特許第6334562号(P6334562)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6334562計装ケーブル貫通フランジを有する原子炉およびその燃料交換方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334562
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】計装ケーブル貫通フランジを有する原子炉およびその燃料交換方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/20 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
   G21C19/20 A
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-552643(P2015-552643)
(86)(22)【出願日】2013年12月17日
(65)【公表番号】特表2016-503180(P2016-503180A)
(43)【公表日】2016年2月1日
(86)【国際出願番号】US2013075586
(87)【国際公開番号】WO2014137442
(87)【国際公開日】20140912
【審査請求日】2016年8月8日
(31)【優先権主張番号】13/742,392
(32)【優先日】2013年1月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ハークネス、アレクサンダー、ダブリュ
【審査官】 藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−241691(JP,A)
【文献】 特開平06−138283(JP,A)
【文献】 特開2008−241328(JP,A)
【文献】 特開平06−059066(JP,A)
【文献】 特開2000−146744(JP,A)
【文献】 実開平02−141894(JP,U)
【文献】 特開平02−168196(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0148007(US,A1)
【文献】 米国特許第5057270(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0150294(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/20
G21C 19/02
G21C 1/00
G21C 1/08
G21C 5/00
G21C 17/00−17/108
G21C 13/00
F16J 12/00−13/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉であって、
下端部が密封され、上端部に環状フランジ(64)が形成された開口部があり、中心軸が長軸方向に延びている細長の原子炉容器(10)、
密封面を形成するように機械加工された環状フランジ(68)を下側に有する原子炉容器蓋体(12)、
原子炉容器フランジ(64)と当該原子炉容器蓋体(12)の下側の密封面との間で当該容器フランジ上に着座する大きさを有する第1の取外し可能な環状シールリング(70)であって、当該シールリングは当該容器蓋体の下側の当該密封面と当該原子炉容器フランジとの間に位置し、当該シールリングの厚さは当該原子炉の炉心(14)からの計装信号を伝送するための1本以上の計装ケーブル(80)が当該原子炉容器の外側から内側へ通り抜ける1つ以上の半径方向通路を密封状態で収容できる大きさであり、当該炉心は複数の燃料集合体(22)から成ることを特徴とする第1の取外し可能な環状シールリング(70)、
原子炉容器(10)内の炉心(14)の上方に支持された上部炉内構造物パッケージ(26)であって、上部炉内構造物パッケージの上部炉心板(40)と上部支持板(46)との間を貫通して延びる実質的に垂直な通路をそれぞれ内包する複数の中空な支柱(48)を有し、当該上部炉心板を貫通する当該通路が燃料集合体(22)のうちの1体の対応する計装シンブル(82)と整列していることを特徴とする上部炉内構造物パッケージ(26)、および
第1の取外し可能な環状シールリング(70)に固定的に接続されている複数の中空な細管(84)であって、当該中空な細管はそれぞれ当該支柱(48)のうちの1本の当該通路内に摺動自在に取り付けられており、当該計装ケーブル(80)のうちの少なくとも1本が当該中空な細管を貫通して対応する当該支柱内へ軸方向に延びており、当該中空な細管は当該支柱内で完全挿入位置と完全延伸位置との間で摺動可能であり、当該完全挿入位置において当該計装ケーブルは計装シンブル(82)の中に入り、当該完全延伸位置において当該計装ケーブルは当該炉心(14)から引き抜かれることを特徴とする複数の中空な細管(84)
から成る原子炉。
【請求項2】
前記中空な細管(84)の下端部が前記支柱(48)の前記通路内に捕捉されている請求項1の原子炉。
【請求項3】
