特許第6334616号(P6334616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6334616中空成形品の成形方法および中空成形品の成形装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334616
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】中空成形品の成形方法および中空成形品の成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20180521BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20180521BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20180521BHJP
   B29C 65/70 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   B29C45/14
   B29C45/16
   B29C45/26
   B29C65/70
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-137818(P2016-137818)
(22)【出願日】2016年7月12日
(65)【公開番号】特開2018-8399(P2018-8399A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2017年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】山本 惟由
(72)【発明者】
【氏名】松崎 孝治
(72)【発明者】
【氏名】須佐 圭呉
(72)【発明者】
【氏名】河本 粋和
(72)【発明者】
【氏名】西田 正三
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−221575(JP,A)
【文献】 特開2000−43102(JP,A)
【文献】 特開平10−175230(JP,A)
【文献】 特開昭62−87315(JP,A)
【文献】 特開昭61−193815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/14,45/16,45/26,33/44,65/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型締めすると、第1の半中空成形品を成形するための第1のキャビティと、第2の半中空成形品を成形するための第2のキャビティと、所定のインサート用キャビティとが構成される一対の金型を使用し、
前記金型を型締めして、前記第1、2のキャビティに樹脂を射出して前記第1、2の半中空成形品を成形する1次成形工程と、
前記金型を型開きして、取出・搬送手段により前記第1、2の半中空成形品を前記第1、2のキャビティから取り出して前記第1、2の半中空成形品をそれらの接合部が突き合わされた状態にして前記インサート用キャビティにインサートする搬送工程と、
前記金型を型締めして、前記インサート用キャビティに樹脂を射出して前記接合部において前記第1、2の半中空成形品を一体化して中空成形品を成形する2次成形工程と、からなる成形サイクルによって中空成形品を成形するとき、
前記2次成形工程と並行して次回の成形サイクルにおける前記1次成形工程を同時に実施し、連続的に中空成形品を成形することを特徴とする中空成形品の成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載の成形方法において、前記搬送工程において、前記金型を型開きするとき第1、2の半中空成形品をそれぞれの外周面が露出するようにして前記金型の一方に残すことを特徴とする中空成形品の成形方法。
【請求項3】
射出成形機と、前記射出成形機によって型締めされる一対の金型と、前記金型の近傍に設けられている取出・搬送手段とからなり、
前記金型は、型締めされると第1の半中空成形品を成形するための第1のキャビティと、第2の半中空成形品を成形するための第2のキャビティと、所定のインサート用キャビティとが構成され、
前記取出・搬送手段は、型開きされた前記金型において、前記第1、2のキャビティから第1、2の半中空成形品を取り出して、これらを互いの接合部が突き合わされた状態にして前記インサート用キャビティにインサートするようになっており、
前記インサート用キャビティに第1、2の半中空成形品がインサートされた状態で前記金型が型締めされ、前記射出成形機から樹脂が射出されると、前記第1、2のキャビティに樹脂が充填されて新たな第1、2の半中空成形品が成形されると共に、前記インサートされた第1、2の半中空成形品が前記接合部において結合されて中空成形品が成形されるようになっていることを特徴とする、中空成形品の成形装置。
