特許第6334482号(P6334482)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334482
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】固形剤とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/20 20060101AFI20180521BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20180521BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20180521BHJP
   A23L 33/115 20160101ALI20180521BHJP
   A23L 33/16 20160101ALI20180521BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20180521BHJP
【FI】
   A61K9/20
   A61K47/04
   A61K47/44
   A23L33/115
   A23L33/16
   A23L5/00 K
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-169789(P2015-169789)
(22)【出願日】2015年8月28日
(65)【公開番号】特開2017-43589(P2017-43589A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2017年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】591137628
【氏名又は名称】中野BC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】我藤 伸樹
(72)【発明者】
【氏名】久米 弘之
(72)【発明者】
【氏名】小栗 正博
(72)【発明者】
【氏名】門脇 昭夫
【審査官】 横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/042120(WO,A1)
【文献】 特表平05−500059(JP,A)
【文献】 特開平11−178895(JP,A)
【文献】 特開平11−152220(JP,A)
【文献】 特開平11−116473(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101897732(CN,A)
【文献】 特開2008−142037(JP,A)
【文献】 特開平11−060504(JP,A)
【文献】 特表平11−505258(JP,A)
【文献】 特表2006−521348(JP,A)
【文献】 特開2014−181221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00−9/72
A61K47/00−47/69
A23L33/10−33/195
A23L5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品素材中に炭酸塩及び食用油との混合物を含有することを特徴とする、経口摂取後の固形剤の生体内分解易化用固形剤。
【請求項2】
さらに、食品素材の吸収促進用であることを特徴とする、請求項1に記載の固形剤。
【請求項3】
炭酸塩及び食用油との混合物酸を含む食品素材と、水とを練合してなり、水分含有量が、固形剤全体の重量に対して、3〜15重量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の固形剤。
【請求項4】
炭酸塩が炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、及び炭酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の固形剤。
【請求項5】
食品素材が抽出エキス、ペースト、ジュース、又は発酵物の形態であることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の固形剤。
【請求項6】
丸剤であることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の固形剤。
【請求項7】
炭酸塩と、食用油とを混合して混合物を得る工程(A)と、工程(A)で得られた混合物に酸を含む食品素材と水とを添加し、練合を行うことによって練合物を得る工程(B)と練合物から固形剤を製造する工程(C)を含み、得られる固形剤の水分含有量が、固形剤全体の重量に対して、3〜15重量%であることを特徴とする、固形剤の製造方法。
【請求項8】
炭酸塩及び食用油との混合物と、酸を含む食品素材と、水とを練合してなり、水分含有量が、固形剤全体の重量に対して、3〜15重量%であることを特徴とする、固形剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素材を練り合わせ、その練合物から成形することを特徴とする固形剤とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固形剤、特に丸剤は、アジア圏に古くから伝わる伝統的な医薬品の剤形である。比較的小さくて飲み込み易く、緩和に効き目が現れてくるという徐放性効果が期待されることから、漢方及び健康食品の分野で現在も利用されている。中でも丸剤は、原料がエキスやペーストなど軟調物質であっても、事前に粉末化する必要がなく、そのまま配合出来るという錠剤には無い利点を有する。
【0003】
本願発明者らは、これまでにエキスやペーストを原料として製造される固形剤であって、長期間の形態保持性と胃などの生体内における崩壊性を両立させた、酸を含む食品素材を含有する丸剤を開発している(特許文献1)。更なる性能向上に努めるべく、日々研究を重ねる中で、本願発明者らは、服用時の崩壊性に改善の余地があることを見出した。すなわち、本願発明者らは、丸剤を経口服用した際、服用者の体調等によっては、丸剤が体内で十分に崩壊せず、体外に形状を保ったまま排出される課題があることを知見した。
【0004】
本願発明者らは、本発明の炭酸塩、食用油および食品素材を含有し、経口摂取後に生体内において易分解性である固形剤によって、上記課題が解決されることを知見した。これまでに、炭酸塩が崩壊性向上等のために、錠剤内に使用された例はあるが(例えば、特許文献2等)、本願発明者らが知る限り、固形剤、特に食品素材を含む丸剤の製造条件下では、水分及び酸性成分が共存する環境下となり得るため、炭酸塩が発泡するという性質のため、使用された例は見当たらない。さらに、本願発明者らがさらに検討を重ねるうち、従来の丸剤が体内で崩壊し得た場合、水溶性成分(例えば、梅エキス丸剤の場合、梅エキス中のムメフラール、クエン酸等。非特許文献1)は生体内に比較的容易に溶け出すが、脂溶性成分(例えば、梅エキス丸剤の場合、梅エキス又は梅果肉乾燥粉末中のウルソール酸、オレアノ−ル酸等。非特許文献2)は、水溶性の成分に比べると、溶け出しにくいため、比較的吸収されにくい。さらに体内での分散性が悪いと、より吸収されにくくなってしまうという課題をも見出した。思いがけないことに、本発明の、炭酸塩、食用油および食品素材を含有し、経口摂取後に、生体内において易分解性である固形剤は、水溶性成分のみならず、脂溶性成分をも、効率よく、例えば、胃腸の消化器官等から吸収させ、この課題をも一挙に解決することを知見した。
