(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来技術には以下のような欠点があった。フラボノイド非配糖体は、アルコールなどの溶剤抽出法により抽出されるが、その量は満足のいく量ではなく、さらにグリチルレチン酸は微量しか抽出することができなかった。
【0006】
さらには、熱水法を用いることでフラボノイド非配糖体を抽出できるが、その量は微量であった。さらに、グリチルリチンを抽出することはできる(特許文献2、非特許文献5)が、グリチルレチン酸を抽出することができなかった。
【0007】
以上の理由としては甘草中にはグリチルレチン酸は単体としては存在せず、グリチルレチン酸に糖が結合した配糖体、グリチルリチンとして存在するからである。甘草からグリチルレチン酸を得るために酵素処理を行う方法が知られており、グリチルリチンの糖結合を切断することができるが、酵素処理は糖結合切断のため長時間処理行う必要がある。また、フラボノイド非配糖体を、酵素処理法で得られることはできなかった。
【0008】
このため、グリチルレチン酸とフラボノイド非配糖体の共存抽出物を得る方法としては、甘草を乾煎りして強制的にその糖結合を切断する方法があるが(非特許文献3)、甘草のごく一部のグリチルリチン、フラボノイド配糖体類の糖結合を切断するに過ぎず、抽出組成物中のこれら有効成分の含有量が少なすぎるという課題があった。
【0009】
本発明の目的は、グリチルレチン酸とフラボノイド非配糖体の共存組成物を高濃度で、一定量以上を抽出する方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、甘草について鋭意研究した結果、甘草を酸加水分解、もしくは亜臨界状態で加水分解のいずれかの加水分解を作用させることで得られる抽出組成物、抽出方法により得られた抽出組成物および抽出物の製造方法に特徴を見出し、前述の抽出組成物、抽出方法により得られた抽出組成物および抽出物の製造方法により、甘草から、グリチルレチン酸とフラボノイド非配糖体の共存組成物が得られることを見出した。なお、本願発明における甘草のフラボノイド非配糖体とは、リクイリチゲニン及びその塩もしくはイソリクイリチゲニン及びその塩を指す。
【0011】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕 グリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)が抽出物中の重量比率で0.5重量%以上、20重量%以下およびリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)が抽出物中の重量比率で1.5重量%以上、25重量%以下であり、
かつ、抽出成分Aと抽出成分Bの合計量が抽出物中の重量比率で2.0重量%以上、45重量%以下であることを特徴とする甘草(学名Glycyrrhiza)からの抽出組成物;
〔2〕 グリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)が抽出物中の重量比率で0.5重量%以上、20重量%以下、リクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)が抽出物中の重量比率で1.5重量%以上、25重量%以下並びにイソリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分C)が抽出物中の重量比率で0.2重量%以上、10重量%以下であり、
かつ、抽出成分Aと抽出成分Bと抽出成分Cの合計量が抽出物中の重量比率で2.2重量%以上、55重量%以下であることを特徴とする甘草(学名Glycyrrhiza)からの抽出組成物;
〔3〕 甘草(学名Glycyrrhiza)の植物体を加水分解処理して加水分解処理物を得る工程、
該加水分解処理物の溶剤抽出処理を行って、溶剤抽出物を得る工程、を含む方法によって得られた甘草加水分解抽出組成物;
【0012】
〔4〕 甘草(学名Glycyrrhiza)の植物体を加水分解処理して加水分解処理物を得る工程、
該加水分解処理物を乾燥させるか、もしくは当該加水分解処理物の固液分離を行って、加水分解残渣を得る工程、
該残渣の溶剤抽出処理を行って、溶剤抽出物を得る工程、を含む方法によって得られた甘草加水分解抽出組成物;
〔5〕 甘草(学名Glycyrrhiza)の植物体を加水分解処理して加水分解処理物を得る工程、
該加水分解処理物の溶剤抽出処理を行って、溶剤抽出物を得る工程、
該溶剤抽出物から溶剤を除去して、固形分としての甘草加水分解抽出物を得る工程、を含む方法によって得られた甘草加水分解抽出組成物;
〔6〕 甘草(学名Glycyrrhiza)の植物体を加水分解処理して加水分解処理物を得る工程、
該加水分解処理物を乾燥させるか、もしくは当該加水分解処理物の固液分離を行って、加水分解残渣を得る工程、
該残渣の溶剤抽出処理を行って、溶剤抽出物を得る工程、
該溶剤抽出物から溶剤を除去して、固形分としての甘草加水分解抽出物を得る工程、を含む方法によって得られた甘草加水分解抽出組成物;
【0013】
〔7〕 甘草(学名Glycyrrhiza)の植物体を加水分解処理して加水分解処理物を得る工程、
該加水分解処理物の溶剤抽出処理を行って、溶剤抽出物を得る工程、を含む甘草加水分解抽出組成物の製造方法;
〔8〕 甘草(学名Glycyrrhiza)の植物体を加水分解処理して加水分解処理物を得る工程、
該加水分解処理物を乾燥させるか、もしくは当該加水分解処理物の固液分離を行って、加水分解残渣を得る工程、
該残渣の溶剤抽出処理を行って、溶剤抽出物を得る工程、を含む甘草加水分解抽出組成物の製造方法;
〔9〕 甘草(学名Glycyrrhiza)の植物体を加水分解処理して加水分解処理物を得る工程、
該加水分解処理物の溶剤抽出処理を行って、溶剤抽出物を得る工程、
該溶剤抽出物から溶剤を除去して、固形分としての甘草加水分解抽出物を得る工程、を含む甘草加水分解抽出組成物の製造方法;
〔10〕 甘草(学名Glycyrrhiza)の植物体を加水分解処理して加水分解処理物を得る工程、
該加水分解処理物を乾燥させるか、もしくは当該加水分解処理物の固液分離を行って、加水分解残渣を得る工程、
該残渣の溶剤抽出処理を行って、溶剤抽出物を得る工程、
該溶剤抽出物から溶剤を除去して、固形分としての甘草加水分解抽出物を得る工程、を含む甘草加水分解抽出組成物の製造方法;に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の甘草亜加水分解抽出組成物は、グリチルレチン酸とフラボノイド非配糖体を一定量含み、それらは動物の体内への吸収性に優れている。従って、他の手段による甘草抽出物よりも少量の使用で所望の効果を発揮することが期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願発明は、グリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)が抽出物中の重量比率で0.5重量%以上、20重量%以下およびリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)が抽出物中の重量比率で1.5重量%以上、25重量%以下であり、かつ、抽出成分Aと抽出成分Bの合計量が抽出物中の重量比率で2.0重量%以上、45重量%以下である甘草(学名Glycyrrhiza)からの抽出組成物に特徴がある。
【0016】
つまり、グリチルレチン酸及びその塩と甘草のフラボノイド非配糖体であるリクイリチゲニン及びその塩との2成分である甘草(学名Glycyrrhiza)からの抽出組成物である。
【0017】
すなわち、グリチルレチン酸とフラボノイド非配糖体の共存組成物であり、その組成物は、グリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)が抽出物中の重量比率で0.5重量%以上およびリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)が抽出物中の重量比率で1.5重量%以上であり、かつ、抽出成分Aと抽出成分Bの合計量が抽出物中の重量比率で2.0重量%以上である。そのために、優れた吸収率、高い抗酸化作用を発現させることができるのである。
【0018】
ここで、抽出物中の抽出成分Aの重量比率の下限は、2.0重量%以上が好ましく、8.0重量%以上がより好ましい。抽出物中の抽出成分Bの重量比率の下限は、2.0重量%以上が好ましい。さらに、抽出物中の抽出成分Aと抽出成分Bの合計量の重量比率の下限は4.0重量%以上が好ましく、10.0量%以上がより好ましい。
【0019】
