特許第6334543号(P6334543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334543
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】挿入ツール
(51)【国際特許分類】
   A61C 8/00 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
   A61C8/00 Z
【請求項の数】12
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-534923(P2015-534923)
(86)(22)【出願日】2013年9月19日
(65)【公表番号】特表2015-533561(P2015-533561A)
(43)【公表日】2015年11月26日
(86)【国際出願番号】EP2013002823
(87)【国際公開番号】WO2014053218
(87)【国際公開日】20140410
【審査請求日】2016年8月5日
(31)【優先権主張番号】12006866.3
(32)【優先日】2012年10月2日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506415207
【氏名又は名称】ストラウマン ホールディング アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】グスタフソン,エミリア
(72)【発明者】
【氏名】ダラ トーレ,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ラジッチ,ミオドラグ
【審査官】 増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−025031(JP,A)
【文献】 特開2010−051708(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0269890(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバツールから歯科インプラントにトルクを伝達する挿入ツールであって、歯冠側端部(6)から先端側端部(8)に長手軸(L)に沿って延びるシャフト(4)を含んでおり、前記シャフト(4)は、
先端側端部に歯科インプラント係合部(18)を含み、該歯科インプラント係合部は、挿入ツールから歯科インプラントにトルクが伝達され得るように、トルクが伝達される方式で歯科インプラントに係合するために適したトルク印加手段(20)を含み、
また、前記シャフトは、前記歯科インプラント係合部(18)よりも歯冠側にドライバツール係合部(10)を含み、該ドライバツール係合部は、ドライバツールから挿入ツールにトルクが伝達され得るように、トルクが伝達される方式でドライバツールに係合するために適した主トルク受け手段(12)を含み、
また、前記シャフトは、前記ドライバツール係合部(10)と前記歯科インプラント係合部(18)との間に配置され、既定量のトルクTbreakが印加されると破断するように構成された破断領域(32)を含んでおり、
前記シャフト(4)は、前記歯科インプラント係合部(18)と前記破断領域(32)との間に、ドライバツールから挿入ツールにトルクが伝達され得るように、トルクが伝達される方式でドライバツールに係合するために適した補助トルク受け手段(36)を含み、
前記主トルク受け手段(12)の断面形状と、前記補助トルク受け手段(36)の断面形状とが、前記主トルク受け手段と前記補助トルク受け手段とが同一のドライバツールからトルクを受けるために適するように実質的に同一である、ことを特徴とする挿入ツール。
【請求項2】
前記主トルク受け手段(12)及び前記補助トルク受け手段(36)のそれぞれは、非円形の断面形状を有し、少なくとも1つのトルク受け面を有することを特徴とする請求項1に記載の挿入ツール。
【請求項3】
前記主トルク受け手段(12)及び/または前記補助トルク受け手段(36)は、非円形の筒体からなる基本形状を有し、前記少なくとも1つのトルク受け面は、当該筒体の外側面により形成されることを特徴とする請求項2に記載の挿入ツール。
【請求項4】
前記トルク印加手段(20)は、非円形の断面形状を有し、少なくとも1つのトルク印加面を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の挿入ツール。
【請求項5】
前記トルク印加手段(20)は、非円形の筒体からなる基本形状を有し、前記少なくとも1つのトルク印加面は、当該筒体の外側面(22)により形成されることを特徴とする請求項4に記載の挿入ツール。
【請求項6】
前記破断領域(32)は、前記シャフト(4)の、挿入ツール(2)で最も細径の領域を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の挿入ツール。
【請求項7】
前記歯科インプラント係合部(18)は、さらに、歯科インプラントを解放可能に保持するために適した歯科インプラント保持要素(39)を含み、該歯科インプラント保持要素(39)は、長手軸方向に延びる少なくとも1つの保持アーム(40a、40b)を含み、該保持アームは、その一端で前記歯科インプラント係合部(18)の残りの部分に結合し、長手軸(L)に向かうように弾性的に撓み可能であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の挿入ツール。
【請求項8】
前記ドライバツール係合部(10)は、さらに、ドライバツールを解放可能に保持するためのドライバツール保持要素(57)を含み、該ドライバツール保持要素は、長手軸方向に延びる少なくとも1つの保持アーム(64、64a、64b)を含み、該保持アームは、その一端で前記ドライバツール係合部(10)の残りの部分に結合し、長手軸(L)に向かうように弾性的に撓み可能であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の挿入ツール。
【請求項9】
前記ドライバツール係合部は、さらに、ドライバツールを解放可能に保持するためのドライバツール保持要素を含み、該ドライバツール保持要素は、長手軸方向に延びる少なくとも1つの保持アーム(64、64a、64b)を含み、該保持アームは、その一端で前記ドライバツール係合部の残りの部分に結合し、長手軸に向かうように、または、長手軸から離れるように、弾性的に撓み可能であり、前記ドライバツールと圧力嵌めまたはスナップ嵌めを形成することを特徴とする請求項1に記載の挿入ツール。
【請求項10】
前記少なくとも1つの保持アーム(64)は、前記歯冠側端部内に延びる長手軸方向の止まり穴(58)と、挿入ツールの外面から前記止まり穴まで延びる2つの長手軸方向の切れ目(62a、62b)により形成されることを特徴とする請求項8または9に記載の挿入ツール。
【請求項11】
前記少なくとも1つの保持アーム(64a、64b)は、前記歯冠側端部(6)から発して前記歯冠側端部の断面の弦に沿って延びる、単一の長手軸方向の切れ目(63a、63b)により形成されることを特徴とする請求項8または9に記載の挿入ツール
【請求項12】
前記少なくとも1つの保持アーム(64、64a、64b)は、主トルク受け手段(12)に形成されることを特徴とする請求項8から11のいずれか1項に記載の挿入ツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段部分に従う挿入ツールに関する。
【背景技術】
【0002】
口腔インプラント治療において、歯科インプラントは、個々の歯と交換するため、または、より複雑な構造物を固定するために使用される。この構造物は、一般には、複数のまたは全ての歯と交換されるものである。市販されるインプラントの大部分は、骨内の事前処置された移植部位にねじ込まれるねじ付き軸部を含む。このねじは、歯科インプラントに対して、歯科インプラントが骨構造に統合化(骨統合)されるまでの初期的な安定性を与える。
【0003】
ラチェット、レンチ、または電動の歯科用ハンドピース等のドライバツールによって歯科インプラントを骨内にねじ込むために、挿入ツールが使用される。挿入ツールは、歯科インプラントをその包装容器から移植部位に運ぶために使用されることも多い。挿入ツールは、歯科インプラントとともに包装されている場合、歯科インプラントを包装容器内の所定の位置に保持する機能も有する。この形式の挿入ツールは、「移送部品」と呼ばれる場合もある。
【0004】
挿入ツールは、その目的を達成するため、ドライバツールから歯科インプラントへトルクを伝達することが可能でなければばらない。また、挿入ツールは、場合によっては、保管及び/または輸送の間に、歯科インプラントに対する軸方向の結合を維持しなければならない。
【0005】
したがって、挿入ツールは、トルクを伝達するように歯科インプラントに係合する形状を有するトルク印加手段を含む。一例として、トルクは、例えば相補的な円錐形のテーパーを使用して、挿入ツールと歯科インプラントとの間の摩擦係合を介して伝達されるものであってもよい。
