特許第6334537号(P6334537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334537
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】グルカゴン類似体
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/00 20060101AFI20180521BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20180521BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20180521BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20180521BHJP
   A61K 31/64 20060101ALI20180521BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20180521BHJP
   A61K 31/455 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 7/10 20060101ALI20180521BHJP
   C07K 14/605 20060101ALN20180521BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20180521BHJP
   C12N 1/15 20060101ALN20180521BHJP
   C12N 1/19 20060101ALN20180521BHJP
   C12N 1/21 20060101ALN20180521BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20180521BHJP
【FI】
   C07K14/00ZNA
   C12P21/02 C
   A61K38/16
   A61P3/04
   A61P3/06
   A61P3/10
   A61P9/12
   A61P9/10
   A61P9/10 101
   A61P9/00
   A61K45/00
   A61K31/64
   A61K31/155
   A61K31/455
   A61P7/10
   !C07K14/605
   !C12N15/00 A
   !C12N1/15
   !C12N1/19
   !C12N1/21
   !C12N5/10
【請求項の数】14
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2015-531601(P2015-531601)
(86)(22)【出願日】2013年9月17日
(65)【公表番号】特表2015-533803(P2015-533803A)
(43)【公表日】2015年11月26日
(86)【国際出願番号】EP2013069286
(87)【国際公開番号】WO2014041195
(87)【国際公開日】20140320
【審査請求日】2016年9月6日
(31)【優先権主張番号】12184744.6
(32)【優先日】2012年9月17日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/701,952
(32)【優先日】2012年9月17日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/784,294
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502453045
【氏名又は名称】ジーランド ファーマ アクティーゼルスカブ
(73)【特許権者】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブ リンド トルボルウ
(72)【発明者】
【氏名】ケルド フォスゲラウ
(72)【発明者】
【氏名】ピア ネーレゴルド
(72)【発明者】
【氏名】ラスムス ユスト
(72)【発明者】
【氏名】デイッテ リベル
(72)【発明者】
【氏名】ディーター ボルフガング ハンプレヒト
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト アウグスティーン
(72)【発明者】
【氏名】レオ トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ボルフガング リスト
【審査官】 高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/006497(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/070251(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/088837(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
CAplus/REGISTRY(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
1−X−2
[式中、
1は、H(水素)、C1-4アルキル、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、又はトリフルオロアセチルであり;
2は、OH又はNH2であり;かつ、
Xは、配列:
HSQGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAEDFVEWLLRA
からなるペプチドである]を有する化合物;
又は、その医薬的に許容し得る塩又は溶媒和物。
【請求項2】
式:
−HSQGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAEDFVEWLLRA−NH2(化合物7)
有する、請求項に記載の化合物、
又は、その医薬的に許容し得る塩又は溶媒和物。
【請求項3】
請求項に記載の化合物を担体との混合物中に含む、組成物。
【請求項4】
前記組成物が医薬組成物であり、前記担体が医薬的に許容し得る担体である、請求項に記載の組成物。
【請求項5】
医学的治療法で使用される、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項6】
体重増加を防止するか又は体重減少を促進することが必要な個体において、体重増加を防止するか又は体重減少を促進するための医薬の製造における請求項1又は2に記載の化合物の使用
【請求項7】
循環LDLレベルを低下させ、及び/又はHDL/LDL比を上昇させることが必要な個体において、循環LDLレベルを低下させ、及び/又はHDL/LDL比を上昇させるための医薬の製造における請求項1又は2に記載の化合物の使用
【請求項8】
体重過多により引き起こされるか又はこれを特徴とする症状の治療のための医薬の製造における、請求項1又は2に記載の化合物の使用
【請求項9】
肥満、病的肥満、手術前の病的肥満、肥満に関連する炎症、肥満に関連する胆嚢疾患、肥満誘発性睡眠時無呼吸、糖尿病、メタボリック症候群、高血圧、アテローム性脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、冠動脈性心疾患、末梢動脈疾患、脳卒中又は微小血管疾患の予防又は治療のための医薬の製造における、請求項1又は2に記載の化合物の使用
【請求項10】
前記医薬は、糖尿病、肥満、脂質異常症、又は高血圧症の治療のための薬剤との併用療法の一部として投与するためのものである、請求項6〜9のいずれか1項に記載の使用
【請求項11】
糖尿病の治療のための前記薬剤が、ビグアニド(例えば、メトホルミン)、スルホニル尿素、メグリチニド又はグリニド(例えばナテグリニド)、DPP−IV阻害剤、グリタゾン、異なるGLP−1アゴニスト、インスリン又はインスリン類似体である、請求項10に記載の使用
【請求項12】
肥満の治療のための前記薬剤が、グルカゴン様ペプチド受容体1アゴニスト、ペプチドYYアゴニスト又はその類似体、カンナビノイド受容体1アンタゴニスト、リパーゼ阻害剤、メラノコルチン受容体4アゴニスト、又はメラニン凝集ホルモン受容体1アンタゴニストである、請求項10に記載の使用
【請求項13】
高血圧の治療のための前記薬剤が、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断薬、利尿薬、ベータ遮断薬、又はカルシウムチャネル遮断薬である、請求項10に記載の使用
【請求項14】
脂質異常症の治療のための前記薬剤が、スタチン、フィブラート、ナイアシン、及び/又はコレステロール吸収阻害剤である、請求項10に記載の使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば肥満や体重過多、糖尿病、及び他の代謝障害における、グルカゴン類似体、及びその医学的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プレプログルカゴンは、158アミノ酸の前駆体ポリペプチドであり、これは、組織中で示差的に処理されて、グルカゴン(Glu)、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、グルカゴン様ペプチド−2(GLP−2)、及びオキシントモジュリン(OXM)を含む、多くの構造が関連するプログルカゴン由来ペプチドを生成する。これらの分子は、グルコースホメオスタシス、インスリン分泌、胃内容排出、及び腸の成長、並びに食物摂取の調節を含む多種多様な生理的機能に関与している。
【0003】
グルカゴンは、プレプログルカゴンのアミノ酸53〜81に対応した29アミノ酸ペプチドである。オキシントモジュリン(OXM)は、オクタペプチドであるカルボキシ末端エクステンション(プレプログルカゴンのアミノ酸82〜89、「介在ペプチド1」又はIP−1と呼ばれる)を有するグルカゴンの完全な29アミノ酸配列を含む37アミノ酸ペプチドである。GLP−1の主要な生物活性のある断片は、プレプログルカゴンのアミノ酸98〜127に対応する30アミノ酸のC末端アミド化ペプチドとして産生される。
【0004】
グルカゴンは肝細胞上のグルカゴン受容体に結合して、グリコーゲンの形で貯蔵されたグルコースを、肝臓に糖新生により放出させることによって、血液中のグルコースのレベルを維持するのを助ける。これらの貯蔵が枯渇してくると、グルカゴンは肝臓を刺激して、糖新生によって追加のグルコースを合成させる。このグルコースは血流中に放出され、低血糖症の発症を予防する。
【0005】
GLP−1は、グルコース刺激インスリン分泌を改善することにより、上昇した血中グルコースレベルを低下させ、主に食物摂取を減少させることを介して体重減少を促進する。
【0006】
OXMは、食物摂取に応答して及び食事のカロリー含量に比例して、血液中に放出される。OXMは、ヒトの食欲を抑制し、食物摂取を阻害することが示されている(Cohen et al, Journal of Endocrinology and Metabolism, 88, 4696-4701, 2003; 国際公開第2003/022304号パンフレット)。オキシントモジュリンで処置されたラットは、対で給餌したラットより小さい体重増加を示すため、GLP−1の食欲抑制効果と同様の食欲抑制効果に加えて、OXMは別の機序によっても体重に影響を与えるはずである(Bloom, Endocrinology 2004, 145, 2687)。肥満げっ歯動物をOXMで処置することはまた、その耐糖能を改善(Parlevliet et al, Am J Physiol Endocrinol Metab, 294, E142-7, 2008)し、体重増加を抑制(国際公開第2003/022304号パンフレット)する。
【0007】
OXMは、GLP−1受容体よりもグルカゴン受容体に対して2倍高い効力でグルカゴン受容体とGLP−1受容体の両方を活性化するが、これらの各受容体上の本来のグルカゴン及びGLP−1より効力は小さい。ヒトグルカゴンはまた、両方の受容体を活性化することができるが、GLP−1受容体よりグルカゴン受容体に対して強い優先性を示す。一方GLP−1は、グルカゴン受容体を活性化することができない。オキシントモジュリンの作用機序は、充分には理解されていない。特に、ホルモンの肝臓外作用の一部が、GLP−1やグルカゴン受容体によって、又は1つ又はそれ以上の未同定の受容体によって仲介されるかどうかは不明である。
【0008】
他のペプチドは、グルカゴン受容体とGLP−1受容体の両方に結合し活性化(Hjort et al, Journal of Biological Chemistry, 269, 30121-30124, 1994)し、体重増加を抑制し、食物摂取を低下させることが証明されている(例えば、国際公開第WO2006/134340号、第2007/100535号、第2008/10101号、第2008/152403号、第2009/155257号、第2009/155258号、第2010/070252号、第2010/070253号、第2010/070255号、第2010/070251号、第2011/006497号、第2011/160630号、第2011/160633号パンフレットを参照)
【0009】
肥満は、種々の疾患、特に心血管障害(CVD)、II型糖尿病、閉塞性睡眠時無呼吸、ある種の癌、及び骨関節炎に関連する、世界的に増大しつつある健康問題である。その結果、肥満は寿命を縮めることがわかっている。世界保健機構による2005年の予測に従うと、全世界で4億人の成人(年齢>15才)が肥満であると分類されている。米国では、肥満は、喫煙後の防ぐことができた死の2番目に大きな原因であると考えられている。
【0010】
肥満の増加は、糖尿病の増加を招き、II型糖尿病の約90%のヒトは肥満であると分類することができる。世界中には2億4600万人の糖尿病患者がおり、2025年までに3億8000万人が糖尿病になると推定されている。多くは、高/異常LDLとトリグリセリド及び低HDLを含む追加の心血管障害危険因子を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様において本発明は、式:
1−X−Z−R2
[式中、
1は、H、C1-4アルキル、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、又はトリフルオロアセチルであり;
