特許第6334473号(P6334473)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大王製紙株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6334473-トイレットロール 図000003
  • 特許6334473-トイレットロール 図000004
  • 特許6334473-トイレットロール 図000005
  • 特許6334473-トイレットロール 図000006
  • 特許6334473-トイレットロール 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334473
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】トイレットロール
(51)【国際特許分類】
   A47K 10/16 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
   A47K10/16 A
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-155033(P2015-155033)
(22)【出願日】2015年8月5日
(62)【分割の表示】特願2013-180533(P2013-180533)の分割
【原出願日】2013年8月30日
(65)【公開番号】特開2016-19738(P2016-19738A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2016年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】森脇 哲平
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−070815(JP,A)
【文献】 特開2004−261244(JP,A)
【文献】 実開昭63−178592(JP,U)
【文献】 実開昭63−142192(JP,U)
【文献】 実開昭60−191294(JP,U)
【文献】 特開2011−105340(JP,A)
【文献】 特開2011−131464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙管に帯状のトイレットペーパーが巻かれたトイレットロールであって、
紙厚200〜800μm、米坪130〜412g/m2の紙管を有し、
その紙管の紙管内面に位置する紙管原紙の紙層中に、ポリフェノール、ポリフェノール誘導体及びポリフェノール類似体の何れか一つが、紙管内面側から外周面側に向かって厚み方向に含浸されており、
その含有量が0.002〜6.0g/m2であり、
かつ、その紙管のJIS P 8119(1998)に記載の方法で測定したベック平滑度が10〜80秒である、
ことを特徴とするトイレットロール。
【請求項2】
ポリフェノール、ポリフェノール誘導体及びポリフェノール類似体の何れか一つは、タンニン、カテキン、ルチン、アントシアニン、エラグ酸、クマリン、フラボン、これらの誘導体及び前駆体の群から選ばれるものである請求項1記載のトイレットロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状のトイレットペーパーを紙管に巻いたトイレットロールに関する。
【背景技術】
【0002】
トイレ空間で発生する臭いを緩和したり消したりするために、下記特許文献1のようにトイレ空間に常備されるトイレットロールの紙管内面に消臭剤等をコーティングして担持させる技術が知られる。
【0003】
しかし、この従来技術による紙管内面に消臭剤をバインダーや接着剤などのコーティング剤によって担持させた消臭機能付きのトイレットロールは、消臭剤の担持量が少なく、また、バインダーとなる接着剤成分により消臭剤が少なからず覆われてマスキングされるため消臭機能が低い。
【0004】
また、トイレットロールは、多くの場合トイレットロールの紙管内に支持部を緩く挿入してトイレットロールを回動可能に支持するトイレットロールホルダーにセットして使用される。トイレットロールホルダーにセットしたトイレットロールからトイレットペーパーを引き出す際には、トイレットロールホルダーの支持部と紙管内表面が摺れることになるため、上記の従来技術による紙管内面に消臭剤をバインダーや接着剤などのコーティング剤によって消臭剤を担持させた消臭機能付きのトイレットロールでは、トイレットペーパー引き出し時に紙管内表面のコーティングが離脱してしまうおそれがある。特に、トイレットロールの紙管内表面への消臭剤の担持量を増加させるべく、バインダー中に消臭剤を分散させたものを厚く塗工するようにすると、この問題が顕著となる。
【0005】
