(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334549
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】スラストの釣合いを取る圧縮機およびその方法
(51)【国際特許分類】
F04D 29/051 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
F04D29/051
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-541103(P2015-541103)
(86)(22)【出願日】2013年11月5日
(65)【公表番号】特表2016-500791(P2016-500791A)
(43)【公表日】2016年1月14日
(86)【国際出願番号】EP2013073068
(87)【国際公開番号】WO2014072295
(87)【国際公開日】20140515
【審査請求日】2016年10月26日
(31)【優先権主張番号】1202982
(32)【優先日】2012年11月7日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515121243
【氏名又は名称】サーモダイン・エスエイエス
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ストルダー,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】アルバン,トーマス
【審査官】
松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/078680(WO,A1)
【文献】
米国特許第04725196(US,A)
【文献】
国際公開第2011/076668(WO,A2)
【文献】
特開平01−237394(JP,A)
【文献】
特開2002−257080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/051
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと圧縮機のセット用の圧縮機であって、回転軸(2)上に、釣合ピストン(7)と、1組の羽根車(R)と、前記1組の羽根車(R)とは反対側で前記釣合ピストン(7)に隣接する前記ピストンの後方キャビティ(11)と、前記後方キャビティ(11)を前記1組の羽根車(R)の吸気口側に結合するのに適した調整弁(14)と、前記1組の羽根車(R)の前記吸気口側に結合される吸込圧力チャンバ(20)とを備え、前記後方キャビティ(11)が、前記釣合ピストン(7)と前記吸込圧力チャンバ(20)との間に配置される、圧縮機において、前記ピストンの前記後方キャビティ(11)と前記吸込圧力チャンバ(20)との間に配置される吐出圧力チャンバ(18)を備え、前記吐出圧力チャンバ(18)が、吐出ライン(19)を介して、前記1組の羽根車(R)と前記釣合ピストン(7)との間に位置する吐出領域(10)に結合されることを特徴とする、圧縮機。
【請求項2】
前記1組の羽根車(R)の前記吸気口側に結合されるガス吸気ライン上で出る吸気口フランジ(E)を備える、請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
一方では、前記吸込圧力チャンバ(20)と前記吐出圧力チャンバ(18)との間に、他方では、前記吐出圧力チャンバ(18)と前記ピストンの前記後方キャビティ(11)との間に配置されるラビリンスシール(9)を備える、請求項1または2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記1組の羽根車(R)と、前記釣合ピストン(7)と、前記ピストンの前記後方キャビティ(11)と、前記吐出圧力チャンバ(18)と、前記吸込圧力チャンバ(20)とを備えるのに適した圧縮機ジャケット(4)であって、前記圧縮機ジャケット(4)の両側で、前記回転軸(3)に取り付けられるシール手段(5)によって、密封した状態で閉じられる圧縮機ジャケット(4)を備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記回転軸(2)を支持するのに適した軸受を備える、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項6】
