特許第6334531号(P6334531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックヘルスケアホールディングス株式会社の特許一覧

特許6334531血液成分の測定装置、血液成分の測定方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334531
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】血液成分の測定装置、血液成分の測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20180521BHJP
   G01N 27/26 20060101ALI20180521BHJP
   G01N 27/327 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   G01N27/416 336C
   G01N27/416 338
   G01N27/26 371A
   G01N27/26 371D
   G01N27/327 353R
   G01N27/327 353J
   G01N27/26 371B
【請求項の数】9
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2015-526165(P2015-526165)
(86)(22)【出願日】2014年7月7日
(86)【国際出願番号】JP2014003599
(87)【国際公開番号】WO2015004900
(87)【国際公開日】20150115
【審査請求日】2017年4月4日
(31)【優先権主張番号】特願2013-142728(P2013-142728)
(32)【優先日】2013年7月8日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-142737(P2013-142737)
(32)【優先日】2013年7月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314005768
【氏名又は名称】PHCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤原 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 智浩
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/061629(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/103669(WO,A1)
【文献】 特開2011−232360(JP,A)
【文献】 特開2009−258129(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/156325(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/054840(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液が導入されることにより当該血液に含まれる血液成分を酸化還元酵素によって酸化還元をするバイオセンサを用いて血液成分量を測定する血液成分の測定装置であって、
前記バイオセンサを構成する第1電極対に第1電圧を印加したときに前記酸化還元によって生じる酸化還元電流を第1電流値として検出する第1電流値測定手段と、
前記バイオセンサを構成する第2電極対に第2電圧を印加したときに生じる電流を第2電流値として検出する第2電流値測定手段と、
前記バイオセンサに血液が導入されてからの所定期間に亘って前記第1電流値測定手段によって前記第1電極対に前記第1電圧を継続して印加した状態で前記第1電流値を複数回に亘り測定すると共に、前記第2電流値測定手段によって前記第2電圧を印加した状態で第2電流値を測定するよう制御する制御手段と、
前記第1電流値測定手段により測定された複数のうちの何れかの第1電流値と前記第2電流値測定手段により測定された第2電流値との組から血液成分量を換算する換算手段と、
前記換算手段により換算された複数の血液成分量を用いて、前記バイオセンサに導入された血液成分量を演算する演算手段と
を備えることを特徴とする血液成分の測定装置。
【請求項2】
血液が導入されることにより当該血液に含まれる血液成分を酸化還元酵素によって酸化還元をするバイオセンサを用いて血液成分量を測定する血液成分の測定装置であって、
前記バイオセンサを構成する第1電極対に第1電圧を印加したときに前記酸化還元によって生じる酸化還元電流を第1電流値として検出する第1電流値測定手段と、
前記バイオセンサを構成する第2電極対に第2電圧を印加したときに生じる電流を第2電流値として検出する第2電流値測定手段と、
前記バイオセンサに血液が導入されてからの所定期間内に、前記第2電流値測定手段により前記第2電極対に前記第2電圧をパルス状に印加して前記第2電流値を複数回に亘り測定すると共に、前記第2電圧印加後に前記第1電流値測定手段により前記第1電流値を測定するよう制御する制御手段と、
前記第1電流値測定手段により測定された第1電流値と前記第2電流値測定手段により測定された複数のうちの何れかの第2電流値との組から血液成分量を換算する換算手段と、
前記換算手段により換算された複数の血液成分量を用いて、前記バイオセンサに導入された血液成分量を演算する演算手段と
を備えることを特徴とする血液成分の測定装置。
【請求項3】
前記血液成分量が既知の血液ごとに、前記電流値の組から換算された複数の血液成分量を含む記録データを記憶した記憶手段を備え、
前記演算手段は、前記記録データと、前記換算手段により換算された複数の血液成分量を含む測定データとを比較して、当該測定データに最も近似している記録データを得た血液の血液成分量を、前記バイオセンサに導入された血液の血液成分量として演算すること
を特徴とする請求項1または2に記載の血液成分の測定装置。
【請求項4】
前記血液成分量が既知の血液ごと、及び、周囲の温度ごとに、前記電流値の組から換算された複数の血液成分量を含む記録データを記憶した記憶手段と、
周囲の温度を検出する温度検出手段とを備え、
前記演算手段は、前記温度検出手段により検出された周囲の温度に近い温度により得られた記録データを複数抽出し、当該抽出された複数の記録データと、前記換算手段により換算された複数の血液成分量を含む測定データとを比較して、当該測定データに最も近似している記録データを得た血液の血液成分量を、前記バイオセンサに導入された血液の血液成分量として演算すること
を特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の血液成分の測定装置。
【請求項5】
前記演算手段は、前記制御手段により制御された結果として測定された前記電流値の組のうち任意の第1電流値と第2電流値との組み合わせから換算された複数の血液成分量と、前記記憶手段に記憶された前記任意の第1電流値と第2電流値との組み合わせと同じ組み合わせから換算された複数の血液成分量の記録データとを比較して、最も近似している記録データを得た血液の血液成分量を、前記バイオセンサに導入された血液の血液成分量として演算すること
を特徴とする請求項3又は請求項4に記載の血液成分の測定装置。
【請求項6】
血液が導入されることにより当該血液に含まれる血液成分を酸化還元酵素によって酸化還元をするバイオセンサを用いて血液成分量を測定する血液成分の測定方法であって、
前記バイオセンサを構成する第1電極対に第1電圧を印加したときに前記酸化還元によって生じる酸化還元電流を第1電流値として検出する第1電流値測定工程と、
前記バイオセンサを構成する第2電極対に第2電圧を印加したときに生じる電流を第2電流値として検出する第2電流値測定工程と、
前記第1電流値測定工程により測定された複数のうちの何れかの第1電流値と前記第2電流値測定工程により測定された第2電流値とからなる電流値の組から血液成分量を換算する換算工程と、
前記換算工程により換算された複数の血液成分量を用いて、前記血液に含まれる血液成分量を演算する演算工程を含み、
前記第1電流値測定工程は、前記バイオセンサに血液が導入されてからの所定期間に亘って前記第1電極対に前記第1電圧を継続して印加した状態で前記第1電流値を複数回に亘り測定し、
前記第2電流値測定工程は、前記第1電流測定工程後に前記第2電圧を印加した状態で第2電流値を測定し、
前記換算工程は、前記第1電流値測定工程により測定された複数の第1電流値及び前記第2電流値測定工程により測定された第2電流値から複数の血液成分量を得ること
を特徴とする血液成分の測定方法。
【請求項7】
血液が導入されることにより当該血液に含まれる血液成分を酸化還元酵素によって酸化還元をするバイオセンサを用いて血液成分量を測定する血液成分の測定方法であって、
前記バイオセンサを構成する第1電極対に第1電圧を印加したときに前記酸化還元によって生じる酸化還元電流を第1電流値として検出する第1電流値測定工程と、
前記バイオセンサを構成する第2電極対に第2電圧を印加したときに生じる電流を第2電流値として検出する第2電流値測定工程と、
前記第1電流値測定工程により測定された第1電流値と前記第2電流値測定工程により測定された複数のうちの何れかの第2電流値からなる電流値の組から血液成分量を換算する換算工程と、
前記換算工程により換算された複数の血液成分量を用いて、前記バイオセンサに導入された血液成分量を演算する演算工程とを有し、
前記第2電流値測定工程は、前記バイオセンサに血液が導入されてからの所定期間内に、前記第2電極対に前記第2電圧をパルス状に印加して前記第2電流値を複数回に亘り測定し、
前記第1電流値測定工程は、前記第2電流値測定工程後に前記第1電流値を測定すること
を特徴とする血液成分の測定方法。
【請求項8】
前記演算工程は、
記憶手段に記憶された、前記血液成分量が既知の血液ごとの、前記電流値の組から換算された複数の血液成分量を含む記録データを参照し、
前記記録データと、前記換算工程により換算された複数の血液成分量を含む測定データとを比較し、
当該測定データに最も近似している記録データを得た血液の血液成分量を、前記バイオセンサに導入された血液の血液成分量として演算すること
を特徴とする請求項6または7に記載の血液成分の測定方法。
【請求項9】
周囲の温度を検出する温度検出工程を有し、
前記演算工程は、
記憶手段に記憶された、前記血液成分量が既知の血液ごと及び周囲の温度ごとの、前記電流値の組から換算された複数の血液成分量を含む記録データを参照し、
前記温度検出工程により検出された周囲の温度に近い温度により得られた記録データを複数抽出し、
当該抽出された複数の記録データと、前記換算工程により換算された複数の血液成分量を含む測定データとを比較し、
当該測定データに最も近似している記録データを得た血液の血液成分量を、前記バイオセンサに導入された血液の血液成分量として演算すること を特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の血液成分の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液中に含まれる成分を測定する血液成分の測定装置、血液成分の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、試料中の分析対象物の濃度を判定するためのセンサシステム等が記載されている。このセンサシステムは、シーケンシャルな励起パルス及び緩和の複数のデューティサイクルを含む入力信号を、試料に入力する。これにより、励起パルスの入力の300ms以内に試料から出力される1以上の信号は、試料の分析対象物濃度と関連付けられて、分析の正確さ及び/又は精度を改善している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2011−506964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のセンサシステムは、複数回に亘ってパルスを試料に入力している。しかし、出力信号そのものを用いて試料の分析対象物濃度を求めているために、十分に測定誤差が抑制されていなかった。