2は、OH又はNH2であり;
Xは、式:
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDSKAAHDFVEWLLS(配列番号1)、
HSQGTFTSDYSKYLDSKAAHDFVEWLLSA(配列番号2)、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDEKAAKDFIEWLLSA(配列番号4)、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDSKAAHDFVEWLESA(配列番号5)、
HSQGTFTSDYSRYLDSKAAEDFVEWLLRA(配列番号6)、
HSQGTFTSDYSKYLDSKAAEDFVEWLLRA(配列番号7)、
HSQGTFTSDYSKYLDSKAAHDFVEWLLS(配列番号8)、
HSQGTFTSDYSKYLDSKAAHDFVEWLLR(配列番号9)、
HSQGTFTSDYSKYLDEKAAHEFVEWLESA(配列番号10)、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDEKRAKDFIEWLLS(配列番号11)、
HSQGTFTSDYSRYLDSKAAHDFVEWLLSA(配列番号12)、
H−Aib−HGTFTSDYSKYLESKAAEEFIEWLESA(配列番号17)、
HSHGTFTSDYSKYLEEKAAHEFIEWLESA(配列番号18)、
H−Aib−HGTFTSDYSKYLEEKAAHEFVEWLESA(配列番号19)、
を有するペプチドであり;
Zは、存在しないか、又はAla、Leu、Ser、Thr、Tyr、Cys、Glu、Lys、Arg、Dbu、Dpr、及びOrnからなる群から独立に選択される1〜20アミノ酸単位の配列である]を有する化合物;
又は、その医薬的に許容し得る塩又は溶媒和物を提供する。
【0012】
第2の態様において本発明は、式:
1−X−OH
[式中、
1は、H、C1-4アルキル、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、又はトリフルオロアセチルであり;
Xは、配列番号3、13、又は14;
HSQGTFTSDYSKYLDSKAAHDFVEWLLRA(配列番号3)、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDSKAAHDFVEWLLSA(配列番号13)、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDEKRAKDFIEWLLSA(配列番号14)のペプチドである]の化合物、
又は、その医薬的に許容し得る塩又は溶媒和物を提供する。
【0013】
第3の態様において本発明は、式:
1−X−Z−R2
[式中、
1は、H、C1-4アルキル、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、又はトリフルオロアセチルであり;
2は、OH又はNH2であり;
Xは、配列番号15;
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDEKAAKDFIEWLESA(配列番号15)、
又は、以下の位置の最大3つで配列番号15とは異なり、従って、配列番号15と異なる場合、
2位の残基は、Ser及びD−Serから選択され、
3位の残基は、His及びHseから選択され、
12位の残基は、Argであり、
15位の残基は、Gluであり、
16位の残基は、Serであり、
18位の残基は、Argであり、
20位の残基は、His及びGluから選択され、
21位の残基は、Gluであり、
23位の残基は、Valであり、
28位の残基は、Arg及びGluから選択され、
29位の残基は、存在しない、
のペプチドであり;
Zは、存在しないか、又は、Ala、Leu、Ser、Thr、Tyr、Cys、Glu、Lys、Arg、Dbu、Dpr、及びOrnからなる群から独立に選択される1〜20アミノ酸単位の配列である]を有する化合物;
又は、その医薬的に許容し得る塩又は溶媒和物を提供する。
【0014】
ある実施態様において、20位の残基は可変ではなく、Hisである。
【0015】
この化合物は、式:
1−X−Z−R2
[式中、
1は、H、C1-4アルキル、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、又はトリフルオロアセチルであり;
2は、OH又はNH2であり;
Xは、配列番号15;
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDEKAAKDFIEWLESA(配列番号15)、
又は、以下の位置の1つ又は2つで配列番号15とは異なり、従って、配列番号15と異なる場合、
21位の残基は、Gluであり、
23位の残基は、Valである、ペプチドであり、
Zは、存在しないか、又は、Ala、Leu、Ser、Thr、Tyr、Cys、Glu、Lys、Arg、Dbu、Dpr、及びOrnからなる群から独立して選択される1〜20アミノ酸単位の配列である]を有することができるか、
又は、その医薬的に許容し得る塩又は溶媒和物である。
【0016】
第4の態様において本発明は、式:
1−X−Z−R2
[式中、
1は、H、C1-4アルキル、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、又はトリフルオロアセチルであり;
2は、OH又はNH2であり;
Xは、配列番号16;
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDSKAAEDFVEWLESA(配列番号16)、
又は、以下の位置の最大3つで配列番号16とは異なり、従って、配列番号16と異なる場合、
2位の残基は、Ser及びD−Serから選択され、
3位の残基は、His及びHseから選択され、
12位の残基は、Argであり、
15位の残基は、Gluであり、
16位の残基は、Gluであり、
18位の残基は、Argであり、
20位の残基は、His及びHisから選択され、
21位の残基は、Gluであり、
23位の残基は、Ileであり、
28位の残基は、Arg及びGluから選択され、
29位の残基は、存在しない、
のペプチドであり、
Zは、存在しないか、又は、Ala、Leu、Ser、Thr、Tyr、Cys、Glu、Lys、Arg、Dbu、Dpr、及びOrnからなる群から独立に選択される1〜20アミノ酸単位の配列である]を有する化合物、
又は、その医薬的に許容し得る塩又は溶媒和物を提供する。
【0017】
この化合物は、式:
1−X−Z−R2
[式中、
1は、H、C1-4アルキル、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、又はトリフルオロアセチルであり;
2は、OH又はNH2であり;
Xは、配列番号16;
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDSKAAEDFVEWLESA(配列番号16)、
又は、以下の位置の1つ又は2つで配列番号16とは異なり、従って、配列番号16と異なる場合、
21位の残基は、Gluであり、
23位の残基は、Ileである、ペプチドであり、
Zは、存在しないか、又は、Ala、Leu、Ser、Thr、Tyr、Cys、Glu、Lys、Arg、Dbu、Dpr、及びOrnからなる群から独立して選択される1〜20アミノ酸単位の配列である]を有することができるか、
又は、その医薬的に許容し得る塩又は溶媒和物である。
【0018】
本発明の第3又は第4の態様の化合物は、配列:
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDEKAAKDFIEWLESA(配列番号15)、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDSKAAEDFVEWLESA(配列番号16)、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLEEKAAKDFIEWLESA(配列番号20)、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLESKAAEDFIEWLESA(配列番号21)、
HSQGTFTSDYSKYLEEKAAKDFIEWLESA(配列番号22)、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLESKAAHDFVEWLESA(配列番号23)、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLESKAAEDFVEWLESA(配列番号24)、又は
H−DSer−QGTFTSDYSKYLDEKAAKDFIEWLESA(配列番号25)、
を有するペプチドXを含むことができる。
【0019】
すべての態様において、本発明の化合物は、式:
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDSKAAHDFVEWLLS−OH、
H−HSQGTFTSDYSKYLDSKAAHDFVEWLLSA−OH、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDEKAAKDFIEWLLSA−NH2
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDSKAAHDFVEWLESA−NH2
H−HSQGTFTSDYSRYLDSKAAEDFVEWLLRA−NH2
H−HSQGTFTSDYSKYLDSKAAEDFVEWLLRA−NH2
H−HSQGTFTSDYSKYLDSKAAHDFVEWLLS−NH2
H−HSQGTFTSDYSKYLDSKAAHDFVEWLLR−OH、
H−HSQGTFTSDYSKYLDEKAAHEFVEWLESA−NH2
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDEKRAKDFIEWLLS−OH、
H−HSQGTFTSDYSRYLDSKAAHDFVEWLLSA−NH2
H−HSQGTFTSDYSKYLDSKAAHDFVEWLLRA−OH、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDSKAAHDFVEWLLSA−OH、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDEKRAKDFIEWLLSA−OH、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDEKAAKDFIEWLESA−NH2
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDSKAAEDFVEWLESA−NH2
H−Aib−HGTFTSDYSKYLESKAAEEFIEWLESA−OH、
H−HSHGTFTSDYSKYLEEKAAHEFIEWLESA−OH、
H−H−Aib−HGTFTSDYSKYLEEKAAHEFVEWLESA−NH2
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLEEKAAKDFIEWLESA−NH2
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLESKAAEDFIEWLESA−NH2
H−HSQGTFTSDYSKYLEEKAAKDFIEWLESA−NH2
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLESKAAHDFVEWLESA−NH2
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLESKAAEDFVEWLESA−NH2
H−H−DSer−QGTFTSDYSKYLDEKAAKDFIEWLESA−NH2、を有することができるか、
又は、その医薬的に許容し得る塩又は溶媒和物でもよい。
【0020】
疑問を避けるために、本発明の第3及び第4の態様の化合物において、可変性を可能にするために明確には記載されていない位置は、固定されていることが意図され、従ってこれらの位置において記載された残基のみを含むことが意図される。
【0021】
本発明のすべての態様において、ペプチドX又はZ(存在する場合)中の1つ又はそれ以上のアミノ酸鎖は、親油性置換基に結合してもよい。
【0022】
好ましくは、ペプチドX中の1つ又はそれ以上のアミノ酸側鎖は、親油性置換基に結合している。
【0023】
親油性置換基は、式Z1[ここで、Z1は、X又はZの関連する残基の側鎖に直接結合(共有結合)している親油性成分である]、又はZ12[ここで、Z1は親油性成分であり、Z2はスペーサーであり、そしてZ1は、Z2を介してX又はZの残基の側鎖に結合している]を有することができる。
【0024】
追加的に又は代替的に、ペプチドX又はZ(存在する場合)中の1つ又はそれ以上のアミノ酸側鎖は、ポリマー性置換基に結合している。
【0025】
ある実施態様において、ペプチドX又はX−Zは、1つのみの親油性置換基及び/又は1つのみのポリマー性置換基を運搬する。
【0026】
親油性置換基及びポリマー性置換基は、より詳細に後述される。
【0027】
親油性成分及び/又はポリマー性置換基は、任意の適切な残基の側鎖に結合することができる。リジン残基(例えば12位(存在する場合)又は17位のリジン残基)は特に安定である。
【0028】
ペプチドXは、式:
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDSK*AAHDFVEWLLS、
HSQGTFTSDYSKYLDSK*AAHDFVEWLLSA、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDEK*AAKDFIEWLLSA、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDSK*AAHDFVEWLESA、
HSQGTFTSDYSRYLDSK*AAEDFVEWLLRA、
HSQGTFTSDYSKYLDSK*AAEDFVEWLLRA、
HSQGTFTSDYSKYLDSK*AAHDFVEWLLS、
HSQGTFTSDYSKYLDSK*AAHDFVEWLLR、
