【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的は、請求項1に従う挿入ツールによって達成される。好適な実施形態は、従属請求項によって定義される。
【0021】
本発明は、ドライバツールから歯科インプラントにトルクを伝達する挿入ツールに関する。この挿入ツールは、歯冠側端部から先端側端部に長手軸に沿って延びるシャフトを含む。このシャフトは、先端側端部に歯科インプラント係合部を含み、歯科インプラント係合部は、挿入ツールから歯科インプラントにトルクが伝達され得るように、トルクが伝達される方式で歯科インプラントに係合するために適したトルク印加手段を含む。また、シャフトは、歯科インプラント係合部よりも歯冠側にドライバツール係合部を含み、ドライバツール係合部は、ドライバツールから挿入ツールにトルクが伝達され得るように、トルクが伝達される方式でドライバツールに係合するために適した主トルク受け手段を含む。また、シャフトは、ドライバツール係合部と歯科インプラント係合部との間に配置され、既定量のトルクT
breakが印加されると破断するように構成された破断領域を含んでいる。
【0022】
歯科学において、「歯冠側」という用語は、歯冠に向かう方向を意味する。これは、歯根の先端に向かう方向を意味する「先端側」とは反対の方向である。したがって、挿入ツールでは、歯冠側端部は、使用時に歯科インプラントから遠い側の端部に相当する。一方、先端側端部は、歯科インプラントに面している側の端部に相当する。本明細書において、「基部側」という用語は、「歯冠側」と同義に用いられる。また、「末端側」という用語は、「先端側」と同義に用いられる。
【0023】
本発明に従って、挿入ツールのシャフトは、歯科インプラント係合部と破断領域との間に、ドライバツールから挿入ツールにトルクが伝達され得るように、トルクが伝達される方式でドライバツールに係合するために適した補助トルク受け手段を含んでいる。
【0024】
破断領域よりも先端側に補助トルク受け手段が存在することにより、挿入ツールが破断した場合でも、歯科インプラントを挿入ツールによって容易に操作することができる。破断領域は補助トルク受け手段よりも歯冠側に配置されているため、挿入ツールの破断後、この補助トルク受け手段は、挿入ツールのうち、まだ歯科インプラントと結合されている部分に位置することになる。これによって、歯科インプラントの操作を続けるために、ドライバツールをこの補助トルク受け手段に係合させることができる。
【0025】
したがって、歯科インプラントの操作を続けるために、破断した挿入ツールを交換する必要はない。その結果、破断した挿入ツールを歯科インプラントから取り外すための追加のツールも、歯科インプラントを骨から取り出すための追加の無傷の挿入ツールも不要である。これによって、トルクの過大な印加が生じたときに、骨から歯科インプラントを取り出す処置の速度及び簡便性が増大する。
【0026】
補助トルク受け手段は、歯科インプラント係合部と破断領域との間に配置されている。したがって、使用時に歯科インプラント係合部が歯科インプラントの内孔に挿入される実施形態において、補助トルク受け手段は、歯科インプラントの内孔の外に位置することになる。
【0027】
典型的には、補助トルク受け手段は、破断領域に隣接して配置される。このため、破断後、補助トルク受け手段は、破断した挿入ツールの歯冠側端部の領域に位置することになる。これによって、補助トルク受け手段をドライバツールによって容易に利用することが可能となる。
【0028】
好適な実施形態に従って、主トルク受け手段及び補助トルク受け手段は、同じドライバツールからトルクを受けるために適したものである。これを達成するため、主トルク受け手段の断面形状と補助トルク受け手段の断面形状は、実質的に同一であることが特に好ましい。ここで、「実質的に同一」とは、両方のトルク受け手段について、断面に関するトルク受け面の配置構成が同一であり、これによって、両方のトルク受け手段が、ドライバツールの駆動手段の同じトルク伝達面と係合できることを意味する。したがって、破断後に、破断前と同じドライバツールを使用して、破断前と同じ方法で、歯科インプラントを操作することができる。医師は、破断が生じた場合の別のドライバツールを有している必要はない。必要な操作を実行するには、現に使用している挿入ツール及びドライバツールで十分である。
【0029】
ここで、特に明示して断らない限り、本明細書の全体を通じて、構成要素の断面に対する全ての言及は、その構成要素の長手軸に直交する平面における断面について言及するものである。
