特許第6334524号(P6334524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レニショウ パブリック リミテッド カンパニーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334524
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】神経外科用の器具および方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20180521BHJP
   A61B 17/34 20060101ALI20180521BHJP
   A61M 25/06 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   A61M25/00 530
   A61M25/00 650
   A61B17/34
   A61M25/06 556
【請求項の数】22
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-523612(P2015-523612)
(86)(22)【出願日】2013年7月24日
(65)【公表番号】特表2015-523165(P2015-523165A)
(43)【公表日】2015年8月13日
(86)【国際出願番号】GB2013051973
(87)【国際公開番号】WO2014016591
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2016年7月21日
(31)【優先権主張番号】1213170.2
(32)【優先日】2012年7月24日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1215092.6
(32)【優先日】2012年8月24日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1307921.5
(32)【優先日】2013年5月2日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】391002306
【氏名又は名称】レニショウ パブリック リミテッド カンパニー
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ストリートフィールド ギル
(72)【発明者】
【氏名】マックスウェル ロイ ウーリー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ギル
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−507531(JP,A)
【文献】 特表2010−501233(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/133776(WO,A2)
【文献】 特表2010−540200(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0143764(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0149097(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00−25/06
A61M 5/00
A61M 37/00
A61M 39/00
A61B 17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルとガイド管とを備える神経用キットであって、前記カテーテルは、流体を脳内のターゲット部位に送達する1または複数のポートを持った末端エンドを有するチュービングの末端部分を備え、前記チュービングの末端部分は、前記ガイド管の内径よりも小さい外径を有し、および、前記カテーテルおよび前記ガイド管は、前記ターゲット部位に前記1または複数のポートが配置されるように前記カテーテルが前記ガイド管に挿入されたときに、前記ガイド管と前記カテーテルの前記チュービングの末端部分との間の前記ガイド管の末端エンド部分内にくぼみが設けられるように構成されることを特徴とする、神経用キット。
【請求項2】
前記ガイド管内に挿入されるべき前記カテーテルの限度を示す指示であって、使用のときに前記1または複数のポートを前記脳内の前記ターゲット部位に配置する指示を備え、前記カテーテルおよび前記ガイド管は、前記カテーテルが前記指示によって示される前記限度まで前記ガイド管に挿入されたときに、前記ガイド管と前記カテーテルの前記チュービングの末端部分との間の前記ガイド管の前記末端エンド部分内に前記くぼみが設けられるように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の神経用キット。
【請求項3】
前記指示は、前記カテーテル上に配置される止め具と、前記止め具によって係合されて前記カテーテルが前記ガイド管に挿入され得る限度を画定する前記ガイド管上の形成物とを備えることを特徴とする、請求項2に記載の神経用キット。
【請求項4】
前記指示は、前記カテーテル上のしるしであり、前記ガイド管への前記カテーテルの挿入の間に指定された位置で整列されるとき、前記1または複数のポートが前記ターゲット部位に配置されている前記カテーテルの位置を識別することを特徴とする、請求項2に記載の神経用キット。
【請求項5】
前記くぼみは、前記カテーテルを使用して送達された流体の前記ガイド管に沿った逆流に対するシールとして働くのに十分な体積の脳組織を保持するように寸法設定されることを特徴とする、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の神経用キット。
【請求項6】
前記くぼみは、前記ガイド管内に少なくとも0.5mm延在することを特徴とする、請求項2乃至5のいずれか一項に記載の神経用キット。
【請求項7】
前記くぼみは、前記ガイド管内に約3mm延在することを特徴とする、請求項6に記載の神経用キット。
【請求項8】
前記くぼみを画定する前記カテーテルの前記末端部分の前記外径よりも大きな外径と前記くぼみを画定する前記ガイド管の前記内径よりも小さな内径とを有するチュービングの延伸部であって、前記チュービングの延伸部の末端エンドが前記ガイド管の末端エンドから間隔を置かれるかたちで前記ガイド管内に配置されるまたは配置可能な、チュービングの延伸部を備えることを特徴とする、請求項2乃至7のいずれか一項に記載の神経用キット。
【請求項9】
前記チュービングの延伸部は、前記カテーテルの中間部分であり、前記カテーテルは、前記カテーテルの前記末端部分から中間部分に向けて増加する外径を備えることを特徴とする、請求項8に記載の神経用キット。
【請求項10】
前記内径の増加は、前記カテーテルの前記中間部分と前記末端部分との間の段であることを特徴とする、請求項9に記載の神経用キット。
【請求項11】
前記外径の増加は、前記カテーテルの前記末端部分から前記中間部分に向けてのゆるやかな増加であることを特徴とする、請求項9に記載の神経用キット。
【請求項12】
前記カテーテルの前記末端部分は、堅い無孔の先端を備えることを特徴とする、請求項2乃至11のいずれか一項に記載の神経用キット。
【請求項13】
前記カテーテルは、前記堅い無孔の先端に通じる可撓性管を備え、前記可撓性管は、前記堅い無孔の先端の直径よりも大きな直径を有することを特徴とする、請求項12に記載の神経用キット。
【請求項14】
記ガイド管の内径は、前記末端エンド部分と中間部分との間で減少することを特徴とする、請求項2乃至7のいずれか一項に記載の神経用キット。
【請求項15】
前記内径の減少は、前記ガイド管の前記中間部分と前記末端エンド部分との間の段であることを特徴とする、請求項14に記載の神経用キット。
【請求項16】
前記内径の減少は、前記ガイド管の前記末端エンド部分から前記中間部分に向けたゆるやかな減少であることを特徴とする、請求項14に記載の神経用キット。
【請求項17】
前記ガイド管の中間部分の内径および前記カテーテルの中間部分の外径は、前記カテーテルの前記中間部分が、前記ガイド管の前記中間部分内に滑り嵌めするようになっていることを特徴とする、請求項2乃至16のいずれか一項に記載の神経用キット。
【請求項18】
前記カテーテルの前記中間部分は、前記カテーテルが前記指示によって示される前記限度まで前記ガイド管に挿入されるとき、前記ガイド管の前記末端エンドが前記カテーテルが初めて前記ガイド管に係合する接触面から少なくとも0.5mmに配置されるように、位置決めされることを特徴とする、請求項17に記載の神経用キット。
【請求項19】
前記チュービングの延伸部は、前記ガイド管および前記カテーテルとは別個のさらなるチュービングであり、前記さらなるチュービングは、前記カテーテルが前記さらなるチュービングの全長にわたって延在するかたちで前記カテーテルを受容し、前記さらなる管の末端エンドが前記ガイド管から間隔を置かれその中に含まれるように前記ガイド管内に受容されるように構成されることを特徴とする、請求項8に記載の神経用キット。
【請求項20】