他方、特許文献1に記載される紙管内表面以外の例えば紙管の外周面側に消臭剤を付与すれば、トイレットロールホルダー使用時における消臭剤の離脱の問題は解決されるが、紙管外面側に消臭剤を付与してもトイレットロールは、紙管外周面側に帯状のトイレットペーパーが幾重にも巻かれた構造であるため、紙管外周面に消臭剤を付与しても消臭剤と外気との接触が十分ではなく消臭機能を高めることは難しく、消臭機能を高める根本的な解決策とはならない。
【0006】
このように従来技術に係るトイレットロールでは、消臭機能が低い等の問題があり、広く普及するに至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭56−111890
【特許文献2】特許5032398号
【特許文献3】特開2013−70815号公報
【特許文献4】特開2007−237672号公報
【特許文献5】特開2001−71627号公報
【特許文献6】特開2012−45791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の主たる課題は、消臭効果が高く、ホルダーにセットして使用しても消臭剤の離脱がないトイレットロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明とその効果は次記のとおりである。
【0010】
【0011】
【0012】
<請求項1記載の発明>
紙管に帯状のトイレットペーパーが巻かれたトイレットロールであって、
紙厚200〜800μm、米坪130〜412g/m2の紙管を有し、
その紙管の紙管内面に位置する紙管原紙の紙層中に、ポリフェノール、ポリフェノール誘導体及びポリフェノール類似体の何れか一つが、紙管内面側から外周面側に向かって厚み方向に含浸されており、
その含有量が0.002〜6.0g/m2であり、
かつ、その紙管のJIS P 8119(1998)に記載の方法で測定したベック平滑度が10〜80秒である、
ことを特徴とするトイレットロール。
【0013】
<請求項2記載の発明>
ポリフェノール、ポリフェノール誘導体及びポリフェノール類似体の何れか一つは、タンニン、カテキン、ルチン、アントシアニン、エラグ酸、クマリン、フラボン、これらの誘導体及び前駆体の群から選ばれるものである請求項1記載のトイレットロール。
【0014】
【0015】
(作用効果)
本発明に係るトイレットロールの製造方法では、ポリフェノール系消臭剤を38〜62%、低級アルコールを11〜33%、水性溶媒を4〜51%の体積比で混合した消臭剤薬液を、紙厚100〜400μm、米坪130〜200g/m2の紙管原紙に対してフレキソ印刷又はグラビア印刷により6〜24g/m2で塗工し、前記紙管原紙に前記ポリフェノール系消臭剤の有効成分を含浸させるようにする。
【0016】
ポリフェノール系消臭剤は有効成分であるポリフェノール、ポリフェノール誘導体及びポリフェノール類似体(以下、ポリフェノール等ともいう)に起因して、紙管原紙とのなじみが良好ではなく、そのままでは塗工し難しい。そこで、本発明にしたがって、ポリフェノール系消臭剤に低級アルコールと水性溶媒とを上記の体積割合で混合した消臭剤薬液とすると、紙管原紙中に含まれる植物由来のパルプ繊維や填料等とポリフェノール系消臭剤のなじみが改善され、特に紙厚100〜400μm、米坪130〜200g/m2の紙管原紙に対しては、その紙管原紙の適度な密度と相まって消臭剤薬液が紙管原紙内に効果的に浸透するようになる。そして、特に、上記低級アルコールの配合割合とすることにより、紙管原紙に対して消臭剤薬液を付与した後に、当該低級アルコールが素早く揮発し、ポリフェノール系消臭剤中の有効成分が含浸された紙管原紙が効率よく製造される。
【0017】
すなわち、本発明では、上記配合の消臭剤薬液とすることで、前記構成の紙管原紙に対する含浸速度が速く、その一方、低級アルコールの比率が一定以上でありその揮発性(乾燥速度)も確保され、消臭剤薬液の含浸と低級アルコールの揮発による乾燥が迅速に行なわれ、ポリフェノール系消臭剤中の有効成分が含浸された紙管を操業効率よく製造でき、もってトイレットロールが効率よく製造できるのである。
【0018】
また、ポリフェノール系消臭剤を紙管原紙に対して、消臭効果を十分に発揮させるべく、単に消臭剤付与量を増やそうとしても含浸性が低い場合には、バーコーター等の低速コーターを用いなければならない。しかし、本発明では、上記消臭剤薬液とすることで含浸性、乾燥性が良好であるため、高速なグラビア印刷やフレキソ印刷でも十分に塗工操作を行なうことができ、その生産効率に非常に優れるようになる。
【0019】
そして、本発明により製造されるトイレットロールでは、従来技術のように紙管の内表面に消臭剤を付着させられたものではなく、紙管を構成する紙管原紙にポリフェノール系消臭剤の有効成分が含浸された、紙管そのものにその有効成分であるポリフェノール等を保持されたものとなる。したがって、トイレットロールをトイレットホルダーにセットして使用した際に、トイレットロールの紙管内面とトイレットロールホルダーの支持部が摺れても、消臭剤が離脱することがない。
【0020】