また、抽出物中の抽出成分Aの重量比率の上限は、20重量%以下が好ましい。抽出物中の抽出成分Bの重量比率の上限は、25重量%以下が好ましい。さらに、抽出物中の抽出成分Aと抽出成分Bの合計量の重量比率の上限は45重量%以下が好ましい。これらの抽出物中の抽出成分の上限は、酸加水分解による抽出実験を積み重ねた結果から得られた数値である。
【0020】
本願発明は、グリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)が抽出物中の重量比率で0.5重量%以上、20重量%以下、リクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)が抽出物中の重量比率で1.5重量%以上、25重量%以下、並びにイソリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分C)が抽出物中の重量比率で0.2重量%以上、10重量%以下であり、かつ、抽出成分Aと抽出成分Bと抽出成分Cの合計量が抽出物中の重量比率で2.2重量%以上、55重量%以下である甘草(学名Glycyrrhiza)からの抽出組成物に特徴がある。
【0021】
つまり、グリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)とフラボノイド非配糖体であるリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)とフラボノイド非配糖体であるイソリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分C)との3成分であり、かつ一定量以上が含有している甘草(学名Glycyrrhiza)からの抽出組成物である。この抽出組成物は、グリチルレチン酸とフラボノイド非配糖体の共存組成物であり、グリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)が抽出物中の重量比率で0.5重量%以上、リクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)が抽出物中の重量比率で1.5重量%以上、並びにイソリクイリチゲニン(抽出成分C)及びその塩が抽出物中の重量比率で0.2重量%以上であり、抽出成分Aと抽出成分Bと抽出成分Cの合計量が抽出物中の重量比率で2.2重量%以上であるものであり、そのために、優れた吸収率、高い抗酸化作用を発現させることができるのである。
【0022】
ここで、抽出物中の抽出成分Aの重量比率の下限は、2.0重量%以上が好ましく、8.0重量%以上がより好ましい。抽出物中の抽出成分Bの重量比率の下限は、2.0重量%以上が好ましい。抽出物中の抽出成分Cの重量比率の下限は、0.5重量%以上が好ましく、さらに、抽出物中の抽出成分Aと抽出成分Bと抽出成分Cの合計量の重量比率の下限は4.5重量%以上が好ましい。さらに、合計量の10.5重量%以上がより好ましい。
【0023】
また、抽出物中の抽出成分Aの重量比率の上限は、20重量%以下が好ましい。抽出物中の抽出成分Bの重量比率の上限は、25重量%以下が好ましい。抽出物中の抽出成分Cの重量比率の上限は、10重量%以下が好ましい。さらに、抽出物中の抽出成分Aと抽出成分Bと抽出成分Cの合計量の重量比率の上限は55重量%以下が好ましい。これらの抽出物中の抽出成分の上限は、実験を積み重ねた結果から得られた数値である。
【0024】
なお、本願発明における抽出物中の重量比率とは、乾燥状態の抽出組成物中の重量比率で算出したものである。
【0025】
本発明のさらなる態様の一つは、上記の甘草からの抽出組成物を含むアルコール溶液である。ここで使用されるアルコールとしては、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、ブチレングリコールが挙げられる。該アルコール溶液中の抽出組成物の濃度は、必要に応じて適時調整できる。
【0026】
なお、本発明においては、溶剤としてアルコールを用いた抽出処理をさらに行っても良い。このようにして得られた甘草の抽出物には、上記3つの抽出成分とフラボノイド、テルペノイド、脂質成分等のアルコール可溶性成分が含まれ、原料に元来含まれる食物繊維、糖類、タンパク等のアルコールに難溶性成分はほとんど存在しない。つまり、アルコール難溶性成分は、上述のアルコールによる抽出操作により分離されるので、最終的な抽出成分中にはほとんど含まれておらず、機能性を発現する抽出成分を確実に濃縮することが可能である。また、アルコール可溶性成分は、抽出組成物に含まれるが、抽出成分の機能性を阻害させないので、含まれていても問題とならない。
【0027】
本発明は、甘草を酸加水分解や亜臨界状態など加水分解条件に晒すことで、従来では同時に一定量以上を得ることができなかったグリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)およびフラボノイド非配糖体であるリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)の2成分、もしくはグリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)、フラボノイド非配糖体であるリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)およびフラボノイド非配糖体であるイソリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分C)の3成分を含む抽出組成物を提供することである。
【0028】
また、亜臨界状態や酸加水分解のいずれかの加水分解条件に晒すことで、グリチルレチン酸の前駆体の配糖体である甘草中のグリチルリチンが加水分解される。さらに、リクイリチゲニン、イソリクイリチゲニンの前駆体のフラボノイド配糖体である甘草中のリクイリチン、イソリクイリチンなども加水分解されるのである。これらの加水分解によって、従来技術である甘草からの溶剤抽出で得られるフラボノイド非配糖体であるリクイリチゲニンの収量およびフラボノイド非配糖体であるイソリクイリチゲニンの収量よりも大幅に増加して得られる。上記の2成分抽出物および3成分抽出物は、それぞれの単一成分に比べて、吸収効率、抗酸化作用等の効果を著しく向上させることができるのである。
【0029】
このことによって、それぞれ単一成分では発現しなかった吸収効率、抗酸化作用が認められるのである。このような効果は、低含有量では発現しないことも確認されている。特に、上記の2成分抽出物の合計量が抽出物中の2.0重量%以上であることで、吸収効率、抗酸化作用などでの効果が発現しやすくなるのである。また、上記の3成分抽出物の合計量が抽出物中の2.2重量%以上であることで、吸収効率、抗酸化作用などでの効果が発現しやすくなるのである。上記の2成分抽出物の合計量が抽出物中の一定量未満では、吸収効率、抗酸化作用が発現しにくくなり、その合計量は2.0重量%未満であることが推定されている。
【0030】
また、上記の3成分抽出物の合計量が抽出物中の一定量未満では、吸収効率、抗酸化作用が発現しにくくなり、その合計量は2.2重量%未満であることが推定されている。
【0031】
なお、非特許文献2では、甘草を亜臨界処理して得られた上澄み液を分析した結果が記載されているが、グリチルレチン酸は水に難溶性であり、そのほとんどは残渣中に存在するため、上澄みには存在しておらず、またフラボノイド非配糖体も同様水に難溶性であり、上澄みには存在していない。この非特許文献2は積極的に残渣中のグリチルレチン酸、フラボノイド非配糖体を利用しようとするものではない。
【0032】
さらに、非特許文献4には、甘草抽出エキスを亜臨界処理してグリチルレチン酸を抽出することが記載されているが、本発明のような植物体を使用するものではなく、フラボノイド非配糖体を抽出、利用できない。
【0033】
このように、甘草の植物体を加水分解処理して高含有量のグリチルレチン酸およびフラボノイド非配糖体の共存組成物を一定量以上得ようとする思想は従来存在していなかった。
【0034】
また、グリチルレチン酸およびフラボノイド非配糖体の共存組成物は、上述のように水に溶けにくく、脂溶性の性質を持っている。ヒトに代表される動物の腸への透過力や皮膚への浸透力は脂溶性の高いもののほうが優れていると考えられ、今回得られた共存組成物は脂溶性の高いものであることからそれぞれの得られた組成物の脂溶性が相乗的に高まり、腸への高い透過力もしくは皮膚への高い浸透率で吸収され、速やかに抗酸化に代表される効果を発揮することが発明者らの検討の結果見出されたのである。
【0035】
さらに本発明の態様の一つは、甘草(学名Glycyrrhiza)の植物体を加水分解処理して加水分解処理物を得る工程、
該加水分解処理物の溶剤抽出処理を行って、溶剤抽出物を得る工程、を含む方法によって得られた甘草加水分解抽出組成物である。
【0036】