HSQGTFTSDYSKYLDEK*AAHEFVEWLESA、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDEK*RAKDFIEWLLS、
HSQGTFTSDYSRYLDSK*AAHDFVEWLLSA、
HSQGTFTSDYSKYLDSK*AAHDFVEWLLRA、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDSK*AAHDFVEWLLSA、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDEK*RAKDFIEWLLSA、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDEK*AAKDFIEWLESA、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDSK*AAEDFVEWLESA、
H−Aib−HGTFTSDYSKYLESK*AAEEFIEWLESA、
HSHGTFTSDYSKYLEEK*AAHEFIEWLESA、
H−Aib−HGTFTSDYSKYLEEK*AAHEFVEWLESA、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLEEK*AAKDFIEWLESA、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLESK*AAEDFIEWLESA、
HSQGTFTSDYSKYLEEK*AAKDFIEWLESA、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLESK*AAHDFVEWLESA、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLESK*AAEDFVEWLESA、
H−DSer−QGTFTSDYSKYLDEK*AAKDFIEWLESA、
(ここで、「*」は、親油性又はポリマー性置換基、特に親油性置換基の位置を示す)を有することができる。
【0029】
本発明の化合物は、式:
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDSK*AAHDFVEWLLS−OH、
H−HSQGTFTSDYSKYLDSK*AAHDFVEWLLSA−OH、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDEK*AAKDFIEWLLSA−NH2
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDSK*AAHDFVEWLESA−NH2
H−HSQGTFTSDYSRYLDSK*AAEDFVEWLLRA−NH2
H−HSQGTFTSDYSKYLDSK*AAEDFVEWLLRA−NH2
H−HSQGTFTSDYSKYLDSK*AAHDFVEWLLS−NH2
H−HSQGTFTSDYSKYLDSK*AAHDFVEWLLR−OH、
H−HSQGTFTSDYSKYLDEK*AAHEFVEWLESA−NH2
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDEK*RAKDFIEWLLS−OH、
H−HSQGTFTSDYSRYLDSK*AAHDFVEWLLSA−NH2
H−HSQGTFTSDYSKYLDSK*AAHDFVEWLLRA−OH、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDSK*AAHDFVEWLLSA−OH、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDEK*RAKDFIEWLLSA−OH、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDEK*AAKDFIEWLESA−NH2
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDSK*AAEDFVEWLESA−NH2
H−H−Aib−HGTFTSDYSKYLESK*AAEEFIEWLESA−OH、
H−HSHGTFTSDYSKYLEEK*AAHEFIEWLESA−OH、
H−H−Aib−HGTFTSDYSKYLEEK*AAHEFVEWLESA−NH2
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLEEK*AAKDFIEWLESA−NH2
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLESK*AAEDFIEWLESA−NH2
H−HSQGTFTSDYSKYLEEK*AAKDFIEWLESA−NH2
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLESK*AAHDFVEWLESA−NH2
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLESK*AAEDFVEWLESA−NH2
H−H−DSer−QGTFTSDYSKYLDEK*AAKDFIEWLESA−NH2
を有することができるか、
又は、その医薬的に許容し得る塩又は溶媒和物でもよい。
【0030】
ある実施態様において、Xは、式:
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHDFVEWLLS、
HSQGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHDFVEWLLSA、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAKDFIEWLLSA、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHDFVEWLESA、
HSQGTFTSDYSRYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAEDFVEWLLRA、
HSQGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAEDFVEWLLRA、
HSQGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHDFVEWLLS、
HSQGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHDFVEWLLR、
HSQGTFTSDYSKYLDE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHEFVEWLESA、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−RAKDFIEWLLS、
HSQGTFTSDYSRYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHDFVEWLLSA、
HSQGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHDFVEWLLRA、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHDFVEWLLSA、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−RAKDFIEWLLSA、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAKDFIEWLESA、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAEDFVEWLESA、
H−Aib−HGTFTSDYSKYLES−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAEEFIEWLESA、
HSHGTFTSDYSKYLEE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHEFIEWLESA、
H−Aib−HGTFTSDYSKYLEE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHEFVEWLESA、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLEEK−(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAKDFIEWLESA、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLES−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAEDFIEWLESA、
HSQGTFTSDYSKYLEE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAKDFIEWLESA、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLES−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHDFVEWLESA、
H−Aib−QGTFTSDYSKYLES−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAEDFVEWLESA、
H−DSer−QGTFTSDYSKYLDE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAKDFIEWLESA、を有する。
【0031】
本発明化合物は、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHDFVEWLLS−OH(化合物1)、
H−HSQGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHDFVEWLLSA−OH(化合物2)、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAKDFIEWLLSA−NH2(化合物4)、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHDFVEWLESA−NH2(化合物5)、
H−HSQGTFTSDYSRYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAEDFVEWLLRA−NH2(化合物6)、
H−HSQGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAEDFVEWLLRA−NH2(化合物7)、
H−HSQGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHDFVEWLLS−NH2(化合物8)、
H−HSQGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHDFVEWLLR−OH(化合物9)、
H−HSQGTFTSDYSKYLDE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHEFVEWLESA−NH2(化合物10)、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−RAKDFIEWLLS−OH(化合物11)、
H−HSQGTFTSDYSRYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHDFVEWLLSA−NH2(化合物12)、
H−HSQGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHDFVEWLLRA−OH(化合物3)、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHDFVEWLLSA−OH(化合物13)、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−RAKDFIEWLLSA−OH(化合物14)、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAKDFIEWLESA−NH2(化合物15)、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAEDFVEWLESA−NH2(化合物16)、
H−Aib−HGTFTSDYSKYLES−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAEEFIEWLESA−OH(化合物17)、
H−HSHGTFTSDYSKYLEE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHEFIEWLESA−OH(化合物18)、
H−H−Aib−HGTFTSDYSKYLEE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHEFVEWLESA−NH2(化合物19)、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLEE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAKDFIEWLESA−NH2(化合物20)、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLES−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAEDFIEWLESA−NH2(化合物21)、
H−HSQGTFTSDYSKYLEE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAKDFIEWLESA−NH2(化合物22)、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLES−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHDFVEWLESA−NH2(化合物23)、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLES−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAEDFVEWLESA−NH2(化合物24)、