また、本発明の製造方法に係るトイレットロールでは、特に紙管の内面側から外周面側に向かって厚み方向にポリフェノール等の消臭剤成分が含浸されるので、紙管内表面からトイレ空間内に揮発する臭い成分との接触が十分に確保され、消臭機能が効果的に発揮される。
【0021】
他方、本発明に係るトイレットロールは、消臭効果を奏するものがアンモニア成分などのトイレ空間内の臭いの原因物質と選択的に化学反応して消臭するポリフェノール等であるため、例えば、ゼオライト等の多孔性物質に種々の揮散成分を吸着する消臭剤を担持させたようなものと比較すると、消臭効率に非常に優れる。そのうえ、香料などの悪臭成分以外の成分と反応しないようにすることが可能となり、例えば、異臭成分をマスキングする香料との併用性にも優れる。
【0022】
また、本発明に係るトイレットロールの製造方法では、紙管を紙厚100〜400μm、米坪130〜200g/m2の紙管原紙を用いることとした。これらの紙厚、米坪の紙管原紙では、適度な密度となり、十分な量のポリフェノール系消臭剤を含浸してその有効成分を保持することができるとともに、紙層内に浸透させたポリフェノール等に対して、紙管内表面を介して異臭成分と効果的に接触させることができ、優れた消臭機能を発揮できる。
【0023】
特に、本発明に係るトイレットロール及びその製造方法におけるポリフェノール等としては、タンニン、カテキン、ルチン、アントシアニン、エラグ酸、クマリン、フラボン及びこれらの誘導体又は前駆体のいずれか一種を含むのが、製造効率及び消臭効果の点で望ましい。
【0024】
また、本発明に係るトイレットロールの製造方法では、低級アルコールは、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノールのいずれか1種を含むのが望ましい。消臭剤薬液の含浸性及び乾燥性に特に優れる。
【発明の効果】
【0025】
以上のとおり本発明によれば、消臭効果が高く、ホルダーにセットして使用しても消臭剤の離脱がないトイレットロールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係るトイレットロールを説明するための図である。
図2】本発明に係る紙管の断面を模式的に示した図である。
図3】本発明に係るトイレットロールの製造工程例の説明図である。
図4】本発明に係る紙管の製造方法例を説明するための図である。
図5】本発明に係る紙管原紙の構造例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。
「トイレットロール」
本発明に係るトイレットロールは、図1に示すとおり、紙管11に帯状のトイレットペーパーS3が巻かれたものである。その大きさ等は、限定はされないが、概ね、幅L1が100〜115mm、直径L2が100〜120mm、巻き長さ(トイレットペーパーの全長)が18〜70m、紙管内径が35〜50mmである。
【0028】
本発明においてはトイレットペーパーS3は、特に限定されない。1プライ当り米坪11.0〜25.0g/m2 、紙厚100〜180μm、1プライから4プライ程度の公知のものとすることができる。
【0029】
なお、本発明及び本明細書における米坪とは、JIS P 8124(1998)の米坪測定方法によるものであり、紙厚とは、JIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて5回測定した平均値をいう。なお、測定時に係る圧力は70gf程度である。なお、紙管の厚みおよび米坪は、紙管の状態のまま測定することとする。紙管は円筒型であるが、上記紙管内径の範囲であればその湾曲による誤差は無視できる。
【0030】
本発明に係るトイレットロール10は、特徴的に、図2に示すように、前記紙管11の紙層中に高い消臭効果を有するポリフェノール等の少なくとも1種が含まれている。したがって、紙管の内表面に消臭剤をバインダーによって付着させているものと異なり、トイレットロール10をトイレットホルダーにセットして使用した際に、トイレットロール10の紙管内面11Aとトイレットロールホルダーの支持部が摺れても、消臭剤が離脱することがない。なお、本発明にいう含浸とは紙層内にポリフェノール等が位置されていることをいい、湿潤状態で浸潤している状態を意味しているわけではない。
【0031】
特に、本発明に係るトイレットロール10における好適なポリフェノール等の含浸態様は、図2に示すように、紙管の内面側から外周面側に向かって厚み方向に、ポリフェノール等が含浸されて保持されている態様である。このような態様であれば、紙管内表面を介してトイレ空間内に漂う悪臭成分との接触が十分に確保され、ポリフェノール等による優れた消臭機能をより効果的に発揮させることができる。
【0032】