【0030】
一般に、主トルク受け手段及び/または補助トルク受け手段は、非円形の断面形状を有しており、上述したように少なくとも1つのトルク受け面を有する。例えば、主トルク受け手段及び/または補助トルク受け手段は、半径方向に延びる溝部及び/または突出部を含むものであってもよい。但し、この断面形状は、好ましくは正多角形をなし、より好ましくは4から8の辺を有する正多角形をなし、最も好ましくは、六角形または八角形をなすものである。多角形の頂点は、稜が鋭くなることを防ぐため、丸められるかまたは面取りされるものであってもよい。
【0031】
非円形の断面形状は、特に主トルク受け手段の場合、トルク受け手段の内面に形成されるものであってもよい。但し、主トルク受け手段及び補助トルク受け手段の両方は、外側に非円形の断面形状を有することが好ましい。これによって、両方のトルク受け手段を中実にすることが可能となり、トルク受け手段の強度及び挿入ツールの全体的な強度が向上する。
【0032】
したがって、好適な一実施形態において、主トルク受け手段及び/または補助トルク受け手段は、非円形の筒体からなる基本形状を有しており、少なくとも1つのトルク受け面は、この筒体の外側面により形成される。
【0033】
ここで、本発明において、「筒体」という用語は、平行な2つの平面内に位置するとともにこれらの2つの平面に直交する筒軸に沿って離れた2つの合同な基礎領域で挟まれ、かつ、横方向には2つの基礎領域の外形を結ぶ複数の平行線によって縁取られている任意の3次元物体を指す用語として、広義に解釈されるものである。特に、この用語は、角柱、特に一様な角柱(すなわち、正角柱)を含んでおり、以下では、正角柱を「正多角形の筒体」ともいう。あるいは、筒体の基礎領域に突出部または窪み部が含まれ、この突出部または窪み部が筒体の縦方向長さにわたって延びて、筒体の外側面の一部を形成するものであってもよい。
【0034】
さらに好ましくは、この筒体は、長手軸に平行に広がる少なくとも1つの平坦面を有しており、この平坦面は、トルク受け面を形成する。この少なくとも1つのトルク受け面は、協働するドライバツールの駆動手段のトルク伝達面に対して回転しないように揃えられるものであってもよい。これによって、トルクの効率的な伝達が可能となる。例えば、トルク受け手段は、歯科用ハンドピースと結合する標準的なラッチ形状を有するものであってもよい。
【0035】
特に好適な実施形態に従って、主トルク受け手段と補助トルク受け手段の両方または一方は、正多角形の筒体の形状を有しており、このため、長手軸回りの所定の角位置に均等に配置された複数のトルク受け面を備えている。均等に配置される表面は、所定の角位置に配置された溝部、突出部、または面取り面によって得られるものであってもよい。溝部または突出部が使用される場合、これらは平面状の表面を有するものであってもよく、または(例えばTorx(登録商標)形状を形成するような)曲面であってもよい。このように均等に配置された複数のトルク受け面によって、挿入ツールにトルクを均一に印加することが可能となり、ひいては、ドライバツールから挿入ツールへのトルクの効率的な伝達に寄与するものである。
【0036】
さらに、この実施形態では、回転対称性のため、ドライバツールを挿入ツールに係合させるために、ドライバツールが幾つかの回転位置をとることが可能である。これによって、ドライバツールにより、幾つかの回転位置から、挿入ツールを容易に利用することができる。
【0037】
六角形または八角形の筒体は、特に効率的なトルクの伝達が可能となるため、特に好ましい。六角形の筒体の場合、トルク受け手段は、6つのトルク受け面を含む。八角形の筒体の場合、トルク受け手段は、8つのトルク受け面を含む。
【0038】
ここで、使用時に、全てのトルク受け面をドライバツールのトルク伝達面に接触させる必要はないことに留意されたい。例えば、八角形の筒体は、正方形のスリーブ内に密着させることができ、この場合、4つのトルク受け面にトルクを伝達することができる。但し、良好な力の分布を確保するためには、全ての使用可能なトルク受け面が使用されるように、トルク受け手段とドライバツールとの係合を最大化することが有利である。
【0039】
同様に、主トルク受け手段と補助トルク受け手段のトルク受け面の数または形状は、異なるものであってもよく、それでも、同じドライバツールを係合させることは可能である。但し、上述したように、好ましくは、主トルク受け手段と補助トルク受け手段は、実質的に同一の断面形状を有するものである。