H−H−DSer−QGTFTSDYSKYLDE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAKDFIEWLESA−NH2(化合物25)、
又は、その医薬的に許容し得る塩又は溶媒和物でもよい。
【0032】
天然に存在するアミノ酸のみからなるペプチド配列X又はX−Zについて、本発明は、本明細書に記載のようなペプチドX又はX−Zをコードする核酸(DNA又はRNAでもよい)をさらに提供する。また、そのような核酸を含む発現ベクター、及びそのような核酸又は発現ベクターを含有する宿主細胞も提供される。宿主細胞は典型的には、コードされるペプチドX又はX−Zを発現し、任意に分泌することができる。
【0033】
本発明の化合物は、グルカゴン類似体ペプチドである。本明細書においてグルカゴン類似体ペプチドへの参照は、本発明の化合物又は本明細書が必要とするようなペプチドX又はX−Zへの参照であると理解されるべきである。本発明の化合物への参照は、特に別の指定がなければ、又は文脈から除外されることがなければ、任意の本発明の化合物の医薬的に許容し得る塩(例えば、酢酸塩又は塩化物塩)又は溶媒和物を含むものと理解すべきである。
【0034】
本発明は、本明細書で定義される本発明の化合物(既に記載されたその医薬的に許容し得る塩又は溶媒和物を含む)、ペプチドX又はX−Zをコードする核酸、このような核酸を含む発現ベクター、又はこのような核酸もしくは発現ベクターを含有する宿主細胞を、担体との混合物中に含む、組成物を提供する。好適な実施態様において、本組成物は医薬組成物であり、担体は医薬的に許容し得る担体である。グルカゴン類似体ペプチドは、グルカゴン類似体の医薬的に許容し得る塩の形態でもよい。
【0035】
本明細書に記載の化合物は、特に、体重増加を防止するか又は体重減少を促進することに利用を見いだす。「防止する」とは、治療が無い場合と比較して抑制又は低下させることを意味し、必ずしも体重増加の完全な停止を意味するものではない。本ペプチドは、食物摂取の低下及び/又はエネルギー消費の上昇を引き起こすことができ、体重への作用が観察される。体重への作用とは独立して、本発明の化合物は、グルコース調節及び/又は循環コレステロールレベルへの有効な作用を有し、循環LDLレベルを低下させ、HDL/LDL比を上昇させることができる。すなわち本発明の化合物は、体重過多により引き起こされるか又はこれを特徴とする任意の症状の直接的又は間接的治療法、例えば、肥満、病的肥満、肥満に関連する炎症、肥満に関連する胆嚢疾患、肥満誘発性睡眠時無呼吸の治療及び/又は予防に使用することができる。これらはまた、不充分なグルコース調節又は脂質異常症(例えば、LDLレベルの上昇又はHDL/LDL比の低下)、糖尿病(特に2型糖尿病)、メタボリック症候群、高血圧、アテローム性脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、冠動脈性心疾患、末梢動脈疾患、脳卒中又は微小血管疾患により引き起こされるか又はこれを特徴とする症状の予防に使用することができる。これらの症状においてこれらの作用は、体重へのこれらの作用の結果としてであるか、又はそれとは独立したものでもよい。
【0036】
本発明はまた、医学的治療方法、特に上記のような症状の治療方法で使用するための本発明の化合物を提供する。
【0037】
本発明はまた、上記のような症状の治療のための医薬の調製における本発明の化合物の使用を提供する。
【0038】
本発明の化合物は、糖尿病、肥満、脂質異常症、又は高血圧症の治療のための薬剤との併用療法の一部として投与することができる。
【0039】
このような場合には、これらの2つの活性物質は、同じ医薬製剤の一部として、又は別個の製剤として、一緒に又は別々に投与することができる。
【0040】
従って本発明の化合物は、ビグアニド(例えばメトホルミン)、スルホニル尿素、メグリチニド又はグリニド(例えばナテグリニド)、DPP−IV阻害剤、グリタゾン、インスリン又はインスリン類似体を含むがこれらに限定されない抗糖尿病薬と組み合わせて使用することができる。インスリン類似体の例としては、Lantus(登録商標)、Novorapid(登録商標)、Humalog(登録商標)、Novomix(登録商標)、Actraphane HM(登録商標)、Levemir(登録商標)、及びApidra(登録商標)を含むがこれらに限定されるものではない。
【0041】
本化合物はさらに、グルカゴン様ペプチド受容体1アゴニスト、ペプチドYYもしくはその類似体、カンナビノイド受容体1アンタゴニスト、リパーゼ阻害剤、メラノコルチン受容体4アゴニスト、又はメラニン濃縮ホルモン受容体1アンタゴニストを含むがこれらに限定されない抗肥満薬と組み合わせて使用することができる。
【0042】
本化合物はさらに、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断薬、利尿薬、ベータ遮断薬、又はカルシウムチャネル遮断薬を含むがこれらに限定されない抗高血圧薬と組み合わせて使用することができる。
【0043】
本化合物は、スタチン、フィブラート、ナイアシン、又はコレステロール吸収阻害剤を含むがこれらに限定されない抗脂質異常症薬と組み合わせて使用することができる。
【0044】
すなわち本発明はさらに、本発明の化合物と、例えば上記した抗糖尿病薬、抗肥満薬、抗高血圧薬、又は抗脂質異常症薬とを含む組成物又は治療用キットを提供する。また、医学的治療方法における使用のための、特に上記した症状の治療のためのかかる組成物又は治療用キットも提供される。
【0045】
本発明の化合物は、合成化学によって製造することができる。従って本発明は、本発明の化合物の合成方法を提供する。
【0046】
既に説明したように、本発明は、ペプチド配列X又はX−Zをコードする核酸、並びに前述核酸配列を含む発現ベクター(任意に、配列に作動可能に連結されて、その発現を指令する)、及び前記核酸又は発現ベクターを含有する宿主細胞に及ぶ。好ましくは、前記宿主細胞は、本発明の化合物を発現し、任意に分泌することができる。
【0047】
本発明は、本発明の化合物の製造方法であって、ペプチド配列X又はX−Zを発現するのに適した条件下で宿主細胞を培養し、こうして製造された化合物を精製することを含む方法を提供する。これは、ペプチドが、天然に存在するアミノ酸のみを含有する場合に、特に有用である。
【0048】
本発明の化合物が、1つ又はそれ以上の天然に存在しないアミノ酸を含有する場合、この方法は、配列X又はX−Zとは1つ又はそれ以上異なるペプチド配列を発現させ、こうして製造された化合物を任意に精製し、1つ又はそれ以上のアミノ酸を追加するか又は修飾して、本発明の化合物又はアミノ酸配列X又はX−Zを含む化合物を製造することを含むことができる。
【0049】
本発明の化合物を生成するためにいかなる方法が使用されても、これは、本明細書のb別の場所で定義されるように、特に1つ又はそれ以上の親油性及び/又はポリマー成分を導入するために、配列X又はX−Zを修飾する1つ又はそれ以上の更なる工程を含むことができる。
【0050】
本発明はさらに、医学的治療方法において使用するための、本発明の核酸、本発明の発現ベクター、又は本発明の化合物を発現し任意に分泌することができる宿主細胞を提供する。前記核酸、発現ベクター、及び宿主細胞は、本発明の化合物自体で治療することができる本明細書に記載の障害のいずれかの治療に使用することができることは、理解されるであろう。従って、本発明の化合物を含む治療用組成物、本発明の化合物の投与、又はこれらの任意の治療的使用への言及は、特に別の指定がなければ、本発明の核酸、発現ベクター、又は宿主細胞の同等の使用を包含すると解釈されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本明細書を通して、天然に存在するアミノ酸のための従来の1文字コードと3文字コードが使用されており、他のアミノ酸、例えばAib(α−アミノイソ酪酸)、Hse(ホモセリン)、Orn(オルニチン)、DBU(2,4−ジアミノ酪酸)、Dpr(2,3−ジアミノプロパン酸)については、一般に認められた3文字コードが使用されている。
【0052】
グルカゴンは、プレプログルカゴンのアミノ酸53〜81に対応する配列を有する29アミノ酸ペプチドであり、配列His−Ser−Gln−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Tyr−Ser−Lys−Tyr−Leu−Asp−Ser−Arg−Arg−Ala−Gln−Asp−Phe−Val−Gln−Trp−Leu−Met−Asn−Thr(配列番号26)を有する。オキシントモジュリン(OXM)は、オクタペプチドのカルボキシ末端エクステンション(プレプログルカゴンのアミノ酸82〜89であり、配列Lys−Arg−Asn−Arg−Asn−Asn−Ile−Ala(配列番号27)を有し、「介在ペプチド1」又はIP−1と呼ばれる)を有するグルカゴンの完全な29アミノ酸配列を含む37アミノ酸ペプチドである;すなわちヒトオキシントモジュリンの全配列は、His−Ser−Gln−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Tyr−Ser−Lys−Tyr−Leu−Asp−Ser−Arg−Arg−Ala−Gln−Asp−Phe−Val−Gln−Trp−Leu−Met−Asn−Thr−Lys−Arg−Asn−Arg−Asn−Asn−Ile−Ala)(配列番号28)である。GLP−1の主要な生物活性断片は、プレプログルカゴンのアミノ酸98〜127に対応する30アミノ酸のC末端アミド化ペプチドとして産生される。
【0053】
すなわち用語「天然のグルカゴン」は、配列H−His−Ser−Gln−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Tyr−Ser−Lys−Tyr−Leu−Asp−Ser−Arg−Arg−Ala−Gln−Asp−Phe−Val−Gln−Trp−Leu−Met−Asn−Thr−OH(配列番号26)を有する天然のヒトグルカゴンを指す。
【0054】
本発明の化合物の配列X内のアミノ酸は、通常のN末端からC末端方向へ1〜29へ連続して番号を付けることができると考えられる。従ってX内の「位置」への言及は、天然のヒトグルカゴンや他の分子内の位置への言及のように理解すべきである。
【0055】
本発明の化合物は、例えば、グルカゴン類似体ペプチドのコンフォメーション及び/又は2次構造を安定化させるために、及び/又は、国際公開第99/46283号パンフレットに記載されているように、酵素的加水分解に対してグルカゴン類似体ペプチドをより耐性にするために、1〜20アミノ酸のC末端ペプチド配列Zを含んでよい。
【0056】
存在する場合、Zは、1〜20アミノ酸残基のペプチド配列を示し、例えば1〜15の範囲、より好ましくは1〜10の範囲、特に1〜7アミノ酸残基の範囲、例えば1、2、3、4、5、6、又は7アミノ酸残基、例えば6アミノ酸残基の範囲である。ペプチド配列Z中のアミノ酸残基の各々は、Ala、Leu、Ser、Thr、Tyr、Cys、Glu、Lys、Arg、Dbu(2,4−ジアミノ酪酸)、Dpr(2,3−ジアミノプロパン酸)、及びOrn(オルニチン)から独立して選択することができる。好ましくはアミノ酸残基は、Ser、Thr、Tyr、Glu、Lys、Arg、Dbu、Dpr 及びOrnから選択され、より好ましくはGlu、Lys、及びCysからのみ選択される。上記アミノ酸は、D−又はL−配向を有することができ、これは、ある実施態様において、L−配行を有する。特に好適な配列Zは、4、5、6、又は7個の連続リジン残基の配列(すなわち、Lys3、Lys4、Lys5、Lys6、又はLys7)であり、特に5又は6個の連続リジン残基の配列である。Zの他の典型的な配列は、国際公開第01/04156号パンフレットに記載されている。代替的に、配列ZのC末端残基は、Cys残基でもよい。これは、化合物の修飾(例えば、PEG化、又はアルブミンへの結合)を補助することができる。かかる実施態様において、配列Zは、例えば1アミノ酸のみの長さ(すなわちZ=Cys)であるか、又は2、3、4、5、6、又はさらに多くのアミノ酸の長さでもよい。従って他のアミノ酸は、ペプチドXと末端Cys残基との間のスペーサーとして機能する。
【0057】
ペプチド配列Zは、ヒトOXMのIP−1部分の対応する配列(これは、配列Lys−Arg−Asn−Arg−Asn−Asn−Ile−Alaを有する)と25%以下の配列同一性を有する。
【0058】
あるペプチド又はポリペプチド配列の、別のポリペプチド配列(例えばIP−1)に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、これらの2つを互いに整列させ、必要であれば最適な整列のためにギャップを導入した時、別のポリペプチドの対応する配列中の、対応して位置するアミノ酸残基と同一であるそのポリペプチド配列中のアミノ酸残基のパーセントとして計算される。%同一性値は、WU−BLAST−2(Altschulら、Methods in Enzymology, 266:460-480 (1996))を用いて測定することができる。WU−BLAST−2はいくつかの検索パラメータを使用し、その大部分はデフォルト値に設定されている。調整可能なパラメータは、以下の値が設定されている:オーバーラップスパン=1、オーバーラップフラクション=0.125、ワード閾値(T)=11。%アミノ酸配列同一性値は、WU−BLASTによって決定される一致する同一残基の数を、基準配列の残基の総数(整列スコアを最大にするために、WU−BLAST−2によって基準配列に導入されたギャップは無視される)で割って、100を掛けることにより決定される。
【0059】
すなわち、ZがIP−1の8アミノ酸と最適に整列された時、これが有するIP−1の対応するアミノ酸と同一であるアミノ酸は、2個以下である。
【0060】
ある実施態様において、Zは存在しない。
【0061】
本発明の化合物中の1つ又はそれ以上のアミノ酸側鎖は、親油性置換基に結合させることができる。親油性置換基は、アミノ酸側鎖中の原子に共有結合するか、又は代替的に、スペーサーによってアミノ酸側鎖に結合させることができる。親油性置換基は、ペプチドXの一部であるアミノ酸の側鎖へ、及び/又はペプチドZの一部であるアミノ酸の側鎖に結合させることができる。
【0062】