前記回転軸(2)に取り付けられた合い口(15)を備え、前記合い口(15)が、前記合い口(15)の両側に配置される支持手段(16)に支持されるのに適しており、前記回転軸(2)とは別個のものである、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項7】
前記回転軸(2)にかかるスラストのレベルを測定するのに適したセンサ(22)と、測定される前記スラストのレベルに基づいて前記調整弁(14)を制御するのに適した制御手段とを備える、請求項6に記載の圧縮機。
【請求項8】
モータと、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の圧縮機とを備える、モータと圧縮機のセット。
【請求項9】
圧縮機の回転軸(2)に結合される釣合ピストン(7)に働くスラストの釣合いを取るための方法であって、前記圧縮機は、前記回転軸(2)上に、1組の羽根車(R)と、前記1組の羽根車(R)とは反対側で前記釣合ピストン(7)に隣接する前記ピストンの後方キャビティ(11)と、前記後方キャビティ(11)を、釣合ライン(13)を介して、前記1組の羽根車(R)の吸気口側に結合するのに適した調整弁(14)と、吸込ライン(21)を介して、前記1組の羽根車(R)の前記吸気口側に結合される吸込圧力チャンバ(20)とをさらに備え、前記後方キャビティ(11)が、前記釣合ピストン(7)と前記吸込圧力チャンバ(20)との間に配置される、方法において、前記ピストンの前記後方キャビティ(11)と前記吸込圧力チャンバ(20)との間に配置される吐出圧力チャンバ(18)を、前記1組の羽根車(R)と前記釣合ピストン(7)との間に位置する吐出領域(10)に結合することを含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心圧縮機内に働くスラストの釣合いを取ることに関し、より具体的には、遠心圧縮機の構造が耐えうる最大スラストを向上させることに関する。
【背景技術】
【0002】
作動中、遠心圧縮機のロータは、一般的に、大きなスラストを受ける。これらのスラストは、段間に生じる圧力差、およびガスの方向が軸方向から径方向に変化することによって生じる運動量に起因する。流量は、圧縮機の吸込側から吐出側に向かうスラストを発生させる傾向にある。各羽根車の端部の圧力差は、それとは反対方向にスラストを発生させる。
【0003】
そのような現象の補償は、一般的に、流量に起因するスラストと同じ方向に作動する釣合ピストンを使用することによって行われる。圧縮機が様々な条件で作動しうることを考慮に入れ、ピストンは全作動範囲にわたりスラスト領域を減少させるように設計される。スラスト軸受は、ピストンによって釣合いが取られてもなお残る残留スラストを打ち消すために設置される。
【0004】
例えば、広範な流量、すなわち高流量係数を有する圧縮機等、ある特定の圧縮機の場合、スラスト軸受では不十分である。この欠点を克服するために、釣合ライン上、すなわちピストンの後方キャビティと圧縮機の吸込側との間に、制御弁を置く手法が知られている。弁は、スラスト測定プローブによって制御され、ピストンの後方キャビティ内の圧力を調整する。したがって、スラストは相殺、またはスラスト軸受の能力内に収まるように、少なくとも低減される。
【0005】
制御弁が閉じられ、後方キャビティが加圧される時、軸受または運動用シールを損傷する恐れがあるガスの漏洩を回避するために、吸込チャンバが、ラビリンスシールを介してピストンの後方キャビティの後に配置され、吸込パイプを介して制御弁の出口で吸込ラインに結合される。
【0006】
しかし、この解決法では、ガスが高流量の場合、スラストを補償できない。実際、釣合ライン上で制御弁が閉じられても、ピストンの後方キャビティ内で吐出圧力に到達することは不可能であり、スラスト補償の限界をもたらすことになる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、使用可能なスラスト範囲を増大させることによって、圧縮機が対応できる流量範囲を増大させることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第WO2011/078680号パンフレット
【発明の概要】
【0009】
このために、本発明は、モータと圧縮機のセット用の圧縮機を提案する。モータと圧縮機のセット用の圧縮機は、回転軸上に、釣合ピストンと、1組の羽根車と、1組の羽根車とは反対側で釣合ピストンに隣接するピストンの後方キャビティと、後方キャビティを1組の羽根車の吸気口側に結合するのに適した調整弁と、1組の羽根車の吸気口側に結合される吸込圧力チャンバとを備え、後方キャビティは、釣合ピストンと吸込圧力チャンバとの間に配置される。
