(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の主たる課題は、クレープ紙を積層した紙製のキッチンペーパーにおける吸液性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔請求項1記載の発明〕
中層及び両外層からなる3プライのキッチンペーパーであって、
各層が坪量の15〜35g/m
2のクレープ紙であり、
両外層にエンボスが付与され、各外層のエンボスは、一方の外層の一つのエンボス凸部の頂部が他方の外層の一つのエンボス凸部に対面するように位置され、
両外層のエンボスパターンが、個々のエンボスが離間して規則的に複数個配列されたエンボスセクションと、このエンボスセクション間にエンボスが形成されていない、直線状に交差する格子状の抜き柄セクションが形成されたエンボスパターンであり、
両外層のエンボス凸部の頂部と中層とが接着剤により接着されて3層が積層一体化され、
中層のMD方向の伸び率が外層のMD方向の伸び率よりも3〜15%高く、吸液時に中層が両外層よりも伸びる、ことを特徴とするキッチンペーパー。
【0008】
〔請求項2記載の発明〕
中層にサイズ剤が含有されている請求項1記載のキッチンペーパー。
【0009】
〔請求項3記載の発明〕
中層に、深さ0.1〜1.0mm、面積0.1〜1.5mm
2のエンボスが、エンボス密度20〜200個/cm
2で付与されている請求項1又は2記載のキッチンペーパー。
【0010】
〔請求項4記載の発明〕
中層及び両外層からなる3プライのキッチンペーパーの製造方法であって、
クレープ率15〜26%で抄造した坪量が15〜35g/m
2の外層用のクレープ紙を製造する工程と、
クレープ率18〜41%でかつ外層用のクレープ紙よりもクレープ率を3〜15%高めて抄造した坪量が15〜35g/m
2の中層用クレープ紙を製造する工程と、
外層用のクレープ紙に対して、
個々のエンボスが離間して規則的に複数個配列されたエンボスセクションと、このエンボスセクション間にエンボスが形成されていない、直線状に交差する格子状の抜き柄セクションが形成されたエンボスパターンで、エンボスを付与する工程と、
外層用のクレープ紙のエンボス凸部頂部に接着剤を付与する工程と、
二枚の外層用のクレープ紙の接着剤を付与したエンボス凸部頂部同士を一方の外層の一つのエンボス凸部の頂部が他方の外層の一つのエンボス凸部の頂部に対面するように位置させる工程と、
その二枚の外層用のクレープ紙の接着剤を付与したエンボス凸部頂部の対面関係を維持したまま中層用のクレープ紙の表裏に外層用クレープ紙を接着する工程と、を有することを特徴とするキッチンペーパーの製造方法。
【0011】
(作用効果)
本発明のキッチンペーパーは、3プライ構造であり積層数が多く、主流の2プライ構造のものよりも吸液性に係る液保持性や吸液量、液保持量に優れ、裏抜けがし難い。それでいて、両外層のエンボス凸部の頂部と中層とが接着剤により接着されて3層が積層一体化されている構造であるため、表裏の各外層は中層に対して接着部以外が浮いた状態となっているので、3層の構造でありながら硬質な感じがなく、ふんわり感が感じられる。
【0012】
また、本発明のキッチンペーパーは、エンボス凸部の頂部と中層とが接着しているため両外層と中層との間に空隙があり、しかも両外層の凸部が対向して位置しているため、両外層間の空隙に中層が自由な状態で存在するようになっている。よって、水分、油分等の液体が両外面から吸収されると、中層と外層との間の空隙に液が移行され、その後に中層に吸収保持される。
【0013】
そして、特に本発明のキッチンペーパーは、所定の坪量で中層が外層よりも所定割合MD方向の伸び率(以下、単に伸び率ともいう)が高くなっているため、吸液時に両外層と中層の伸びに差が生じ、特に中層がより伸びる。各層はエンボス凸部の接着剤によって部分的に互いに固定されているため、外層も伸びるがそれよりも中層が伸びるため中層の行き場が無くなる。その結果、本発明のキッチンペーパーは、吸液時に両外層間のエンボス空隙が広くなるとともに、中層がその空隙内を埋める作用する。