【0006】
しかしながら、多くの歯科インプラントシステムにおいて、大部分のトルクの伝達は、2つの構成要素間の幾何学的嵌合を介して生じる。
【0007】
このようなシステムにおいて、歯科インプラントは、内部回転係止手段または外部回転係止手段を含んでいる。外部回転係止手段は、通常、歯科インプラントの最も歯冠側の端部に形成される。一方、内部回転係止手段は、通常、歯冠側端部から歯科インプラント内を先端方向に延びる軸方向の孔内に配置される。回転係止手段は、歯科インプラントの長手軸に対して直交する平面において非円形の断面を有する。これは、回転係止手段が、長手軸回りに円形ではない幾つかの断面領域を有すること、すなわち、回転係止手段は、一様な半径方向の長さを有しないことを意味する。例えば、回転係止手段は、多角形の断面を有しており、歯科インプラントの長手軸回りの所定の角位置に配置された複数の平面状の側面を備えるものであってもよい。代わりに、回転係止手段は、半径方向に延びる複数の溝部または突出部を含むものであってもよい。これらの溝部または突出部は、曲面状であってもまたは平面状であってもよい。本明細書において、回転係止手段のこれらの非円形の表面を、「回転係止面」ともいう。
【0008】
このようなシステムの協働する挿入ツールは、トルク印加手段を含んでいる。トルク印加手段は、挿入ツールの長手軸に対して直交する平面において非円形の断面を有しており、少なくとも1つの非円形の表面は、歯科インプラントの回転係止手段の回転係止面を補完するものである。したがって、挿入ツールが歯科インプラントの回転係止手段内に挿入されるか、または回転係止手段を覆うように配置されたとき、これらの表面が相対的に回転しないように揃えられることによって、歯科インプラントにトルクを伝達することが可能となる。本明細書において、歯科インプラントの1つまたは複数の回転係止面と協働する、トルク印加手段の1つまたは複数の表面を、「トルク印加面」ともいう。
【0009】
ここで、「補完する」または「相補的」という用語は、トルク印加手段の断面と回転係止手段の断面とが一致することを要求するものではなく、またさらには、トルク印加面と回転印加面とが一致することを要求するものでもない。単に、挿入ツールの回転の結果としてインプラントの回転が生じるように、これらの面が回転することなく互いに係合可能であればよい。
【0010】
挿入ツールは、歯科用ハンドピース等のような標準的なドライバツールに対して、歯科インプラントを間接的に結合するように機能する。このように、挿入ツールは、標準的なドライバツールを、特定の構造を備える歯科インプラントへのトルク印加用として使用できるようにするためのアダプターとして見ることもできる。
【0011】
したがって、挿入ツールは、その基部側端部に、トルク受け手段を含んでいる。トルク受け手段は、トルクを伝達するようにドライバツールに係合して協働する形状を有する。トルク印加手段と同様に、トルク受け手段は、非円形の断面を含んでおり、これによって、少なくとも1つのトルク受け面が形成される。断面の形状は、ドライバツールの駆動手段を補完するように設計される。この駆動手段は、通常、ドライバツールの最も末端側の端部に配置されており、非円形の断面を有する内壁を備えた中空のスリーブか、または、外側に非円形の断面を有するボルトの形状を有している。これによって、少なくとも1つのトルク伝達面が形成される。トルク受け手段は、これに対して相補的であり、ドライバツールの駆動手段内に挿入されるか、または駆動手段を覆うように配置されて、非円形の断面が回転しないように揃えられる。これは、ドライバツールの末端側端部が回転されると、挿入ツールが同様に回転され、歯科インプラントにトルクを伝達することが可能となることを意味する。
【0012】
歯科インプラントを骨内に挿入している間、医師が過大なトルクを印加することによって、歯科インプラント、そしてさらに重大な場合には骨に損傷が生じる可能性がある。このような損傷には、歯科インプラントの回転係止手段のゆがみが含まれ、これによって、挿入ツールのジャミングが生じる場合がある。また、アバットメントまたは補綴物のような、歯科インプラントに対して回転が固定された結合を形成するために回転係止手段を使用する二次要素と歯科インプラントとの間の結合も、阻害されるかまたは緩むおそれがある。重大な場合には、歯科インプラントが破損するおそれがあり、これによって、周囲の骨組織が損傷を受けるとともに、骨から歯科インプラントを取り出すことが困難になる。これを回避するためには、歯科インプラントまたは骨が損傷する前に、挿入ツールが破断することが重要である。
【0013】
このため、破断領域を有する挿入ツールが知られている。破断領域は、例えば直径が縮小された部分のような、シャフト上の脆弱な領域である。破断領域は、既定のトルクが印加されると破断し、それによって、歯科インプラントに対してトルクが更に伝達されることを回避するものである。
【0014】
歯科インプラントにトルクを伝達するツールであって、脆弱領域を有しており、既定の限界点を超えると変形するツールは、例えば米国特許出願公開第2011/0143315号に開示されている。
【0015】
さらに、欧州特許出願公開第1004284号には、ドライバ部材と、ドライバ部材に取付け可能なトルク印加用挿入体とを含む、モジュール式トルク印加用手術ツールが開示されている。この挿入体は、既定の大きさのトルクまたは既定の大きさを超えるトルクを受けると変形する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
欧州特許出願公開第1004284号に開示される思想に従う挿入ツールには、変形または破断が生じた場合に交換が必要となるという欠点がある。医師は、交換後でなければ、歯科インプラントの操作を続けられない。この操作は、移植部位からインプラントを取り出すか、または、一般には推奨されないが、歯科インプラントをさらに埋入する操作である。
【0017】
交換には、変形または破断した挿入ツールを歯科インプラントから取り外す第1ステップと、歯科インプラントに対して別の(無傷の)挿入ツールを係合する第2ステップとが含まれる。手術の間に実行しなければならないという事実を踏まえると、両方のステップは比較的複雑である。
【0018】
さらに、両方のステップには、追加のツールが必要である。したがって、医師は、挿入ツールが破断した場合に必要な手段を講じるため、一揃いのツールを手元に有している必要がある。これらのツールがすぐに利用可能でない場合、手術時間が不必要に延長される。
【0019】
これらの欠点に鑑みて、本発明の目的は、ドライバツールから歯科インプラントに安全にトルクを伝達することが可能であると同時に、挿入ツールが破断したときに挿入ツール及び歯科インプラントを容易に操作することが可能な挿入ツールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的は、請求項1に従う挿入ツールによって達成される。好適な実施形態は、従属請求項によって定義される。
【0021】
本発明は、ドライバツールから歯科インプラントにトルクを伝達する挿入ツールに関する。この挿入ツールは、歯冠側端部から先端側端部に長手軸に沿って延びるシャフトを含む。このシャフトは、先端側端部に歯科インプラント係合部を含み、歯科インプラント係合部は、挿入ツールから歯科インプラントにトルクが伝達され得るように、トルクが伝達される方式で歯科インプラントに係合するために適したトルク印加手段を含む。また、シャフトは、歯科インプラント係合部よりも歯冠側にドライバツール係合部を含み、ドライバツール係合部は、ドライバツールから挿入ツールにトルクが伝達され得るように、トルクが伝達される方式でドライバツールに係合するために適した主トルク受け手段を含む。また、シャフトは、ドライバツール係合部と歯科インプラント係合部との間に配置され、既定量のトルクTbreakが印加されると破断するように構成された破断領域を含んでいる。
【0022】
歯科学において、「歯冠側」という用語は、歯冠に向かう方向を意味する。これは、歯根の先端に向かう方向を意味する「先端側」とは反対の方向である。したがって、挿入ツールでは、歯冠側端部は、使用時に歯科インプラントから遠い側の端部に相当する。一方、先端側端部は、歯科インプラントに面している側の端部に相当する。本明細書において、「基部側」という用語は、「歯冠側」と同義に用いられる。また、「末端側」という用語は、「先端側」と同義に用いられる。
【0023】
本発明に従って、挿入ツールのシャフトは、歯科インプラント係合部と破断領域との間に、ドライバツールから挿入ツールにトルクが伝達され得るように、トルクが伝達される方式でドライバツールに係合するために適した補助トルク受け手段を含んでいる。
【0024】
