特許第6334535号(P6334535)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334535
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】とりわけターボ機械用の遊星歯車減速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20180521BHJP
   F16H 1/28 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   F16H57/04 D
   F16H1/28
   F16H57/04 J
   F16H57/04 K
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-529106(P2015-529106)
(86)(22)【出願日】2013年9月3日
(65)【公表番号】特表2015-532702(P2015-532702A)
(43)【公表日】2015年11月12日
(86)【国際出願番号】FR2013052016
(87)【国際公開番号】WO2014037659
(87)【国際公開日】20140313
【審査請求日】2016年8月31日
(31)【優先権主張番号】1258231
(32)【優先日】2012年9月4日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502150878
【氏名又は名称】イスパノ・シユイザ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェロー,バンジャマン
(72)【発明者】
【氏名】ベック,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】モレリ,ボリス
(72)【発明者】
【氏名】ペルティエ,ジョルダーヌ
【審査官】 高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−017788(JP,A)
【文献】 特表2010−540937(JP,A)
【文献】 特開2009−209794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
F16H 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸の内部太陽歯車(2)および外部太陽歯車(3)を備える、ターボ機械用の遊星歯車減速機(1)にして、内部太陽歯車(2)はその軸(X)を中心に回転可能であり、外部太陽歯車(3)は静止しており、少なくとも1つの遊星歯車(4)は遊星キャリア(6)上で回転して移動可能であるように装着され内部太陽歯車(2)および外部太陽歯車(3)の両方と噛み合い、遊星キャリア(6)は内部太陽歯車(2)および外部太陽歯車(3)の軸(X)を中心に旋回することが可能であり、遊星歯車(4)は、遊星キャリア(6)の円筒形表面(8)を中心に回転して移動可能であるように装着された円筒形の内表面(7)を有し、減速機(1)は、前記円筒形表面(7、8)の間の境界面(9)に油を供給するための手段をさらに備える、遊星歯車減速機であって、油供給手段はチャンバ(10)を備え、チャンバは、遊星キャリア(6)内に設けられ、油のバッファ容積を形成するように意図され、遊星キャリア(6)の回転軸(X)から離間したいわゆる下部域(15)と、遊星キャリア(6)の回転軸(X)に近いいわゆる上部域(16)と、前記境界面(9)および上部域(16)において開口する少なくとも1つの主要通路(19)と、前記境界面(9)および下部域(15)において開口する少なくとも1つの二次通路(20a、20b)とを有し、前記二次通路(20a、20b)は、少なくとも2つの要素(22)を積み重ねることによって得られる、圧力降下を発生させることが可能な装置を備え、各要素(22)は、圧力降下を発生させることが可能であり入口(28)および出口(29)を備える流体循環通路(27)を備え、一方の要素(22)の通路(27)の出口(29)および入口(28)はそれぞれ、他方の要素(22)の通路(27)の入口(28)および出口(29)にそれぞれ接続されており
同じ構造を有するいくつかの円筒形要素(22)を備え、前記要素(22)のうちの各々の通路(27)の入口(28)および出口(29)は所定の角度(α)で角度的に離間しており、位置決め手段(25、26)は同じ角度値(α)で2つの隣接要素(22)を角度的にずらすことを可能にすることを特徴とする、遊星歯車減速機。
【請求項2】
圧力損失を発生させるようになされた装置が、互いに対して要素(22)を位置決めするための手段(25、26)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の減速機。
【請求項3】
要素(22)のうちの少なくとも1つが、隣接要素(22)の相補的筐体(26)と協働する心だしピン(25)を備えることを特徴とする、請求項2に記載の減速機。