前記支柱(48)の前記通路内における前記中空な細管(84)の行程のほぼ下端部において、前記支柱通路は壁厚が大きいため、前記支柱通路内の前記完全挿入位置と前記完全延伸位置との間の中間的な軸方向範囲に比べて堅い締り嵌めが得られる、請求項1の原子炉。
【請求項4】
前記中空な細管(84)の下端部が前記中空な細管の軸方向の中間部に比べて細い、請求項3の原子炉。
【請求項5】
前記第1の取外し可能な環状シールリング(70)がほぼ前記原子炉容器(10)の外壁と前記上部炉内構造物パッケージ(26)の壁(76)との間の広がりを有して半径方向に延びており、前記第1の取外し可能な環状シールリング(70)の下方の、前記第1の取外し可能な環状シールリングと、前記原子炉容器フランジ(64)との間には、前記第1の取外し可能なシールリングと実質的に等しい半径方向の広がりを有する第2の取外し可能な環状シールリング(66)が配置され、半径方向外側に延びる前記第1および第2のシールリングのそれぞれの当接面が少なくとも1つのOリング(92)によって相互に密閉されており、軸方向の一次冷却材流路(102)が前記第1および第2のシールリングのそれぞれを貫通して実質的に整列して延びており、当該一次冷却材流路のOリング側とは反対側にある内側に延びる前記第1および第2のシールリングのそれぞれの当接面がT形リング(96)によって密閉されており、当該T形リングの腹部(98)が当該内側に延びる当接面の間に延びていることを特徴とする、請求項1の原子炉。
【請求項6】
前記T形リング(96)の前記腹部(98)が前記内側に延びる当接面のうちの1つに取り付けられた留め具(100)によって固定され、当該留め具は当該腹部のクリアランスホールを貫通している、請求項5の原子炉。
【請求項7】
熱膨張が可能なように前記クリアランスホールに細溝が付けられた、請求項6の原子炉。
【請求項8】
前記T形リング(96)が、原子炉の昇温とともに前記第1および第2の取外し可能な環状シールリング(66、70)を構成する材料よりも速く膨張する材料から成る、請求項6の原子炉。
【請求項9】
前記第1および第2の取外し可能な環状シールリング(66、70)が炭素鋼から成り、前記T形リング(96)がステンレス鋼から成る、請求項8の原子炉。
【請求項10】
前記第1の取外し可能な環状シールリング(70)がおおむね前記原子炉容器(10)の外壁と前記上部炉内構造物パッケージ(26)の壁(76)との間の広がりを有して半径方向に延びており、前記第1の取外し可能な環状シールリングの下方の、前記第1の取外し可能な環状シールリングと、前記原子炉容器フランジ(64)との間には、前記第1の取外し可能な環状シールリングと実質的に等しい半径方向の広がりを有する第2の取外し可能な環状シールリング(66)が配置され、半径方向外側に延びる前記第1および第2のシールリングのそれぞれの当接面が少なくとも2つの半径方向に離隔したOリング(92)によって相互に密閉されており、当該少なくとも2つの半径方向に離隔したOリングの間から収集貯留域まで延びる第1のリークオフチャネル(94)を含み、当該第1のリークオフチャネルは前記第2の取外し可能な環状シールリングの当接面の間から前記原子炉容器フランジまで延びる第2のリークオフチャネルに接続していることを特徴とする、請求項1の原子炉。
【請求項11】
前記中空な細管(84)が、前記第1の取外し可能な環状シールリング(70)に接続された実質的に水平に延びる格子状構造体(88)に支持されている、請求項1の原子炉。
【請求項12】
前記第1の取外し可能な環状シールリングを引き上げると前記格子状構造体(88)が引き上げられ、対応する前記支柱(48)の中から前記中空な細管(84)が引き上げられるように前記第1の取外し可能な環状シールリング(70)が構成されている、請求項11の原子炉。
【請求項13】
請求項1の原子炉の燃料を交換する方法であって、
前記第1の取外し可能な環状シールリング(70)から前記原子炉容器蓋体(12)を取り外すステップ、
前記第1の取外し可能な環状シールリング(70)を、前記計装ケーブル(80)が前記炉心(14)から引き抜かれる高さまで引き上げるステップ、
前記第1の取外し可能な環状シールリング(70)が引き上げられた状態で、前記上部炉内構造物パッケージ(26)を単一ユニットとして前記原子炉容器(10)から取り出し、貯蔵場所へ移送するステップ、および
前記炉心(14)の燃料を交換するステップ
から成る方法。
【請求項14】
請求項13の方法であって、前記原子炉の燃料を交換する方法は、燃料交換ステップの後に、
前記第1の取外し可能な環状シールリング(70)を引き上げた状態に保つステップ、
前記上部炉内構造物パッケージ(26)を前記原子炉容器(10)の中へ下ろすステップ、
前記上部炉内構造物パッケージ(26)を前記炉心(14)の上方で支持するステップ、
前記第1の取外し可能な環状シールリング(70)を前記原子炉容器フランジ(64)の最上部の上へ下ろし、同時に、対応する前記支柱(48)の中へ前記中空な細管(84)を下ろし、前記計装ケーブル(80)を前記燃料集合体(22)の中の対応する前記計装シンブル(82)の中へ下ろすステップ、および
