特許第6334586号(P6334586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6334586電気駆動車両の車載充電器を設定するための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334586
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】電気駆動車両の車載充電器を設定するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 11/18 20060101AFI20180521BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20180521BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   B60L11/18 C
   H02J7/00 P
   H01M10/44 A
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-39597(P2016-39597)
(22)【出願日】2016年3月2日
(65)【公開番号】特開2016-163539(P2016-163539A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2016年3月3日
(31)【優先権主張番号】10 2015 103 193.0
(32)【優先日】2015年3月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100098914
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 伸行
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル スペッサー
【審査官】 笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0181983(US,A1)
【文献】 特開2009−100606(JP,A)
【文献】 特開2014−230332(JP,A)
【文献】 特開2012−217329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 11/18
H01M 10/44
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気駆動車両の車載充電器(10、12)を設定するための方法(10)であって、
前記車載充電器(10、12)により、前記車両の充電ソケット(18)のプロキシ抵抗が問い合わせを実行される(44、68)ことと、
前記プロキシ抵抗が前記車載充電器(10)により検出された(46)場合、前記車載充電器(10)のマスター構成(48、50、52)が実行されることと、
前記プロキシ抵抗が前記車載充電器(12)により検出されなかった(70)場合、前記車載充電器(12)のスレーブ構成(72、74、76)が実行されることと、
によって特徴付けられる方法(10)。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記マスター構成(48、50、52)が実行される場合、前記車載充電器(10)のプログラマブルロジックコントローラが起動されることと、
前記スレーブ構成(72、74、76)が実行される場合、前記プログラマブルロジックコントローラが停止されることと、
によって特徴づけられる方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、
前記マスター構成(48、50、52)または前記スレーブ構成(72、74、76)の間、前記車載充電器(10、12)が、前記車載充電器(10、12)に格納されたCANマトリックスを構成する(50、74)ことと、
前記マスター構成(48、50、52)または前記スレーブ構成(72、74、76)の間、前記車載充電器(10、12)が、前記車載充電器(10、12)の履歴メモリを構成する(52、76)ことと、
によって特徴づけられる方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、
前記マスター構成(48、50、52)の後、前記車載充電器(10)が前記車両のCANを経由して信号を伝送し(54)、所定の期間(58)、さらなる車載充電器(12)による前記信号の確認を待つことと、
前記期間(58)の間、前記確認がない(60)場合、前記車載充電器(10)が個別の作動としてそれ自体を構成する(62)ことと、
個別の作動の間、診断を実行する(64)ことと、
によって特徴づけられる方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記さらなる車載充電器(12)が前記期間(56)内に前記信号を受信する(82)場合、前記さらなる車載充電器(12)が対の作動としてそれ自体を構成し(84)、および前記CANを経由して前記確認を伝送することと、
前記車載充電器(10)が前記確認を受信し(86)、および前記車両の前記対の作動を構成する(88)ことと、
によって特徴づけられる方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
前記車載充電器(10)が前記対の作動を構成した(88)後、前記車載充電器(10)が充電パワーの計算を前記対の作動に調整する(90)ことと、
前記対の作動のパラメータ化が実行される(92)ことと、