さらに本発明の態様の一つは、甘草(学名Glycyrrhiza)の植物体を加水分解処理して加水分解処理物を得る工程、
該加水分解処理物を乾燥させるか、もしくは当該加水分解処理物の固液分離を行って、加水分解残渣を得る工程、
該残渣の溶剤抽出処理を行って、溶剤抽出物を得る工程、を含む方法によって得られた甘草加水分解抽出組成物である。
【0037】
さらに本発明の態様の一つは、甘草(学名Glycyrrhiza)の植物体を加水分解処理して加水分解処理物を得る工程、
該加水分解処理物の溶剤抽出処理を行って、溶剤抽出物を得る工程、
該溶剤抽出物から溶剤を除去して、固形分としての甘草加水分解抽出物を得る工程、を含む方法によって得られた甘草加水分解抽出組成物である。
【0038】
さらに本発明の態様の一つは、甘草(学名Glycyrrhiza)の植物体を加水分解処理して加水分解処理物を得る工程、
該加水分解処理物を乾燥させるか、もしくは当該加水分解処理物の固液分離を行って、加水分解残渣を得る工程、
該残渣の溶剤抽出処理を行って、溶剤抽出物を得る工程、
該溶剤抽出物から溶剤を除去して、固形分としての甘草加水分解抽出物を得る工程、を含む方法によって得られた甘草加水分解抽出組成物である。
【0039】
さらに本発明の態様の一つは、甘草(学名Glycyrrhiza)の植物体を加水分解処理して加水分解処理物を得る工程、
該加水分解処理物の溶剤抽出処理を行って、溶剤抽出物を得る工程、を含む甘草加水分解抽出組成物の製造方法である。
【0040】
さらに本発明の態様の一つは、甘草(学名Glycyrrhiza)の植物体を加水分解処理して加水分解処理物を得る工程、
該加水分解処理物を乾燥させるか、もしくは当該加水分解処理物の固液分離を行って、加水分解残渣を得る工程、
該残渣の溶剤抽出処理を行って、溶剤抽出物を得る工程、を含む甘草加水分解抽出組成物の製造方法である。
【0041】
さらに本発明の態様の一つは、甘草(学名Glycyrrhiza)の植物体を加水分解処理して加水分解処理物を得る工程、
該加水分解処理物の溶剤抽出処理を行って、溶剤抽出物を得る工程、
該溶剤抽出物から溶剤を除去して、固形分としての甘草加水分解抽出物を得る工程、
を含む方法によって得られた甘草加水分解抽出組成物の製造方法である。
【0042】
さらに本発明の態様の一つは、甘草(学名Glycyrrhiza)の植物体を加水分解処理して加水分解処理物を得る工程、
該加水分解処理物を乾燥させるか、もしくは当該加水分解処理物の固液分離を行って、加水分解残渣を得る工程、
該残渣の溶剤抽出処理を行って、溶剤抽出物を得る工程、
該溶剤抽出物から溶剤を除去して、固形分としての甘草加水分解抽出物を得る工程、
を含む方法によって得られた甘草加水分解抽出組成物の製造方法である。
【0043】
本願発明での加水分解処理とは、亜臨界処理による抽出もしくは酸加水分解での抽出のいずれかである。このいずれかの抽出により、甘草からグリチルレチン酸およびリクイリチゲニンの2成分、もしくはグリチルレチン酸、リクイリチゲニンおよびイソリクイリチゲニンの3成分を含む抽出組成物を得ることができるのである。
【0044】
ここで亜臨界処理による抽出および酸加水分解処理による加水分解について、説明をする。
【0045】
本発明における加水分解反応に用いる水は、高温の水処理であれば液体状態でも気体状態でも利用することができる。温度は望ましくは100℃以上であり、望まれる反応場としては気体よりも液体状態の方が反応は進みやすいので、密閉に近い容器で強制的に液体の状態にしたいわゆる亜臨界の状態の水の使用が好ましい。
【0046】
亜臨界処理とは、所定温度及び圧力の条件下で亜臨界状態にした亜臨界流体と抽出原料とを接触させることにより、抽出用原料から所定の成分を抽出するものである。例えば、水は、圧力22.12MPa、温度374.15℃まで上げると液体でも気体でもない状態を示す。この点を水の臨界点といい、臨界点より低い温度・圧力の熱水を亜臨界水という。亜臨界水は、誘電率低下とイオン積の向上により、優れた成分抽出作用と加水分解作用を有する。
【0047】
より具体的には金属やセラミックスなどの耐圧容器に甘草の植物体と抽出剤である水を入れて、密閉状態に近い状態にし、亜臨界状態(温度:100℃以上、圧力:飽和蒸気圧以上)で、一定時間以上行うことで抽出させることを亜臨界処理による加水分解処理した抽出物(亜臨界による加水分解処理物)としている。
【0048】
本発明に用いられる甘草は、学名:Glycyrrhiza uralensisとして知られるものである。さらにそれに加えて、Glycyrrhiza acanthocarpa、Glycyrrhiza aspera、Glycyrrhiza astragalina、Glycyrrhiza bucharica、Glycyrrhiza echinata、Glycyrrhiza eglandulosa、Glycyrrhiza foetida、Glycyrrhiza foetidissima、Glycyrrhiza glabra、Glycyrrhiza gontscharovii、Glycyrrhiza iconica、Glycyrrhiza inflata、Glycyrrhiza korshinskyi、Glycyrrhiza lepidota、Glycyrrhiza pallidiflora、Glycyrrhiza squamulosa、Glycyrrhiza triphylla、Glycyrrhiza yunnanensisといった種も本発明の処理対象である。本発明の抽出成分の前駆体である配糖体は参考文献「(K.Kondo et al., Biol. Pharm. Bull. 30(2007)1271」のように一般的に産地、種を問わず全ての甘草に含まれるものであるから本発明になんら甘草種は限定されない。部位についてはグリチルリチンが豊富に含まれるとする根部またはストロン部、もしくは根、ストロンを含む全草を使用することがもっとも望ましい。
【0049】
また、用いる甘草原料については採取したままの含水物でも、もしくは長期保存するために乾燥したものでもいずれも用いることができる。形状についても通常一般的に入手できる棒状、輪切り、刻み、粉末など、あらゆる形状を使用することができる。
【0050】
亜臨界処理に用いる抽出剤は、水以外に、例えばエチレン、エタン、プロパン、二酸化炭素、メタノール、エタノール、及びそれらの混合物が挙げられる。これらの中で、安全性の観点から水を用いるのが最も好ましい。
【0051】
甘草の亜臨界処理を行うための温度は、160−200℃の間で行うことが望ましい。この温度範囲にすることにより、グリチルリチンからグリチルレチン酸を生成しやすくし、かつ、フラボイノド配糖体からフラボノイド非配糖体を生成しやすくなるからである。亜臨界処理の温度が160℃未満では、グリチルリチンからグリチルレチン酸およびフラボイノド配糖体からフラボノイド非配糖体を生成させることが難しい。亜臨界処理の温度が200℃を越えると、生成されたグリチルレチン酸およびフラボノイド非配糖体がさらに過分解を起こしてしまい、グリチルレチン酸およびフラボノイド非配糖体としての生成量を減少させてしまうのである。
【0052】
甘草の亜臨界の処理圧力は、各温度の飽和蒸気圧以上(その一例としては、160℃のときには、0.63MPa以上、200℃以上の時には1.6MPa以上)で行うことが望ましい。この圧力にすることにより、グリチルリチンからグリチルレチン酸を生成しやすくし、フラボイノド配糖体からフラボノイド非配糖体を生成しやすくなるのである。亜臨界の処理圧力は、各温度の飽和蒸気圧未満では、グリチルリチンからグリチルレチン酸およびフラボイノド配糖体からフラボノイド非配糖体を生成させることが難しいし、処理時間を要することもある。亜臨界の処理の圧力の上限は特に定められないが、高圧装置の仕様上、20−30MPaあたりに抑えることが望ましい。
【0053】
甘草の亜臨界の処理時間は、5−30分の間で行うことが望ましい。この処理時間の範囲にすることにより、グリチルリチンからグリチルレチン酸を生成しやすくし、フラボイノド配糖体からフラボノイド非配糖体を生成しやすくなるのである。亜臨界の処理時間が5分未満では、グリチルリチンからグリチルレチン酸およびフラボイノド配糖体からフラボノイド非配糖体を生成させることが難しい。亜臨界の処理時間が30分を越えると、生成されたグリチルレチン酸、フラボノイド非配糖体がさらに過分解をしてしまい、フラボノイド非配糖体としての生成量を減少させてしまうのである。
【0054】
このとき、甘草の亜臨界処理による加水分解条件としては、処理温度は、160−200℃、処理圧力は、各温度の飽和蒸気圧以上、処理時間は、5−30分で行うことが望ましいのである。この条件で行うことで、グリチルリチンからグリチルレチン酸を生成しやすくし、フラボイノド配糖体からフラボノイド非配糖体を生成しやすくなるのである。
【0055】