前記原子炉容器蓋体(12)を交換するステップ
を含む方法。
【請求項15】
前記第1の取外し可能な環状シールリング(70)がおおむね前記原子炉容器(10)の外壁と前記上部炉内構造物パッケージ(26)の壁(76)との間の広がりを有して半径方向に延びており、前記第1の取外し可能な環状シールリングの下方の、前記第1の取外し可能な環状シールリングと、前記原子炉容器フランジ(64)との間には、前記第1の取外し可能な環状シールリングと実質的に等しい半径方向の広がりを有する第2の取外し可能な環状シールリング(66)が配置され、当該第2の取外し可能な環状シールリングは前記上部炉内構造物パッケージの壁に固定的に接続されており、前記上部炉内構造物パッケージを取り出すステップは当該第2の取外し可能な環状シールリングを前記上部炉内構造物パッケージの一部として前記原子炉容器フランジから取り出すステップを含むことを特徴とする、請求項14の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年4月27日に出願された「Instrumentation and Control Penetration Flange for Pressurized Water Reactor」と題する米国特許出願第13/457,683号に関する。
【0002】
本発明は概して原子炉システムに関し、具体的には、原子炉蓋体の下方の原子炉容器上部に計装装置貫通部を有する原子炉に関する。
【背景技術】
【0003】
加圧水型原子炉は、直立した原子炉容器内に装荷された多数の細長い燃料集合体を有している。加圧状態の冷却材は、燃料集合体を循環することにより、燃料集合体に含まれる核分裂性物質の核反応で発生する熱を吸収する。加圧水で冷却されるそのような原子炉発電システムの一次側は、有用なエネルギーを発生させるための二次回路から隔離されるが当該二次回路と熱交換関係にある閉回路を構成する。一次側は、核分裂性物質を含む複数の燃料集合体を支持する炉内構造物を囲む原子炉容器、熱交換蒸気発生器内の一次回路、加圧器の内部容積、加圧水を循環させるポンプおよび配管類を含み、これら配管類は蒸気発生器およびポンプをそれぞれ独立に原子炉容器に接続する。そのようなタイプの従来型原子力発電所では、原子炉容器と接続する蒸気発生器、ポンプおよび配管系から成る一次側の各部は、一次側ループを形成する。
【0004】
説明の目的のために、図1は炉心14を密封する蓋体12を備えた概して円筒形の圧力容器10を有する従来型原子炉一次系を簡略化して示す。水またはホウ酸水のような冷却液は、ポンプ16により容器10内に圧入され、炉心14を通過する際に熱エネルギーを吸収して、一般的に蒸気発生器と呼ばれる熱交換器18へ送られ、伝達された熱は蒸気駆動タービン発電機のような利用回路(図示せず)へ送られる。次いで、原子炉冷却材がポンプ16へ還流することで一次ループが完成する。一般的に、上述したような複数のループが、原子炉冷却材配管20を介して単一の原子炉10に接続されている。
【0005】
従来設計の原子炉の例をさらに詳細に図2に示す。互いに平行で垂直に延びる複数の燃料集合体22から成る炉心14に加えて、説明の目的で、その他の容器内部構造物を下部炉内構造物24と上部炉内構造物26とに分けることができる。従来設計では、下部炉内構造物は、炉心コンポーネントおよび計装体を支持し、整列させ、案内するとともに、容器内の流れ方向を定める機能を有する。上部炉内構造物は、燃料集合体22(簡略化のため2つだけ図2に示す)を拘束するか、または燃料集合体に二次的拘束手段を提供し、計装体および例えば制御棒28のようなコンポーネントを支持し案内する。図2に例示する原子炉の場合、冷却材は1つまたは2つ以上の入口ノズル30から原子炉容器に流入し、原子炉容器と炉心槽32との間に画定される環状部を流下し、下部プレナム34において180°方向転換し、下部支持板37および燃料集合体22が着座する下部炉心板36を上向きに貫流し、当該集合体の中および周りを流動する。下部支持板37および下部炉心板36の代わりに、37と同じ高さを持つ単一構造の下部炉心支持板を配置する設計もある。炉心とその周辺領域38を貫流する冷却材の流量は通常、毎秒約20フィートの流速で毎分400,000ガロン級の大きなものである。その結果生じる圧力降下および摩擦力が燃料集合体を上昇させようとするが、この動きは円形の上部炉心板40を含む上部炉内構造物により制限される。炉心14を出た冷却材は、上部炉心板の下側に沿って流れ、複数の孔42を上方に流れる。冷却材はその後、上方および半径方向に流れて1つ以上の出口ノズル44へ到達する。
【0006】
上部炉内構造物26は、容器または容器蓋体により支持することが可能であり、上部支持集合体46を含む。荷重は、主として複数の支柱48により、上部支持集合体46と上部炉心板40との間を伝達される。支柱は、所定の燃料集合体22および上部炉心板40の孔42の上方で整列関係にある。
【0007】