【0014】
この作用によって、本発明のキッチンペーパーは、吸液時に厚み、嵩高さが発現し、さらにエンボス内空間が密になってエンボスが潰れがたくなるとともに、液保持性や吸液量、液保持量が向上する。このように、本発明のキッチンペーパーは、単位質量当たりの液保持性や吸液量、液保持量が向上する。さらに、吸液によって液保持性や吸液量、液保持量が増加するため、洗剤等を含ませて拭き取り操作を行なう清掃用途にも好適に使用できるようになる。
【0015】
特に、この効果は、中層にサイズ剤を付与して水や油等の液体の浸透を遅延させるようにすると、吸液時により嵩高さが損なわれず、嵩高でかつ裏抜けしにくくなり、液保持性や吸液量、液保持量をより高くすることができる。
【0016】
他方で、キッチンペーパーの多くはロール状の製品とされ、このようなロール状の製品はキッチンペーパーが張力をもって巻かれている。本発明のキッチンペーパーをこのようなロール形態とすると、ロールから引き出したり、その後に裁断したりすると、引っ張りから開放され、その際に両外層と中層の伸び率の差により、各層の収縮性に差が発現して厚みが増加する。すなわち、本発明のキッチンペーパーは、各層はエンボス凸部の接着剤によって部分的に互いに固定されているとともに、中層の伸び率が高くなっているため、ロール形態の張力のある状態から開放されると、隣接する接着部同士が近づくように作用し、両外層のエンボス間が膨出するように浮き上がり、厚みが増加するとともに、表面にランダムな凹凸が生じて嵩高さが発現するようになる。この作用によって、ロール形態から使用時に厚み・嵩高さエンボス間空隙が増加するようになり、この点でも吸液性が向上するようになる。
【0017】
以上の効果は、特に両外層のエンボスパターンが、深さ0.2〜2.0mm、面積0.5〜40mm
2のエンボスが、エンボス密度10〜50個/cm
2で付与されているものであると特に効果が顕著となる。
【0018】
また、中層に、深さ0.1〜1.0mm、面積0.1〜1.5mm
2のエンボスが、エンボス密度20〜200個/cm
2で付与されていると、特に伸び差が発現しやすく効果が顕著となる。
【0019】
さらに、本発明のキッチンペーパーでは、両外層にエンボスが付与されているため意匠性や汚物の掻き取り性にも優れるし、空隙の確保も十分になされる。
【発明の効果】
【0020】
以上のとおり本発明によれば、クレープ紙を積層した紙製のキッチンペーパーにおける吸液性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次いで、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら以下に詳述する。
図1は、本実施形態のキッチンペーパー1をロール状に巻き取ったキッチペーパーロール100であり、
図2は本実施形態のキッチンペーパー1の断面図である。
【0023】
本実施形態のキッチンペーパー1は、両外層11A,11B及び中層11Cからなる3プライであり、各層11A,11B,11Cがクレープ紙で構成された紙製のキッチンペーパー1である。このキッチンペーパー1は、両外層11A,11Bにエンボス12,12…が付与されており、その両外層11A,11Bのエンボス凸部の頂部12a,12bが対向するように位置されている。中層11Cは、両外層11A,11Bの間に介在するように位置し、その中層11Cと両外層11A,11Bのエンボス凸部の頂部12a,12bとが接着剤40により接着されて3層は積層一体化されている。
【0024】
本実施形態のキッチンペーパー1は、クレープ紙である各層11A,11B,11CのMD方向の伸び率に差があり、特に中層11Cの伸び率が両外層11A,11Bよりも3〜15%高くなっている。この伸び率はクレープ紙ではクレープにほぼ起因するため、