破断領域よりも先端側に補助トルク受け手段が存在することにより、挿入ツールが破断した場合でも、歯科インプラントを挿入ツールによって容易に操作することができる。破断領域は補助トルク受け手段よりも歯冠側に配置されているため、挿入ツールの破断後、この補助トルク受け手段は、挿入ツールのうち、まだ歯科インプラントと結合されている部分に位置することになる。これによって、歯科インプラントの操作を続けるために、ドライバツールをこの補助トルク受け手段に係合させることができる。
【0025】
したがって、歯科インプラントの操作を続けるために、破断した挿入ツールを交換する必要はない。その結果、破断した挿入ツールを歯科インプラントから取り外すための追加のツールも、歯科インプラントを骨から取り出すための追加の無傷の挿入ツールも不要である。これによって、トルクの過大な印加が生じたときに、骨から歯科インプラントを取り出す処置の速度及び簡便性が増大する。
【0026】
補助トルク受け手段は、歯科インプラント係合部と破断領域との間に配置されている。したがって、使用時に歯科インプラント係合部が歯科インプラントの内孔に挿入される実施形態において、補助トルク受け手段は、歯科インプラントの内孔の外に位置することになる。
【0027】
典型的には、補助トルク受け手段は、破断領域に隣接して配置される。このため、破断後、補助トルク受け手段は、破断した挿入ツールの歯冠側端部の領域に位置することになる。これによって、補助トルク受け手段をドライバツールによって容易に利用することが可能となる。
【0028】
好適な実施形態に従って、主トルク受け手段及び補助トルク受け手段は、同じドライバツールからトルクを受けるために適したものである。これを達成するため、主トルク受け手段の断面形状と補助トルク受け手段の断面形状は、実質的に同一であることが特に好ましい。ここで、「実質的に同一」とは、両方のトルク受け手段について、断面に関するトルク受け面の配置構成が同一であり、これによって、両方のトルク受け手段が、ドライバツールの駆動手段の同じトルク伝達面と係合できることを意味する。したがって、破断後に、破断前と同じドライバツールを使用して、破断前と同じ方法で、歯科インプラントを操作することができる。医師は、破断が生じた場合の別のドライバツールを有している必要はない。必要な操作を実行するには、現に使用している挿入ツール及びドライバツールで十分である。
【0029】
ここで、特に明示して断らない限り、本明細書の全体を通じて、構成要素の断面に対する全ての言及は、その構成要素の長手軸に直交する平面における断面について言及するものである。
【0030】
一般に、主トルク受け手段及び/または補助トルク受け手段は、非円形の断面形状を有しており、上述したように少なくとも1つのトルク受け面を有する。例えば、主トルク受け手段及び/または補助トルク受け手段は、半径方向に延びる溝部及び/または突出部を含むものであってもよい。但し、この断面形状は、好ましくは正多角形をなし、より好ましくは4から8の辺を有する正多角形をなし、最も好ましくは、六角形または八角形をなすものである。多角形の頂点は、稜が鋭くなることを防ぐため、丸められるかまたは面取りされるものであってもよい。
【0031】
非円形の断面形状は、特に主トルク受け手段の場合、トルク受け手段の内面に形成されるものであってもよい。但し、主トルク受け手段及び補助トルク受け手段の両方は、外側に非円形の断面形状を有することが好ましい。これによって、両方のトルク受け手段を中実にすることが可能となり、トルク受け手段の強度及び挿入ツールの全体的な強度が向上する。
【0032】
したがって、好適な一実施形態において、主トルク受け手段及び/または補助トルク受け手段は、非円形の筒体からなる基本形状を有しており、少なくとも1つのトルク受け面は、この筒体の外側面により形成される。
【0033】
ここで、本発明において、「筒体」という用語は、平行な2つの平面内に位置するとともにこれらの2つの平面に直交する筒軸に沿って離れた2つの合同な基礎領域で挟まれ、かつ、横方向には2つの基礎領域の外形を結ぶ複数の平行線によって縁取られている任意の3次元物体を指す用語として、広義に解釈されるものである。特に、この用語は、角柱、特に一様な角柱(すなわち、正角柱)を含んでおり、以下では、正角柱を「正多角形の筒体」ともいう。あるいは、筒体の基礎領域に突出部または窪み部が含まれ、この突出部または窪み部が筒体の縦方向長さにわたって延びて、筒体の外側面の一部を形成するものであってもよい。
【0034】
さらに好ましくは、この筒体は、長手軸に平行に広がる少なくとも1つの平坦面を有しており、この平坦面は、トルク受け面を形成する。この少なくとも1つのトルク受け面は、協働するドライバツールの駆動手段のトルク伝達面に対して回転しないように揃えられるものであってもよい。これによって、トルクの効率的な伝達が可能となる。例えば、トルク受け手段は、歯科用ハンドピースと結合する標準的なラッチ形状を有するものであってもよい。
【0035】
特に好適な実施形態に従って、主トルク受け手段と補助トルク受け手段の両方または一方は、正多角形の筒体の形状を有しており、このため、長手軸回りの所定の角位置に均等に配置された複数のトルク受け面を備えている。均等に配置される表面は、所定の角位置に配置された溝部、突出部、または面取り面によって得られるものであってもよい。溝部または突出部が使用される場合、これらは平面状の表面を有するものであってもよく、または(例えばTorx(登録商標)形状を形成するような)曲面であってもよい。このように均等に配置された複数のトルク受け面によって、挿入ツールにトルクを均一に印加することが可能となり、ひいては、ドライバツールから挿入ツールへのトルクの効率的な伝達に寄与するものである。
【0036】
さらに、この実施形態では、回転対称性のため、ドライバツールを挿入ツールに係合させるために、ドライバツールが幾つかの回転位置をとることが可能である。これによって、ドライバツールにより、幾つかの回転位置から、挿入ツールを容易に利用することができる。
【0037】
六角形または八角形の筒体は、特に効率的なトルクの伝達が可能となるため、特に好ましい。六角形の筒体の場合、トルク受け手段は、6つのトルク受け面を含む。八角形の筒体の場合、トルク受け手段は、8つのトルク受け面を含む。
【0038】
ここで、使用時に、全てのトルク受け面をドライバツールのトルク伝達面に接触させる必要はないことに留意されたい。例えば、八角形の筒体は、正方形のスリーブ内に密着させることができ、この場合、4つのトルク受け面にトルクを伝達することができる。但し、良好な力の分布を確保するためには、全ての使用可能なトルク受け面が使用されるように、トルク受け手段とドライバツールとの係合を最大化することが有利である。
【0039】
同様に、主トルク受け手段と補助トルク受け手段のトルク受け面の数または形状は、異なるものであってもよく、それでも、同じドライバツールを係合させることは可能である。但し、上述したように、好ましくは、主トルク受け手段と補助トルク受け手段は、実質的に同一の断面形状を有するものである。
【0040】
主トルク受け手段及び補助トルク受け手段のそれぞれが非円形の筒体からなる基本形状を有している実施形態では、主トルク受け手段と補助トルク受け手段を形成する筒体の基礎領域の形状が、合同であることが好ましい。1つまたは複数のトルク受け面を形成するのは、筒体の外側面であることから、これによって、主トルク受け手段のトルク受け面と補助トルク受け手段のトルク受け面の、断面に関する配置構成が同一であることが確実となる。このような実施形態において、主トルク受け手段及び/または補助トルク受け手段は、さらに、付加的な異なる特徴を含むものであってもよい。これらの特徴は、窪み、ノッチ、突起、フランジ、または他の構造物であり、基礎領域の形状の一部を形成しない筒面上に設けられる。すなわち、これらの特徴は、非円形の筒体の長さにわたって延びるものではない。トルク受け手段にこのような特徴を含めることは、1つまたは複数のトルク受け面が基本的な筒体の側面によって与えられるものであり、これらの付加的構造物によって与えられるものではない限り、この好適な実施形態から除外されない。したがって、主トルク受け手段と補助トルク受け手段の全体的な形状は、両方のトルク受け手段の基礎領域の形状が同一であっても、異なる場合がある。
【0041】
トルク受け手段と同様に、挿入ツールのトルク印加手段は、好ましくは、非円形の断面形状を有し、少なくとも1つのトルク印加面を有するものである。
【0042】
このような実施形態において、挿入ツールを歯科インプラントに回転しないように結合するために、歯科インプラントは、上述したように、トルク印加手段と相補的な回転係止手段を含んでいる。
【0043】
本発明において、原理的には、トルク印加手段と回転係止手段の任意の既知の組合せを使用することができる。
【0044】
例えば、歯科インプラントは、半径方向内側に突出する突出部を有するインプラント孔を含んでおり、それぞれの突出部が、トルク印加手段の各トルク印加面を補完する回転係止面を備えるものであってもよい。例えば、トルク印加面が、トルク印加手段の外面上の4つの溝部から形成される場合、インプラント孔は、それぞれの回転係止面を備える4つの突出部を含むものであってもよい。あるいは、インプラント孔の一部は、正多角形のトルク印加手段と協働するための、正多角形の断面を有するものであってもよい。