駆動シャフトまたは駆動棒50、および中性子毒物棒のスパイダ集合体52を一般的に含む直線方向に移動可能な制御棒28は、制御棒案内管54により上部炉内構造物26を通り抜けて、整列関係にある燃料集合体22内に案内される。案内管は、上部支持集合体46および上部炉心板40の最上部に固定されている。支柱48は、制御棒挿入能力に悪影響を与えかねない事故状況下での案内管の変形の抑制に寄与するように配列されている。
【0008】
核分裂プロセスを制御するために、複数の制御棒28が、燃料集合体22の所定位置にある案内シンブル内を往復移動可能である。具体的には、燃料集合体の上部ノズルの上方に位置する制御棒機構が、複数の制御棒を支持する。この制御棒機構(棒クラスタ制御集合体とも呼ばれる)は、内部にねじ溝がある円筒形ハブ部材と半径方向に延びる複数の鉤またはアームとを有し、それらは図2に関して前述したスパイダ52を形成する。各アームは制御棒28に相互接続されており、これにより、制御棒集合体機構72は、制御棒28を、全て公知の態様で、制御棒機構ハブに結合された制御棒駆動シャフト50の駆動力により、燃料集合体の中の案内シンブル内で垂直方向に移動させて、燃料集合体22内の核分裂プロセスを制御する。
【0009】
上部炉内構造物26は、支柱48内の軸方向通路を下方に延びて燃料集合体のほぼ中心に位置する計装シンブル内へ達する複数の炉内計装装置も含んでいる。炉内計装装置は、典型的には、冷却材炉心出口温度を測定する熱電対と、軸方向に配置されて炉心内の中性子活動の軸方向および半径方向プロファイルを監視する中性子検出器を含む。
【0010】
軽水型原子炉を使用する原子力発電所は、原子炉の燃料交換のために定期的な運転停止が必要である。新しい燃料集合体がプラントに搬入され、以前原子炉から取り出されていた使用済燃料集合体があればそれとともに、燃料貯蔵建屋に暫定貯蔵される。燃料交換のための運転停止時に、原子炉内の燃料集合体の一部が取り出され、原子炉から燃料貯蔵建屋へ移される。次に燃料集合体の別の一部が、原子炉内のある支持位置から、原子炉内の別の炉心支持位置へ移送される。取り出された燃料集合体の代わりに、新しい燃料集合体が燃料貯蔵建屋から原子炉内へ移送される。このような燃料集合体の移動は、炉心設計者が作成した全体的な燃料交換計画に従って、それぞれの燃料集合体が所定の位置に配置されるように、詳細な手順で行われる。従来型原子炉では、燃料へのアクセスに必要な原子炉内部構成機器の取り外しと、原子炉と燃料貯蔵建屋内の使用済燃料プールとの間での新旧の燃料の移送とは、プラント保守要員を遮蔽するために水中で行われる。これは、燃料交換キャビティ内、およびプラント建屋構造物と一体的な水路内の水位を上げることによって行う。水位を20フィート以上にすることによって、炉内構造物と燃料集合体を移送するための遮蔽が提供される。
【0011】
燃料交換作業は往々にして、原子力発電所の出力運転再開のためのクリティカルパスになる。したがって、この作業を迅速に行うことは、発電所所有者にとって経済的に重要な検討事項である。さらに、プラント機器と燃料集合体は高価であり、燃料集合体にアクセスするために取り外さなければならない原子炉構成機器や燃料集合体または燃料移送機器の不適切な取り扱いによる損傷や不必要な放射線被ばくが生じないよう注意を払う必要がある。炉心を安全かつ経済的に運転するには、各燃料集合体が正しく配置されている必要があるので、燃料交換作業の精度もまた重要である。一般的な加圧水型原子炉は、18〜24カ月ごとに燃料を交換する必要がある。
【0012】
図1、2に示す従来設計を採用した商業発電所は、典型的には出力が約1,100メガワット以上である。最近では、ウェスチングハウス・エレクトリック・カンパニーLLCが、200メガワット級のモジュール式小型炉を提案している。モジュール式小型炉は一体型の加圧水型原子炉であり、一次ループ構成機器のすべてが原子炉容器の内部に配置されている。原子炉容器は、コンパクトな高圧格納容器に取り囲まれている。一体型加圧軽水炉には格納容器内の空間的な制約および低コストの要請があるため、安全性や機能性を損なうことなく補助系統の総数をできるだけ少なくする必要がある。例えば、一部のモジュール式小型炉の設計に付随するコンパクトな高圧格納容器では、移送する構成機器を内部に遮蔽できる冠水可能な大型キャビティを、原子炉容器の上方に組み入れることができない。また、ほとんどの従来型加圧水型原子炉では、燃料交換に先立って炉心から炉内計装装置が引き出される。これを実施するには、一次圧力バウンダリのシールを破り、導管内において計装装置を引き上げる。このやり方は、計装装置が底部に取り付けられたプラントでは簡単であるが、それは、直截的に、導管が原子炉容器の底部から、原子炉とは分離された部屋に設置されたシール台へ延びているためである。最上部に計装装置が取り付けられたプラントでは、上部炉内構造物があるため、このやり方はずっと複雑である。最上部に取り付けられた計装装置を、モジュール式小型炉の一体型加圧水型原子炉に使用することを考えると、状況はさらに複雑になる。計装装置を最上部に取り付けることは、一般に容器内保持と呼ばれるシビアアクシデント緩和策を講じるプラントにおいて好まれる。この対策では、原子炉容器の下部に貫通部がないことが条件である。
【0013】