脳内のターゲット部位に流体を送達する1または複数のポートを持つ末端エンドを有するチュービングの末端部分を備えるカテーテルであって前記1または複数のポートが前記脳内の前記ターゲット部位に配置されるようにガイド管内に受容されるカテーテルを備える神経用デバイスであって、前記チュービングの末端部分は、前記ガイド管の内径よりも小さい外径を有し、前記ガイド管と前記カテーテルの前記チュービングの末端部分との間の前記ガイド管の末端エンド部分内にくぼみを設けように配置されることを特徴とする神経用デバイス。
【請求項21】
前記くぼみは、押し付けられた脳組織を含むことを特徴とする、請求項20に記載の神経用デバイス。
【請求項22】
所望の長さに切断され得るガイド管と、脳内のターゲット部位に流体を送達する1または複数のポートを持つ末端エンドを有するチュービングの末端部分であって前記ガイド管の内径よりも小さい外径を有する前記チュービングの末端部分を備えるカテーテルと、前記ガイド管に挿入されるべき前記カテーテルの限度を示し、使用のとき、前記脳内の前記ターゲット部位に前記1または複数のポートを配置し、前記ガイド管と前記カテーテルの前記チュービングの前記末端部分との間の前記ガイド管の末端エンド部分内にくぼみを形成する指示とを備え、前記指示は前記カテーテルの長さに沿って調節可能であることを特徴とする神経用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脳に流体を送達するための神経外科用器具に関し、より詳細には、逆流効果を減少させる改良された神経外科用器具に関する。関連の外科的インプラント方法も開示される。
【背景技術】
【0002】
対流強化送達(CED)は、マイクロ−カテーテルおよび制御された注入レートを使用して、バルクフロー(bulk flow)によって運ばれる薬物を細胞外空間中に均一に分配する、脳実質に薬物を送達する方法である。この方法は、特定の脳領域、血液脳関門のバイパスおよび副作用の制限をターゲットにすることができる、神経疾患のための幅広い治療物質を送達するのに使用され得る。
【0003】
CEDによる薬物分配は、カテーテル−組織接触面に沿ったその逆流に優先して、カテーテルの先端において細胞外空間中に注入液を押しやるのに十分な圧力勾配を確立することによって達成される。大きな臨床的に関連する体積に均一に治療薬を分配するには、流量が、脳が問題なく耐えることができる最大流量に近づく必要がある。これは、圧力勾配がカテーテルの先端から急激に降下するので、したがってバルクフローを達成するには、蠕動ポンプとして働く具体的には血管周囲隙の中の動的な細胞外の流体クリアランスと競り合いながら所望の脳体積の境界まで十分な圧力勾配を確立しなければならない。しかし、カテーテル先端における過度の流量は、結果的に、組織の破断につながり、これが一旦起こると、細胞外空間中の分配に優先して破断が広がる傾向がある。さらに、高い流量は、カテーテル−組織接触面に沿った増加された逆流に関連し、この大きさは、カテーテル挿入によって引き起こされる組織損傷の程度およびカテーテルの外側直径に関係があると思われる。
【0004】
臨床試験からは、化学性髄膜炎、創傷離開、および脊髄根炎症(irritation)を含む、くも膜下腔への注入液の逆流に直接的に起因する著しく有害な影響が報告されている。したがって、注入液の逆流を減少させることが望ましい。
【0005】
逆流は、約0.4mm以下の外径を有するカテーテルを使用して、5μl/分までの流量で灰白質に注入した場合に減少され得る。より大きな直径のカテーテルが用いられる場合、それらは、それらのまわりの環状空間への挿入のときにより大きな組織損傷を引き起こし、この低抵抗の通路を通って注入液が逆流することになる。しかし、より大きな直径(0.6mm)のカテーテルでも、組織の治癒が可能な十分な時間にわたって原位置に残されれば、その逆流する傾向は実質的に減少されることも示されている。
【0006】
やはりまた、例えば0.5μl/分で5μl/分まで段階的に20分かけてベースライン注入からゆるやかに注入レートを増加させることによって、カテーテルについての逆流の傾向が減少され得ることも知られている。この間質腔のゆるやかな拡大は、正圧および流体内容物の影響のもと、組織の流体伝導性(fluid conductivity)を増加させ、それと同時に、増加された組織圧力が、組織/カテーテル接触面に沿った組織シールを改善する働きをすることができると考えられる。白質のより大きな多孔質弾性により、白質において灰白質におけるよりも、逆流がないより高い流量の注入(10μl/分まで)が達成され得ることに注目すべきである。
【0007】
逆流を最小限に抑えることは、やはりまた、基端エンドから末端エンドに向けて減少する1または複数の段の直径を有する、(以降、「段を設けられたカテーテル」と称する)外径に段を設けられたカニューレを使用することによっても達成され得る。段は、組織を局所的に押し付けてシールを作り出すことによってカテーテル/組織接触面に沿った逆流を防止または制限することができる。段を効果的にするには、組織を押し付けることで達成される組織を封止する圧力が逆流流体からの液圧を超える必要がある。カテーテルの末端エンドから段までの長さをより長くすると、段における液圧の減少がより大きくなることになる。段の領域における組織を封止する圧力は、段を作り出す直径の変化に比例する可能性がある。しかし、これは、カニューレが挿入されるときに段の領域で起こる組織損傷に対してバランスがとられる必要がある。というのも、細胞構造の分裂は、低抵抗の通路およびより大きな流体伝導性を提供するからである。そうしたシステムの一例は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2007/024841号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6609020号明細書
【特許文献3】国際公開第2009/101397号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下により詳細に説明される特徴のうちの1または複数を有する改善された神経用器具に関する。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、カテーテルとガイド管とを備える神経外科用キットが提供される。カテーテルは、流体を脳内のターゲット部位に送達する1または複数のポートを含む末端エンドを有するチュービングの末端部分を備えることができる。チュービングの末端部分は、ガイド管の内径よりも小さい外径を有することができ、カテーテルおよびガイド管は、カテーテルがガイド管に挿入されて1または複数のポートがターゲット部位に配置されるとき、脳組織を保持するためのくぼみがガイド管とカテーテルのチュービングの末端部分との間のガイド管の末端エンド部分内に形成されるように構成され得る。
【0011】
使用のとき、そうした神経用キットは、カテーテルおよびガイド管に沿った、注入液などの流体の逆流を減少させることができる。具体的には、ガイド管およびカテーテルは、ガイド管内のくぼみが、ガイド管およびカテーテルに沿った流体の逆流に対してシールとして働く脳組織を保持するように、挿入され得る。このやり方でシールを形成すれば、上述したような段を設けられたカテーテルより優れたカテーテルを使用して送達される流体の改善された分配を提供することができることが見出されている。したがって、くぼみは、カテーテルを使用して送達される流体のガイド管に沿った逆流に対してシールとして働くのに十分な脳組織の体積を保持するように寸法設定され得る。例えば、くぼみは、ガイド管内へと少なくとも0.5mm、好ましくは約3mm延在することができる。ガイド管とカテーテルの末端部分によって画定される環状部分は、少なくとも0.1mm、好ましくは0.1〜0.5mmの幅(くぼみを形成する、内壁と外壁との間の距離)を有することができる。
【0012】
神経用カテーテルは、ガイド管内に挿入されるべきカテーテルの限度を示す指示を備え、使用のときに脳内のターゲット部位に1または複数のポートを配置することができ、カテーテルおよびガイド管は、カテーテルが指示によって示される限度までガイド管に挿入されるとき、くぼみがガイド管とカテーテルのチュービングの末端部分との間のガイド管の末端エンド部分内に形成されるように構成される。指示は、カテーテル上に配置される止め具を備えることができる。止め具は、カテーテルがガイド管に挿入され得る限度を画定する、ガイド管上の形成物に係合する。指示は、カテーテル上のしるしであってよく、ガイド管へのカテーテルの挿入の間に指定された位置で整列されるとき、1または複数のポートがターゲット部位に配置されているカテーテルの位置を識別する。指示を提供することは、使用のとき、くぼみが確実に形成される助けとなり得る。
【0013】
神経用キットは、くぼみを画定するカテーテルの末端部分の外径よりも大きな外径と、くぼみを画定するガイド管の内径よりも小さな内径とを有する、チュービングの延伸部を備えることができる。チュービングの延伸部は、チュービングの延伸部の末端エンドがガイド管の末端エンドから間隔を置かれるかたちでガイド管内に配置されるまたは配置可能である。チュービングの延伸部は、脳組織を受容するためのポケットを形成するくぼみを塞ぐことができる。
【0014】