本発明に係るポリフェノール等は、トイレ空間内における悪臭成分との化学反応により消臭効果を奏するものであり、トイレ空間内において極めて優れた消臭効果を奏する。このポリフェノール等は、植物及び植物の加工品から抽出されるなどしたものであり、フェノール性水酸基による反応性により、少なくともトイレ空間に存在する主たる悪臭成分の一つであるアンモニアに対する消臭機能を有するものである。もちろん、アンモニアに加えて、トイレ空間の悪臭成分として知られる、硫化水素、メチルメルカプタン、トリメチルアミンに対して反応性を有して消臭機能を有するものも存在し、本発明に係るポリフェノール等はそのようなものであってもよい。例えば、ポリフェノール誘導体の中には、特許3919729号のように人為的に分子量の高いポリフェノールに対して適宜の官能基を持たせて、特定の成分に対する消臭機能を付加或いは高めたものが知られているが、本発明に係るポリフェノール等は、そのようなものであってもよい。
【0033】
本発明に係るポリフェノール等のより好ましい具体例としては、タンニン、カテキン、ルチン、アントシアニン、エラグ酸、クマリン、フラボン及びこれらの誘導体又は前駆体である。これらはトイレの悪臭成分に対して特に高い消臭効果を発揮する。なお、これらの物質は、紙管内に適宜複数含浸されていてもよい。
【0034】
上記具体例のなかでも、特に好ましいものは、タンニン及びその誘導体である。タンニン及びタンニン誘導体は、分子量が大きくフェノール性水酸基を多く有するため消臭機能に優れる。なお、タンニンは、縮合型タンニン、加水分解型タンニンのいずれでもよい。また、タンニンのなかでも、柿由来の柿タンニンは、分子量が非常に大きく、消臭効果に極めて優れるため、本発明に係る消臭剤成分として、この柿タンニン及び柿タンニン誘導体の少なくとも一方を含むようにするのがよい。
【0035】
本発明に係るポリフェノール等の含有量としては、紙管内周面の面積を基準として、0.002〜6.0g/m2であるのが望ましい。より、好ましくは0.2〜2g/m2である。この含有量であれば、ポリフェノール等による消臭効果を十分に発揮させることができる。
【0036】
他方、本発明に係るトイレットロールの紙管は、1〜3枚の紙管原紙をスパイラル巻きしたものであって、紙厚100〜1200μm、米坪130〜618g/m2であるのが望ましい。この紙厚及び米坪の範囲とすることで、適切な密度となり、トイレ空間を漂う悪臭成分とのポリフェノール等の接触が確保され、優れたポリフェノール等の消臭機能を効果的に発揮することができる。特に、2枚の紙管原紙をスパイラル巻きしたものであって、紙厚が200〜800μm、米坪130〜412g/m2であるのが望ましく、このような紙管であると製造が容易で特にポリフェノール等との接触性に優れる。
【0037】
さらに、本発明に係るトイレットロールでは、紙管11は、JIS P 8119(1998)に記載の方法で測定したベック平滑度10〜80秒であるのが望ましい。ベック平滑度10〜80秒の紙管では、含浸された消臭剤が確実に保持され、また、含浸されたポリフェノール等のトイレ空間内に漂うアンモニア等の悪臭成分との接触が十分に確保される。
【0038】
以上説明の本発明のトイレットロール10は、下記のトイレットロールの製造方法により効率よく製造することができる。但し、本発明のトイレットロールの製造は、この製造方法に限定されるものではない。
【0039】
「トイレットロールの製造方法」
本発明に係るトイレットロール10の製造方法の実施形態を、特に図3図5を参照しながら説明する。但し、本発明のトイレットロール10の製造方法は、この実施形態に必ずしも限定されるわけではない。
【0040】
本実施形態のトイレットロール10の製造方法は、長尺の紙管30を製造する工程(A)と、ログ製造工程(B)と、裁断工程(C)を含む。
【0041】
〔長尺の紙管11Lを製造する工程(A)〕
本実施形態の紙管の製造工程は、図3中(A)及び図4に示すように、原反ロール31A,32Aから繰出された二枚の帯状の紙管原紙31,32のうち一方の紙管原紙31の一方面に糊付けロール51により糊を付与し、前記一方の紙管原紙31の糊付けされた面に他方の紙管原紙32を幅方向に一部重ね、前記他方の紙管原紙32の糊付け面と接しない面をマンドレルシャフト52に対向する面、すなわち紙管内面となる面にして、各紙管原紙31,32をマンドレルシャフト52に螺旋状に巻き付けて連続的に筒状部分29を形成し、その筒状部分29をトイレットロールの複数倍幅以上の幅でカッター58によりカットして長尺のスパイラル紙管30(スパイラル式紙管とも称される)を形成する。このスパイラル紙管は、一方の紙管原紙31が紙管外面側、他方の紙管原紙32が紙管内面側となる態様の二層積層構造となる。なお、本実施形態では、二枚の紙管原紙31,32をスパイラル巻きしているが、三枚以上の紙管原紙をスパイラル巻きして長尺の紙管を形成してもよい。
【0042】
紙管原紙31に対する糊の付与量は特に限定されないが、0.1〜5g/m2程度である。また、糊は、本発明の効果を妨げない範囲で既知の紙管用のものを用いることができ、アクリル系接着剤、ホットメルト接着剤、澱粉糊、PVA(ポリビニルアルコール)等が例示できる。
【0043】