【0010】
一般的な特徴によれば、圧縮機は、ピストンの後方キャビティと吸込圧力チャンバとの間に配置され、吐出ラインを介して、1組の羽根車と釣合ピストンとの間に位置する吐出領域に結合される、吐出圧力チャンバを備える。
【0011】
したがって、ピストンの後方キャビティと吸込圧力チャンバとの間に配置される吐出圧力チャンバは、圧縮機が高流量で作動している時、すなわち羽根車あたりの圧力比が1.05から1.2の間である時、釣合ピストンの両側にかかる圧力の釣合いを取ることができ、したがって、シール手段または軸受への漏洩を回避することができる。実際、調整弁を閉じることによって、吐出領域にあるガス、および吐出領域に結合される吐出圧力チャンバ内のガスは、ピストン後方キャビティ内の圧力が吐出圧力に近くなるまで、より低圧のピストン後方キャビティへと移動することになる。釣合ピストンの両側の圧力差が相殺され、したがって回転軸に働くスラスト力が低減する。
【0012】
好ましくは、圧縮機は、1組の羽根車の吸気口側に結合されるガス吸気ライン上で出る吸気口フランジを備える。
【0013】
したがって、ガス吸気ラインおよび吸込ラインの両方が、1組の羽根車の吸気口側に結合され、1組の羽根車は、吸気口フランジおよび吸込チャンバから導入されるガスを受ける。吸込チャンバからのガスは、吐出圧力チャンバからのガスの漏洩から生じる。吸込圧力チャンバによって、一方では、吐出圧力チャンバからのガスの漏洩が、シール手段または軸受に到達し、それらを損傷することを回避することができ、他方では、チャンバ間の漏洩により失われるガスを再利用することができる。
【0014】
圧縮機は、一方では、吸込圧力チャンバと吐出圧力チャンバとの間に、他方では、吐出圧力チャンバとピストンの後方キャビティとの間に配置されるラビリンスシールを備えてもよい。
【0015】
圧縮機は、有利には、1組の羽根車と、釣合ピストンと、ピストンの後方キャビティと、吐出圧力チャンバと、吸込圧力チャンバとを備えるのに適した圧縮機ジャケットを備えてもよく、ジャケットは、圧縮チャンバの両側で、回転軸またはステータに取り付けられるシール手段によって、密封した状態で閉じられる。
【0016】
圧縮機は、有利には、回転軸を支持するのに適した磁気軸受または油軸受を備えてもよい。
【0017】
圧縮機はまた、迫台を備えてもよい。迫台は、回転軸に取り付けられ、迫台の両側に配置される支持手段に支持されるのに適しており、回転軸とは独立したものである。
【0018】
圧縮機は、回転軸にかかるスラストのレベルを測定するのに適したセンサと、測定されるスラストのレベルに基づいて制御弁を制御するのに適した制御手段とを備えてもよい。
【0019】
他の態様によれば、モータと、上記のように定義される圧縮機とを備える、モータと圧縮機のセットが提案される。
【0020】
本発明の他の利点および特徴は、本発明の第2の実施形態による圧縮機の例を概略的に示す添付の図面を参照しながら、本発明の非限定的な実施形態についての下記の記載を熟読することで、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る圧縮機の例示的な実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図示されている例示的な実施形態では、圧縮機は、圧縮部1が1組の圧縮羽根車Rを備える圧縮機である。1組の圧縮羽根車Rは、圧縮機の吸気口Eに送られるガスの圧縮を確実にし、圧縮機によって処理されたガスを排気口Sに送る(矢印F)。
【0023】
羽根車Rは、モータ軸3によって回転駆動される被駆動軸2上に取り付けられる。
【0024】
圧縮機の圧縮部1は、図示されている実施形態では、被駆動軸2に沿って圧縮機ジャケットの両側に配置されるシール手段5によって、密封状態に保たれる圧縮機ジャケット4の中に置かれる。シール手段5は、シールによって分離されるキャビティの機構、例えば、ラビリンスシール、または他の構成要素を備える、乾式パッキンであってもよい。
【0025】
圧縮機はまた、軸受6(図面にはそのうちの2つが示されている)を備え、被駆動軸2を支持することができる。軸受6は、磁気軸受であってもよい。軸受6はまた、乾式パッキンがシール手段5として使用される場合、油軸受であってもよい。
【0026】