【0005】
本発明の固形剤にあっては、製造時又は服用前に発泡して崩壊せず、生体内に服用して初めて崩壊が首尾よく行われるという、予想外の効果が得られることを、本発明者らは知見した。おそらく本発明の固形剤に酸および水と同時に含有されている、食用油によるものと考えられる。
【0006】
尚、錠剤の崩壊性改善については、例えば、特許文献2に、炭酸塩と塩基性成分である酒石酸ゾルピデムを含む崩壊錠が開示されているが、本崩壊錠は粉末素材を混合して打錠する錠剤であり、素材を練り合わせ、その練合物から成形することを特徴とする固形剤に関するものではない。また、特許文献3に乳酸発酵カルシウムを含む丸剤の製造方法が記載されているが、上記課題を解決するに至った先行技術はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−142037号公報
【特許文献2】特開2007−238451号公報
【特許文献3】特開平5−229937号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.Agric. Food Chem.,Vol.47,No.3,1999,828−831
【非特許文献2】Toxins 2010,2,2437−2450
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、食品素材中に炭酸塩及び食用油との混合物を含有することを特徴とする固形剤及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、炭酸塩を食用油と混合して混合物とした後に、食品素材と練り合わせることで、調剤時の炭酸塩からの発泡が抑えられ、服用時に目的とする崩壊性が得られることを見出し、さらに研究を続け、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下に関する。
(1)食品素材中に炭酸塩及び食用油との混合物を含有することを特徴とする、経口摂取後に生体内において易分解性である固形剤。
(2)炭酸塩及び食用油との混合物を含有し、食品素材と練り合わせることを特徴とする、経口摂取後に生体内において易分解性である固形剤。
(3)炭酸塩が炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載の固形剤。
(4)食品素材が抽出エキス、ペースト、ジュース、発酵物であることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の固形剤。
(5)丸剤であることを特徴とする、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の固形剤。
(6)炭酸塩と、食用油とを混合して混合物を得る工程(A)と、工程(A)で得られた混合物に食品素材を添加し、練合を行うことによって練合物を得る工程(B)と練合物から固形剤を製造する工程(C)を含むことを特徴とする、前記(1)に記載の固形剤の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、経口服用前に崩壊することなく、保存安定性に優れ、経口服用後に生体内で容易に崩壊し、崩壊後有用な水溶性成分のみならず脂溶性成分をも生体内に効率よく吸収させる、食品素材を含有する固形剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】試験例6において、日本薬局方第16改正の丸剤の崩壊試験後に崩壊試験器を通過した固形分の重量を示した図である。
図2】試験例6において、日本薬局方第16改正の丸剤の崩壊試験後の崩壊試験器の外観を撮影した写真である。左のビーカーが実施例1のサンプルであり、右のビーカーが比較例1のサンプルである。
図3】試験例6において、日本薬局方第16改正の丸剤の崩壊試験後の崩壊試験器の外観を撮影した写真を模式的に示した図である。
図4】試験例7において、血中ウルソール酸濃度の測定結果を示した図である。
図5】試験例7において、血中オレアノ−ル酸濃度の測定結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、固形剤とは、例えば、丸剤に代表されるような、素材を練り合わせ、その練合物から成形する固形剤であって、粉末を混合し、その混合物から成形する錠剤と異なる製造工程を経て製造される製剤であればよく、丸(球)型の他、例えば、楕円(フットボール)型、菱型、直方体型、立方体型等の形態をしたものが挙げられるが、これらに限定されない。尚、所望により、固形剤の表面が糖類または高分子ポリマー等でコーティングされていても良い。
【0015】
本発明で使用され得る好ましい炭酸塩としては、水及び酸と反応するものであれば何でもよく、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
本発明に使用され得る好ましい食用油としては、食用可能とされ得るものであれば良いが、例えば、梅仁油、サフラワー油、なたね油、オリーブ油、アボガド油、ピーナッツ油、綿実油、大豆油、ナッツ油、ヒマワリ油、コーン油、ゴマ油、アマニ油、エゴマ油、米油等が挙げられるが、これらに限定されない。このうち、特に、梅仁油、オリーブ油、アマニ油等が好ましく、オリーブ油がさらに好ましい。
【0017】
本発明で用いられ得る好ましい食品素材としては、ヒトおよびヒト以外の動物が食用可能なものであれば良いが、例えば、植物、野菜もしくは果物またはそれらの処理物等を好ましく用いることが出来る。食品素材は酸を含むことが望ましい。
【0018】
本発明で用いられ得る好ましい食品素材としては、例えば、南高梅、古城、白加賀、養老、長束、玉英、鶯宿、甲州小梅等の梅類、みかん、青ミカン、はっさく、伊予柑、ポンカン、甘夏、グレープフルーツ、カボス、キンカン、ザボン、柚子、ネーブルオレンジ、じゃばら等の柑橘類、唐辛子、ショウガ、ミョウガ等の香辛料、ブルーベリー、ぶどう、プルーン、アケビ、イチジク、マタタビ、山ブドウ、山桃、イチゴ等の小粒果実類、リンゴ、カキ、バナナ、パインアップル等の大粒果実、山芋、じゃがいも、さつまいも等のイモ類、米類、白米、玄米、もち米、アワ、大麦、キビ、トウモロコシ等の穀類、黒糖、果糖、ブドウ糖等の糖類、大豆、黒豆等のマメ及び黒ゴマ、白ゴマ等のゴマ類等のビタミン類、ミネラル、コエンザイム、イソフラボン等のサプリメント類、朝鮮人参、ごぼう、人参等の根菜類、ヒジキ、ワカメ、ノリ、青ノリ、コンブ等の海藻類、木クレオソート、アセンヤク、オウバク、カンゾウ、陳皮等の漢方成分その他、にんにく、タマネギ、葱、ハチミツ、クルミ、澱粉、キュウリ、セロリ、シソ、大麦の葉、ウコン等の植物、野菜または果物が挙げられるが、これらに限定されない。植物、野菜または果物は、当分野で公知の方法で発酵させたものも使用可能であり、その根、茎、皮や種を用いてもよい。例えば、梅の核に含まれる梅仁油等が挙げられる。尚、漢方成分については、上記した他、当分野で公知の成分や漢方成分を含む市販品等の使用が可能である。
【0019】
さらに、本発明で用いられ得る好ましい食品素材として、例えば、スッポン、シジミ、豚、馬、牛、鶏、サケ及びマグロ等の魚等の動物由来の成分も挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
食品素材に含有される酸としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、グルタミン酸及びアスパラギン酸等のアミノ酸等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