したがって、本発明の目的は、最上部に計装装置が取り付けられた原子力発電所向けに、燃料交換のための炉心へのアクセスを容易にする方法および装置を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、最上部に取り付けられた計装装置を原子炉容器内の上部炉内構造物の一体的部分として容易に取り外せるようにする方法および装置を提供することである。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、容器を貫通する計装装置貫通部を、上部炉内構造物パッケージの一体的部分として容器から取り外せる方法および装置を提供することである。
【発明の概要】
【0016】
上記および他の目的は、下端部が密閉され、上端部に開口部と環状フランジが形成され、中心軸が長軸方向に延びる細長の原子炉容器を有する原子炉によって達成される。原子炉容器は取外し可能な蓋体を有し、当該蓋体の下側には、容器の環状フランジと共に密封面を形成するように機械加工された環状部がある。第1の取外し可能な環状シールリングが、原子炉容器フランジと原子炉容器蓋体の下側の密封面との間で当該フランジ上に着座する大きさで配置され、当該シールリングは当該容器蓋体の下側の当該密封面と当該原子炉容器フランジとの間に位置し、当該シールリングの厚さは原子炉の炉心からの計装信号を伝送するための1本以上の計装ケーブルが原子炉容器の外側から内側へ通り抜けるための1つ以上の半径方向通路を密封状態で収容できる大きさであり、当該炉心は複数の燃料集合体から成る。原子炉容器内の炉心の上方に支持された上部炉内構造物パッケージは、当該上部炉内構造物パッケージの上部炉心板と上部支持板との間を貫通する実質的に垂直な通路をそれぞれ内包する複数の中空な支柱を有し、当該上部炉心板を貫通する当該通路は燃料集合体のうちの1体の対応する計装シンブルと整列している。複数の中空な細管が第1の取外し可能な環状シールリングに固定的に接続されており、この中空な細管のそれぞれは1本の支柱の通路内に摺動自在に取り付けられており、計装ケーブルのうちの少なくとも1本が中空な細管を貫通して対応する支柱まで軸方向に延びている。中空な細管はそれぞれ1本の支柱の通路内に摺動自在に取り付けられており、支柱内で完全挿入位置と完全延伸位置との間で移動可能であり、完全挿入位置において計装ケーブルは計装シンブルの中に入っており、完全延伸位置において計装ケーブルは炉心から引き抜かれている。
【0017】
中空な細管の下端部は、支柱の通路内で捕捉されているのが好ましい。一実施態様では、支柱通路内の中空な細管の行程のほぼ下端部において、支柱通路は壁厚が大きいため、支柱通路内の完全挿入位置と完全延伸位置との間の中間的な軸方向範囲に比べて堅い締り嵌めが得られる。中空な細管の下端部は、中空な細管の軸方向の中間部分に比べて細いのが望ましい。
【0018】
別の実施態様では、第1の取外し可能な環状シールリングがおおむね原子炉容器の外壁と上部炉内構造物パッケージの壁との間の広がりを有して半径方向に延びており、当該第1の取外し可能な環状シールリングの下方の、当該第1の取外し可能な環状シールリングと、原子炉容器フランジとの間には、当該第1の取外し可能な環状シールリングと実質的に等しい半径方向の広がりを有する第2の取外し可能な環状シールリングが配置されている。第1および第2のシールリングのそれぞれの半径方向外側に延びる当接面は、1つ以上のOリングによって相互に密閉され、軸方向の一次冷却材流路が、第1および第2のシールリングのそれぞれを貫通し実質的に整列して延びている。第1および第2のシールリングのそれぞれの内側に延びる当接面は、一次冷却材流路のOリング側とは反対側に延び、T形リングによって密閉されており、当該T形リングの腹部は、当該内側に延びる当接面の間に延びている。T形リングの腹部は内側に延びる当接面のうちの1つに取り付けられた留め具によって固定され、当該留め具は当該腹部のクリアランスホールを貫通しているのが好ましい。一実施態様では、熱膨張が可能なように、このクリアランスホールに細溝が付けられている。T形リングは、原子炉の昇温とともに第1および第2の取外し可能な環状シールリングを構成する材料よりも速く膨張する材料から成るのが望ましい。第1および第2の取外し可能な環状シールリングは炭素鋼から成り、T形リングはステンレス鋼から成るのが好ましい。
【0019】
別の実施態様では、第1の取外し可能な環状シールリングがおおむね原子炉容器の外壁と上部炉内構造物パッケージの壁との間の広がりを有して半径方向に延びており、原子炉はさらに、当該第1の取外し可能な環状シールリングの下方の、当該第1の取外し可能な環状シールリングと、原子炉容器フランジとの間に配置され、当該第1の取外し可能な環状シールリングと実質的に等しい半径方向の広がりを有する第2の取外し可能な環状シールリングを含んでいる。半径方向外側に延びる第1および第2のシールリングのそれぞれの当接面が少なくとも2つの半径方向に離隔したOリングによって相互に密閉されており、第1のリークオフチャネルが当該少なくとも2つの半径方向に離隔したOリングの間から第2のリークオフチャネルに接続された収集貯留域まで延びており、この第2のリークオフチャネルは第2の取外し可能な環状シールリングの当接面の間から原子炉容器フランジまで延びている。