チュービングの延伸部は、カテーテルの中間部分であってよく、カテーテルは、カテーテルの末端部分から中間部分に向けて増加する外径を備える。内径の増加は、カテーテルの中間部分と末端部分との間の段を備えることができる。あるいは、直径の増加は、カテーテルの末端部分から中間部分に向けてゆるやかに増加する。このようにして、チュービングの延伸部は、カテーテルと一体になり、それによって、カテーテルおよびガイド管とは別個のアイテムとしてチュービングの延伸部を提供するのに比べて、脳に挿入されなければならない管の数が減少される。
【0015】
チュービングの延伸部は、ガイド管の中間部分であってよく、ガイド管の内径は、末端エンド部分と中間部分の間で減少する。内径の減少は、ガイド管の中間部分と末端エンド部分の間の段であってよい。あるいは、直径の減少は、ガイド管の末端エンド部分から中間部分に向かってゆるやかに減少することもできる。このようにして、チュービングのさらなる長さは、ガイドチュービングと一体になり、それによって、カテーテルおよびガイド管とは別個のアイテムとしてチュービングの延伸部を提供するのに比べて、脳に挿入されなければならない管の数が減少される。
【0016】
チュービングの延伸部は、ガイド管およびカテーテルとは別個のさらなるチュービングであってよい。さらなるチュービングは、使用のとき、カテーテルがさらなるチュービングの全長にわたって延在するかたちでカテーテルを受容し、チュービングのさらなる長さの末端エンドがガイド管から間隔を置かれその中に含まれるようにガイド管内に受容されるように構成される。チュービングのさらなる長さを提供することによって、ガイド管内でチュービングのさらなる長さの位置を変えることでくぼみの長さが調節されることが可能になり得る。
【0017】
ガイド管の中間部分の内径およびカテーテルの中間部分の外径は、カテーテルの中間部分が、ガイド管の中間部分内に滑り嵌めするようにされ得る。
【0018】
カテーテルの末端部分は、堅い無孔の先端を備えることができる。カテーテルは、堅い無孔の先端に通じる可撓性(flexible)管を備えることができ、可撓性管は、堅い無孔の先端の直径よりも大きな直径を有する。
【0019】
少なくとも1つのシールは、システムの別個の管同士の間のギャップを封止するように提供され得る。例えば、シールは、カテーテルとガイド管との間、カテーテルと中間管との間、および/または中間管とガイド管との間に提供され得る。シールは、管のうちの1本と一体に形成される、およびまたは、例えばガイド管に連結されたハブであるシステムの管の他のものに連結された要素に係合するように構成される、先細りした部分など、管のうちの1本に連結可能な止め具と一体に形成され得る。あるいは、シールは、Oリングなどの別個の封止要素であってもよい。別個の封止要素は、カテーテルシステムのハブに押し嵌めされ得る。
【0020】
神経用キットは、カテーテルのセットを備えることができる。セットの各カテーテルは、異なる長さの堅い無孔の先端を有する。このようにして、外科医は、カテーテルのセットから、計画された手術に適切な長さの先端を有するカテーテルを選択することができる。具体的には、外科医によって選択されるカテーテルは、先端のわずかに露出される部分がガイド管と相まってくぼみを形成するようにガイド管内に延在するかたちで、ガイド管の末端エンドからターゲット部位まで延在することができる先端を有さなければならない。セットは、先端長さが、概ね等間隔で異なる、例えば先端長さの各間隔が0.5から4mmの間であってよい、カテーテルを備えることができる。長さの違いは、くぼみの長さの許容可能な変化に基づいていてよい。例えば、1から3mmの間の長さを有することができるくぼみの場合、セットのカテーテルの先端長さの間隔は、2mmであってよい。このようにして、ガイド管の末端エンドとターゲット部位との間の距離の連続体は、セットのカテーテルの最小先端長さと最大先端長さの間に収められ得る。
【0021】
カテーテルの中間部分は、カテーテルがガイド管内に指示によって示される限度まで挿入されるとき、ガイド管の末端エンドが、カテーテルがガイド管に初めに係合する接触面から少なくとも0.5mmのところに配置されるように、位置決めされ得る。
【0022】
本発明の第2の態様によれば、脳内のターゲット部位に流体を送達する1または複数のポートを含む末端エンドを有するチュービングの末端部分を備えるカテーテルであって1または複数のポートが脳内のターゲット部位に配置されるようにガイド管内に受容されるカテーテルを備える、神経用デバイスが提供される。チュービングの末端部分は、ガイド管の内径よりも小さい外径を有することができ、末端エンド部分は、ガイド管とカテーテルのチュービングの末端部分との間のガイド管の末端エンドの部分内にくぼみを形成するように配置される。
【0023】
くぼみは、押し付けられた脳組織を含むことができる。脳組織は、例えば、脳が宿主動物から除去されている場合、宿主動物から分離されてよく、または死んだ動物の脳組織であってもよい。
【0024】
本発明の第3の態様によれば、所望の長さに切断され得るガイド管と、脳内のターゲット部位に流体を送達する1または複数のポートを含む末端エンドを有するチュービングの末端部分でありガイド管の内径よりも小さい外径を有するチュービングの末端部分を備えるカテーテルと、ガイド管に挿入されるべきカテーテルの限度を示し、使用のとき、脳内のターゲット部位に1または複数のポートを配置し、ガイド管とカテーテルのチュービングの末端部分との間のガイド管の末端エンド部分内にくぼみを形成する指示を備え、指示がカテーテルの長さに沿って調節可能である、神経用キットが提供される。
【0025】
本発明の第4の態様によれば、神経外科術の方法であって、管が脳組織の部分の中心を取るように脳内に管を送達するステップと、カテーテルの末端エンドの1または複数のポートが脳内のターゲット部位に配置されるように脳内にカテーテルを位置決めするステップとを含み、カテーテルが管を使用して中心が取られた脳組織の中を通る、方法が提供される。
【0026】
このようにして、脳組織は、カテーテルおよびガイド管と相まって、カテーテルを使用して脳に送達される流体のカテーテルおよびガイド管に沿った逆流を防止することができるシールを形成する。
【0027】
方法は、カテーテルの部分を、管を使用して中心が取られた脳組織の中に通すステップを含むことができる。部分は、1または複数のポートがターゲット部位に配置されているとき、脳組織の一部が管内に留まるように、管の内径よりも小さい外径を有する。管を使用してすでに中心が取られた組織の中にカテーテルを通すことは、中心が取られた脳組織を、管の両側および管の下の脳組織に対して押し付けて封止効果を高めることができる。
【0028】
管は脳内のカテーテルの位置決めをガイドするのに使用されるガイド管であってよい。
【0029】
ガイド管を配置するステップは、脳内により堅いガイドロッドまたはガイドワイヤとともにガイド管を送達するステップを含むことができ、送達の終わりごろに、ガイド管は、それが送達されるときにガイド管が脳の部分の中心を取るように、ロッドまたはワイヤの末端エンドがガイド管の末端エンド内にそこから間隔を置いて配置される状態で、送達される。送達の終わりごろに、ガイドロッドまたはガイドワイヤは、ガイドロッドまたはガイドワイヤの末端エンドがガイド管の末端エンドに整列されるまたはそこから突出する位置から、ガイドロッドまたはガイドワイヤの末端エンドがガイド管の末端エンド内にそこから間隔を置いて配置される位置まで、動かされ得る。
【0030】
本発明の第5の態様によれば、少なくとも1本のガイド管が挿入された患者の脳の画像を取得するステップと、画像から少なくとも1本のガイド管の位置を決定するステップと、ガイド管の位置と予め計画された位置との間に有意な違いがある場合、手術計画を修正するステップとを含む方法が提供される。
【0031】
手術計画を修正するステップは、カテーテルの計画された挿入長さを変えるステップを含むことができる。例えば、カテーテルが、挿入されるべきカテーテルの限度を識別する調節可能な指示を備えるカテーテルである場合、修正は、指示の位置を調節するステップを含むことができる。あるいは、修正は、異なる全長を有するまたは異なる長さの堅い先端を有するカテーテルなど、少なくとも1本のガイド管を使用して脳に挿入される異なるカテーテルを選択するステップを含むことができる。手術計画を修正することは、取替えガイド管を患者の脳に挿入することを計画するステップを含むことができる。
【0032】
ガイド管は、MRIおよび/またはCTスキャンにおいて見ることができる材料を含むことができる。
【0033】
本発明の第6の態様によれば、患者の脳の画像を取得するステップと、患者の脳内のターゲット部位およびターゲット体積を決定するステップと、カテーテルの送達ポートがターゲット部位に配置されるように患者の脳内にカテーテルの挿入のための経路を決定するステップと、ガイド管の末端エンドがターゲット体積の概ね境界のところまたは丁度境界内に位置決めされるように、カテーテルを送達するのに必要なガイド管の長さを決定するステップと、堅い無孔の先端であってその長さがガイド管の末端エンドからターゲット部位までの長さに基づく堅い無孔の先端を有するカテーテルを製造するステップとを含む、カテーテルの製造方法が提供される。
【0034】