【0045】
トルク印加手段は、歯科インプラントの外部回転係止手段を覆って取付けられるように構成されるものであってもよい。この場合、トルク印加手段は、通常、スリーブまたは止まり穴を含み、その内部に1つまたは複数のトルク印加面が配置される。
【0046】
但し、特に好ましくは、トルク印加手段は、トルク受け手段と同様に、外側の非円形の断面形状により形成されるものである。このような実施形態において、トルク印加手段は、使用時に、歯科インプラントの内孔に挿入されて、歯科インプラントの回転係止手段と係合する。
【0047】
このような実施形態において、好ましくは、トルク印加手段は、非円形の筒体からなる基本形状を有し、少なくとも1つのトルク印加面は、この筒体の外側面により形成されるものである。好ましくは、この筒体は、長手軸に平行に広がる少なくとも1つの平坦面を有しており、この平坦面は、トルク印加面を形成する。
【0048】
好適な一実施形態において、トルク印加手段をなす非円形の筒体は、平面、突出部、または窪み部を有する基礎領域により形成される。この結果、筒体に、それぞれ縦方向に延びる面取り面、突出部、または溝部を有する外側面が形成される。これらの面取り面、突出部、または溝部は、インプラント孔の内部形状と協働するように構成される。
【0049】
このような実施形態において、それぞれのトルク印加面は、面取り面、または、溝部もしくは突出部の1つまたは複数の面により形成される。トルクの均一な分布を実現するため、面取り面、突出部、または溝部は、トルク印加手段の長手軸回りに均等に配置されることが好ましい。
【0050】
特に好適な一実施形態において、トルク印加手段は、その外側面上に複数の(好ましくは4つの)縦方向の溝部を含んでおり、それぞれの溝部は、曲線状の断面を有している。好ましくは、湾曲した溝部の半径は、1mmと1.5mmの間である。このようなトルク印加手段は、次のような歯科インプラントで使用するために特に適している。すなわち、内孔に形成された回転係止手段を含み、この回転係止手段が、半径方向内側に突出する複数の(好ましくは、4つの)突出部を有する歯科インプラントである。
【0051】
別の好適な実施形態において、トルク印加手段は、多角形の(例えば、六角形または八角形の)断面を有している。この場合も、多角形の頂点は、稜が鋭くなることを防ぐため、丸められるかまたは面取りされるものであってもよい。この多角形の断面は、正多角形の筒体の形状から得られるものであってもよく、または、歯科インプラントの外部回転係止手段と協働するために、トルク印加手段の内面上に形成されるものであってもよい。
【0052】
挿入ツールの使用中に発生するおそれのある問題の1つは、トルク印加面と回転係止面との間のジャミングである。これらの面の間の接触領域を低減することは、摩擦による嵌着を回避し、ひいてはジャミング発生の危険性を低減するために役立つ。一方、これらの面の間の接触領域が非常に小さくなると、歯科インプラントの回転係止手段にかかる応力が集中し、変形が生じるおそれがある。このため、あらゆる歯科インプラントシステム構成において、接触領域の低減と力の過剰集中の回避との間のバランスが取られなければならない。
【0053】
したがって、好適な実施形態において、トルク印加手段の断面形状は、歯科インプラントの回転係止手段の断面形状と同一ではなく、トルクを伝達する接触は、特定の領域のみで生じるものである。例えば、トルク印加手段が湾曲した溝部を含んでいる上述した実施形態では、湾曲した溝部が、歯科インプラントの回転係止手段と組合せて使用され、この回転係止手段は、平面状の回転係止面を形成する突出部を有するものであってもよい。
【0054】
ジャミング及びゆがみが生じる危険性を低減するための別の解決手段では、トルク印加手段及び歯科インプラントの回転係止手段の断面形状を、次のように構成することができる。この構成において、トルク印加手段は、歯科インプラントの回転係止手段と揃えられている間、第1位置と第2位置との間で回転することができる。ここで、第1位置は、トルク印加面と回転係止面とが、殆どまたは全く接触していない非トルク伝達位置である。第2の位置は、トルク印加面と回転係止面とが互いに最大に接触するトルク伝達位置である。ここで、トルク印加面と回転係止面との間の第2位置における角度は、第1位置における角度よりも小さい。例えば、トルク伝達手段は、好ましくは150°と178°との間の内角を囲む少なくとも一対のトルク印加面を含み、使用時に、この一対のトルク印加面が、歯科インプラントの1つの回転係止面と対向する。
【0055】
この場合、各トルク印加面は、第1位置(非トルク伝達位置)と第2位置(トルク伝達位置)との間で、それぞれが対向する回転係止面に対して回転することができる。このような実施形態では、不可避的に存在することになる回転方向の遊びが、面同士の角度位置の整列性を増大させるために使用される。第1位置において、挿入ツールを歯科インプラントに対して軸方向に揃えることができるため、これによって、構成要素間の結合が緩められる。ここで、「最大に接触する」とは、面同士が完全に接触することを要せず、単に、設計上可能な最大の接触が達成されていることを意味する。
【0056】
関連して、欧州特許出願公開第2478864号明細書を参照されたい。この文献の内容の全体は、参照により本明細書に含まれる。
【0057】
上記の思想は、同様に、挿入ツールのトルク受け面に応用することができる。
【0058】
したがって、特に好適な実施形態に従って、主トルク受け手段及び/または補助トルク受け手段、並びにドライバツールの駆動手段の断面形状は、トルク受け面が、ドライバツールの駆動手段と揃えられている間、第1位置と第2位置との間で回転するように構成されるものであってもよい。ここで、第1位置は、トルク受け面とトルク伝達面とが、殆どまたは全く接触していない非トルク伝達位置である。第2の位置は、トルク受け面とトルク伝達面とが互いに最大に接触するトルク伝達位置である。ここで、トルク受け面とトルク伝達面との間の第2位置における角度は、第1位置における角度よりも小さい。この実施形態によれば、挿入ツールとドライバツールとの相互作用に関しても、変形の危険性を低減することができる。
【0059】
挿入ツールの破断領域は、主トルク受け手段と補助トルク受け手段との間に配置されてシャフト上の脆弱点を形成し、既定量のトルクTbreakが印加されると剪断または破断するように構成されている。好ましくは、破断領域は、シャフトの縮小された直径を有する部分を含む。挿入ツールがまず破断領域から確実に破断するように、通常、破断領域に、挿入ツールの最も細径の部分が形成される。他の実施形態において、破断領域は、長手軸に直交する方向に設けられる溝部または切込線によって形成されるものであってもよい。但し、破断領域は、好ましくは、60Ncmを超えるトルク、及び/または、130Ncmよりも小さいトルクで破断するように形成され、好ましくは設計される。最も好ましくは、既定量のトルクTbreakは、80Ncmと110Ncmとの間である。破断領域を細径の部分から形成する場合、これをハウジング結合部としても使用することができる。この場合、破断領域は、歯科インプラントがハウジング内に間接的に保持されるように、ハウジング構造にクランプされるものであってもよい。この方式によれば、歯科インプラントがハウジングと接触することを防ぎ、ひいてはその損傷または汚染を回避することが可能となる。別の実施形態において、ハウジング結合部は、挿入ツールの別の部分(例えば、トルク受け面のうちの1つ)により形成されるものであってもよい。
【0060】
好ましい実施形態に従って、歯科インプラント係合部は、トルク印加手段に加えて、歯科インプラントを解放可能に保持するために適した歯科インプラント保持要素をさらに含んでいる。歯科インプラント保持要素は、歯科インプラントの軸方向の保持を実現し、歯科インプラントを挿入ツールで支持することを可能とするものである。
【0061】
好適な実施形態において、歯科インプラント保持要素は、スナップ嵌めまたは圧力嵌めによって歯科インプラントに結合可能な弾性部材である。これによって、挿入ツールを歯科インプラントに対して軸方向に動かすだけで、挿入ツールの着脱を実現することができるため、着脱の容易性を向上させることができる。
【0062】
弾性部材は、歯科インプラントの構造及びユーザの要望に応じて、歯科インプラントの内部に結合するように構成されるものであってもよく、または外部に結合するように構成されるものであってもよい。好ましくは、弾性部材は、歯科インプラントの内孔に挿入されるように構成される。この方式によれば、歯科インプラントの外面との接触を回避することができる。
【0063】