【請求項4】
各要素(22)の通路(27)が、全体的に迷路の形状を有し、少なくとも1つの屈曲領域(30、31、32)を備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の減速機。
【請求項5】
要素(22)のうちの少なくとも1つの通路(27)が、粒子を捕捉するように意図された陥凹(33)を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の減速機。
【請求項6】
各要素(22)が2つの反対側の表面(23、24)を備え、通路(27)は一方の表面(24)に形成され、通路(27)の入口(28)または出口(29)は、前記要素(22)を通り他方の表面(23)上に開口する孔を備えることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の減速機。
【請求項7】
陥凹(33)が、遠心分離によって粒子を捕捉することが可能であるように、遊星キャリア(6)の回転軸(X)と反対の方向に、対応する要素(22)の通路(27)から延在することを特徴とする、請求項5に記載の減速機。
【請求項8】
各要素(22)が、遊星キャリア(6)の回転軸(X)に対面する第1の表面(24)と、第1の表面(24)に反対側の第2の表面(23)とを有し、各要素(22)の通路(27)は第1の表面(24)に形成され、前記通路(27)の出口(29)は、前記要素を通り第2の表面(23)上に開口する孔を有することを特徴とする、請求項6に記載の減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力降下を発生させるようになされた流体循環通路を形成する装置を備える、特にターボ機械用の遊星歯車減速機に関する。
【背景技術】
【0002】
遊星歯車は従来、同軸の内部太陽歯車および外部太陽歯車を備え、内部太陽歯車はその軸を中心に回転可能であり、外部太陽歯車は静止しており、少なくとも1つの遊星歯車は遊星キャリア上で回転して移動可能であるように装着され内部太陽歯車および外部太陽歯車の両方と噛み合い、遊星キャリアは内部太陽歯車および外部太陽歯車の軸を中心に旋回することが可能である。入口は典型的には、内部太陽歯車によって形成され、出口は遊星キャリアによって形成される。外遊星は軌道歯車とも称される。
【0003】
ターボ機械において、遊星歯車減速機は特に、タービンの回転速度に関わらず、ファンロータの回転速度を減速させるための減速装置として使用される。
【0004】
欧州特許第1703174号明細書はこのような遊星歯車減速機を記載しており、そこでは、遊星歯車を形成する鎖歯車がジャーナル軸受によって遊星キャリアのピボット上に装着されている。言い換えると、遊星キャリアは、遊星歯車の円筒形の孔の中に係合した円筒形のピボットを備える。減速装置は、前記円筒形表面の間の境界面において開口する油供給通路をさらに備える。作動時、焼き付きを防止するために、油の層が境界面に存在しなければならない。
【0005】
ジャーナル軸受は一般的に、転動体を使用する軸受よりも軽く、嵩張らず、信頼性が高く、ジャーナル軸受は、絶えず油が供給され油が研磨粒子を含まない限り、ほぼ無限の耐用年数を有する。
【0006】
油供給回路における故障の場合、たとえばポンプ故障の場合、ジャーナル軸受への油の供給は、たとえば補助ポンプを始動させるのにまたはターボ機械を停止するのに十分長く維持されなければならない。この期間はたとえば数十秒になる。
【0007】
このために、欧州特許第1703174号明細書は、遊星キャリア内のアキュムレータの形成を提供し、各アキュムレータは所与の持続時間にわたって故障の場合にジャーナル軸受に油を供給することが可能である。このようなアキュムレータの構造およびその場所は、遊星キャリアの生産を困難にし、その寸法および質量を増加させる。
【0008】
また、機能停止の場合にジャーナル軸受に供給される油の流れを制御することは、比較的困難である。特に、焼き付きを防止するのに十分でありながら、十分に長い時間にわたって油を供給することが可能であるように、比較的低い流量であるべきである。
【0009】
小さい直径を有する通路が一般的に、流体流量を制限するために使用される。しかしながらこの用途では、比較的長い長さ(たとえば、通路の直径のおよそ100倍の長さ)にわたって十分に小さい直径を有する通路は、実現するのが困難であるばかりでなく、油回路に含まれた粒子による閉塞も受ける。別の解決策は、流量を制限するように通路の入口でろ過器を使用することであり得るが、この場合も、粒子によるろ過器の閉塞の危険性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許第1703174号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はより具体的には、この問題に対する単純で効率的な費用効果の高い解決策を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このために、本発明は、少なくとも2つの要素を積み重ねることによって生ずる、圧力降下を発生させるようになされた流体循環通路を形成する装置を提供し、各要素は、圧力降下を発生させるようになされており入口および出口を備える流体循環通路を備え、一方の要素の通路の出口および入口はそれぞれ、他方の要素の通路の入口および出口にそれぞれ接続されている。