前記CANを経由する通信が開始され(94)、設定が前記車載充電器(10、12)に記憶されることと、
によって特徴づけられる方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、
前記スレーブ構成(72、74、76)の後、前記車載充電器(10)が前記車両のCANを経由して信号を受信するための準備をする(78)ことと、
所定の期間(80)待つことと、
によって特徴づけられる方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法(30)を実行するための装置(10、12)であって、
車両の充電ソケット(18)のプロキシ抵抗に問い合わせを実行する(44、68)ための手段と、
前記プロキシ抵抗が存在する(46)場合、前記車両の車載充電器(10)のマスター構成(48、50、52)のための手段と、
前記プロキシ抵抗が存在しない(70)場合、前記車載充電器(12)のスレーブ構成(72、74、76)のための手段と
によって特徴づけられる装置。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法(30)の全てのステップ(44〜94)を実行するように設定されたコンピュータプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のコンピュータプログラムを記憶している機械可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気駆動車両の車載充電器を設定するための方法に関する。本発明はまた、対応する装置、対応するコンピュータプログラムおよび対応する記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
電気駆動車両(ハイブリッドまたは電気車両)は、その走行用(トラクション)バッテリが固定の電力供給システムとの電気接続によって充電可能であるので、自動車技術においてプラグイン車両として知られている。特に急速充電のために、複数の車載充電器(OBC:on−board charger)をそのような車両に配置可能である。そのような場合、第1の車載充電器だけが、車両の充電ソケットと電気的に接続され、標準として「マスター」として論理的に接続される一方、他方の(任意選択の)車載充電器は、「スレーブ」として論理的に接続され、通信ラインを経由してのみ「マスター」と接続される。
【0003】
(特許文献1)によれば、自己テストを実行する充電器のスイッチオン工程を含む方法によって充電器ネットワークが設定される。充電器は通信手段を経由してネットワークと通信し、それ自体をマスターとして設定し、バッテリパックにエネルギを送出可能である。
【0004】
(特許文献2)は、車両バッテリを第1充電装置および第2充電装置で充電するように車両で使用するための充電システムを開示する。充電装置は車両バスに接続される。各充電装置は、マスターディスプレイデジタル入力を有し、その役割をマスター充電装置またはスレーブ充電装置として決定するために入力をデコードする。マスター充電装置は、マスターノードメッセージレコードが使用されるような方法で車両バスとのその接続を構成する。スレーブ充電装置は、スレーブノードメッセージレコードが使用されるような方法で車両バスとのその接続を構成する。
【0005】
最後に(特許文献3)は、並列にバッテリに接続された2つの充電器によって制御される電流によってバッテリを充電するためのツイン充電器システムを記載し、充電器の一方は電圧制御モードに従って作動され、他方の充電器は電流制御モードに従って作動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2 618 451 A2号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2012 200 489 A1号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10 2011 017 567 A1号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、独立請求項による、電気駆動車両の車載充電器を設定するための方法、対応する装置、対応するコンピュータプログラムおよび対応する記憶媒体を提供する。
【0008】
この手法は、各車載充電器に(すなわち「マスター」および「スレーブ」の両方に同時に)標準ソフトウェアを提供するという基本的な考えに基づき、このソフトウェアは、初めて車両が固定電源システムに接続されるときに自動的に適合化される。この場合、車両の充電ソケットに電気的に接続される車載充電器は、特に「マスター」として構成される。充電ソケットに電気的に接続されていない追加の車載充電器は、「マスター」と通信するための「スレーブ」として構成され、これによりシステム(車両に配置される車載充電器の数に依存するが)は、最適な充電パワー(例えば11kWまたは22kW)になるよう自動的に構成される。
【0009】
これは、「マスター」用および「スレーブ」用のソフトウェアがまとめて、メンテナンスされ、補修され、そして試験され、加えて、ソフトウェアが車両の製造の間に一度だけインストールされればよいという利点を有する。
【0010】
本発明のさらなる有利な改良例は、従属特許請求項に記載される。特に、マスターまたはスレーブの自動的な構成が、充電ソケットのプロキシ抵抗(Proxy-Wiederstand)に問い合わせを実行することによって提供される。このプロキシ抵抗は一般に、充電プラグが充電ソケットに差し込まれたときを検出するように使用され、充電プラグは、プロキシ抵抗と並列に電気的に接続されかつ車載充電器の論理ユニットを使用して評価される一時的抵抗を含む。充電プラグが挿入されなかった場合にも、電圧は車載充電器の論理ユニットを使用して検出可能であり、この電圧は充電ソケットを検出するために使用可能である。