一実施形態において、歯科インプラント保持要素は、歯科インプラント係合部の末端側端部に取付けられた環状のリング部材を含む。リング部材は、開いた形(分割リングまたはCリング)であっても、または閉じた形(Oリング)であってもよく、通常、PEEKのようなエラストマー材料から形成される。リング部材は、歯科インプラントの内孔への挿入時、または歯冠側端部への配置時に、押し付けられて圧力嵌め(もしくは、締り嵌め)を形成する。歯科インプラントの内部/外部の構造によっては、すなわち、歯科インプラントがアンダーカットまたは溝を有しているときには、リング部材は、スナップ嵌めも形成するものであってもよい。
【0064】
但し、好適な実施形態において、弾性部材は、歯科インプラント係合部と一体の部分からなるものである。これによって、製造の容易性が増大するとともに、使用の間の弾性部材の脱落が防止される。
【0065】
一実施形態において、弾性部材は、長手軸方向に延びる少なくとも1つの保持アームを含んでいる。この保持アームは、その一端で歯科インプラント係合部の残りの部分に結合しており、長手軸に向かうように、及び/または、長手軸から離れるように、弾性的に撓み可能なものである。
【0066】
尚、「歯科インプラント係合部の残りの部分」とういう用語は、ここでは、歯科インプラント係合部のうち、保持アーム以外の部分を意味する。
【0067】
より好ましくは、歯科インプラント保持要素は、長手軸回りに対称的に配置された少なくとも2つの保持アームを含む。
【0068】
1つまたは複数の保持アームは、歯科インプラントの外面に(例えば、肩部上に、またはアンダーカット内に)、係合するように構成されるものであってもよい。このような実施形態において、保持アームは、長手軸から離れるように撓み可能である必要がある。他の実施形態において、1つまたは複数の保持アームは、歯科インプラントの内孔に係合するように構成されるものであってもよい。この場合、保持アームは、長手軸に向かうように撓み可能である必要がある。
【0069】
好ましい実施形態において、1つまたは複数の保持アームは、歯科インプラントの内孔に係合するように構成される。このような実施形態では、長手軸からの距離に関連して、それぞれの保持アームの半径方向の最も外側の点(最外点)によって、静止位置における半径rarmが定められる。この半径は、特に好ましい実施形態では、使用時に保持アームの半径方向の最外点が位置する軸方向位置における、歯科インプラントの内孔の半径よりも大きい。ここで、それぞれの保持アームには、半径方向の最外点が、多数存在する場合もある。但し、好ましくは、それぞれの保持アームは、唯一つの半径方向の最外点を有するものである。特に好ましい実施形態において、歯科インプラント保持要素は、歯科インプラントに対して2つの係合点を有する。
【0070】
挿入ツールを、その歯科インプラント係合部を歯科インプラントの内孔に挿入することにより歯科インプラントに係合させた場合、保持アームは、内側に押し込まれて長手軸に向かうように撓むことになる。そして、静止位置における半径rarmが、使用時に保持アームの半径方向の最外点が位置する軸方向位置における、歯科インプラントの内孔の半径よりも大きいため、保持アームは、その静止位置に復帰しようとして、歯科インプラントの内孔の内壁を外方に押圧する。これによって、歯科インプラントと挿入ツールとの間の圧力嵌め(または、締り嵌めともいう)が形成される。これによって、歯科インプラントは、挿入ツールによって解放可能に保持されるとともに、2つの構成要素の結合が外れる事故を防ぐことができる。
【0071】
挿入ツールの歯科インプラントとの結合は、少なくとも1つの保持アームが、その半径方向の最外点が歯科インプラントの内孔のねじ部分に当接するように構成されている場合、特、安定である。ねじ溝は、保持アームによる保持を強化する粗面を形成する。
【0072】
あるいは、それぞれの保持アームの半径方向の最外点は、次のような半径rarmを形成するものであってもよい。すなわち、半径rarmは、保持アームの静止位置において、使用時に保持アームの半径方向の最外点が位置する位置よりも歯冠側の軸方向位置における、歯科インプラントの内孔の半径よりも大きく、この点における歯科インプラントの内孔の半径は、上記の歯冠側の軸方向位置における半径よりも大きい。言い換えれば、歯科インプラントの内孔は、アンダーカットを含み、保持アームは、その静止位置へ、または、その静止位置に向かって復帰可能なように、このアンダーカットに配置されるものであってもよい。保持アームが、その静止位置に、突然「跳ね戻る」または「スナップ」することによって、ユーザは、歯科インプラントと挿入ツールとの間の軸方向の結合が形成されたことのフィードバックを得ることができる。
【0073】
さらなる好適な実施形態に従って、ドライバツール係合部は、さらに、ドライバツールを解放可能に保持するためのドライバツール保持要素をさらに含んでいる。ドライバツール保持要素は、ドライバツールの軸方向の保持を実現し、挿入ツールをドライバツールで支持することを可能とするものである。好ましくは、ドライバツール保持要素は、スナップ嵌めまたは圧力嵌めによってドライバツールに結合可能な弾性部材である。これによって、挿入ツールをドライバツールに対して軸方向に動かすだけで、挿入ツールの着脱を実現することができる。歯科インプラント保持要素と同様に、ドライバツール保持要素は、ドライバツールに挿入されるかまたは配置されたとき、スナップ嵌めまたは圧力嵌めを形成するPEEK製のリング部材を含むものであってもよい。但し、好適な実施形態では、ドライバツール保持要素は、長手軸方向に延びる少なくとも1つの保持アームを含んでいる。この保持アームは、その一端でドライバツール係合部の残りの部分に結合しており、長手軸に向かうように、及び/または、長手軸から離れるように、弾性的に撓み可能なものである。歯科インプラント用の保持アームと同様に、この保持アームは、ドライバツールの外部に係合して、半径方向外側に撓むものであってもよく、ドライバツールの内部に係合して、内側に撓むものであってもよい。
【0074】
尚、「ドライバツール係合部の残りの部分」とういう用語は、ここでは、ドライバツール係合部のうち、ドライバツール用の保持アーム以外の部分を意味する。
【0075】
1つまたは複数の弾性の保持アームを使用して挿入ツールをドライバツールに結合することは、追加の構成要素、特に環状のリング部材を製造する必要がなく、挿入ツールの全ての部分を一体に形成できる点で有利である。
【0076】
この特徴は、それ自体が発明であると考えられる。したがって、本発明の別の態様は、次のようなものである。すなわち、ドライバツールから歯科インプラントにトルクを伝達する挿入ツールであって、この挿入ツールは、歯冠側端部から先端側端部に長手軸に沿って延びるシャフトを含み、このシャフトは、先端側端部に歯科インプラント係合部を含み、歯科インプラント係合部は、挿入ツールから歯科インプラントにトルクが伝達され得るように、トルクが伝達される方式で歯科インプラントに係合するために適したトルク印加手段を含む。また、シャフトは、歯科インプラント係合部よりも歯冠側にドライバツール係合部を含み、ドライバツール係合部は、ドライバツールから挿入ツールにトルクが伝達され得るように、トルクが伝達される方式でドライバツールに係合するために適した主トルク受け手段を含む。そして、ドライバツール係合部は、さらに、ドライバツールを解放可能に保持するためのドライバツール保持要素を含み、該ドライバツール保持要素は、長手軸方向に延びる少なくとも1つの保持アームを含み、該保持アームは、その一端でドライバツール係合部の残りの部分に結合し、長手軸に向かうように、または、長手軸から離れるように、弾性的に撓み可能であり、ドライバツールと圧力嵌めまたはスナップ嵌めを形成する。
【0077】
好ましくは、挿入ツールは、さらに、ドライバツール係合部と歯科インプラント係合部との間に配置され、既定量のトルクTbreakが印加されると破断するように構成された破断領域を含んでいる。さらに、挿入ツールは、好ましくは、歯科インプラント係合部と破断領域との間に、ドライバツールから挿入ツールにトルクが伝達され得るように、トルクが伝達される方式でドライバツールに係合するために適した補助トルク受け手段を含んでいる。この点に関して、さらなる好ましい実施形態の特徴は、本発明の第1の態様に関連させて上述され、また後述される。
【0078】
1つまたは複数のドライバツール用の保持アームは、ドライバツールのそれぞれのアンダーカットと係合する突出部であり、それによって、2つの構成要素の結合が外れる事故を防ぐために、ドライバツールと挿入ツールとの間に圧力嵌めまたはスナップ嵌めを形成する。好ましくは、突出部は、半径方向外側に延び、それによって、ドライバツールの内壁に結合するように構成される。
【0079】
好適な実施形態において、ドライバツール保持要素は、長手軸方向に延びる2つの保持アームを含み、これらの保持アームは、直径方向に互いに反対側に配置される。これによって、ドライバツールに対する確実な結合が実現される。
【0080】