亜臨界処理を行った後、得られた加水分解物を乾燥し、亜臨界処理での加水分解残渣を得る。もしくは亜臨界処理を行った後、固液分離を行い、亜臨界での加水分解処理液(以降、亜臨界処理液と称する。)と亜臨界処理での加水分解残渣(以降、亜臨界残渣と称する。)を回収する。もしくは亜臨界処理を行った後、固液分離を行わず、得られた加水分解処理物(即ち、亜臨界処理液と亜臨界残渣の混合物)を回収する。
【0056】
亜臨界処理を行った後、得られた加水分解物を乾燥し、亜臨界残渣を得るには、一般的な乾燥方法を用いることができ、自然放置はもちろんのこと、加熱系である伝熱乾燥、内部発熱乾燥、非加熱系である凍結乾燥、真空乾燥、吸引乾燥、加圧乾燥、超音波乾燥等が可能である。一般的に簡便なオーブン、恒温槽を用いて乾燥することももちろん許容される。
【0057】
亜臨界処理を行った後で得られる加水分解処理物の固液分離を行うことなく、そのまま加水分解処理物を回収し、次の工程である溶剤抽出処理に供してもよく、あるいは、亜臨界処理を行った後、固液分離を行い、亜臨界残渣を得てもよい。最終産物を効率的に得る観点から、固液分離を行った方が好ましい。亜臨界処理を行った後、固液分離を行い、亜臨界残渣を得るには一般的な固液分離方法により行うことができ、具体的には、ろ紙を用いたろ過、遠心分離、デカンテーション、スクリュープレス、ローラープレス、ロータリードラムスクリーン、ベルトスクリーン、振動スクリーン、多重板振動フィルター、真空脱水、加圧脱水、ベルトプレス、遠心濃縮脱水、多重円板脱水のいずれかで行うことができるのである。
【0058】
固液分離を行って得られた亜臨界残渣は、固体成分と液体成分との混合物である。この亜臨界残渣はそのまま次の溶剤抽出処理に供することもできるが、亜臨界残渣の溶剤抽出処理を効率的に行うために、該残渣を乾燥させることが望ましい。亜臨界残渣を乾燥により固体化させるには、自然放置はもちろんのこと、加熱系である伝熱乾燥、内部発熱乾燥、非加熱系である凍結乾燥、真空乾燥、吸引乾燥、加圧乾燥、超音波乾燥等、一般的な乾燥手段が用いることが可能である。一般的に簡便なオーブン、恒温槽を用いて乾燥することももちろん許容される。
【0059】
乾燥した亜臨界残渣はそのまま次工程である溶剤抽出処理に供することもできるが、より好ましくは粉砕することが望ましい。この亜臨界残渣を粉砕する手段としては、単なる乾燥凝集体を手動、もしくは機械的な方法でほぐす程度のものでもよいし、抽出工程の効率を上げるため比較的細かな粉体が得られるミル、ミキサー、ボールミル等がより望ましい。
【0060】
亜臨界残渣を乾燥させた後、粉砕させて亜臨界処理による亜臨界残渣の粉砕物を得る。この粉砕物に溶剤を加え、室温で、1−3時間攪拌させて、溶剤抽出を行い、濃縮された亜臨界処理による甘草加水分解組成物を得ることができる。このとき、溶剤は、水、アルコール、有機溶剤のいずれかを用いることか、あるいはこれらを併用して用いることができる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、ブチレングリコールのいずれかを用いることができる。また、有機溶媒としては、アセトンなどのケトン類、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、アセトニトリル及びエステル類、エーテル類、炭化水素類などを用いることができる。
【0061】
亜臨界残渣に用いられる溶剤は、水、アルコールのいずれかを用いることが望ましい。これらの溶剤は、前述の粉砕物から効率よく抽出することができ、得られた抽出物の安全性が確保されるからである。亜臨界残渣に用いられる溶剤は、エタノール、メタノールのいずれかを用いることがより望ましいのである。
【0062】
亜臨界残渣に溶剤を加えた溶液の攪拌時間は、1−3時間で行うことが望ましい。この範囲の時間で攪拌させることで、グリチルレチン酸とフラボノイド非配糖体の共存組成物の収量が大きくさせることができるのである。攪拌時間が1時間未満では、グリチルレチン酸とフラボノイド非配糖体の共存組成物の収量が小さくなることがある。また、攪拌時間が3時間を越えても、前述の収量を大きくすることができなくなるからである。また上述のようなバッチ式による溶剤抽出以外にも、フロー式による連続的な溶剤抽出方法も用いることができることは言うまでもない。
【0063】
攪拌を終えた溶液から前述と同様の固液分離などの手段で得られた上澄み溶液から、溶剤を除去して加水分解で得られた甘草の加水分解組成物を得る。その条件としては、自然放置はもちろんのこと、加熱系である伝熱乾燥、内部発熱乾燥、非加熱系である凍結乾燥、真空乾燥、吸引乾燥、加圧乾燥、超音波乾燥等、一般的な乾燥手段が用いることが可能である。一般的に簡便なオーブン、恒温槽を用いて乾燥することももちろん許容される。
【0064】
亜臨界処理による加水分解で得られた甘草の加水分解組成物は、グリチルレチン酸及びその塩とフラボノイド非配糖体の共存組成物であり、具体的には、グリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)およびフラボノイド非配糖体であるリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)の2成分、もしくはグリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)、フラボノイド非配糖体であるリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)およびフラボノイド非配糖体であるイソリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分C)の3成分を含む抽出物である。
【0065】
亜臨界処理による加水分解で得られた甘草の加水分解組成物は、グリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)が抽出物中の重量比率で0.5重量%以上、20重量%以下およびリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)が抽出物中の重量比率で1.5重量%以上、25重量%以下であり、かつ、抽出成分Aと抽出成分Bの合計量が抽出物中の重量比率で2.0重量%以上、45重量%以下である甘草(学名Glycyrrhiza)からの抽出組成物である。
【0066】
また、グリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)が抽出物中の重量比率で0.5重量%以上、20重量%以下およびリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)が抽出物中の重量比率で1.5重量%以上、25重量%以下、イソリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分C)が抽出物中の重量比率で0.2重量%以上、10重量%以下であり、かつ、抽出成分Aと抽出成分Bの抽出成分Cの合計量が抽出物中の重量比率で2.2重量%以上、55重量%以下である甘草(学名Glycyrrhiza)からの抽出組成物である。
【0067】
これは、亜臨界による加水分解は、従来技術である溶剤抽出および熱水抽出に比べ、甘草中の配糖体の加水分解を短時間で、効率よく反応させて、グリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)およびフラボノイド非配糖体であるリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)およびイソリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分C)を高収率で生成させて、抽出成分Aと抽出成分Bとの合計量が抽出成分中の重量比率で一定量以上である2.0重量%以上もしくは、抽出成分Aと抽出成分Bと抽出成分Cの合計量が抽出成分中の重量比率で一定量以上である2.2重量%以上を確実に得ることができるのである。また、上記の抽出物中の抽出成分の上限は、実験を積み重ねた結果から得られた数値である。
【0068】
亜臨界残渣のアルコール抽出物を乾燥させた最終的な成分組成は、グリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)が抽出物中の重量比率で2.0重量%以上、20重量%以下およびリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)が抽出物中の重量比率で2.0重量%以上、25重量%以下であり、かつ、抽出成分Aと抽出成分Bの合計量が抽出物中の重量比率で4.0重量%以上、45重量%以下である甘草(学名Glycyrrhiza)からの抽出組成物を得ることを可能としている。
【0069】