図3に示すように水、油等の液体Wが吸収されると両外層11A,11B、中層11Cともにクレープが伸びて各層11A,11B、11Cともに伸びるものの、その伸びに差が生じ、特に中層11Cがより伸びる。このとき中層11Cと両外層11A,11Bとは接着剤40で部分的に固定されているため、両外層11A,11Bの伸びにより両外層間11A,11Bの空隙13が広がり、それとともにより伸びて行き場の無くなった中層11Cが空隙13内の隙間を埋めたり、両外層11A,11Bを押し上げたりする。
【0025】
また、本実施形態のキッチンペーパー1は、
図1に示す通常の製品形態のロールとされている。ロール形態とするにあたっては、キッチンペーパーに適切な張力を掛けつつ紙管に巻く必要がある。これは紙管に対する巻き付けが弱いとロール形態とした際に、紙管が抜けおちたり、竹の子状に紙管部分が端面から飛び出したりしてしまうからである。
【0026】
また、本実施形態のキッチンペーパー1は、使用時にロールから引き出したり、裁断したりした際に、ロール巻き取り時の張力から開放され各層11A,11B,11Cが収縮差を持って収縮し、厚みが増加するとともに、表面にランダムな凹凸が生じて嵩高となる。
【0027】
なお、キッチンペーパーを巻き取ったキッチンペーパーロールでは、通常キッチンペーパーの長手連続方向が抄紙工程の流れ方向(MD方向)となり、キッチンペーパーロールの幅方向が、MD方向に直行する方向(CD方向)となる。図示の形態のキッチンペーパーロール100もこのようになっている。
【0028】
上記の伸びの差による各効果は、伸び率の差が3%未満ではその差が十分に発現せず、15%を超えると製造が困難となる。なお、各層11A,11B,11Cの伸び率は、ともに20〜35%の範囲にあるのが望ましい。20%未満では、製造時に破断しやすく、35%を超えると製造が難しくなる。なお、両外層11A,11Bの伸び率は、差がないほうが望ましく、その差は2%未満とするのがよい。
【0029】
各層11A、11B,11CのMD方向の伸びは、クレープ紙ではクレープに起因するところが大きいため、伸び率に差を設けるには、各層11A,11Bを構成する原紙の抄造時のクレープ率を調整すればよい。このとき、クレープ率を15〜41%の範囲でその差を3〜15%とすると、上記伸び率及び伸び率の差とすることができる。
なお、クレープ率とは、((ヤンキードライヤーの周速)−(巻き取りリールの周速))/(ヤンキードライヤーの周速)×100(%)で算出される値である。
【0030】
ここで、本実施形態における伸び率とは、各層を構成するクレープ紙が破断するまで長手方向に引張力を付与した際のMD方向の単位長さ当たりの伸び量である。測定は、JIS P 8113における引張破断伸びに準じて行なう。試料は、キッチンペーパーを3層(3プライ)一体状態で任意の箇所で長手方向に沿って100mmの位置でマーキングし、そのマーキング位置を含むようにして長手方向に150mm、幅方向に沿って25mmの矩形に裁断し、その裁断したものを各層に剥がして採取したものとする。
【0031】
測定は、剥がした試料毎に行なうこととし、試料の固定は先にマーキングした箇所とする。なお、マーキングを行なうのは各層を剥がす際に少なからず伸びが生ずるためその伸びを考慮するためである。伸び率は、異なる5箇所から裁断して採取した試料の測定値の平均値とする。
【0032】
他方、各層11A,11B,11Cを構成するクレープ紙の1プライ当たりの坪量は15〜35g/m
2である。ここでの坪量はJIS P 8124に基づくものである。坪量が上記範囲外であると伸び率の差による厚み増加、吸液性向上の効果が得られないことがある。また、各層11A,11B,11Cの坪量が15g/m
2未満であると柔らかさの点においては好ましいが、使用時の適正な強度の確保することが難しくなる。他方、坪量が35g/m
2を超えると、硬くなり、折り畳みや、拭取りがし難くなる。
【0033】
なお、各層11A,11B,11Cの坪量は同一でもよいが、異なっていてもよい。異なる場合には、両外層11A,11Bに対して中層11Cの坪量が高くなるように差を設けるのがよい。吸収した水、油の中層での保持量が多くなり裏抜け防止性が高まる。
