(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも一個のスライドを前記保存モジュールから取り出す工程では、前記保存モジュール内の前記少なくとも一個のスライドの位置を判断することを特徴とする請求項17記載の機械可読媒体。
前記処理方法は、更に前記少なくとも一個のスライドを除く他のスライドを前記保存モジュールから前記画像化モジュールへ搬送することを特徴とする請求項17記載の機械可読媒体。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について例を挙げて説明するが、添付図面に限定されるものではない。類似の符号は同等の構成要素を示している。なお、以下の記載において「一実施例」というのは必ずしも一個の実施例に限定ということではなく、少なくとも一個の実施例という意味である。
【0011】
以下の説明を通して説明する好適な実施例はあくまで例であり、本発明を限定するものではない。ここでいう「本発明」とは説明する実施例と同等のものをいう。更に、以下に本発明の特徴について言及するが、全ての請求項に記載された装置、方法に当該特徴が含まれなければならないことを意味するものではない。
【0012】
まず、組織の処理、画像化および組織の保存を含む一連の自動操作を実行するシステムと方法について説明する。
図1はシステムによって実行される手順の一実施例を示すフローチャートである(すなわち、処理制御モジュールに接続された処理装置で実行される機械可読プログラムの指示を示すフローチャートである)。まず、ブロック102に示すように、一連の手順100には標本取扱システムがスライドに載置された生体標本を準備する工程が含まれる。生体標本は、例えば人手、運搬手段または自動搬送機によって標本取扱システムへ搬送される。ある病院の例では、試料は現地または遠隔地の医療研究所へ配送される。
【0013】
標本取扱システムでは、スライドに載置された試料は、所望の検査に好適な状態に自動処理される。一実施例では、処理には生体標本を染色し、カバースリップをスライドに付着させる工程が含まれる(ブロック104)。試料の染色は任意である。試料が載置されたスライドは、搬送モジュールへ移送される(ブロック106)。或る実施例では、スライドを
図4〜9と共に後述するロボット移送装置を使って搬送モジュールへ移送している。
【0014】
手順100は、更にスライドの画像化の準備ができているか判断する工程が含まれている(ブロック108)。この判断は、例えばスライドの乾燥時間に基づいて行ってもよい。例えば、カバースリップを付着する異なった方法で行う場合、それぞれ異なった乾燥時間とすることがある。一般的には、ガラスのカバースリップの場合は乾燥に約1日かかり、フィルムのカバースリップの場合は約1時間である。この点について、次の処理(例えば画像化)の準備ができていない(例えば未乾燥の)カバースリップが付着されたスライドは、保存モジュールへ搬送され、更なる乾燥時間を与えられる(ブロック112)。乾燥されたスライドは画像化の準備ができていると判断される。
【0015】
手順100は、更に画像化装置が画像化の準備ができているかどうかの判断を行う工程(ブロック110)を含んでいる。通常、スライド上の試料を画像化するのには、染色、カバースリップ付着およびスライドの乾燥にかかる時間より長くかかる。その理由は、画像化は各スライドについて行わねばならない(すなわち、1回につき1枚)が、染色やカバースリップ付着の作業は多数のスライドについて同時に行うことができる(例えば1バッチのスライドを染色)からである。例えば、スライド画像化装置は、15mm×15mmサイズの組織を20倍のスキャンを行う場合、2.5分から3分で行うことができる。高解像度やZスタックが要求される場合はその時間が倍になる。
【0016】
したがって、画像化装置は10〜24枚のスライドを1時間で処理する。一方、カバースリップ付着装置や染色装置は、最大500枚のスライドを1時間で処理できる。その結果、各スライドがカバースリップ付着装置や染色装置から取り出されても画像化装置の準備ができていないことがしばしばある。もし、画像化装置が準備できていない場合、スライドはカバースリップ付着装置から保存モジュールへ搬送され、画像化装置の準備ができるまで保存される(ブロック112)。
【0017】
画像化装置が使えるときは、スライドは画像化装置まで搬送され(ブロック114)画像化が行われる。画像化装置では、試料のデジタル画像を記録し、コンピュータのメモリに保存される。試料または一群の試料について検査の準備ができたら、試料を検査し、データを診断者および/または自動的に当該データを解析する任意の解析モジュールへ提供する(ブロック116)。なお、「診断者」とは画像データを見る者であって例えば病理学者、外科医、研究者、専門家などである。
【0018】
画像データは、例えばCCD技術を用いたデジタル画像装置で作成することができる。好適には、画像データは診断者が必要に応じてアクセスできるようにしたり、診断者へ電子的に、例えば電子メールやコンピュータのスクリーン上のポップアップ、バナー通知、ページャーのメッセージ、自動電話呼び出しなどによって通知する。他の実施例では、画像データへ診断者がアクセス可能にするか、または任意の解析モジュールへ提供するようにしてもよい。解析モジュールは、例えばパターン認識技術を使って予備診断を行うためのデジタル処理を行い、更なる処理の指示や提案を行うようにしてもよい。
【0019】
ブロック118に示す更なる処理は、更なる生体標本の採集、あるいは追加又は異なった検査手順や染色手順の実行など既に採集した標本に追加処理を行う工程を含む。例えば、画像化の後に試料は搬送モジュールによって保存モジュールまで搬送してもよい。試料の画像は検査され、もし更なる画像化が必要と判断されたときには、試料が搬送モジュールによって保存モジュールから取り出され、画像化のために画像化モジュールへ搬送される。試料の検査、画像化および解析は、システムまたは診断者が完了とするまで継続される。これらの繰り返した試験、検査は、反復処理、試験または検査とみなされる。本発明
の別の実施例では、診断者は解析モジュールが生成した比較データに基づくレポートにアクセス可能にしてもよい。更に別の実施例では、診断者は更に反復処理、試験または検査の指示や実行を行うことができる。
【0020】
図2〜9に生体試料の自動処理システムを示す。これらの図面において、情報伝送路は実線および/または矢印で示し、試料の経路は矢印付二重線で示す。ここで「試料」とは生体試料であって医学的、解剖学的、獣医学的または研究の方式に則って検査される組織または細胞の試料を言う。生体試料には組織標本または試料、および/または生体由来の液体、例えば血液、リンパ液などを含む。図示の実施例は組織試料に関係するものであるが、当該システムおよび方法はそれに限定されるものではない。ここでいう生体試料は、組織等の標本、試料を言う。更に、「スライド」とは生体試料がその上に載置されたものを言う。
【0021】
図示の例では、試料経路は搬送経路であり、研究所や病院の間を物理標本が移動する経路である。一般的な、試料の、一つのステーションまたはシステムのコンポーネントから次への進行方向は、矢印で示されている。処理ステーションは試料の流れの方向に配置されているのが理解できる。更に多くの処理ステーション、少ない処理ステーション、または他の処理ステーションを実際には使用することがある。また、更に多くの試料経路や搬送方向、少ない試料経路や搬送方向、または他の試料経路や搬送方向を実際には使用することもある。ステーションの順番や並びは任意である(例えば、垂直に重ねたり、横に並べたりしてもよい。)。
【0022】
試料経路により示されたように試料を十分に自動搬送できれば、どんな搬送方式でもよい。例えば、
図4〜7と共に詳しく後述するロボット装置によって試料を1個のステーションから次のステーションへ搬送してもよい。ロボットという用語は、広く解釈され、例えばコンベア、移送装置、電機搬送装置・機構、自動制御のリプログラマブル多機能マニュピレータであって3軸、4軸以上のプログラム動作可能な物を含む。ロボット装置は、種々の形状、構造を持ち、目的を達成する。ロボット装置は、アプリケーションプログラム、ルーチンプログラム、一群の指令によって作業を実行するようにしてもよい。プログラムや一群の指令は、一以上の動作を特定し、ロボット装置は独立して、または少なくとも準独立的に実行する。一般的に、プログラムや一群の指令は、動作 (例えば、座標、距離、方向ほか)、タイミングまたはトリガ、さらに動作に関連する情報を特定する。ある実施例では、試料を人手によって1個のステーションから次のステーションへ運ぶようにしてもよい。更に、1つの装置で複数の工程を行い、試料を一つのステーションから次のステーションへ物理的に移動しない実施例もある。