少なくとも1つのドライバツール用の保持アームは、挿入ツールの歯冠側端部内に延びる長手方向の止まり穴と、挿入ツールの外面から上記止まり穴まで延びる2つの長手軸方向の切れ目により形成されるものであってもよい。この実施形態において、止まり穴は、典型的には、中心から外れた位置に形成される。これは、止まり穴の軸は、挿入ツールの長手軸と一致しないことを意味する。長手軸方向の切れ目は、止まり穴の内面と挿入ツールの外面との間の距離が最小となる領域に形成される。
【0081】
あるいは、少なくとも1つのドライバツール用の保持アームは、挿入ツールの歯冠側端部から発して歯冠側端部の断面の弦に沿って延びる、長手軸方向の単一の切れ目により形成されるものであってもよい。この実施形態は、1つの保持アームに対して1つの切れ目を設けるだけでよく、製造が非常に容易な点で、特に好適である。
【0082】
好適な実施形態では、ドライバツール係合部は、挿入ツールの歯冠側端部に位置している。これによって、挿入ツールの長さが最小限に維持されるとともに、挿入ツールとドライバツールの間の必要は重なりが最小化されて、結合形状が簡素化される。最も好ましくは、上述したトラバツール用の1つまたは複数の保持アームは、主トルク受け手段に形成される。これによって、ドライバツール係合部の長さが最小限に維持される。
【0083】
好ましくは、ドライバツール保持要素は、2つ以上のドライバツール用の保持アームを含む。特に好ましくは、それぞれのドライバツール用の保持アームは、歯冠側端部から発して主トルク受け手段の弦に沿って延びる、長手軸方向の単一の切れ目により形成される。典型的には、保持アームは、長手軸回りに均等に配置される。例えば、ドライバツール保持要素が2つの保持アームを含む場合、保持アームは、約180°の角度で配置される。
【0084】
好適な実施形態において、挿入ツールは、一体に形成される。このような実施形態では、挿入ツールが、歯科インプラント保持要素及び/またはドライバツール保持要素を含む場合、これらの要素は、シャフトと一体に設けられる。より一般的には、主トルク受け手段、補助トルク受け手段、及びトルク印加手段は、好ましくは、挿入ツールのシャフトと一体の部分から形成される。上述したように、これらの全ての手段は、トルク印加面及びトルク受け面が、ツールの外面上に形成されるように構成されることが好ましい。
【0085】
本発明の更なる態様に従って、本発明に係る挿入ツールと組合せられる歯科インプラントが提供される。この歯科インプラントは、挿入ツールのトルク印加手段と回転しない方式で係合するように構成された回転係止手段を含む。歯科インプラントは、1つの部品からなるものであっても、2つの部品からなるものであってもよい。すなわち、歯科インプラントは、使用時に、歯茎組織を通じて口腔内に延びて、歯科補綴物の直接コア支持を提供するように構成されていてもよく(一部品の歯科インプラント)、あるいは、通常はアバットメントと呼ばれる二次要素とともに使用されるように構成され、この場合、補綴物のコア支持はこの二次要素によって提供され、歯科インプラントが、使用時に、歯茎組織を超えて延びることはないものであってもよい(二部品のインプラント)。好ましくは、回転係止手段は、歯科新プラントの歯冠側端部から軸方向に延びる内孔に設けられる。
【0086】
好適な実施形態において、歯科インプラント係合部の弾性の保持アームは、挿入ツールが歯科インプラントに結合するときに、保持アームの半径方向の最外点が、歯科インプラントの内孔(好ましくは、内孔のねじ部分)と締り嵌めを形成するような形状を有している。別の実施形態において、歯科インプラント係合部は、環状のリング部材を含んでおり、このリング部材が、使用時に、歯科インプラントの内孔と圧力嵌めまたはスナップ嵌めを形成する。
【0087】
挿入ツールの歯科インプラントへの結合の間に、トルク印加手段と回転係止手段との角度方向の配置を補助するために、歯科インプラントと挿入ツールは、トルク印加手段が歯科インプラントの回転係止手段と少なくとも部分的に軸方向に配列されるまで、歯科インプラント保持要素が歯科インプラントを軸方向に保持できないように構成されることが好ましい。言い換えれば、歯科インプラント保持要素は、トルク印加手段が歯科インプラントの回転係止手段と回転に関して揃えられて、回転係止手段を通過するまで、歯科インプラントと係合して軸方向に保持することはない。これは、歯科インプラント保持要素の長さ、並びに、回転係止手段及びトルク印加手段の長さ及び位置を、適切に選択することによって達成することができる。
【0088】
好ましくは、この組合せには、さらに、歯科インプラント及び挿入ツールを保管するためのハウジングが含まれる。このハウジングは、挿入ツールの破断領域を堅固に保持する大きさに形成され、ハウジングと挿入ツールとの間の唯一の接触をなすクランプ部を含む。好ましくは、歯科インプラントは、ハウジング内において、ハウジングに接触することなく、挿入ツール上に軸方向に保持される。
【0089】
本発明のさらに別の態様に従って、本発明は、本発明に係る挿入ツールと組合せられるドライバツールを提供する。ドライバツールは、その末端側端部に、挿入ツールの主トルク受け手段と、また、挿入ツールが破断領域で破断した後は、補助トルク受け手段と、トルクが伝達される方式で係合するように構成された駆動手段を含んでいる。好ましくは、駆動手段の断面形状は、主トルク受け手段及び/または補助トルク受け手段の断面形状と実質的に同一である。
【0090】
好ましくは、ドライバツールの末端側端部は、ドライバツール係合部が挿入できるスリーブを含む。好ましくは、このスリーブは、その内面に、挿入ツールの主トルク受け手段及び補助トルク受け手段の両方にトルクが伝達される方式で係合するような形状に形成された駆動手段を含む。さらに、このスリーブは、挿入ツールをドライバツールに対して軸方向に保持するために、ドライバツール用の保持アームと協働するような形状に形成されたアンダーカットを含むことが好ましい。
【0091】
ドライバツールは、挿入ツールにトルクを印加可能任意の器具とすることができる。例えば、ドライバツールは、電気モーターによって駆動される歯科用ハンドピースであってもよく、ユーザが保持して回転させるラチェット、レンチ、またはハンドルであってもよい。ドライバツールは、延長部品またはアダプターを含むものであってもよい。すなわち、ドライバツールは、それ自体が第3の構成要素によって駆動されて、単にトルク源と挿入ツールとを結合する連結具として機能するものであってもよい。
【0092】
本発明のさらなる態様に従って、本発明は、上述したような歯科インプラント、挿入ツール、及びドライバツールの組合せを含む。
【0093】
反対のことが明示的に記載されていない限り、上述した好ましい特徴のそれぞれは、本明細書に記載された好ましい他の任意の特徴及び全ての特徴と、組合せて使用することができる。
【0094】
本発明は、さらに、添付の図面によって示されている。
【図面の簡単な説明】
【0095】
図1図1は、本発明の第1実施形態を示す透視図である。
図2図2は、図1に示す実施形態の側面図である。
図3図3は、図1に示す実施形態を歯冠側端部から見た平面図である。
図4図4は、図1に示す実施形態を先端側端部から見た平面図である。
図5図5は、図1に示す実施形態の先端側端部の、図4に示すB−B面に沿った断面図である。
図6図6は、図1に示す挿入ツールの縦断面を、歯科インプラント及びドライバツールとともに示す図である。
図7図7は、図6に示すD−D面に沿った断面図である。
図7A図7Aは、図7のY部詳細図である。
図8A図8Aは、破断点における挿入ツールの破断後の、図6の断面図である。
図8B図8Bは、補助トルク受け手段にドライバツールを接続した後の、図8Aの断面図である。
図9図9は、本発明の第2実施形態を示す透視図である。
図10図10は、図9に示す実施形態の側面図である。
図11図11は、図10に示すF−F面に沿った断面図である。
図12図12は、図9に示す実施形態を歯冠側端部から見た平面図である。
図13図13は、本発明の更なる実施形態を示す透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0096】
図1及び図2に示すように、本発明に係る挿入ツール2は、歯冠側端部6から先端側端部8まで長手軸Lに沿って延びるシャフト4を含む。
【0097】
歯冠側端部6の領域内には、ドライバツール係合部10が形成されている。ドライバツール係合部10は、ドライバツールからのトルクを受けるために適した主トルク受け手段12を含む。
【0098】
図示された実施形態では、主トルク受け手段12は、多角形の筒体の形状を有しており、より詳細には、特に図3に示すように、八角形の筒体の形状を有する。したがって、主トルク受け手段12は、長手軸L回りの所定の角位置に配置された8つの平坦領域を有する外側面を有しており、それぞれの平坦領域は、トルク受け面14を形成する。図示されるように、八角形の角部は、稜が鋭くなることを防ぐため、丸められている。
【0099】
先端側端部8には、歯科インプラント係合部18が形成され、この歯科インプラント係合部は、挿入ツールが主トルク受け手段12で受けたトルクを、歯科インプラントに印加するために適したトルク印加手段20を含んでいる。
【0100】