ただし、使用する甘草や抽出操作にバラツキが生じることがあり、グリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)が抽出物中の重量比率の上限は、17重量%以下、リクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)が抽出物中の重量比率の上限は7.0重量%以下、かつ、抽出成分Aと抽出成分Bの合計量が抽出物中の重量比率の上限は、24重量%以下であることがある。この上限であったとしても、機能性の発現には影響を与えない。
【0070】
亜臨界残渣のアルコール抽出物を乾燥させた最終的な成分組成は、グリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)が抽出物中の重量比率で2.0重量%以上、20重量%以下、リクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)が抽出物中の重量比率で2.0重量%以上、25重量%以下、イソリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分C)が抽出物中の重量比率で0.5重量%以上、10重量%以下であり、かつ、抽出成分Aと抽出成分Bの合計量が抽出物中の重量比率で4.5重量%以上、55重量%以下である甘草(学名Glycyrrhiza)からの抽出組成物を得ることを可能としている。
【0071】
ただし、使用する甘草や抽出操作のバラツキが生じることがあり、グリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)が抽出物中の重量比率の上限は、17重量%以下、リクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)が抽出物中の重量比率の上限は7.0重量%以下、イソリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分C)が抽出物中の重量比率の上限は、10重量%以下であり、かつ、抽出成分Aと抽出成分Bと抽出成分Cの合計量が抽出物中の重量比率の上限は、27重量%以下となることがある。この上限であったとしても、機能性の発現には影響を与えない。
【0072】
亜臨界残渣のメタノール抽出物を乾燥させた最終的な成分組成は、グリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)が抽出物中の重量比率で8.0重量%以上、20重量%以下およびリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)が抽出物中の重量比率で2.0重量%以上、25重量%以下であり、かつ、抽出成分Aと抽出成分Bの合計量が抽出物中の重量比率で10.0重量%以上、45重量%以下である甘草(学名Glycyrrhiza)からの抽出組成物を得ることを可能としている。
【0073】
さらに、亜臨界残渣のメタノール抽出物を乾燥させた最終的な成分組成は、グリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)が抽出物中の重量比率で8.0重量%以上、20重量%以下、リクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)が抽出物中の重量比率で2.0重量%以上、25重量%以下、イソリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分C)が抽出物中の重量比率で0.5重量%以上、10重量%以下であり、かつ、抽出成分Aと抽出成分Bの合計量が抽出物中の重量比率で10.5重量%以上、55重量%以下である甘草(学名Glycyrrhiza)からの抽出組成物を得ることを可能としている。
【0074】
亜臨界残渣のエタノール抽出物を乾燥させた最終的な成分組成は、グリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)が抽出物中の重量比率で2.0重量%以上、20重量%以下およびリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)が抽出物中の重量比率で2.0重量%以上、25重量%以下であり、かつ、抽出成分Aと抽出成分Bの合計量が抽出物中の重量比率で4.0重量%以上、45重量%以下である甘草(学名Glycyrrhiza)からの抽出組成物を得ることを可能としている。
【0075】
さらに、亜臨界残渣のエタノール抽出物を乾燥させた最終的な成分組成は、グリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)が抽出物中の重量比率で8.0重量%以上、20重量%以下、リクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)が抽出物中の重量比率で2.0重量%以上、25重量%以下、イソリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分C)が抽出物中の重量比率で0.5重量%以上、10重量%以下であり、かつ、抽出成分Aと抽出成分Bの合計量が抽出物中の重量比率で10.5重量%以上、55重量%以下である甘草(学名Glycyrrhiza)からの抽出組成物を得ることを可能としている。
【0076】
アルコール抽出による甘草の抽出物を行うのは、共存抽出物であるグリチルレチン酸およびフラボノイド非配糖体を溶解しやすく、結果として抽出物の収率を高めやすくなりやすいからである。アルコールの中でもエタノールもしくはメタノールを用いることが望ましく、エタノールもしくはメタノールは、グリチルレチン酸およびフラボノイド非配糖体だけでなく、グリチルレチン酸の塩およびフラボノイド非配糖体の塩も溶解させやすいので、結果として、抽出物の収率を高めやすくなりやすいからである。
【0077】
次に酸加水分解による加水分解について、説明をする。
バキュームチューブに甘草の植物体と酸を加えて、減圧下状態にし、オイルバス中に浸けることで酸加水分解による加水分解反応をさせることで酸加水分解による加水分解処理した抽出物(酸加水分解による加水分解処理物)が得られる。
【0078】
このとき、甘草の植物体に加える酸は、塩酸、硝酸、硫酸、スルホン酸、カルボン酸および前述の酸を2種類以上混合した酸を用いることができる。酸の濃度は、3−40重量%であることが望ましい。この範囲の酸の濃度であれば、グリチルリチンからグリチルレチン酸を生成しやすくし、フラボノイド配糖体からフラボノイド非配糖体を生成しやすいからである。酸の濃度が3%未満では、酸加水分解が起こりにくいので、フラボノイド非配糖体が生成されにくくなる。また、酸の濃度が40%を越えると、生成したグリチルレチン酸、フラボノイド非配糖体がさらに酸加水分解されてしまい、結果的に、グリチルレチン酸、フラボノイド非配糖体の生成量を減少させてしまうことがある。
【0079】
酸加水分解反応の減圧は、0.00001−0.004MPaの範囲で行うことが望ましい。減圧を前述の範囲にすることで、グリチルリチンからグリチルレチン酸を生成しやすくし、フラボノイド配糖体をフラボノイド非配糖体に生成しやすくなるからである。
【0080】
酸加水分解反応のオイルバス温度は、80−120℃の範囲にすることが望ましい。オイルバスの温度を前述の範囲にすることで、グリチルリチンからグリチルレチン酸を生成しやすくし、フラボノイド配糖体からフラボノイド非配糖体を生成させやすくなるからである。オイルバス温度が80℃未満では、グリチルリチンからグリチルレチン酸およびフラボノイド配糖体をフラボノイド非配糖体に生成し難くなるからである。オイルバス温度が120℃を越える場合には、生成したグリチルレチン酸およびフラボノイド非配糖体がさらに酸加水分解されてしまい、結果的に、グリチルレチン酸、フラボノイド非配糖体の生成量を減少させてしまうことがある。
【0081】
酸加水分解反応の反応時間は、0.5−5時間の範囲で行うことが望ましい。反応時間を前述の範囲にすることで、グリチルリチンからグリチルレチン酸を生成しやすくし、フラボノイド配糖体をフラボノイド非配糖体に生成させやすくなるからである。反応時間が0.5時間未満では、グリチルリチンからグリチルレチン酸およびフラボノイド配糖体をフラボノイド非配糖体に生成し難くなるからである。反応時間が5時間を越える場合には、生成したグリチルレチン酸、フラボノイド非配糖体がさらに酸加水分解されてしまい、結果的に、グリチルレチン酸、フラボノイド非配糖体の生成量を減少させてしまうことがある。
【0082】