【0023】
図2の実施例において、顕微鏡スライド上の試料は染色モジュール210へ搬送される。試料を染色モジュール210へ搬送する前に、試料を、例えばグロッシングステーション(非液体の試料の場合)、試料を一連の試薬で処理する組織処理装置、パラフィンの浸潤と包埋を行う包埋ステーション、試料を切断する薄切ステーションで処理を行う。薄切ステーションで作成された試料の切片は顕微鏡スライドの上に置かれる。脱パラフィンの必要があるスライドは、染色前にオーブンに入れるか、またはオーブンが内蔵されているか、化学的に脱パラフィン処理を行える染色装置の場合はそのまま染色装置に入れられる。
【0024】
所望により染色または他の試験手順を染色モジュール210で行ってもよい。一実施例では、自動染色装置を使用する。例えば、ヘマトキシリンとエオシン(H&E)による染色を、染色モジュール210で行う。他の染色方法、例えば特別染色(SS)、免疫組織化学的染色(IHC)やイブリッド形成法(ISH)による染色も行うことができる。
図示の実施例では、染色工程に続き、標本は試料経路217を経由してカバースリップを付着させるためにカバースリップ付着モジュール220へ搬送される。
【0025】
染色および/またはカバースリップ付着の工程後、スライドは画像化装置230または保存モジュール202へ送られる。スライドの画像化を遅らせたい実施例では、スライドを保存モジュール202へ送り、画像化の開始まで保存する。異なったカバースリップ付着の方法を採用する場合、それぞれ異なる乾燥時間が必要である。カバースリップが付着されたが未だ次の処理の準備ができていない(例えば未乾燥の)スライドは、試料経路203を経由して保存モジュール202へ搬送される。スライドの準備ができた場合、スライドは試料経路205を経由して画像化装置230へ搬送される。この点、スライド間の乾燥時間の違いは自動システムにより自動的に調整・解消される。
【0026】
実施例によっては、その遅延の基準はカバースリップ付着技術や標本の種類(組織学的、細胞学的、単層スライド、汚れの有無他)に基づき研究所が選択する。例えば、研究所はカバースリップ付着技術とスライド上の標本の種類により、スライドを画像化前に所定時間保存するかどうかの判断を行う。この判断のための情報は、スライドに付いている識別子に含まれている。例えば識別子には、無線周波数識別(RFID)タグや、自動システムへ情報を提供するシステムに備え付けられているリーダにより読み取り可能なバーコードがある。自動システムは識別子を読み取り、指定された処理手順を実行する。この点、カバースリップ付着工程の後、スライドは保存モジュール202へ搬送され、所定の時間保存される。その後、システムは搬送モジュールに警報を発し、保存モジュール202からスライドを取り出し、スライドを画像化するために画像化装置230へ搬送させる。
【0027】
乾燥時間を延ばすために、画像化装置230は画像化を更に遅らせることがある。特に、スライド上の試料を画像化するには通常、染色、カバースリップ付着およびスライド乾燥に要する時間より長い時間が必要である。例えば、従来の商業化されているスライド画像化装置は、15mm×15mmサイズの組織を20倍のスキャンを行う場合、2.5分から3分かかる。高解像度やZスタックが要求される場合はその時間が倍になる。したがって、画像化装置は10〜24枚のスライドを1時間で処理する。一方、カバースリップ付着/染色モジュールは、最大500枚のスライドを1時間で処理できる。その結果、各スライドがカバースリップ付着/染色モジュールから取り出されても、画像化装置の準備ができていないことがしばしばある。スライドに付いている識別子にはスライドの理想的な画像化を行うための情報(例えば10倍スキャン、20倍スキャン、40倍スキャン)が記録されている。識別子を読み取ったらシステムは、画像化装置が理想的な倍率でスライドを画像化するスケジュールを作成する。もし、スライドが画像化の準備ができているのに、画像化装置が所望の準備ができない場合には、スライドは染色モジュール210および/またはカバースリップ付着モジュール220から試料経路203を経由して保存モジュール202に搬送され、画像化装置230が準備できるまで保存される。
【0028】
更に、試料が画像化装置230によって画像化された後、試料スライドを試料経路205を経由して保存モジュール202へ搬送してもよい。スライドは、後の試験、検査のために保存モジュール202で保存される。
【0029】
試料の画像化の準備ができたら、試料の少なくとも1個の画像を画像化装置230から得ることができる。画像化装置が実行する各スライドの画像化手順は、変更可能であり、いつでも例えば診断者(例:病理学者)によって決めることができる。この点、診断者は遠隔地からリアルタイムで画像処理を制御するようにしてもよい。例えば、病理学者は画像を検査し、追加のスライド画像が必要かどうか判断できる。一般的に、病理学者は違った倍率の画像が必要か、組織部分にもっと深いフォーカスが必要かどうかを判断する。実施例の自動システムでは、病理学者は更なる画像を得るよう指示できる。指示された場合、システムは自動的に試料を保存モジュール202から取り出し、要求された更なる画像を得るために試料を画像化装置230へ搬送する。病理学者は結果を同日中に受け取ることができる。従来の画像化システムでは高解像度画像やZスタッキング画像を処理するのに一晩はかかった。
【0030】
画像化装置230は、複数の画像化装置を含んでいてもよい。画像化装置は、人手により解析または解析モジュール290により自動的に解析される画像を生成するシステムであればよい。図示の実施例では、画像化装置230は顕微鏡と、顕微鏡視野をデジタル画像として記録可能なカメラを含んでいる。例えば、光学CCDカメラをデジタル画像データ生成のために使用できる。そのデジタル画像データは、解析モジュール290、診断者のワークステーション240、専門家のワークステーション250などを通じて必要とする者、例えば診断者や研究所の要員が当該データにアクセスできるようにするため、種々の記録方法を採用できる。好適なデータ記憶装置の例としては、画像化装置230に設けられているローカル記憶装置(例えばハードディスクドライブ、リムーバブルメモリ、フラッシュメモリ、CDやDVDなどの光学メモリ)やデータ記憶装置260として図示されるネットワークメモリがある。
【0031】
なお、画像データに加えて、種々の形態の情報が画像化装置230で生成できる。例えば、画像化装置230は、画像データと関連して患者情報の記録や、後述する情報を生成してもよい。また、他の処理システムに、他のデータと共に画像データの処理の協働作業をさせてもよい。
【0032】
一実施例において、生成される情報の種類は、解析モジュール290が解析を行うに好適な種類であり、所望のレポートが作成される。解析モジュール290の形態は所望の形態とすることができる。例えば専用コンピュータシステム、または多目的コンピュータシステムのモジュールである。更に、独立した装置、画像化装置230の一部、病院情報システムの一部、研究所情報システムの一部などでもよく、設置場所も画像化装置230からデータを受信できる場所ならどこでもよい。図面では1個の解析モジュール290であるが、複数の解析モジュール290を用いることができる。更に、診断者のワークステーション240に解析モジュール290、または画像化装置230の画像データに限定されることなく、当該画像データを含む利用可能データに基づく解析を診断者がローカルで行える解析モジュールクライアントが含まれていてもよい。
【0033】
図2に示す実施例において、解析モジュール290は通信インフラ200に接続されている。解析モジュール290は、必要に応じて直接画像化装置230へアクセスしたり、データ記憶装置260やローカル記憶装置を経由してもよい。解析モジュールは画像データと他のデータを使用して解析を行い、提案を実行する。一実施例では、解析は、解析モジュール290のパターン認識システムで行うパターン認識分析を含む。一つのパターン認識の方法では、画像化装置230の画像データをデータベースの既知のパターンと比較する。もし、十分なレベルの一致が見つかった場合、提案、診断または他の処理指示を生成する。パターンデータベースは、解析モジュール290の一部や、データ記憶装置260や研究所情報システム280など外部に設置してもよい。
【0034】
画像化装置230の画像化処理に続いて、解析モジュール290は試料経路227を経由して画像化した標本を保存モジュールへ送るか判断し、または試料経路237を経由して特定の標本を診断者または検査要員へ送り追加処理を受けるか判断する。
【0035】