【請求項4】
請求項3に記載の成形装置において、前記金型は、第1、2の半中空成形品が成形されて型開きされるとき、前記第1、2の半中空成形品のそれぞれの外周面が露出するようにして前記金型の一方に残るようになっていることを特徴とする中空成形品の成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のヘッドランプ等の中空成形品を成形する成形方法、および中空成形品の成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂製の中空成形品は色々な方法で成形することができる。例えば、特許文献1には、射出成形機による射出成形とヒータによる溶着とから中空成形品を成形する方法が記載されている。この方法は、スライド金型と固定金型とからなる一対の金型と、ハロゲンヒータまたはカーボンヒータからなるヒータとを使用する。まずスライド金型と固定型とを型締めし、一対の半成形品を接合端面を有するように射出成形する。スライド金型に一方の半成形品を、固定金型に他方の半成形品をそれぞれ残すようにして型開きし、スライド金型をスライドさせて、それぞれの接合端面を整合させる。接合端面を接近させて、この間にヒータを挿入して接合端面を溶融する。ヒータを退避させ、型閉じして接合端面を溶着する。中空成形品が得られる。この文献に記載の方法は、金型内で射出成形と溶着とを実施して中空成形品が得られるので、塵埃や汚れが付着することなく優れている。また中空成形品は、接合端面を溶着させて得るようにするので、接合強度が高く優れており、インテークマニホールド、タンク等の複雑な形状の中空成形品の成形に適していると言える。しかしながら接合部分において溶着痕が残るので、美観が要求される中空成形品に対する適用は難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−220429号公報
【特許文献2】特公平02−038377号公報
【0004】
これに対して、射出成形のみによって中空成形品を成形する方法もあり、特許文献2等、多数の特許文献において提案されている、いわゆるダイ・スライド・インジェクション法が周知である。ダイ・スライド・インジェクション法は、射出成形のみから成形するので、美観に優れた中空成形品を得ることができる。図5には、ダイ・スライド・インジェクション法によって自動車のヘッドランプを成形する方法が示されており、図5の(ア)に示されているように、射出成形機51の固定盤52に設けられている固定金型53と、可動盤55に設けられているスライド金型56とを使用する。スライド金型56はアクチュエータ58によって2位置にスライドされるようになっている。固定金型53にはパーティングラインに第1の凹部60と第1の凸部61が形成され、スライド金型56にはパーティングラインに第2の凸部63と第2の凹部64が形成されている。これを所定のスライド位置で、図5の(イ)に示されているように型締めすると、第1の凹部60と第2の凸部63とからランプレンズを成形するためのキャビティが、第1の凸部51と第2の凹部64とからランプハウジングを成形するためのキャビティが構成される。1次成形により第1、2の射出装置66、67から2種類の樹脂を射出してランプレンズ68とランプハウジング69とを成形する。図5の(ウ)に示されているように、ランプレンズ68を固定金型53に、ランプハウジング69をスライド金型56に残すようにして型開きする。図5の(エ)に示されているように、アクチュエータ58を駆動してスライド金型56をスライドし、ランプレンズ68とランプハウジング69を対向させる。図5の(オ)に示されているように型締めし、2次成形により第1の射出装置66から射出するとランプレンズ68とランプハウジング69は一体化される。型開きすると、図5の(カ)に示されているようにヘッドランプ70が得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダイ・スライド・インジェクション法は、金型内で中空成形品を成形することができるので、塵埃や汚れが付着し難い。そして射出成形のみによって成形するので美観に優れた中空成形品を得ることができ、優れている。しかしながら解決すべき問題も見受けられる。まず生産性の問題がある。ダイ・スライド・インジェクション法では、1個の中空成形品を得るのに、1次成形と2次成形の2回の射出成形を実施する必要がある。つまり2回の成形サイクルを実施する必要があり、成形サイクル毎に成形品を得ることができない。また2次成形においては、図5の(オ)に示されているように、第1、2の凸部61、63や第2の射出装置67は使用されておらず、装置が十分に活用されているとは言えない。つまり生産性において改善の余地が見受けられる。またスライド金型56を2位置にスライドして、いずれの位置においても正確に固定金型53に対して型締めできるようにする必要があるので、金型構造が複雑になり金型のコストが高くなるという問題もある。さらに、ダイ・スライド・インジェクション法においては、可動盤55に、スライド金型56をスライドさせるためのスペースを確保しなければならない。そうすると金型の大きさに比して型盤装置が大型にならざるを得ず、必然的に大型の射出成形機が必要になる。また型盤における金型の配置、すなわち金型レイアウトにも制約がある。