方法は、ガイド管に挿入されるべきカテーテルの限度を指示するための指示をカテーテル上の所定の位置に固定し、使用のときにガイド管の長さに基づいてターゲット部位に1または複数のポートを配置するステップを含むことができる。先端は、ガイド管の内径よりも小さい外径を有することができる。止め具は、カテーテルがガイド管に挿入されてターゲット部位に1または複数のポートが配置されるとき、先端の露出される基端部分をガイド管内に配置し、ガイド管と先端の基端部分との間のガイド管の末端エンド部分内にくぼみを形成するように、カテーテル上の位置に固定され得る。
【0035】
本発明の第7の態様によれば、患者データを受け取るステップと、カテーテルがガイド管に挿入されるとき、カテーテルの末端エンドにあるポートが脳内のターゲット部位に配置され、脳組織を保持するためのくぼみがガイド管とカテーテルの末端エンド部分との間のガイド管の末端エンド部分内に形成されるように、カテーテルおよびガイド管のそれぞれについての所望の長さを患者データから決定するステップと、カテーテルおよび/またはガイド管をそれぞれの所望の長さに調節するステップとを含む、カテーテルシステムの製造方法が提供される。
【0036】
ガイド管および/またはカテーテルを調節するステップは、ガイド管および/もしくはカテーテルを所望の長さに切断するステップと/または脳に挿入され得るガイド管および/もしくはカテーテルの長さを画定するガイド管および/もしくはカテーテル上にある止め具などの当接部の位置を調節するステップとを含むことができる。
【0037】
患者データは、患者の脳の画像を含むことができる。患者データは、定位固定フレーム上の位置および/またはロボットの位置など、基準点からの患者の頭蓋骨の表面の距離を含むことができる。所望の長さを決定するステップは、基準点から患者の頭蓋骨の表面までの距離を決定するステップと、測定された距離に基づいてガイド管およびカテーテルを切断するステップとを含むことができる。ガイド管およびカテーテルについての所望の長さは、患者の脳の画像から最初に決定され得る。患者の脳の(MRIおよびCTスキャンなどの)画像は、患者の頭蓋骨に連結されている、定位固定フレームなどの基準アーチファクトに対するターゲット部位の位置を測定するのに十分な精度を提供することができるが、患者の頭蓋骨の鮮明な画像を提供することはできない。したがって、脳内にガイド管およびカテーテルを配置するためのデータム(datum)として頭蓋骨を使用するカテーテルシステムの場合、頭蓋骨の表面の正確な位置を識別することが望ましい。これは、基準アーチファクトに対する頭蓋骨の表面の位置を識別するポインティングデバイスを使用することによって達成され、それによってターゲット部位と頭蓋骨の表面の相対位置が決定され得る。例えば、定位固定フレームに対する既知の位置を有するロボットは、頭蓋骨の表面に接触するように既知の長さのポインティングデバイスを制御して、そのロボットに対するしたがって定位固定フレームに対する頭蓋骨の表面の位置を決定することができる。ターゲット部位に対する頭蓋骨の表面の相対位置の決定後、ガイド管とカテーテルの長さが測定された長さに基づいて例えば切断により調節され得る。
【0038】
本発明の第8の態様によれば、患者の画像から患者の頭蓋骨に取り付けられた基準アーチファクトに対する脳内のターゲット部位の位置を決定するステップと、表面に接触するようにポインティングデバイスを使用して基準アーチファクトに対する患者の頭蓋骨の表面の位置を決定するステップと、基準アーチファクトに対するターゲット部位の位置および基準アーチファクトに対する患者の頭蓋骨の表面の位置から、患者の頭蓋骨の表面からターゲット部位までの測定された距離を決定するステップと、測定された距離に基づいた長さを有するカテーテルを用意するステップとを含む、カテーテルシステムの製造方法が開示される。
【0039】
長さは、脳に挿入されるべきカテーテルの長さであってよい。
【0040】
本発明の第9の態様によれば、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、脳に挿入されているガイド管の画像を分析させてガイド管に挿入されるカテーテルの経路を決定させる、インストラクションをそこに有するデータキャリアが提供される。
【0041】
インストラクションは、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、画像から決定されたガイド管の位置およびカテーテルの経路に基づいて、脳内の指定されたターゲット部位についてのカテーテルの所望の先端長さを決定させることができる。
【0042】
本発明の第10の態様によれば、末端エンドを有するチュービングの第1の部分を備えるカテーテル器具が提供される。使用のとき、チュービングの第1の部分の末端エンドは、脳内に埋め込まれるのが好ましい。カテーテル器具のチュービングの第1の部分は、参照によりその内容が本明細書に組み込まれている特許文献2に記載されているガイド管デバイスによって提供され得る。このガイド管デバイスは、こうしてチュービングの第1の部分を提供することができ、さらに、チュービングの第1の部分の基端エンドに取り付けられたヘッドを含むことができる。ヘッドは、ガイド管を頭蓋骨に取り付けるための1または複数の特徴を含むことができる。例えば、ヘッドは、それを頭蓋骨内に形成されたバーリング孔(burr hole)内に保持され得るようにする特徴を含むことができる。
【0043】
好ましくは、カテーテル器具は、流体を脳内のターゲット部位に送達するための1または複数のポートを備える末端エンドを有するチュービングの第2の部分をさらに備える。チュービングの第1の部分および第2の部分は、単一の一体片として形成され得る、またはインプラント処置の前もしくはその間に外科医によって組み付けられてもよい。チュービングの第2の部分は、チュービングの第1の部分の外径よりも小さい外径(OD)を有するのが好ましい。チュービングの第2の部分は、チュービングの第1の部分の内径よりも小さい外径を有するのが好ましい。使用のとき、チュービングの第2の部分は、チュービングの第1の部分の管腔とともに少なくとも部分的に配置されるのが好ましく、またチュービングの第1の部分の末端エンドから突出するのが好ましい。外側直径にある段は、このようにしてチュービングの第1の部分と第2の部分との間に形成される。チュービングの第1の部分および第2の部分は、実質的に同軸であってよい。
【0044】
くぼみまたは内部ポケットは、チュービングの第1の部分の末端エンドに形成されるのが好ましい。このくぼみは、チュービングの第2の部分を囲繞するのが好ましい。くぼみは、少なくとも部分的に、チュービングの第1の部分の内壁によって画定され得る。くぼみは、チュービングの第1の部分の管腔内に短い距離(例えば、5cm以下、より好ましくは3cm以下、より好ましくは1cm以下、より好ましくは0.5mm以下)に延在することができる。チュービングの第1の部分の末端エンドにおける穴は、くぼみの開口を画定することができる。
【0045】
使用のとき、脳組織は、くぼみまたはポケット内に配置されるのが好ましい。これは、チュービングの第1の部分を脳に挿入する間の中心を取る効果を使用することによって達成され得る。チュービングの第2の部分は、次いで、挿入処置の間、保持されている脳組織の中心を通過し得る。例えば、チュービングの第2の部分は、チュービングの第1の部分の基端エンドに挿入され、それがチュービングの第1の部分の末端エンドから出るまでチュービングの第1の部分内に通され、それによってくぼみ内に保持されていた脳組織の中心が穿孔される。この構成は、チュービングの第1の部分と、それが埋め込まれている脳組織との間の接触面に沿った逆流を減少させる流体シールを形成することが見出されている。以下に説明されるように、そうした逆流の減少は、デバイスの薬物送達性能を向上させる。
【0046】
好ましい一実施形態では、チュービングの第2の部分は、カテーテルデバイスの末端エンドとして提供される。具体的には、カテーテルデバイスは、参照により本明細書にその内容が組み込まれている、特許文献3に記載されているタイプの先端が堅いカテーテルデバイスであってよい。具体的には、カテーテルデバイスは、特許文献3の図2に示されているものに類似した形態を備えることができ、そこにおいて、(チュービングの第2の部分を形成する)堅い石英管34は、可撓性プラスチック管32の端部に部分的に挿入されている。そうした構成において、可撓性プラスチック管32は、チュービングの第1の部分内にぴったりと嵌合することができる(例えば、可撓性プラスチック管32の外径は、滑り嵌めを提供するようにそれが挿入されるガイド管デバイスの内径に合わせられ得る)。そうした一例では、可撓性プラスチック管32の末端エンドは、チュービングの第1の部分によって画定されるくぼみについての端部を形成する。堅い石英管34の末端エンドは、次いで、ガイド管デバイス内にターゲット部位へと挿入される間に、くぼみ内に保持されている組織の中心に穿孔するように構成され得る。
【0047】
本発明の好ましい実施形態は、添付の図面に描かれている。これらは、ほんの一例として提供される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1a】本発明の一実施形態による神経用器具のガイド管の斜視図である。
図1b】本発明の一実施形態による神経用器具のカテーテルの斜視図である。
図2】組み付けられた状態にある、図1a、図1bの神経用器具の図である。