また、解析モジュール290は、画像化された標本に代表される組織の追加処理が必要かどうか判断するようにしてもよい。この場合、解析のため新しい組織標本が必要になる。一実施例では同じ組織標本の追加の切片をスライド上に載置し、そのスライドを保存モジュール202へ送る。スライドにはスライドと画像化標本を関連づけるラベルが付されている。この実施例では、スライドは染色またはカバースリップ付着が行われず、別に保管される。これらのスライドは、染色しない追加の切片であると識別され、染色またはカバースリップ付着のために呼び戻されるまで保存エリアに保存される。例えば、これらの追加スライドには原試料または順番などについて同じ識別情報、例えば当該スライドに追加スライドを識別する指標(文字、数字など)を付けてもよい。これらが不要の場合、当該スライドは、例えばユーザ指定の所定時間が経過したり、処理が終了したりしたときは廃棄してもよい。更なる染色が要求される手順の場合、追加の切片が作成され、追加のスライドが準備され、染色のみ実行される。組織塊を取り扱う自動取扱システムにおいて、更なる染色要求は、顕微鏡切片作成モジュール206へ送られる。
【0036】
一実施例において、組織塊はパラフィンブロック内でフォルマリン固定された組織部分で、そこからもう一つの組織片が取り出されてスライド上に載置されるものを含む。組織塊にはバーコードタグまたはRFIDタグなどの識別タグが付いている。コントローラからの信号に応じて、組織塊は取り出され、自動的に保存モジュール(例、保存モジュール202)から顕微鏡切片作成モジュール206へ送られる。組織塊は、識別タグによって保存され、取り出される。組織塊は、取り出される追加の切片作成のため顕微鏡切片作成エリアへ送られる。
【0037】
一般的に、スライド上に新しい標本が載置されると、標本は染色モジュール210へ送られ、特別染色、免疫組織化学的染色(IHC)やイブリッド形成法(ISH)などの処理、複合処理、他の染色処理、試験などの処理が行われる。その後、新しい標本は、例えば試料経路を通り画像化装置230へ送られる。最後に検査され、画像化された標本は指定された保存モジュール202に保存される。この例では、診断者などの検査後、元の標本は例えば保存モジュール202に保存する指示が出され、同じ組織部分の新しい標本は処理を進めるよう指示が出される。新しい標本は、処理され、検査され、保存のため送られる。元の標本と新しい標本は識別タグによって関連づけられる。その後、元の標本と新しい標本の一方または両方は必要に応じて任意に保存モジュール202から取り出すことができる。
【0038】
診断者、専門家などのワークステーション250は、他の処理ステーションやシステム構成部と通信インフラ200を介して通信するコントローラの役目をするコンピュータシステムを含む所望の構成にすることができる。ワークステーションは、また試料保存ユニット、収容器具、電話など他の作業機能を任意に持つこともできる。一実施例では、ワークステーション240、250は生体標本の処理に関する情報や、画像化装置230からの画像データおよび解析モジュール290からの解析データや、レポートを含む処理結果にアクセスできる。専門家のワークステーション250は、経路257を経てデータ記憶
装置260へ接続されている。他の実施例では、システムには専門家のワークステーション250や診断者のワークステーション240を含まないことがある。
【0039】
試料は試料経路を通って処理システム内を進行するので、情報は通信インフラ200を構成する種々の情報経路を使用する多くの装置と共有されている。なお、通信インフラ200は、それぞれのコンピュータシステムと自動処理システムとの間の通信を可能にしている。
【0040】
一般的に、通信インフラは有線および/または無線で結ばれたコンピュータネットワークである。例えば、情報アクセスポイントは有線でネットワークと結ばれるか、または無線ポータルを介してネットワークと接続される。図示の例は通信をネットワーク経由で行うネットワークシステムであるが、直接通信することも可能である。例えば一実施例において、染色モジュール210はカバースリップ付着モジュール220と直接通信リンクを有すると共に、カバースリップ付着モジュール220のノードを経由して通信ネットワークにアクセスできる。または直接ネットワークリンクを有するようにしてもよい。なお、多くのステーションとの間で情報を好適に共有するために、種々の好適な形態の通信経路を採用できる。なお、実施例の中には、全てのステーションが直接通信経路を持つわけではない。さらに、通信経路は、デジタル、アナログ、有線、無線、紙、口頭、電話など種々の形態がある。
【0041】
一実施例では、研究所のネットワークは、研究所の装置210、220、230、240、研究所のシステム280、ワークステーション240、250(例えば1台以上のパソコンおよび/またはサーバーを含む)間の通信インフラ200の一部としてもよい。研究所のネットワークは、通信インフラ200の一部を構成する病院ネットワークとネットワークを組んでもよい。その実施例では、他の装置が研究所情報システム280または他の研究所装置から提供される情報へ、通信インフラ200を経由してアクセルすることができる。そのような他の装置としては、例えば診断者や行政のワークステーション240、病院情報システム270があり、他の実施例では解析モジュール290も同様に他の装置となる。なお、情報経路はフレキシブルなので生体標本の処理を追跡したり、適宜ユーザに情報を分配したりするために必要な情報の流れを制御できる。多くの通信システムの構造から要求に合った構造を選択できるし、図示の例は説明した目的のためのものであり、それに限定されるのではない。
【0042】
図示の例では、通信経路203、205、207、215、225、235、245、255、265、275、285、295が、染色モジュール210、カバースリップ付着モジュール220、画像化装置230、保存モジュール202、診断者のワークステーション240、専門家のワークステーション250、ローカルまたはリモートデータ記憶装置260および/または病院情報システム270、研究所情報システム280、解析モジュール290またはシステムの他の所望ステーション、コンポーネント間を結んでいる。
【0043】
情報の共有は自動的に行われる。例えば、情報は互いに通信可能な二つの装置で直接共有するようにしてもよく、ユーザが他の装置へ手動で入力してもよいし、1以上の
図2に示す装置から成る装置が内部通信手段を使って通信してもよい。この情報の共有には普通二方向通信が使われる。例えば、慢性の症状を持つ患者の画像を患者情報記憶装置のデータベースへ送り、先に得た同じ患者の情報を症状の進行を観察するためにデータベースから取り出すこともできる。他の実施例では、試料経路内の各ステーションは、通信インフラ200を介して互いに通信可能であると共に、当該ステーションは、後述するように、他の情報と同様に試料の試料経路に沿った進行について互いに通信できる。
【0044】
他の実施例では、生体標本、スライド、トレイ、容器、ワークピースおよびシステム内の場所が、機械が理解可能なコード、例えばRFIDタグ、形状識別子、色識別子、数字、単語、光学的コード、バーコードなどで識別される。識別子は、例えばプロセッサ(コンピュータ装置)、病院情報システム270、研究所情報システム280やその組み合わせによって、データ記憶装置260内に維持されるデータなどデータベースへ提供されるデータを生成する際に記録することができる。追跡可能なデータとは、例えば患者の情報や履歴、採取された生体標本の情報、生体標本の到着時刻や出発時刻、標本で行われた試験、標本で実施された処理プロセス、標本に添加された試薬、診断内容、関連画像などである。
【0045】
図3に生体試料を自動的に処理するシステムの実施例を示す。システム300は搬送モジュール302を含む。搬送モジュール302は、スライドなど組織保持具を、ステーション間、すなわち1個以上の染色モジュール304、カバースリップ付着モジュール306、画像化装置308、310、312、保存モジュール314および顕微鏡切片作成モジュール307の間で自動的にまたは少なくとも一部自動的に搬送する。スライドなど組織保持具を手動で搬送する場合に比べて、自動的にスライドなど組織保持具を、染色モジュール304、カバースリップ付着モジュール306、画像化装置308、310、312、保存モジュール314および顕微鏡切片作成モジュール307の間で搬送するのはかなり有利である。一つには、繰り返して退屈な手作業から要員を解放することができる。さらに、要員をやりがいのある作業や自動化の恩恵を受けにくい作業に回すことができる。また、搬送モジュールは、時々他の仕事に気が散ったり、忘れたり、忠実かつタイムリーに作業を行えない要員と比べ、忠実かつタイムリーに当該作業を行うのに向いている。特に、要員による手動搬送は、スライドを間違えたり、取り扱い中にスライドを壊したり、画像化装置でスライドを間違えて置いたり、間違えて読んだりするおそれがある。加えて、スライドを保存する場合、要員によりスライドを保存モジュールへ搬送すると、スライドの置き間違い、保存モジュール内での間違った記録管理、および/または保存モジュールからの取り出しが煩雑になるおそれがある。スライドの自動搬送は、有利な点としては、生産性を向上させることができると共に、標本を手動で搬送するに必要な装置の待ち時間を減少させてスループットを向上させることができる。同様な効果は、組織塊を顕微鏡切片作成モジュール307と保存モジュール314との間で自動的に搬送することでも得られる。