【0013】
このような個々の要素は容易に達成され、組み立て後に様々な組み立て済み要素の一連の通路から形成された連続する通路を形成する。要素の数が多いほど、装置の通路内の圧力降下が大きくなる。加えて、各要素の通路は必ずしも非常に小さい断面を有するとは限らず、これは、流体中に存在する粒子による装置の閉塞を防止することを可能にする。
【0014】
装置は好ましくは、互いに対して要素を位置決めするための手段を備える。
【0015】
次いで要素のうちの少なくとも1つは、隣接要素の相補的陥凹と協働する心だしピンを含んでもよい。
【0016】
このため要素の通路の入口または出口は、隣接要素の通路の出口または入口に対向するように保証される。このため装置の通路の連続性が確保される。
【0017】
有利には、各要素の通路は全体的に迷路の形状を有し少なくとも1つの屈曲領域を備え、これは、通路断面を小さくする必要を伴わずに圧力降下を増加させることを可能にする。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、要素のうちの少なくとも1つの通路は、粒子を捕捉するように意図された陥凹を有する。
【0019】
このため粒子は装置によって捕捉され、たとえばジャーナル軸受において、下流で排出される。
【0020】
加えて、各要素は2つの反対側の表面を備えてもよく、通路は一方の表面に形成され、通路の入口または出口は、前記要素を通り他方の表面上に開口する孔を備える。
【0021】
このような構造を有する要素は、比較的製造しやすい。
【0022】
加えて、装置は同じ構造を有するいくつかの円筒形要素を備えてもよく、各前記要素の通路の入口および出口は所定の角度で角度的に離間しており、位置決め手段は同じ角度値で2つの隣接要素を角度的にずらすことを可能にする。
【0023】
本発明は、同軸の内部太陽歯車および外部太陽歯車を備える、特にターボ機械用の遊星歯車減速機であり、内部太陽歯車はその軸を中心に回転可能であり、外部太陽歯車は静止しており、少なくとも1つの遊星歯車は遊星キャリア上で回転して移動可能であるように装着され内部太陽歯車および外部太陽歯車の両方と噛み合い、遊星キャリアは内部太陽歯車および外部太陽歯車の軸を中心に旋回することが可能であり、遊星歯車は、遊星キャリアの円筒形表面の周りを回転して移動可能であるように装着された円筒形の内表面を有し、減速機は、前記円筒形表面の間の境界面に油を供給するための手段をさらに備える、遊星歯車減速機であって、油供給手段はチャンバを備え、チャンバは、遊星キャリア内に設けられ、油のバッファ容積を形成するように意図され、遊星キャリアの回転軸から離間したいわゆる下部域と、遊星キャリアの回転軸に近いいわゆる上部域と、前記境界面および上部域において開口する少なくとも1つの主要通路と、前記境界面および下部域において開口する少なくとも1つの二次通路とを有し、前記二次通路は上述のタイプの装置を備えることを特徴とする遊星歯車減速機にさらに関する。
【0024】
作動時、遠心力の効果の下で、チャンバ内に存在する油は半径方向外向きに押しやられる。したがって、遊星キャリア内に設けられたチャンバは、最初に遊星キャリアの回転軸から離間した下部領域内を満たし、次いで上部領域内を満たす。
【0025】
通常作動時、すなわち油供給回路内に故障がない際、チャンバに入る油の流れは多く、このため油面は前記チャンバの上部領域に到達する。油は次いで、ジャーナル軸受に、すなわち遊星キャリアの円筒形表面と遊星歯車の円筒形表面との間の境界面に供給するために、主要通路を通って流出することができる。
【0026】
そのサイズを考慮すると、二次通路は、通常作動時チャンバが満たされるように、すべての油を流れさせるものではないことに留意されたい。
【0027】
故障の場合、チャンバに入る油の流れはゼロになり、チャンバ内の油量は減少し、もはや上部領域に到達しない:油はもはや主要通路を通って流出せず、二次通路のみを通って流出することができる。ジャーナル軸受に供給する油の流れはこのため減少するが、たとえば補助ポンプを始動させるのにまたはターボ機械を停止するのに必要な制限された期間にわたって、軸受の焼き付きを防止するのに十分である(ジャーナル軸受の劣化作動)。
【0028】
本発明は、油に含まれた粒子による二次通路の閉塞の危険性を回避しながら、故障の場合に油の低流量を発生させるのに十分に高い制御された圧力損失を有する二次通路を提供することをさらに可能にする。
【0029】