【0020】
さらに別の実施態様では、中空な細管が、第1の取外し可能な環状シールリングに接続された実質的に水平に延びる格子状構造体に支持されている。第1の取外し可能な環状シールリングは、該第1の取外し可能な環状シールリングを引き上げると格子状構造体が引き上げられ、対応する支柱の中から中空な細管が引き上げられるように、構成されているのが好ましい。
【0021】
本発明はさらに、第1の取外し可能な環状シールリングから原子炉蓋体を取り外すステップを含む上述の原子炉の燃料交換方法も企図している。次のステップは、第1の取外し可能な環状シールリングを、計装ケーブルが炉心から引き抜かれる高さまで引き上げる。本方法では次に、引き上げられた状態の第1の取外し可能な環状シールリングを含む上部炉内構造物パッケージを、単一ユニットとして原子炉容器から取り出し、貯蔵場所へ移送する。本方法は次に、炉心の燃料を交換する。本方法では、燃料交換のステップの後、第1の取外し可能な環状シールリングを引き上げられた状態に保ち、上部炉内構造物パッケージを原子炉容器内に下ろすのが好ましい。次いで、上部炉内構造物パッケージを炉心の上で支持し、第1の取外し可能な環状シールリングを原子炉容器フランジの最上部の上へ下ろし、同時に、対応する支柱の中へ中空な細管を下ろし、計装ケーブルを燃料集合体の中の対応する計装シンブルの中へ下ろす。次に、原子炉容器蓋体を原子炉容器フランジの上に戻す。
【0022】
さらに別の実施態様は、第1の取外し可能な環状シールリングがおおむね原子炉容器の外壁と上部炉内構造物パッケージの壁との間の広がりを有して半径方向に延びており、当該第1の取外し可能な環状シールリングの下方の、当該第1の取外し可能な環状シールリングと、原子炉容器フランジとの間に配置された第2の取外し可能な環状シールリングを含んでいる。第2の取外し可能な環状シールリングは、第1の取外し可能な環状シールリングと実質的に同じ半径方向の広がりを有し、上部炉内構造物パッケージの壁に固定的に接続されている。本方法のこの後者の実施態様では、上部炉内構造物パッケージを取り外すステップに、第2の取外し可能な環状シールリングを上部炉内構造物パッケージの一部として原子炉容器フランジから取り外すステップが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の詳細を、好ましい実施態様を例にとり、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0024】
図1】本発明の実施態様を適用できる従来型原子炉システムの単純化した概略図である。
【0025】
図2】本発明の実施態様を適用できる原子炉容器および内部構成機器の部分断面立面図である。
【0026】
図3】モジュール式小型炉システムを示す一部破断斜視図である。
【0027】
図4図3に示す原子炉容器の拡大図である。
【0028】
図5】本発明が適用される、制御棒駆動機構を備えた一体型加圧水型原子炉の部分概略断面図である。
【0029】
図6】本発明が適用される、最上部に計装装置が取り付けられた従来型加圧水型原子炉の内部を示す部分概略断面図である。
【0030】
図7図5に示す上部炉内構造物パッケージの一部分の拡大図である。
【0031】
図8図7に示す原子炉容器貫通部シールの拡大図である。
【0032】
図9-13】図9、10、11、12、13は、図5を元にした、本発明に従って構成した上部炉内構造物パッケージの一実施態様の概略部分断面図であり、燃料交換のため燃料集合体にアクセスするべく、上部炉内構造物パッケージを分解して原子炉容器から取り外す本発明の一実施態様の方法の各ステップを示している。
【0033】
図14-18】図14、15、16、17、18は、従来型加圧水型原子炉に適用される本発明の別の実施態様に対応する装置および方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図3、4は、装置および方法の本発明の思想が適用される可能性のある、ペンシルベニア州クランベリー郡区に所在のウェスチングハウス・エレクトリック・カンパニーLLCが提供するモジュール式小型炉設計を示す。ただし本発明は、以下に詳細に説明するように、図1、2に示すような従来型加圧水型原子炉の設計にも適用できる。図3は、圧力容器10とその内部構成機器を示す原子炉格納容器11の一部破断斜視図である。図4は、図3に示す圧力容器の拡大図である。加圧器58(図1には示さず)は、ほとんどの加圧水型原子炉の設計に共通しており、一般的にはシステムの圧力を維持するために1つのループ内に組み入れられている。図3、4に示す設計のモジュール式小型炉では、加圧器58は原子炉容器蓋体12の上部に一体化されているため、別個に設ける必要がない。いくつかの図にわたって、対応する構成機器に対して同じ参照符号が付されている。高温側ライザー60は、炉心14から、高温側ライザー60を取り囲む蒸気発生器18に一次冷却材を導く。複数の冷却ポンプ16が、上部炉内構造物26の上端に近い高さで、原子炉容器10のまわりに周方向に離隔して配置されている。