【0005】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、血液成分の計測誤差を更に抑制することができる血液成分の測定装置、血液成分の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る血液成分の測定装置(以下、「第1の血液成分の測定装置」と呼ぶことがある)は、血液が導入されることにより当該血液に含まれる血液成分を酸化還元酵素によって酸化還元をするバイオセンサを用いて血液成分量を測定する血液成分の測定装置であって、前記バイオセンサを構成する第1電極対に第1電圧を印加したときに前記酸化還元によって生じる酸化還元電流を第1電流値として検出する第1電流値測定手段と、前記バイオセンサを構成する第2電極対に第2電圧を印加したときに生じる電流を第2電流値として検出する第2電流値測定手段と、前記バイオセンサに血液が導入されてからの所定期間に亘って前記第1電流値測定手段によって前記第1電極対に前記第1電圧を継続して印加した状態で前記第1電流値を複数回に亘り測定すると共に、前記第2電流値測定手段によって前記所定期間の末期に前記第2電圧を印加した状態で第2電流値を測定するよう制御する制御手段と、前記第1電流値測定手段により測定された複数のうちの何れかの第1電流値と前記第2電流値測定手段により測定された第2電流値との組から血液成分量を換算する換算手段と、前記換算手段により換算された複数の血液成分量を用いて、前記バイオセンサに導入された血液成分量を演算する演算手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の第2の態様に係る血液成分の測定装置は、上記第1の態様の血液成分の測定装置であって、前記血液成分量が既知の血液ごとに、複数のうちの何れかの第1電流値と第2電流値との組から換算された複数の血液成分量を含む記録データを記憶した記憶手段を備え、前記演算手段は、前記記録データと、前記換算手段により換算された複数の血液成分量を含む測定データとを比較して、当該測定データに最も近似している記録データを得た血液の血液成分量を、前記バイオセンサに導入された血液の血液成分量として演算することを特徴とする。
【0008】
本発明の第3の態様に係る血液成分の測定装置は、上記第1の態様の血液成分の測定装置であって、前記血液成分量が既知の血液ごと、及び、周囲の温度ごとに、複数のうちの何れかの第1電流値と第2電流値との組から換算された複数の血液成分量を含む記録データを記憶した記憶手段と、周囲の温度を検出する温度検出手段とを備え、前記演算手段は、前記温度検出手段により検出された周囲の温度に近い温度により得られた記録データを複数抽出し、当該抽出された複数の記録データと、前記換算手段により換算された複数の血液成分量を含む測定データとを比較して、当該測定データに最も近似している記録データを得た血液の血液成分量を、前記バイオセンサに導入された血液の血液成分量として演算することを特徴とする。
【0009】
本発明の第4の態様に係る血液成分の測定装置は、上記第2又は第3の態様の血液成分の測定装置であって、前記演算手段は、前記制御手段により制御された結果として測定された複数の第1電流値及び前記第2電流値のうち任意の第1電流値と第2電流値との組み合わせから換算された複数の血液成分量と、前記記憶手段に記憶された前記任意の第1電流値と第2電流値との組み合わせと同じ組み合わせから換算された複数の血液成分量の記録データとを比較して、最も近似している記録データを得た血液の血液成分量を、前記バイオセンサに導入された血液の血液成分量として演算することを特徴とする。
【0010】
本発明の第5の態様に係る血液成分の測定装置は、上記第2乃至第4の何れかの態様の血液成分の測定装置であって、前記制御手段は、前記第1電流値測定手段による第1電流値の測定を、前記所定期間のうちの前半に含まれる第1期間と、前記所定期間のうちの後半に含まれる第2期間とに行わせることを特徴とする。
【0011】
本発明の第6の態様に係る血液成分の測定装置は、上記第5の態様の血液成分の測定装置であって、前記制御手段は、前記第1電流値測定手段による第1電流値の測定を、前記所定期間内のうち、少なくとも、前記バイオセンサに導入された血液の温度変化が大きい第1期間と、前記バイオセンサに導入された血液の温度変化が安定している第2期間とに行わせることを特徴とする。
【0012】
本発明の第7の態様に係る血液成分の測定装置は、上記第1の態様の血液成分の測定装置であって、前記演算手段は、前記換算手段により換算された複数の血液成分量を用いた多変量解析によって、前記バイオセンサに導入された血液の血液成分量を演算することを特徴とする。
【0013】
本発明の第8の態様に係る血液成分の測定方法(以下、「第1の血液成分の測定方法」と呼ぶことがある)は、血液が導入されることにより当該血液に含まれる血液成分を酸化還元酵素によって酸化還元をするバイオセンサを用いて血液成分量を測定する血液成分の測定方法であって、前記バイオセンサを構成する第1電極対に第1電圧を印加したときに前記酸化還元によって生じる酸化還元電流を第1電流値として検出する第1電流値測定工程と、前記バイオセンサを構成する第2電極対に第2電圧を印加したときに生じる電流を第2電流値として検出する第2電流値測定工程と、前記第1電流値測定工程により測定された複数のうちの何れかの第1電流値と前記第2電流値測定工程により測定された第2電流値との組から血液成分量を換算する換算工程と、前記換算工程により換算された複数の血液成分量を用いて、前記血液に含まれる血液成分量を演算する演算工程を含み、前記第1電流値測定工程は、前記バイオセンサに血液が導入されてからの所定期間に亘って前記第1電極対に前記第1電圧を継続して印加した状態で前記第1電流値を複数回に亘り測定し、前記第2電流値測定工程は、前記所定期間の末期に前記第2電圧を印加した状態で第2電流値を測定し、前記換算工程は、前記第1電流値測定工程により測定された複数の第1電流値及び前記第2電流値測定工程により測定された第2電流値から複数の血液成分量を得ることを特徴とする。
【0014】
本発明の第9の態様に係る血液成分の測定方法は、上記第8の態様の血液成分の測定方法であって、前記演算工程は、記憶手段に記憶された、前記血液成分量が既知の血液ごとの、複数のうちの何れかの第1電流値と第2電流値との組から換算された複数の血液成分量を含む記録データを参照し、前記記録データと、前記換算工程により換算された複数の血液成分量を含む測定データとを比較し、当該測定データに最も近似している記録データを得た血液の血液成分量を、前記バイオセンサに導入された血液の血液成分量として演算することを特徴とする。
【0015】
本発明の第10の態様に係る血液成分の測定方法は、上記第8の態様の血液成分の測定方法であって、周囲の温度を検出する温度検出工程を有し、前記演算工程は、記憶手段に記憶された、前記血液成分量が既知の血液ごと及び周囲の温度ごとの、複数のうちの何れかの第1電流値と第2電流値との組から換算された複数の血液成分量を含む記録データを参照し、前記温度検出工程により検出された周囲の温度に近い温度により得られた記録データを複数抽出し、当該抽出された複数の記録データと、前記換算工程により換算された複数の血液成分量を含む測定データとを比較し、当該測定データに最も近似している記録データを得た血液の血液成分量を、前記バイオセンサに導入された血液の血液成分量として演算することを特徴とする。
【0016】
本発明の第11の態様に係る血液成分の測定方法は、上記第9又は第10の態様の血液成分の測定方法であって、前記演算工程は、前記第1電流値測定工程により測定された複数の第1電流値及び前記第2電流値測定工程により測定された第2電流値のうち任意の第1電流値と第2電流値との組み合わせから換算された複数の血液成分量と、前記記憶手段に記憶された前記任意の第1電流値と第2電流値との組み合わせと同じ組み合わせから換算された複数の血液成分量の記録データとを比較して、最も近似している記録データを得た血液の血液成分量を、前記バイオセンサに導入された血液の血液成分量として演算することを特徴とする。
【0017】
本発明の第12の態様に係る血液成分の測定方法は、上記第9乃至第11の何れかの態様の血液成分の測定方法であって、前記第1電流値測定工程は、前記第1電流値の測定を、前記所定期間のうちの前半に含まれる第1期間と、前記所定期間のうちの後半に含まれる第2期間とに行うことを特徴とする。
【0018】
本発明の第13の態様に係る血液成分の測定方法は、上記第12の態様の血液成分の測定方法であって、前記第1電流値測定工程は、前記第1電流値の測定を、前記所定期間内のうち、少なくとも、前記バイオセンサに導入された血液の温度変化が大きい第1期間と、前記バイオセンサに導入された血液の温度変化が安定している第2期間とに行うことを特徴とする。
【0019】
本発明の第14の態様に係る血液成分の測定方法は、上記第8の態様の血液成分の測定方法であって、前記演算工程は、前記第1電流値測定工程により測定された複数の第1電流値及び前記第2電流値測定工程により測定された第2電流値のうちの少なくとも一部を用いた多変量解析によって、前記バイオセンサに導入された血液の血液成分量を演算することを特徴とする。
【0020】
本発明の第15の態様に係る血液成分の測定装置(以下、「第2の血液成分の測定装置」と呼ぶことがある)は、血液が導入されることにより当該血液に含まれる血液成分を酸化還元酵素によって酸化還元をするバイオセンサを用いて血液成分量を測定する血液成分の測定装置であって、前記バイオセンサを構成する第1電極対に第1電圧を印加したときに前記酸化還元によって生じる酸化還元電流を第1電流値として検出する第1電流値測定手段と、前記バイオセンサを構成する第2電極対に第2電圧を印加したときに生じる電流を第2電流値として検出する第2電流値測定手段と、前記バイオセンサに血液が導入されてからの所定期間内に、前記第2電流値測定手段により前記第2電極対に前記第2電圧をパルス状に印加して前記第2電流値を複数回に亘り測定すると共に、前記所定期間の任意のタイミングに前記第1電流値測定手段により前記第1電流値を測定するよう制御する制御手段と、前記第1電流値測定手段により測定された第1電流値と前記第2電流値測定手段により測定された複数のうちの何れかの第2電流値との組から血液成分量を換算する換算手段と、前記換算手段により換算された複数の血液成分量を用いて、前記バイオセンサに導入された血液成分量を演算する演算手段とを備えることを特徴とする。
【0021】
本発明の第16の態様に係る血液成分の測定装置は、上記第15の態様の血液成分の測定装置であって、前記血液成分量が既知の血液ごとに、前記第1電流値と複数のうちの何れかの第2電流値との組から換算された複数の血液成分量を含む記録データを記憶した記憶手段を備え、前記演算手段は、前記記録データと、前記換算手段により換算された複数の血液成分量を含む測定データとを比較して、当該測定データに最も近似している記録データを得た血液の血液成分量を、前記バイオセンサに導入された血液の血液成分量として演算することを特徴とする。
【0022】
本発明の第17の態様に係る血液成分の測定装置は、上記第15の態様の血液成分の測定装置であって、前記血液成分量が既知の血液ごと、及び、周囲の温度ごとに、前記第1電流値と複数のうちの何れかの第2電流値との組から換算された複数の血液成分量を含む記録データを記憶した記憶手段と、周囲の温度を検出する温度検出手段とを備え、前記演算手段は、前記温度検出手段により検出された周囲の温度に近い温度により得られた記録データを複数抽出し、当該抽出された複数の記録データと、前記換算手段により換算された複数の血液成分量を含む測定データとを比較して、当該測定データに最も近似している記録データを得た血液の血液成分量を、前記バイオセンサに導入された血液の血液成分量として演算することを特徴とする。
【0023】
本発明の第18の態様に係る血液成分の測定装置は、上記第16又は第17の態様の血液成分の測定装置であって、前記演算手段は、前記制御手段により制御された結果として測定された前記第1電流値及び複数の第2電流値のうち任意の第1電流値と第2電流値との組み合わせから換算された複数の血液成分量と、前記記憶手段に記憶された前記任意の第1電流値と第2電流値との組み合わせと同じ組み合わせから換算された複数の血液成分量の記録データとを比較して、最も近似している記録データを得た血液の血液成分量を、前記バイオセンサに導入された血液の血液成分量として演算することを特徴とする。
【0024】
本発明の第19の態様に係る血液成分の測定装置は、上記第16乃至第18の何れかの態様の血液成分の測定装置であって、前記制御手段は、前記第2電流値の測定を、前記所定期間内のうち、少なくとも、前記バイオセンサに導入された血液の温度変化が大きい第1期間と、前記バイオセンサに導入された血液の温度変化が安定している第2期間とに行わせることを特徴とする。
【0025】
本発明の第20の態様に係る血液成分の測定装置は、上記第16乃至第19の何れかの態様の血液成分の測定装置であって、前記制御手段は、前記所定期間内に継続して第2電圧を前記第2電極対に印加させ、任意のタイミングで複数の第2電流値を測定させるよう前記第2電流値測定手段を制御することを特徴とする。
【0026】
本発明の第21の態様に係る血液成分の測定装置は、上記第16乃至第20の何れかの態様の血液成分の測定装置であって、前記制御手段は、前記所定期間内にパルス的に複数回に亘り第2電圧を前記第2電極対に印加させ、前記第2電圧が印加された各タイミングで第2電流値を測定させるよう前記第2電流値測定手段を制御することを特徴とする。