【0011】
加えて、車載充電器内に標準として存在するプログラマブルロジックコントローラ(programmable logic controller, PLC)の機能の範囲を車載充電器がマスターとして接続されるときだけ起動されるような対策も講じられる。スレーブとして接続された車載充電器内のPLC機能を停止することによって休止電流も節約される。
【0012】
本発明の1つの例示的実施形態を図面に示し、以下でより詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による方法が基づく状況を示す。
図2】方法の簡素化されたプログラムフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1はその状況を示す。これによれば、マスター/スレーブ概念が利用可能である。マスター車載充電器10は、充電ソケット接続部16を経由して充電ソケット部18の全体に接続され、全ての挿入手順を検出し、実行する。対照的に、スレーブ車載充電器12は、追加パワーを提供するだけである。この概念は、例えば、公共のインフラで走行用バッテリ14を急速充電することを可能にするために提供される。充電プロセスを制御する全ての関連データは、通信経路(controller area network、CAN)を経由してマスター10とスレーブ12の間で交換される。マスター車載充電器10は充電ソケット18に常時接続されるが、スレーブ12は交流分配器20、直流分配器22およびマスター10との通信ラインにだけ接続される。
【0015】
図2は、例として、図1による状況における本発明による方法30の順序を示す。
【0016】
方法30の開始点は、車両への車載充電器10、12の設置(インストレーション)32によって形成される。車載充電器10は、とりわけ、充電ソケット18、交流分配器20、直流分配器22および通信ラインに接続される(34)が、他方の車載充電器12は交流分配器20、直流分配器22および通信ラインにだけ設置される36。車載充電器10はここで充電ソケット18に接続される(38)が車載充電器12は充電ソケット18に接続されない(40)。
【0017】
図2に斜線が引かれた形態で示される以下のステップは、基礎をなすアルゴリズムの学習フェーズに割り当てることができる。
【0018】
車載充電器10の場合、充電ソケット18のプロキシ抵抗が最初に問い合わせを実行される(44)。プロキシ抵抗は存在する(46)ので、車載充電器10は、その対応するプログラマブルロジックコントローラが起動されることにより、マスターとしてコード化される(48)。このマスター構成48、50、52の間、車載充電器10は、一方で、マスターとして車載充電器10に記憶されたCANマトリックスを構成し(50)、従って、後続のスレーブ車載充電器12の充電を制御するための命令セットを起動する。他方で、車載充電器10は、マスターとしてその履歴メモリを構成し(52)、従って、とりわけ、車載充電器10による22kWの充電要求の条件を決定する。
【0019】
上記のマスター構成48、50、52の後、車載充電器10は、CANで信号(フラッグ)を伝送し(54)、所定の期間、好ましくは数秒、スレーブとして提供された別の車載充電器12によるそれに対する確認を待つ(タイムアウト58)。この期間にわたり車載充電器12による肯定応答がない場合(60)、車載充電器10は、11kWの合計充電パワーによる個別の作動(スタンドアロン)のためにそれ自体を構成し(62)、および対応する診断を実行し得る(64)。
【0020】
しかしながら、充電ソケット18に接続されない(66)車載充電器12もそのプロキシ抵抗に問い合わせを行う。プロキシ抵抗はここに存在しない(70)ので、車載充電器12は、マスター10にのみ保存されるプログラマブルロジックコントローラが起動されないおかげで、スレーブとして構成される(72)。
【0021】
スレーブ構成72、74、76の間、車載充電器12はまた、スレーブとしてその中に記憶されたCANマトリックスを構成し(74)、従って、マスター10による充電を制御するための命令セットを起動し、これはまたスレーブとしてその履歴メモリを構成し(76)、従って車載充電器12による22kWの充電要求の状況を決定する。
【0022】
このスレーブ構成72、74、76の後、車載充電器12はCANで信号を受信するための準備をする(78)。このために予め決定された期間80の間、車載充電器12は現在のシナリオにおいて実際に信号を受信し(82)、22kWの合計充電パワーによる対の作動のためにそれ自体を構成し(84)、それに対する確認をCANを経由してマスター10に伝送し(84)、マスター10は次にその確認を受信する(86)。
【0023】
与えられた肯定応答を考慮して、車載充電器10はここで車両の22kW充電システムを構成し(88)、充電パワーの計算を22kWに調整し(90)、適応的にシステムを自動的に22kwにパラメータ化し(92)、車両内の交信を開始し(94)、マスター10におよびスレーブ車載充電器12に全ての設定を記憶する。
【符号の説明】
【0024】
10 マスター車載充電器
12 スレーブ車載充電器
14 けん引バッテリ
16 充電ソケット接続部
18 充電ソケット
20 交流分配器
22 直流分配器
30 方法
48、50、52 マスター構成
56 期間
58 タイムアウト
72、74、76 スレーブ構成
80 予め決定された期間
図1
図2