原子炉冷却材ポンプ16は、水平に設置された軸流キャンドモータポンプである。炉心14および上部炉内構造物26は、寸法を除いて、図1、2に関して前述した対応する構成機器と実質的に同一である。上記から、容器フランジ64の領域をはるかに超える高さまで原子炉を冠水させ、燃料集合体を格納容器を貫通する移送キャナル62を介して水中で使用済燃料プールへ移送する従来の燃料交換方法は、このタイプの格納容器およびコンパクトな設計には実際的でない。さらに、このコンパクトな設計は容器内保持を企図するものであるから、計装装置を最上部に取り付ける必要があるが、実際的に、この計装装置を容器蓋体を貫通して原子炉容器から延出させることはできない。炉心出力および/または炉心出口温度の測定に従来から使用されている炉内計測器を、燃料交換の開始に先立って燃料集合体から引き抜く必要があるので、炉内計装装置からの信号導線を、2012年4月27日に出願された「Instrumentation and Control Penetration Flange for Pressurized Water Reactor」と題する米国特許出願第13/457,678号に記述されているような貫通フランジを介して原子炉から引き出せるようにすると共に、炉心上方の上部炉内構造物パッケージを原子炉容器から取り外す前に炉内計装装置を炉心から取り外せるようにする革新的な設計が要求される。効率を高め、放射線被ばくを低減するために、計装・制御貫通フランジ構造は、上部炉内構造物パッケージの一体的部分として取り外すのが好ましい。図3、4に示すモジュール式小型炉の運転に関しては、「Pressurized Water Reactor Compact Steam Generator」と題する2012年6月13日に出願された米国特許出願第13/495,050号に詳細な説明がある。
【0035】
本発明の実施態様の装置および方法は、従来型加圧水型原子炉については、図6に示すように、原子炉容器フランジ64と原子炉蓋体フランジ68との間に貫通フランジ66を導入する必要がある。これは、前出の米国特許出願第13/457,683号で記述されているような或る特定の小型炉について必要とされる追加の貫通部のようなもので、1つのフランジは実質的に制御棒駆動機構用の電力専用に、また、もう1つのフランジは炉内計装装置用として使用される。従来型加圧水型原子炉の場合、図6に示すように単一の貫通フランジ66が必要である。前述のように、炉心出力および/または炉心出口温度の測定に従来から使用されている炉内計測器は、燃料交換に先立って燃料集合体から引き出す必要がある。この計測器はシンブル管の中に収められており、接続ケーブルが貫通フランジから燃料集合体へと延びる。このシンブル管は、一次圧力バウンダリを形成し、計測器を原子炉冷却材から防護する。
【0036】
図7に示すのは、図5に示す一体型加圧水型原子炉の上部炉内構造物パッケージの部分拡大図である。上部および下部貫通フランジ(70、66)をさらに拡大した断面図を図8に示す。ここに示す構成の一体型加圧水型原子炉下部貫通フランジ66は、原子炉容器10の外壁と、上部支持集合体46から垂直上方に延びる内壁76との間を延びている。フランジ66には、制御棒駆動装置78に電力を供給するためのコネクタと電線用導管が搭載されており、上部貫通フランジ70には、炉内計装ケーブル80の信号を伝えるためのコネクタと電線用導管が搭載されている。燃料交換時、蓋体12を取り外した後、上部炉内構造物26を取り外す前に、上部貫通フランジ70が持ち上げられる。燃料集合体22の中へ下方に延びる計装シンブル82は、上部炉内構造物26の中で支持される。炉心14のすぐ上にある炉心支柱48の中心部には軸方向に延びる中央通路が穿孔されており、計装シンブルが炉心に到達するための導管となっている。上部支持板46の上には、支柱48を通る中央通路に整列した細管84がある。この細管84は、上部炉内構造物26の構造体86の中で支持されている。支柱48は炉内計測器を支持し、燃料交換後に原子炉の再組立を行うにあたり貫通フランジ70を引き下げるとき炉内計測器が座屈しないようにする。管84は、上部貫通フランジ70に接続された格子状構造体88に接続および支持されており、上部貫通フランジとともに昇降する。この細管84は支柱48の中を摺動し、貫通フランジ70が昇降する際に2体の集合体を整列状態に保つ。貫通フランジ70が最下点に到達するまでは、支柱48と細管84との間に比較的大きな隙間が保たれる。この最下点で、管84の細くなった区間90が、支柱48の厚肉で中央通路が狭くなった区間に係合し、締り嵌め状態となる。一体型加圧水型原子炉の設計に係わる図5、6、7からわかるように、炉内計装装置貫通フランジ70が動かされる全範囲において、細管84は支柱48の中で係合状態のままである。上部貫通フランジ70が引き上げられる際、制御棒駆動機構78への電力ケーブルを搭載した下部貫通フランジ66は、上部支持集合体46の垂直区間76に固着した、静止状態のままであるのが好ましい。あるいは、下部貫通フランジ66を上部貫通フランジ70に取り付けるか、両貫通フランジを単一ユニットとして製作することにより、両者をともに昇降させてもよいことがわかる。ただし、後者の構成は制御棒駆動機構への電力ケーブルをかなり弛ませる必要があり、弛みを収容しなければならないので、前者の構成ほど望ましいものではない。