また、本発明の固形剤は、酸を添加してもよい。例えば、酢酸、塩酸、シュウ酸等であるが、これらに限定されない。
【0022】
本発明において、食品素材の形態としては、例えば、エキス、ペースト、ジュース、発酵物等が挙げられるが、これらに限定されない。ここで、発酵物とは、様々な食品素材およびその発酵物を含む混合物のことであり、好ましくは、本発明で用いられ得る上記好ましい食品素材を含む。
【0023】
本発明に用いられ得る具体的な食品素材としては、例えば、梅エキス、梅果肉乾燥粉末、ショウガ粉末、ブルーベリージュース、発酵食品、漢方薬等が好ましいが、これらに限定されない。
【0024】
本発明において使用される梅エキスは、従来十分確立されているので、本発明においても、それに従って製造されてよい。例えば、梅果肉の搾り汁を長時間煮詰めて濃縮する方法や、梅の実をミキサー等ですりつぶし、果肉と種とを分離して裏ごしし(クッカー・パルパー処理)、さらに分離された梅の実から搾り汁を得て(クラリファイヤー処理)、この搾り汁を濃縮後、練合する方法、梅酢を脱塩して梅果汁を得た後、濃縮後、さらに練り上げる方法等が挙げられるが、これらの方法に限定されない。
【0025】
さらに、本発明の固形剤は、含有される食品素材とは別に食品乾燥粉末を含んでもよい。例えば、梅、生姜、青みかん、カキ、じゃばら等の乾燥粉末であるが、これらに限定されない。
【0026】
本発明の、固形剤は所望により、他の添加物を含んでいてもよい。そのような添加剤としては、賦形剤、着香剤、甘味剤、矯味剤、着色剤、防腐剤、滑沢剤、界面活性剤、乳化剤および抗カビ剤等の適宜の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は単独で使用してもよく、2種以上を用いてもよい。
【0027】
本発明で好ましく用いられる賦形剤としては、例えば、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、乳糖、果糖、ショ糖、ブドウ糖、トレハロース等の糖類、デンプン類、結晶セルロース、粉末セルロース等のセルロース類、タルク、酸化チタン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明で好ましく用いられる着香剤としては、例えば、オレンジフレーバー、アップルフレーバー、レモンフレーバー、グレープフルーツフレーバー等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
本発明で好ましく用いられる甘味剤としては、例えば、ステビア、ソーマチン、アスパルテーム、アセスルファム、スクロース、グルコース、サッカリン、グリチルリチン酸、デキストロース、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、フルクトース、マルト−ス、キシリトール、はちみつ、水飴等が好ましいものとして挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
本発明で好ましく用いられる矯味剤としては、例えば、アスコルビン酸、クエン酸、グリチルリチン酸、グルタミン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、タウリン、エリスリトール、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、カカオ、カラメル、サフラン、シャクヤク、ショウキョウ、ダイズ油、タンニン酸、チョウジ油、ハッカ、メントール、ケイヒ油、ユーカリ油、レモン油、オレンジ油、ローズ油等が挙げられる。
【0031】
本発明で好ましく用いられる着色剤としては、例えば、食用青色2号、食用黄色5号、食用赤色2号等の食用色素、カロチノイド色素、トマト色素、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄など、医薬品または食品分野において安全に使用されることが公知であるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
本発明で好ましく用いられる防腐剤としては、例えば、安息香酸およびその塩、エデト酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどが挙げられる。
【0033】
本発明で好ましく用いられる滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、水素添加植物油などが挙げられる。
【0034】
本発明で好ましく用いられる界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられるが、アニオン性、非イオン性、両性イオン性またはカチオン性のいずれでもよい。
【0035】
その他、本発明で好ましく用いられる乳化剤としては、大豆レシチン、卵黄レシチン、酵素分解レシチン等のレシチン類やセタノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、ラノリンアルコール等の高級アルコールも使用可能である。
【0036】
さらに、本発明で使用され得る抗カビ剤としては、低級アルコール類あるいは、キトサン、カテキン、ポリフェノール等の天然由来成分等を好ましく使用可能である。
【0037】
本発明の固形剤は、必要成分をまたは所望成分を混合し、固形剤に成形することにより、製造される。当該製造方法は、この技術分野では充分確立されているので、本発明においてもそのような確立された方法に従って、製造されてよい。好ましい製造方法を挙げれば、以下の通りである。
【0038】
本発明の固形剤は、例えば、以下の(A)〜(C)の工程を経て製造することができる。
炭酸塩と、食用油とを混合して混合物を得る工程(A)と、
工程(A)で得られた混合物に食品素材を添加し、練合を行うことによって練合物を得る工程(B)と
練合物から固形剤を製造する工程(C)。
【0039】
炭酸塩と、食用油とを混合して混合物を得る工程(A)について、混合する際の温度は、例えば20〜50度、好ましくは25〜45度、より好ましくは30〜40度である。また、混合する際の時間は、例えば5〜30分、好ましくは5〜20分、より好ましくは10〜15分である。
【0040】
工程(A)で得られた混合物に食品素材を添加し、練合を行うことによって練合物を得る工程(B)について、練合時の温度は、例えば25〜50度、好ましくは30〜50度、より好ましくは30〜40度であり。練合時の時間は、例えば5〜60分、好ましくは10〜50分、より好ましくは15〜45分である。
【0041】
次に、練合物から固形製剤を製造する工程(C)について説明する。練合物は、例えば、延展板、切丸器、成丸器、製丸機などを用いて固形剤へ製剤化するが、これらに限定されない。固形剤の全体重量は、特に限定されない。
【0042】
ここで、固形剤に含まれる炭酸塩の重量は、特に限定されないが、例えば、1粒あたり1〜80重量%、好ましくは3〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%である。
【0043】
固形剤に含まれる食用油の重量は、特に限定されないが、例えば、1粒あたり0.1〜25重量%、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%である。
【0044】
固形剤に含まれる食品素材の重量は、特に限定されないが、例えば、1粒あたり10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは30〜60重量%である。