酸加水分解による加水分解処理物を濃縮乾固させて、溶剤により抽出を行う。溶剤抽出後、固液分離を行い、ろ液を回収することで酸加水分解物を得る。このとき、溶剤は、水、アルコール、有機溶剤のいずれかを用いるか、あるいはこれらを併用して用いることができる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、ブチレングリコールのいずれかを用いることができる。また、有機溶媒としては、アセトンなどのケトン類、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、アセトニトリル及びエステル類、エーテル類、炭化水素類などを用いることができる。
【0083】
甘草の酸加水分解による加水分解抽出に用いられる溶剤は、水、アルコールのいずれかを用いることが望ましい。これらの溶剤は、前述の粉砕物から効率よく抽出することができ、得られた抽出物の安全性が確保されるからである。さらに、甘草の亜臨界による加水分解抽出に用いられる溶剤は、エタノール、メタノールのいずれかを用いることがより望ましいのである。
【0084】
このとき、固液分離は、一般的な方法により行うことができ、具体的には、ろ紙を用いたろ過、遠心分離、デカンテーション、スクリュープレス、ローラープレス、ロータリードラムスクリーン、ベルトスクリーン、振動スクリーン、多重板振動フィルター、真空脱水、加圧脱水、ベルトプレス、遠心濃縮脱水、多重円板脱水のいずれかで行うことができるのである。
【0085】
酸加水分解による加水分解で得られた甘草の加水分解組成物は、グリチルレチン酸及びその塩とフラボノイド非配糖体の共存組成物であり、具体的には、グリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)およびフラボノイド非配糖体であるリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)の2成分、もしくはグリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)、フラボノイド非配糖体であるリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)およびフラボノイド非配糖体であるイソリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分C)の3成分を含む抽出物である。
【0086】
酸加水分解による加水分解で得られた甘草の加水分解組成物は、グリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)が抽出物中の重量比率で0.5重量%以上、20重量%以下およびリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)が抽出物中の重量比率で1.5重量%以上、25重量%以下であり、かつ、抽出成分Aと抽出成分Bの合計量が抽出物中の重量比率で2.0重量%以上、45重量%以下である甘草(学名Glycyrrhiza)からの抽出組成物である。
【0087】
また、グリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)が抽出物中の重量比率で0.5重量%以上、20重量%以下およびリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)が抽出物中の重量比率で1.5重量%以上、25重量%以下、イソリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分C)が抽出物中の重量比率で0.2重量%以上、10重量%以下であり、かつ、抽出成分Aと抽出成分Bの抽出成分Cの合計量が抽出物中の重量比率で2.2重量%以上、55重量%以下含有してなる甘草(学名Glycyrrhiza)からの抽出組成物である。
【0088】
これは、酸加水分解による加水分解は、従来技術である溶剤抽出および熱水抽出に比べ、甘草の配糖体の加水分解を短時間で、効率よく反応させて、グリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)およびフラボノイド非配糖体であるリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)およびイソリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分C)を高収率で生成させて、抽出成分Aと抽出成分Bとの合計量が抽出成分中の重量比率で一定量以上である2.0重量以上もしくは、抽出成分Aと抽出成分Bと抽出成分Cの合計量が抽出成分中の重量比率で一定量以上である2.2重量以上を確実に得ることができるのである。
【0089】
甘草の加水分解組成物は、グリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)が抽出物中の重量比率で0.5重量%以上およびリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)が抽出物中の重量比率で1.5重量%以上であり、かつ、抽出成分Aと抽出成分Bの合計量が抽出物中の重量比率で2.0重量%以上である2成分からなる甘草(学名Glycyrrhiza)からの抽出組成物であることが好ましい。この2成分からなる甘草の加水分解組成物は、抗酸化性作用を十分に発揮させることができるからである。前述の2成分からなる甘草の加水分解組成物は、亜臨界処理、酸加水分解のどちらの加水分解からも得ることができるのである。
【0090】
また、甘草の加水分解組成物は、グリチルレチン酸及びその塩(抽出成分A)が抽出物中の重量比率で0.5重量%以上およびリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分B)が抽出物中の重量比率で1.5重量%以上、イソリクイリチゲニン及びその塩(抽出成分C)が抽出物中の重量比率で0.2重量%以上であり、かつ、抽出成分Aと抽出成分Bの抽出成分Cの合計量が抽出物中の重量比率で2.2重量%以上含有である甘草からの抽出組成物であることが好ましい。この3成分からなる甘草の加水分解組成物は、抗酸化性作用を十分に発揮させることができるからである。前述の3成分からなる甘草の加水分解組成物は、亜臨界処理、酸加水分解処理のどちらからも得ることができるのである。
【実施例】
【0091】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0092】
抽出物の作製
実施例1
容積2Lの耐圧容器に、市販の東北甘草の刻みの乾燥品(学名:Glycyrrhiza uralensis;以下、単に「甘草」と称する。)50g、水1000gを入れて、処理温度:180℃、処理圧力:1.0MPa、処理時間10分間で亜臨界処理を行った。
【0093】
亜臨界処理を行った後、固液分離(アドバンテック製セルロースろ紙5Aによる吸引ろ過)により亜臨界処理液と亜臨界残渣を回収した。この亜臨界残渣を乾燥せしめ、ミル(象印マホービン(株)製ミルつきミキサーBM-RS08型付属のミル)にて粉砕して、亜臨界残渣の粉砕物を得た。
【0094】
前述の亜臨界残渣の粉砕物1gをメタノール30mLとともにビーカーに入れて、室温で1時間攪拌させて、1回目のメタノール抽出を行った。メタノール抽出をした残渣の粉砕物を固液分離(アドバンテック製セルロースろ紙5Cによる吸引ろ過)後、1回目のろ液を回収し、固形物については再度メタノール30mLで2回目のメタノール抽出を行った。2回目のろ液を固液分離(アドバンテック製セルロースろ紙5Cによる吸引ろ過)により回収して1回目のろ液と一緒にしてメスフラスコ(100mL)に入れ、メタノールで定容して、亜臨界残渣中の成分分析及び機能性評価用溶液を作製した。これを以後、亜臨界処理による加水分解処理溶液と呼ぶ。かかる加水分解処理溶液は、溶剤(本例ではメタノール)を用いて得られた溶剤抽出物である。さらにこの亜臨界処理による加水分解処理溶液の一部を採取し、乾燥させて固形分を得た。この固形分を最終的な亜臨界処理による加水分解抽出物と呼ぶ。抽出物あたりの各成分の重量比率を算出するため、この固形分の重量を測定した。
【0095】
実施例2−8
(ただし、実施例7は参考例である。)
実施例1と同様にして、亜臨界処理による加水分解処理溶液及び加水分解抽出物を作製した。ただし、表1に示すように、亜臨界処理の条件又は抽出溶媒の種類を変更した。
【0096】
実施例9
実施例8と同様に亜臨界処理を行った後、得られた加水分解処理物を固液分離することなく、該処理物を約20g(乾燥後の固形分が1gとなるように採取)取り出し、エタノール30mLとともにビーカーに入れて、室温で1時間攪拌させて、1回目のエタノール抽出を行った。ビーカーの内容物を固液分離後(アドバンテック製セルロースろ紙5Cによる吸引ろ過)、1回目のろ液を回収し、固形物については再度エタノール30mLで2回目のエタノール抽出を行った。2回目のろ液を固液分離(アドバンテック製セルロースろ紙5Cによる吸引ろ過)により回収して1回目のろ液と一緒にしてメスフラスコ(100mL)に入れ、エタノールで定容して、成分分析用溶液を調製した。この溶液も以後、亜臨界処理による加水分解処理溶液と呼ぶ。さらにこの亜臨界処理による加水分解処理溶液の一部を採取し、乾燥させて固形分を得た。この固形分も最終的な亜臨界処理による加水分解抽出物と呼ぶ。抽出物あたりの各成分の重量比率を算出するため、この固形分の重量を測定した。
