フェライトマグネットなどのような着磁が可能である磁性電波吸収材料であって着磁を行っていないものを用いることができる。
【0063】
なお、本実施形態では、2つのリング部材(第1リング部材71及び第2リング部材72)を用いて、これらを組付けることで非磁性材料の非鉄金属の部分と磁性電波吸収材料である着磁されていないプラスチックフェライトマグネットとを有するリング部材70を構成する場合を示しているが、例えば、インサート成形などによって非磁性材料の非鉄金属の部分と着磁されていない磁性電波吸収材料の部分とが一体になったような非鉄金属の部分と磁性電波吸収材料の部分とを有するリング部材であっても良い。
【0064】
また、リング部材70を第2リング部材72だけとして、その第2リング部材72を磁性電波吸収材料で形成すれば、外部ノイズの磁界を抑制する効果が得られ、非磁性材料の非鉄金属で形成すれば、外部ノイズの電界を抑制する効果が得られる。
【0065】
このため、本実施形態のように、磁性電波吸収材料で形成された第1リング部材71と非磁性材料の非鉄金属で形成された第2リング部材72からなるリング部材70とすることが、外部ノイズを抑制する上で最も好適であるが、このような2つのリング部材からなる構成に限定されるものではなく、リング部材70は非磁性材料の非鉄金属若しくは磁性電波吸収材料で形成された1つのリング部材からなるようなものであっても良い。
【0066】
但し、リング部材70を磁性電波吸収材料で形成された1つのリング部材とする場合には、リング部材70をロータケース31の底部31aに直接接触するように固定すると、モータ部40からの漏洩磁束の磁路となり、内部ノイズの影響がでる場合があるので、磁気的に隔絶する(切り離す)ように固定するようにすることが好ましい。
【0067】
このことから、本実施形態のように、2つのリング部材を用いる場合でも、磁路となる恐れのない非磁性材料の非鉄金属で形成される第2リング部材72がロータケース31の底部31aに接着固定されるとともに、第2リング部材72の筒部72aが、磁性電波吸収材料で形成された第1リング部材71よりもロータリトランス50に近い側に位置し、非磁性材料の非鉄金属がロータリトランス50に近い側を囲んでいるようにするのが好適である。
【0068】
[実施例及び比較例]
以下、効果の確認を行った結果について説明する。
実施例1のロータリトランス付きモータは、着磁を行っていないプラスチックフェライトマグネットからなる磁性電波吸収材料で形成された第1リング部材71と黄銅にニッケルメッキを施した非磁性材料の非鉄金属で形成された第2リング部材72とからなるリング部材70を図1に示すように設けたものである。
【0069】
実施例2のロータリトランス付きモータは、実施例1から第1リング部材71を省略し、第2リング部材72だけからなるリング部材70としたものである。
比較例1のロータリトランス付きモータは、リング部材70自体を設けていないものである。
なお、実施例1、実施例2、及び、比較例1のロータリトランス付きモータは、上述のリング部材に関する点が異なるだけで、その他の点は同様のものである。
【0070】
外部ノイズに対する耐性評価のための試験系は、外部ノイズを発生させるためのノイズ発生用コイルの近くの同じ位置に、順次、試験を行うモータ(実施例1、実施例2及び比較例1のロータリトランス付きモータ)を配置し、ノイズ発生用コイルから外部ノイズとして連続正弦波をロータリトランス付きモータに印加し、外部ノイズによる影響が見られるかを確認するものである。
【0071】
具体的には、外部ノイズとして連続正弦波の周波数を一定に保つようにしながら、外部ノイズを発生させるための印加電圧を増加させていき、外部ノイズのパワーを上げていったときに、どの程度の外部ノイズのパワーでロータリトランス50に外部ノイズの影響がでるかを確認し、同様の内容を別の周波数に変えて行うということを繰り返し、実施例1、実施例2及び比較例1のロータリトランス付きモータのそれぞれについて連続正弦波の周波数が2MHzから12MHzに至るまで1MHzごとの確認を行った。
【0072】
この結果、実施例1及び実施例2は、どちらも比較例1よりも大きい外部ノイズのパワーのときにしかノイズの影響が現れておらず、リング部材によって外部ノイズの影響が低減されていることが確認できた。
【0073】
また、実施例1と実施例2との比較では、実施例1の方が、より外部ノイズのパワーが大きいときにしか外部ノイズの影響が現れておらず、実施例1の方がさらに外部ノイズの影響を受け難くなっており、磁性電波吸収材料で形成された第1リング部材71と非磁性材料の非鉄金属で形成された第2リング部材72とからなるリング部材70とする方が外部ノイズを低減する効果が大きいことがわかった。
【0074】
なお、磁性電波吸収材料で形成された1つのリング部材の場合については、確認を行っていないが、実施例1から実施例2の効果を差し引いた程度の外部ノイズの低減効果が得られるものと推察している。
【0075】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【0076】
本発明は、上記実施形態で詳細に説明した構造のモータに限定されるものではなく、他の構造のロータリトランス付きモータであってもよく、そのような他の構造のロータリトランス付きモータにおいても、上述の本実施形態のように、ロータリトランスの外側に配置されるロータリトランスの周囲を囲むリング部材を設けるようにすることで外部ノイズを低減することが可能である。
【0077】
また、上記実施形態では、ロータリトランス50側についてだけリング部材70を設けるようにしているが、ロータリトランス60側にもリング部材70を設けるようにしても良い。
【0078】
さらに、モータに設けられるロータリトランスも、ロータリトランス50とロータリトランス60の双方を設ける必要はなく、必要に応じて、いずれか一方のロータリトランスだけとしても良い。
【0079】
本実施形態では、アウターロータ型で、リング部材70を回転側に設置したモータについて詳細に説明してきたが、インナーロータ型で、リング部材70が固定側に設けられたモータや、アウターロータ型で、リング部材70が固定側に設置されたモータや、インナーロータ型で、リング部材70が回転側に設置されたモータであっても良い。
【0080】
つまり、ロータリトランス付きモータのロータリトランスの外側にロータリトランスの周囲を囲むようにリング部材を設けるようにすればよく、モータの種類はアウターロータ型でもインナーロータ型でも良く、また、具体的なリング部材の取付け方も特に限定されるものではない。
【0081】
このように、本発明は、具体的な実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を行ったものも含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0082】
10…ロータリトランス付きモータ、11…シャフト、20…ステータ、30…ロータ、40…モータ部、50…ロータリトランス、60…ロータリトランス、70…リング部材、71…第1リング部材、72…第2リング部材、80…ベアリング部、90…ベアリング部
図1
図2