【0037】
図9、10、11、12、13は、図5に示す一体型加圧水型原子炉の分解順序を示している。図9に示すのは、容器蓋体12が容器10を密閉し、フランジボルト74が定位置に取り付けられ、計装シンブル82が完全に炉心に挿入された、組立て完了状態の原子炉である。図5〜18に示す設計の上部炉内構造物は、図2に示したものとは若干異なる。図5〜18に示す設計は、上部炉内構造物パッケージが延伸型で支柱48が長くなっているのに対し、従来型加圧水型原子炉では、案内管54が上部支持板46と上部支持集合体の支持構造体86との間にある。図10に示すのは、一体型加圧水型原子炉の分解工程の第1段階であり、この段階で蒸気発生器18を含む蓋体12が取り外される。図11に示すのは、上部貫通フランジが引き上げられ、これにより炉内計装シンブル82が燃料集合体22から引き抜かれた状態である。図12は、上部炉内構造物が引き上げられた状態を示し、図13は、上部炉内構造物が完全に取り外された原子炉容器を示す。
【0038】
図14、15、16、17、18は、従来型加圧水型原子炉を改良した設計に対応する分解順序を示している。加圧水型原子炉において、制御棒駆動機構の駆動棒行程ハウジング56は原子炉蓋体12を貫通しており、同駆動機構は蓋体の上方に位置するので、制御棒機構のケーブル配線が原子炉容器内に入ることは決してない。現在の慣行として、従来型加圧水型原子炉の燃料を交換する場合、蓋体12の取外しに先立って制御棒駆動棒をハブのところでスパイダ集合体から切り離し、駆動棒を蓋体とともに取り外す。図6の再掲である図14は、フランジボルト74によって蓋体が固定された組立て完了状態の加圧水型原子炉を示している。図15は、制御棒駆動棒とともに蓋体12が取り外された状態を示している。図16は、上部貫通フランジ70(ただしこの構成では下部貫通フランジがない)が引き上げられ、炉内計装シンブル82が炉心14から引き抜かれた状態を示す。図17は、上部炉内構造物が部分的に取り外された状態を示し、図18は、炉内構造物が完全に取り外されて貯蔵場所へ搬出された状態を示す。燃料交換後の原子炉の組立ては、上述の工程を単に逆にしたものである。原子炉容器を再び組立てる際、炉内構造物を容器内の炉心上方に配置した後、貫通フランジを原子炉容器フランジに接触するまで引き下げる。
【0039】
蓋体フランジ68、上部貫通フランジ70、下部貫通フランジ66および原子炉容器フランジ64の各フランジ間の一次圧力バウンダリの密閉状態は、1対のOリング92によって維持され、密閉状態を監視するためにリークオフライン94が使用される。各フランジ接続部に、1対のOリング92を使用する。フランジを貫通する孔94によりOリング92の対の間の隙間を連通させると、単一セットのリークオフラインを使用できる。このリークオフラインは、リークオフ貯留域(図示せず)を共通の排出先とする原子炉容器フランジ64のリークオフラインに接続するので、これらのリークオフラインは燃料交換時にプラントリークオフ監視システムへ接続されたままである。
【0040】
前述したように、一体型加圧水型原子炉の場合、2つのフランジ(66、70)を使用して、原子炉圧力バウンダリを貫通する貫通部を導入してもよい。一部の設計では、フランジ(66、70)の間の内部ギャップ108を介して、主冷却材戻り流路102と上部炉内構造物との間で炉心バイパス流が生じる可能性がある。この構成に係る好ましい実施態様には、炭素鋼とステンレス鋼の熱膨張率の違いを利用した密封装置96が含まれる。T形の断面を持つリングであるこの装置は、フランジのうちの1つに取り付けられる。同装置96は、このT形リングの腹部98を貫通するねじ込み留め具100によって固定される。この腹部を貫通するクリアランスホールには細溝が付いており、原子炉の昇温時にリングが膨張できるようになっている。原子炉を組立てる際、シールとフランジとの間に大きな隙間がある。プラントの昇温とともに、ステンレス鋼リングが原子炉フランジより速く膨張し、構成機器間に圧力が生じ、必要な密閉がえられる。圧力差は比較的小さく、例えば10〜20psi(69〜138kPa)の範囲である。フランジの1つに取り付けられた延伸スリーブ104は、バイパス流量を制限し、一次冷却材が1次流体の流路102にあるフランジを通過する際の圧力降下を抑えることもできる。
【0041】
本発明の特定の実施態様について詳しく説明してきたが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替への展開が可能である。したがって、ここに開示した特定の実施態様は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何らも制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物である。
図1
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