【0027】
本発明の第22の態様に係る血液成分の測定装置は、上記第16の態様の血液成分の測定装置であって、前記演算手段は、前記換算手段により換算された複数の血液成分量を用いた多変量解析によって、前記バイオセンサに導入された血液の血液成分量を演算することを特徴とする。
【0028】
本発明の第23の態様に係る血液成分の測定方法(以下、「第2の血液成分の測定方法」と呼ぶことがある)は、血液が導入されることにより当該血液に含まれる血液成分を酸化還元酵素によって酸化還元をするバイオセンサを用いて血液成分量を測定する血液成分の測定方法であって、前記バイオセンサを構成する第1電極対に第1電圧を印加したときに前記酸化還元によって生じる酸化還元電流を第1電流値として検出する第1電流値測定工程と、前記バイオセンサを構成する第2電極対に第2電圧を印加したときに生じる電流を第2電流値として検出する第2電流値測定工程と、前記第1電流値測定工程により測定された第1電流値と前記第2電流値測定工程により測定された複数のうちの何れかの第2電流値との組から血液成分量を換算する換算工程と、前記換算工程により換算された複数の血液成分量を用いて、前記バイオセンサに導入された血液成##分量を演算する演算工程とを有し、前記第1電流値測定工程は、前記バイオセンサに血液が導入されてからの所定期間の任意のタイミングに前記第1電流値を測定し、前記第2電流値測定工程は、前記所定期間内に、前記第2電極対に前記第2電圧をパルス状に印加して前記第2電流値を複数回に亘り測定することを特徴とする。
【0029】
本発明の第24の態様に係る血液成分の測定方法は、上記第23の態様の血液成分の測定方法であって、前記演算工程は、記憶手段に記憶された、前記血液成分量が既知の血液ごとの、前記第1電流値と複数のうちの何れかの第2電流値との組から換算された複数の血液成分量を含む記録データを参照し、前記記録データと、前記換算工程により換算された複数の血液成分量を含む測定データとを比較して、当該測定データに最も近似している記録データを得た血液の血液成分量を、前記バイオセンサに導入された血液の血液成分量として演算することを特徴とする。
【0030】
本発明の第25の態様に係る血液成分の測定方法は、上記第23の態様の血液成分の測定方法であって、周囲の温度を検出する温度検出工程を有し、前記演算工程は、記憶手段に記憶された、前記血液成分量が既知の血液ごと、及び、周囲の温度ごとに、前記第2電流値と複数のうちの何れかの第1電流値との組から換算された複数の血液成分量を含む記録データを参照し、前記温度検出工程により検出された周囲の温度に近い温度により得られた記録データを複数抽出し、当該抽出された複数の記録データと、前記換算工程により換算された複数の血液成分量を含む測定データとを比較して、当該測定データに最も近似している記録データを得た血液の血液成分量を、前記バイオセンサに導入された血液の血液成分量として演算することを特徴とする。
【0031】
本発明の第26の態様に係る血液成分の測定方法は、上記第24又は第25の態様の血液成分の測定方法であって、前記演算工程は、測定された第1電流値及び複数の第2電流値のうち任意の第1電流値と第2電流値との組み合わせから換算された複数の血液成分量と、前記記憶手段に記憶された前記任意の第1電流値と第2電流値との組み合わせと同じ組み合わせから換算された複数の血液成分量の記録データとを比較して、最も近似している記録データを得た血液の血液成分量を、前記バイオセンサに導入された血液の血液成分量として演算することを特徴とする。
【0032】
本発明の第27の態様に係る血液成分の測定方法は、上記第23乃至第26の何れかの態様の血液成分の測定方法であって、前記第2電流値測定工程は、前記第2電流値の測定を、前記所定期間内のうち、少なくとも、前記バイオセンサに導入された血液の温度変化が大きい第1期間と、前記バイオセンサに導入された血液の温度変化が安定している第2期間とに行うことを特徴とする。
【0033】
本発明の第28の態様に係る血液成分の測定方法は、上記第23乃至第27の何れかの態様の血液成分の測定方法であって、前記第2電流値測定工程は、前記所定期間内に継続して第2電圧を前記第2電極対に印加させ、任意のタイミングで複数の第2電流値を測定することを特徴とする。
【0034】
本発明の第29の態様に係る血液成分の測定方法は、上記第23乃至第27の何れかの態様の血液成分の測定方法であって、前記第2電流値測定工程は、前記所定期間内にパルス的に複数回に亘り第2電圧を前記第2電極対に印加させ、前記第2電圧が印加された各タイミングで第2電流値を測定することを特徴とする。
【0035】
本発明の第30の態様に係る血液成分の測定方法は、上記第23の態様の血液成分の測定方法であって、前記演算工程は、前記換算工程により換算された複数の血液成分量を用いた多変量解析によって、前記バイオセンサに導入された血液の血液成分量を演算することを特徴とする。
【0036】
本発明の第31の態様に係るバイオセンサは、血液が導入されることにより当該血液に含まれる血液成分を酸化還元酵素によって酸化還元をするバイオセンサであって、作用極及び対極が前記酸化還元酵素及びメディエータに接する第1電極対と、前記酸化還元酵素及びメディエータに接しない作用極と、前記酸化還元酵素及びメディエータに接し前記第1電極対の作用極に接しない対極とを含む第2電極対と、前記第1電極対の作用極と前記第2電極対の対極とを離間する非干渉部とを含み、前記第1電極対に、前記バイオセンサに血液が導入されてからの所定期間の任意のタイミングで第1電圧が印加され、前記第2電極対に、前記所定期間内に、第2電圧がパルス状に複数回に亘り印加されることを特徴とする。
【0037】
本発明の第32の態様に係る血液成分の測定装置(以下、「第3の血液成分の測定装置」と呼ぶことがある)は、
血液が導入されることにより当該血液に含まれる血液成分を酸化還元酵素によって酸化還元をするバイオセンサを用いて血液成分量を測定する血液成分の測定装置であって、
前記バイオセンサを構成する第1電極対に第1電圧を印加したときに前記酸化還元によって生じる酸化還元電流を第1電流値として検出する第1電流値測定手段と、
前記バイオセンサを構成する第2電極対に第2電圧を印加したときに生じる電流を第2電流値として検出する第2電流値測定手段と、
前記バイオセンサに血液が導入されてからの所定期間に亘って前記第1電流値測定手段によって前記第1電極対に前記第1電圧を継続して印加した状態で前記第1電流値を複数回に亘り測定すると共に、前記第1電圧の継続印加後に前記第2電流値測定手段によって前記第2電圧を印加した状態で第2電流値を測定するよう制御する制御手段と、
前記第1電流値測定手段により測定された複数のうちの何れかの第1電流値と前記第2電流値測定手段により測定された第2電流値からなる電流値の組から血液成分量を換算する換算手段と、
前記換算手段により換算された複数の血液成分量を用いて、前記バイオセンサに導入された血液成分量を演算する演算手段と
を備えることを特徴とする。
【0038】
本発明の第33の態様に係る血液成分の測定装置(以下、「第4の血液成分の測定装置」と呼ぶことがある)は、
血液が導入されることにより当該血液に含まれる血液成分を酸化還元酵素によって酸化還元をするバイオセンサを用いて血液成分量を測定する血液成分の測定装置であって、
前記バイオセンサを構成する第1電極対に第1電圧を印加したときに前記酸化還元によって生じる酸化還元電流を第1電流値として検出する第1電流値測定手段と、
前記バイオセンサを構成する第2電極対に第2電圧を印加したときに生じる電流を第2電流値として検出する第2電流値測定手段と、
前記バイオセンサに血液が導入されてからの所定期間内に、前記第2電流値測定手段により前記第2電極対に前記第2電圧をパルス状に印加して前記第2電流値を複数回に亘り測定すると共に、前記第2電圧印加後に前記第1電流値測定手段により前記第1電流値を測定するよう制御する制御手段と、
前記第1電流値測定手段により測定された第1電流値と前記第2電流値測定手段により測定された複数のうちの何れかの第2電流値からなる電流値の組から血液成分量を換算する換算手段と、
前記換算手段により換算された複数の血液成分量を用いて、前記バイオセンサに導入された血液成分量を演算する演算手段と
を備えることを特徴とする。
【0039】
本発明の第34の態様に係る血液成分の測定装置は、上記の第32または第33の態様に係る血液成分の測定装置であって、
前記血液成分量が既知の血液ごとに、前記電流値の組から換算された複数の血液成分量を含む記録データを記憶した記憶手段を備え、
前記演算手段は、前記記録データと、前記換算手段により換算された複数の血液成分量を含む測定データとを比較して、当該測定データに最も近似している記録データを得た血液の血液成分量を、前記バイオセンサに導入された血液の血液成分量として演算すること
を特徴とする。
【0040】
本発明の第35の態様に係る血液成分の測定装置は、上記の第32乃至第34の何れかの態様に係る血液成分の測定装置であって、
前記血液成分量が既知の血液ごと、及び、周囲の温度ごとに、前記電流値の組から換算された複数の血液成分量を含む記録データを記憶した記憶手段と、
周囲の温度を検出する温度検出手段とを備え、
前記演算手段は、前記温度検出手段により検出された周囲の温度に近い温度により得られた記録データを複数抽出し、当該抽出された複数の記録データと、前記換算手段により
換算された複数の血液成分量を含む測定データとを比較して、当該測定データに最も近似している記録データを得た血液の血液成分量を、前記バイオセンサに導入された血液の血液成分量として演算すること
を特徴とする。
【0041】
本発明の第36の態様に係る血液成分の測定装置は、上記の第34または第35に係る血液成分の測定装置であって、
前記演算手段は、前記制御手段により制御された結果として測定された前記電流値の組のうち任意の第1電流値と第2電流値との組み合わせから換算された複数の血液成分量と、前記記憶手段に記憶された前記任意の第1電流値と第2電流値との組み合わせと同じ組み合わせから換算された複数の血液成分量の記録データとを比較して、最も近似している記録データを得た血液の血液成分量を、前記バイオセンサに導入された血液の血液成分量として演算すること
を特徴とする。
【0042】
本発明の第37の態様に係る血液成分の測定方法(以下、「第3の血液成分の測定方法」と呼ぶことがある)は、
血液が導入されることにより当該血液に含まれる血液成分を酸化還元酵素によって酸化還元をするバイオセンサを用いて血液成分量を測定する血液成分の測定方法であって、
前記バイオセンサを構成する第1電極対に第1電圧を印加したときに前記酸化還元によって生じる酸化還元電流を第1電流値として検出する第1電流値測定工程と、
前記バイオセンサを構成する第2電極対に第2電圧を印加したときに生じる電流を第2電流値として検出する第2電流値測定工程と、
前記第1電流値測定工程により測定された複数のうちの何れかの第1電流値と前記第2電流値測定工程により測定された第2電流値からなる電流値の組から血液成分量を換算する換算工程と、
前記換算工程により換算された複数の血液成分量を用いて、前記血液に含まれる血液成分量を演算する演算工程を含み、
前記第1電流値測定工程は、前記バイオセンサに血液が導入されてからの所定期間に亘って前記第1電極対に前記第1電圧を継続して印加した状態で前記第1電流値を複数回に亘り測定し、
前記第2電流値測定工程は、前記第1電流測定工程後に前記第2電圧を印加した状態で第2電流値を測定し、
前記換算工程は、前記第1電流値測定工程により測定された複数の第1電流値及び前記第2電流値測定工程により測定された第2電流値から複数の血液成分量を得ること
を特徴とする。
【0043】
本発明の第38の態様に係る血液成分の測定方法(以下、「第4の血液成分の測定方法」と呼ぶことがある)は、
血液が導入されることにより当該血液に含まれる血液成分を酸化還元酵素によって酸化還元をするバイオセンサを用いて血液成分量を測定する血液成分の測定方法であって、
前記バイオセンサを構成する第1電極対に第1電圧を印加したときに前記酸化還元によって生じる酸化還元電流を第1電流値として検出する第1電流値測定工程と、
前記バイオセンサを構成する第2電極対に第2電圧を印加したときに生じる電流を第2電流値として検出する第2電流値測定工程と、
前記第1電流値測定工程により測定された第1電流値と前記第2電流値測定工程により測定された複数のうちの何れかの第2電流値からなる電流値の組から血液成分量を換算する換算工程と、
前記換算工程により換算された複数の血液成分量を用いて、前記バイオセンサに導入された血液成分量を演算する演算工程とを有し、
前記第2電流値測定工程は、前記バイオセンサに血液が導入されてからの所定期間内に、前記第2電極対に前記第2電圧をパルス状に印加して前記第2電流値を複数回に亘り測定し、