【0046】
一実施例において、搬送モジュール302はステーション間でスライドを搬送可能なロボット装置である。一実施例では、搬送モジュール302はXYZ軸ロボットで1以上のスライドをステーション間で搬送する。一般的に、搬送モジュール302は、軌道・エレベータシステムである。軌道システムは、コンベアベルトまたはプレートシステムでスライドを水平にX軸方向へ搬送する。この点、1以上のスライドがコンベアに載置され、所望のステーション間、例えばカバースリップ付着モジュール306、画像化装置308および保存モジュール314の間で搬送される。
【0047】
一実施例では、コンベアベルトシステムが、2本の離間したコンベアベルトを有し、一本のベルトはスライドを一方向へ搬送し、他方のベルトはスライドを反対方向へ搬送する。搬送方向を矢印316で示す。また、
図4〜9を参照して説明するように、一本のコンベアベルトシステムでスライドを1以上の方向へ搬送することができる。搬送モジュール302にはエレベータ装置が含まれている。エレベータ装置は、スライドをコンベアベルトより上または下へ位置させる場合に、スライドを垂直、Y軸方向へ搬送する。エレベータ装置には更にスライドをエレベータの内外のZ方向へ搬送するコンポーネントが含まれている。
【0048】
染色モジュール304とカバースリップ付着モジュール306は、スライド染色・カバースリッパシステムとして一体化してもよい。また、染色モジュール304とカバースリップ付着モジュール306は、別装置として別々の場所に設置してもよい。一体化したシステムの場合、染色モジュール304とカバースリップ付着モジュール306は、カリフォルニア州トーランスのサクラ・ファインテックUSA社製が市場に出しているTISSUE−TEK PRISMA(登録商標)とTISSUE−TEK GLAS g2(登録商標)の組み合わせシステム又はTISSUE−TEK PRISMA(登録商標)とTISSUE−TEK FILM(登録商標)の組み合わせシステムのような染色/カバースリッパシステムとすることができる。一実施例では、染色モジュール304はヘマトキシリンとエオシン(H&E)による染色や特別染色(SS)が可能になっている。H&E/SS染色およびカバースリッパ付着工程において、生体標本はH&EまたはSS染色と任意のカバースリップ付着を受ける。他の染色又は試験手順も実行できる。
【0049】
稼働中に、バスケット内の個々のスライドまたは一群のスライドは、染色モジュール304内に運ばれ、所望の染色手順により染色される。一群のスライドの場合、染色手順は全てのスライドについて同じ手順、またはオペレータの手動、バーコード、RFIDなどを読み取る自動識別手段あるいは他の手順識別装置により、染色手順メニューから選択された手順で行われる。染色手順が終了したら、バスケット内の個々のスライドまたは一群のスライドは、個々にカバースリップを付着するべく自動的にカバースリップ付着モジュール306へ搬送される。各スライドに付されている識別子は、スライドにカバースリップを付着し、一群としてバスケット内に入れられ又は個々に搬送モジュール302へ送られる際に読み取られる。
【0050】
一群のスライドが一度に染色される実施例では、スライドは染色モジュール304内で個別に分離され(群から離され)、搬送モジュール302に載置される。例えば、一群のスライドがバスケット内で染色される場合、染色モジュール304のピックアンドプレイスロボット装置が分離されたスライドを個々に搬送モジュール302へ搬送する。搬送モジュール302からスライドはカバースリップ付着モジュール306又はカバースリップの付着をすることなく画像化装置308、310、312のうちの一個、又は保存モジュール314へ搬送される。
【0051】
画像化装置308、310、312の画像化方法(クイックスキャン、20倍、40倍、Zスタックなど)は、研究所の規定、病理学者などからの特定の指示に基づき事前に指定されている。バスケットに一群として収容されているスライドの場合、一実施例では、各スライドに同じスキャン方法が指定される。個々のスライドまたはバスケット内のスライドには、画像化装置の利用性または特定のスキャン方法(例、クイックスキャン、20倍、40倍、Zスタック)により特定の画像化装置を決めるなど研究所の定めた規定に基づき画像化装置308、310、312のうち1個が指定される。
【0052】
一実施例では、生体標本を含むスライドが個々に搬送モジュール302によって画像化装置308、310、312のうち1個および/または保存モジュール314へ搬送される。スライドの画像化準備ができたら(例、乾燥したら)、システムは、例えば画像化装置308が使用可能かをチェックする。もし例えば好適に機能を発揮でき、現在他のスライド上の標本を画像化していなければ、画像化装置308が使用可能と判断される。もし画像化装置308が使用不能の場合、画像化装置310の使用可能性を判断する。さらに、画像化装置310が使用不能の場合、画像化装置312の使用」可能性を判断する。使用可能な画像化装置が見つかるまでこの作業を継続する。
【0053】
また、スライドと特定の画像化装置の画像化スケジュールは予め決めておいてもよい。一般的に、スライドを十分に乾燥させる時間に関する情報はスライドに指定され、画像化装置308、310、312は画像化スケジュールに基づいて使用される。システムは、乾燥時間経過後にどの画像化装置が使用可能か判断する。利用可能な画像化装置が決まったら、スライドは搬送モジュール302によって使用用可能な画像化装置へ搬送される。
図3では3個の画像化装置を示しているが、システム300には3未満または4以上の画像化装置を含んでもよい。
【0054】
もし、画像化装置308、310、312のどれもが使用不能または画像化の遅延が必要な状態(例、スライド処理の指示を待っている場合)では、搬送モジュール302はスライドを保存モジュール314へ搬送する。スライドは画像化装置308、310、312の1個が使用可能になるまで、および/または処理指示の受領まで保存モジュール314内に留まる。画像化装置が使用可能と判断されたら、スライドは保存モジュール314から、例えばロボット装置を用いて搬送モジュール302へ移され、画像化のため使用可能な画像化装置へ搬送される。画像化が終了したら、スライドは搬送モジュール302によって画像化装置308、310または312から保存モジュール314へ搬送される。画像は、病理学者などの診断者へ送られ、直ちに検査される。コンピュータ(例、パソコン)を使用することにより、病理学者は観察のためのスライド上の標本検査を行い、また必要に応じて更なる画像化を行うため追加スライドを準備させる。また、追加のスライド検査が不要と判断された場合は、保存モジュール314から排出される。
【0055】
一実施例では、保存モジュール314には1個以上の保存モジュールが含まれる。この点、1個以上の保存モジュールは、更なる画像化が必要と思われるスライドの短時間保存エリアとして使われる。更に、1個以上の保存モジュールは、近い将来更なる画像化が不要と思われるスライドの長時間保存エリアとしても使われる。長時間保存モジュールは、研究所内または遠隔地に設けてもよい。
【0056】
一実施例において、保存モジュール314は、ユーザの規定した基準に則りスライド(及び塊保存システムの組織塊)を分類する。例えば、一人の患者用の容器に関連する複数のスライドを同じエリアに保存する。容器または塊は、製造年月日、医師、出所またはそれらの組み合わせを基準として配置される。一般的に、上述したように、スライドにはリーダ(例、RFIDリーダ、バーコードリーダ)で読み取り可能な識別子が付される。識別子(例、RFID、バーコード)は、製造年月日、医師および/または出所を示す情報(例、文字、番号および/または符号)を含む。リーダによって情報が読み取られると、情報は通信インフラを介してコントローラ400または他の装置へ送られる。
【0057】