【0045】
固形剤に含まれる水の重量は、特に限定されない。
【0046】
尚、工程(B)および工程(C)の間に、練合物を、圧延する工程を含んでもよい。圧延する工程の温度は、例えば40〜70度、好ましくは40〜60度、より好ましくは40〜50度で行うことが出来、圧延工程は、例えば1〜6回、好ましくは1〜4回、より好ましくは2〜4回行う。
【0047】
乾燥工程について、温度は、例えば30〜70度、好ましくは30〜60度、より好ましくは40〜60度で行う。乾燥時間は、例えば5〜36時間、好ましくは5〜30時間、より好ましくは10〜20時間で行うまた、固形剤の水分含有量が、例えば3〜15重量%、好ましくは4〜13重量%、より好ましくは5〜10重量%になるまで行う。尚、乾燥は、除湿乾燥機、送風乾燥機、加熱乾燥機等、当分野で公知の乾燥機を適宜用いて行うことができる。
【0048】
乾燥工程には、予備乾燥工程と、本乾燥工程が含まれてもよい。この場合、予備乾燥工程は、例えば20〜60度、好ましくは25〜50度、より好ましくは30〜40度で行う。また、予備乾燥時間は、例えば15〜40時間、好ましくは15〜30時間、より好ましくは17〜28時間行う。また、例えば、除湿乾燥機で除湿30〜70%、好ましくは30〜60%、より好ましくは30〜40%で行うことができる。予備乾燥工程は、丸剤の水分含有量が、例えば7〜15重量%、好ましくは10〜13重量%、より好ましくは9〜12重量%になるまで行う。
本乾燥工程の温度は、例えば30〜70度の温度、好ましくは30〜60度の温度、より好ましくは40〜60度の温度で行う。本乾燥工程は、例えば20〜50時間、好ましくは25時間〜45時間、より好ましくは30時間〜40時間行う。本乾燥工程は、丸剤の水分含有量が、例えば3〜15重量%、好ましくは4〜13重量%、より好ましくは5〜10重量%になるまで行う。例えば、送風乾燥機を用いて行うことができる。
【0049】
製剤工程において得られた固形剤を磨く、磨き工程をさらに含んでもよい。この磨き工程は、アルコールもしくはその水溶液、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール等の炭素数1〜6の低級アルコール類等、水、例えば、pH8〜9のアルカリ水、ミネラルイオン水や天然水、蒸留水等を他の原料に加えて、磨きパンや糖衣機等に入れ、磨くことができる。
【0050】
乾燥工程が予備乾燥工程と本乾燥工程を含む場合、磨き工程は、予備乾燥工程と本乾燥工程との間に行われるのが好ましいが、この順番に限定されない。
【0051】
混合工程、練り工程、および圧延工程における温度は、例えば60度以下、好ましくは55度以下、より好ましくは45度以下に調整することができる。
【0052】
次に、実施例等を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0053】
[調整例1]梅エキスの製造
青梅1000kgを洗浄し、搾汁機(紀比機械製)を用いて青梅の果汁を含んだ果肉(890kg)と梅種(95kg)を分離(クッカー処理およびパルパー処理)し、不要物をとり除いた。得られた果汁を含んだ果肉を、スクリューデカンタ型遠心分離機(IHI製、2000rpm)で処理することにより、梅果汁(678kg)と梅果肉(195kg)に分離した。得られた梅果汁を蒸練機(株式会社ヤエス製、サン二重釜SQPV−800)を用いて95度で練り上げて水分を蒸発させることにより、梅エキス(50kg)を得た。
【0054】
[調整例2]梅果肉乾燥粉末の製造
調整例1で得られた梅果肉195kgを温度50〜60度で20時間、遠赤外線乾燥機(株式会社ヴィアノーベ製、フードドライヤーViVi−9型式V7513)で乾燥した。乾燥梅果肉(190kg)をロールクラッシャー(三庄インダストリー株式会社製)で粗粉砕し、その後、微粉砕機アトマイザー(増幸産業株式会社製、MKA−10J)を用いて粉末化した。得られた粉末を篩にかけ、60メッシュの梅果肉乾燥粉末(18.0kg)を得た。
【0055】
[調整例3]梅仁油の製造
調整例1で得られた梅種のうち30kgを搾油機(ハンダー油機株式会社製、搾油機S−52型)を用いて圧搾して梅種油(0.4kg)を得た。得られた梅種油から遠心分離機(日立製作所製、himac CR22G)を用いて、梅種の殻(0.14kg)を除去し、梅仁油(0.26kg)を得た。
【0056】
[実施例1]梅エキスおよび梅果肉乾燥粉末含有丸剤の製造
調整例2により製造した梅果肉乾燥粉末(5.6kg、28.2重量部)、炭酸カルシウム(株式会社八宝商会製、1.9kg、9.4重量部)、オリーブ油(株式会社サンエンタープライス製、1.2kg、6.1重量部)を蒸練機(株式会社ヤエス製、サン二重釜SQPV−800)で混合し、混合物(100重量部)を得た。さらに、調整例1により製造した梅エキス(11.3kg、56.3重量部)を添加し、加温装置で30〜40℃に制御しつつ、30分間練合して、練合エキス(20kg)を得た。練合の間、水(1.2kg、練合エキス全体に対して約5.6重量%)を蒸練機中へ追加した。
練合エキス(21.2kg)を、高性能自動製丸機(アキラ機工株式会社製、PT6025)を用いて、1錠あたり200±20mgになるように成形して、丸剤(17.3kg)を得た。
丸剤を糖衣機(アキラ機工株式会社製、PT36)に投入し、そこへ水(1.2kg)を添加して、丸剤の表面が滑らかになるまで磨いた。
磨いた丸剤を遠赤外線乾燥機(株式会社ヴィアノーベ製、フードドライヤーViVi−9型式V7513)を用いて、約60度で約20時間乾燥して、梅エキス含有丸剤(16.4kg)を得た。
【0057】
[比較例1]梅エキスおよび梅仁油含有丸剤の製造
調整例1により製造した梅エキス(12.0kg、60重量部)に調整例3により製造した梅仁油(0.6kg、3重量部)を添加して、混合して梅肉エキスと梅仁油の混合物を得た。また、調整例2により製造した梅果肉乾燥粉末(7.4kg、37重量部)を練合機(畑製作所製、HATA−1WHN−2A)に投入して作動させ、その後、梅エキスと梅仁油の混合物(100重量部)を練合機へ投入して、45℃で24分間混合して、混合エキス(20kg、100重量部)を得た。
混合エキス(20kg)を、練合機中で15〜20分間練合して、練合エキス(20kg)を得た。練合機の温度は、加温装置で30〜40度に制御した。練合の間、梅果汁(0.8kg)を練合機中へ追加した。
練合エキス(19.2kg)を、圧延機(小池製作所製、VSW−165)を用いて2〜4回、40〜50度で圧延して圧延材料を得た。圧延機を通過する回数は、練合エキスの粘着性、キレ、硬さを目視と触感で確認して、適正な硬さになるように調整した。
圧延材料(19.2kg)を製丸機(岩黒製作所製)を用いて、1錠あたり200±20mgの重量になるように成形して、丸剤(16.8kg)を得た。
成形後の丸剤(16.8kg)を網にとり、除湿乾燥機を用いて除湿30%下で約40度、約17時間予備乾燥した。
予備乾燥後の丸剤の水分含有率が丸剤全体に対して約12重量%になったときに、磨き工程を行った。磨き工程は、予備乾燥後の丸剤(16.8kg)を、磨きパン(菊水製作所製、八角パンNO:16A)へ投入し、そこへ、鉱水(硬度:4.6mg/L)、軟水(pH:8〜9、0.1L)、梅果汁(0.2L)およびエタノール(0.1L)を添加して、丸剤の表面が滑らかになるまで磨いた。
磨いた後の丸剤を、送風乾燥機(松井製作所製、送風乾燥機)を用いて約50度で約20時間乾燥して、梅エキス含有丸剤(16.5kg)を得た。
【0058】
[比較例2]梅エキスおよび梅果肉乾燥粉末含有丸剤の製造