特定の理論に拘束されるものではないが、親油性置換基は血流中のアルブミンに結合し、こうして本発明の化合物を酵素分解から遮断し、従って化合物の半減期を上昇させる。これはまた、例えばグルカゴン受容体及び/又はGLP−1受容体について、化合物の効力を調節することもできる。
【0063】
ある実施態様において、1つのアミノ酸側鎖のみが親油性置換基に結合される。他の実施態様において、2つのアミノ酸側鎖がそれぞれ親油性置換基に結合される。さらに別の実施態様において、3つ又はそれ以上のアミノ酸側鎖がそれぞれ親油性置換基に結合される。化合物が2つ又はそれ以上の親油性置換基を含有する時、これらは同じか又は異なってもよい。
【0064】
親油性置換基は、親油性成分Z1を含むか又はこれからなり、これは、アミノ酸側鎖中の原子に直接共有結合してもよいか、又は代替的に、スペーサーZ2によりアミノ酸側鎖に結合することができる。
【0065】
ここで用語「結合した」は、1つの同定可能な化学成分の他の化学成分への物理的結合、及びかかる成分間の構造的関係を説明するために使用される。これは、特定の合成法を包含するものと考えてはならない。
【0066】
親油性成分は、エステル、スルホニルエステル、チオエステル、アミド、カルバメート、尿素、又はスルホンアミドを介して、アミノ酸側鎖又はスペーサーに結合することができる。従って、好ましくは親油性置換基は、アシル基、スルホニル基、N原子、O原子、もしくはS原子(これは、エステル、スルホニルエステル、チオエステル、アミド、又はスルホンアミドの一部を形成する)を含むことが理解されるであろう。好ましくは、親油性置換基中のアシル基は、アミノ酸側鎖又はスペーサーと、アミド又はエステルの一部を形成する。
【0067】
親油性成分は、4〜30個のC原子を有する炭化水素鎖を含むことができる。好ましくは、これは少なくとも8個又は12個のC原子を有し、好ましくは24個以下の炭素原子、又は20個以下の炭素原子を有する。炭化水素鎖は直鎖状でも分岐状でもよく、飽和でも不飽和でもよい。炭化水素鎖は、好ましくはアミノ酸側鎖又はスペーサーへの結合の一部を形成する成分、例えば、アシル基、スルホニル基、N原子、O原子又はS原子で置換されることが理解されるであろう。最も好ましくは、炭化水素鎖はアシル基で置換され、従って炭化水素鎖は、例えばパルミトイル、カプロイル、ラウロイル、ミリストイル、又はステアロイルなどのアルカノイル基の一部であってもよい。
【0068】
従って親油性成分は、以下に示される式を有することができる:
【0069】
【化1】
【0070】
Aは、例えばアシル基、スルホニル基、NH、N−アルキル、O原子、又はS原子でもよく、好ましくはアシルである。nは3〜29の整数、好ましくは7〜25、より好ましくは11〜21、さらにより好ましくは15〜19の整数である。
【0071】
炭化水素鎖は、さらに置換することができる。例えばこれは、特に、スペーサー又はペプチドから遠い分子の遊離末端で、NH2、OH、及びCOOHから選択される最大3つの置換基で置換することができる。例えばこれは、遊離カルボン酸基を含むことができる。
【0072】
炭化水素鎖がさらに置換される場合、好ましくはこれは、1つのみの置換基でさらに置換される。代替的に又は追加的に、炭化水素鎖は、例えば以下に示されるシクロアルカン又はヘテロシクロアルカンを含むことができる:
【0073】
【化2】
【0074】
好ましくは、シクロアルカン又はヘテロシクロアルカンは6員環である。最も好ましくは、これはピペリジンである。
【0075】
代替的に、親油性成分は、シクロペンタノフェナトレン骨格に基づくことができ、これは、部分的に又は完全に不飽和又は飽和されていてもよい。骨格中の炭素原子はそれぞれ、Me又はOHで置換することができる。例えば親油性置換基は、コリル、デオキシコリル、又はリトコリルでもよい。
【0076】
上記したように親油性成分は、スペーサーによりアミノ酸側鎖に結合してもよい。存在する場合は、スペーサーは親油性成分及びアミノ酸側鎖に結合される。スペーサーは、エステル、スルホニルエステル、チオエステル、アミド、カルバメート、尿素、又はスルホンアミドにより、親油性成分及びアミノ酸側鎖に独立して結合することができる。従って、これは、アシル、スルホニル、N原子、O原子、又はS原子から独立して選択される2つの成分を含むことができる。スペーサーは、式:
【0077】
【化3】
【0078】
[式中、BとDは各々、アシル、スルホニル、NH、N−アルキル、O原子、及びS原子から独立して選択され、好ましくはアシル及びNHから選択される。好ましくは、nは1〜10の整数、好ましくは1〜5の整数である。スペーサはさらに、C0-6アルキル、C0-6アルキルアミン、C0-6アルキルヒドロキシ、及びC0-6アルキルカルボキシから選択される1つ又はそれ以上の置換基で置換されていてもよい]を有することができる。
【0079】
あるいは、スペーサーは、上記式の2つ又はそれ以上の繰り返し単位を有していてもよい。B、D及びnは各々、繰り返し単位毎に独立して選択される。隣接する繰り返し単位は、共有結合で、それぞれB成分及びD成分を介して互いに結合することができる。例えば、隣接する繰り返し単位のB成分及びD成分は、一緒にエステル、スルホニルエステル、チオエステル、アミド、又はスルホンアミドを形成することができる。上記したように、スペーサの各末端の遊離B単位及びD単位は、アミノ酸側鎖及び親油性成分に結合している。
【0080】
好ましくは、スペーサーは、5個以下、4個以下又は3個以下の繰り返し単位を有する。最も好ましくは、スペーサーは、2つの繰り返し単位を有するか、又は単一の単位である。
【0081】
スペーサー(又は、これが繰り返し単位を有している場合、スペーサの繰り返し単位の一つ以上)は、例えば天然の又は非天然のアミノ酸であってもよい。また、官能化側鎖を有するアミノ酸について、B及び/又はDはアミノ酸の側鎖内の成分であってもよいことが理解されるであろう。スペーサーは、任意の天然の又は非天然のアミノ酸であってもよい。例えば、スペーサー(又は、これが繰り返し単位を有している場合、スペーサの繰り返し単位の一つ以上)は、Gly、Pro、Ala、Val、Leu、Ile、Met、Cys、Phe、Tyr、Trp、His、Lys、Arg、Gln、Asn、α−Glu,β−Glu、γ−GLu、Asp、Ser、Thr、Gaba、Aib、β−Ala、5−アミノペンタノイル、6−アミノヘキサノイル、7−アミノヘプタノイル、8−アミノオクタノイル、9−アミンノナノイル、又は10−アミノデカノイルでもよい。
【0082】
例えば、スペーサーは、γ−Glu、Gaba、β−Ala、及びα−Gluから選択される単一のアミノ酸でもよい。
【0083】
親油性置換基は、本発明の化合物中の任意のアミノ酸側鎖に結合することができる。好ましくはアミノ酸側鎖は、スペーサー又は親油性置換基とともに、エステル、スルホニルエステル、チオエステル、アミド、又はスルホンアミドを形成するために、カルボキシル、ヒドロキシル、チオール、アミド、又はアミン基を含む。例えば親油性置換基は、Asn、Asp、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Ser、Thr、Tyr、Trp、Cys、Dbu、Dpr、又はOrnに結合することができる。好ましくは、親油性置換基はLysに結合される。本明細書の式中のLysとして示されるアミノ酸は、例えば、親油性置換基が添加されているDbu、Dpr、又はOrnにより置換することができる。
【0084】
親油性成分を含む親油性置換基の例は、以下の式に示される:
【0085】
【化4】
【0086】
ここで、本発明の化合物中のLys残基は、アミド成分を介してγ−Glu(スペーサー)に共有結合される。パルミトイル(すなわち、ヘキサデカノイル)は、アミド成分を介してγ−Gluスペーサーに共有結合され、こうしてヘキサデカノイル−イソGLu基を生成する。
【0087】
代替的に又は追加的に、本発明の化合物中の1つ又はそれ以上のアミノ酸側鎖は、例えば、溶解度及び/又はインビボ半減期(例えば血漿中)及び/又は生物学的利用能を上昇させるために、ポリマー成分に結合することができる。かかる修飾はまた、治療用タンパク質及びペプチドのクリアランス(例えば、腎クリアランス)を低下させることが知られている。
【0088】
熟練した読者は、例えば、“Comprehensive Organic Transformations, A Guide to Functional Group Preparations”, 2nd edition, Larock, R. C.; Wiley-VCH: New York, 1999に記載された一般的合成法を使用して、スペーサーと親油性成分との結合反応を行うために使用することができる適切な技術は、周知しているであろう。かかる変換は、合成プロセスの任意の適切な段階で起きることができる。
【0089】
ポリマー成分は、好ましくは水溶性(両親媒性又は親水性)、非毒性、及び薬理学的に不活性である。適切なポリマー成分は、ポリエチレングリコール(PEG)、PEGのホモポリマー−又はコポリマー、PEGのモノメチル置換ポリマー(mPEG)、及びポリオキシエチレングリセロール(POG)を含む。例えば、Int. J. Hematology 68:1 (1998); Bioconjugate Chem. 6:150 (1995);及びCrit. Rev. Therap. Drug Carrier Sys. 9:249 (1992)を参照。
【0090】
他の適切なポリマー成分は、ポリリジン、ポリアスパラギン酸、及びポリグルタミン酸などのポリアミノ酸を含む(例えば、Gombotz, et al. (1995) , Bioconjugate Chem. , vol. 6 : 332-351; Hudecz, et al. (1992) , Bioconjugate Chem. , vol. 3, 49-57; Tsukada, et al. (1984) , J. Natl. Cancer Inst. , vol 73, : 721-729; and Pratesi, et al. (1985), Br. J. Cancer, vol. 52: 841-848を参照)。
【0091】
ポリマー成分は、直鎖又は分岐鎖でもよい。これは、500〜40,000Da、例えば500〜10,000Da、1000〜5000Da、10,000〜20,000Da、20,000〜40,000Daの分子量を有することができる。
【0092】
本発明の化合物は、2つ又はそれ以上のかかる成分を含むことができ、この場合、すべてのかかる成分の総分子量は、一般的に上記した範囲内に入るであろう。
【0093】
ポリマー成分は、アミノ酸側鎖のアミノ基、カルボキシル基、又はチオール基に(共有結合により)結合することができる。好適な例は、Cys残基のチオール基、及びLys残基のイプシロンアミノ基である。Asp及びGlu残基のカルボキシル基も使用することができる。
【0094】
熟練した読者は、結合反応を実施するのに使用することができる適切な技術を周知しているであろう。例えば、メトキシ基を有するPEG成分は、Nektar Therapeuticsから市販されている試薬を使用して、マレイミド結合によりCysチオール基に結合することができる。適切な化学の詳細については、国際公開第2008/101017号パンフレット、及び上記引用文献を参照されたい。
【0095】
ペプチド合成
本発明の化合物は、標準的合成法、組換え発現系、又は任意の他の最新技術により製造することができる。すなわち、グルカゴン類似体は、例えば、
(a)固相法又は液相法を使用して、段階的に又は断片組み立てによりペプチドを合成し、最終的ペプチド生成物を単離し精製すること、又は
(b)宿主細胞中でペプチドをコードする核酸構築体を発現させ、宿主細胞又は培養培地から発現生成物を回収すること、又は
(c)ペプチドをコードする核酸構築体の無細胞インビトロ発現を行い、発現生成物を回収すること、
又は、(a)、(b)、及び(c)の方法の任意の組合せにより、ペプチドの断片を得て、次に、前記断片を連結させてペプチド得て、そして前記ペプチドを回収すること、
を含む方法を含む多くの方法で合成することができる。
【0096】
本発明の類似体は、固相又は液相ペプチド合成により合成することが好ましい。この点で、国際公開第98/11125号パンフレット、及び、Synthetic Peptides(第2版)中のFields, GB et al., 2002, "Principles and practice of solid-phase peptide synthesis"、及びその中の例を参照されたい。
【0097】
組換え発現のために、本発明の核酸断片は、通常、適切なベクター中に挿入されて、本発明の核酸断片を担持するクローニングベクター又は発現ベクターが形成される;かかる新規ベクターもまた、本発明の一部である。ベクターは、目的及び適用のタイプに依存して、プラスミド、ファージ、コスミド、ミニ染色体、又はウイルスの形態でもよく、ある細胞中で一過性にのみ発現されるネーキッドDNAも重要なベクターである。本発明の好適なクローニングベクター及び発現ベクター(プラスミドベクター)は、自律複製が可能であり、従って、高レベル発現又は以後のクローニングのための高レベル複製の目的のための、高コピー数を可能にする。
【0098】
一般的に、発現ベクターは、5’→3’方向に機能できる形で結合した以下の特徴を有する:本発明の核酸断片の発現を駆動するためのプロモーター、任意に、分泌(細胞外相、又は該当する場合は周辺質へ)を可能にするリーダーペプチドをコードする核酸配列、本発明のペプチドをコードする核酸断片、及び任意に、ターミネーターをコードする核酸配列。これらは、選択マーカー及び複製開始点などの追加の特徴を含んでよい。産生株又は細胞株中で発現ベクターを操作する場合、ベクターは宿主細胞ゲノム内に組み込むことができることが好ましい。当業者は、適切なベクターを周知しており、その特定の要件に従ってこれを設計することができる。
【0099】
本発明のベクターは、宿主細胞を形質転換して本発明の化合物を産生するために使用される。かかる形質転換細胞(これも本発明の一部である)は、本発明の核酸断片及びベクターの増殖のために使用されるか、又は本発明のペプチドの組換え産生のために使用される、培養細胞又は細胞株でもよい。
【0100】