図3a】組み付けられたときの、図1に示される神経用器具の断面図である。
図3b】組み付けられたときの、図1に示される神経用器具の末端エンドの断面図である。
図3c図1に示される神経用器具の止め具部分の断面図である。
図4図1に示される神経用器具のハブおよび止め具の図である。
図5a図1に示される神経用器具を脳に挿入する方法を概略的に示す図である。
図5b図1に示される神経用器具を脳に挿入する方法を概略的に示す図である。
図5c図1に示される神経用器具を脳に挿入する方法を概略的に示す図である。
図5d図1に示される神経用器具を脳に挿入する方法を概略的に示す図である。
図6】原位置にある、本発明による神経用器具の図である。
図7】くぼみを設けられたカテーテル、1mmの段を設けられたカテーテルおよび0.6mmの段を設けられたカテーテルについての、分配体積対注入体積を示すグラフである。
図8】くぼみを設けられたカテーテル、1mmの段を設けられたカテーテルおよび0.6mmの段を設けられたカテーテルについての、逆流体積対注入体積を示すグラフである。
図9】300μmのトリパンブルーが0.6%のアガロースゲルに注入された後の、(a)1mmの段を設けられたカテーテル、(b)くぼみを設けられたカテーテルおよび(c)0.6mmの段を設けられたカテーテルについての典型的な注入プロファイルを示す画像である。
図10】15mm先端を有するくぼみを設けられたカテーテルを使用して注入された後の、15,500μlの流体の分配を示す画像である。
図11】(a)くぼみを設けられたカテーテルを使用してブタの被殻にGd−DTPA(人工CSF中0.25%)を左右相称に注入したときの分配体積対注入体積のグラフ、(b)注入後のブタの脳のMRIスキャンの3D再構成、および(c)注入後のブタの脳のT1重み付きMR画像である。
図12】左側(a)および右側(b)に埋め込まれた段を設けられたカテーテルを使用して流体が注入されたブタの脳における逆流の画像である。
図13】本発明の他の実施形態による神経用器具の図である。
図14a】本発明の他の実施形態による神経用器具を脳に挿入する方法を概略的に示す図である。
図14b】本発明の他の実施形態による神経用器具を脳に挿入する方法を概略的に示す図である。
図14c】本発明の他の実施形態による神経用器具を脳に挿入する方法を概略的に示す図である。
図14d】本発明の他の実施形態による神経用器具を脳に挿入する方法を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1から図4を参照すると、神経外科用器具は、留置カテーテル1と、ガイド管2とウイング状止め具3とを備える。
【0050】
本実施形態では、ガイド管2は、カーボタン(carbothane:登録商標)で作られており、1mmの外径、および0.6mmの一定の内径を有する。その基端エンドにはハブ4がある。ハブ4は、本実施形態ではねじ切りされるより小さい直径の末端部分5と、スロット7を有するドームの形のより大きな直径の基端部分6とを含む。スロット7は、ドームを横切って直径方向に延びている。これは、図3、4に最も明確に示されている。スロット7のフロア部(図示せず)は、管2のボアの両側に、ボアの表面の継続をもたらす湾曲を有する。
【0051】
カテーテル1は、固定された長さのチュービング8と、基端エンドに、注入液をカテーテル1に注入するための注入管(図示せず)にチュービング8を取り付けるためのブーツ(boot)30とを備える。チュービング8は、その長さの大部分にわたって、本実施形態ではフッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)またはカーボタンで作られる、可撓性の長さのチュービング10と、本実施形態ではポリイミドコーティングを含む融解石英管で作られる堅い無孔の先端11とを備える。可撓性管10は、先端11が可撓性管10から6から60mmの間の固定された長さに延在するかたちで、先端11上に熱収縮されるまたは接着される。先端11は、その末端エンドに、脳内のターゲット部位に流体を送達するためのポートを備える。先端11の末端エンド19は、先端11の近位から遠位に向けて内径が増加するようにレーザーカッティングされ得る。内径の増加は、それがカテーテル1から出るときの液体の圧力の減少を生じさせ、さらに流体の速度の減少も生じさせる。末端エンド19のレーザーカッティングは、さらに、丸みのある末端エンド19を形成することができ、それによって脳への挿入の際により少ない組織損傷しか引き起こさなくなり得る。
【0052】
管10の長さは、以下に説明されるように、使用の際にガイド管2内にくぼみ14を画定するように先端11の外径よりも大きな外径を有する。本実施形態では、可撓性管10は、0.6mmの外径、0.25mmの内径を有し、先端11は、0.235mmの外径、0.15mmの内径を有する。したがって、先端11は、ガイド管2の内径よりも小さい外径を有するカテーテル1のチュービングの末端部分を形成し、カテーテルのチュービング10は、ガイド管2内に滑り嵌めされる。
【0053】
ウイング状止め具3は、カテーテル2のチュービング10に沿って調節可能に配置される。ウイング状止め具3は、止め具3がチュービング10に沿って摺動され得るようにチュービング10を受容する中央管状部分15と、中央管状部分15の両側にある2つのウイング16、17とを備える。中央管状部分15の外側直径は、末端エンド15aに向けて先細りしている。この先細とされた末端エンド15aは、以下により詳細に説明されるように、ハブ4内にシールを形成することができる。各ウイング16、17はそれを貫通して、止め具3を頭蓋骨に固定するためのねじを受容する穴16a、17aを有する。止め具3の基端エンドは、中央部分15に固定される可撓性チュービング18の延伸部を備え、したがってチュービング18は、中央部分15とともに摺動することができる。止め具3は、歯科用アクリルセメントなどの適切な接着剤を塗布してチュービング18をチュービング10に固定することで、チュービング10上の所定の位置に固定され得る。しかし、他の実施形態では、クランプ機構または繋ぎ材(tie)が提供され得る。
【0054】
ブーツ30は、チュービング10よりも大きな直径のスリーブを含み、バヨネットコネクタまたはルアーコネクタなどの様々なデバイス上に押込み嵌めされ得る。
【0055】
使用において、患者の脳のMRIおよびCTの画像などの画像が撮られ、脳内のターゲット部位21およびターゲット体積22が識別される。一般的に、ターゲット部位21は、ターゲット体積22の中間と下部2/3との間にある。カテーテル1の定位固定座標および経路は、ターゲット部位21とターゲット体積22に基づいて決定され、経路に沿った座標位置は、ガイド管2の末端エンド12について決定される。好ましくは、末端エンド12についての座標位置は、ターゲット体積22内、例えばわずか2から3mm内側にある。ガイド管2の所望の長さは、末端エンド12の所期の座標位置から決定され得る。ガイド管2は、この所望の長さに切断される。
【0056】
患者のMRIおよびCTの画像から、ターゲット部位に対する頭蓋骨の表面の位置を、十分な精度で決定することが可能でない場合がある。具体的には、頭蓋骨の境界は、画像では不明瞭になりがちである。したがって、カテーテル1およびガイド管2についての予想される長さは、画像から決定され得るが、これは、次いで、手術室で確認され得、その後にガイド管2が所望の長さに切断され止め具3がカテーテル1上の所望の位置に固定される。
【0057】
手術室では、定位固定フレームに対する頭蓋骨の表面の相対的な位置が、例えば定位固定フレームに対するその位置が既知であるロボットを使用して、頭蓋骨に接触するようにポインティングデバイスを動かすことによって測定され得る。定位固定フレームに対する頭蓋骨の表面の位置は、頭蓋骨に接触したときのポインティングデバイスの位置から決定され得る。定位固定フレームに対するターゲット部位の位置は、画像から十分な精度で決定可能である。したがって、頭蓋骨からターゲット部位までの距離は、画像からおよびポインティングデバイスを使用して決定されるような定位固定フレームに対するそれらの既知の位置から確認され得る。
【0058】
ガイド管2およびカテーテル1の長さが調節された後、ガイド管2はガイドロッド13の上に挿入される。ガイドロッド13の長さは、ガイドロッドの先端がガイド管2の1mm前方のような短い距離に突出するように送達ツールの末端エンドに取り付けられた係止コレット(図示せず)によって調節される。
【0059】
患者の頭部は、定位固定ガイド(stereoguide)フレーム内に固定され、座標および経路は定位固定ガイド内にセットされる。頭蓋骨20が露出され、段を設けられたプロファイルを有する孔24が頭蓋骨20に開けられる。プロファイルは、ガイド管2のハブ4のプロファイルに対応する。この段を設けられたプロファイルは、末端エンド12が所望の位置につくかたちでガイド管2を脳25内に位置決めするためのデータムを提供する。硬膜および大脳皮質もはやりまた、ガイドロッド13およびガイド管2を受け入れるように貫通される。
【0060】