図示の形態では、各紙管原紙31,32のマンドレルシャフト52への巻き付けは、一対のプーリー53,53間に巻き掛けられた平ベルト54により、マンドレルシャフト52上の所定部分に位置する筒状部分29に回転力を与え、その回転により紙管原紙31,32をマンドレルシャフト52の軸心に対して所定角度で引き込んで、螺旋状に巻くようにしている。図示例では、一対のプーリー53,53を二機配置して二つの平ベルト54,54により、筒状部分29に回転力を与えているが、一機の一対のプーリーと平ベルトにより筒状部分に回転力を与えるようにしてもよい。また、図示しないが、筒状部分29に平ベルト54ではなくロールを当接させて回転力を与えるようにしても、各紙管原紙31,32をマンドレルシャフト52に巻き付けることができる。
【0044】
紙管原紙31,32をマンドレルシャフト52に巻き付けてスパイラル紙管の形成するにあたっては、図示例からも理解されるように、紙管原紙31,32が連続的にマンドレルシャフト52に送り込まれることにより筒状部分29が長くなり、その筒状部分29が連続的に形成されてマンドレルシャフト52の先端方向に伸びていく。そして、その過程では、筒状部分29の内面がマンドレルシャフト52の周面に摺接しながら、マンドレルシャフト52の先端方向に向かって移動していくことになる。
【0045】
本実施形態では、このようにマンドレルシャフトに紙管原紙を巻き付けていく前段において、マンドレルシャフト52にスパイラル巻きした際に長尺紙管30の内面側になる面を有する紙管原紙32に対して塗工機61によりポリフェノール系消臭剤を含む消臭剤薬液41を付与する。図示の形態では、二枚の紙管原紙31,32のうち前記他方の紙管原紙32がマンドレルシャフト52にスパイラル巻きした際に長尺紙管30の内面側になる面を有するようになっており、その紙管原紙32に対して消臭剤を含む消臭剤薬液41を付与している。但し、本実施形態は、この図示の形態に限らず、二枚の紙管原紙の双方に付与してもよいし、例えば、1枚又は3枚の紙管原紙を用いて、長尺紙管30を形成する場合には、その筒状にした際に内面となる面を有する紙管原紙の少なくとも一つの当該面に消臭剤薬液を付与すればよい。
【0046】
ここで、図示の形態では、原反ロール31Aからマンドレルシャフト52に至る経路の途中に消臭剤薬液41の塗工機61を設けてマンドレルシャフト52へ紙管原紙31,32を巻き付ける直前で消臭剤薬液41を塗工している。本発明に係る消臭剤薬液41は、乾燥性に優れるため早い操業速度としてもマンドレルシャフト52の直前で消臭剤薬液41を付与することができる。但し、本発明において、紙管原紙に対して消臭剤薬液を付与する位置としては、図示の位置に限定されるわけではない。本発明に係るトイレットロールの製造方法においては、後述の紙管原紙の構成及び消臭剤薬液の構成により、図5に示すように消臭剤薬液41が紙管原紙32の紙層中に含浸させられるため、接着剤で消臭剤を担持させる場合と異なり、紙管原紙に消臭剤を付与した後にこれを輸送などしても、消臭剤が紙管原紙から離脱することがないので、マンドレルシャフト52への巻き付けの直前で消臭剤薬液を塗工しなければならないということがない。したがって、例えば、抄紙機で紙管原紙を抄紙して原反ロールとして巻き取るまでの間に消臭剤薬液の塗工を行なってもよいし、抄紙機で巻き取った原反ロールから紙管原紙を繰出して塗工機で消臭剤薬液を付与したのち再度巻き取って原反ロールに再加工するようにしてもよい。紙管原紙に対する加工が、マンドレルシャフトへ巻き付けて紙管を形成する工程と別工程で行えることは、本発明の製造方法の一つの利点である。
【0047】
一方、本実施形態に係る消臭剤薬液41は、ポリフェノール系消臭剤を38〜62%、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールの群から選ばれる少なくとも一つの低級アルコールを11〜33%、水などの水性溶媒を5〜51%の体積比で混合したものである。この体積比とすることで、消臭剤薬液を紙管原紙に対して素早く含浸させることができるとともに、速乾性に優れるようになり、ポリフェノール系消臭剤を紙管原紙に対して素早く含浸させることができる。
【0048】
本実施形態に係るポリフェノール系消臭剤は、消臭効果を奏する有効成分として、ポリフェノール等の少なくとも一種を0.1〜40質量%、好ましくは0.5〜20質量%、特に好ましくは、1〜10質量%含むものであり、その他の成分として、水等の溶媒や保存剤、pH調製剤等の助剤を含みうる。また、安定性、ポリフェノール等への官能基の付与、自身の反応性による消臭効果のさらなる向上の観点等のため有機酸、有機酸塩が配合されていてもよい。有機酸、有機酸塩は、トイレットロールを構成するトイレットペーパーが、人体に直接触れるものであることを考慮して、人体に対する安全性の高いものであるのが望ましく、例えば、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、グルタル酸、アミノ酸、アジピン酸、アスコルビン酸、又はこれらの無機塩もしくは有機塩が例示できる。塩を形成する無機塩基としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウムのようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩等が例示できる。また、有機塩基としては、窒素含有塩基、例えば一級、二級又は三級アミン、イミノ基、グアニジノ基、イミダゾリノ基、イミダゾリル基、ピリジル基等の基を有する化合物が例示できる。