図3の自動化システム300では、スライドは、染色モジュール304、カバースリップ付着モジュール306、画像化装置308、310、312および保存モジュール314の間を完全自動で搬送される。この点、システム300は、他の研究所の処理と連携して継ぎ目の無い、継続したワークフローを提供し、また人的エラーや障害を減らすためにまとめて一晩にわたって処理しなくてもよくなる。なお、システム300内で染色から保存まで人が接触することがないので、Lean and Six Sigmaのような厳しい品質管理基準においても安全であると考える。
【0058】
図4は、
図3に示すシステムの構成例を示す。本実施例において、染色モジュール304は、TISSUE−TEK PRISMA(登録商標)染色装置であり、カバースリップ付着モジュール306は、TISSUE−TEK FILM(登録商標)カバースリップ付着装置であり、両方ともサクラ・ファインテックUSA社製である。TISSUE−TEK PRISMA(登録商標)染色モジュールとTISSUE−TEK FILM(登録商標)カバースリップ付着モジュールは、互いに接続されている。カバースリップ付着作業の前に1個以上のスライドのラックを保持するためにカバースリップ付着モジュールで使用されるローディングコンテナは、カバースリップ付着モジュール306と染色モジュール304との間で移動する。当該モジュール間の移動について以下に説明する。
【0059】
カバースリップ付着モジュール306のローディングコンテナを自動的にカバースリップ付着モジュール306と染色モジュール304との間で移動させるために、ソフトウエアの指示と、カバースリップ付着モジュール306と染色モジュール304との間のデータリンクが使用される。当該指示とデータリンクは、単にカバースリップ付着モジュール306と染色モジュール304との間だけのものである。また、コントロールシステムは、染色モジュール304と、カバースリップ付着モジュール306と、画像化装置308、310、312と、保存モジュール314と、スライドを画像化装置と各モジュールとの間で搬送する搬送モジュール302と個々に接続されている。
図4〜9に画像化装置と各モジュールへ接続されたコントローラ400を示す。この場合、搬送に関する指示とデータリンクは、前記モジュール、画像化装置、コントロールシステムに関連するものである。コントローラ400は、染色モジュール304とカバースリップ付着モジュール306の間の搬送作業を制御する。コントローラ400は、前記モジュールや画像化装置に対するスライドの制御と同様に、他のモジュールや画像化装置を制御(例、直接操作)も行う。
【0060】
ローディングコンテナの染色モジュール304からカバースリップ付着モジュール306への移動に関して、ローディングコンテナは、プレート上に載置されている。そのプレートは、2個のステッピングモータによりプレートとローディングコンテナをX方向とY方向へ動かすためのワイヤに連結されている。プレートは、ローディングコンテナをX方向染色装置内へ移動させる。
【0061】
稼働中、染色モジュール304の搬送アームは、スライドのラックを受け取り、ラックをX、Y方向へ動かして染色ステーションへ移動させる。搬送アームは、スライドのラックを適宜な染色ステーションへ移動させ、それからラックを下動させて(Y方向)染色のために染色ステーションへ入れる。染色工程の後、搬送アームは、スライドのラックを染色ステーションからX、Z方向へ動かして次の染色ステーション、又は全染色工程が終了していれば、スライドのラックを染色装置からFILM(登録商標)カバースリップ付着モジュール(カバースリップ付着モジュール306)へ移動させるため、搬送ステーションへ移動させる。
【0062】
染色モジュール304とカバースリップ付着モジュール306の間の搬送作業において、カバースリップ付着モジュール306のローディングコンテナは、各装置の隣接する出入口を通ってカバースリップ付着モジュール306から染色モジュール304へ移動する指示を受信する。ローディングコンテナは、ローディングコンテナが平面(XZ平面)内で載置されているプレートにより、カバースリップ付着装置から染色モジュールの出入り口を通り染色装置内に移動される。染色モジュール内では、搬送アームがスライドのラックを下動させてローディングコンテナ入れる。ローディングコンテナにはスライドを湿らせるための例えばキシレン溶液が貯留されている。ローディングコンテナは、X方向プレートに乗って染色装置から再びカバースリップ付着装置へ隣接する出入り口を通って入れられる。カバースリッパの付着動作は、フィルム状のカバースリップをバスケット内の各スライドに載せる工程をカバースリップ付着装置で実施する。
【0063】
搬送モジュールは、スライドをステーション間で搬送可能なロボット装置でもよい。
図4の実施例では、搬送モジュール302がロボット装置であり、コンベア402を含む。そのコンベア402は、染色モジュール304/カバースリップ付着モジュール306、画像化装置308、310、312、保存モジュール314をループ状に結んでスライドまたは一群のスライドを水平に搬送するコンベアシステムである。本実施例では、コンベア402がスライドを矢印403に示すように、染色モジュール304またはカバースリップ付着モジュール306から画像化装置308、310、312と保存モジュール314へ搬送する。また、反対方向の矢印405に示すように、保存モジュール314から画像化装置308、310、312へ搬送する。
【0064】
一実施例において、コンベア402は水平面内に配されたコンベアベルトまたは一組のコンベアパレットであり、スライド又は一群のスライドを搬送する。一組のコンベアパレットであるコンベアシステムは、民間空港で使用されている荷物搬送コンベアと同様のシステムである。荷物搬送コンベアは、搬送経路部に囲まれた甲板部から成る。搬送経路部の配置形状によりスライドを搬送する経路が規定され、通常は楕円形の経路なっている。搬送経路部に沿って等間隔にパレット支持部材が配置されている。パレット支持部材の各端部に支持車が取り付けられている。支持部材は、支持車が回転することによって搬送経路部に沿って移動する。支持部材は、支持部材間に張設されたストラップにより上部で互いに連結されている。支持部材の底部は、互いに固いリンク部材により連結されている。したがって、支持部材、支持車およびストラップの機能により、無限軌道上を動く列車に似た構造になる。
【0065】
パレット支持部材にパレットが取り付けられている。パレットは、互いに重なり合う構造になっており、パレット支持部材がフレキシブルな表面を構成できるようになっている。パレットの重なり合う構造は、パレットが経路のコーナーを移動するときに互いにスライドするよう設計されている。パレットの先端はファスナにより支持部材へ連結されている。各バレットは、若干曲がっておりカーブをうまく通過できるようになっている。
【0066】
図4に示す実施例において、コンベア402はカバースリップ付着モジュール306からのスライドを受け取り、画像化装置308、310、312のうち1個の装置へ搬送する。TISSUE−TEK FILM(登録商標)カバースリップ付着装置の場合、カバースリップ付着モジュール306は、スライド上に個々にフィルム片を載せる。
図4に示すシステムでは、それからスライドはカバースリップ付着モジュール306の排出位置へ移動され、カバースリップ付着モジュール306からコンベア402上へ載置される。カバースリップ付着モジュールの排出位置は、カバースリップ付着動作の下流側に設ければ
よい。
【0067】
図4において、スライド424は、コンベア402上へ排出される。その際、スライドの長さ方向が、コンベア402の幅方向と交差するように排出される。RFIDリーダまたはバーコードリーダなどのリーダ423が、コンベア402の排出位置または排出位置の下流側に設けられ、スライド424の識別子を読み取る。コンベア402に載置されると、コンベア402はスライド424を画像化装置308、310、312へ搬送する。
【0068】
上述したように、本実施例では、染色モジュール304から複数のスライドがカバースリップ付着モジュール306へ搬送される。カバースリップ付着モジュール306では、スライドは一枚一枚にされ(ラック内で他のスライドから剥離され)、カバースリップを付着される。一実施例では、カバースリップ付着モジュール306内の全ての染色済スライドにカバースリップが付着される。別の実施例では、カバースリップ付着工程を迂回することがある。この迂回は、カバースリップ付着モジュール306内の剥離ポイントで起きる。この実施例では、スライドが一枚一枚に剥離され、コンベア402上へ直接排出されるか、またはカバースリップを付着した後に排出される。
【0069】
一実施例では、スライド保持装置がコンベア402に隣接して、または接続して設けられる。スライド保持装置420は、例えば楕円形のチェーンまたはベルト(ループ状)であり、外側へ突出する突部422が設けられている。複数の突部422は、スライドの幅と同等の間隔で配置されている。