【0006】
ところで、ダイ・スライド・インジェクション法は1台の射出成形機において1次成形と2次成形を実施して中空成形品を成形する方法であるが、2台の射出成形機を使用して中空成形品を成形する方法も考えられる。例えば自動車のフロントランプを成形する場合、第1の射出成形機においては1次成形のみを実施してランプハウジングとランプレンズとを成形する。そして第2の射出成形機において2次成形を実施する。つまり金型の凹部にランプハウジングとランプレンズとをインサートして型締めし、これらを結合してフロントランプを成形する。このようにすると、効率よく中空成形品が得られる。しかしながら、2台の射出成形機が必要になるので製造コストは高くなる。また、樹脂の温度の低下による収縮の問題もある。1次成形により成形されたランプハウジングとランプレンズは、時間経過と共に温度が低下して収縮するので、2次成形においてこれらをインサートする金型の凹部は、このような収縮を考慮して大きさを決定しておかなければならない。ところで、収縮の度合いは温度によって違うので、ランプハウジングとランプレンズの冷却が少ないときは収縮量が小さく、十分に冷却していれば収縮量は大きい。そうするとインサートするランプハウジングとランプレンズの温度も金型の凹部の大きさに影響するはずであり、最適な大きさを決定することが困難になる。いずれにしても、設計において考慮すべき点が多く、金型の製造コストが大きくなるという問題がある。
【0007】
したがって、本発明は、美観に優れた中空成形品を高い生産性で、かつ比較的小型の射出成形機によっても成形することができ、成形する金型がシンプルで低コストで提供することができる中空成形品の成形方法、および中空成形品の成形装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、射出成形機と所定の金型を取出・搬送手段とを使用した中空成形品の成形方法として構成される。金型は、型締めすると、第1の半中空成形品を成形するための第1のキャビティと、第2の半中空成形品を成形するための第2のキャビティと、所定のインサート用キャビティとが構成されるようにする。成形サイクルは、1次成形工程と、搬送工程と、2次成形工程とから構成し、1次成形工程は型締めした金型に射出して第1、2の半中空成形品を成形する。搬送工程は取出・搬送手段により第1、2の半中空成形品を第1、2のキャビティから取り出して、それらの接合部が突き合わされた状態にしてインサート用キャビティにインサートする。2次成形工程は、金型を型締めして、インサート用キャビティに樹脂を射出して接合部において第1、2の半中空成形品を一体化する。すなわち中空成形品を成形する。2次成形工程を実施するときに、次回の成形サイクルの1次成形工程を同時に実施して、連続的に中空成形品を成形するようにする。
【0009】
すなわち請求項1に記載の発明は、型締めすると、第1の半中空成形品を成形するための第1のキャビティと、第2の半中空成形品を成形するための第2のキャビティと、所定のインサート用キャビティとが構成される一対の金型を使用し、前記金型を型締めして、前記第1、2のキャビティに樹脂を射出して前記第1、2の半中空成形品を成形する1次成形工程と、前記金型を型開きして、取出・搬送手段により前記第1、2の半中空成形品を前記第1、2のキャビティから取り出して前記第1、2の半中空成形品をそれらの接合部が突き合わされた状態にして前記インサート用キャビティにインサートする搬送工程と、前記金型を型締めして、前記インサート用キャビティに樹脂を射出して前記接合部において前記第1、2の半中空成形品を一体化して中空成形品を成形する2次成形工程と、からなる成形サイクルによって中空成形品を成形するとき、前記2次成形工程と並行して次回の成形サイクルにおける前記1次成形工程を同時に実施し、連続的に中空成形品を成形することを特徴とする中空成形品の成形方法として構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の成形方法において、前記搬送工程において、前記金型を型開きするとき第1、2の半中空成形品をそれぞれの外周面が露出するようにして前記金型の一方に残すことを特徴とする中空成形品の成形方法として構成される。