調整例2により製造した梅果肉乾燥粉末(5.0kg、25重量部)と、炭酸カルシウム(株式会社八宝商会製、2.0kg、10重量部)と、調整例1により製造した梅エキス(13.0kg、65重量部)とを蒸練機(株式会社ヤエス製、サン二重釜SQPV−800)に投入し、加温装置で30〜40度に制御しつつ、約30分間練合して、練合エキス(20kg)を得た。練合の間、さらに水(練合エキス20kgに対して2.6kg)を蒸練機中へ投入した。
練合エキス(22.6kg)を、高性能自動製丸機(アキラ機工株式会社製、PT6025)を用いて、1錠あたり200±20mgになるように成形して、丸剤(18.5kg)を得た。
成形した丸剤を糖衣機(アキラ機工株式会社製、PT36)に投入し、そこへ水(1.2kg)を添加して、丸剤の表面が滑らかになるまで磨いた。
磨いた後の丸剤を遠赤外線乾燥機(株式会社ヴィアノーベ製、フードドライヤーViVi−9型式V7513)を用いて、約60度で約20時間乾燥して、梅エキス含有丸剤(17.5kg)を得た。
【0059】
[試験例1]梅果肉乾燥粉末および梅エキス含有丸剤の崩壊試験1
実施例1および比較例1〜2で得られた梅エキス含有丸剤をサンプルとして、日本薬局方第16改正の丸剤の崩壊試験法に準じて崩壊試験を行った。本法では、丸剤が以下の方法で60分間以内に崩壊することで、崩壊したと認められるものであり、以降の試験例でも同様に評価する。
崩壊試験器に水とサンプルを6粒入れ、1分間に29〜32往復、振り幅53〜57mmの上下運動により60分間試験を行った。液温は37±2度であり、以降の試験例でも同様であった。得られた結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1に示すように、炭酸塩と食用油の両方を含む、実施例1の梅エキス含有丸剤のみが、6粒とも40分で原型を認めなくなり、崩壊したことが確認できた。
炭酸塩を含まない比較例1の梅エキス含有丸剤や、炭酸塩は含むが食用油を含まない比較例2の梅エキス含有丸剤では、6粒とも60分後も丸剤としての形を残したままであり、崩壊したことが確認出来ず、本法に不適合であった。
【0062】
[参考試験例1]梅果肉乾燥粉末および梅エキス含有丸剤の崩壊試験2
また、参考として、日本薬局方第14改正の丸剤の崩壊試験法に準じた崩壊試験法も実施したが、比較例1及び比較例2で得られた丸剤については崩壊性が認められなかった。本崩壊試験法では、丸剤が以下の方法で120分間以内に崩壊することで、崩壊したと認められる。本試験で使用した第1液及び第2液は、以下の通りであり、以降の参考試験例でも同じものを用いる。
第1液:塩化ナトリウム(2.0g)に希塩酸(24.0mL)、及び水を加えて1000mLとした(pH:1.2)。
第2液:0.2Mリン酸二水素カリウム(250mL)に0.2M水酸化ナトリウム水溶液(118mL)、及び水を加えて1000mLとした(pH:6.8)。
試験は、第1液又は第2液にサンプルを入れ、1分間に28〜32往復、振幅50〜60mmの上下運動により行った。液温は37±2度であった。
第1液を用いて60分間試験を行い、試料中に残留物を試験器ガラス管内に認めるときは、引き続き第2液を用いて60分間試験を行ったが、参考試験例1の結果は試験例1の結果と同等であった。
つまり、日本薬局方第14改正の丸剤の崩壊試験法においても、炭酸塩と食用油の両方を含む実施例1の梅エキス丸剤では、崩壊したことが確認できたが、炭酸塩を含まない比較例1の梅エキス含有丸剤や、炭酸塩は含むが食用油を含まない比較例2の梅エキス含有丸剤では、崩壊したことが確認出来ず、日本薬局方第14改正の丸剤の崩壊試験法に不適合であった。
【0063】
[実施例2]ショウガ乾燥粉末含有丸剤の製造
ショウガ乾燥粉末(株式会社あさの製、7.0kg、35重量部)に炭酸水素ナトリウム(つけもと株式会社製、1.0kg、5重量部)と上新粉(日本製粉株式会社製、2.0kg、10重量部)、オリーブ油(株式会社サンエンタープライス製、1.0kg、5重量部)を蒸練機(株式会社ヤエス製、サン二重釜SQPV−800)に投入して混合し、ショウガ乾燥粉末と炭酸水素ナトリウムとオリーブ油の混合物を得た。さらに、調整例1により製造した梅エキス(9.0kg、45重量部)を添加し、加温装置で30〜40度に制御しつつ、30分間練合して、練合エキス(20kg)を得た。尚、練合の間、水(練合エキス20kgに対して0.5kg)を蒸練機中へ追加した。
練合エキス(20.5kg)を、高性能自動製丸機(アキラ機工株式会社製、PT6025)を用いて、1錠あたり200±20mgになるように成形した(16.8kg)。
成形後の丸剤を糖衣機(アキラ機工株式会社製、PT36)に投入し、そこへ水(1.0kg)を添加して、丸剤の表面が滑らかになるまで磨いた。
磨いた後の丸剤を遠赤外線乾燥機(株式会社ヴィアノーベ製、フードドライヤーViVi−9型式V7513)を用いて、約60℃で約20時間乾燥して、ショウガ含有丸剤(15.8kg)を得た。
【0064】
[比較例3]ショウガ乾燥粉末および梅エキス含有丸剤の製造
ショウガ乾燥粉末(株式会社あさの製、7.0kg、35重量部)に上新粉(日本製粉株式会社製、3.0kg、15重量部)、オリーブ油(株式会社サンエンタープライス社製、1.0kg、5重量部)を蒸練機(株式会社ヤエス製、サン二重釜SQPV−800)に投入して混合し、ショウガ乾燥粉末とオリーブ油の混合物を得た。さらに、調整例1により製造した梅エキス(9.0kg、45重量部)を添加し、加温装置で30〜40度に制御しつつ、約30分間練合して、練合エキス(20kg、100重量部)を得た。尚、練合の間、水(練合エキス20kgに対して0.5kg)を蒸練機中へ添加した。
練合エキス(20.5kg)を、高性能自動製丸機(アキラ機工株式会社製、PT6025)を用いて、1錠あたり200±20mgになるように成形した(16.8kg)。
成形後の丸剤を糖衣機(アキラ機工株式会社製、PT36)に投入し、そこへ水(1.0kg)を添加して、丸剤の表面が滑らかになるまで磨いた。
磨いた後の丸剤を遠赤外線乾燥機(株式会社ヴィアノーベ製、フードドライヤーViVi−9型式V7513)を用いて、約60度で約20時間乾燥して、梅エキス含有丸剤(15.8kg)を得た。
【0065】
[試験例2]ショウガ乾燥粉末および梅エキス含有丸剤の崩壊試験1
実施例2および比較例3で得られた梅エキス含有丸剤に対して、日本薬局方第16改正の丸剤の崩壊試験に準じた崩壊試験を行った。試験方法の詳細および評価方法は試験例1で記載した通りである。得られた結果を表2に示す。
【0066】
【表2】
【0067】
表2に示すように、炭酸塩と食用油の両方を含む実施例2の梅エキス丸剤では、6粒とも37分で原型を認めなくなり、崩壊したことが確認できた。炭酸塩を含まない比較例3の梅エキス含有丸剤では、6粒とも60分後も丸剤としての形を残したままであり、崩壊したことが確認出来ず、本法に不適合であった。
【0068】
[参考試験例2]ショウガ乾燥粉末および梅エキス含有丸剤の崩壊試験2
参考試験例1と同様の方法で、第1液及び第2液を調整し、日本薬局方第14改正の丸剤の崩壊試験法を行った。崩壊試験は、第1液を用いて60分間を行い、試料中に残留物を試験器ガラス管内に認めるときは、引き続き第2液を用いて60分間を行ったが、参考試験例2の結果も試験例2の結果と同等であった。
つまり、日本薬局方第14改正の丸剤の崩壊試験法においても、炭酸塩と食用油の両方を含む実施例2のショウガ乾燥粉末および梅エキス丸剤では、崩壊したことが確認できたが、炭酸塩を含まない比較例3のショウガ乾燥粉末および梅エキス含有丸剤では、崩壊したことが確認出来ず、日本薬局方第14改正の丸剤の崩壊試験法に不適合であった。
【0069】