【0097】
【表1】
【0098】
*:実施例9に関して、亜臨界処理後の加水分解処理物を分取し、そのまま溶剤抽出した。
【0099】
実施例10
(ただし、実施例10は参考例である。)
ミニ・バキュームチューブに甘草50mgを入れ、35%塩酸を3mL加え、真空ポンプにて減圧した。ミニ・バキュームチューブを110℃のオイルバスに漬け、1時間で加水分解反応させた。反応後、ミニ・バキュームチューブの内容物を濃縮乾固させ、5mLのメタノールで抽出した。メタノール抽出後、孔径0.22μmのメンブレンフィルター(アドバンテック製セルロースアセテートろ紙)にてシリンジろ過による固液分離を行った。ろ液を回収して100mLメスフラスコに入れ、メタノールで定容することで酸加水分解残渣中の成分分析及び機能性評価用溶液を作製した。これを以後、酸加水分解処理による加水分解処理溶液と呼ぶ。さらに溶液の一部を採取し、乾燥させて固形分を得た。この固形分を最終的な酸加水分解処理による加水分解抽出物と呼ぶ。抽出物あたりの各成分の重量比率を算出するため、この固形分の重量を測定した。
【0100】
実施例11
(ただし、実施例11は参考例である。)
110℃のオイルバスに浸ける時間を3時間で酸加水分解反応を行った以外は、実施例10と同じ条件で酸加水分解物処理による加水分解溶液及び加水分解抽出物を得た。
【0101】
比較例1(溶剤抽出物の作製)
甘草1gを上記と同様のミルにて粉砕し、メタノール(30mL)とともにビーカーに入れて、室温で1時間攪拌させてメタノール抽出を行い、メタノール抽出物を得た。メタノール抽出物のろ過(アドバンテック製セルロースろ紙5Cによる吸引ろ過)を行い、1回目のろ液を回収した。さらにろ過をして得られた固形物を再度メタノール30mLで1時間抽出を行い、同様なろ過を行い、2回目のろ液を回収して1回目のろ液と一緒にして、メスフラスコ(100mL)に入れ、メタノールで定容することで、成分分析及び機能性評価用溶液を作製した。これを以後、溶剤抽出液と呼ぶ。さらにこの溶液の一部を採取し、乾燥させて固形分を得た。この固形分を最終的な溶剤抽出物と呼ぶ。抽出物あたりの各成分の重量比率を算出するため、この固形分の重量を測定した。
【0102】
比較例2(熱水抽出物の作製)
甘草1gを上記と同様のミルにて粉砕し、水50mLとともにビーカーに入れて、温度80℃で1時間攪拌させて熱水による抽出を行い、ろ過(アドバンテック製セルロースろ紙5Aによる吸引ろ過)を行い、1回目のろ液を回収した。さらにろ過後の固形物に再度水50mL加水し、温度80℃で1時間攪拌させて抽出を行い、同様なろ過を行い、2回目のろ液を回収して1回目のろ液と一緒にして、メスフラスコ(200mL)に入れ、水で定容することで成分分析及び機能性評価用溶液を作製した。これを以後、熱水抽出液と呼ぶ。さらに溶液の一部を採取し、乾燥させて固形分を得た。この固形分を、最終的な熱水抽出物と呼ぶ。抽出物あたりの各成分の重量比率を算出するため、この固形分の重量を測定した。
【0103】
試験例1(抽出成分の分析)
亜臨界処理による加水分解処理溶液、酸加水分解処理による加水分解処理溶液、溶剤抽出液、熱水抽出液について、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて各成分を分析した。
【0104】
測定装置
Shimadzu社製LC−2010−HT
測定条件
カラム:COSMOSIL MS−II Waters(ナカライテスク):φ4.6×250mm
移動層:0.02 %リン酸:アセトニトリル=62:38→0.02 %リン酸:アセトニトリル=10:90
カラム温度:40℃
UV検出:270nm(0−10分)/254nm(10分−30分)
導入量:20μL
流量:0.4mL/分(0−17分)/0.6mL/分(17分−30分)
分析時間:30分
【0105】
前述の測定装置及び測定条件にて、実施例1−11及び比較例1−2で得られた各処理溶液・抽出液中の成分濃度測定を行い、液量をかけて重量に換算した。次いで先に求めた各抽出物の固形分量との重量比率を求めた。このとき、重量比率を求めたのは、グリチルレチン酸及びその塩の抽出物中の重量比率、リクイリチゲニン及びその塩の抽出物中の重量比率、イソリクイリチゲニン及びその塩の抽出物中の重量比率の3種類であり、それぞれの測定結果については、表2に示した。なお、表2では、グリチルレチン酸及びその塩、リクイリチゲニン及びその塩、イソリクイリチゲニン及びその塩を測定したのであるが、表記としては、グリチルレチン酸、リクイリチゲニン、イソリクイリチゲニンと略して示した。
【0106】
【表2】
【0107】
実施例1−11では、グリチルレチン酸(抽出成分A)が抽出物中の重量比率で0.7重量%以上、リクイリチゲニン(抽出成分B)が抽出物中の重量比率で1.5重量%以上の収量となっている。実施例1−6および実施例8−11では、イソリクイリチゲニン(抽出成分C)が抽出物中の重量比率で0.2重量%以上の収量となっている。
【0108】
また、実施例1−11においては、抽出成分Aと抽出成分Bとの合計量が抽出物中の重量比率で2.0重量%以上である共存抽出組成物である。さらに、実施例1−11においては、抽出成分Aと抽出成分Bと抽出成分Cとの合計量が抽出物中の重量比率で2.2重量%以上である共存抽出組成物である。実施例8と実施例9との比較から、加水分解処理物の固液分離を実施しなくても所望の成分が得られること、及び固液分離を実施した方が所望の成分をより高い収量、即ちより高い収率で得ることができることが分かる。
【0109】
それに対して、比較例1−2は、グリチルレチン酸(抽出成分A)が抽出物中の重量比率で0.5重量%未満、リクイリチゲニン(抽出成分B)が抽出物中の重量比率で1.5重量%未満の収量であり、抽出成分Aと抽出成分Bとの合計量が抽出物中の重量比率で2.0重量%未満である共存抽出組成物である。
【0110】
さらに、比較例1−2は、グリチルレチン酸(抽出成分A)が抽出物中の重量比率で0.5重量%未満、リクイリチゲニン(抽出成分B)が抽出物中の重量比率で1.5重量%未満、イソリクイリチゲニン(抽出成分C)が抽出物中の重量比率で0.5重量%未満の収量であり、抽出成分Aと抽出成分Bと抽出成分Cとの合計量が抽出物中の重量比率で2.2重量%未満である共存抽出組成物である。
【0111】
試験例2(抗酸化評価試験)
上記の実施例及び比較例で得られた亜臨界処理による加水分解処理溶液、溶剤抽出液及び熱水抽出液の抗酸化評価試験を行った。
【0112】
抗酸化評価試験としては、ラジカル発生剤であるAAPH (2,2'−Azobis[2−amidinopropane] dihydrochloride)が発生する活性酸素が蛍光物質フルオレセインを分解し、その蛍光強度を経時的に測定することによって、その減少曲線の面積を算出し、標準物質と比較することによって行った。
【0113】
上記の処理溶液等に抗酸化物質が存在すれば活性酸素を消去するため、フルオレセイン分解速度が遅延する。これを抗酸化物質の標準物質である水溶性ビタミンEのトロロックス(Trolox: 6−Hydroxy−2,5,7,8−tetrametylchroman−2−carboxylic acid)存在下のフルオレセイン分解速度の遅延度合いと比較し、単位としてTE(Trolox Equivalent:水溶性ビタミンE相当量)として算出される。この算出された数値が大きければ、上記の処理溶液等の抗酸化能が大きいということになる。
【0114】
1.サンプルの準備
実施例1−8及び比較例1−2で得られた、亜臨界処理による加水分解処理溶液、溶剤抽出液、熱水抽出液を用意した。なお、熱水抽出液に関しては、一度乾固させて90%メタノールに溶解したものを使用した。
【0115】
2.抗酸化能の測定
1.で準備した試験サンプル(1mL)を乾固させて、アセトン:水:酢酸(70:29.5:0.5)の混合液(1mL)にて再溶解したもの(20μL)、100μMのトロロックス水溶液を適時希釈した希釈溶液(20μL)、ブランク(アセトン:水:酢酸(70:29.5:0.5)の混合液(20μL))をマイクロプレートに分注し、94.4nMフルオレセインナトリウム塩(200μL)を添加して、空気下の恒温器内で37℃にて30分振とうした。31.7mMのAAPH(75μL)を添加し、蛍光プレートリーダーTECMAN InfiniteF200を用いて励起波長Ex485nm、蛍光波長Em538nmで2分おきに、AAPH添加から90分後までの蛍光強度を測定した。