ガイドロッド13の上に挿入されたガイド管2は、次いで、(ハブ4が孔に締り嵌めされている)図5aに示されるように、孔24を通って、ハブ4が頭蓋骨20内に形成された孔24に初めて係合するポイントまで脳に挿入される。このポイントは、ガイド管2の末端エンド12が要望通り配置される、完全な挿入よりもわずかに短く、本実施形態では2.5mm短い。ガイドロッド13は、次いで、図5bに示される、3mm引っ込められ、ガイドロッド13がこの引っ込み位置にある状態で、ガイド管2がハブ4と頭蓋骨20内のプロファイルされた孔24との係合によって画定されるようなストップ位置までさらに挿入される。この術策を実行するとき、ガイド管2の末端エンド12は、脳組織の1〜3mmの中心を取る。この位置は、図5cに示されている。ガイドロッド13は、次いで、ガイド管2を所定の位置に残して引っ込められる。
【0061】
ガイド管2が所定の位置にある状態で、患者の脳のMRI画像などの画像が取得され、ガイド管2の位置が確認され得る。ガイド管2の実際の位置が所期の位置とは大幅に異なっていた場合、新しい経路が計画され取替えガイド管2が挿入されなければならない場合がある。ガイド管2の末端エンドが所期の位置よりも若干深いまたは若干浅いなど、ガイド管2の位置が所期の位置から若干離れていた場合、カテーテル1上の止め具3がそれを補償するように調節され得る。カテーテル1の経路は、画像から決定されるようなガイド管2の実際の位置に基づいてモデル化され得る。この経路は、適切なモデリングソフトウェアを使用してモデル化され得る。
【0062】
カテーテル1の所望の長さは、ガイド管2の長さと同様に、計画された経路および/またはガイド管が埋め込まれた状態で撮られた患者の脳の画像から知られる。適切な長さの先端11を有するカテーテル1は、末端エンドがターゲット部位に配置された状態のガイド管2にカテーテル1が挿入されるときに露出される先端11(可撓性管10により覆われない部分)の少なくとも1mmがガイド管2内に残るように、先端11の長さが様々なカテーテルのセットなどから選択される。ウイング状止め具3は、カテーテル1の末端エンドから、頭蓋骨に完全に挿入されたときのガイド管2のハブ4のドーム形部分の頂上とターゲット部位21との間の距離によって画定される間隔が置かれた位置において、カテーテル1に接着剤で付けられる。
【0063】
トロカール(図示せず)は、カテーテル1のブーツ30がそこにおいてガイド管2の基端エンドに近接する位置に配置されるべき部位から、頭皮を貫通される。カテーテル1の基端エンドは、トロカールカニューレの末端エンド内に入れられ、トロカールカニューレの除去により、頭皮の中に通される。カテーテル1は、ブーツ30の注入ラインへの取り付け後に注入液で洗い流される。カテーテル1は、次いで、ガイド管2内にターゲット部位へとゆっくりと挿入され、それと同時に、カテーテル1がガイド管のボアを下って挿入されるときにガイド管2から変位される空気を吸引する。空気は、ガイド管のハブ4のスロット7の片側の上に先端が適用される、外科用吸込み管を使用して吸引される。
【0064】
挿入の間、カテーテルの先端11は、ガイド管2を使用して中心が取られた脳組織25aを押しわけて進み、その脳組織をガイド管2および下にある脳組織に対して押し付ける。ウイング状止め具3とガイド管2のハブ4との係合は、カテーテル1の末端エンドがターゲット部位21に挿入されたことを示す。この位置において、くぼみ14は、ガイド管2とカテーテル1の先端11との間の、ガイド管2の末端エンド部分内に形成される。チュービング10の末端エンドは、ガイド管2内に、ガイド管2の末端エンドから間隔を置いて配置される。使用のとき、このくぼみ14は、ガイド管2を使用して中心が取られた脳組織を保持する。
【0065】
ウイング状止め具3がハブ4と連続的に係合する状態で、カテーテル1は、90°まで曲げられ、ウイング状止め具3が、ねじ(図示せず)で頭蓋骨に固定される。ドーム6の曲率半径は、スロット7の曲率半径と同じであり、したがってガイド管2から現れているカテーテル1の長さがこの術策の間中一定のままになる。この位置は、図5dに示されている。頭皮創傷は、次いで、閉じられ、増加される注入レジメ(ramped infusion regime)が開始される。
【0066】
図6は、器具の挿入後の患者の外観を示している。
【0067】
実例
(本明細書では「くぼみを設けられたカテーテル」と称される)本発明による神経用器具が、1mmの段を設けられたカテーテルとセラミックの0.6mmの段を設けられたカテーテルと比較された。各カテーテルの設計は、それらが、それらの遠位の段を設けられた外径を越えて延在する(外径0.23mm、内径0.15mmの)融解石英の3mmの長さをそれぞれ有するという点で類似していた。1mmの段を設けられたカテーテルは、くぼみを除いて、くぼみを設けられたカテーテルと同じ外側プロファイルを有した。セラミックカテーテルは、0.23mmから0.6mmの間の遠位段を有した。器具は、脳灰白質と同じ細孔比を有するアガロースゲル(0.5%)脳モデルで評価された。くぼみを設けられたカテーテルは、その後に、大型動物モデルである、大型の白色ランドレース種のブタで評価された。
【0068】
生体外試験
材料および方法
くぼみを設けられたカテーテルのカーボタンガイド管2は、80mmの長さに切断され、留置カテーテル1は、融解石英先端11(外径0.23mm/内径0.15mm)がその末端エンド内に接着されそれがそこから6mm突出した、PEEK管(外径0.6mm/内径0.25mm)であった。止め具7は、PEEK管のその末端エンドから77mmのところに適用され、したがって、それがガイド管2に挿入されるとき、3mmのくぼみが作り出され、融解石英先端11は、その中心軸の下の方へ横切り、ガイド管2の末端エンドを越えて3mm延在していた。
【0069】
1mm段カテーテルは、止め具より遠位のPEEK管の長さが80mmであり突出している融解石英の長さが3mmであったことを除けば、くぼみを設けられたカテーテルと同様の構造であった。したがって挿入のとき、ガイド管およびPEEKカテーテルの末端エンドは洗い流され、一緒に段を形成し、そこから融解石英管が3mmまで延在していた。
【0070】
セラミックの0.6mmの段を設けられたカテーテルは、その末端エンドから突出した3mmを除いて、融解石英管(外径0.23mm、内径1.5mm)の長さを入れた77mmセラミック管を備えていた。セラミック管は、外径が1.3mmから、その末端エンドから10mmの距離のところにおいて0.6mmまで減少する、段を設けられた外側プロファイルを有していた。FEPチュービングの延伸部は、ハミルトン(Hamilton(登録商標))シリンジへの連結のためにセラミックカテーテルの基端エンドから延在していた。
【0071】
アガロースゲル0.5%は、分子生物学グレードアガロースパウダ(Severn Biotech(登録商標))4.05gと、トリスホウ酸塩EDTA緩衝液(Severn Biotech(登録商標))67.5mlと脱イオン水607.5mlを混合することによって作られ、パースペックス(Perspex:商標)容器内に注がれ、凝固された。パースペックス蓋は、容器に固定され、容器は、定位固定ガイド(Cosman Roberts Wells、Radionics(登録商標) Inc.)内のプラットフォームに固定された。
【0072】
段プロファイルドリルは、定位固定ガイドを通って導入され、アガロース容器のパースペックス蓋に、ゲル内にガイド管を送達するガイドとして働く孔を作り出し、さらに、ガイド管のハブが圧入されるくぼみを蓋に形成するのに使用された。一方はくぼみを設けられたカテーテル用であり他方は1mmの段を設けられたカテーテル用である、数センチメートル離して置かれる2つのそうした孔が「蓋」に作られた。パースペックス蓋には、セラミックの0.6mmの段を設けられたカテーテルをそれを通して導入する直径1.35mmのドリル孔が作られた。
【0073】
1mmの段を設けられたカテーテルとくぼみを設けられたカテーテルの両方についてのガイド管は、それ自体が定位固定ガイドによってガイドされる送達ツールを使用して、パースペックス蓋に予め作られた孔を通って、アガロースゲル内に挿入された。送達ツールは、その末端エンドを越えて調節可能に延長され得かつ挿入の間その上にガイド管が配置される同軸の0.6mmガイドロッドを含む円筒形本体を備えていた。ガイドロッドの末端エンドは丸みがつけられており、ガイド管の末端エンドを越えて1mm延長されていた。ガイド管の挿入方法は、それがくぼみを設けられたカテーテルに使用されるのか、または1mmの段を設けられたカテーテルに使用されるのかによって異なっていた。くぼみを設けられたカテーテルについてのガイド管の挿入の場合、経路に沿った挿入は、ガイド管のハブがパースペックス蓋のくぼみに初めて係合したときのポイント、すなわち完全な挿入よりも2.5mm短いポイントで止められた。このポイントにおいて、0.6mmガイドロッドは、3mm引っ込められ、送達ツールの円筒形本体内に再び固定された。ガイド管は、次いで、そのストップ位置へと前進され、その際、それは、ガイド管の末端エンドを塞いでいたアガロースの1.5mm円柱の中心を取った。1mm段カテーテルについてのガイド管の挿入の場合、挿入は、ガイド管がターゲットよりも1mm短いときに止められ、そのポイントで、ガイドロッドが1mm引っ込められ、次いでガイド管がホームに押された。ガイドロッドがガイド管より前方に1mm延在していたので、1mm前進するより前には、中心を取る動作は起こらない。
【0074】