本発明の好適な形質転換細胞は、細菌[例えば、エシェリヒア種(例えば、大腸菌(E. coli)、バシラス種(例えば、枯草菌(Bacillus subtilis))、サルモネラ種]、又はマイコバクテリウム(Mycobacterium)種(好ましくは、非病原性、例えばエム・ボビスBSG)、酵母(例えば、サッカロミセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)、及びピキア・パストリス(Pichia pastoris))、及び原生動物などの微生物である。あるいは、形質転換細胞は多細胞生物から得ることができ、すなわち、これは、真菌細胞、昆虫細胞、藻類細胞、植物細胞、又は動物細胞(例えば、哺乳動物細胞)でもよい。クローニング及び/又は最適化発現の目的のために、形質転換細胞は本発明の核酸断片を複製することができることが好ましい。核酸断片を発現する細胞は、本発明の有用な実施態様である;これらは、本発明のペプチドの小規模又は大規模調製のために使用することができる。
【0101】
形質転換細胞を用いて本発明のペプチドを産生させる時、決して必須ではないが、発現生成物が培養培地中に分泌されることが便利である。
【0102】
効力
GLP−1又はグルカゴン(Glu)受容体への関連化合物の結合は、アゴニスト活性の指標として使用することができるが、一般的には、前記化合物の関連受容体への結合により引き起こされる細胞内シグナル伝達を測定する生物学的アッセイを使用することが好ましい。例えば、グルカゴンアゴニストによるグルカゴン受容体の活性化は、細胞性サイクリックAMP(cAMP)生成を刺激するであろう。同様に、GLP−1アゴニストによるGLP−1受容体の活性化は、細胞性cAMP生成を刺激するであろう。すなわち、これらの2つの受容体の1つを発現する適切な細胞中のcAMPの産生は、関連する受容体活性を追跡するために使用することができる。従って、それぞれが1つの受容体を発現し他の受容体は発現しない細胞タイプの適切な対の使用は、両方のタイプの受容体に対するアゴニスト活性を測定するために使用することができる。
【0103】
熟練者は適切なアッセイフォーマットを周知しているであろうが、例が以下に示される。GLP−1受容体及び/又はグルカゴン受容体は、実施例に記載されたような受容体の配列を有することができる。例えば、アッセイは、一次受け入れ番号GI:4503947を有するヒトグルカゴン受容体(Glucagon−R)、及び/又は一次受け入れ番号GI:166795283を有するヒトグルカゴン様ペプチド1受容体(GLP−1R)を使用することができる(前駆体タンパク質の配列が言及される時、もちろん、アッセイが、シグナル配列の欠如した成熟タンパク質を使用してもよいことを理解すべきであるという点で)。
【0104】
EC50は、ある受容体におけるアゴニスト効力の数値的尺度として使用することができる。EC50値は、ある具体的なアッセイにおいて、その化合物の最大活性の半分を達成するために必要な化合物の濃度の尺度である。すなわち、例えばある具体的なアッセイにおいて、グルカゴンのEC50[GLP−1]より低いEC50[GLP−1]を有する化合物は、グルカゴンより高いGLP−1受容体アゴニスト効力を有すると考えることができる。
【0105】
本明細書に記載の化合物は、グルカゴン受容体とGLP−1受容体の両方でcAMP生成を刺激することができるという観察により確定されるように、典型的にはGluGLP−1二重アゴニストである。各受容体の刺激は、独立したアッセイで測定することができ、後に互いに比較される。
【0106】
GLP−1受容体についてのEC50値(EC50[GLP−1−R])をグルカゴン受容体についてのEC50値(EC50[GlucagonR])と比較することにより、ある化合物について、相対的GLP−1R選択性は以下のように計算することができる:
【0107】
相対的GLP−1R選択性[化合物]=(EC50[GLP−1−R])/(EC50[Glucagon−R])
【0108】
用語「EC50」は、典型的にはある具体的な受容体での、又は受容体機能についてのある具体的なマーカーのレベルで、半最大有効濃度を意味し、特定の生化学的状況に依存して、阻害又はアンタゴニスト活性を指すことができる。
【0109】
特定の理論に拘束されるものではないが、ある化合物の相対的選択性は、GLP−1受容体又はグルカゴン受容体に対するその作用を、他の受容体に対するその作用と直接比較することを可能にすることができる。例えば、ある化合物の相対的GLP−1選択性が高いほど、その化合物は、グルカゴン受容体と比較して、GLP−1受容体に対してより有効となり得る。典型的には、この結果は、同じ種からのグルカゴン受容体及びGLP−1受容体(例えば、ヒトグルカゴン受容体及びGLP−1受容体、又はマウスグルカゴン受容体及びGLP−1受容体)について比較される。
【0110】
特定レベルのグルカゴン−Rアゴニスト活性について、本化合物は、グルカゴンより高レベルのGLP−1Rアゴニスト活性(すなわち、GLP−1受容体でのより大きな効力)を示すことができるという点で、本発明の化合物は、ヒトグルカゴンより高い相対的GLP−1R選択性を有することができる。グルカゴン受容体及びGLP−1受容体での特定の化合物の絶対効力は、適切な相対的GLP−1R選択性が達成される限り、天然のヒトグルカゴンの効力より高いか、低いか、又はほぼ等しくてもよいことは、理解されるであろう。
【0111】
しかし本発明の化合物は、ヒトグルカゴンより低いEC50[GLP−1R]を有してもよい。本化合物は、ヒトグルカゴンのEC50[グルカゴン−R]より10倍未満高い、ヒトグルカゴンのEC50[グルカゴン−R]より5倍未満高い、又はヒトグルカゴンのEC50[グルカゴン−R]より2倍未満高い、EC50[グルカゴン−R]を維持しながら、グルカゴンより低いEC50[GLP−1−R]を有してもよい。
【0112】
本発明の化合物は、ヒトグルカゴンのEC50[グルカゴン−R]より2倍未満であるEC50[グルカゴン−R]を有してもよい。本化合物は、ヒトグルカゴンのEC50[グルカゴン−R]の2倍未満のEC50[グルカゴン−R]、ヒトグルカゴンのEC50[グルカゴン−R]の半分未満のEC50[グルカゴン−R]、ヒトグルカゴンのEC50[グルカゴン−R]の5分の1倍未満のEC50[グルカゴン−R]、又はヒトグルカゴンのEC50[グルカゴン−R]の10分の1倍未満のEC50[グルカゴン−R]を有してもよい。
【0113】
本化合物の相対的GLP−1R選択性は、0.05〜20でもよい。例えば本化合物は、0.05〜0.20、0.1〜0.30、0.2〜0.5、0.3〜0.7、又は0.5〜1.0;1.0〜2.0、1.5〜3.0、2.0〜4.0、又は2.5〜5.0;又は、0.05〜20、0.075〜15、0.1〜10、0.15〜5、0.75〜2.5、又は0.9〜1.1の相対的選択性を有してもよい。
【0114】
ある実施態様において、グルカゴン−R及びGLP−1Rの両方、例えばヒトグルカゴン受容体及びGLP−1受容体についての、ある特定の化合物のEC50は、1nM未満であることが望ましいことがある。
【0115】
治療用途
本発明の化合物は、後述されるように、特に肥満及び糖尿病を含む代謝疾患に対する魅力的な治療及び/又は予防選択肢を提供することができる。
【0116】
糖尿病は、インスリン分泌、インスリン作用、又はその両方の欠陥に起因する高血糖により特徴付けられる代謝疾患の群を含む。糖尿病の急性兆候は、過度の尿産生、結果として起きる代償渇きと水分摂取の増加、視力障害、原因不明の体重減少、倦怠感、エネルギー代謝の変化を含む。糖尿病の慢性高血糖は、種々の器官、特に眼、腎臓、神経、心臓及び血管の長期損傷、機能障害、及び機能不全に関連している。糖尿病は、病因的特徴に基づいて、1型糖尿病、2型糖尿病、及び妊娠糖尿病に分類される。
【0117】
1型糖尿病は、すべての糖尿病症例の5〜10%を占め、インスリン分泌膵臓β細胞の自己免疫破壊によって引き起こされる。
【0118】
2型糖尿病は、糖尿病症例の90%〜95%を占め、代謝障害の複雑な集合の結果である。2型糖尿病は、内因性インスリン産生が、血漿グルコースレベルを診断閾値以下に維持するには不十分となった結果である。
【0119】
妊娠糖尿病は、妊娠中に特定される任意の程度の耐糖能異常を意味指す。
【0120】
糖尿病前症は、空腹時血糖障害及び耐糖能障害を含み、血糖レベルが上昇しているが、糖尿病の臨床診断を確立するレベルより低い時に発生する状態を指す。
【0121】
2型糖尿病及び糖尿病前症を持つ人の大部分は、腹部肥満(腹部内臓の周りの過剰な脂肪組織)、アテローム性脂質異常症(動脈壁におけるプラーク蓄積を促進する、高トリグリセリド、低HDLコレステロール、及び/又は高LDLコレステロールを含む血中脂肪障害)、血圧上昇(高血圧)、前血栓状態(例えば、血中の高フィブリノーゲン又はプラスミノーゲン活性化因子阻害剤1)、及び前炎症性状態(例えば、血中のC反応性蛋白の上昇)を含む、追加の代謝危険因子が高頻度に存在するために、罹患率と死亡率のリスクが高くなっている。
【0122】
逆に肥満は、糖尿病前症、2型糖尿病、並びにある種の癌、閉塞性睡眠時無呼吸、及び胆嚢ブレイダー病を発症するリスクを増加させる。
【0123】
脂質異常症は、心血管疾患のリスク上昇と関連している。血漿高密度リポタンパク質(HDL)濃度とアテローム性動脈硬化症のリスクとの間には逆相関が存在するため、HDLは臨床的に重要である。アテローム性動脈硬化プラークに貯蔵されているコレステロールの大部分は低密度リポタンパク質(LDL)に由来するため、高濃度のLDLは、アテローム性動脈硬化症と密接に関連している。HDL/LDL比は、アテローム性動脈硬化症、特に冠動脈アテローム性動脈硬化症のための臨床的リスクの指標である。
【0124】
メタボリック症候群は、一人のヒトにおける一群の代謝危険因子によって特徴付けられる。これらは、腹部肥満(腹部内臓の周りの過剰な脂肪組織)、アテローム性脂質異常症(動脈壁内のプラーク蓄積を促進する、高トリグリセリド、低HDLコレステロール、及び/又は高LDLコレステロールを含む血中脂肪障害)、血圧上昇(高血圧)、インスリン抵抗性と耐糖能異常、前血栓状態(例えば、血中の高フィブリノーゲン又はプラスミノーゲン活性化因子阻害剤1)、及び前炎症性状態(例えば、血中のC反応性蛋白の上昇)を含む。
【0125】
メタボリック症候群を有する個人は、冠動脈性心疾患や動脈硬化症の他の症状(例えば、脳卒中及び末梢血管疾患)に関連する他の疾患のリスクが高い。この症候群の主要なリスク要因は、腹部肥満であるように思われる。
【0126】
特定の理論に拘束されるものではないが、本発明の化合物は、ヒトグルカゴン受容体及びヒトGLP1受容体の両方に対する2重アゴニストとして作用すると考えられる(ここで、2重GluGLP−1アゴニストと略記される)。2重アゴニストは、例えば脂肪代謝に対するグルカゴンの作用を、例えば血中グルコースレベルと食物摂取に対するGLP−1の作用とを組合せることができる。従ってこれらは、過剰な脂肪組織の除去を加速し、持続性の体重減少を誘発し、血糖コントロールを改善するように作用することができる。2重GluGLP−1アゴニストはまた、高コレステロール、高LDLコレステロール、低HDL/LDLコレステロール比などの心血管危険因子を減少させるように作用することができる。
【0127】
従って本発明の化合物は、必要な被験体において、体重増加を防止し、体重減少を促進し、過剰な体重を減少させるか、又は肥満(病的肥満を含む)並びに関連する疾患及び健康状態(限定されるものではないが、炎症、肥満関連胆嚢疾患、及び肥満誘発性睡眠時無呼吸を含む)を治療(例えば、食欲、摂食、食物摂取、カロリー摂取、及び/又はエネルギー消費の制御による)するための薬剤として使用することができる。本発明の化合物はまた、治療の必要な被験体において、メタボリック症候群、インスリン抵抗性、耐糖能異常、糖尿病前症、空腹時グルコースの増加、2型糖尿病、高血圧、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、冠動脈性心疾患、末梢動脈疾患、及び脳卒中を含む、グルコース調節障害により引き起こされるか又はこれに関連する症状の治療に使用することもできる。これらの条件のいくつかは、肥満に関連していることがある。しかし、これらの症状に対する本発明の化合物の効果は、体重に対する効果を介して、全体的に又は部分的に媒介され得るか、又はそれらに独立していてもよい。
【0128】
2重GluGLP−1アゴニストの相乗効果は、高コレステロール及びLDLなどの心血管危険因子の減少をもたらすことができ、これは、体重に対するそれらの作用からは完全に独立していてもよい。
【0129】
従って上記したように、本発明は、それを必要とする個体において、上記した症状の治療における本発明の化合物の使用を提供する。
【0130】
本発明はまた、医学的治療法、特に上記した症状の治療法で使用するための本発明の化合物を提供する。
【0131】
好適な態様において、記載した化合物は、糖尿病、特に2型糖尿病を治療するのに使用することができる。
【0132】
具体的な実施態様において本発明は、それを必要とする個体において、糖尿病、特に2型糖尿病を治療するための化合物の使用を含む。
【0133】
あまり好適な態様において、記載した化合物は、体重増加を防止するか、又は体重減少を促進するのに使用することができる。
【0134】
具体的な実施態様において本発明は、それを必要とする個体において、体重増加を防止するか、又は体重減少を促進するための化合物の使用を含む。
【0135】
具体的な実施態様において本発明は、それを必要とする個体において、体重過多により引き起こされるか又はこれを特徴とする症状の治療法、例えば、肥満、病的肥満、手術前の病的肥満、肥満に関連する炎症、肥満に関連する胆嚢疾患、肥満誘発性睡眠時無呼吸、糖尿病前症、糖尿病、特に2型糖尿病、高血圧、アテローム性脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、冠動脈性心疾患、末梢動脈疾患、脳卒中又は微小血管疾患の治療及び/又は予防法における、化合物の使用を含む。
【0136】
別の態様において、記載した化合物は、循環LDLレベルを低下させるか、及び/又はHDL/LDL比を上昇させる方法で使用することができる。
【0137】
具体的な実施態様において本発明は、それを必要とする個体において、循環LDLレベルを低下させるか、及び/又はHDL/LDL比を上昇させる方法における、化合物の使用を含む。
【0138】
別の態様において、記載した化合物は、循環トリグリセリドレベルを低下させる方法で使用することができる。
【0139】
医薬組成物
本発明の化合物は、保存又は投与用に調製される医薬組成物として製剤化することができる。このような組成物は、典型的には、本発明の化合物の治療有効量を、適切な形態で、医薬的に許容し得る担体中に含む。
【0140】