[実施例3]ブルーベリージュース濃縮液含有丸剤の製造
調整例2により製造した梅果肉乾燥粉末(5.6kg、28.2重量部)に炭酸カルシウム(株式会社八宝商会社製、1.9kg、9.4重量部)と、オリーブ油(株式会社サンエンタープライス製、1.2kg、6.1重量部)を蒸練機(株式会社ヤエス製、サン二重釜SQPV−800)に投入して混合し、梅果肉乾燥粉末と炭酸カルシウムとオリーブ油の混合物を得た。さらに、市販のブルーベリージュース(ジュポンかづの株式会社製)を加熱濃縮して調整したブルーベリージュース濃縮液(11.3kg、56.3重量部、Brix80)を添加し、加温装置で30〜40度に制御しつつ、30分間練合して、練合エキス(20kg)を得た。練合の間、さらに水(練合エキス20kgに対して1.2kg)を蒸練機中へ投入した。
練合エキス(21.2kg)を、高性能自動製丸機(アキラ機工株式会社製、PT6025)を用いて、1錠あたり200±20mgの重量になるように成形した(17.3kg)。
成形後の丸剤を糖衣機(アキラ機工株式会社製、PT36)に投入し、そこへ水(1.2kg)を添加して、丸剤の表面が滑らかになるまで、磨いた。
磨いた後の丸剤を遠赤外線乾燥機(株式会社ヴィアノーベ製、フードドライヤーViVi−9型式V7513)を用いて、約60度で約20時間乾燥して、オリーブ油と炭酸カルシウムを含んだブルーベリージュース濃縮液含有丸剤(16.4kg)を得た。
尚、Brix(ブリックス)値は、食品産業や農業などで、ショ糖、果糖、転化糖、ブドウ糖などの糖類の含有量を測るために用いられる物理量である。
【0070】
[比較例4]ブルーベリージュース濃縮液含有丸剤の製造
調整例2により製造した梅果肉乾燥粉末(13kg、65重量部)と実施例3により製造したブルーベリージュース濃縮液(7kg、35重量部、Brix80)とを蒸練機(株式会社ヤエス製、サン二重釜SQPV−800)に投入し、加温装置で30〜40度に制御しつつ、30分間練合して、練合エキス(20kg)を得た。練合の間、さらに水(練合エキス20kgに対して1.2kg)を投入して練合エキスを得た。
練合エキス(21.2kg)を、高性能自動製丸機(アキラ機工株式会社製、PT6025)を用いて、200±20mg/丸剤の重量になるように成形して、丸剤(17.3kg)を得た。
丸剤を糖衣機(アキラ機工株式会社製、PT36)に投入し、そこへ水(1.2kg)を添加して、丸剤の表面が滑らかになるまで磨いた。
磨いた後の丸剤を遠赤外線乾燥機(株式会社ヴィアノーベ製、フードドライヤーViVi−9型式V7513)を用いて、60度で20時間乾燥して、ブルーベリージュース濃縮液含有丸剤(16.4kg)を得た。
【0071】
[試験例3]ブルーベリージュース濃縮液含有丸剤の崩壊試験1
実施例3および比較例4で得られたブルーベリージュース濃縮液含有丸剤をサンプルとして、日本薬局方第16改正の丸剤の崩壊試験に準じて崩壊試験を行った。試験方法の詳細および評価方法は試験例1で記載した通りである。得られた結果を表3に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
表3に示すように、炭酸塩と食用油の両方を含む実施例3のブルーベリージュース濃縮液含有丸剤のみが、6粒とも20分で原型を認めなくなり、崩壊したことが確認できた。炭酸塩及び食用油を含まない比較例4のブルーベリージュース濃縮液含有丸剤では、6粒とも60分後も丸剤としての形を残したままであり、崩壊したことが確認出来ず、本法に不適合であった。
【0074】
[参考試験例3]ブルーベリージュース濃縮液含有丸剤の崩壊試験2
参考試験例1と同様の方法で、第1液及び第2液を調整し、日本薬局方第14改正の丸剤の崩壊試験法を行った。崩壊試験は、第1液を用いて60分間を行い、試料中に残留物を試験器ガラス管内に認めるときは、引き続き第2液を用いて60分間を行ったが、参考試験例3の結果も試験例3の結果と同等であった。
つまり、日本薬局方第14改正の丸剤の崩壊試験法においても、炭酸塩と食用油の両方を含む実施例3のブルーベリージュース濃縮液含有丸剤では、崩壊したことが確認できたが、炭酸塩を含まない比較例4のブルーベリージュース濃縮液含有丸剤では、崩壊したことが確認出来ず、日本薬局方第14改正の丸剤の崩壊試験法に不適合であった。
【0075】
[実施例4]植物発酵食品含有丸剤の製造
調整例2により製造した梅果肉乾燥粉末(5.6kg、28.2重量部)に炭酸カルシウム(株式会社八宝商会社製、1.9kg、9.4重量部)と、オリーブ油(株式会社サンエンタープライス社製、1.2kg、6.1重量部)を蒸練機(株式会社ヤエス製、サン二重釜SQPV−800)に投入して混合し、梅果肉乾燥粉末と炭酸カルシウムとオリーブ油の混合物を得た。さらに、植物発酵食品(万田発酵株式会社製、11.3kg、56.3重量部、Brix60)を添加し、加温装置で30〜40℃に制御しつつ、30分間練合して、練合エキス(20kg)を得た。練合の間、さらに水(練合エキス20kgに対して1.2kg)を蒸練機中へ投入した。
練合エキス(21.2kg)を、高性能自動製丸機(アキラ機工株式会社製、PT6025)を用いて、1錠あたり200±20mgの重量になるように成形して、丸剤(17.3kg)を得た。
丸剤を糖衣機(アキラ機工株式会社製、PT36)に投入し、そこへ水(1.2kg)を添加して、丸剤の表面が滑らかになるまで磨いた。
磨いた後の丸剤を遠赤外線乾燥機(株式会社ヴィアノーベ製、フードドライヤーViVi−9型式V7513)を用いて、60度で20時間乾燥して、オリーブ油と炭酸カルシウムを含んだ植物発酵食品含有丸剤(16.4kg)を得た。
【0076】
[比較例5]植物発酵食品含有丸剤
調整例2により製造した梅果肉乾燥粉末(13kg、65重量部)と実施例4の植物発酵食品(万田発酵株式会社製、7kg、35重量部、Brix60)とを蒸練機(株式会社ヤエス製、サン二重釜SQPV−800)に投入し、加温装置で30〜40℃に制御しつつ、30分間練合して、練合エキス(20kg)を得た。練合の間、さらに水(練合エキス20kgに対して1.2kg)を蒸練機中へ投入した。
練合エキス(21.2kg)を、高性能自動製丸機(アキラ機工株式会社製、PT6025)を用いて、1錠あたり200±20mgの重量になるように成形して、丸剤(17.3kg)を得た。
成形後の丸剤を糖衣機(アキラ機工株式会社製、PT36)に投入し、そこへ水(1.2kg)を添加して、丸剤の表面が滑らかになるまで磨いた。
磨いた後の丸剤を遠赤外線乾燥機(株式会社ヴィアノーベ製、フードドライヤーViVi−9型式V7513)を用いて、60℃で20時間乾燥して、植物発酵食品含有丸剤(16.4kg)を得た。
【0077】
[試験例4]植物発酵食品含有丸剤の崩壊試験1
実施例4および比較例5で得られた植物発酵食品含有丸剤をサンプルとして、日本薬局方第16改正の丸剤の崩壊試験に準じて崩壊試験を行った。日本薬局方第16改正の丸剤の崩壊試験法においては、丸剤は以下の方法で60分間以内に崩壊することで、崩壊したと認められる。
崩壊試験は、崩壊試験器に水とサンプルを6粒入れ、1分間に29〜32往復、振り幅53〜57mmの上下運動により60分間試験を行った。液温は37±2℃であった。得られた結果を表4に示す。
【0078】
【表4】
【0079】
表4に示すように、発泡性化合物と食用油の両方を含む実施例4の植物発酵食品含有丸剤のみが、6粒とも20分で原型を認めなくなり、崩壊したことが確認できた。発泡性化合物及び食用油を含まない比較例5の植物発酵食品含有丸剤では、6粒とも60分後も丸剤としての形を残したままであり、崩壊したことが確認出来ず、本法に不適合であった。
【0080】
[参考試験例4]植物発酵食品丸剤の崩壊試験2