カテーテルは、それらの基端エンドにおいて、0.04%のトリパンブルー溶液が充填されたハミルトンシリンジに連結された。ハミルトンシリンジは、ツインドライブCMA402シリンジポンプ(Harvard Appratus Company、Solna、Sweden)内に装入され、カテーテルがプライミングされた。注入は、0.5μl/分で開始され、次いで各カテーテルがゆっくりと挿入された。カテーテルは、それらの末端エンドが閉塞しないように、挿入の間中注入され、完全に挿入された後、注入が止められた。くぼみを設けられた段カテーテルおよび1mm段カテーテルの内側カテーテル要素が下方に導入されている間、それらのそれぞれのガイド管部分は、挿入のときのピストン動作によりアガロース内へと空気が追いやられないようにするように、ハブ内のスロットに適用されたことに注目すべきである。
【0075】
デジタルカメラ(Canon(登録商標) SD 100)は、アガロースが充填されたパースペックスボックスから固定された距離のところに位置決めされ固定され、注入は、5μl/分の最大流量まで、25分間の増加レジメを使用して同時に開始され、それは300μlの総体積が送達されるまで維持された(表1参照)。注入の画像は、開始のときに撮られ、各カテーテルに25μlが注入されるごとに順次的に撮られた。この実験は、10回繰り返された。
【0076】
【表1】
【0077】
拡大されたデジタル画像から、第1の段の下、すなわち融解石英の遠位先端から3mmの、各カテーテルからの分配体積の推定がなされた。分配体積は、注入クラウドのその最も幅の広いところの横断直径、および段の下のその垂直方向の直径を測定し、それを回転楕円面であると仮定して計算された。体積計算の方程式は以下に示されている。
【0078】
【数1】
【0079】
上式で、直径は軸方向面において一定であると仮定して、「a」=段の下の測定された注入の高さの半分、b=測定された注入の直径の半分である。融解石英の3mm長さの分の体積は、各体積計算から引き算された。
【0080】
注入液が中へと逆流された体積の推定は、段の上のコントラストの高さおよび平均直径を測定して平均円柱形体積を決定することによって計算され、そこからガイド管のその長さ分の体積が引き算された。逆流体積の平均直径は、ガイド管の末端エンドから逆流の長さに沿って3mm間隔で測定を行うことによって決定された。
【0081】
データが分析されて、カテーテルの性能において、すなわちくぼみを設けられた段設計と、1mm段設計と0.6mm段設計との間において、逆流抵抗および分配体積の有意な違いがあるかどうかを決定した。
【0082】
結果
くぼみを設けられた段カテーテルと段を設けられたカテーテルとの間の分配体積を比較した結果は、図7、8に示されている。
【0083】
くぼみを設けられたカテーテルは、300μlの注入後、1mm段カテーテルの場合に達成されたよりも平均で2.25倍大きな分配体積を達成し、0.6mm段カテーテルよりも平均で2倍大きな分配体積を達成した。カテーテルの性能の違いは、約50μlが注入されくぼみを設けられていない段カテーテルが逆流し始めたとき、5μl/分までに増加後すぐに著しくなった。
【0084】
300μlの注入の完了までに、くぼみを設けられたカテーテルの分配体積の2%だけが逆流に起因するものであり、その一方で、1mmの段を設けられた場合、それは54%であり、0.6mm段カテーテルの場合、それは36%であった。くぼみを設けられたカテーテルと、1mmの段を設けられたカテーテル設計および0.6mmの段を設けられたカテーテル設計との間における、段の下のVd/Viには有意な違いがあったが、後者2つの段を設けられたカテーテルの間では有意な違いはなかった。注入の間、ただし100から225μlの間の注入の間、0.6mm段カテーテルは、1mm段カテーテルよりも有意に低い逆流を示したが、この有意性は、注入体積が300μlまで増加されると失われた。
【0085】
検討
典型的には、くぼみを設けられたカテーテルと1mm段カテーテルの両方について、注入の開始のときに、融解石英の先端で小さな球状の分配体積が見られた。その後、段の方に向かって近位に延在するミクロの逆流が見えるようになった。球状の形状は、次いで、広がって進化して滴になった。通常、増加段階の終わりで通常起こる、滴の頂点が段まで延在すると、そのころには各カテーテルの性能が違っていた。
【0086】
1mm段カテーテルの場合では、注入液は、段の下面に沿って径方向に延在し始め、次いで、ガイド管の外面に沿って戻って逆流し始め、その間、滴形の注入体積は広がり続けた。その後、滴は、逆流と合わさって卵形を形成し、逆流の程度が比例的に増加されると増加する円柱形を形成した。
【0087】
直観とは反対に、0.6mm段は、当初は、10の注入のうち3がわずかに逆流を示す状態で逆流に抵抗し段の下に比較的球状の分配体積を生成するという点で、1mm段よりも効果的であった。0.6mm段が負かされると、シャフトに沿って近位に10mmに位置決めされた1.3mm直径までの第2の段が、このポイントを越えるさらなる逆流を抑制するのに効果的であった。1mm段と0.6mm段の間における、逆流を制限する性能の違いについての解釈は、挿入のとき、より大きな直径がアガロースゲルのより大きな体積を変位させ、その際に、それが注入液が優先的に中を流れることになる低抵抗の通路を形成するその構造をさらに不通にしやすい、というものである。したがって、段は、組織を局所的に押し付けることによってカテーテルまわりの封止を向上させることができるが、大きすぎる段の変化による組織の分裂、または外傷性のカテーテル挿入は逆効果を有する恐れがある。
【0088】
くぼみを設けられたカテーテルの性能は、融解石英がそこにおいてガイド管の末端エンドに入るポイントに滴の頂点が達したとき、逆流が、おそらく、くぼみ内における融解石英に対するアガロースのより大きな押し付けによって抑制される、という点で、従来の段を設けられたカテーテルとは異なった。滴形は、次いで、徐々に球状になり、非常に小さい逆流がガイド管の外側に沿ってはっきり見える状態で広がり続けた。これが起こったとき、ミクロの逆流がガイド管の遠位3mmまわりの非常に狭い環状空間内で観察され、次いで、アガロースゲルのより大きな環状の体積内へと広がり、ガイド管の残りの部分に沿って可変的に延在した。これについての解釈は、ガイド管の遠位3mmが、アガロースゲルの中心を取ったときに最小限にそれを変位させて効果的な組織シールを作り出す一方で、より近位の、ガイド管が留置ガイドロッドとともに挿入されたところでは、組み合わせられた体積が径方向に変位され、それがアガロースゲルの分裂を引き起こし、その結果として注入液がそれに沿って逆流することができる低抵抗の通路を形成していた、というものである。
【0089】
カテーテルを使用したアガロースゲルに注入される流体の分配は、図9、10に示されている。
【0090】
生体内試験
くぼみを設けられたカテーテルは、それをブタの被殻に左右相称に埋め込むことによって評価され、その性能は、やはりまたそのブタの被殻に埋め込まれた1mmの段を設けられたカテーテルと比較された。
【0091】
くぼみを設けられたカテーテルおよび送達ツーリングは、上述されたようなものであり、3mmのくぼみ長さを有していた。
【0092】
材料および方法
本研究では、45kgのオスの大型の白色ランドレース種のブタ2頭が使用された。研究は、適切なプロジェクトライセンスおよび個人ライセンスのもと、英国科学的処置法(UK scientific procedures act)1986に従って実施された。動物は、培養された筋肉内ケタミン(10mg/kg)によって鎮静され、その後、1.5〜5%イソフルランで麻酔がかけられた。
【0093】
頭部固定デバイスは、各ブタに適用された。これは、鼻ストラップを含む、上顎用の歯科用トレイ、および頭部を不動にする頬骨ねじを用いた。各動物は、次いで、頭部不動化デバイスが固定されたMRIスキャナテーブル(Philips(登録商標) 1.5T)上に位置決めされた。基準システムは、頭部フレームに取り付けられ、フレックス−L(Flex-L)頭部コイルは頭部まわりに位置決めされた。基準を含む、ブタの頭部の連続的なT1重み付けコロナルスライス(1mmスライス厚さ)のシリーズが取得され、そこから、プラニングソフトウェア(Mayfield(登録商標) ACCISS-II(登録商標) UK)を使用して、ターゲットおよびカテーテル配置のための経路が選択された。典型的には、ターゲットは、腹側において、両側の被殻の中間3分の1にあった。動物は、次いで、手術室に移され、そこで頭部固定デバイスがパスファインダ手術用ロボット(Prosurgics(登録商標) UK)にそれ自体がしっかり固定されているプラットフォーム上のデータムに固定された。動物の頭皮は、準備され、滅菌した布で包まれ、U字形の切開術が施されて頭蓋骨表面を露出した。深部被殻ターゲットの定位固定座標および経路は、ロボティックアームに置き換えられ、段を設けられたドリルが頭蓋骨にプロファイルされたバーリング孔を形成するように定位固定ガイドの下に挿入された。次いで、ガイド管およびカテーテルが前述されたようにターゲットに送達された。これは、反対側においても繰り返された。両方の被殻のカテーテルは、段の位置すなわち各ガイド管の末端エンドが背側の被殻内の2mmにあり融解石英が段の位置を越えて3mm延在するように位置決めされた。ブタは、MRIベッド上に再位置決めされ、被殻には、表1に示されるような増加するレジメを使用して、濃度0.25%の、人工的なCSF中のGd−DTPA(Magnevist(登録商標):Bayer Healthcare(登録商標) Germany)が左右相称に注入され、注入は、カテーテルに沿った有意な逆流が見られるまで継続された。注入の間、順次的なT1重み付きMRI画像が取得され、各取得の終わりには、注入された総体積が記録された。