【0034】
他方、本実施形態のキッチンペーパー1には、中層11Cに好ましくサイズ剤が含有される。サイズ剤の含有によって、中層11Cの水、油の吸収が遅延され、中層11Cに液が吸収される時間が長くなり、クレープの伸びが促進される。また、外層11A,11Bと中層11Cと伸びに時間差が生じて空隙13に液が保持されやすくなり、吸液量、液保持量吸液量も増加する。サイズ剤の種類は特に限定されない。アルケニルコハク酸無水物、ロジンなどが例示できる。サイズ剤の含有量は適宜に調整すればよいが、原料パルプ1t当たり2.0〜7.0kg添加するのが望ましい。この範囲であると、サイズ剤による吸液性向上の効果が顕著となる。
【0035】
ここで、本実施形態のキッチンペーパー1の各層11A,11B,11Cを構成するクレープ紙は、原料パルプに湿潤紙力剤や乾燥紙力剤などの薬剤を加えて調整した抄紙原料を、クレープ紙抄造技術により抄造した既知のクレープ紙を用いることができる。その原料パルプは特に限定されないが、キッチンペーパーが食材に触れる用途に用いられることから、特にバージンパルプのみをパルプ原料であるのがよく、その場合、特にNBKP(針葉樹クラフトパルプ)とLBKP(広葉樹クラフトパルプ)とを配合したものがよい。その配合割合(JIS P 8120)は、NBKP:LBKP=60〜90:40〜10がよい。NBKPが多いほうが、エンボス12がしっかりと付与されやすく、吸液性の向上効果が発現しやすい。
【0036】
本実施形態に係るキッチンペーパー1の両外層11A,11Bのエンボス12の平面視の具体的形状やそのエンボス12の多数により描かれるエンボスパターンは限定されないが、好ましいエンボス12の形状は、接着剤40の付与性と各層相互の接着性のために頂部12a,12bが平坦なものである。その場合、特に頂部12a,12bの面積が0.75〜4.0mm
2、最も望ましくは1.0〜2.0mm
2であるのがよい。
【0037】
また、好適なエンボス12の深さDは、0.2〜2.0mmである。0.2mm未満では十分な空隙13を確保できず、また、伸びの差による空隙向上効果、それによる吸液性向上効果、嵩高効果を発現させ難くなる。また、2.0mmを超えるとエンボス12が潰れやすくなる。
【0038】
単位面積あたりのエンボス12の好適な個数(エンボス密度)は10〜50個/cm
2である。10個未満では、両外層11A,11Bと中層11Cとの伸び差による空隙向上効果、それによる吸液性向上効果、嵩高効果が十分に発現しないおそれがある。50個を超えるとキッチンペーパー1が硬くなる。
【0039】
本実施形態における特に好ましいエンボスパターンは、
図4に示すように、エンボス12,12…が規則的に多数形成されたエンボスセクションX,X…と、このエンボスセクションX,X…間にエンボスが形成されていない、直線状に交差する格子状の抜き柄セクションYが形成されたエンボスパターンである。抜き柄セクションYにおいては外層と中層は接着されない。
【0040】
このエンボスセクションXと抜き柄セクションYを設けたエンボスパターンは、エンボスセクションXでZ方向(深さ方向、紙層方向でもある)に水分が拡散しやすく、抜き柄セクションYで平面方向へ水分が拡散しやすくなり、Z方向と平面方向とにおける水分の拡散性のバランスがよく、液保持性や吸液量、液保持量に加え吸液速度にも優れたものとなる。
【0041】
なお、抜き柄セクションYは、格子状である限り、正四角形の格子であるほか、長方形の格子や斜め格子形状であってもよい。格子の一辺の長さは1.731〜50.0mm、好適には15.0〜50.0mmで、幅が0.824〜20.0mm、好適には1.2〜5.0mmが望ましい。この格子長さが過度に短いと、エンボスセクションXによる十分な吸液性向上が得られない。反対に、格子長さが過度に長いと、抜柄セクションYによる平面方向への拡散が十分得られない。また、格子幅が過度に短いと、抜柄の空間が小さく拡散前に抜き空間が液体により飽和してしまうため、吸液速度が得られない。反対に、格子幅が過度に長いと、抜柄部で各層が貼りつくことで抜柄の空間が維持されず、拡散せず、伸び差の効果の発現し難い。