前記第1電流値測定工程は、前記第2電流値測定工程後に前記第1電流値を測定すること
を特徴とする。
【0044】
本発明の第39の態様に係る血液成分の測定方法は、上記第37または第38の態様の血液成分の測定方法であって、
前記演算工程は、
記憶手段に記憶された、前記血液成分量が既知の血液ごとの、前記電流値の組から換算された複数の血液成分量を含む記録データを参照し、
前記記録データと、前記換算工程により換算された複数の血液成分量を含む測定データとを比較し、
当該測定データに最も近似している記録データを得た血液の血液成分量を、前記バイオセンサに導入された血液の血液成分量として演算すること
を特徴とする。
【0045】
本発明の第40の態様に係る血液成分の測定方法は、上記第37乃至第39の何れかの態様の血液成分の測定方法であって、
周囲の温度を検出する温度検出工程を有し、
前記演算工程は、
記憶手段に記憶された、前記血液成分量が既知の血液ごと及び周囲の温度ごとの、前記電流値の組から換算された複数の血液成分量を含む記録データを参照し、
前記温度検出工程により検出された周囲の温度に近い温度により得られた記録データを複数抽出し、
当該抽出された複数の記録データと、前記換算工程により換算された複数の血液成分量を含む測定データとを比較し、
当該測定データに最も近似している記録データを得た血液の血液成分量を、前記バイオセンサに導入された血液の血液成分量として演算することを特徴とする。
【発明の効果】
【0046】
本発明の第1の測定装置、第3の測定装置、第1の測定方法および第3の測定方法によれば、複数の第1電流値及び第2電流値から換算した複数の血液成分量を用いてバイオセンサに導入された血液の血液成分量を演算するので、血液成分の計測誤差を抑制することができる。
【0047】
また、本発明の第2の測定装置、第4の測定装置、第2の測定方法および第4の測定方法によれば、複数の第2電流値及び第1電流値から換算した複数の血液成分量を用いてバイオセンサに導入された血液の血液成分量を演算するので、血液成分の計測誤差を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の実施形態として示す測定装置に装着可能なバイオセンサの分解斜視図である。
図2】本発明の実施形態として示す測定装置に装着可能なバイオセンサの断面図である。
図3】本発明の実施形態として示す測定装置に装着可能なバイオセンサにおける血液成分計測層の上面図である。
図4】本発明の実施形態として示す測定装置の構成を示すブロック図である。
図5】既知のグルコース濃度及び血球量に対する第1応答値及び第2応答値を示す図である。
図6】既知のグルコース濃度及び血球量に対する第1応答値と第2応答値との関係を示す図である。
図7】本発明の実施形態として示す測定装置によってバイオセンサに対して電圧を印加する動作を示す図であり、(a)は第1応答値を得るための電圧変化であり、(b)は第2応答値を得るための電圧変化である。
図8】本発明の実施形態として示す測定装置による第1応答値及び第2応答値を測定するタイミングを示す図である。
図9】本発明の実施形態として示す測定装置により使用される換算マトリックスを示す図である。
図10】本発明の実施形態として示す測定装置により使用される他の換算マトリックスを示す図である。
図11】本発明の実施形態として示す測定装置により使用される他の換算マトリックスを示す図である。
図12】本発明の実施形態として示すバイオセンサに血液が導入された後における温度変化を示す図である。
図13】本発明の実施形態として示す測定装置において、周囲温度、検体導入温度、換算された血液成分量の関係を示す図である。
図14】本発明の実施形態として示す測定装置の温度ごとの第1応答値及び第2応答値と、換算された血液成分量との関係を示す図である。
図15】本発明の別の実施形態として示す測定装置によってバイオセンサに対して電圧を印加する動作を示す図であり、(a)は第1応答値を得るための電圧変化であり、(b)は第2応答値を得るための電圧変化である。
図16】本発明の別の実施形態として示す測定装置による第1応答値及び第2応答値を測定するタイミングを示す図である。
図17】本発明の別の実施形態として示す測定装置により使用される換算マトリックスを示す図である。
図18】本発明の別の実施形態として示す測定装置により使用される他の換算マトリックスを示す図である。
図19】本発明の別の実施形態として示す測定装置により使用される他の換算マトリックスを示す図である。
図20】本発明の別の実施形態として示すバイオセンサに血液が導入された後における温度変化を示す図である。
図21】本発明の別の実施形態として示す測定装置において、周囲温度、検体導入温度、換算された血液成分量の関係を示す図である。
図22】本発明の別の実施形態として示す測定装置の温度ごとの第1応答値及び第2応答値と、換算された血液成分量との関係を示す図である。
図23】本発明の実施形態として示す測定装置において、血球量に対するグルコース濃度の影響度を示す図である。
図24】本発明の実施形態として示す測定装置において温度変化が生じたときにおける既知のグルコース濃度及び血球量と、温度影響度と、換算された血液成分量との関係を示す図である。
図25】本発明の実施形態として示す測定装置において、温度影響を受けたときの第1応答値と第2応答値との関係を示す図である。
図26】本発明の実施形態として示す測定装置の他の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0050】
先ず、バイオセンサ1について説明する。
【0051】
本発明の実施形態として示す測定装置に装着可能なバイオセンサ1は、例えば図1乃至図3に示すような各部を含む。図1は、バイオセンサ1の分解斜視図である。図2は、バイオセンサ1の断面図である。バイオセンサ1は、血液成分計測層2、試薬層3、スペーサ層4、および表面層5を含む。バイオセンサ1は、これらの各層が積層されてなる。このバイオセンサ1は、血球成分としてグルコースを測定するバイオセンサを例として、以下に説明するが、これに限定されない。
【0052】
このバイオセンサ1は、後述する測定装置6に着脱可能である。バイオセンサ1は、測定装置6と共に、バイオセンサシステムを構成する。バイオセンサシステムは、バイオセンサ1の先端に位置する試料点着部41に点着された試料としての血液中に含まれる基質の成分量を測定装置6によって測定する。測定装置6は、バイオセンサ1に導入された血液の血液成分量を、計測結果として表示する。なお、以下の説明において血液成分量という時には、グルコース濃度(第1成分量)及び/又は血球量(第2成分量)を含む。
【0053】
バイオセンサ1を用いて血液中の血液成分量を定量するには、まず、ユーザによってバイオセンサ1の端部27を測定装置6に挿入する。その後、後述するバイオセンサ1の電極に対し、測定装置6が電圧を印加する。この状態で、血液を試料点着部41に供給する。血液が点着されると、当該血液はバイオセンサ1の内部に吸引される。この血液によって、試薬層3は溶解される。測定装置6は、バイオセンサ1の電極間に生じる電気的な変化を検知して、血液成分量の計測を行う。
【0054】
本実施形態において、バイオセンサ1は、試料液としての人体の血液に含まれる特定の血液成分量を測定する。この特定の血液成分量は、本実施形態においてはグルコース濃度である。なお、以下の説明では、人体の血液中に含まれるグルコース濃度の測定に関して開示をする。しかし、本実施形態におけるバイオセンサシステムは、適切な酵素を選択することによって、乳酸、コレステロールその他の成分を測定することも可能である。
【0055】
血液成分計測層2は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリオキシメチレン(POM)、モノマーキャストナイロン(MC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、メタクリル樹脂(PMMA)、ABS樹脂(ABS)、ガラス等からなる絶縁性の基板20上に導電性層が形成されて構成されている。この導電性層は、例えば金、白金、パラジウムなどの貴金属やカーボン等の電気伝導性物質からなる。この導電性層は、例えばスクリーン印刷法やスパッタリング蒸着法によって形成されている。この導電性層は、基板の全面または少なくとも一部に形成されていればよい。この導電性層は、不純物の付着防止および酸化防止等の目的で、高分子材料により被覆されていてもよい。前記導電性層の表面の被覆は、例えば、高分子材料の溶液を調製し、これを前記導電性層表面に滴下若しくは塗布し、ついで乾燥させることにより実施できる。乾燥は、例えば、自然乾燥、風乾、熱風乾燥、加熱乾燥などがある。
【0056】
また、絶縁性の基板20の大きさは、特に制限されず、例えば、全長5〜100mm、幅2〜50mm、厚み0.05〜2mmであり、好ましくは、全長7〜50mm、幅3〜20mm、厚み0.1〜1mmであり、より好ましくは、全長10〜30mm、幅3〜10mm、厚み0.1〜0.6mmである。
【0057】
また、スペーサ層4の材質は、特に制限されず、例えば、基板20と同様の材料が使用できる。また、スペーサ層4の大きさは、特に制限されず、例えば、全長5〜100mm、幅2〜50mm、厚み0.01〜1mmであり、好ましくは、全長7〜50mm、幅3〜20mm、厚み0.05〜0.5mmであり、より好ましくは、全長10〜30mm、幅3〜10mm、厚み0.05〜0.25mmである。スペーサ層4には、血液導入のための試料点着部41となるI字形状の切欠部が形成されている。
【0058】
表面層5は、中央部に空気孔51が設けられた絶縁性の基板である。表面層5は、切欠部としての試料点着部41を有するスペーサ層4を血液成分計測層2との間に挟み込んで、血液成分計測層2と一体に配置される。一体に配置するためには、表面層5、スペーサ層4および血液成分計測層2を接着剤で貼付けたり、もしくは熱融着してもよい。前記接着剤としては、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、また熱硬化性接着剤(ホットメルト接着剤等)、UV硬化性接着剤等が使用できる。
【0059】
表面層5の材質は、特に制限されず、例えば、基板20と同様の材料が使用できる。表面層5の試料点着部41の天井部に相当する部分は、親水性処理することが、更に好ましい。親水性処理としては、例えば、界面活性剤を塗布する方法、プラズマ処理などにより表面層5の表面に水酸基、カルボニル基、カルボキシル基などの親水性官能基を導入する方法がある。表面層5の大きさは、特に制限されず、例えば、全長5〜100mm、幅3〜50mm、厚み0.01〜0.5mmであり、好ましくは、全長10〜50mm、幅3〜20mm、厚み0.05〜0.25mmであり、より好ましくは、全長15〜30mm、幅5〜10mm、厚み0.05〜0.1mmである。表面層5には、空気孔51が形成されていることが好ましく、前記空気孔の形状は、例えば、円形、楕円形、多角形などであり、その大きさは、例えば、最大直径0.01〜10mm、好ましくは、最大直径0.05〜5mm、より好ましくは、最大直径0.1〜2mmである。
【0060】
血液成分計測層2は、図3に示すように、基板20上の導電性層に複数のスリットを設けることによって、各種の電極が形成されている。図3は、バイオセンサ1における血液成分計測層2の上面図である。血液成分計測層2は、第1作用極21及び第1対極22からなる第1電極対が形成されている。第1作用極21及び第1対極22は、後述する試薬層3の酸化還元酵素及びメディエータに接する位置に配置されている。血液成分計測層2は、第2作用極23及び第2対極24からなる第2電極対が形成されている。第2作用極23は、後述する試薬層3の酸化還元酵素及びメディエータに接しない位置に配置されている。第2対極24は、後述する試薬層3の酸化還元酵素及びメディエータに接し第1作用極21に接しない位置に配置されている。更に、血液成分計測層2は、血液の導入を検知するための検知電極26が形成されている。これらの第1作用極21、第1対極22、第2作用極23、第2対極24、及び検知電極26は、バイオセンサ1が測定装置6に挿入された状態で、測定装置6に電気的に接続される。
【0061】
グルコース濃度に依存する度合いが高い第1電流値を測定する場合には、第1作用極21を正極、第1対極22を負極として、第1作用極21と第1対極22との間に電圧(第1電圧)を印加する。
【0062】
血球量に依存する度合いが高い第2電流値を計測する場合には、第2作用極23を正極、第2対極24を負極として、第2作用極23と第2対極24との間に電圧(第2電圧)をパルス状に印加する。このパルス状には、矩形波、三角波などの態様を含む。なお、これらの電圧印加の詳細については、後述する。
【0063】