陥凹は好ましくは、遠心分離によって粒子を捕捉することが可能であるように、遊星キャリアの回転軸と反対の方向に、対応する要素の通路から延在する。
【0030】
加えて、各要素は、遊星キャリアの回転軸に対面する第1の表面と、第1の表面に反対側の第2の表面とを有し、各要素の通路は第1の表面に形成され、前記通路の出口は、前記要素を通り第2の表面上に開口する孔を有する。
【0031】
以下の添付図面を参照しながら、非限定例によって与えられる以下の説明を読むと、本発明はより良く理解され、本発明のその他の詳細、特徴、および利点は明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】遊星歯車の概略正面図である。
図2】遊星歯車の運動図である。
図3】本発明による減速機の遊星キャリアおよび遊星歯車の一部の断面図である。
図4図3の線Aに沿った、遊星キャリアの一部の長手方向断面図である。
図5図3の線Bに沿った、遊星キャリアの一部の長手方向断面図である。
図6】本発明による装置が装着されている、遊星キャリアの一部の詳細断面図である。
図7】本発明による装置の要素の斜視図である。
図8】本発明による装置の要素の斜視図である。
図9】2つの同一要素の積み重ねを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1および図2は、本発明による遊星歯車減速機1の構造を概略的に示す。遊星歯車減速機は従来、同軸の内部太陽歯車2(太陽とも称される)および外部太陽歯車3(軌道歯車とも称される)を備える。内部太陽歯車2はその軸を中心に回転可能であり、外部太陽歯車3は静止している。減速機は、遊星キャリア6のピボット5上で回転して移動可能であるように装着された遊星歯車4をさらに備える。各遊星歯車4は、内部太陽歯車2および外部太陽歯車3の両方と噛み合う。遊星キャリア6は、内部太陽歯車2および外部太陽歯車3の軸Xを中心に旋回することが可能である。
【0034】
入口は内部太陽歯車2によって形成され、出口は遊星キャリア6によって形成される。
【0035】
ターボ機械において、遊星歯車減速機は特に、タービンの回転速度に関わらず、ファンロータの回転速度を減速させるための減速装置として使用される。
【0036】
図3から図5において最も良くわかるように、各遊星歯車4は、ジャーナル軸受を形成するように、遊星キャリア6に対応するピボット5の円筒形表面8を中心に旋回するように装着された円筒形の内表面7を含む。
【0037】
したがって2つの円筒形表面7、8の間の境界面9には、油が供給されなければならない。このために、減速機1は、各ピボット5のY軸に沿って実質的に延在するチャンバ10を備える供給手段を備え、チャンバ10の少なくとも一方の端11は、油入口通路に接続されている。一方の端11のみが油入口を形成する場合には、他方の端は塞がれている。
【0038】
チャンバ10は全体的に円筒形であり、より特に、半径方向に延在する中央隔壁12によって分離された2つの部分10a、10bを備える。チャンバ10の側端11には、チャンバ10よりも小さい直径を有する孔が設けられており、少なくとも1つのこのような孔は、上記で示されたように油入口を形成する。
【0039】
参照番号13が付された線は、チャンバ10のいわゆる下部点、すなわち遊星キャリア6の回転軸から最も離れた点を形成する。逆に、参照番号14が付された線はチャンバ10のいわゆる上部点、すなわち遊星キャリア6のX回転軸に最も近い点を形成する。同様に、いわゆる上部領域および下部領域は、それぞれ参照番号15および16が付されている。X軸は、図3のA断面内にあるが、図3から図5には示されていない。
【0040】
作動時、遊星キャリア6の回転によって発生する遠心力の効果の下で、油は半径方向外向きに押されてチャンバ10内に戻される。したがって、最初にチャンバ10の下部領域15が満たされ、次いで上部領域16が満たされる。
【0041】
チャンバ10の部分10a、10bの上部領域16内に向かって開口する孔17は、中心壁12を通る。チャンバ10の部分10a、10bの下部領域15内に開口する2つの孔18は、中心壁12をさらに通る。孔18は、図3のA平面の両側に、すなわち遊星キャリア6のX回転軸を通過しチャンバ10および対応するピボット5のY軸を通過する半径方向平面の両側に位置する。各孔18の直径は、孔17の直径よりも小さくてもよい。
【0042】
主要通路19は、中央隔壁12内に半径方向に延在し、ピボット5の外側円筒壁8および孔17において開口する。
【0043】
図3から図5の実施形態において、チャンバ10の各部分10a、10bは二次通路20a、20bをさらに備え、二次通路は、半径方向に延在しピボット5の外側円筒壁8において開口し、チャンバ10の対応する部分10a、10bの下部点13において開口する。
【0044】
各二次通路20a、20bの断面は、主要通路19の断面よりも小さい。
【0045】
通常作動時、油は、油面がチャンバ10の上部領域16内に位置するのに十分な流量でチャンバ10に入る。油量は、孔18に起因してかつ孔17により、チャンバ10の両方の部分10a、10b内で等しい。