【0049】
本実施形態におけるポリフェノール等については、上記「トイレットペーパー」の欄でも述べたが、植物及び植物の加工品から抽出されるものであり、フェノール性水酸基による反応性により、少なくともトイレ空間に存在する主たる悪臭成分の一つであるアンモニアに対する消臭機能を有する。もちろん、製造方法に係る本実施形態においても、アンモニアに加えて、トイレ空間の悪臭成分として知られる、硫化水素、メチルメルカプタン、トリメチルアミンに対して反応性を有して消臭機能を有するものを用いることができる。例えば、ポリフェノール誘導体の中には、特許3919729号に示されるものである。
【0050】
本発明に係るポリフェノール等のより好ましい具体例としては、タンニン、カテキン、ルチン、アントシアニン、エラグ酸、クマリン、フラボン及びこれらの誘導体又は前駆体である。これらはトイレの悪臭成分に対して特に高い消臭効果を発揮する。
【0051】
上記具体例のなかでも、特に好ましいものは、タンニン及びその誘導体である。タンニン及びタンニン誘導体は、分子量が大きくフェノール性水酸基を多く有するため消臭機能に優れるが、紙管原紙への浸透がし難いものであり、本発明による効果が顕著となるものである。なお、タンニンは、縮合型タンニン、加水分解型タンニンのいずれでよい。また、タンニンのなかでも、柿由来の柿タンニンは、分子量が非常に大きく、消臭効果に極めて優れるため、本発明に係るポリフェノール系消臭剤は、この柿タンニン及び柿タンニン誘導体の少なくとも一方を含むようにするのがよい。
【0052】
また、ポリフェノール系消臭剤は、市販されているものを用いることができる。例えば、リリース科学工業株式会社製のPancil COS-15、Pancil COS-17、Pancil CL-10、Pancil AS-10、Pancil AS-20、Pancil BA-210-1、Pancil COS-5、Pancil FG-22、Pancil FG-25、Pancil FG-30、Pancil FG-60、Pancil FG-70、Pancil FG-99、Pancil FX10、Pancil PO -10、Pancil BA-200E-1を適宜用いることができる。
【0053】
ここで、本実施形態では、特に消臭剤薬液中に、低級アルコールを体積比で11〜33%で混合することが重要である。上記ポリフェノール系消臭剤のみ、さらにこれに水に代表される水性溶媒を配合しただけでは、紙管原紙32に消臭剤等が殆ど浸透しない。したがって、塗工しても紙管原紙上で所謂弾いた状態となる。低級アルコールを配合することで、紙管原紙32に対する浸透性が発現し、上記消臭剤を塗工ムラ無く紙管原紙中に含浸させることができるようになる。特に、本実施形態に係る配合割合であると、紙管原紙への浸透性及び乾燥性に極めて優れるようになり、ポリフェノール系消臭剤を十分な量、紙管原紙中に含浸させることが可能となる。なお、消臭剤薬液中における低級アルコールの配合割合が11%未満では、浸透性が十分に発現せず、紙管原紙へ浸透時間が極めて長時間となったり、弾きによる塗工ムラが発生するなど実用的ではない。また、反対に33%を超えると、浸透性が過度に高まり、却って塗工ムラが生じたり、消臭剤薬液の塗工量が過度に増加してコスト高となる。また、蒸発性が高くなりすぎて塗工機において取り扱いし難くなる。低級アルコールを配合することにより、消臭剤薬液の表面張力が低下し、よってパルプ繊維間に薬液が良く浸透するようになる。
【0054】
本実施形態に係る低級アルコールのなかでも、特にイソプロピルアルコールは表面張力を低下させる程度が大きく、紙管原紙に対する消臭剤薬液の浸透性向上効果に優れる。従って、低級アルコールは、イソプロピルアルコールを含むもの、好ましくはイソプロピルアルコールを95質量%以上含むもの、特に好ましくはイソプロピルアルコール100質量%であるものを用いるのがよい。
【0055】
他方、ポリフェノール系消臭剤の配合割合については、本実施形態では38〜62%の範囲である。この範囲は、非常に高い配合割合であり、これまでこのようなポリフェノール系消臭剤の高配合では紙管原紙への迅速な塗工が困難であったが、本発明では上記低級アルコールとの併用により、係る高配合の範囲を達成できる。そして、このような消臭薬液を用いることで、トイレットロールとして使用した際に、トイレ空間内の消臭効果において極めて優れたものとなる。なお、62%を超えると紙管原紙への浸透が困難となる。