【0070】
図4に示すように、染色モジュール304、カバースリップ付着モジュール306および画像化装置308、310、312は、コンベア402の一方の側に設けられている。スライド保持装置420は、染色モジュール304、カバースリップ付着モジュール306および画像化装置308、310、312とは反対側に設けられている。スライド保持装置420の突部422は、コンベア402に向かって外側へ突出している。スライド保持装置420は、コンベア402と隣接し、突部422はコンベア402へ届くよう伸びている。
【0071】
一実施例では、スライド保持装置420は合成ゴムまたはプラスチックで形成され、突部422も同じ弾力性のある材料で形成されている。突部422は、厚さ0.5mm以下、例えば0.25mm、で長さ0.5〜1mmである。スライド保持装置420は、コンベア402が規定する平面の上方に突出し、また突部422は、コンベア402上またはコンベア402のやや上方(例、0.25mm以下の距離上方)に届くようになっている。この構成により、スライドは、コンベア402上で隣接する突部422間に保持される。
【0072】
スライド保持装置420は、プーリによって回転され、コンベア402と同じ速度で移動する。
図5は、
図4の線5−5‘に沿った側面図である。
図5に示すように、スライド保持装置420は、ループの一端がプーリ430に連結され、他端もプーリ430に連結されている。プーリ430は、軸435を中心に回転する。軸435は、コンベア402の幅方向へ延びて、反対側で軸435はプーリ437に連結されている。プーリ437は、コンベア402を駆動するプーリ440へベルトを介して連結されている。
【0073】
図4〜7に示すように、例えばスライド424は、カバースリップ付着モジュール306または染色モジュール304から個々に排出され、コンベア402へ載せられる。例えば、コンベア402は、カバースリップ付着モジュール306の出口407(および染色モジュール304の任意の出口409)よりやや下側に位置しているので、スライドは重力によってコンベア402へ載せられる。理想的には、スライドは、スライド保持装置420の2個の突部422の間に配置される。しかし、スライドがカバースリップ付着モジュール306から出るときに突部422の間に位置しないときは、突部からスライドの端に加えられる力によってスライドは突部間に再配置される。
【0074】
コンベア402は、スライドを画像化装置308、310、312へ搬送する。画像化装置308、310、312は、例えばデジタル画像化装置であり、スライドの識別子を読み取るためにコントローラ400と接続されたリーダ(例、RFIDリーダ、バーコードリーダ)を含む。リーダは、コントローラ400にスライドが画像化装置内に在ることを示し、またリーダは識別子をデジタル画像と関連付けるために使用される。一実施例において、コンベア402は、各画像化装置の所で停止し、コントローラ400は画像化装置が使用可能であるか調べる(例えば、画像化装置が使用可能かどうかを判断できる信号を受信する)。もし、画像化装置が使用可能であれば、コントロールシステム(例、コントローラ400)は、スライドが現在画像化可能(例、乾燥している)と判断したらスライドを画像化装置内に配置する。
【0075】
一実施例において、スライドは、スライドを押して画像化装置へ入れる。この実施例では、コントローラ400に制御され、各画像化装置308、310、312に対応するプランジャアセンブリが設けられている。
図4〜7において、プランジャアセンブリ408、410、412は画像化装置308、310、312にそれぞれ対応している。プランジャアセンブリ408、410、412は、コンベア402の横に配置され、画像化装置308、310、312とは反対側に配置されている。
【0076】
各プランジャアセンブリ408、410、412は、対応するプランジャを伸縮させるアクチュエータ(例、電動モータまたはエアピストン)を有する。プランジャは、駆動されると画像化装置に向かってプランジャアセンブリから外へ向かって動く。プランジャは、スライドの厚さと同等またはもっと厚いバーまたはロッドである。各プランジャアセンブリは、コンベア402に隣接して設けられ、プランジャがプランジャアセンブリから伸びたときにはプランジャがコンベア402の表面に接触するかコンベア402の少し上方(例、0.1〜0.25mm)に位置するようになっている。プランジャがコンベア402に十分接近することにより、プランジャが伸びた際にコンベア上のスライドの端部に接触してコンベアからスライドを押し出す。スライド保持装置420の高さが、プランジャがスライドの端部と接触するのを防止する高さになっていない場合、プランジャはスライド保持装置420を押動させるに十分な重さと密度をもっている。
【0077】
例えば、スチールのバーまたはロッドから成るプランジャは、十分な重さがあり、合成ゴムでできたスライド保持装置420を下方へ押動させることができる。他の実施例では、プランジャはプランジャアセンブリから、水平より若干の角度(例、5度未満)を持って伸びるようになっており、プランジャはスライド保持装置420をコンベア402の表面とほぼ平行にできる。
【0078】
もし、スライドが画像化装置(画像化装置308、310、312)の正面に位置し、画像化装置が使用可能であれば、プランジャはスライドを画像化装置内へ押し入れる。プランジャは、コンベア402上のスライドの端部に接触可能に配置されている。
図7にコンベア402から画像化装置308へ押し入れられたスライドを示す。
図7では、プランジャ458はプランジャアセンブリ408から駆動され、コンベア402を横切るよう伸びている。プランジャ458を駆動することにより、プランジャ458はスライド424と接触し、スライド424を画像化装置308へ押し入れることができる。
【0079】
画像化装置308の破断図では、スライド424は画像化装置308のステージまたは画像化プラットフォーム上に在り、画像化準備ができている。その破断図で、ステージまたは画像化プラットフォームの傍に在るプランジャアセンブリ488は、ステージまたは画像化装置の反対側に配置されている。プランジャアセンブリ488は、スライド424の画像化が終了したら、画像化装置308内のスライド424をコンベア402上へ戻す。
【0080】
上述のように、一実施例において、コントローラ400は、染色モジュール304、カバースリップ付着モジュール306、画像化装置308、310、312、各画像化装置に対応するプランジャアセンブリ408、410、412、保存モジュール314、コンベア402に接続されている。更に、任意に染色モジュール304でスライドを染色したり、カバースリップ付着モジュール306でスライドにカバースリップを付着させるために、コントローラ400は、カバースリップ付着モジュール306や染色モジュール304からスライドをコンベア402上に排出させたり、スライドを画像化装置308、310、312へ運ぶコンベア402の動作を制御する指示(例、コンピュータプログラム)を含む。
【0081】
カバースリップ付着モジュール306からスライドをコンベア402上に排出する制御を行うため、コントローラ400はスライドの排出準備ができたかどうかのデータをカバースリップ付着モジュール306から受信する。一実施例では、このデータは、スライドがカバースリップ付着モジュール306の所定位置に配置された際に信号としてコントローラ400に送られる。スライドは、カバースリップ付着モジュール306内でカバースリップを付着されていてもよいし、未付着でもよい。コントローラ400は、コンベア402の位置が自由にスライドを受け取り可能な位置かどうかチェックする。
【0082】
図4〜7に示す実施例では、システムは、センサ495を含む。センサ495は、カバースリップ付着モジュール306の出口407(矢印416)からスライドの幅と同等の距離上流側に設けられている。例えば、センサ495は、光学センサで光ビームをコンベア402の表面を横切るように放射する。ビームが切られると、センサはスライドの存在を示す信号をコントローラ400へ送る。好適には、スライドが染色モジュール304から排出される実施例では、センサ495と同様のセンサを用いて同様の技術を採用することがよい。
【0083】