【0094】
各カテーテルについての分配体積/注入体積(Vd/Vi)は、各画像取得から、各スライス(1mm 連続スライス)において測定されたコントラストの面積を合計することによって決定された。これらの計算は、社内のソフトウェアを使用して行われた。
【0095】
結果
くぼみを設けられたカテーテルは、合併症も起こさずに導入され、画像分析は、時間とともに分配体積の直線的な増加(Vd/Vi≒2.75)を示した。各カテーテルに587.5μlを注入した後には逆流は識別されず、そのときまでの各カテーテルからの分配体積は、約1500mm3であり、被殻はコントラストで埋め尽くされていた。実験は、さらなる有用な情報が得られなかったのでこの時点で終了された。カテーテルは除去され、創傷が閉じられ、麻酔が逆転された。ブタは、何らの神経障害を検出されることなく回復した。結果は、図11に図表的に示されている。
【0096】
図11図12の画像を比較することによって見ることができるように、逆流は、大幅に減少された。
【0097】
図10によって示されるように、段長さが15mmまで増加されたとき、有意な逆流なしに、15,500μlの体積が注入され、直径36mmの、24,000mm3の球状の分配体積を達成した。
【0098】
この神経用器具は、その改善された逆流抵抗だけでなくその材料特性においても、上述された段を設けられたカテーテルに優る利点(カテーテルの頭蓋骨固定−コントラストクリアランスに対して経時的に、薬物を注入する前にコントラストを注入するための能力)を有し、送達技術は、頭皮が閉じられている状態の複数の同時の注入、および必要に応じて数日間または数週間にわたる亜慢性使用に対してもその安全な適用を可能にする。
【0099】
これは、頭部に取り付けられた定位固定フレームによってガイドされる場合しか適用されず、したがって、頭皮およびバーリング孔が開けられた状態で一度に1本のカテーテルだけしか挿入されず、感染のリスク、脳偏位のリスク、および頭部に定位固定フレームが固定された状態でMRIスキャンに出し入れされる(特に各注入の前にプラニングがなされなくてはならないので、長時間の危険な処置であり、それゆえに大きな体積を充填するための複数の注入が実行不可能である)ときの患者に対するリスクを増加させる、剛性のカニューレであるスマートフロー(Smart Flow)カテーテルおよびERGバルブ先端カテーテルなどの前述された段を設けられたカニューレとは対照的である。
【0100】
本発明による神経用器具は、腫瘍および神経変性疾患の治療に使用され得る。
【0101】
特許請求の範囲において定められるような本発明から逸脱することなく、上述された実施形態に修正および改変を加えることができると理解されよう。例えば、先端11と可撓性チュービング10との間にある段ではなく、カテーテルの末端部分から中間部分までの直径のゆるやかな増加があってもよい。さらに、カテーテル1の外径における直径の変化ではなく、ガイド管の内径が、末端エンドにくぼみを形成するように変化してもよい。そうしたカテーテルの一例が図13に示されており、図面において、シリーズ100であることを除いて、同様の参照番号は同様の部分に使用されている。
【0102】
止め具3は、カテーテル1がガイド管2に挿入され得る限度を制限するのに設けられるのが好ましい。しかし、ガイド管上の指定された位置に整列されるとポートがターゲット部位に配置されたことを識別する、カテーテル上のしるしなど、ガイド管に挿入されるカテーテルの長さを識別する他の指示が提供されてもよい。
【0103】
カテーテルの直径が末端部分から中間部分へと増加するのではなく、ガイド管およびカテーテルとは別個のさらなるチュービングの延伸部が提供されてもよい。さらなるチュービングは、使用のとき、カテーテルがさらなるチュービングの全長にわたって延在するかたちでカテーテルを受容し、またさらなる管の末端エンドがガイド管から間隔を置かれ、かつくぼみを画定するようにガイド管の中に含まれるように、ガイド管内に受容されるように構成される。
【0104】
そうした構成の一例は、図14aから14dに示されている。図1から6に示されるカテーテルは、カテーテルが短期間だけしか患者に挿入されない急性疾患の治療に適している。慢性疾患のような長期間にわたる脳の治療は、カテーテルの堅い先端11が閉塞されることになる恐れがあるので、図1のカテーテルの使用は適していないことがある。したがって、長期間の患者の治療には、その長さに沿ってより可撓性を有するカテーテルが必要とされる。図14aから14dに示される実施形態では、カテーテル33の末端エンドおよび本体(図示せず)は、この実施形態ではカーボタンである、可撓性材料で作られる。カテーテル33は、一定の直径を有する単一長さのチュービングであり、やはりまたカーボタンで作製され、くぼみ14を形成するためにその端部がガイド管2の端部に達しないようにガイド管2内に配置される中間チュービング31の中に送達される。
【0105】
カテーテル33の先端は、可撓性材料で作られているので、可撓性の先端をターゲット部位に送達するのに、まず、より堅いロッドまたはワイヤ30を使用して脳組織の中を通るチャネルが形成される。チャネルの形成後、堅いロッドまたはワイヤ30が除去され、次いで、カテーテル33の可撓性先端がチャネルに入れられる。図14aおよび14bは、ガイド管を使用して組織の栓の中心を取るステップを示しており、図5aから5cに示されるステップに対応する。しかし、図14cは、図14dに示されるように先端が可撓性カテーテル33がチャネルに挿入される前に、ターゲット部位21までのチャネルを形成するステップを示している。
【0106】
図14cおよび14dに示されるステップをさらに詳細に説明すると、堅いロッド30は、ロッド30の末端エンドと中間管31の末端エンドが実質的に一致するように、中間管31内に固定される。堅いロッド30と中間チュービング31のこの組み合わせは、末端エンドが、中心が取られた脳組織25aの近くに配置されるまで、ガイド管30に挿入される。次いで、ロッド30は、図14cに示されるように、中間管31から取り外され、脳内へとさらに下に進められ、脳組織内にターゲットまでのチャネルを形成する。次いで、ロッド30は、除去され、可撓性カテーテル33が、ガイド管2内の所定の位置に留まっている中空管31を通ってチャネル内をターゲット部位21へと挿入される。
【0107】
最初は、カテーテル33と中心が取られた脳組織との間に形成されるシールは、先端が堅いカテーテル1を使用した場合に形成されるものほど良くないことがある。しかし、時間とともに、カテーテル先端まわりの脳組織の治癒が、逆流に対してこれらの領域を封止する助けとなっていく。
【0108】
さらなる一実施形態では、カテーテルを囲繞する別個のチュービングが、カテーテルとともに、中心が取られた脳組織に挿入され得る。これは、例えば、くぼみとターゲット部位との間に段を形成するのに有用であり得る。そうした一実施形態では、くぼみは、カテーテルを囲繞するチュービングとガイド管との間に形成され得る。そうした一実施形態では、1つはカテーテルとともに中心が取られた脳組織内に通され、もう1つは、その末端エンドが中心が取られた脳組織の上流に配置される、2つの中間管があってよい。
【0109】
封止要素は、ギャップ内を通ることがあるCSFまたは注入液がカテーテルシステムから漏れないようにするように、管同士の間のギャップを封止するために提供され得る。具体的には、止め具は、ハブ/中間管/ガイド管とカテーテル1との間のギャップを封止するように、ハブ/中間チュービング/ガイド管の部分内に延在しそれに係合するように構成される先細りした部分を備えることができる。さらに、中間管がカテーテルとは別個に提供される実施形態では、別個のOリングがハブ内に配置され得、中間チュービングは、Oリングを貫通することができ、したがって、Oリングは中間チュービングとガイド管との間のギャップを封止することができる。
【0110】
異なる長さの先端11を含むカテーテルのシリーズを有する別の可能性は、先端長さが調節可能なカテーテルを有することである。
【0111】
外科医が使用可能なカテーテルのセットについてのカテーテルを選び、止め具3を所定の位置に固定するのではなくて、外科医の要望に特有のあつらえのカテーテルは、例えば、止め具3が外科医によって指定された場所の所定の位置に固定され、先端11が指定された長さにされるかたちで製造され得る。あつらえのカテーテルは、ガイド管を埋め込む前、またはガイド管が埋め込まれてガイド管が埋め込まれた状態で患者の脳の画像が取得された後に、外科医によって注文されてもよい。
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図3c
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14a
図14b
図14c
図14d