【0040】
主トルク受け手段及び補助トルク受け手段のそれぞれが非円形の筒体からなる基本形状を有している実施形態では、主トルク受け手段と補助トルク受け手段を形成する筒体の基礎領域の形状が、合同であることが好ましい。1つまたは複数のトルク受け面を形成するのは、筒体の外側面であることから、これによって、主トルク受け手段のトルク受け面と補助トルク受け手段のトルク受け面の、断面に関する配置構成が同一であることが確実となる。このような実施形態において、主トルク受け手段及び/または補助トルク受け手段は、さらに、付加的な異なる特徴を含むものであってもよい。これらの特徴は、窪み、ノッチ、突起、フランジ、または他の構造物であり、基礎領域の形状の一部を形成しない筒面上に設けられる。すなわち、これらの特徴は、非円形の筒体の長さにわたって延びるものではない。トルク受け手段にこのような特徴を含めることは、1つまたは複数のトルク受け面が基本的な筒体の側面によって与えられるものであり、これらの付加的構造物によって与えられるものではない限り、この好適な実施形態から除外されない。したがって、主トルク受け手段と補助トルク受け手段の全体的な形状は、両方のトルク受け手段の基礎領域の形状が同一であっても、異なる場合がある。
【0041】
トルク受け手段と同様に、挿入ツールのトルク印加手段は、好ましくは、非円形の断面形状を有し、少なくとも1つのトルク印加面を有するものである。
【0042】
このような実施形態において、挿入ツールを歯科インプラントに回転しないように結合するために、歯科インプラントは、上述したように、トルク印加手段と相補的な回転係止手段を含んでいる。
【0043】
本発明において、原理的には、トルク印加手段と回転係止手段の任意の既知の組合せを使用することができる。
【0044】
例えば、歯科インプラントは、半径方向内側に突出する突出部を有するインプラント孔を含んでおり、それぞれの突出部が、トルク印加手段の各トルク印加面を補完する回転係止面を備えるものであってもよい。例えば、トルク印加面が、トルク印加手段の外面上の4つの溝部から形成される場合、インプラント孔は、それぞれの回転係止面を備える4つの突出部を含むものであってもよい。あるいは、インプラント孔の一部は、正多角形のトルク印加手段と協働するための、正多角形の断面を有するものであってもよい。
【0045】
トルク印加手段は、歯科インプラントの外部回転係止手段を覆って取付けられるように構成されるものであってもよい。この場合、トルク印加手段は、通常、スリーブまたは止まり穴を含み、その内部に1つまたは複数のトルク印加面が配置される。
【0046】
但し、特に好ましくは、トルク印加手段は、トルク受け手段と同様に、外側の非円形の断面形状により形成されるものである。このような実施形態において、トルク印加手段は、使用時に、歯科インプラントの内孔に挿入されて、歯科インプラントの回転係止手段と係合する。
【0047】
このような実施形態において、好ましくは、トルク印加手段は、非円形の筒体からなる基本形状を有し、少なくとも1つのトルク印加面は、この筒体の外側面により形成されるものである。好ましくは、この筒体は、長手軸に平行に広がる少なくとも1つの平坦面を有しており、この平坦面は、トルク印加面を形成する。
【0048】
好適な一実施形態において、トルク印加手段をなす非円形の筒体は、平面、突出部、または窪み部を有する基礎領域により形成される。この結果、筒体に、それぞれ縦方向に延びる面取り面、突出部、または溝部を有する外側面が形成される。これらの面取り面、突出部、または溝部は、インプラント孔の内部形状と協働するように構成される。
【0049】
このような実施形態において、それぞれのトルク印加面は、面取り面、または、溝部もしくは突出部の1つまたは複数の面により形成される。トルクの均一な分布を実現するため、面取り面、突出部、または溝部は、トルク印加手段の長手軸回りに均等に配置されることが好ましい。
【0050】
特に好適な一実施形態において、トルク印加手段は、その外側面上に複数の(好ましくは4つの)縦方向の溝部を含んでおり、それぞれの溝部は、曲線状の断面を有している。好ましくは、湾曲した溝部の半径は、1mmと1.5mmの間である。このようなトルク印加手段は、次のような歯科インプラントで使用するために特に適している。すなわち、内孔に形成された回転係止手段を含み、この回転係止手段が、半径方向内側に突出する複数の(好ましくは、4つの)突出部を有する歯科インプラントである。