図示される実施形態では、トルク印加手段20は、非円形の筒体部分であり、その側面22は、縦方向に延びる4つの溝部24を有している。これらの溝部は、長手軸L回りに90°毎の角位置に配置されている。それぞれの溝部24は、半径方向に湾曲しており、図4に最も明確に示されているように、溝部の長手軸Lに直交する平面における断面は、弧状をなす。それぞれの溝部24の曲面は、トルク印加面を形成する。
【0101】
シャフト4は、ドライバツール係合部10と歯科インプラント係合部18との間に、破断領域32を含んでいる。破断領域32は、既定量Tbreakを超えるトルクで破断するように構成される。図示される実施形態では、破断領域32は、大きな直径を有する2つの筒体部分34a、34bの間に配置された、縮小された直径を有する細径部分である。破断領域32は、挿入ツール2で最も細径の部分を形成する。
【0102】
シャフト4は、トルク印加手段20と破断領域32との間に、補助トルク受け手段36を含んでいる。補助トルク受け手段も、ドライバツールからトルクを受けるために適している。図示された実施形態では、補助トルク受け手段36の断面形状は、主トルク受け手段12の断面形状と実質的に同一である。すなわち、両方のトルク受け手段12、36は、正多角形の円筒体の基本形状を有しており、合同な八角形の基礎領域形状を有している。したがって、補助トルク受け手段36の外側面は、長手軸L回りの所定の角位置に配置された8つの平坦領域を有しており、それぞれの平坦領域は、トルク受け面37を形成する。
【0103】
上述したように、「実質的に同一」という用語は、両方のトルク受け手段12、36について、トルク受け面14、37の配置構成が同一であり、これによって、両方のトルク受け手段が、同じドライバツールと同じ方法で相互作用できることを意味する。したがって、例えば主トルク受け手段12の保持アーム64a、b、及び、補助トルク受け手段の12の配向穴33(いずれも、その詳細については後述する)のように、特定の観点から、トルク受け面が互いに異なるという事実は、トルク受け面14、37の観点から両方のトルク受け手段が実質的に同一であることを妨げない。
【0104】
したがって、同じドライバツールを使用して、主トルク受け手段12及び補助トルク受け手段36のいずれかにトルクを印加することができる。
【0105】
配向穴33は、トルク受け面37に一つおきに配置されており、取付けられる歯科インプラントの回転係止面の向きをユーザに対して示すものである。これによって、医師は、歯科インプラントを所望の角度位置で骨内に埋入することができる。
【0106】
トルク印加手段20に対して先端側に隣接して、直径が縮小された円形の筒体の形状を有する延長部38が形成されており、ここから、歯科インプラント保持要素39が、先端側端部8に延びている。この歯科インプラント保持要素は、同一形状に形成された2つの歯科インプラント用の保持アーム40a、30bを含む、これらの保持アームは、先端側端部8まで長手軸方向に延びている。歯科インプラント用の保持アーム40a、40bは、長手軸方向のスリット42によって互いに離れている。このスリットの軸は、挿入ツール2の長手軸Lと一致する。したがって、2つの保持アームは、挿入ツール2の長手軸Lに関して対称的に配置されている。
【0107】
長手軸方向において、両方の歯科インプラント用の保持アーム40a、40bの、延長部38に直接隣接する第1部分44a、44bが、ステム部を形成する。第1部分44a、44bは、薄いことにより、挿入ツールの長手軸Lに向かうように弾性的に撓み可能である。
【0108】
第1部分44a、44bから先端側に、歯科インプラント用の保持アーム40a、40bの外径は増大し、図5に特に明確に示されているように、バルジ部48a、48bが形成される。バルジ部48a、48bの外面は、上記軸に関して90°毎の角位置に配置された面取り面領域52を含む。この実施形態において、バルジ部は三角形の断面を有している。但し、他の形状も可能であり、例えば、各バルジ部は、半楕円体の断面を有するものであってもよい。図1及び2に示す位置は静止位置に相当する。この静止位置において、それぞれの歯科インプラント用の保持アーム40a、40bの半径方向の最外点50(すなわち、図4に特に明確に示すように、長手軸Lからの距離が最大の点)は、半径rarmを形成する。図示された実施形態では、これらの最外点は、バルジ部48a、48b上にある。
【0109】
図1図5に示す特定の実施形態では、ドライバツール係合部10は、さらに、ドライバツール保持要素を含んでいる。ドライバツール保持要素は、ドライバツール用の保持アーム64a、64bを含み、この保持アームのそれぞれは、歯冠側端部6から発して主トルク受け手段12の八角形の筒体の弦に沿って延びる、長手軸方向の直線状の単一の切れ目63a、63bによりそれぞれ形成される。これは、図3に最も明確に示されている。各保持アーム64a、64bは、その外面上に突出部65を含む。図示された実施形態では、2つのドライバツール用の保持アーム64a、64bは、主トルク受け手段12に形成されており、これによって、ドライバツール係合部10の長さが低減される。
【0110】
図6に示すように、挿入ツール2は、使用時に、歯科インプラント係合部18がインプラント孔101内に挿入されることによって、歯科インプラント100に係合する。これによって、弾性の歯科インプラント用の保持アーム40a、40bは、内側に押し込まれて、長手軸Lに向かうように撓む。半径rarmは、最外点50が位置する軸方向位置におけるインプラント孔101の半径よりも大きいため、歯科インプラント用の保持アーム40a、40bは、その静止位置に戻ろうとして、インプラント孔101の内壁に接触してそれを外方に押圧する。これによって、歯科インプラント100と挿入ツール2との間に圧力嵌めまたは締り嵌めが形成される。このようにして、歯科インプラント100は、挿入ツール2によって解放可能に保持されるとともに、2つの構成要素の間の結合が外れる事故が防止される。
【0111】
バルジ部48a、48bの表面が面取り面領域52を含むことにより、歯科インプラント100と保持アーム40a、40bとの間の接触領域は低減される。これによって、歯科インプラントと挿入ツールとの間の圧力嵌めまたは締り嵌めは、所望の場合2つの構成要素を単に引き離すことによって、2つの構成要素の比較的容易な取り外しが可能である程度に限定される。さらに、製造公差を要因とする引き離し力のばらつきが低減する。同様に、面取り面領域52によって、挿入ツール2の歯科インプラント係合部1を、過大な力をかけることなくインプラント孔8に導入することが可能となる。
【0112】
本実施形態において、挿入ツール2は、肩部31によって、歯科インプラント100のインプラント孔101内の深すぎる位置に挿入されることが防止される。肩部は、使用時に、歯科インプラント100の歯冠側端部104に当接する。但し、他の実施形態では、弾性部材が歯科インプラントに対してスナップ嵌めを形成し、それによって、ユーザが、適正な配置が達成されたことのフィードバックを得るものであってもよく、または、インプラント孔10内に当接面が形成されるものであってもよい。更なる実施形態では、トルク印加手段は、歯科インプラントの外部回転係止手段を覆うように配置され、歯科インプラントの外面に対して当接するものであってもよい。
【0113】
挿入ツール2がインプラント孔101内に挿入されると、2つの構成要素は回転しないように固定され、最終的に、歯科インプラントにトルクを伝達することが可能となる。このため、インプラント孔101は、回転係止手段102を含む。この回転係止手段は、半径方向内側に突出する4つの突出部103を有し、それぞれの突出部は、トルク印加手段20のそれぞれのトルク印加面と相補的な回転係止面を備えている。
【0114】
これは、図7に最も明確に示されている。図7には、揃えられた回転係止手段102とトルク印加手段20の断面が示されている。各突出部103は、トルク印加手段20の溝部24内に収容される。挿入ツール2が、図7に示す方向に回転されると、図7Aに示すように、溝部24の表面が突出部103と接触することになる。この接触は、それぞれの溝部及び突出部の同じ領域で生じ、これによって、トルクの伝達の均一な分布が達成される。図7Aに示すように、溝部24と突出部130との間において、最小の面接触が達成されており、これによって、ジャミングのおそれが低減される。
【0115】
図6に示すように、歯科インプラント用の保持アーム40a、40bの長さは、それらがインプラント孔101の細径部分と係合するために十分短く、溝部24と突出部103とが揃えられるまで、この細径部分と圧力嵌めを形成する。これによって、トルク印加手段を、歯科インプラントの回転係止手段102に嵌めこむことができる。これによって、構成要素の適正な結合が容易に実現される。
【0116】
挿入ツール2にトルクを印加するため、主トルク受け手段12は、ドライバツール200と係合される。
【0117】