【0056】
他方、本実施形態に係る水性溶媒としては、代表的には水であり、イオン交換水などの水が利用できる。その他、低級アルコール、ポリフェノール系消臭剤に反応性を示さず、相互に溶けあうものであれば利用できる。
【0057】
ここで、本実施形態においては、紙管原紙32は、消臭剤薬液塗工前において紙厚が100〜400μm、米坪が130〜200g/m2のものを用いる。係る紙管原紙32であると前記消臭剤薬液41を塗工した際にムラ無く塗工でき、また、上記消臭剤薬液41が十分に浸透するとともに低級アルコールの揮発性も十分となる。さらに、トイレットロール10となった際に十分な強度の紙管11とすることができるとともに、ポリフェノールによる消臭効果を十分に発揮できる。紙管原紙32については、特に、ベック平滑度10〜80秒のものとすると消臭剤薬液41の浸透性及び低級アルコールの揮発がより迅速かつ確実なものとなり、また、消臭剤薬液41の塗工性が向上する。また、紙管原紙のステキヒトサイズ度は、一般的に150〜250秒であるが、本実施形態の紙管原紙32においてもこの範囲であるのが望ましい。係るステキヒトサイズ度の範囲であれば紙管原紙32への消臭剤薬液41の含浸性を十分に確保できる。なお、長尺紙管30の形成するにあたって、この他方の紙管原紙32と対となるもう一方の紙管原紙31は、違う原反を使用してもよく、例えば、米坪を変えたりしてもよい。
【0058】
他方、本発明に係るトイレットロール10の製造方法では、紙管原紙32に対する消臭剤薬液41の塗工は、フレキソ印刷機、グラビア印刷機により行なう。フレキソ印刷機及びグラビア印刷機は、公知のものを用いることができる。フレキソ印刷機及びグラビア印刷機は、バーコーター等と比較して90m/分以上で高速に消臭剤薬液を付与でき、生産性を高めることができる。また、本実施形態に係る消臭剤薬液をムラ無く塗工することができる。フレキソ印刷機又はグラビア印刷機による消臭剤薬液41の付与態様としては、ベタ印刷のほか網点状、円状、ブロック状など適宜のパターン印刷、図形などの模様印刷や文字の印刷として付与することができる。
【0059】
消臭剤薬液41の付与量としては、付与量が6〜24g/m2とする。この範囲であれば、生産性よく消臭剤薬液41を紙管原紙に塗工することができ、また、十分な消臭効果を奏する量のポリフェノール等を紙管原紙32に付与することができる。なお、6g/m2未満では紙管原紙32に消臭剤薬液41をムラ無く塗工することが難しく、また十分に浸透させることも困難となる。24g/m2を超えても消臭効果の向上もさほどなくコスト高となるだけである。なお、本発明に係るトイレットロール10の製造方法によれば、消臭剤薬液41を塗工した後、低級アルコール等の揮発によって、紙管の坪量(紙管原紙などの貼り合せのための接着糊を除いた紙管原紙相当部分の坪量)が、0.002〜6.0g/m2程度増加し、厚みはほとんど変わらない。
【0060】
〔ログ製造工程(B)〕
他方、本実施形態では、上記の長尺紙管30の製造と平行して又はその後において、ログ製造工程(図3中(B))にて、ログ70を製造する。なお、ログ70とは、業界においての一般用語であり、最終製品であるトイレットロール10の径と同径でありかつ幅が最終製品の複数個分ある中間製品である。
【0061】
このログ70の製造は、連続的に又は段階的に、長尺紙管30と実質的に同幅のトイレットペーパー原紙71,71を、ロール71A,71Aから繰り出すとともに巻き付けてログ70を形成する。この巻き付けは、既知のワインダー装置X2が利用できる。
【0062】
図示の形態では、二つのロール71A,71Aから単層のトイレットペーパー原紙71,71を繰り出して、重ね合わせ部81にて2プライのトイレットペーパー原紙72とした後、ミシン目線形成装置82にてミシン目線の形成を行なった後、巻き取り装置83にて巻き取り2プライ構造となるようにしている。但し、本発明に係るトイレットペーパー原紙は、2プライに限定されず、1プライ若しくは3プライ以上であってもよい。また、複数プライ構造とする場合には、各原紙の米坪や物性等は同じである必要もない。さらに、ワインダー装置X2でプライ構造にするのではなく、予め積層されたトイレットペーパー原紙を巻き取ったロールからトイレットペーパー原紙を繰出して長尺紙管30に巻き付けてログ70を形成すようにしてもよい。
【0063】
また、図示の形態では、ミシン目線形成装置82を設けてミシン目線を付与する形態を示しているが、本発明では必ずしもミシン目線形成装置及びミシン目線の付与は必須ではない。さらに、本実施形態において、図示はしないが、ミシン目線付与装置82の前段に既知のコンタクトエンボス付与装置を設けてコンタクトエンボスを付与してもよいし、重ね合わせ部81の前段で各トイレットペーパー71,71にエンボスロールでエンボスを付与するようにしてもよいし、その付与したエンボスの凸部頭頂に接着剤を付与して係る接着剤でシート同士を積層一体化するようにしてもよい。
【0064】
〔裁断工程(C)〕