【0051】
別の好適な実施形態において、トルク印加手段は、多角形の(例えば、六角形または八角形の)断面を有している。この場合も、多角形の頂点は、稜が鋭くなることを防ぐため、丸められるかまたは面取りされるものであってもよい。この多角形の断面は、正多角形の筒体の形状から得られるものであってもよく、または、歯科インプラントの外部回転係止手段と協働するために、トルク印加手段の内面上に形成されるものであってもよい。
【0052】
挿入ツールの使用中に発生するおそれのある問題の1つは、トルク印加面と回転係止面との間のジャミングである。これらの面の間の接触領域を低減することは、摩擦による嵌着を回避し、ひいてはジャミング発生の危険性を低減するために役立つ。一方、これらの面の間の接触領域が非常に小さくなると、歯科インプラントの回転係止手段にかかる応力が集中し、変形が生じるおそれがある。このため、あらゆる歯科インプラントシステム構成において、接触領域の低減と力の過剰集中の回避との間のバランスが取られなければならない。
【0053】
したがって、好適な実施形態において、トルク印加手段の断面形状は、歯科インプラントの回転係止手段の断面形状と同一ではなく、トルクを伝達する接触は、特定の領域のみで生じるものである。例えば、トルク印加手段が湾曲した溝部を含んでいる上述した実施形態では、湾曲した溝部が、歯科インプラントの回転係止手段と組合せて使用され、この回転係止手段は、平面状の回転係止面を形成する突出部を有するものであってもよい。
【0054】
ジャミング及びゆがみが生じる危険性を低減するための別の解決手段では、トルク印加手段及び歯科インプラントの回転係止手段の断面形状を、次のように構成することができる。この構成において、トルク印加手段は、歯科インプラントの回転係止手段と揃えられている間、第1位置と第2位置との間で回転することができる。ここで、第1位置は、トルク印加面と回転係止面とが、殆どまたは全く接触していない非トルク伝達位置である。第2の位置は、トルク印加面と回転係止面とが互いに最大に接触するトルク伝達位置である。ここで、トルク印加面と回転係止面との間の第2位置における角度は、第1位置における角度よりも小さい。例えば、トルク伝達手段は、好ましくは150°と178°との間の内角を囲む少なくとも一対のトルク印加面を含み、使用時に、この一対のトルク印加面が、歯科インプラントの1つの回転係止面と対向する。
【0055】
この場合、各トルク印加面は、第1位置(非トルク伝達位置)と第2位置(トルク伝達位置)との間で、それぞれが対向する回転係止面に対して回転することができる。このような実施形態では、不可避的に存在することになる回転方向の遊びが、面同士の角度位置の整列性を増大させるために使用される。第1位置において、挿入ツールを歯科インプラントに対して軸方向に揃えることができるため、これによって、構成要素間の結合が緩められる。ここで、「最大に接触する」とは、面同士が完全に接触することを要せず、単に、設計上可能な最大の接触が達成されていることを意味する。
【0056】
関連して、欧州特許出願公開第2478864号明細書を参照されたい。この文献の内容の全体は、参照により本明細書に含まれる。
【0057】
上記の思想は、同様に、挿入ツールのトルク受け面に応用することができる。
【0058】
したがって、特に好適な実施形態に従って、主トルク受け手段及び/または補助トルク受け手段、並びにドライバツールの駆動手段の断面形状は、トルク受け面が、ドライバツールの駆動手段と揃えられている間、第1位置と第2位置との間で回転するように構成されるものであってもよい。ここで、第1位置は、トルク受け面とトルク伝達面とが、殆どまたは全く接触していない非トルク伝達位置である。第2の位置は、トルク受け面とトルク伝達面とが互いに最大に接触するトルク伝達位置である。ここで、トルク受け面とトルク伝達面との間の第2位置における角度は、第1位置における角度よりも小さい。この実施形態によれば、挿入ツールとドライバツールとの相互作用に関しても、変形の危険性を低減することができる。
【0059】
挿入ツールの破断領域は、主トルク受け手段と補助トルク受け手段との間に配置されてシャフト上の脆弱点を形成し、既定量のトルクT
breakが印加されると剪断または破断するように構成されている。好ましくは、破断領域は、シャフトの縮小された直径を有する部分を含む。挿入ツールがまず破断領域から確実に破断するように、通常、破断領域に、挿入ツールの最も細径の部分が形成される。他の実施形態において、破断領域は、長手軸に直交する方向に設けられる溝部または切込線によって形成されるものであってもよい。但し、破断領域は、好ましくは、60Ncmを超えるトルク、及び/または、130Ncmよりも小さいトルクで破断するように形成され、好ましくは設計される。最も好ましくは、既定量のトルクT