ドライバツール200は、その末端側端部に、挿入ツール2のドライバツール係合部10を挿入可能な中空のスリーブ201を有している。スリーブ201の内面の平坦面領域は、トルク伝達面202を形成する。本実施形態では、これらの面は、挿入ツール2のトルク受け面14と一致する八角形の断面を形成する。係合時には、ドライバツール200のトルク伝達面202と挿入ツール2のトルク受け面14とは互いに揃えられ、これによって、構成要素間のトルク伝達が実現される。
【0118】
トルク受け面14から突出部65が外方に伸びており、これによって、ドライバツール係合部10がスリーブ201に挿入されて、トルク伝達面202を通過すると、可撓性の保持アーム64a、64bは、長手軸Lに向かうように曲げられる。スリーブ201は、さらに、トルク伝達面202よりも歯冠側に、アンダーカット205を含んでいる。この領域の直径が増大されていることにより、ドライバツール係合部10の保持アーム64a、64bは、突出部65がアンダーカット205と揃うように配置されると、それぞれの静止位置に跳ね戻るかまたはスナップする。これによって、ユーザは、挿入ツール2がドライバツール200に対して適正な位置に配置されるたことのフィードバックを得ることができる。さらに、これらの2つの構成要素の間の軸方向の保持が形成される。
【0119】
歯科インプラントを移植部位に埋入するために、ドライバツール200から、歯科インプラントにトルクを伝達する挿入ツール200にトルクが印加される。トルクは、ハンドル203を握る人間の手操作を介して印加されるものであってもよい。また、ハンドル203は、所定の角位置に配置された長手軸方向の溝204を含んでおり、これらを人間の手の代わりに、適切な形状のレンチまたはラチェットに係合させるものであってもよい。
【0120】
トルクが適正量を超過すると、挿入ツール2は、破断領域32で破断する。これによって、歯科インプラントも骨も損傷を受けないように保護される。この状況は、図8Aに示されている。
【0121】
破断領域32を備えることによって、挿入ツール2は、明確に定められた箇所で破断することになる。破断領域32よりも歯冠側の筒体部分34aは、ドライバツール係合部10よりも小さい直径を有しており、破断した挿入ツール2の歯冠側の部分をドライバツール200から取り除くときに、ユーザのための把持ポイントとなる。破断後には、補助トルク受け手段36が、破断した挿入ツール2の先端側の部分の、歯冠側端部の領域に位置することになる。これによって、ドライバツール200によって歯科インプラント100の操作を継続するために、補助トルク受け手段を容易に利用することができる。図8Bに示すように、この場合、ドライバツール200の中空のスリーブ201に、補助トルク受け手段36を挿入することができる。補助トルク受け手段の断面形状は、主トルク受け手段12の断面形状と実質的に同一であるため、トルク受け面37は、主トルク受け手段12と同様に、駆動手段のトルク伝達面202に接触すする。
【0122】
印加するトルクの方向に応じて、歯科インプラントを、最初に使用していたドライバツールと同じドライバツールを使用して移植部位にさらに埋入するか、または移植部位から取り除くことができる。
【0123】
図9図12には、本発明の、図1に示す実施形態とは異なる一実施形態が示されており、主として、ドライバツール係合部10とトルク印加手段20の構成が相違する。
【0124】
図9に示す主トルク受け手段12も、八角形の筒体の形状を有している。但し、第1実施形態の保持アーム64a、64bは、トルク受け手段12に形成される単一の弾性かつ可撓性のアームに置き換えられる。図10及び図12に特に明確に示すように、ドライバツール係合部10は、歯冠側端部6から長手軸Lと平行な方向に延び、但し挿入ツール2の中心から外れた位置に設けられた止まり穴58を含んでいる。この領域において、止まり穴58の内面とドライバツール係合部10の外面との間に距離は、最も小さく、挿入ツールの外面から止まり穴まで延びる2つの直線状の長手軸方向の切れ目62a、62bが形成されている。これによって、ドライバツール用の長手軸方向の保持アーム64が形成され、この保持アームは、長手軸Lに向かうように撓み可能であり、スナップアームとして機能する。このスナップアームは、その外面に、ドライバツールのアンダーカットにスナップ嵌めされるように構成された突出部66を含む。但し、この代わりに、突出部66の長さ及びアンダーカットの深さに応じて、圧力嵌めが形成されるものであってもよい。
【0125】
上述したように、図9図12に示される実施形態は、さらに、トルク印加手段20の構成についても図1に示す実施形態と異なるものである。
【0126】
特に、トルク印加手段20の溝部24が、面取り面26と置き換えられている。それぞれの面取り面は、図11に特に明確に示されるように、約174°の内角αを囲んで隣り合う2つの対となったトルク印加面30a、30bに分けられる。
【0127】
例えば、図6に示す歯科インプラントのインプラント孔101に挿入したとき、1つの面取り面26の2つのトルク印加面30a、30bは、歯科インプラントの同じ回転係止用突出部103に対向する。挿入ツール2が一方向D1に回転されると、トルクを伝達するために、それぞれの対のうちの1つのトルク印加面30aは、歯科インプラントのそれぞれの回転係止用突出部103に対して可能な最大の接触状態となる。一方、挿入ツールが他の方向D2に回転されると、反対方向にトルクを印加できるように、他のトルク印加面30bが、歯科インプラントのそれぞれの回転係止用突出部103に対して最大の接触状態となる。この実施形態では、このような面同士の接触が生じる。これによって、挿入ツールのインプラント孔内のジャミングを防ぐために、最大接触領域が制御されている間に、インプラントの回転係止手段の変形の危険性を低減しつつ、非常に効率的なトルク伝達が可能となる。
【0128】
この実施形態において、1つの付加的な、小さい変更箇所は、歯科インプラント用の保持アーム40a、40bの面取り面領域52である。これらの面取り面領域52は、それらがトルク印加手段20の面取り面26と長手軸方向に揃うように形成されている。これは、図1に示す実施形態の面取り面領域52と、その面取り面領域52が円形の筒体の側面22の円形の領域と長手軸方向に揃うように構成されている点で、対照的である。しかし、配置におけるこの変更は、それらの機能に対して実質的な影響を及ぼさない。
【0129】
図13は、さらなる実施形態に関連する。この実施形態において、挿入ツールのドライバツール係合部10は、PEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン)製のリング部材(図示は省略する)を含む。PEEK製のリング部材を所定の位置に保持するため、シャフトは、2つのクランプ部54a、54bを含んでいる。第1クランプ部54aは、主トルク受け手段12に先端側に隣接するように配置され、第2クランプ部54bは、第1クランプ部54aよりも先端側に、凹状に形成されたリング接触部56によって第1クランプ部54aから隔てられて配置されている。リング接触部56は、第1及び第2クランプ部54a、54bよりも小さい直径を有する。PEEK製のリング部材は、リング接触部65に配置され、2つのクランプ部54a、54bによって挟まれることにより、所定の位置に保持される。
【0130】
PEEK製のリング部材の外径は、第1及び第2クランプ部54a、54bの外径から突出する。リング部材の突出部分の表面によって、ドライバツールのスリーブの内面との摩擦嵌めまたはスナップ嵌めが確立する。
【0131】
PEEK製のリング部材の代わりに、上述した目的のために適切な他の任意のポリマー材料からなるリング部材を使用することができる。
【0132】
上述した実施形態は、例示のみを目的とするものであり、当業者には、本発明に範囲内に含まれる多くの代替の構成が可能であることが理解されるものである。特に、トルク印加手段は、歯科インプラントの外部ボスと係合するように構成されるものであってもよい。この場合、トルク印加手段は、ドライバツール200のスリーブ201と同様に、内面にトルク印加面を有するスリーブを形成するものである。その代わりに、または。それに加えて、歯科インプラント保持要素は、インプラント孔と圧力嵌めまたはスナップ嵌めを形成するように構成されたOリングまたはCリングであってもよく、もしくは、歯科インプラントが外側に結合するように構成された1つまたは複数の弾性アームを含むものであってもよい。本発明において、トルク印加手段及びトルク受け手段の任意の既知の形状を使用することができる。
【0133】
任意の請求項に記載された技術的特徴に参照符号が付いている場合、これらの参照符号は、請求項の分かりやすさを向上させることのみを目的として含めたものである。したがって、このような参照符号は、これらの参照符号により例として特定される各要素の範囲を、何ら限定するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図7A
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13