【0042】
なお、抜き柄セクションYの面積はエンボスセクションXの面積の10.0〜50.0%、特に20.0〜30.0%が望ましい。
【0043】
他方、本実施形態のキッチンペーパー1における両外層11A,11Bと中層11Cとを接着する接着剤40は、水溶性接着剤であるのが望ましい。好ましい水溶性接着剤は、PVA(ポリビニルアルコール)、CMC(カルボキシメチルセルロール)、アクリル系エマルジョンが例示できる。
【0044】
他方、本実施形態のキッチンペーパー1は、接着部分の平面視での総面積は、全面積(平面視における一方面の面積)の5.0〜30.0%、好適には9.0〜25.0%、最も望ましくは10.0〜14.5%である。5.0%未満では接着が不十分で吸液性の向上効果が十分ではなくなるおそれがあり、25.0%を超えると接着剤によってキッチンペーパー全体が硬くなりすぎるおそれがある。
【0045】
他方、図示しないが、本実施形態のキッチンペーパー1における中層11Cにもエンボスが付与されていてもよい。但し、中層11Cのエンボスは、いわゆるマイクロエンボス加工とも称される、比較的深さが浅く面積の小さい、細かいエンボス12が多数、紙面の広範、特に紙面90%以上のほぼ全体的に配された態様とするのが望ましい。少なくとも両外層11A,11Bのエンボス12よりもエンボス深さが浅く、面積が小さいものとする。エンボス密度は両外層11A,11Bよりも高くてもよい。
【0046】
中層11Cにエンボスを付与したものとする場合には、具体的には、上記両外層と同様の範囲から両外層との関係で適宜設計すればよい。すなわち、中層にエンボスを付与するのであれば、エンボスの面積0.1〜1.0mm
2、深さ0.2〜1.5mm、エンボス密度20〜200個/cm
2の範囲で両外層よりもエンボス深さが浅く、面積が小さい条件を選択すればよい。特に、この中層11Cのエンボスは、紙面の10%以上の領域に設けるのが望ましい。
【0047】
次いで、本実施形態のキッチンペーパー1の製造方法を
図5、
図6を参照しながら説明する。
【0048】
本実施形態のキッチンペーパー1は、各層に係るクレープ紙10a,10b,10cを巻き取った原反ロール10A,10B、10Cから、それぞれクレープ紙10a,10b,10cを適宜の速度で繰り出し、
図5(a)に示すように両外層11A,11Bとなる各クレープ紙10a,10bにそれぞれ別途にエンボス12,12を付与し、その後に
図5(b)に示すように両外層11A,11Bとなるクレープ紙10a,10bのエンボス凸部頂部12a、12bにそれぞれ接着剤40を付与し、次に
図5(c)に示すように、その接着剤を塗布した両外層となるクレープ紙の間に中層11Cとなるクレープ紙10cを挟みこみ、
図5(d)に示すように各層11A,11B,11Cに係るクレープ紙10A,10b,10cを接着して積層一体化して製造することができる。
【0049】
原反ロール10A,10B,10Cは、抄紙設備で抄造したクレープ紙を巻き取った所謂一次原反ロール、その一次原反ロールを適宜の直径に巻き直したり、適宜の幅(長さ)に裁断したりして製造した所謂二次原反ロールを用いることができる。
【0050】
両外層11A,11Bとなるクレープ紙10a,10bへのエンボス12,12…の付与は、表面にエンボス形状に対応する多数のエンボス付与凸部が形成された金属製エンボスロール21A,21Bと、この金属製エンボスロール21A,21Bを受ける弾性ロール22A,22Bとで構成される所謂スチールラバー方式のエンボス付与装置20A,20Bで行なうのがよい。スチールラバー方式は、ロールのクリアランス調整がしやすく、ロールに紙粉等が詰まるなどの不具合が生じ難い。
【0051】
そして、両外層11A,11Bとなるクレープ紙10a,10bにエンボス付与を行なう際には、まずクレープ紙10a,10bを弾性ロール22A,22Bに巻き掛け、その弾性ロール22A,22B上を搬送する過程で金属製エンボスロール21A,21Bとの間に通してエンボスを付与し、そのエンボス付与後からクレープ紙が金属製エンボスロールに巻き掛けられた状態で下流へ搬送するようにするのがよい。