breakは、80Ncmと110Ncmとの間である。破断領域を細径の部分から形成する場合、これをハウジング結合部としても使用することができる。この場合、破断領域は、歯科インプラントがハウジング内に間接的に保持されるように、ハウジング構造にクランプされるものであってもよい。この方式によれば、歯科インプラントがハウジングと接触することを防ぎ、ひいてはその損傷または汚染を回避することが可能となる。別の実施形態において、ハウジング結合部は、挿入ツールの別の部分(例えば、トルク受け面のうちの1つ)により形成されるものであってもよい。
【0060】
好ましい実施形態に従って、歯科インプラント係合部は、トルク印加手段に加えて、歯科インプラントを解放可能に保持するために適した歯科インプラント保持要素をさらに含んでいる。歯科インプラント保持要素は、歯科インプラントの軸方向の保持を実現し、歯科インプラントを挿入ツールで支持することを可能とするものである。
【0061】
好適な実施形態において、歯科インプラント保持要素は、スナップ嵌めまたは圧力嵌めによって歯科インプラントに結合可能な弾性部材である。これによって、挿入ツールを歯科インプラントに対して軸方向に動かすだけで、挿入ツールの着脱を実現することができるため、着脱の容易性を向上させることができる。
【0062】
弾性部材は、歯科インプラントの構造及びユーザの要望に応じて、歯科インプラントの内部に結合するように構成されるものであってもよく、または外部に結合するように構成されるものであってもよい。好ましくは、弾性部材は、歯科インプラントの内孔に挿入されるように構成される。この方式によれば、歯科インプラントの外面との接触を回避することができる。
【0063】
一実施形態において、歯科インプラント保持要素は、歯科インプラント係合部の末端側端部に取付けられた環状のリング部材を含む。リング部材は、開いた形(分割リングまたはCリング)であっても、または閉じた形(Oリング)であってもよく、通常、PEEKのようなエラストマー材料から形成される。リング部材は、歯科インプラントの内孔への挿入時、または歯冠側端部への配置時に、押し付けられて圧力嵌め(もしくは、締り嵌め)を形成する。歯科インプラントの内部/外部の構造によっては、すなわち、歯科インプラントがアンダーカットまたは溝を有しているときには、リング部材は、スナップ嵌めも形成するものであってもよい。
【0064】
但し、好適な実施形態において、弾性部材は、歯科インプラント係合部と一体の部分からなるものである。これによって、製造の容易性が増大するとともに、使用の間の弾性部材の脱落が防止される。
【0065】
一実施形態において、弾性部材は、長手軸方向に延びる少なくとも1つの保持アームを含んでいる。この保持アームは、その一端で歯科インプラント係合部の残りの部分に結合しており、長手軸に向かうように、及び/または、長手軸から離れるように、弾性的に撓み可能なものである。
【0066】
尚、「歯科インプラント係合部の残りの部分」とういう用語は、ここでは、歯科インプラント係合部のうち、保持アーム以外の部分を意味する。
【0067】
より好ましくは、歯科インプラント保持要素は、長手軸回りに対称的に配置された少なくとも2つの保持アームを含む。
【0068】
1つまたは複数の保持アームは、歯科インプラントの外面に(例えば、肩部上に、またはアンダーカット内に)、係合するように構成されるものであってもよい。このような実施形態において、保持アームは、長手軸から離れるように撓み可能である必要がある。他の実施形態において、1つまたは複数の保持アームは、歯科インプラントの内孔に係合するように構成されるものであってもよい。この場合、保持アームは、長手軸に向かうように撓み可能である必要がある。
【0069】
好ましい実施形態において、1つまたは複数の保持アームは、歯科インプラントの内孔に係合するように構成される。このような実施形態では、長手軸からの距離に関連して、それぞれの保持アームの半径方向の最も外側の点(最外点)によって、静止位置における半径r