請求項3に記載の発明は、射出成形機と、前記射出成形機によって型締めされる一対の金型と、前記金型の近傍に設けられている取出・搬送手段とからなり、前記金型は、型締めされると第1の半中空成形品を成形するための第1のキャビティと、第2の半中空成形品を成形するための第2のキャビティと、所定のインサート用キャビティとが構成され、前記取出・搬送手段は、型開きされた前記金型において、前記第1、2のキャビティから第1、2の半中空成形品を取り出して、これらを互いの接合部が突き合わされた状態にして前記インサート用キャビティにインサートするようになっており、前記インサート用キャビティに第1、2の半中空成形品がインサートされた状態で前記金型が型締めされ、前記射出成形機から樹脂が射出されると、前記第1、2のキャビティに樹脂が充填されて新たな第1、2の半中空成形品が成形されると共に、前記インサートされた第1、2の半中空成形品が前記接合部において結合されて中空成形品が成形されるようになっていることを特徴とする、中空成形品の成形装置として構成される。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の成形装置において、前記金型は、第1、2の半中空成形品が成形されて型開きされるとき、前記第1、2の半中空成形品のそれぞれの外周面が露出するようにして前記金型の一方に残るようになっていることを特徴とする中空成形品の成形装置として構成される。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によると、型締めすると、第1の半中空成形品を成形するための第1のキャビティと、第2の半中空成形品を成形するための第2のキャビティと、所定のインサート用キャビティとが構成される一対の金型を使用する。そして金型を型締めして、第1、2のキャビティに樹脂を射出して第1、2の半中空成形品を成形する1次成形工程と、金型を型開きして、取出・搬送手段により第1、2の半中空成形品を第1、2のキャビティから取り出して第1、2の半中空成形品をそれらの接合部が突き合わされた状態にしてインサート用キャビティにインサートする搬送工程と、金型を型締めして、インサート用キャビティに樹脂を射出して接合部において第1、2の半中空成形品を一体化して中空成形品を成形する2次成形工程と、からなる成形サイクルによって中空成形品を成形する。つまり射出成形のみによって中空成形品を成形できるので美観に優れた中空成形品が得られる。そして本発明によると、2次成形工程と並行して次回の成形サイクルにおける1次成形工程を同時に実施し、連続的に中空成形品を成形するように構成されている。そうすると、成形サイクル毎に中空成形品を成形することができる。換言すると型開きする毎に中空成形品が得られ、生産性が高い。そして金型はスライドする必要がないのでシンプルである。またスライドしないので、大型の型盤装置を用意する必要がない。つまり比較的小型の射出成形機によって成形することができる。そして本発明によると、1次成形された第1、2の半中空成形品は、金型の第1、2のキャビティから取り出されて、他所に一時的にプールされることなく直接インサート用キャビティにインサートされる。つまり同時にかつ一定の時間で搬送されることになり、第1、2の半中空成形品は、冷却時間が一定で短時間で済む。つまりインサート用キャビティにインサートされるときの第1、2の半中空成形品の温度は成形サイクル毎に変化せず、比較的温度は高い状態になることが保証される。そうすると樹脂の温度低下による収縮は一定で、収縮の程度は小さい。一応、インサート用キャビティは、冷却による樹脂の収縮を考慮してその大きさを決定する必要があるが、収縮の度合いが小さいので考慮すべき収縮量は少なくて済む。さらにインサート用キャビティは、第1、2のキャビティと同じ金型に設けられているので、必然的にインサート用キャビティの温度は第1、2のキャビティと近い温度になる。そうするとキャビティの温度の違いによる金属の熱膨張の違いを考慮する必要がない。つまり、金型においてインサート用キャビティの大きさを決定するときに考慮すべき要因が少なく、大きさを容易に決定することができる。従って金型の製造コストは少なくて済む。他の発明によると、搬送工程において、金型を型開きするとき第1、2の半中空成形品をそれぞれの外周面が露出するようにして金型の一方に残すように構成されている。そうすると取出・搬出手段は、露出している外周面を把持して第1、2の半中空成形品を取り出すことができ、把持した状態で第1、2の半中空成形品を互いの接合部において突き合わせることができ、これをインサート用キャビティにインサートすることができる。もし、金型を型開きするときに第1、2の半中空成形品が中空になる内周面が露出するようになっていれば、取出・搬送手段は第1、2の半中空成形品を金型から取り出した後に、これらを持ち替えてそれぞれの外周面を把持するようにし、その後これらを接合部において突き合わせる必要がある。