参考試験例1と同様の方法で、第1液及び第2液を調整し、日本薬局方第14改正の丸剤の崩壊試験法を行った。崩壊試験は、第1液を用いて60分間を行い、試料中に残留物を試験器ガラス管内に認めるときは、引き続き第2液を用いて60分間を行ったが、参考試験例4の結果も試験例4の結果と同等であった。
つまり、日本薬局方第14改正の丸剤の崩壊試験法においても、炭酸塩と食用油の両方を含む実施例4の植物発酵食品含有丸剤では、崩壊したことが確認できたが、炭酸塩を含まない比較例5の植物発酵食品含有丸剤では、崩壊したことが確認出来ず、日本薬局方第14改正の丸剤の崩壊試験法に不適合であった。
【0081】
[試験例6]丸剤の崩壊試験器通過サンプル重量の測定
試験例1〜4及び比較例1〜5で行った崩壊試験について、崩壊の度合を明確にするため、崩壊試験60分後に試験器ガラス管底部の網を通過し、試験器ビーカー内に溜まった固形分の重量を以下の方法で測定し、比較を行った。崩壊試験器に水とサンプルを6粒入れ、1分間に29〜32往復、振り幅53〜57mmの上下運動により60分間試験を行った後、試験器ガラス管を取り出し、試験器ビーカー内の固形分を含んだ溶液に対して、ろ紙によるろ過を行うことで、固形分を得た。得られた固形分を60度で6時間以上乾燥させ、分析用電子天びん(GH−252、エーアンドデイ株式会社製)で重量を測定した。表5および図1に結果を示す。
【0082】
【表5】
【0083】
表5の重量は、丸剤に添加した固形分の重量に対する、試験器ガラス管底部の網を通過した固形分の重量の割合を示す。表5および図1の結果より、実施例1〜4については、丸剤が60分の崩壊試験で崩壊しきったことで、丸剤に添加した固形分の100%が試験器ガラス管を通過し、試験器ビーカー内に移行したことが確認できた。また、比較例1および3〜5の結果より、丸剤に含まれる固形分のほぼ全てが試験器ガラス管底部の網を通過できなかったことが明らかとなった。比較例2については、ある程度の固形分がはがれおちる形で試験器ガラス管底部の網を通過していたが、60分の崩壊試験後も試験器ガラス管内で丸剤の形状を保ったままであり、崩壊したことが確認できなかった。
【0084】
また、実施例1及び比較例1における日本薬局方第16改正の丸剤の崩壊試験法の結果の写真を図2に、その模式図を図3に示す。図2及び図3(左の試験器の目視結果)より、崩壊試験後、実施例1のサンプルでは、試験器ガラス管内に固形分は確認できず、試験器ガラス管底部の網を通過した試験器ビーカー内の固形分が目視により確認できた。
一方で、図2及び図3(右の試験器目視結果)より、比較例1のサンプルでは、試験器ビーカー内に固形分は確認できず、試験器ガラス管内に形状を保ったままの状態の丸剤が確認できた。
【0085】
[試験例5]正露丸及び万田酵素プラス温粒タイプの崩壊試験1
市販されている丸剤として、正露丸(大幸薬品株式会社製)及び万田酵素プラス温粒タイプ(万田発酵株式会社製)に対して、日本薬局方第16改正の丸剤の崩壊試験に準じた崩壊試験を行った。試験方法の詳細は試験例1で記載した通りである。
崩壊試験の結果、正露丸及び万田酵素プラス温粒タイプは、60分後も丸剤としての形を残したままであり、崩壊したことが確認出来ず、本法に不適合であった。
【0086】
[参考試験例5]正露丸及び万田酵素プラス温粒タイプの崩壊試験2
参考試験例1と同様の方法で、第1液及び第2液を調整し、日本薬局方第14改正の丸剤の崩壊試験法を行った。崩壊試験は、第1液を用いて60分間を行い、試料中に残留物を試験器ガラス管内に認めるときは、引き続き第2液を用いて60分間を行ったが、参考試験例5の結果も試験例5の結果と同等で、崩壊したことを確認出来ず、日本薬局方第14改正の丸剤の崩壊試験法に不適合であった。
【0087】
[試験例7]梅果肉乾燥粉末含有脂溶性成分の食用油による抽出
概要:調整例2で得られた梅果肉乾燥粉末について、食用油による脂溶性成分の抽出の確認試験を行った。梅果肉乾燥粉末中に含まれる脂溶性成分としては、ウルソール酸とオレアノール酸に着目した。食用油としては、オリーブ油(株式会社サンエンタープライス製)とアマニ油(和光純薬工業株式会社製)を用いた。
【0088】
手順1:測定試料の調整
オリーブ油、アマニ油、水各50gに梅果肉乾燥粉末を1g添加し、4時間撹拌し、混合液を得た。混合液を、高速冷却遠心分離機(日立工機株式会社製、himac CR22G)を用いて、5000rpmで10分間遠心分離を行い、上清のオリーブ油、アマニ油、水を得た。得られた上清のオリーブ油、アマニ油に対して同等量の90%メタノール水溶液を加えて撹拌し、油と90%メタノール水溶液の混合液を得た。この油と90%メタノールの混合液を、高速冷却遠心分離機を用いて、5000rpmで10分間遠心分離を行い、90%メタノール水溶液相を得て、0.2μmのPTFEフィルターにてろ過し、被験試料とした。
【0089】
手順2:UPLC分析
90%メタノール水溶液相を用いて、UPLC(日本ウォーターズ株式会社製、ACQUITY UPLCシステム)にてウルソール酸およびオレアノール酸含有量の測定を行った。
以下に分析条件を示す。
分析条件
カラム : ACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm
溶媒 : メタノール:リン酸緩衝液(pH2.3)=89:11
流速 : 0.5mL/分
分析波長: 200nm
【0090】
手順3:検量線作成
検量線はウルソール酸(和光純薬工業株式会社製)とオレアノール酸(和光純薬工業株式会社製)の標準品を用いて作成した。
【0091】
分析結果を表6に示す。各分析値は梅果肉乾燥粉末に含まれるウルソール酸及びオレアノール酸のうち、水及び油に抽出された割合を示す。値は重量%とする。
【表6】
【0092】
表6に示すように、梅果肉乾燥粉末中に含まれる脂溶性成分であるウルソール酸及びオレアノール酸は、水では溶出しなかったが、オリーブ油、アマニ油には溶け出すことが確認できた。
【0093】
[試験例8]ショウガ乾燥粉末含有脂溶性成分の食用油による抽出
概要:ショウガ乾燥粉末(株式会社あさの製)について、食用油による脂溶性成分の抽出の確認試験を行った。ショウガ乾燥粉末中に含まれる脂溶性成分として、6−ジンゲロールと6−ショウガオールに着目した。食用油としては、オリーブ油(株式会社サンエンタープライス製)とアマニ油(和光純薬工業株式会社製)を用いた。
【0094】
手順1:測定試料の調整
オリーブ油、アマニ油、水のそれぞれを50g準備し、これらにショウガ乾燥粉末を1g添加した後、2時間撹拌し、混合液を得た。混合液を、高速冷却遠心分離機(日立工機株式会社製、himac CR22G)を用いて、5000rpmで10分間遠心分離を行い、上清のオリーブ油、アマニ油、水を得た。得られた上清のオリーブ油、アマニ油に対して同重量のメタノールを加えて撹拌し、上清油とメタノールの混合液を得た。さらに、高速冷却遠心分離機を用いて、5000rpmで10分間遠心分離を行い、メタノール相を得て、0.2μmのPTFEフィルターにてろ過し、被験試料とした。
【0095】
手順2:UPLC分析
得られたメタノール相を用いて、UPLC(日本ウォーターズ株式会社製、ACQUITY UPLCシステム)にて、6−ジンゲロールおよび6−ショウガオール含有量の測定を行った。以下に分析条件を示す。
分析条件
検出器: PDA検出器(Waters)
検出波長: 228 nm
カラム: BEH C18 1.7μm 2.1mm×100mm(Waters製)、
カラム温度: 30度
移動相: A液:0.05%トリフルオロ酢酸を含む30%アセトニトリル
B液:0.05%トリフルオロ酢酸を含む90%アセトニトリル