【0052】
クレープ紙10a,10bが金属製エンボスロール21A,21B上を搬送されている際に、この金属製エンボスロール21A,21Bに接するように配置した刷版ロール31A,31Bを有する印刷装置30A,30Bによってクレープ紙11A,11Bの表面に接着剤を付与することが可能となる。クレープ紙10a,10bは、エンボス付与時における押圧によって金属製エンボスロール21A,21Bの表面凹凸形状に応じた形状に変形され表面に密着しているため、このようにするとクレープ紙10a,10bのエンボス凸部頂部12a,12bのみに接着剤が好適に付与される。
【0053】
上記印刷装置30A,30Bは、フレキソ印刷機、グラビア印刷機、既知の塗工機、ロール転写以外のスプレー塗布装置等を採用できる。特に、フレキソ印刷機は、刷版ロールが樹脂製で表面に弾性があるため、金属製エンボスロール21A、21B上のクレープ紙10a,10bのエンボス凸部頂部12a,12bに対して接着剤41,42をロール転写するのに特に適する。図示例は、ドクターチャンバー式のフレキソ印刷機としている。
【0054】
他方、図示例の装置構成では、各エンボス付与装置20A,20Bにおける各クレープ紙10a,10bを搬送する金属製エンボスロール21A,21Bの周面同士が対面するように配置されているとともに、その周面が対面する位置に中層11Cとなるクレープ紙10cが挿入されるようになっており、両外層11A,11Bに係るクレープ紙10a,10bと中層11Cとなるクレープ紙10cとが当該位置で接着されるようになっている。なお、中層11Cとなるクレープ紙10cにマイクロエンボス加工を施すのであれば、この前段で行なえばよい。マイクロエンボス加工もスチールラバー方式のエンボス付与装置で行なうのが望ましい。
【0055】
図示の装置では、特に、各金属製エンボスロール21A、21Bの周面が対面する位置において、各金属製エンボスロール21A,21Bの周面に形成されたエンボス付与凸部の頂部同士が対面一致するようにロール径、回転速度等が調整され、両外層となるクレープ紙11A,11Bに付与されたエンボス凸部頂部12a,12b同士が対向して位置されるようになっている。
【0056】
なお、エンボス付与時におけるロール間の線圧は5〜30kg/cm、好ましくは10〜25kg/cm、より好ましくは15〜20kg/cmである。線圧が低いとエンボスが鮮明にならず、線圧が高いとクレープ紙が破断するおそれが高まる。
【0057】
また、弾性ロール22A,22Bは、その表面のショア硬度(Shore hardness)が、40〜70であるのが好ましい。ショア硬度が低すぎると、つまり弾性ロール表面がやわらかすぎると、シート又はシート地が破断するおそれがある。他方、ショア硬度が高すぎると、つまり弾性ロール表面が硬すぎると、エンボスが入らなくなるおそれがある。
【0058】
なお、エンボス12,12…を付与するにあたって、接着剤が乾燥しない範囲で金属製エンボスロール21A,21Bを加熱してもよい。具体的には40〜140℃の範囲とするのがよい。エンボスを鮮明・明瞭に付与できる。
【0059】
図示はしないが、上記の積層一体化により製造されたキッチンペーパー1は、その後に紙管に巻き取って製品径でかつ製品の複数倍幅の中間製品(ログとも称される)とした後、これを裁断してキッチンペーパーが巻かれたロール状の製品とすることができる。
【0060】
なお、上記のロール状の製品の好適な形態は、
図1に示すように、キッチンロールペーパーの直径L1が90〜130mm、幅L2が100〜250mm、紙管径L4が30〜50mm、キッチンペーパーの巻長さ8.8〜30mである。また、キッチンペーパーに、裁断用のミシン目線50が、キッチンペーパー長手方向の100〜300mm間隔L5でシート幅方向に亘って設けられているのがよい。この間隔でミシン目線50を設けると裁断時に厚み増加が発現しやすい。