本発明の化合物の治療有効量は、投与経路、治療される哺乳動物の種類、及び検討中の特定の哺乳類の身体的特徴に依存するであろう。これらの因子と、この量を決定するための関係を、医学分野の当業者は周知している。この量及び投与方法は、最適の効力を達成するために調整することができ、体重、食事、併用薬剤、及び他の因子(医学分野の当業者は周知している)に依存することがある。ヒトへの使用のために最も適切な投与サイズ及び投与計画は、本発明によって得られた結果から導かれてもよく、適切に計画された臨床試験で確認してもよい。本発明の化合物は、ヒトの治療のために特に有用であり得る。
【0141】
効果的な投与量及び治療プロトコルは、実験動物において低用量から開始し、効果を追跡しながら投与量を増加させ、そして、同様に組織的に投与計画を変化させる従来法によって決定することができる。ある被験体について最適な用量を決定する時、臨床医は多くの要因を考慮することができる。このような考慮事項は、当業者には公知である。
【0142】
用語「医薬的に許容し得る担体」は、任意の標準的医薬担体を含む。治療用途の医薬的に許容し得る担体は医薬分野で公知であり、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro edit. 1985)に記載されている。例えば、酸性pH又は生理学的pHの無菌食塩水及びリン酸緩衝化食塩水を使用することができる。pH緩衝剤は、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、重炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、ヒスチジン(これは好適な緩衝剤である)、アルギニン、リジン、もしくは酢酸塩、又はそれらの混合物でもよい。この用語はさらに、ヒトを含む動物での使用のための、米国薬局方に記載されている任意の薬剤を包含する。
【0143】
用語「医薬的に許容し得る塩」は、本発明の化合物の任意の1つを指す。塩は、酸付加塩及び塩基性塩のような医薬的に許容し得る塩を含む。酸付加塩の例としては、塩酸塩、クエン酸塩、及び酢酸塩が挙げられる。塩基性塩の例としては、陽イオンが、ナトリウム、カリウム、カルシウムなどのアルカリ金属、カルシウム及びアンモニウムイオン+N(R33(R4)(ここで、R3及びR4は、任意に置換されたC1-6アルキル、任意に置換されたC2-6アルケニル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたヘテロアリールを独立して示す)などのアルカリ土類金属から選択される塩が挙げられる。医薬的に許容し得る塩の他の例は、“Remington’s Pharmaceutical Sciences” ,17th edition. Ed. Alfonso R. Gennaro (Ed.), Mark Publishing Company, Easton, PA, U.S.A., 1985、及びより最近の版、及びthe Encyclopaedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0144】
「治療」は、有益な又は所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のために、有益な又は所望の臨床結果としては、限定されるものではないが、症状の緩和、疾患の程度の低減、疾患状態の安定化(すなわち、悪化しない)状態、疾患進行の遅延又は減速、疾患状態の改善又は緩和、及び検出可能又は検出不可能な寛解(部分的又は全身性)を含む。「治療」はまた、治療を受けない場合に予想される生存期間と比較して生存期間を延長することを意味することができる。「治療」は、障害の発症を予防するか、又は障害の病状を変化させる意図で行われる介入である。したがって、「治療」は、ある実施態様において、治療的処置及び予後的又は予防的手段の両方を指す。治療を必要とする者は、すでに障害を有する者、並びに障害が予防されるべき者を含む。治療は、治療が存在しない時と比較して、病状又は症状の拡大(例えば、体重増加、高血糖)を阻害又は低減することを意味し、必ずしも関連する症状の完全な停止を意味するものではない。
【0145】
医薬組成物は、単位剤型であってもよい。かかる剤型において組成物は、適切量の活性成分を含む単位用量に分割される。単位剤型は、個別量の調製物を含むパッケージ化された調製物、例えば、パケット化錠剤、カプセル剤、及びバイアル又はアンプル中の粉末でもよい。単位剤型はまた、それ自体カプセル剤、カシェ剤、又は錠剤でもよく、又は適切な数のこれらのパッケージ形態のいずれかでもよい。これは、単回投与用の注射形態で、例えばペンの形態で提供してもよい。ある実施態様において、パッケージ形態は、使用説明を有するラベル又は挿入物でもよい。組成物は、任意の適切な投与経路及び投与手段用に製剤化することができる。医薬的に許容し得る担体又は希釈剤は、経口、直腸、経鼻、局所的(口腔及び舌下を含む)、経膣、又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、及び経皮を含む)投与に適した調製物で使用されるものを含む。この調製物は、単位剤型で提示されることが便利であり、薬剤学の分野で公知の任意の方法により調製することができる。
【0146】
本明細書に記載の化合物について、皮下又は経皮的投与が特に適しているであろう。
【0147】
本発明の組成物はさらに、化合物の安定性を増強するために、生物学的利用能を上昇させるために、溶解度を上昇させるために、有害作用を低下させるために、当業者に公知の時間療法を達成するために、及び患者コンプライアンスを上昇させるために、又はこれらの任意の組合せのために、共有、疎水性、及び静電的相互作用を介して、薬剤担体、薬剤送達システム、及び進化型薬剤送達システムに調合するか、又はこれに結合させることができる。担体、薬剤送達システム、及び進化型薬剤送達システムの例は、限定されるものではないが、ポリマー、例えばセルロース及び誘導体、多糖、例えばデキストラン及び誘導体、デンプン及び誘導体、ポリ(ビニルアルコール)、アクリレート及びメタクリレートポリマー、ポリ乳酸とポリグリコール酸、及びこれらのブロックコポリマー、ポリエチレングリコール、担体タンパク質、例えばアルブミン、ゲル、例え、熱ゲル化システム、例えば当業者に公知のブロックコポリマー系、ミセル、リポソーム、微小球、ナノ粒子、液晶及びこれらの分散物、液体−水系の相挙動の分野の当業者に公知のL2相及びその分散物、ポリマーミセル、多相エマルション、自己乳化性、自己ミクロ乳化性、シクロデキストリン及びその誘導体、及びデンドリマーを含む。
【0148】
併用療法
本発明の化合物又は組成物は、肥満、高血圧、脂質異常症、又は糖尿病の治療のための薬剤との併用療法の一部として投与してもよい。
【0149】
このような場合、活性物質は、一緒に又は別々に、及び同じ医薬製剤として又は別の製剤として投与してもよい。
【0150】
すなわち本発明の化合物又は組成物はさらに、限定されるものではないが、グルカゴン様ペプチド受容体1アゴニスト、ペプチドYY又はその類似体、カンナビノイド受容体1アンタゴニスト、リパーゼ阻害剤、メラノコルチン受容体4アゴニスト、又はメラニン凝集ホルモン受容体1アンタゴニストを含む抗肥満薬と組み合わせて使用することができる。
【0151】
本発明の化合物又は組成物は、限定されるものではないが、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断薬、利尿薬、ベータ遮断薬、又はカルシウムチャネル遮断薬を含む抗高血圧薬と組み合わせて使用することができる。
【0152】
本発明の化合物又は組成物は、限定されるものではないが、スタチン、フィブラート、ナイアシン、及び/又はコレステロール吸収阻害剤を含む脂質異常症薬と組み合わせて使用することができる。
【0153】
さらに、本発明の化合物又は組成物は、限定されるものではないが、ビグアニド(例えば、メトホルミン)、スルホニル尿素、メグリチニド又はグリニド(例えばナテグリニド)、DPP−IV阻害剤、グリタゾン、異なるGLP−1アゴニスト、インスリン又はインスリン類似体を含む抗糖尿病薬と組み合わせて使用することができる。好適な実施態様において、化合物又はその塩は、適切な血糖コントロールを達成するために、インスリン又はインスリン類似体、DPP−IV阻害剤、スルホニル尿素又はメトホルミン、特にスルホニル尿素又はメトホルミンと組み合わせて使用される。インスリン類似体の例は、限定されるものではないが、ランタス、ノボラピッド、ヒューマログ、ノボミックス、及びアクトラファンHM、レベミル、及びアピドラを含む。
【実施例】
【0154】
実施例1
グルカゴン類似体の一般的合成
ポリスチレン樹脂(TentaGel S Ram)上でNMP中の標準的Fmoc法を使用してマイクロ波支援合成機で、固相ペプチド合成(SPPS)を行った。塩基としてのDIPEAとともに、HATUを結合試薬として使用した。脱保護用に、ピペリジン(NMP中20%)を使用した。シュードプロリン:Fmoc−Phe−Thr(psiMe, Mepro)−OH及びFmoc−Asp−Ser(psiMe, Mepro)−OH(NovaBiochemから購入)を適宜使用した。
【0155】
使用した略語は以下の通りである:
Boc: tert−ブチルオキシカルボニル
ivDde: 1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)3−メチル−ブチル
Dde: 1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)−エチル
DCM: ジクロロメタン
DMF: N,N−ジメチルホルムアミド
DIPEA: ジイソプロピルエチルアミン
EDT: 1,2−エタンジチオール
EtOH: エタノール
Et2O: ジエチルエーテル
HATU: N−[(ジメチルアミノ)−1H−1,2,3−トリアゾール[4,5−b]ピリジン−1−イルメチレン]−N−メチルメタナミニウムヘキサフルオロホスフェートN−オキシド
MeCN: アセトニトリル
NMP: N−メチルピロリドン
TFA: トリフルオロ酢酸
TIS: トリイソプロピルシラン
【0156】
切断:
95/2.5/2.5%(v/v)TFA/TIS/水を用いて室温(r.t.)で2時間処理することにより、粗ペプチドを樹脂から切断した。配列中にメチオニンを有するペプチドについては、95/5(v/v)TFA/EDTの混合物を使用した。TFAの大部分を減圧下で除去し、粗ペプチドを沈殿させ、ジエチルエーテルで洗浄し、周囲温度で一定重量になるまで乾燥させた。
【0157】
以下の化合物が合成された:
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHDFVEWLLS−OH(化合物1)、
H−HSQGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHDFVEWLLSA−OH(化合物2)、
H−HSQGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHDFVEWLLRA−OH(化合物3)、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAKDFIEWLLSA−NH2(化合物4)、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHDFVEWLESA−NH2(化合物5)、
H−HSQGTFTSDYSRYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAEDFVEWLLRA−NH2(化合物6)、
H−HSQGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAEDFVEWLLRA−NH2(化合物7)、
H−HSQGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHDFVEWLLS−NH2(化合物8)、
H−HSQGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHDFVEWLLR−OH(化合物9)、
H−HSQGTFTSDYSKYLDE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHEFVEWLESA−NH2(化合物10)、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−RAKDFIEWLLS−OH(化合物11)、
H−HSQGTFTSDYSRYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHDFVEWLLSA−NH2(化合物12)、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHDFVEWLLSA−OH(化合物13)、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−RAKDFIEWLLSA−OH(化合物14)、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAKDFIEWLESA−NH2(化合物15)、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDS−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAEDFVEWLESA−NH2(化合物16)、
H−H−Aib−HGTFTSDYSKYLES−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAEEFIEWLESA−OH(化合物17)、
H−HSHGTFTSDYSKYLEE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHEFIEWLESA−OH(化合物18)、
H−H−Aib−HGTFTSDYSKYLEE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHEFVEWLESA−NH2(化合物19)、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLEE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAKDFIEWLESA−NH2(化合物20)、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLES−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAEDFIEWLESA−NH2(化合物21)、