以上のように、ログ70を製造したならば、このログ70を既知のログアキュームレーターX3で複数本をストックしつつ後段のログカッター設備X4へと移動させる。そして、その後に図3中(C)に示すように、既知のログカッター91でログ70を製品幅に裁断し、個々のトイレットロール10,10…とする。
【0065】
「トイレットロールの製造方法の他の実施形態」
上記説明の実施形態は、ログ70を仲介してトイレットロール10を形成する方法を説明したが、本発明は必ずしもログ70を形成しないでトイレットロール10を形成することもできる。
【0066】
例えば、上述の長尺の紙管30を形成する工程Aにおいて、筒状部分29をトイレットロール10と同幅かやや幅広でカッター58によりカットして紙管を形成した後、これと同幅のトイレットペーパー原紙72を巻き付けることで、ログ70を介さずに直接的にトイレットロール10とすることができる。トイレットロール10よりやや幅広の紙管にトイレットロール10よりやや幅広のトイレットペーパー原紙72を巻き付けて、その両端面部分をカットすることで端面を整えることができる。消臭剤薬液41やその付与形態については、上記ログ70を仲介する方法と同様に行なうことができる。
【0067】
(試験例)
本発明の効果を確認すべく、試験例1および比較例1〜4を用いてトイレ空間内における主たる悪臭成分の一つであるアンモニアに対する消臭効果と消臭剤薬液の塗工性について確認した。用いた紙管原紙の組成、消臭剤薬液の配合割合、操業条件等は下記表1に結果とともに示すとおりである。なお、消臭剤は、ポリフェノールとしてタンニンを含む、リリース科学工業株式会社製のPancil FG-25を用いた。低級アルコールはイソプロピルアルコールを用いた。形成した紙管の大きさ等は、長さ114mm、内径38mmφとした。
【0068】
消臭効果の確認は、10Lの気密性容器(テドラーバッグ 10L:ジーエルサイエンス株式会社製)内に各例に係る紙管を1本収めたのち、容器内にアンモニア(和光純薬株式会社製、1級)を直ちに100ppmの濃度となるように充填し、その1時間後にアンモニアガスの濃度を測定して、その測定値からのアンモニア濃度の減少率を算出することにより行った。なお、アンモニア濃度の100ppmへの調整及び1時間後のアンモニア濃度の測定に関しては、ガス検知管(株式会社ガステック製 3L)を用いた。なお、表1中のNDとは不検出を意味する。
【0069】
操業性の評価は、操業速度90m/min以上で薬液を含浸し紙管を形成できるものを○、70〜90m/minで操業できるものを△、70〜90m/minで操業できるが塗工ムラが確認できるものを×、加工時に消臭剤の含浸できないなどの不具合があるものを−として評価した。
【0070】
【表1】
【0071】
表1をみてみると、各試験例とともにアンモニアの消臭効果が確認できる。しかし、操業性についてみてみると、試験例1では、グラビア印刷機により操業速度90m/min以上と高速に操業でき、しかも消臭剤による効果も十分であったが、比較例1では、低級アルコールの量が十分ではなくグラビア印刷機を用いて塗工すると塗工ムラが発生することが確認できた。グラビア印刷機では、低級アルコール量が少ない場合には、グラビア印刷の高速性が生かせずまたムラが発生することが知見された。
【0072】
比較例2は、低級アルコールの量を増加させるとともにポリフェノール系消臭剤の配合割合を低下させてバーコーターを用いて塗工量を増加させるようにしたが、やはり塗工ムラが発生することが確認された。バーコーターを用いるため操業速度も速めることが難しいことが確認できた。
【0073】
比較例3は、低級アルコール及びポリフェノール系消臭剤の配合割合を低下させて、塗布量を多くしたものであるが、この配合割合ではバーコーターを用いてムラ無く塗工できるものの、操業速度を早めることが困難であった。
【0074】
試験例4は、低級アルコールを含有させない消臭剤薬液を用いたが、低速なバーコーターを用いても塗布をすることができなかった。
【0075】
以上のことより、本発明の製造方法により、消臭効果の高いトイレットロールを生産効率よく製造できることが確認できた。また、本発明に係るトイレットロールは、高い消臭効果を奏するものであることが確認できた。
【符号の説明】
【0076】
10…トイレットロール、11…紙管、11A…紙管内面、S3…トイレットペーパー、(A)…長尺の紙管を製造する工程、(B)…ログ製造工程。(C)…裁断工程、 31A,32A…原反ロール、31,32…紙管原紙、51…糊付けロール、52…マンドレルシャフト、29…筒状部分、58…カッター、30…長尺の紙管、53…プーリー、54…平ベルト、61…塗工機、41…消臭剤薬液、70…ログ、71…トイレットペーパー原紙、71A…ロール、72…2プライのトイレットペーパー原紙、81…重ね合わせ部、82…ミシン目線形成装置、83…巻き取り手段、91…ログカッター、L1…トイレットロールの幅、L2…トイレットロールの直径。
図1
図2
図3
図4
図5