第1作用極21と第2対極24との間には、導電性層が形成されていない非干渉部25が設けられていてもよい。非干渉部25は、第1作用極21と第2対極24とを離間する。これにより、非干渉部25は、第2電流値の計測時に第2対極24で生じるメディエータが第1作用極21に流れ込むことを抑制する。なお、非干渉部25は、第1電圧と第2電圧とを同時に印加しない場合にはなくてもよい。
【0064】
なお、血液成分計測層2には、測定装置6によってバイオセンサ1を識別するための識別部が電極によって形成されていてもよい。この識別部は、例えば、バイオセンサ1の種別や製造ロット毎の出力特性の違いを識別する形状を有している。この識別部は、例えばバイオセンサ1の端部27側に形成され、測定装置6によって読み取り可能となっている。
【0065】
スペーサ層4は、図1に示したように、血液成分計測層2の基板20上の各電極21〜24、26を覆うように配置される。スペーサ層4は、前縁部中央に設けられた長方形の試料点着部41が形成された基板42である。試料点着部41によって、図3の試料供給路10が形成される。試料点着部41に血液が点着されると、血液は、毛細管現象によって図1〜3中の右方向に表面層5の空気孔51に向かって吸引される。これによって、第1作用極21、第1対極22、第2作用極23、及び、第2対極24には、血液が導入される。
【0066】
試薬層3は、図1に示したように、血液成分計測層2とスペーサ層4との間に配される。試薬層3は、酵素、メディエータ(電子受容体)、アミノ酸及び糖アルコール等を含有する試薬を塗布することで形成されている。試薬層3は、スペーサ層4の試料点着部41から露出している第1作用極21、第1対極22に接する。また、試薬層3は、任意成分として、高分子材料、酵素安定化剤、結晶均質化剤等を選択的に含む。前記血液成分計測層2および試薬層3の上には、一方の端部を残してスペーサ層4を介し表面層5が配置されている。
【0067】
試薬層3の酸化還元酵素としては、グルコースオキシターゼ、ラクテートオキシターゼ、コレステロールオキシターゼ、コレステロールエステラーゼ、ウリカーゼ、アスコルビン酸オキシターゼ、ビリルビンオキシターゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ラクテートデヒドロゲナーゼ、ラクテートデヒドロゲナーゼなどを用いることができる。前記酸化還元酵素の量は、例えば、バイオセンサ1個当り、もしくは1回の測定当り、例えば、0.01〜100Uであり、好ましくは、0.05〜10Uであり、より好ましくは、0.1〜5Uである。このなかでも、酸化還元酵素は、グルコースオキシダーゼおよびグルコースデヒドロゲナーゼが好ましい。
【0068】
試薬層3のメディエータ(電子受容体)としては、フェリシアン化物が好ましく、フェリシアン化カリウムがより好ましい。他のメディエータとしては、フェリシアン化物以外にもp−ベンゾキノン及びその誘導体、フェナジンメトルサルフェート、メチレンブルー、フェロセン及びその誘導体などを用いることができる。前記電子受容体の配合量は、特に制限されず、1回の測定当り若しくはバイオセンサ1個当り、例えば、0.1〜1000mMであり、好ましくは1〜500mMであり、より好ましくは、10〜200mMである。
【0069】
本実施形態のバイオセンサ1は、例えば、人体の血液中のグルコース濃度(血液成分)を測定するため、試薬層3に担持されている酸化還元酵素としてグルコースオキシターゼを用い、メディエータとしてフェリシアン化カリウムを用いる。
【0070】
この試薬層3は、試料供給路10に血液が導入されると、酸化還元酵素とメディエータが試料液としての血液に溶解される。すると、血液中の基質であるグルコースとの間で酵素反応が進行し、メディエータが還元されてフェロシアン化物(本実施の形態の場合、フェロシアン化カリウム)が生成される。この反応終了後、この還元されたメディエータを電気化学的に酸化し、このとき得られる電流(第1電流値)から血液中のグルコース濃度に依存する度合いが高い応答値(第1応答値(mV))が測定される。
【0071】
なお、本発明において血球とは、血液中に含まれる赤血球、白血球、血小板およびその組み合わせを意味するが、赤血球を意味するのが好ましい。また、本発明において血球量とは、例えば、血液中の赤血球の割合(容積比)、好ましくはヘマトクリット(Hct)値を意味する。
【0072】
つぎに、測定装置6の構成について説明する。
【0073】
測定装置6は、血液が導入されることにより当該血液に含まれる血液成分を酸化還元酵素によって酸化還元をするバイオセンサ1を用いて測定する。測定装置6は、図4に示すように、バイオセンサ1が測定装置6に挿入された状態で、バイオセンサ1の端部27に設けられた電極A〜Eと接続される。電極Aは第1作用極21、電極Bは第1対極22、電極Cは第2作用極23、電極Dは第2対極24、電極Eは検知電極26に対応する。
【0074】
測定装置6は、複数のコネクタ61〜65及びスイッチ66〜69、電流/電圧変換回路70、A/D変換回路71、CPU72、LCD73、及び、データ記憶部74(記憶手段)を含む。また、測定装置6は、装置内温度を測定する温度測定部81,82(温度検出手段)及び当該温度測定部81,82のためのスイッチ83,84を含む。なお、負極となる第1対極22、第2対極24に接続されたコネクタ62、64及びスイッチ67、68は、接地される。
【0075】
温度測定部81、温度測定部82は、それぞれ、導入される血液の周囲温度としての測定装置6内の温度を測定する。温度測定部81,82は、例えば測定装置6に挿入されたバイオセンサ1に近い位置の温度を測定することが望ましい。温度測定部81,82によって測定された温度測定値は、CPU72に供給される。CPU72は、2つの温度測定結果を比較する。温度の差分が所定のしきい値内にない場合は、温度測定部81,82のいずれかが故障していると判定する。これによって測定装置6の故障検知を正確かつ容易に行う。また、イレギュラーな温度測定による測定誤差を回避する。なお、温度測定タイミングは、検知電極26によって血液の導入が検知された直後や、バイオセンサ1に導入された血液の温度が安定する時であってもよい。
【0076】
各コネクタ61〜65は、バイオセンサ1の電極A〜Eのそれぞれに接続されている。各スイッチ66〜69は、それぞれコネクタ62〜65に接続されている。スイッチ66〜69は、CPU72によってそのオンオフ状態が制御される。第1電流値を測定する場合、第1作用極21と接続された電極Aと第1対極22と接続された電極Bとの間に電圧を印加するためにスイッチ66がオン状態とされる。第2電流値を測定する場合、第2作用極23と接続された電極Cと第2対極24と接続された電極Dとの間に電圧を印加するためにスイッチ67、68がオン状態とされる。なお、第1作用極21と第1対極22との間に印加する電圧、第2作用極23と第2対極24との間に印加する電圧は変化できるようになっている。血液の導入を検出する場合、検知電極26と接続された電極Eに電圧を印加するためにスイッチ69がオン状態とされる。
【0077】
電流/電圧変換回路70は、コネクタ61〜65及び温度測定部81,82と接続されている。電流/電圧変換回路70は、第1作用極21、第2作用極23とその他の電極間に流れる第1電流値、第2電流値が供給される。また、電流/電圧変換回路70は、温度測定部81,82によって測定している周囲温度に応じた電流が供給される。電流/電圧変換回路70は、供給された第1電流値、第2電流値を、電圧に変換する。変換された電圧値は、A/D変換回路71に供給される。
【0078】
A/D変換回路71は、電流/電圧変換回路70から電圧値が供給される。A/D変換回路71は、供給された電圧値をパルス状のディジタルデータに変換して、CPU72に出力する。
【0079】
CPU72は、測定装置6に含まれる各部を制御する。CPU72は、各スイッチ66〜69をオン又はオフする制御を行う。また、CPU72は、A/D変換回路71からのディジタルデータに基づいて第1電流値に対応した第1応答値[mV]、第2電流値に対応した第2応答値[mV]を算出する。CPU72は、第1応答値と第2応答値との組から血液成分量を換算する(換算手段)。さらにCPU72は、換算された複数の血液成分量を用いて、バイオセンサ1に導入された血液成分量を演算する(演算手段)。なお、この第1応答値、第2応答値を血液成分量に換算してから、バイオセンサ1に導入された血液の血液成分量を演算する処理は、後述する。
【0080】
LCD73は、CPU72により算出された測定値を表示するLCD(液晶表示器:出力部)である。
【0081】
データ記憶部74は、CPU72によって参照可能なデータを記憶している。データ記憶部74は、CPU72によって血液成分量(少なくともグルコース濃度)を演算するための記録データが記憶されている。この記録データは、血液成分量が既知の血液ごとに、複数のうちの何れかの第1電流値と第2電流値との組から換算された複数の血液成分量を含む。
【0082】
データ記憶部74は、血液成分量が既知の血液ごと、及び、周囲の温度ごとに記録データを記録していてもよい。この記録データは、複数のうちの何れかの第1電流値と第2電流値との組から換算された複数の血液成分量を含む。
【0083】
データ記憶部74は、血液成分量が既知の血液ごとに、複数の第1応答値と複数の第2応答値とを任意に組み合わせて換算した複数の血液成分量を含む記憶データを記憶していてもよい。さらに、データ記憶部74は、血液成分量が既知の血液ごと、及び、周囲の温度ごとに複数の第1応答値と複数の第2応答値とを任意に組み合わせて換算した複数の血液成分量を含む記憶データを記憶していてもよい。この場合、CPU72は、記憶データに含まれる任意の組み合わせと同じ組み合わせの第1応答値及び第2応答値を用いて、複数の血液成分量を換算して、バイオセンサ1に導入された血液の血液成分量を演算する。なお、所定期間とは、後述するように、血液成分量(第1成分量及び/又は第2成分量)を計測するために設定された期間である。
【0084】
つぎに、上述した測定装置6による基本的な動作について説明する。
【0085】
この測定装置6は、血液成分量を計測する場合において、先ず、検知電極26によって血液の導入を検知する。
【0086】
測定装置6は、第1電流値を測定するときには、第1作用極21と第1対極22(第1電極対)との間に電圧(第1電圧)を印加するように、CPU72によってスイッチ66をオンにする。この状態で、CPU72は、酸化還元によって生じる酸化還元電流(第1電流値)を測定する(第1電流値測定手段、第1電流値測定工程)。さらに、測定装置6は、第2電流値を測定するときには、第2作用極23と第2対極24(第2電極対)との間に電圧(第2電圧)を印加するように、CPU72によってスイッチ67、68をオンにする。この状態で、CPU72は、第2作用極23と第2対極24に電圧を印加したときに生じる電流(第2電流値)を測定する(第2電流値測定手段、第2電流値測定工程)。CPU72は、第1電流値を第1応答値として取得し、第2電流値を第2応答値として取得する。
【0087】
測定装置6は、第1応答値と第2応答値との組から換算マトリックスを用いて血液成分量に換算する。このとき、測定装置6は、複数のうちの何れかの第1電流値と第2電流値との組から、複数の血液成分量を換算する(換算手段、換算工程)。測定装置6は、複数の血液成分量に基づいて、バイオセンサ1に導入された血液の血液成分量を取得する(演算手段、演算工程)。なお、この血液成分量を換算する処理、血液成分量を演算する処理については、後述する。
【0088】
CPU72は、バイオセンサ1に血液が導入されてからの所定期間内に第1電流値及び第2電流値を計測して、第1応答値及び第2応答値を得る。この所定期間は、例えば、5秒や7秒といった時間が設定可能である。また、第1の測定装置、第3の測定装置、第1の測定方法または第3の測定方法においては、CPU72は、所定期間内に第1電圧を継続して印加した状態で第1電流値を複数回に亘り測定すると共に、第2電流値を測定するよう制御する(制御手段)。この第2電流値の測定は1回のみであってもよい。また、第2の測定装置、第4の測定装置、第2の測定方法または第4の測定方法においては、CPU72は、所定期間内に第2電流値を複数回に亘り測定すると共に、第1電流値を測定するよう制御する(制御手段)。この第1電流値の測定は1回のみであってもよい。このため、CPU72は、スイッチ66〜68を計測タイミングに対してオンオフ制御してもよい。また、CPU72は、A/D変換回路71によるディジタルデータの取得タイミングを制御してもよい。
【0089】
第1の測定装置、第3の測定装置、第1の測定方法または第3の測定方法においては、CPU72は、複数の第1電流値及び第2電流値から、複数の第1応答値及び複数の第2応答値を得る。CPU72は、複数のうちの何れかの第1応答値と第2応答値との組から、換算マトリックスを用いて、血液成分量に換算する。CPU72は、異なる第1応答値と第2応答値とを組み合わせ、組み合わせごとに血液成分量に換算する。これによりCPU72は、複数の血液成分量を得る。