armが定められる。この半径は、特に好ましい実施形態では、使用時に保持アームの半径方向の最外点が位置する軸方向位置における、歯科インプラントの内孔の半径よりも大きい。ここで、それぞれの保持アームには、半径方向の最外点が、多数存在する場合もある。但し、好ましくは、それぞれの保持アームは、唯一つの半径方向の最外点を有するものである。特に好ましい実施形態において、歯科インプラント保持要素は、歯科インプラントに対して2つの係合点を有する。
【0070】
挿入ツールを、その歯科インプラント係合部を歯科インプラントの内孔に挿入することにより歯科インプラントに係合させた場合、保持アームは、内側に押し込まれて長手軸に向かうように撓むことになる。そして、静止位置における半径r
armが、使用時に保持アームの半径方向の最外点が位置する軸方向位置における、歯科インプラントの内孔の半径よりも大きいため、保持アームは、その静止位置に復帰しようとして、歯科インプラントの内孔の内壁を外方に押圧する。これによって、歯科インプラントと挿入ツールとの間の圧力嵌め(または、締り嵌めともいう)が形成される。これによって、歯科インプラントは、挿入ツールによって解放可能に保持されるとともに、2つの構成要素の結合が外れる事故を防ぐことができる。
【0071】
挿入ツールの歯科インプラントとの結合は、少なくとも1つの保持アームが、その半径方向の最外点が歯科インプラントの内孔のねじ部分に当接するように構成されている場合、特、安定である。ねじ溝は、保持アームによる保持を強化する粗面を形成する。
【0072】
あるいは、それぞれの保持アームの半径方向の最外点は、次のような半径r
armを形成するものであってもよい。すなわち、半径r
armは、保持アームの静止位置において、使用時に保持アームの半径方向の最外点が位置する位置よりも歯冠側の軸方向位置における、歯科インプラントの内孔の半径よりも大きく、この点における歯科インプラントの内孔の半径は、上記の歯冠側の軸方向位置における半径よりも大きい。言い換えれば、歯科インプラントの内孔は、アンダーカットを含み、保持アームは、その静止位置へ、または、その静止位置に向かって復帰可能なように、このアンダーカットに配置されるものであってもよい。保持アームが、その静止位置に、突然「跳ね戻る」または「スナップ」することによって、ユーザは、歯科インプラントと挿入ツールとの間の軸方向の結合が形成されたことのフィードバックを得ることができる。
【0073】
さらなる好適な実施形態に従って、ドライバツール係合部は、さらに、ドライバツールを解放可能に保持するためのドライバツール保持要素をさらに含んでいる。ドライバツール保持要素は、ドライバツールの軸方向の保持を実現し、挿入ツールをドライバツールで支持することを可能とするものである。好ましくは、ドライバツール保持要素は、スナップ嵌めまたは圧力嵌めによってドライバツールに結合可能な弾性部材である。これによって、挿入ツールをドライバツールに対して軸方向に動かすだけで、挿入ツールの着脱を実現することができる。歯科インプラント保持要素と同様に、ドライバツール保持要素は、ドライバツールに挿入されるかまたは配置されたとき、スナップ嵌めまたは圧力嵌めを形成するPEEK製のリング部材を含むものであってもよい。但し、好適な実施形態では、ドライバツール保持要素は、長手軸方向に延びる少なくとも1つの保持アームを含んでいる。この保持アームは、その一端でドライバツール係合部の残りの部分に結合しており、長手軸に向かうように、及び/または、長手軸から離れるように、弾性的に撓み可能なものである。歯科インプラント用の保持アームと同様に、この保持アームは、ドライバツールの外部に係合して、半径方向外側に撓むものであってもよく、ドライバツールの内部に係合して、内側に撓むものであってもよい。
【0074】
尚、「ドライバツール係合部の残りの部分」とういう用語は、ここでは、ドライバツール係合部のうち、ドライバツール用の保持アーム以外の部分を意味する。
【0075】
1つまたは複数の弾性の保持アームを使用して挿入ツールをドライバツールに結合することは、追加の構成要素、特に環状のリング部材を製造する必要がなく、挿入ツールの全ての部分を一体に形成できる点で有利である。
【0076】