一実施例では、コントロールシステムはコンベア402を短時間(例、3〜5秒)間欠的に停止させ、スライドを画像化装置の前に位置させる。コントローラ400は、画像化装置がスライドの画像化の準備ができているかどうかを示す信号を受信する。信号は、一方的に送り続ける方法(例、画像化装置のセンサが、画像化装置が準備できているときには常に信号を出し続ける方法)、またはコントローラが信号を請求する方法(例、コントローラが画像化装置のセンサへ問い合わせ信号を送り、センサが返信する方法)で受信できる。もし、スライドがコンベア402上に在り、画像化装置が使用可能であれば、コントロールシステムは、対応するプランジャアセンブリを駆動させ、スライドを画像化装置内に配置させる。同様に、コントローラ400は、いつスライドの画像化が終了し、スライドがコンベア402上に排出されたかをチェックする。一実施例では、センサ、例え光電センサが各プランジャアセンブリ408、410、412に設けられ(隣接して配置されていたり、連結されていてもよい)、スライドがコンベア402上に在るか、又はコンベア402が自由に画像化装置308、310、312からスライドを受け取り可能かどうかを調べる。
【0084】
図6にプランジャアセンブリ408に接続されたセンサ496を示す。一実施例では、対応するセンサコンポーネントがセンサ496の反対側に在る画像化装置308に接続されている。また、コントローラ400のメモリは、コンベア402上のスライドの位置を、センサ495から送られるデータと、カバースリップ付着モジュール306からのデータに基づき追跡し、これらのデータを元にコンベア402が、画像化装置308、310、312からスライドを受け取り可能かどうかを調べる。コンベア402の短時間停止により、例えばセンサ495からのデータに基づき、スライドがコンベア402上でカバースリップ付着モジュール306の出口より上流側にあるかどうか調べるようにすればよい。
【0085】
プランジャアセンブリはスライドをコンベア402と画像化装置308、310、312との間でやり取りするものであるが、他のロボット装置でスライドを処理ステーション間でやり取りすることもできる。一般的に、スライド424をつかみ、スライドをコンベア402と画像化装置308、310、312との間でやり取りできるロボットアームを使用できる。例えば、バスケットから一群のスライドを搬送する実施例では、スライドは個々にバスケットから取り出され画像化される。この点、ガントリーまたは座標軸型のロボット、選択された弾性部品から成るロボットアーム(SCARA)、多関節ロボットアームやこれらの組み合わせ(例、SCARA型ロボットとガントリー型ロボットの組み合わせ)を使ってバスケット内で各スライドの取り出し、積層を行える。
【0086】
図3〜7の実施例において、染色モジュール304とカバースリップ付着モジュール306は、接続され、スライドは染色モジュール304によって、公知のシステムを介してカバースリップ付着モジュール306へ搬送される。他の実施例ではこの搬送は、全体コントロールシステムの一部としてのコントローラ400のよって制御される。他の実施例では、例えば上述のプランジャアセンブリやその他の移送装置を用いて、スライドを染色モジュール304からコンベア402へ移し、その後コンベア402を介してカバースリップ付着モジュール306へ搬送される。
【0087】
図4〜7には保存モジュール314内に延びるコンベア402を示す。一実施例では、コンベア402は、ループ状に形成され、一端は保存モジュール314へ入り、外へ延びている。
【0088】
図8には、
図4の線8−8‘に沿った保存モジュール314の断面を示す。一実施例では、保存モジュール314は少なくとも一個の引出、空間、コンポーネント、キャビネット、箱、棚のような物を備える。例えば、搬送モジュール302のロボット装置は、保存モジュール314へスライドを収容させると共に、スライドを保存モジュール314から例えばコンベア402へ取り出すことができる。保存モジュール314は、更に搬送モジュール302へ続くドアを備える。
【0089】
保存モジュール314がキャビネットである実施例では、保存モジュールは複数のスライドステーション602を含む。各スライドステーション602の大きさは、個々または一群のスライドを受け取り収容できる大きさである。一群のスライドを扱う場合、スライド群はスライドステーション602のトレイまたはバスケットに収容される。例えば、スライドを保持するトレイまたはバスケットは1個のスライドステーション602内に在る。この点、スライドステーション602の大きさはスライドを保持したトレイまたはバスケットを収容できる大きさである。
【0090】
一実施例では、
図8に示すようにステーションを格子状に形成してもよい。スライドステーション602に収容されたスライドは、例えば格子パターンに対応した座標インデックスシステムを用いてスライドステーション602へ配置され、または取り出される。一般的に、各列は識別子により指定され、各行はその識別子とは別の識別子により指定される。例えば、保存モジュール314の左から第1番目の列は識別子に「1」と指定され、保存モジュール314の上から第1番目の行は識別子に「A」と指定される。この場合、スライドステーション602AはA1となる。スライドステーション602A内のスライドの場所はA1となる。スライドを取り出そうとする場合、システムは場所A1にあるスライドを取り出すよう指示する。他の実施例では、スライドステーション602は、保存モジュール314内で垂直方向へ積上げたコンポーネントでもよい。
【0091】
搬送モジュール302は、保存モジュール314内に配置された1個以上のエレベータ装置を含んでもよい。スライドをスライドステーション602内へ配置したり、取り出したり、スライドステーション602とコンベア402との間で移送するためである。
【0092】
エレベータ装置614は、コンベア402との間でスライドを垂直に移動させる(
図4のY方向)へ移動させる)ために使う。エレベータ装置614は、枠部材を水平に矢印606のZ方向(
図4参照)へ移動させるための軌道部材604を含む。エレベータ装置614は、コンベアベルト402とスライドステーション602の間に配置してよい。エレベータ装置614は、枠部材618と、枠部材618に沿って移動するリフト部材620を含む。モータプーリシステムは、枠部材618とリフト部材620へ連携され、リフト部材620を枠部材618に沿って移動させる。
【0093】
エレベータ装置614は、更にリフト部材620内に配置されたスライドプラットフォーム622を含む。スライドプラットフォーム622は、移動可能にリフト部材620へ取り付けられ、スライドを水平にX方向へエレベータ装置614から突き出し、またはエレベータ装置614内へ受け取ることができる。スライドプラットフォーム622の大きさは、リフト部材620内でスライド624を受け取り、保持できる大きさである。一実施例では、スライドプラットフォーム622は、四角の箱であり、開口面を有すると共に、1枚のスライドを収容できる大きさ(例、1インチ×1インチ×3インチ)を有する。スライドプラットフォーム622は、少なくともスライドの幅以上の幅を有し、スライドを載置可能になっている。スライドは、スライドプラットフォーム622の横から中へ挿入または取り出すことができる。また、スライドプラットフォーム622は、平坦な部材(まさしくプラットフォーム)であり、その上でスライドが支持される。
【0094】
エレベータ装置614は、スライドをコンベア402とスライドステーション602との間で移送するために用いる。一般的に、コンベア402は、スライド624を例えばカバースリップ付着モジュール306または画像化装置308、310、312からスライドステーション602へ移送する。コンベア402は、スライド624を、スライドプラットフォーム622と対応するまで水平にX方向へ移動させる。この点、リフト部材620は、スライドプラットフォーム622がスライド624と対応するまで垂直にY方向へ移動する。スライドプラットフォーム622がスライド624と対応したら、スライドプラットフォーム622は、スライド624の近くに達するまでX方向、コンベア402へ向けて移動する。一実施例ほかにおいて、スライドプラットフォーム622は、挟み部材、爪部材、顎状部材、フックなどの把持部材を含む。スライドプラットフォーム622は、スライド624を収容して逆方向(例、コンベア402から離反する方向)へ移動する。リフト部材620は、スライド624がスライドステーション602の開口部428と対応するまで、スライド624を収容したスライドプラットフォーム622を上動させる。その後、スライドプラットフォーム622は、スライドをスライドステーションの開口部へ挿入するためX方向、スライドステーション602へ向けて移動する。スライド624が開口部内に入ったら、スライドプラットフォーム622はスライド624を解放し、退動する(すなわち、スライドステーション602から離れる)、その結果スライドがスライドステーション602内に収容される。
【0095】