【0046】
次いで油は主要通路19に入り、遠心分離によって境界面9に供給される。
【0047】
主要通路19の断面は、ジャーナル軸受の正確な作動を得ていかなる焼き付き現象も回避するように課されたまたは計算された仕様に厚さが対応する油膜を境界面9において得るようなサイズになされる。
【0048】
故障の場合、油量は、図3の参照番号21が付されたレベルに到達するまで急速に減少し、そこからは油はもはや孔17を通って主要通路19に入ることができない。この時から、油は二次通路20a、20bを通らなければ(遠心分離の効果の下で)流出することができない。劣化作動のこの段階の間、たとえば30秒程度の所与の期間にわたってジャーナル軸受の焼き付きを防止するように、十分な量の油が二次通路20a、20bを介して境界面9に到達する。この期間は、たとえば補助ポンプの再始動またはエンジンの停止を可能にするのに十分でなければならない。このため二次通路20a、20bの断面は、所望の時間にわたってこのような劣化モードを許容するように決定される。
【0049】
図6から図9において最も良くわかるように、各二次通路20a、20bは、複数の同一要素22の積み重ねを備える装置によって形成され、要素22の構造は、図7および図8に示されている。
【0050】
各要素22は、全体的に円筒形の形状を有し、遊星キャリア6のX回転軸から離れたいわゆる下面23と、X軸に近いいわゆる反対側の上面24とを備える。いずれの面23、24も、互いに平行である。各要素22の軸は、参照符号Zが付されている。
【0051】
心だしピン25は上面24から突起し、一致する形状を有する陥凹26は下面23に形成される。あるいは、その逆が提供されてもよい。
【0052】
通路27が、要素22の厚み部分の上面24にさらに形成される。通路27は、全体的に長方形または正方形の断面を有する。通路は、参照番号30、31、32がそれぞれ付された第1、第2、および第3の連続的直線部分によって接続された入口28および出口29を備える。第1の部分30は、入口28に接続されている。第2の部分31は、第1の屈曲を形成するように、第1の部分30に対して実質的に直角に延在する。同様に、第3の部分32は、第2の屈曲を形成するために第2の部分31に対して実質的に直角に延在する。第3の部分32は出口29にさらに接続されている。出口は、要素22を通り要素22の下面23において開口する孔によって形成される。
【0053】
第1の部分30および第2の部分31は各々、対応する部分30、31の全幅にわたって延在する陥凹33を備える。各陥凹33は、通路27の底部から下面23に向かって延在する。
【0054】
各陥凹33の底壁は、要素22の下面23および上面24に対して全体的に傾斜していてもよく、次いで最も深い陥凹領域は、入口28側に位置する。
【0055】
通路27の入口28および出口29は、Z軸に対して角度αで互いに対して角度的にずらされている。図示された例において、この角度αは90°程度の角度である。ピン25および陥凹26もまた、同じ角度値αでずらされている。
【0056】
上記に示されたように、装置はいくつかの同一要素22を積み重ねることによって実現される。このため要素22のピン25は隣接要素22の陥凹26の中に係合し、要素22の通路27の出口29は隣接要素22の通路27の入口28に向かい合って位置して、連続する二次通路20a、20bを形成する。
【0057】
積み重ねの端に位置決めされた要素22が、互いに異なる構造を有してもよいことに留意されたい。実際のところ、前記いわゆる上部要素、すなわちX軸に最も近い積み重ねの要素は、ピン25を有さなくてもよい。加えて、いわゆる下部要素、すなわちX軸から最も遠い要素は、陥凹26を有さなくてもよい。
【0058】
加えて、積み重ねられた様々な要素22は、たとえば反対側のショルダおよびフランジからなるシステム、サークリップタイプの停止手段、またはネジシステムなどの適切な締結手段(図示せず)を使用して保持できる。代替解決策において、要素22は、ピボット5の孔の中で収縮することができる。このような締結手段は、二次通路20a、20bのある程度のきつさを確保するように、様々な要素22の下面23および上面24を接触した状態で維持することを可能にする。
【0059】
作動時、機能停止の間、図9の矢印34によって示されたように、油は上部要素22の入口28を通って入り、様々な連続的要素22の通路27の中で前方に移動し、境界面9に供給するように要素22の下部出口29を通って流出する。要素22の連続的屈曲は、油に含まれた粒子によるいかなる閉塞も回避するために十分に大きい通路断面を有しながら、二次通路20a、20b内の制限された油の流れを得るように、圧力降下を生じさせる。また、作動時、このような粒子は、これらが境界面9に引き込まれるのを回避するように、遠心分離33によって陥凹内に捕捉される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9