この特徴は、それ自体が発明であると考えられる。したがって、本発明の別の態様は、次のようなものである。すなわち、ドライバツールから歯科インプラントにトルクを伝達する挿入ツールであって、この挿入ツールは、歯冠側端部から先端側端部に長手軸に沿って延びるシャフトを含み、このシャフトは、先端側端部に歯科インプラント係合部を含み、歯科インプラント係合部は、挿入ツールから歯科インプラントにトルクが伝達され得るように、トルクが伝達される方式で歯科インプラントに係合するために適したトルク印加手段を含む。また、シャフトは、歯科インプラント係合部よりも歯冠側にドライバツール係合部を含み、ドライバツール係合部は、ドライバツールから挿入ツールにトルクが伝達され得るように、トルクが伝達される方式でドライバツールに係合するために適した主トルク受け手段を含む。そして、ドライバツール係合部は、さらに、ドライバツールを解放可能に保持するためのドライバツール保持要素を含み、該ドライバツール保持要素は、長手軸方向に延びる少なくとも1つの保持アームを含み、該保持アームは、その一端でドライバツール係合部の残りの部分に結合し、長手軸に向かうように、または、長手軸から離れるように、弾性的に撓み可能であり、ドライバツールと圧力嵌めまたはスナップ嵌めを形成する。
【0077】
好ましくは、挿入ツールは、さらに、ドライバツール係合部と歯科インプラント係合部との間に配置され、既定量のトルクT
breakが印加されると破断するように構成された破断領域を含んでいる。さらに、挿入ツールは、好ましくは、歯科インプラント係合部と破断領域との間に、ドライバツールから挿入ツールにトルクが伝達され得るように、トルクが伝達される方式でドライバツールに係合するために適した補助トルク受け手段を含んでいる。この点に関して、さらなる好ましい実施形態の特徴は、本発明の第1の態様に関連させて上述され、また後述される。
【0078】
1つまたは複数のドライバツール用の保持アームは、ドライバツールのそれぞれのアンダーカットと係合する突出部であり、それによって、2つの構成要素の結合が外れる事故を防ぐために、ドライバツールと挿入ツールとの間に圧力嵌めまたはスナップ嵌めを形成する。好ましくは、突出部は、半径方向外側に延び、それによって、ドライバツールの内壁に結合するように構成される。
【0079】
好適な実施形態において、ドライバツール保持要素は、長手軸方向に延びる2つの保持アームを含み、これらの保持アームは、直径方向に互いに反対側に配置される。これによって、ドライバツールに対する確実な結合が実現される。
【0080】
少なくとも1つのドライバツール用の保持アームは、挿入ツールの歯冠側端部内に延びる長手方向の止まり穴と、挿入ツールの外面から上記止まり穴まで延びる2つの長手軸方向の切れ目により形成されるものであってもよい。この実施形態において、止まり穴は、典型的には、中心から外れた位置に形成される。これは、止まり穴の軸は、挿入ツールの長手軸と一致しないことを意味する。長手軸方向の切れ目は、止まり穴の内面と挿入ツールの外面との間の距離が最小となる領域に形成される。
【0081】
あるいは、少なくとも1つのドライバツール用の保持アームは、挿入ツールの歯冠側端部から発して歯冠側端部の断面の弦に沿って延びる、長手軸方向の単一の切れ目により形成されるものであってもよい。この実施形態は、1つの保持アームに対して1つの切れ目を設けるだけでよく、製造が非常に容易な点で、特に好適である。
【0082】
好適な実施形態では、ドライバツール係合部は、挿入ツールの歯冠側端部に位置している。これによって、挿入ツールの長さが最小限に維持されるとともに、挿入ツールとドライバツールの間の必要は重なりが最小化されて、結合形状が簡素化される。最も好ましくは、上述したトラバツール用の1つまたは複数の保持アームは、主トルク受け手段に形成される。これによって、ドライバツール係合部の長さが最小限に維持される。
【0083】
好ましくは、ドライバツール保持要素は、2つ以上のドライバツール用の保持アームを含む。特に好ましくは、それぞれのドライバツール用の保持アームは、歯冠側端部から発して主トルク受け手段の弦に沿って延びる、長手軸方向の単一の切れ目により形成される。典型的には、保持アームは、長手軸回りに均等に配置される。例えば、ドライバツール保持要素が2つの保持アームを含む場合、保持アームは、約180°の角度で配置される。
【0084】
好適な実施形態において、挿入ツールは、一体に形成される。このような実施形態では、挿入ツールが、歯科インプラント保持要素及び/またはドライバツール保持要素を含む場合、これらの要素は、シャフトと一体に設けられる。より一般的には、主トルク受け手段、補助トルク受け手段、及びトルク印加手段は、好ましくは、挿入ツールのシャフトと一体の部分から形成される。上述したように、これらの全ての手段は、トルク印加面及びトルク受け面が、ツールの外面上に形成されるように構成されることが好ましい。
【0085】