【0090】
第2の測定装置、第4の測定装置、第2の測定方法または第4の測定方法においては、CPU72は、第1電流値及び複数の第2電流値から、複数の第1応答値及び複数の第2応答値を得る。CPU72は、複数のうちの何れかの第2応答値と第1応答値との組から、換算マトリックスを用いて、血液成分量に換算する。CPU72は、異なる第2応答値と第1応答値とを組み合わせ、組み合わせごとに血液成分量に換算する。これによりCPU72は、複数の血液成分量を得る。
【0091】
CPU72は、換算された複数の血液成分量から、バイオセンサ1に導入された血液の血液成分量(第1成分量及び第2成分量のうちの少なくとも一つ)を演算する(演算手段)。このとき、CPU72は、データ記憶部74に記憶された記録データを参照してもよい。演算手段としてのCPU72は、データ記憶部74に記憶された複数の血液成分量を含む複数の記録データと、換算マトリックスにより換算された複数の血液成分量を含む測定データとを比較する。そして、CPU72は、測定データに最も近似している記録データを得た血液の血液成分量を、バイオセンサ1に導入された血液の血液成分量として演算する。
【0092】
また、測定装置6は、データ記憶部74に、血液成分量が既知の血液ごと、及び、周囲の温度ごとに、記録データを記憶している場合には、温度測定部81,82によって周囲温度を計測する。そしてCPU72は、温度測定部81,82により検出された周囲の温度に近い温度により得られた記録データを複数抽出する。CPU72は、当該抽出された複数の記録データと、換算された複数の血液成分量を含む測定データとを比較する。CPU72は、当該測定データに最も近似している記録データを得た血液の血液成分量を、バイオセンサ1に導入された血液の血液成分量として演算する。
【0093】
更に、測定装置6は、データ記憶部74に、記録データとして第1応答値及び第2応答値の任意の組み合わせから換算した複数の血液成分量を記憶している。この場合には、測定装置6は、当該記録データと同じ組み合わせの第1応答値及び第2応答値を換算した複数の血液成分量を含む測定データを取得する。これにより、測定装置6は、任意の応答値の組み合わせから得た複数の血液成分量の記録データと、同じ応答値の組み合わせから換算した複数の血液成分量の測定データとを比較する。これにより、測定装置6は、当該測定データに最も近似している記録データを得た血液の血液成分量を、バイオセンサ1に導入された血液の血液成分量として演算できる。
【0094】
つぎに、第1の測定装置、第3の測定装置、第1の測定方法または第3の測定方法においては、上述したような測定装置6において、複数のうちの何れかの第1応答値と第2応答値との組み合わせから、換算マトリックスを用いて血液成分量を演算する動作について説明する。第2の測定装置、第4の測定装置、第2の測定方法または第4の測定方法においては、上述したような測定装置6において、複数のうちの何れかの第2応答値と第1応答値との組み合わせから、換算マトリックスを用いて血液成分量を演算する動作について説明する。
【0095】
この液体試料測定装置6において、CPU72に供給されることが予測される測定装置6の第1応答値は、例えば図5に示すようになる。例えば、グルコース濃度が100mg/dl、血球量(Hct)が25%である場合、CPU72は、電流値としての第1応答値として120,電流値としての第2応答値として1250を得ることが予測される。このような第1応答値及び第2応答値の予測値は、予めグルコース濃度及び血球量を調整した血液を用意し、バイオセンサ1及び測定装置6によって計測することによって得ることができる。
【0096】
図5に示した既知のグルコース濃度及び血球量の血液から得た第1応答値及び第2応答値をプロットし、当該プロットした点を通る線を描くと、図6に示すような換算マトリックスを作成することができる。この換算マトリックスによれば、同一のグルコース濃度であっても異なる血球量の血液であれば、第1応答値が変動することが分かる。
【0097】
この換算マトリックスにおいて、既知の同じグルコース濃度から得た点をつないだ線上にプロットされる第1応答値及び第2応答値は、当該既知のグルコース濃度、血球量に換算できる。したがって、換算マトリックス用いて、未知の血液から得た第1応答値及び第2応答値からグルコース濃度及び血球量を得ることができる。例えば、図6中の白丸で示す第1応答値及び第2応答値が得られた場合、換算マトリックスにおける第1応答値の100mg/dlと200mg/dlとの間の比(A:B)を取る。これにより、138mg/dlというグルコース濃度を得ることができる。同様に、換算マトリックスにおける第2応答値の25と45との間の比を取って、未知の血球量を得ることができる。
【0098】
このように、換算マトリックスを用意することによって、第1応答値と第2応答値との組、第1成分量及び第2成分量(血液成分量)としてのグルコース濃度及び血球量を換算することができる。
【0099】
同様に、この換算マトリックスにおいて、既知の同じ血球量から得た点をつないだ線上にプロットされる第2応答値は、当該既知の血球量に換算できる。したがって、換算マトリックス用いて、未知の血液から得た第1応答値及び第2応答値からグルコース濃度及び血球量を得ることができる。
【0100】
このように、換算マトリックスを用意することによって、第1応答値と第2応答値との組から、グルコース濃度及び血球量(血液成分量)を得ることができる。
【0101】
つぎに、上述したような第1または、第3の測定装置6において、記録データと測定データとを比較して、バイオセンサ1に導入された血液の血液成分量を演算できることについて説明する。
【0102】
本実施形態として示す第1または、第3の測定装置6は、例えば図7及び図8を参照して説明するような動作によって複数の第1応答値及び1つの第2応答値を得る。そして、第1または、第3の測定装置6は、図9乃至図11に示すような換算マトリックスを参照し、複数のうちの何れかの第1応答値と第2応答値との組を、血液成分量に換算できる。
【0103】
第1または、第3の測定装置6は、第1電流値の測定のため、第1作用極21と第1対極22との間に、図7(a)に示すような第1電圧を印加する。CPU72は、第1作用極21と第1対極22との間に、第1電圧として例えば350mVの電圧を印加する。図7(a)に示したように、第1電圧は、所定期間に亘って連続的に印加される。また、所定期間は、その一例として0秒から7秒となっている。
【0104】
第1または、第3の測定装置6は、第2電流値の測定のため、第2作用極23と第2対極24との間に、図7(b)に示すような第2電圧を印加する。CPU72は、第2作用極23と第2対極24との間に、例えば2500mVの電圧を印加する。第2電圧は、図7(b)に示したように、所定期間における末期に印加されている。
【0105】
図7(a)、(b)に示した第1電圧及び第2電圧の双方をバイオセンサ1に印加し、CPU72は、図8に示すようなタイミングで第1電流値及び第2電流値を計測して、第1応答値及び第2応答値を取得する。この例において、CPU72は、所定期間のうち前半、中間、後半の3回に亘り第1応答値G1,G2,G3取得している。CPU72は、所定期間のうち前半に含まれる第1期間と、所定期間のうち後半に含まれる第2期間との2回に亘って第1応答値を取得することが望ましい。その結果、CPU72は、少なくとも第1応答値G1と第1応答値G3とを取得できる。CPU72は、第2応答値を、所定期間の末期に取得する。その結果、CPU72は、第2応答値H1を取得できる。この第2応答値H1の取得タイミングは、第1電圧の印加中であっても、印加停止後あってもよい。
【0106】
第1期間は、バイオセンサ1に導入された血液の温度変化が大きい期間を設定することが望ましい。図8の例では、第1期間は、計測開始から2秒以内といった期間が設定されている。また、第2期間は、バイオセンサ1に導入された血液の温度変化が安定している期間を設定することが望ましい。図8の例では、第2期間は、計測から5秒後から7秒以内といった期間が設定されている。
【0107】
このように、第1または、第3の測定装置6は、第1電圧を、所定期間内において第1電極対としての第1作用極21及び第1対極22に印加して、所定の測定タイミングで複数回に亘り第1電流値(酸化還元電流)を測定する。一方、第1または、第3の測定装置6は、第2電圧を、所定の測定タイミングから所定の短時間の範囲内に印加する。また、第1または、第3の測定装置6は、第2電圧を、所定期間における所定の測定タイミングのみにパルス状に第2電極対としての第2作用極23及び第2対極24に印加して第2電流値を測定する。
【0108】
3つの第1応答値G1,G2,G3及び1つの第2応答値H1が計測されると、CPU72は、3つの換算マトリックスを参照して、3つの血液成分量を換算する。ここで、3つの換算マトリックスは、第1応答値G1と第2応答値H1、第1応答値G2と第2応答値H1、第1応答値G3と第2応答値H1、の組み合わせごとに用意しておく。
【0109】
CPU72は、図9の換算マトリックスG1−H1を用いて、第1応答値G1及び第2応答値H1を、血液成分量に換算する。同様に、CPU72は、図10の換算マトリックスG2−H1を用いて、第1応答値G2及び第2応答値H1を、血液成分量に換算する。同様に、CPU72は、図11の換算マトリックスG3−H1を用いて、第1応答値G3及び第2応答値H1を、血液成分量に換算する。
【0110】
具体的には、第1または、第3の測定装置6は、図9乃至図11のような換算マトリックスを、データ記憶部74に記憶しておく。第1または、第3の測定装置6は、未知の血液について複数の第1応答値G1〜G3及び第2応答値H1を計測して、G1及びH1の組、G2とH1の組、G3とH1の組を取得する。そして、第1または、第3の測定装置6は、各換算マトリックス上に第1応答値と第2応答値との組み合わせで決まる点にプロットし、各換算マトリックスを用いて、当該第1応答値と第2応答値を、血液成分量に換算する。その結果、第1または、第3の測定装置6は、G1及びH1の組、G2とH1の組、G3とH1の組のそれぞれについて血液成分量を得ることができる。
【0111】
次に第1または、第3の測定装置6は、上述した複数の第1応答値及び第2応答値の組ごとの3つの血液成分量を含む記録データと、測定データとしての3つの血液成分量とを比較する。第1または、第3の測定装置6は、比較の結果、最も測定データに近い記録データを抽出できる。第1または、第3の測定装置6は、この抽出した記録データを得た血液の血液成分量を、バイオセンサ1に導入された血液の血液成分量として演算できる。
【0112】
ここで、図12に示すように、バイオセンサ1に導入された検体としての血液の温度は、バイオセンサ1に導入された後の経過時間に応じて低下する。上述したように血液成分量の測定時間(所定時間)を7秒にした場合、バイオセンサ1に導入された時の血液温度によって測定時間における低下の仕方が異なる。バイオセンサ1に導入された時の血液温度が高いほど、血液温度の低下傾きが高くなる。また、バイオセンサ1に導入された時の血液温度によって測定時間が終了したときの血液温度は異なる。バイオセンサ1に導入された時の血液温度が高いほど測定時間が終了したときにおける周囲温度との差が大きくなる。例えば30℃の血液がバイオセンサ1に導入された場合、測定時間が終了したときにおける血液温度と周囲温度との温度差はT1となる。また、25℃の血液がバイオセンサ1に導入された場合、測定時間が終了したときにおける血液温度と周囲温度との温度差はT2となる。20℃の血液がバイオセンサ1に導入された場合、測定時間が終了したときにおける血液温度と周囲温度との温度差はT3となる。
【0113】
第1または、第3の測定装置6によって測定される第1応答値及び第2応答値が血液温度に依存するので、測定時間の終了時のみに第1応答値及び第2応答値を測定しても、正確な第1応答値及び第2応答値が得られない。したがって、第1または、第3の測定装置6は、測定する所定時間において複数回に亘って第1応答値を測定すると共に1回だけ第2応答値を測定する。そして、第1または、第3の測定装置6は、第1応答値と第2応答値とを任意に組み合わせて、当該任意の組み合わせごとに血液成分量を得る。
【0114】
第1または、第3の測定装置6は、例えば図13に示すような記録データをデータ記憶部74に記憶しておく。この記録データは、一例として、周囲温度及び検体導入温度ごとに、グルコース濃度(第1成分量)が100mg/dl,血球量(第2成分量)が25%の血液から得た複数の血液成分量を格納したものである。なお、検体導入温度は記録データに含めておく必要はない。具体的には、記録データは、周囲温度Aと、血液成分量Aa1と、血液成分量Aa2と、血液成分量Aa3と、が対応づけられている。血液成分量Aa1は図9の換算マトリックスG1−H1により換算した。血液成分量Aa2は図10の換算マトリックスG2−H1により換算した。血液成分量Aa3は図11の換算マトリックスG3−H1により換算した。記録データは、周囲温度に対して複数の検体導入温度についての血液成分量を格納しておくことが望ましい。また、記録データは、複数の周囲温度ごとに血液成分量を格納しておくことが望ましい。