最後の羽根車Rの下流に、圧縮部1内で処理されるガスの循環を考慮に入れ、圧縮機は、被駆動軸2に取り付けられ、羽根車によって被駆動軸2に働く軸スラストを補償することを意図する、釣合ピストン7を備える。最後の羽根車Rの吐出領域10にある圧縮されたガス、すなわち排気口Sおよび釣合ピストン7に最も近いガスの漏洩は、ピストンの高さに配置されたラビリンスシール機構9を使用することによって、低減する。被駆動軸2が受ける軸スラストは、主に、一方向の各羽根車の端部の圧力差、および反対方向の圧縮機内のガスの流量に起因し、働く力の大きさは、作動モードによって変化する。
【0027】
圧縮部1は、釣合ピストン7の、羽根車Rとは反対の側にピストンの後方キャビティ11を備える。後方キャビティ11は、制御される調整弁14を備える釣合ライン13を介して、羽根車Rの吸気口側に結合される。
【0028】
ピストンの端部、すなわち釣合ピストン7の一方の側にある吐出領域と釣合ピストン7の他方の側にあるピストン後方キャビティ11との間の圧力差によって、残留スラストを再集中させてその変動を最小化できる。
【0029】
残留軸スラストは、迫台15を備える機構によって打ち消される。迫台15は、被駆動軸2の軸方向の運動を制限するように、被駆動軸2および迫台15の両側に位置する2つのステータ部16にしっかりと固定され、被駆動軸2とは独立したものである。
【0030】
機械が釣合ピストン7を備える場合、ラビリンス9における漏洩は、釣合ライン13を介して圧縮機の吸込側に戻される。調整弁14は、釣合ピストン7に必要なスラストを得るように、ピストンの後方キャビティ11内の圧力を調整する。
【0031】
圧縮機が高流量で使用される場合、ピストンは、迫台の能力を超過するまでスラストを強める。
【0032】
釣合ピストン7に働くスラストを相殺するために、釣合ピストン7の両側、すなわち吐出領域10とピストン後方キャビティ11との間の圧力の釣合いが取られる。
【0033】
このために、調整弁14は、後方キャビティ11を吐出領域10から後方キャビティに漏洩するガスで満たすように閉じられる。後方キャビティ内で吐出圧力に到達することを可能にするために、圧縮機は、ピストン後方キャビティ11の後に配置され、吐出ライン19を介して吐出領域10に結合する、吐出圧力チャンバ18を備える。
【0034】
吐出圧力チャンバ18は、吐出領域10に直接結合しており、吐出圧力に一致する圧力を有する。ピストン後方キャビティ11内の圧力は、吐出圧力よりも低いため、吐出チャンバ18は、ピストン後方キャビティ11から吐出チャンバ18を分離するラビリンスシール9を介して、ピストンの後方キャビティ11に漏洩を起こす。
【0035】
したがって、使用できるスラスト範囲を増大させた圧縮機の実現が可能になる。
【0036】
吐出圧力チャンバ18と軸端部のシールとの間のガスの漏洩を回避するために、圧縮部1は、吸込ライン21を介して吸込側、すなわち弁14の下流にある吸気口Eに結合する、吸込圧力チャンバ20を備える。
【0037】
実際、この吸込圧力チャンバ20を備えなければ、漏洩問題によって、シール手段5、または磁気軸受の場合は直接軸受6が損傷される恐れがある。吐出チャンバ内の吐出圧力によって、吐出圧力を有するガスがシール手段5に浸透し、シール手段5を損傷することになる恐れがある。磁気軸受の場合は、吐出圧力を有するガスは高温であり、事実、磁気軸受に漏洩して加熱し、磁気軸受が損傷される恐れがある。
【0038】
吸込圧力チャンバ20は、ラビリンスシール9を介在して、吐出圧力チャンバ18のすぐ隣に位置し、シール手段5または直接軸受6を保護する。この構成によって、ピストン7の後方キャビティ11の両側の領域が吐出圧力になり、弁が閉じられた時、ピストン後方キャビティ内が実質的に吐出圧力になるまで、ガスがピストン後方キャビティ11に漏洩することができる。
【0039】
制御弁14を制御するために、圧縮機は、被駆動軸2に働くスラストのレベルを周期的に測定する、測定手段22を備える。測定手段22には、例えば、スラスト軸受の加熱を測定する温度センサ、または圧縮機内のガスの流量を測定する流量センサが含まれてもよい。得られる情報は、このデータを制御弁14の開/閉信号に変換する制御部に送られる。制御弁14が閉じられる時、ガスは吐出領域からピストン7の後方キャビティ11に循環する。その後、吸込圧力チャンバへの流路のみが残る。
【0040】
本発明によって、広範な流量に対応できる圧縮機が実現できる。
【符号の説明】
【0041】
1 圧縮部
2 被駆動軸、回転軸
3 モータ軸
4 圧縮機ジャケット
5 シール手段
6 軸受
7 釣合ピストン
9 ラビリンスシール
10 吐出領域
11 後方キャビティ
13 釣合ライン
14 調整弁
15 迫台
16 ステータ部、支持手段
18 吐出圧力チャンバ
19 吐出ライン
20 吸込圧力チャンバ
21 吸込ライン
22 測定手段、センサ
E 吸気口
F 矢印
R 羽根車
S 排気口