本発明の更なる態様に従って、本発明に係る挿入ツールと組合せられる歯科インプラントが提供される。この歯科インプラントは、挿入ツールのトルク印加手段と回転しない方式で係合するように構成された回転係止手段を含む。歯科インプラントは、1つの部品からなるものであっても、2つの部品からなるものであってもよい。すなわち、歯科インプラントは、使用時に、歯茎組織を通じて口腔内に延びて、歯科補綴物の直接コア支持を提供するように構成されていてもよく(一部品の歯科インプラント)、あるいは、通常はアバットメントと呼ばれる二次要素とともに使用されるように構成され、この場合、補綴物のコア支持はこの二次要素によって提供され、歯科インプラントが、使用時に、歯茎組織を超えて延びることはないものであってもよい(二部品のインプラント)。好ましくは、回転係止手段は、歯科新プラントの歯冠側端部から軸方向に延びる内孔に設けられる。
【0086】
好適な実施形態において、歯科インプラント係合部の弾性の保持アームは、挿入ツールが歯科インプラントに結合するときに、保持アームの半径方向の最外点が、歯科インプラントの内孔(好ましくは、内孔のねじ部分)と締り嵌めを形成するような形状を有している。別の実施形態において、歯科インプラント係合部は、環状のリング部材を含んでおり、このリング部材が、使用時に、歯科インプラントの内孔と圧力嵌めまたはスナップ嵌めを形成する。
【0087】
挿入ツールの歯科インプラントへの結合の間に、トルク印加手段と回転係止手段との角度方向の配置を補助するために、歯科インプラントと挿入ツールは、トルク印加手段が歯科インプラントの回転係止手段と少なくとも部分的に軸方向に配列されるまで、歯科インプラント保持要素が歯科インプラントを軸方向に保持できないように構成されることが好ましい。言い換えれば、歯科インプラント保持要素は、トルク印加手段が歯科インプラントの回転係止手段と回転に関して揃えられて、回転係止手段を通過するまで、歯科インプラントと係合して軸方向に保持することはない。これは、歯科インプラント保持要素の長さ、並びに、回転係止手段及びトルク印加手段の長さ及び位置を、適切に選択することによって達成することができる。
【0088】
好ましくは、この組合せには、さらに、歯科インプラント及び挿入ツールを保管するためのハウジングが含まれる。このハウジングは、挿入ツールの破断領域を堅固に保持する大きさに形成され、ハウジングと挿入ツールとの間の唯一の接触をなすクランプ部を含む。好ましくは、歯科インプラントは、ハウジング内において、ハウジングに接触することなく、挿入ツール上に軸方向に保持される。
【0089】
本発明のさらに別の態様に従って、本発明は、本発明に係る挿入ツールと組合せられるドライバツールを提供する。ドライバツールは、その末端側端部に、挿入ツールの主トルク受け手段と、また、挿入ツールが破断領域で破断した後は、補助トルク受け手段と、トルクが伝達される方式で係合するように構成された駆動手段を含んでいる。好ましくは、駆動手段の断面形状は、主トルク受け手段及び/または補助トルク受け手段の断面形状と実質的に同一である。
【0090】
好ましくは、ドライバツールの末端側端部は、ドライバツール係合部が挿入できるスリーブを含む。好ましくは、このスリーブは、その内面に、挿入ツールの主トルク受け手段及び補助トルク受け手段の両方にトルクが伝達される方式で係合するような形状に形成された駆動手段を含む。さらに、このスリーブは、挿入ツールをドライバツールに対して軸方向に保持するために、ドライバツール用の保持アームと協働するような形状に形成されたアンダーカットを含むことが好ましい。
【0091】
ドライバツールは、挿入ツールにトルクを印加可能任意の器具とすることができる。例えば、ドライバツールは、電気モーターによって駆動される歯科用ハンドピースであってもよく、ユーザが保持して回転させるラチェット、レンチ、またはハンドルであってもよい。ドライバツールは、延長部品またはアダプターを含むものであってもよい。すなわち、ドライバツールは、それ自体が第3の構成要素によって駆動されて、単にトルク源と挿入ツールとを結合する連結具として機能するものであってもよい。
【0092】
本発明のさらなる態様に従って、本発明は、上述したような歯科インプラント、挿入ツール、及びドライバツールの組合せを含む。
【0093】
反対のことが明示的に記載されていない限り、上述した好ましい特徴のそれぞれは、本明細書に記載された好ましい他の任意の特徴及び全ての特徴と、組合せて使用することができる。
【0094】
本発明は、さらに、添付の図面によって示されている。