【0115】
この第1または、第3の測定装置6は、複数のうち何れかの第1応答値と第2応答値の組み合わせごとに換算した複数の血液成分量と、記録データに含まれる複数の血液成分量とを比較して、最も近似した記録データを判断できる。具体的には、周囲温度がA付近である場合、第1または、第3の測定装置6は、周囲温度がAに対応した各組み合わせの血液成分量Aa1〜Aa3、Ab1〜Ab3、Ac1〜Ac3を抽出する。第1または、第3の測定装置6は、測定データとしての各組み合わせの血液成分量と、抽出した記録データに含まれる血液成分量Aa1〜Aa3、Ab1〜Ab3、Ac1〜Ac3とを比較する。第1または、第3の測定装置6は、測定データに含まれる複数の血液成分量が、記録データに含まれる血液成分量Aa1〜Aa3、Ab1〜Ab3、Ac1〜Ac3と近似している場合には、バイオセンサ1に導入された血液のグルコース濃度を100mg/dlと演算できる。
【0116】
以上のように、この第1または、第3の測定装置6によれば、測定した複数の第1応答値及び1つの第2応答値を用いて、バイオセンサ1に導入された血液の血液成分量を演算できる。これにより、このバイオセンサシステムによれば、血液成分量の計測誤差を抑制することができる。
【0117】
ところで、測定データとしての第1応答値及び第2応答値は、バイオセンサ1の周囲温度によって異なる値となる。例えば、図9乃至図11に示した換算マトリックスが25度の環境温度で取得されたとする。図14に示すように、バイオセンサ1の周囲温度が25度でグルコース濃度が125mg/dlの血液を計測し、第1応答値G1,G2,G3、第2応答値H1を換算して得たグルコース濃度は、全て組み合わせにおいて125mg/dlとなる。しかし、バイオセンサ1の周囲温度が35度となると、グルコース濃度は、全ての組み合わせにおいて異なった値となる。
【0118】
また、上述したような第2または、第4の測定装置6において、記録データと測定データとを比較して、バイオセンサ1に導入された血液の血液成分量を演算できることについて説明する。
【0119】
本実施形態として示す第2または、第4の測定装置6は、例えば図15及び図16を参照して説明するような動作によって複数の第2応答値及び1つの第1応答値を得る。そして、第2または、第4の測定装置6は、図17乃至図19に示すような換算マトリックスを参照し、複数のうちの何れかの第2応答値と第1応答値との組を、血液成分量に換算できる。
【0120】
第2または、第4の測定装置6は、第1電流値の測定のため、第1作用極21と第1対極22との間に、図15(a)に示すような第1電圧を印加する。CPU72は、第1作用極21と第1対極22との間に、第1電圧として例えば350mVの電圧を印加する。図15(a)に示したように、第1電圧は、所定期間の末尾に、1回だけパルス的に印加さる。また、第1電圧は、所定期間に亘って連続的に印加されてもよい。また、所定期間は、その一例として0秒から7秒となっている。
【0121】
第2または、第4の測定装置6は、第2電流値の測定のため、第2作用極23と第2対極24との間に、図15(b)に示すような第2電圧を印加する。CPU72は、第2作用極23と第2対極24との間に、例えば2500mVの電圧を印加する。第2電圧は、図15(b)に示したように、所定期間における初期、中間、末期(前半、中間、後半)の3回に亘り印加されている。すなわち、CPU72は、所定期間内にパルス的に複数回に亘り第2電圧を第2作用極23及び血球量用対極24に印加するよう制御する。これにより、第2電圧が印加された各タイミングで第2応答値を測定する。
【0122】
図15(a)および図15(b)に示した第1電圧及び第2電圧の双方をバイオセンサ1に印加し、CPU72は、図16に示すようなタイミングで第1応答値及び第2応答値を取得する。この例において、CPU72は、所定期間のうち前半、中間、後半の3回に亘り第2応答値H1,H2,H3取得している。CPU72は、少なくとも所定期間のうち前半に含まれる第1期間と、所定期間のうち後半に含まれる第2期間との2回に亘って第2応答値を取得することが望ましい。その結果、CPU72は、少なくとも第2応答値H1と第2応答値H3とを取得できる。CPU72は、第1応答値を、所定期間の末期に取得する。その結果、CPU72は、第1応答値G1を取得できる。
【0123】
第1期間は、バイオセンサ1に導入された血液の温度変化が大きい期間を設定することが望ましい。図16の例では、第1期間は、計測開始から2秒以内といった期間が設定されている。また、第2期間は、バイオセンサ1に導入された血液の温度変化が安定している期間を設定することが望ましい。図16の例では、第2期間は、計測から5秒後から7秒以内といった期間が設定されている。
【0124】
また、CPU72は、所定期間内に継続して第2電圧を第2作用極23及び血球量用対極24に印加するよう制御してもよい。この場合、CPU72は、少なくとも所定期間のうち前半、後半の2回のタイミングで第2応答値を測定する。
【0125】
このように、第2または、第4の測定装置6は、第2電圧を、所定期間内において第2電極対としての第2作用極23及び第2対極24に印加して、所定の測定タイミングで複数回に亘り第2電流値を測定する。一方、第2または、第4の測定装置6は、第1電圧を、所定の第1電流値の測定タイミングから所定の短時間の範囲内に印加する。また、第2または、第4の測定装置6は、第1電圧を、所定期間における第1電流値の測定タイミングのみにパルス状に第1電極対としての第1作用極21及び第1対極22に第1電圧を印加して、第1電流値を測定する。
【0126】
3つの第2応答値H1,H2,H3及び1つの第1応答値G1が計測されると、CPU72は、3つの換算マトリックスを参照して、3つの血液成分量を換算する。ここで、3つの換算マトリックスは、第1応答値G1と第2応答値H1、第1応答値G1と第2応答値H2、第1応答値G1と第2応答値H3、の組み合わせごとに用意しておく。
【0127】
CPU72は、図17の換算マトリックスG1−H1を用いて、第1応答値G1及び第2応答値H1を、血液成分量に換算する。同様に、CPU72は、図18の換算マトリックスG1−H2を用いて、第1応答値G1及び第2応答値H2を、血液成分量に換算する。同様に、CPU72は、図19の換算マトリックスG1−H3を用いて、第1応答値G1及び第2応答値H3を、血液成分量に換算する。
【0128】
具体的には、第2または、第4の測定装置6は、図17乃至図19のような換算マトリックスを、データ記憶部74に記憶しておく。第2または、第4の測定装置6は、未知の血液について第1応答値及び第2応答値を計測して、G1及びH1の組、G1とH2の組、G1とH3の組を取得する。そして、第2または、第4の測定装置6は、換算マトリックス上に第1応答値と第2応答値との組み合わせで決まる点にプロットし、当該第1応答値と第2応答値を、血液成分量に換算する。その結果、第2または、第4の測定装置6は、G1及びH1の組、G1とH2の組、G1とH3の組のそれぞれについて血液成分量を得ることができる。
【0129】
次に第2または、第4の測定装置6は、上述した複数の第1応答値及び第2応答値の組ごとの3つの血液成分量を含む記録データと、測定データとしての3つの血液成分量とを比較する。第2または、第4の測定装置6は、比較の結果、最も測定データに近い記録データを抽出できる。第2または、第4の測定装置6は、この抽出した記録データを得た血液の血液成分量を、バイオセンサ1に導入された血液の血液成分量として演算できる。
【0130】
ここで、図20に示すように、バイオセンサ1に導入された検体としての血液の温度は、バイオセンサ1に導入された後の経過時間に応じて低下する。上述したように血液成分量の測定時間(所定時間)を7秒にした場合、バイオセンサ1に導入された時の血液温度によって測定時間における低下の仕方が異なる。バイオセンサ1に導入された時の血液温度が高いほど、血液温度の低下傾きが高くなる。また、バイオセンサ1に導入された時の血液温度によって測定時間が終了したときの血液温度は異なる。バイオセンサ1に導入された時の血液温度が高いほど測定時間が終了したときにおける周囲温度との差が大きくなる。例えば30℃の血液がバイオセンサ1に導入された場合、測定時間が終了したときにおける血液温度と周囲温度との温度差はT1となる。また、25℃の血液がバイオセンサ1に導入された場合、測定時間が終了したときにおける血液温度と周囲温度との温度差はT2となる。20℃の血液がバイオセンサ1に導入された場合、測定時間が終了したときにおける血液温度と周囲温度との温度差はT3となる。
【0131】
第2または、第4の測定装置6によって測定される第1応答値及び第2応答値が血液温度に依存するので、測定時間の終了時のみに第1応答値及び第2応答値を測定しても、正確な第1応答値及び第2応答値が得られない。したがって、第2または、第4の測定装置6は、測定する所定時間において複数回に亘って第1応答値を測定すると共に1回だけ第2応答値を測定する。そして、第2または、第4の測定装置6は、第1応答値と第2応答値とを任意に組み合わせて、当該任意の組み合わせごとに血液成分量を得る。
【0132】
第2または、第4の測定装置6は、例えば図21に示すような記録データをデータ記憶部74に記憶しておく。この記録データは、一例として、周囲温度及び検体導入温度ごとに、グルコース濃度(第1成分量)が100mg/dl,血球量(第2成分量)が25%の血液から得た複数の血液成分量を格納したものである。なお、検体導入温度は記録データに含めておく必要はない。具体的には、記録データは、周囲温度Aと、血液成分量Aa1と、血液成分量Aa2と、血液成分量Aa3と、が対応づけられている。血液成分量Aa1は図17の換算マトリックスG1−H1により換算した。血液成分量Aa2は図18の換算マトリックスG1−H2により換算した。血液成分量Aa3は図19の換算マトリックスG1−H3により換算した。記録データは、周囲温度に対して複数の検体導入温度についての血液成分量を格納しておくことが望ましい。また、記録データは、複数の周囲温度ごとに血液成分量を格納しておくことが望ましい。
【0133】
この第2または、第4の測定装置6は、複数のうち何れかの第2応答値と第1応答値の組み合わせごとに換算した複数の血液成分量と、記録データに含まれる複数の血液成分量とを比較して、最も近似した記録データを判断できる。具体的には、周囲温度がA付近である場合、第2または、第4の測定装置6は、周囲温度がAに対応した各組み合わせの血液成分量Aa1〜Aa3、Ab1〜Ab3、Ac1〜Ac3を抽出する。第2または、第4の測定装置6は、測定データとしての各組み合わせの血液成分量と、抽出した記録データに含まれる血液成分量Aa1〜Aa3、Ab1〜Ab3、Ac1〜Ac3とを比較する。第2または、第4の測定装置6は、測定データに含まれる複数の血液成分量が、記録データに含まれる血液成分量Aa1〜Aa3、Ab1〜Ab3、Ac1〜Ac3と近似している場合には、バイオセンサ1に導入された血液のグルコース濃度を100mg/dlと演算できる。
【0134】
以上のように、この第2または、第4の測定装置6によれば、測定した複数の第2応答値及び1つの第1応答値を用いて、バイオセンサ1に導入された血液の血液成分量を演算できる。これにより、このバイオセンサシステムによれば、血液成分量の計測誤差を抑制することができる。
【0135】
以上のように、この測定装置6によれば、測定した複数の第2応答値及び1つの第1応答値を用いて、バイオセンサ1に導入された血液の血液成分量を演算できる。これにより、このバイオセンサシステムによれば、血液成分量の計測誤差を抑制することができる。
【0136】
ところで、測定データとしての血液成分量は、バイオセンサ1の周囲温度によって異なる値となる。例えば、図17乃至図19に示した換算マトリックスが25度の環境温度で取得されたとする。図22に示すように、バイオセンサ1の周囲温度が25度でグルコース濃度が125mg/dlの血液を計測し、第2応答値H1,H2,H3、第1応答値G1から換算して得た血液成分量は、全て組み合わせにおいて125mg/dlとなる。しかし、バイオセンサ1の周囲温度が35度となると、血液成分量は、全ての組み合わせにおいて異なった値となる。
【0137】
また、グルコース濃度は、血球量が変化すると、例えば図23に示すような影響度だけ変化して演算されてしまう。血球量が25%変化すると、グルコース濃度が100mg/dlの場合にはグルコース濃度が20%変化して演算されてしまう。また、グルコース濃度が200mg/dlの場合にはグルコース濃度が25%変化して演算されてしまい、グルコース濃度が110mg/dlの場合にはグルコース濃度が21%変化して演算されてしまう。