【0116】
3.評価結果
実施例1−8及び比較例1−2における抗酸化値は、各水準の抽出物量による偏りを補正するため、抽出物量当たりのTE (μmol TE/g)として換算した。各サンプルの抗酸化値の結果を表3に示した。
【0117】
【表3】
【0118】
この結果より、亜臨界処理による加水分解抽出物は、溶剤抽出物および熱水抽出物と比較して、抗酸化能が高いことが確認された。
【0119】
参考までにアメリカ農務省(USDA)が推奨するORAC数値は1日あたり3500μmolTEである。この値を甘草の抽出物で摂取しようとすると比較例1では約1.5g摂取が必要である一方、実施例4の抽出物では約0.8g摂取すれば良いことになり、亜臨界処理による加水分解抽出物であれば少量の摂取の必要で足りるといえるのである。
【0120】
試験例3(腸モデル吸収性評価)
亜臨界処理による加水分解抽出物、溶剤抽出物及び熱水抽出物の3種類の抽出物の吸収評価試験を行った。吸収評価試験は、腸モデルであるCaCo2細胞を用いて、該細胞の表面に前述の抽出物を載置して、抽出物の透過する量、時間により透過率を算出することにより実施し、腸モデルにおける吸収評価とした。
【0121】
1.サンプル準備
加水分解処理溶液、溶剤抽出液及び熱水抽出液はそれぞれ5mL分のサンプルを濃縮乾固し、緩衝液5mL(エタノール終濃度5%、DMSO終濃度1%)に溶解し、0.22μmフィルターろ過を行い、試験サンプルとした。なお、腸モデル吸収性評価には、実施例6、比較例1−2のものを用いた。
【0122】
2.透過率測定
細胞(腸モデル細胞)をシート状に2−3日培養し、シート上方から測定用サンプルを添加し、それぞれ120分間培養後、基底膜側から透過液を採取した。細胞シートを透過した細胞透過液を回収し10倍(一度乾固させ、50%メタノール溶液50μLに溶解)に濃縮した。各サンプルを試験例1に記載の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いる方法で測定し、各成分の濃度を定量した。細胞透過前の濃度に対する細胞透過後の濃度の割合から細胞透過率を算出した。
【0123】
3.評価結果
実施例6、比較例1−2における処理溶液等の腸モデルでの細胞透過率の結果を表4に示す。
【0124】
【表4】
【0125】
亜臨界処理による加水分解抽出物(実施例6)は、溶剤抽出物(比較例1)及び熱水抽出物(比較例2)よりも、その抽出成分の細胞透過率が高かった。なお、#は、HPLCの分析の定量限界以下であったので、0.0%と認定した。このことは、同じ成分であっても、加水分解抽出物に含まれる方がより速く生体内へ吸収されることを示唆する。この結果は、グリチルレチン酸及びその塩がフラボノイド非配糖体(本例では、リクイリチゲニン、イソリクイリチゲニンの両方を指す。)の細胞吸収を促進したためであることが推定され、このことから、亜臨界処理による加水分解抽出物に含有される成分がより生体内へ吸収されるため、抗酸化の効果が得やすくなることが推定される。
【0126】
試験例4(皮膚モデル吸収性評価)
亜臨界処理による加水分解抽出物、酸加水分解による加水分解抽出物、溶剤抽出物及び熱水抽出物の4種類の抽出物の皮膚モデル評価試験を行った。皮膚モデル評価試験は、人体の皮膚モデルである線維芽細胞を用いて行った。該当の皮膚モデルは、2層以上である層により構成されていて、表層と内層と分かれていることで擬似的な皮膚モデルとなる。この皮膚モデルの表面に前述の抽出物を載置して、皮膚モデルに抽出物を浸透させ、残存した抽出物量を回収し、対象物質を測定し、皮膚モデルにおける吸収評価とした。
【0127】
1.サンプル準備
加水分解処理溶液、溶剤抽出液及び熱水抽出液はそれぞれ5mL分のサンプルを濃縮乾固し、緩衝液5mL(エタノール終濃度5%、DMSO終濃度1%)に溶解し、0.22μmフィルターろ過を行い、試験サンプルとした。なお、皮膚モデル吸収性評価には、実施例6、実施例11、比較例1、比較例2のものを用いて行った。
【0128】
2.浸透率測定
試験はウェルの中でシート状に培養した細胞である浸透性膜を作製し、その膜にサンプルを載置して、37℃で90分間経過した後、シート上部の未浸透液およびシート下部の浸透液を回収し、それぞれの液中のグリチルレチン酸量、リクイリチゲニン量及びイソリクイリチゲニン量を試験例1と同様の方法でHPLCを用いて定量分析した。定量分析した量より下記の式を用いて、細胞内に浸透した浸透率測定を算出した。
浸透率(%)=(初期サンプル濃度−未浸透液濃度−シート下部の浸透液)/初期サンプル濃度×100
【0129】
3.評価結果
実施例6、実施例11、比較例1−2における処理溶液等の皮膚モデルでの細胞浸透率の結果を表5に示す。
【0130】
【表5】
【0131】
表5の結果より、亜臨界処理による加水分解抽出物の浸透率及び酸加水分解による加水分解抽出物の浸透率と、溶剤抽出物の浸透率及び熱水抽出物の浸透率との差が確認された。なお、#は、HPLCの分析の最小限界以下であったので、0.0%と認定した。この結果より、亜臨界処理又は酸加水分解による加水分解抽出物は、溶剤抽出物又は熱水抽出物と比較し、皮膚モデルの内層への浸透が良いことが示された。この結果より、亜臨界処理又は酸加水分解による加水分解抽出物に含有される成分が、皮膚内部に滞留しやすく、かつ、皮膚内部に浸透されるため、美容、美白の効果を得やすくなることが推定された。
【0132】
試験例5(メラニン産生抑制評価)
亜臨界処理による加水分解抽出物、溶剤抽出物、熱水抽出物の3種類の抽出物のメラニン産生抑制評価試験を行った。メラニン産生抑制試験は、メラノモデルであるメラノサイト含有3次元培養皮膚細胞(ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング社製、商品名:メラノサイト含有ヒト3次元培養表皮(LabCyte MELANO−MODEL))を用いて、該細胞の表面に前述の抽出物を載置して、メラニンの量を算出し、皮膚への美白評価とした。
【0133】
1.サンプル準備
亜臨界処理による加水分解処理溶液、溶剤抽出物、熱水抽出物のそれぞれ5mL分のサンプルを濃縮乾固し、緩衝液5mL(エタノール終濃度5%、DMSO終濃度1%)に溶解し、0.22μmフィルターろ過を行い、試験サンプル(固形分濃度:2.5mL/mL)とした。なお、メラニン産出抑制評価には、実施例6、比較例1、比較例2を用いて行った。
【0134】
2.メラノサイト培養
メラノサイト含有3次元培養皮膚を、添付の取り扱い説明書に記載の通りに、付属のメラニン産生促進培地にて約24時間事前培養を行った。事前培養後に培地交換を行った。その後、試験サンプルを50μL添加した。試験サンプルは各水準N=3で実施した。試験サンプル添加後、培養を2週間継続した。試験サンプルへの暴露開始後は、培地交換は毎日行い、試験サンプルは2日おきに交換した。比較としてサンプルの代わりに培地を50μL添加した試験も行った(対照試験)。
【0135】
3.メラニン定量
2週間の評価終了後、培地を吸引除去し、0.5mg/mL MTT(3-(4,5-di-methylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyltetrazolium bromide, yellow tetrazole)含有培地を各wellに1mLずつ添加した。その後、アッセイプレートをインキュベーター内にて37℃にて3時間静置した。MTT反応終了後、アッセイプレートを取り出し、三次元培養皮膚をPBSで3回洗浄した後、0.05mM EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を含む10mM Tris(トリスヒドロキシメチルアミノメタン)−HCl (pH6.8)、およびProteinase Kを加え、室温で1時間反応後、よく撹拌し、細胞を全て2.0mL Tubeに回収し、45℃で一晩反応させた。その後、Proteinase Kを添加し、撹拌後、45℃で4時間反応した後、500mM 炭酸ナトリウムおよび30% 過酸化水素水を加え、80℃で30分間反応した。さらにクロロホルム:メタノール (2:1)を添加し、10,000(×g:遠心力)で10分間遠心した上清を分取し、マイクロプレートリーダー(SpectraMax190, Molecular Devices)にて405 nmの吸光度を測定した。合成メラニンを用いて標準曲線を作成し、これによりメラニン量を算出した。
【0136】
4.評価結果
測定したメラニン量を表6に示した。
【0137】
【表6】
【0138】
亜臨界処理による加水分解抽出物、溶剤抽出物、熱水抽出物は、美白効果が確認された。皮膚浸透試験の結果から、亜臨界抽出物の方が早く生体内へ吸収されるため、皮膚へ添付した場合の美白効果は亜臨界処理による加水分解抽出物の方が効果を得やすいと推定される。