収容が終了すると、エレベータ装置614は、スライド624をスライドステーション602から取り出し、再びコンベア402へ載置し、例えば画像化装置308、310、312へ搬送する。
【0096】
上記では、エレベータ装置614は、スライド624をコンベア402とスライドステーション602との間で移送したが、スライドを処理ステーション間で移送する適宜なロボット装置を使用してもよい。一般的に、スライド624を把持し、スライド624をスライドステーション602と搬送モジュール302との間で移送可能なロボットアームを使用することができる。例えば、一群のスライドをバスケット内へ搬送する場合、スライドは画像化のため一枚ずつ取り出されなければならない。この点、ガントリーまたは座標軸型のロボット、選択された弾性部品から成るロボットアーム(SCARA)、多関節ロボットアームやこれらの組み合わせ(例、SCARA型ロボットとガントリー型ロボットの組み合わせ)を使ってバスケット内で個々のスライドの取り出し、積層を行える。
【0097】
上述のように、スライドは格子状に配置されたスライドステーション602のいずれかに挿入され、保持される。この点、スライドの挿入、取り出し用のロボット装置は、垂直Y方向と、水平X方向の両方向へ移動可能でなければならない。スライドステーション602Aでスライドを収容または取り出しを行うために、エレベータ装置614のリフト部材620は、矢印616の垂直方向へ保存モジュール314の最上行(例、行A)まで移動する。枠部材618は、第1列(例、列1)へ達するまで矢印606の水平方向へ動く。
【0098】
スライドステーション602Aへスライド424を収容するために、スライドプラットフォーム622は、Z方向、保存モジュール314へ向かって移動し、スライド424をスライドステーション602Aへ挿入する。スライド424がスライドステーション602A内に配置されたら、スライドプラットフォーム622は、スライド624をスライドステーション602A内に残して保存モジュール314から離れる。スライド624をスライドステーション602Aから取り出すには、スライドプラットフォーム622をスライドステーション602Aへ挿入し、スライド624へ接近させる。スライドプラットフォーム622をスライドステーション602Aから離れる動作によりスライド624がスライドステーション602Aから引き出され、エレベータ装置614へ入る。エレベータ装置614のリフト部材620は、上動または下動され、スライド624をコンベア402へ移送する。コンベア402は、その後スライド624を画像化装置308、310、312へ搬送する。
【0099】
保存モジュール314内におけるスライドの識別、配置および取り出しは、搬送モジュール302と通信可能なコントローラ400によって制御される。各実施例において、搬送モジュール302の動作、作業は、コントローラと搬送モジュール302との間で交換される信号に基づいて行われる。例えば、一実施例では、そのようなコントローラはスライドが画像化可能であるという信号をカバースリップ付着モジュール306から受信する。一方、コントローラは、スライドをカバースリップ付着モジュール306から取り出し、保存モジュール314へ送るために信号を搬送モジュール302へ送信する。リーダ(例、RFIDリーダ、バーコードリーダ)は、スライドに付されている識別子を読み取るために保存モジュールの入口に配置されている。この情報は、コントローラ400へ送信される。コントローラは、保存モジュール314の空いているスライドステーションを識別し、信号を搬送モジュール302へ送りスライドを空いているスライドステーションへ挿入させる。スライドの位置情報は、システムに記憶されている。一実施例では、スライドの位置は、患者の状況、医師または病院、保存期間ほかの基準で選択される。スライドを取り出そうとするとき、例えば病理学者がシステムに更なるスライドの画像化を指示したときにはコントローラ400が所望のスライドの位置情報を判断し、スライドを保存モジュール314内の所定のスライドステーションから取り出すよう信号を搬送モジュール302へ送る。
【0100】
図9には保存モジュールと
図8のエレベータ装置の斜視図を示す。
図9において、リフト部材620は軌道702に沿って垂直方向へスライドする。この点、リフト部材620は、軌道702と対応し、係合する突起部が外面に沿って形成されている。同様に、軌道部材604は、枠部材618が沿ってスライドする軌道704を含む。
【0101】
図8,9にはスライド保存用の保存モジュールを示す。他の実施例では、保存モジュールは、組織塊(例、識別タグを含む組織塊)と同じようにスライドを保存するようにできている。さらに他の実施例では、システムは、スライドを保存する保存モジュール202と、組織塊を保存する別の保存モジュールを含む。組織塊を保存する保存モジュールは、識別子リーダを含み、コントローラ400とリンクするなど保存モジュール314と同じ構成にすることができる。それぞれの構成で、コントローラ400は、スライドと組織塊の識別情報を記憶することにより、スライドを組織塊とリンクさせることができる。
図4に、コンベア402と隣接する顕微鏡切片作成モジュール307を示す。顕微鏡切片作成モジュールは、マイクロトームナイフを含む組織塊処理装置と、コントローラ400にリンクする識別子リーダを含む。一実施例において、組織塊は顕微鏡切片作成モジュール307からコンベア402へ移送され(あるいはコンベア402から顕微鏡切片作成モジュール307へ移送され)、または保存モジュール314からコンベア402へ載置/取り出しされ、あるいはその逆が上述のスライドの載置/取り出し方法と同様に行われる。
【0102】
スライドを処理ステーション間で搬送する自動化システムを開示する。当業者には本発明が、本発明を説明する上記実施例の他の形態でも実施することができ、上述の実施例に限定されないことや、後述する特許請求の範囲にのみ限定されることが理解できよう。なお、上述した特定の実施例と均等な範囲で実施することもできる。一実施例において、「反応染色」の方式が実施される。この方式では、システムは、解析モジュールのパターン認識報告に基づき、生体標本の特別な染色および/または検査の実施を提案する。反応染色装置では、染色システム、画像化装置、解析モジュールが一体化され、1個の自動装置となっている。また、それらの装置は別々の位置に存在してもよい。例えば、グロッシング、加工、包埋、顕微鏡切片作成、染色、カバースリップ付着の処理を、前記装置を用いて反応染色装置の内外で実施するようにしてもよい。
【0103】
ある実施例では、上述の搬送モジュールは、組織塊の処理と連動する。一般的に、パラフィンブロック内でグロスおよび/または固定された組織標本は、搬送モジュールによって顕微鏡切片作成モジュール、画像化装置、保存モジュールの間を搬送される。例えば、識別子が付され組織が包埋された組織ブロックは、マイクロトームナイフによって切断されて組織片とし、その後保存モジュールへ搬送される。もし、組織片の検査において、さらに組織片が必要と判断されれば、コントローラは信号を搬送モジュールへ送り、ブロックを保存モジュールから取り出し、更なる切片を作成するために当該ブロックを顕微鏡切片作成モジュールへ送る。
【0104】
本発明の一以上の実施例において、指示を含むプログラム等を含む機械可読媒体が使用される。その媒体は、ロボットや一体化装置などの機械が実行するための指示を提供し、ここに開示する1以上の動作や方法を実行させる。好適な装置は、限定はされないが、ロボット、一体化装置、コンピュータシステム、研究所装置など各種装置である。一般的に、媒体は、記録可能媒体であり、例えばフロッピディスク、光学的記録媒体、光ディスク、CD-ROM、磁気ディスク、MOディスク、ROM、PROM、EPROM、EEPROM、RAM、SRAM、DRAM、フラッシュメモリなどのメモリや、ロボットを制御するプログラマブルロジカルユニットの機械可読媒体や、それらの組み合わせが使用される。
【0105】
上述の実施例において、例えば「一実施例」、「実施例」、「1以上の実施例」と記したのは、発明の特徴点は、発明を実施する各実施例に含まれるということを意味することが理解できる。同様に、説明を効率的にしたり、種々の発明点を理解できるよう、種々の特徴点を1個の実施例や図面、記述でまとめている場合もある。しかしながら、方法の開示は各請求項の特徴点を示すものとは解釈できない。後述する請求項の全ての特徴点を1個の実施例では開示できない。そこで、詳細な説明の後に来る特許請求の範囲の請求項は、それぞれ別個の実施例によって説明される。
【0106】
上述の実施例では、本発明を特定の実施例を挙げて説明した。しかしながら、各種改良、変更は請求項に示す発明の精神と範囲を逸脱しない限り可能である。明細書と図面は解説であり、制限するものではない。