H−HSQGTFTSDYSKYLEE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAKDFIEWLESA−NH2(化合物22)、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLES−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAHDFVEWLESA−NH2(化合物23)、
H−H−Aib−QGTFTSDYSKYLES−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAEDFVEWLESA−NH2(化合物24)、
H−H−DSer−QGTFTSDYSKYLDE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−AAKDFIEWLESA−NH2(化合物25)。
【0158】
実施例2
アシル化グルカゴン類似体の一般的合成
グルカゴン類似体の一般的合成のために上記のようにペプチド骨格を合成したが、これは、ペプチドが樹脂にまだ結合したままリジン残基の側鎖上でアシル化して、アシル化すべきリジンリジン上のイプシロンアミン以外を、側鎖基上で完全に保護した。アシル化すべきリジンをFmoc−Lys(ivDde)−OH又はFmoc−Lys(Dde)−OHを用いて取り込んだ。ペプチドのN末端を、NMP中のBoc2Oを用いてBoc基で保護した。ペプチドが未だ樹脂に結合したまま、NMP中5%ヒドラジン水和物を使用して、ivDde保護基を選択的に切断した。次に、保護していないリジン側鎖をFmoc−Glu−OtBuのようなスペーサーアミノ酸に結合させ、次にこれをピペリジンで脱保護し、上記した標準的ペプチド結合法を使用して、脂肪酸でアシル化した。代替的に、N末端のヒスチジンを、最初からBoc−His(Boc)−OHとして取り込んでもよい。樹脂からの切断と精製は、上記したように行った。
【0159】
実施例3
グルカゴン受容体とGLP−1受容体の効力アッセイ
ヒトグルカゴン受容体(グルカゴン−R)(一次受け入れ番号P47871)又はヒトグルカゴン様ペプチド−1受容体(GLP−1R)(一次受け入れ番号P43220)をコードするcDNAを合成し、Zeocin耐性マーカーを含有する哺乳動物発現ベクター中にクローン化した。
【0160】
グルカゴン−R又はGLP−1−Rをコードする哺乳動物発現ベクターを、Altracten法によりチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中にトランスフェクトさせた。選択圧力に耐性の細胞の限界希釈によるZeocin選択(250μg/ml)により、安定に発現しているクローンを得た。発現しているグルカゴン−R及びGLP−1−R細胞クローンを取り上げ、増殖させ、後述のグルカゴン−R及びGLP−1−R効力アッセイで試験した。1つのグルカゴン−R発現クローンと1つのGLP−1−R発現クローンを、化合物プロファイリングのために選択した。
【0161】
ヒトグルカゴン−R又はヒトGLP−1−Rを発現するCHO細胞を接種した24時間後、100μLの増殖培地中で96ウェルマイクロタイタープレート中のウェル当たり30,000細胞の培養でアッセイした。分析の日に、増殖培地を除去し、細胞を200μLのアッセイ緩衝液(クレブス−リンゲル−緩衝液−KRBH)で1回洗浄した。緩衝液を除去し、増加する濃度の試験ペプチドを含有する脱イオン水中の0.1mM IBMXを有する10μLのKRBH(KRBH+10mMヘペス、5mM NaHCO3、0.1%(v/v)BSA)中で室温で15分インキュベートした。溶解バッファー(0.1%w/v BSA、5mMヘペス、0.3%v/vツイーン20)の添加により、反応を停止させた。室温で10分間、細胞を溶解後、溶解物を384ウェルプレートに移し、AlphaScreen(登録商標)cAMP Functional Assay Kitに含まれるような10μLのアクセプター/ドナービーズ混合物を加えた。暗所で室温で1時間インキュベーション後、cAMP内容物を、Perkin-ElmerのAlphaScreen(登録商標)cAMP Functional Assay Kitを適用して、製造業者の説明書に従って測定した。コンピューター支援曲線フィッティングを適用して、基準化合物(グルカゴンとGLP−1)と比較したEC50と相対的効力を計算した。すでに定義したように、GLP−1/グルカゴン比を計算した。表1Aと1Bとを参照されたい。
【0162】
【表1A】
【表1B】
【0163】
異なる実験室で同じプロトコールを使用して行われた実験で、2セットの化合物を試験した。
【0164】
実施例4
内因性GLP−1受容体上のアゴニスト活性
内因性GLP−1受容体上の試験化合物のアゴニスト活性を、マウスインスリノーマ細胞株を使用して測定した。受容体活性化の指標として、細胞内cAMPを使用した。
【0165】
細胞を364ウェルプレート中で10,000細胞/ウェルの密度で24時間培養した。培地を除去し、試験化合物又はGLP−1(0.1pM〜100nMへ上昇する濃度で)を含有する10μLのKRBH緩衝液(NaCl 130mM、KCl 3.6mM、NaH2PO4 0.5mM、MgSO4 0.5mM、CaCl2 1.5mM)、又は溶媒対照(0.1%(v/v)DMSO)を、26℃の温度で15分間ウェルに加えた。
【0166】
細胞性cAMP内容物を、AlphaScreen(登録商標)cAMP Functional Assay Kit(Perkin Elmer)を使用して測定した。測定は、Envision(Perkin Elmer)を使用して製造業者の推奨に従って行った。
【0167】
すべての測定は、4重測定で行った。
【0168】
結果は、0.1%(v/v)DMSOを含有するKRBH緩衝液中で調製したcAMP標準曲線を使用して、cAMP濃度に変換した。得られたcAMP曲線を、log(試験化合物濃度)に対する絶対cAMP濃度(nM)としてプロットし、曲線フィッティングプログラムXLfitを使用して解析した。
【0169】
内因性GLP−1受容体上の各試験化合物の効力並びにアゴニスト活性を説明するために計算されたパラメータは:
pEC50(EC50の負のlog値、cAMPレベルの半最大上昇を与える濃度、試験化合物の効力を反映する);
パーセント対照(%CTL)(GLP−1誘導性の最大cAMP応答(100%CTL)に基づいて標準化された各試験化合物濃度についての%cAMP上昇)。表2を参照。
【0170】
【表2】
【0171】
実施例5
内因性グルカゴン受容体上のアゴニスト活性
内因性グルカゴン受容体上の試験化合物のアゴニスト活性を、初代培養肝細胞中のグリコーゲン合成速度に対するこれらの作用を測定することにより決定した。グリコーゲン受容体の活性化について、グリコーゲン合成の阻害が予測される。一定時間で細胞性グリコーゲン貯蔵中へ取り込まれる放射能標識グルコースの量を計測することにより、グリコーゲン合成速度を測定した。
【0172】
初代培養ラット肝細胞を、24ウェルプレート中で40,000細胞/ウェルの密度で、37℃で5%CO2で24時間培養した。
【0173】
培地を廃棄し、細胞をPBSで洗浄した。次に、0.1%BSAと22.5mM濃度のグルコースを含有する180μLのKRBH系の緩衝液をウェルに加え、次に試験化合物と40μCi/mlのD−[U14C]グルコース(各20μL)を加えた。インキュベーションを3時間続けた。
【0174】
インキュベーション時間の最後に、インキュベーション緩衝液を吸引し、細胞を氷冷PBSで1回洗浄した後、100μLの1mol/l NaOHで室温で30分間インキュベートして、溶解させた。
【0175】
細胞溶解物を96ウェルのフィルタープレートに移し、フィルタープレを4℃で120分間インキュベートすることによりグリコーゲンを沈殿させ、次にフィルタープレートを氷冷エタノール(70%)で4回洗浄した。生じた沈殿物をろ過して乾燥させ、取り込まれた14C−グルコースの量を、Topcountシンチレーションカウンターを使用して製造業者の推奨に従って測定した。
【0176】
ビヒクル対照(KRBH緩衝液中0.1%(v/v)DMSO)を、非阻害グリコーゲン合成のための基準物質として含めた。D−[U14C]グルコースを添加していないウェルを、非特異的バックグランドシグナルの対照(すべての値から引かれる)として含めた。内因性グルカゴンペプチドを陽性対照として使用した。
【0177】
すべての処理は、少なくとも三重測定で行った。
【0178】
内因性グルカゴン受容体上の各試験化合物の効力並びにアゴニスト活性を記載するために計算されるパラメータは、pEC50と%CTLである。
【0179】
試験化合物の存在下のCPM/ウェルのパーセントを、バックグランドCPM/ウェルを引いた後のビヒクル対照のCPM/ウェルと比較して計算することにより、%CTLが決定される:
[CPM/ウェル(基礎)−CPM/ウェル(試料)]*100/[CPM/ウェル(基礎)−CPM/ウェル(対照)]
【0180】
グルカゴン受容体のアクチベーターは、グリコーゲン合成速度の阻害を与え、0% CTL(完全な阻害)と100% CTL(阻害は観察されない)の間の%CTL値を与えるであろう。
【0181】
生じた活性曲線を、log(試験化合物濃度)に対する絶対カウント(単位:cpm/試料)としてプロットし、曲線フィッティングプログラムXLfitを使用して解析した。
【0182】
pEC50(EC50の負の対数値)は、試験化合物の効力を反映する。
【0183】
【表3】
【0184】
GLP−1R活性化に関して引用される用語EC50とpEC50は、グリコーゲン合成に関して、同様にIC50とpIC50と見なすことができるであろう。
【0185】
実施例6
薬物動態パラメータの推定
試験化合物の薬物動態パラメータを、C57Bl/6Jマウスへの皮下及び静脈内投与後に測定した。
【0186】
試験施設への到着時の体重が約20〜25gの8週齢のオスのC57Bl/6Jマウスを、Taconic(Denmark)から得た。マウスを、12時間の暗期サイクルと12時間の明期サイクル(6:00に点灯)を有するヨーロッパ標準ケージIII型中で飼った。全実験期間中、餌、Altromin 1324(Altromin, Germany)、及び水は自由に与えた。適切な順化を確実にするために、8〜11週齢の動物を、実験操作の開始の少なくとも7日前には実験室に輸入した。サンプリング後、マウスを頸椎脱臼により安楽死させた。
【0187】
化合物をまず0.096%のアンモニウム水に溶解して公称濃度2mg/mlとし、次に25mMリン酸緩衝液(pH7.4)を含有する無菌PBSで所望の活性成分含量(4μM)に希釈した。20nmol/kgに相当する皮下及び静脈内注射を行った。GLP−1−グルカゴン2重アゴニストを、皮下投与用に頸部領域に投与し、静脈内投与用に側尾静脈を介して投与した。
【0188】
血液試料(250μl)を眼窩周囲神経叢から、皮下投与については0.5、2、4、6、12、16、20、24時間の時点で、静脈内投与については10、30分、3、、6、12、18、24時間の時点で、氷冷したK3EDTA試験管中に採取し、サンプリング後20分以内に4℃で5分遠心分離した。血漿(>100μl)を氷冷したMicronic試験管に分離し、直ちに凍結し、LC−MS/MSを使用して各GLP−1−グルカゴン化合物について血漿濃度について分析するまで−70℃に維持した。WinNonLin v6.3(Pharsight, Mountain View, Calif., USA)で非コンパートメントアプローチにより個々の血漿濃度プロフィールを解析し、生じる薬物動態パラメータを測定した。表4を参照されたい。
【0189】
【表4】
【0190】
実施例7
C57BL/6Jマウスにおける経口耐糖能試験(OGTT)
オスのC57BL/6Jマウスを10時間絶食させた後、2g/kg体重の経口グルコースボラスを投与した。25mMリン酸塩で緩衝化させた食塩水にペプチドを溶解させ、10nmol/kg体重の用量で皮下注射により投与した4時間後、グルコースボラスを投与した。対照動物には、ビヒクル注射のみを行った。群の大きさは1群7匹であった。尾の出血により、投与前血液試料とグルコース投与前血液試料(0分)を得て、血中グルコースをグルコメーターで測定した。血中グルコースを測定するための追加の尾の血液試料を、グルコース負荷の15分、30分、60分、90分、及び120分後に得た。0〜120分の間の血中グルコース−時間曲線(AUC)下の全面積を計算することにより、グルコース偏位(excursion9を定量した。データは、平均±SEMとして提示される。一元配置分散分析の後にテューキーのポストテスト(Tukey's post test)により、統計的比較を行った。
【0191】
【表5】
【0192】
実施例8
食餌誘導性肥満C57BL/6Jマウスにおける脂肪症に対するグルカゴン−GLP−1受容体2重作用性アゴニストの亜慢性作用
5週齢のオスのC57BL/6Jマウス(Taconic A/S, Denmark)を、12:12時間の明−暗周期で高脂肪食(脂肪から総エネルギーの60%、D12492, Research Diet Inc.)で20週間維持した。次に、すべてのマウス(1ケージにつき2匹収容)を、1週間モック処理して、取り扱いと注射に対してマウスを慣れさせた。次に、マウスを体脂肪量(磁気共鳴法により測定)と体重に従って、9群(n=9〜12)に層別した。次に動物を、ビヒクル(25mMリン酸緩衝液、pH7.4)又は試験物質(1回投与当たり5nmol/kg、ビヒクルと等しい量で)の皮下注射(5ml/kg)で1日に2回、全部で31日間処理した。毎日の注射は、明期の開始時と終了時に行った。試験中毎日、体重、食物摂取、及び水分摂取を測定した。データは表6に平均体重変化±S.E.M.として示される。S.E.M.は平均の標準誤差であり、式:S.E.M.=SD/平方根(n)を使用して計算され、ここで、SDは標準偏差であり、nは観察の数(この場合、1群当たりの動物数)である。
【0193】
統計解析は、Graph Pad Prism バージョン5使用して行った。測定したパラメータを、一元配置分散分析と、次にダネット(Dunnett)の多重比較検定により比較した。差は、p<0.05で統計的に有意であると見なされた。
【0194】
【表6】
【配列表】
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