流速: 0.25mL/分
グラジェントプログラム:A液/B液=100/0→65/35(1分)→25/75(7分)
→0/100(2分)
【0096】
手順3:検量線作成
検量線は6-ジンゲロール(東京化成工業株式会社製)と6-ショウガオール(シグマアルドリッチ社製)の標準品を用いて作成した。
【0097】
分析結果を表7に示す。各分析値はショウガ乾燥粉末に含まれる6−ジンゲロール及び6−ショウガオールのうち、水及び油に抽出された6−ジンゲロール及び6−ショウガオールの割合を示す。値は重量%とする。
【0098】
【表7】
【0099】
表7に示すように、ショウガ乾燥粉末中に含まれる脂溶性成分である6−ジンゲロール、6−ショウガオールは、水よりもアマニ油、オリーブ油で多く溶出することが確認できた。
【0100】
[試験例9]動物を用いた吸収性の検討
概要:調整例2で得られた梅果肉乾燥粉末からトリテルペノイド類を含む脂溶性成分をメタノールにより抽出し、得られた抽出液を水及びアマニ油に懸濁し、懸濁液を6週齢の雄性ラット(SPF)(Crl:CD(SD)系統、日本チャールス・リバー株式会社供給)に投与した。投与後、ラットの血中ウルソール酸、オレアノール酸含有量を液体クロマトグラフ及び質量分析計を用いて測定することで、梅果肉乾燥粉末中に含まれるトリテルペノイド類を含む脂溶性成分の吸収性を検討する試験を行った。試験は株式会社TTCに委託し、雄性ラットへの梅果肉乾燥粉末の投与、投与後のラットの血液の採血などは株式会社DISM医科学研究所、液体クロマトグラフ及び質量分析計を用いた測定及び分析は株式会社住化分析センターで行った。
【0101】
手順1:梅果肉乾燥粉末からの脂溶性成分の抽出
調整例2で得られた梅果肉乾燥粉末120gに90%メタノール水溶液を1000mL添加し、超音波洗浄機(株式会社エスエヌディ製、US−205)を用いて28KHzで45分間超音波処理を行い、懸濁液を得た。懸濁液を、高速冷却遠心分離機(日立工機株式会社製、himac CR22G)を用いて5000rpmで15分間遠心分離を行い、得られた上清を回収し、ウォーターバス(ヤマト科学株式会社製、BM400)を用いて50度に保温しながら、ロータリーエバポレーター(ヤマト科学株式会社製、RE−400)を用いて濃縮乾固を行い、濃縮物を得た。濃縮物を、さらに凍結乾燥機(東京理化器械株式会社製、FDU−810)を用いて約2日間凍結乾燥を行い、乾燥物を得た。乾燥物にさらにウルソール酸濃度8.59mg/mLになるように水及びアマニ油を加えて懸濁し、梅果肉粉末由来脂溶性成分水懸濁液及び梅果肉粉末由来脂溶性成分アマニ油懸濁液を得た。
【0102】
手順2:雄性ラットへの投与および採血
水懸濁液及びアマニ油懸濁液をラットに10mL/kg量投与し、投与後0分後に2匹採血し、30分後、60分後、90分後、120分後、180分後に5匹ずつ採血を行った。採血時、麻酔は実験小動物用簡易吸入麻酔装置NARCOBIT−E(KN−1070、株式会社夏目製作所製)を用い、イソフルラン麻酔下で開腹し、腹部大動脈から採血を行った。採血には、10mLディスポーザブルシリンジ(テルモ株式会社製)及び21G注射針(テルモ株式会社製)を用い、抗凝固剤であるヘパリンナトリウム処理が施されたベシェクトII真空採血管(テルモ株式会社製)に採取した。得られた血液は、小型冷却遠心機(CF7D2、日立工機株式会社製)を用いて、2500rpmで10分間遠心分離を行い、血漿サンプルを得た。
【0103】
手順3:血漿サンプル分析
血漿サンプル50μLにメタノール5μL、LS溶液(1000ng/ml)10μL、中性リン酸塩pH標準溶液(pH6.86)200μLを加え、10秒間撹拌し、tert−butyl methyl etherを1mL加え、2分間撹拌し、10000rpmで2分間遠心分離を行った。上清850μLを回収し、窒素気流下で40度で蒸発乾固を行い、乾燥物に80%メタノール水溶液を200μL加えて10秒間撹拌し、注入試料を得た。液体クロマトグラフ及び質量分析の装置及び測定条件は以下のもので行った。
【0104】
測定条件(液体クロマトグラフ)
高速液体クロマトグラム: Ultra perfomance LC system(Waters製)
分析カラム: Shim−pack XR−ODS,3.0×100mm(島津ジーエルシー社製)
カラム温度: 45度
移動相: A:10 mmol/L酢酸アンモニウム水溶液、B:メタノール
容量比: A:B=20:80
流量: 0.4mL/分
測定時間: 20分
オートサンプラー: 設定温度10度
【0105】
測定条件(質量分析計)
Tandem Mass Spectrometer: AP15000(AB Sciex製)
API interface: Turbo−V spray
Electrospray ionization: Negative ion mode
Ion spray voltage: −4500V
Collision GAS(CAD): 設定値5,N2
Curtain GAS(CUR): 15psi,N2
Nebulizer gas(GAS1): 50psi,Air
Heated gas flow: 70psi,Air
Temperature(TEM): 500℃
Scan mode: Multiple reaction monitoring mode
Monitor ion: Ursolic acid m/z 455.7→455.7
Oleanolic acid m/z 455.7→455.7
Glycyrrhetic acid m/z 469.6→425.6
【0106】
手順4:検量線作成
検量線:ウルソール酸(和光純薬工業株式会社製)とオレアノール酸(和光純薬工業株式会社製)の標準品を用いて作成した。
【0107】
上記分析結果について、ウルソール酸の分析結果を図4に、オレアノール酸の分析結果を図5に示す。また各グラフは平均±標準偏差で示す(n=5)。
【0108】
図4より、梅果肉粉末由来脂溶性成分水懸濁液及び梅果肉粉末由来脂溶性成分アマニ油懸濁液投与群における血中のウルソール酸濃度について、投与後から経時的に増加し、最も高い値を示したのは、水懸濁液投与群は投与後90分経過後(17.4ng/mL)、アマニ油懸濁液投与群は投与後120分経過後(65.4ng/mL)であった。全時点において、アマニ油懸濁液投与群は、水懸濁液投与群と比べて血中のウルソール酸含有量について最大吸収量で3倍近く高い値が認められた。
【0109】
図5より、水懸濁液及びアマニ油懸濁液投与群における血中のオレアノール酸濃度について、投与後から経時的に増加し、最も高い値を示したのは、水懸濁液投与群は投与後90分経過後(6.38ng/mL)、アマニ油懸濁液投与群は投与後120分経過後(24.2ng/mL)であった。全時点において、アマニ油懸濁液投与群は、水懸濁液投与群と比べて血中のオレアノール酸含有量について最大吸収量で5倍近く高い値が認められた。
【0110】
試験例9の結果より、梅果肉粉末由来脂溶性成分中に含まれるウルソール酸、オレアノール酸は、ラットではアマニ油に懸濁させて摂取させることで、水に懸濁した際と比較して、生体内での吸収性が向上することが確認できた。このことより、本発明の固形剤、特に丸剤が、従来よりも、生体内吸収性に優れていることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明により得られる素材を練り合わせ、その練合物から成形することを特徴とする固形剤は、従来よりも、生体内吸収性に優れるため、医薬品や健康食品の分野において有用であると考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5