【0138】
更にバイオセンサ1周囲の温度変化が生じた場合、図24に示すように、既知のグルコース濃度が100mg/dl、血球量が1000の血液を測定しても、温度影響度によって測定される第1応答値及び第2応答値も変化してしまう。
【0139】
以上のように、周囲温度によって血液成分量が異なって演算されてしまう。また、第1の測定装置、第3の測定装置、第1の測定方法または第3の測定方法において、周囲温度、血球量(第2成分量)によってグルコース濃度(第1応答値)が変化して演算されてしまう。また、第2の測定装置、第4の測定装置、第2の測定方法または第4の測定方法において、周囲温度、血球量によって第1応答値が変化してしまう。したがって、同じグルコース濃度の血液を測定して第1応答値及び第2応答値を得ても、図25に示すように、ケースA、Bのように、測定する機会(ケース)によって血液成分量が異なる。ケースAではグルコース濃度が103mg/dlとなる。一方、ケースBではグルコース濃度が110mg/dlとなる。
【0140】
よって、測定装置6は、周囲温度による第1応答値及び第2応答値の影響を考慮して、データ記憶部74に記憶する記録データを、周囲温度ごとに記憶しておくことが望ましい。この測定装置6は、データ記憶部74に記憶された複数の記録データのうち現在の周囲温度に近い記録データを抽出する。測定装置6は、現在の周囲温度によって抽出された記録データに含まれる複数の血液成分量と、測定データとしての複数の血液成分量とを比較する。これによって、測定装置6は、当該測定データに最も近似している記録データを得た血液の血液成分量を、バイオセンサ1に導入された血液の血液成分量として演算できる
【0141】
上述したように、第1の測定装置、第3の測定装置、第1の測定方法または第3の測定方法において、バイオセンサ1内の血液温度は導入時から測定終了時までに変動し、かつ、第1応答値は第2成分量に応じて変動する。したがって、第1または第3の測定装置6は、上述したように、所定の測定時間に測定した複数の第1応答値と第2応答値を任意に組み合わせ、複数の血液成分量を算出することが望ましい。または、第2の測定装置、第4の測定装置、第2の測定方法または第4の測定方法において、バイオセンサ1内の血液温度は導入時から測定終了時までに変動し、かつ、第1応答値は血球量に応じて変動する。したがって、第2または第4の測定装置6は、上述したように、所定の測定時間に測定した1つの第1応答値と複数の第2応答値を任意に組み合わせて、複数の血液成分量を換算することが望ましい。これにより、測定装置6は、上述したように血液温度が変化し、第2成分量が未知であっても、任意の組み合わせの第1応答値と第2応答値から血液成分量を換算して、測定データとしての血液成分量に近似した記録データを選択できる。
【0142】
具体的には、第1または第3の測定装置6によれば、第1応答値の測定を、所定期間のうちの前半に含まれる第1期間と後半に含まれる第2期間とに行わせる。これにより、温度変化が大きいときの第1応答値と、温度変化が安定したときの第1応答値とを取得できる。更に、温度変化が安定したときの第2応答値を取得できる。これにより、第1または第3の測定装置6は、血液の温度変化の仕方が測定する機会ごとに異なっていても、複数の第1応答値と第2応答値を測定して、当該測定データと記録データとを比較して、血液成分量を演算できる。これにより、血液の温度変化によって血液成分量が変動して、正確な血液成分量を得られないという影響を抑制できる。
【0143】
または、具体的には、第2または第4の測定装置6によれば、第2応答値の測定を、所定期間のうちの前半に含まれる第1期間と後半に含まれる第2期間とに行わせる。これにより、温度変化が大きいときの第2応答値と、温度変化が安定したときの第2応答値とを取得できる。更に、温度変化が安定したときの第1応答値を取得できる。これにより、第2または第4の測定装置6は、血液の温度変化の仕方が測定する機会ごとに異なっていても、複数の第2応答値と第1応答値を測定して、当該測定データと記録データとを比較して、血液成分量を演算できる。これにより、血液の温度変化によって血液成分量が変動して、正確な血液成分量を得られないという影響を抑制できる。
【0144】
上述した第1または第3の測定装置6は、血液成分量を演算する精度を向上させるために、所定期間内により多くの第1応答値の測定を行うことが望ましい。第1または第3の測定装置6は、多くの第1応答値及び1つの第2応答値をそれぞれ組み合わせて、第1応答値と第2応答値との組を複数得る。このように、測定データとしての多数の第1応答値と第2応答値から得た多数の血液成分量と、記録データとしての多数の血液成分量とを比較して、測定データに最も近似した記録データを選択できる。したがって、この第1または第3の測定装置6によれば、測定された多数の血液成分量と最も近い血液成分量を含む記録データを得て、バイオセンサ1に導入された血液の血液成分量を演算できる。
【0145】
または、上述した第2または第4の測定装置6は、血液成分量を演算する精度を向上させるために、所定期間内により多くの第2応答値の測定を行うことが望ましい。第2または第4の測定装置6は、多くの第2応答値及び1つの第1応答値をそれぞれ組み合わせて、第1応答値と第2応答値との組を複数得る。このように、測定データとしての多数の第2応答値と第1応答値から得た多数の血液成分量と、記録データとしての多数の血液成分量とを比較して、測定データに最も近似した記録データを選択できる。したがって、この第2または第4の測定装置6によれば、測定された多数の血液成分量と最も近い血液成分量を含む記録データを得て、バイオセンサ1に導入された血液の血液成分量を演算できる。
【0146】
このように、多数の血液成分量を含む記録データを用意しておき、同じ応答値の組み合わせから得た多数の血液成分量を含む測定データを使用して、バイオセンサ1に導入された血液の血液成分量を演算できる。したがって、上述したようにグルコース濃度が血液温度の変化の仕方、周囲温度、血球量によって変動しても、多数の血液成分量を用いることによって、少ない誤差のグルコース濃度を演算できる。
【0147】
つぎに、上述した実施形態とは異なる他の実施形態について説明する。
【0148】
この実施形態として示す第1または第3の測定装置6は、測定した複数の第1応答値と第2応答値のうちの少なくとも一部を換算して得た複数の血液成分量を用いた多変量解析を行って、バイオセンサ1に導入された血液の血液成分量を演算してもよい。この測定装置6は、図26に示すように、データ記憶部74を備えていない点で、上述した測定装置6とは異なる。
【0149】
または、この実施形態として示す第2または第4の測定装置6は、測定した複数の第2応答値と第1応答値のうちの少なくとも一部を換算して得た複数の血液成分量を用いた多変量解析を行って、バイオセンサ1に導入された血液の血液成分量を演算してもよい。この測定装置6は、図26に示すように、データ記憶部74を備えていない点で、上述した測定装置6とは異なる。
【0150】
この第1または第3の測定装置6は、上述した実施形態と同様に、複数の第1応答値及び第2応答値を測定する。または、この第2または第4の測定装置6は、上述した実施形態と同様に、複数の第2応答値及び第1応答値を測定する。CPU72は、測定された第1応答値の一部又は全部、及び、第2応答値を換算して、複数の血液成分量を得る。各血液成分量は、第1成分量及び第2成分量の双方であってもよく、第1成分量及び第2成分量の一方であってもよい。CPU72は、複数の血液成分量を用いて、多変量解析を行って、バイオセンサ1に導入された血液の血液成分量を得る。測定装置6は、多変量解析として、例えば重回帰分析を行う。この重回帰分析は、応答関数として、例えば、
血液成分量=a1×G1+a2×G2+・・・+an×Gn+b1×H1+b2×H2+・・・+bm×Hm+C0
といった1次多項式からなる重回帰式を用いる。上記重回帰式において、G1〜Gnは任意の第1成分量であり、H1〜Hmは任意の第2成分量であり、a1〜an,b1〜bmは血液成分量に乗算される係数であり、n≠mまたはn=mであり、Coは定数である。この重回帰分析によって、既知の血液成分量を目標値にして、重回帰式における係数決定のためのプロセスを行う。すなわち、CPU72は、重回帰式に含まれる複数の第1成分量及び第2成分量に掛け合わせる係数(a1〜an,b1〜bm)を、周囲温度、検体導入温度を種々に制御した条件下で、精度の高い血液成分量を得るように決定する。これにより、周囲温度、検体導入温度が複合された、測定時の温度影響に対する補正要素たる応答関数を得る。これによってCPU72は、第1応答値及び第2応答値を換算して得られた中間換算値と既知の血液成分量の差を0にする補正式を回帰分析によって決定する。
【0151】
以上のように、この測定装置6によれば、複数の血液成分量から、多変量解析による演算により最終的な血液成分量を求めることができる。これにより、この測定装置6によれば、第1応答値や第2応答値そのものを用いて血液成分量を求めるよりも、バイオセンサ1に導入された血液の血液成分量の計測誤差を抑制することができる。
【0152】
なお、多変量解析によって求める値は、血液成分量に限られない。例えば、換算した血液成分量を補正する補正量を求めてもよい。
【0153】
また、重回帰式として用いる応答関数として、以下のような2次多項式を用いてもよい。
【0154】
【数1】
【0155】
本発明の測定装置6において、上記2次多項式は、各変数xiとして、第1成分量(G1〜Gm、mは測定される数値の数)、第2成分量(H1〜Hm、mは測定される数値の数)として任意に組み合わせて当てはめて形成することができる。2次多項式は、上記の1次多項式の場合と同様、学習処理によって係数が決定される。
【0156】
因みに、上記の2次多項式において、第1成分量、第2成分量を、合計18組選んで血液成分量の換算式または補正式を生成する場合、その補正式の項数は、190項(定数項を含む)となる。
【0157】
実際に各係数を決める際には、高次項(xi2やxixj)を、変数変換し、媒介変数の1次項として取り扱うことが可能である。係数決定の際の実際の計算は、前記1次多項式の場合と同様となる。なお、2次多項式の変数としては、上述した第1成分量及び第2成分量以外に、上述の測定装置6により計測された周囲温度も含めても良い。
【0158】
血液成分量の換算式または補正式を、2次多項式にした場合、1次多項式の場合より、実際の各項の分布と誤差が少ない補正式を得ることができる場合が多い。
【0159】
なお、上記の2次多項式は、前記補正式に取り入れる血液成分量の、各変数を軸にした多次元空間での分布を示す超曲面を2次項までテイラー展開したときの近似関数と等価である。すなわち、推測される分布が連続的であることが原理的に担保されている限りにおいて、各変数(選択した第1成分量群、第2成分量群)の十分に狭い領域に適用すれば、十分な精度を得ることが原理的に可能である。更に高次の変数を用いることもできるが、同じ数量の応答値を組み合わせる場合、血液成分量の換算式または補正式の項数がより多くなる。これにより、計算処理が煩雑になる、あるいは、係数を決定するために必要な最小データ数が多くなるという欠点がある。
【0160】
また、上記の血液成分量の換算式あるいは補正式の形式として、線形回帰式を用いる例を示したが、回帰式は必ずしも線形である必要はなく、血液成分量、周囲温度を用いた変数xiを任意の演算子を介して組み合わせた項の線形加算によって構成しても良い。この場合に、各項の係数を決定するための回帰分析を行う際には、1次多項式、2次多項式と同様、各項を媒介変数の1次式に変数変換する。これにより、1次多項式の重回帰分析の手法を適用して、行うことができる。
【0161】
上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【0162】
すなわち、上述した実施形態では、測定データとしての複数の血液成分量と、記録データとしての複数の血液成分量とを比較して、最も近似する記録データを得ていた。しかし、測定データとしての複数のグルコース濃度と記録データとしての複数のグルコース濃度とを比較してもよい。さらに、測定データとしての複数の血球量と記録データとしての複数の血球量とを比較してもよい。
【符号の説明】
【0163】
1 バイオセンサ
2 血液成分計測層
6 測定装置
21 第1作用極(第1電極対)
22 第1対極(第1電極対)
23 第2作用極(第2電極対)
24 第2対極(第2電極対)
25 非干渉部
26 検知電極
72 CPU(測定手段、制御手段、演算手段)
74 データ記憶部(記憶手段)
81,82 温度測定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26