しかしながらこの発明によると、第1、2の半中空成形品の取出し後に、これらを持ち替える必要がない。そうすると取出・搬送手段をシンプルにすることができるし、生産効率も高くなる。すなわち安価に中空成形品を成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る金型を含む本発明の実施の形態に係る成形装置を一部断面で示す正面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る金型をパーティングラインから見た正面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る中空成形品を成形方法を模式的に示す図で、その(ア)〜(キ)は色々な工程における本発明の実施の形態に係る成形装置を示す正面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る中空成形品を成形方法を模式的に示す図で、その(ア)〜(エ)は色々な工程における本発明の実施の形態に係る成形装置を示す正面図である。
図5】従来例を示す図で、その(ア)〜(カ)はダイ・スライド・インジェクション法の各工程における、中空成形品の製造装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の実施の形態に係る中空成形品の成形装置1は、中空成形品である自動車のフロントランプを成形する装置であり、図1に示されているように、射出成形機2と、この射出成形機2に設けられている一対の金型4、5と、金型4、5の近傍に設けられている取出・搬送手段6とから構成されている。本実施の形態に係る射出成形機2は型締装置8と、第1、2の射出装置9、10とから構成され、二色の樹脂を同時に射出できるようになっている。型締装置8は従来周知のように、固定盤12と可動盤13とを備え、一対の金型4、5が取付けられている。固定盤12に取付けられている金型4は固定側金型4であり、固定側金型4の背面に設けられているスプルに第1、2の射出装置9、10のノズル9a、10aが当接している。可動盤13に取付けられている金型5は可動側金型5である。
【0013】
本実施の形態に係る金型4、5は、自動車のフロントランプを2個同時に成形することができる、いわゆる多数個取りの金型になっている。図2には、可動側金型5をパーティングラインから見た正面図が示されているが、パーティングラインに2箇所の成形部15、16が設けられている。図には示さないが、固定側金型4も同様に、2箇所の成形部が設けられている。それぞれの成形部15、16においてそれぞれ1個の中空成形品つまりフロントランプが成形されるようになっている。金型4、5をパーティング面と並行に見る図1においては、一方の成形部15のみが示され、他方の成形部16は重なっていて示されていない。2箇所の成形部15、16は同じ構造からなり、同様の作用を奏するので、以下一方の成形部15についてのみ説明し、他方の成形部16についての説明は省略する。
【0014】
固定側金型4の1箇所の成形部には、パーティングラインに3個の凹部が形成されている。すなわち、フロントランプのランプハウジングを成形するための第1の凹部18と、ランプレンズを成形するための第2の凹部19と、ランプハウジングとランプレンズとを結合するための第3の凹部20とが形成されている。第1の凹部18と第2の凹部19には、それぞれの周縁部に所定の段部18a、19aが形成されている。これらの段部18a、19aによって、ランプハウジングとランプレンズには所定の肉厚の接合部が形成されることになる。第3の凹部20にもその周縁部に段部20aが形成されており、2次成形においてランプハウジングとランプレンズとを結合するための樹脂が射出されるようになっている。可動側金型5の1箇所の成形部には、そのパーティングラインの第1〜3の凹部18、19、20と対応する位置に、それぞれ第1のコア22、第2のコア23、第4の凹部24が形成されている。金型4、5を型締めすると、第1の凹部18と第1のコア22とから第1の半中空成形品つまりランプハウジングを成形するための第1のキャビティが、第2の凹部19と第2のコア23とから第2の半中空成形品つまりランプレンズを成形するための第2のキャビティが構成される。そして第3、4の凹部22、24から、ランプハウジングとランプレンズをインサートすると共にこれらを結合するためのインサート用キャビティが構成される。前記したように固定側金型4にはその背面に第1、2の射出成形機9、10のノズル9a、10aが当接しているが、第1の射出成形機9からの樹脂は、第1のキャビティとインサート用キャビティに射出されるようになっており、第2の射出成形機10からの樹脂は、第2のキャビティに射出されるようになっている。
【0015】
取出・搬送手段6は、金型4、5において成形されたランプハウジングとランプレンズとを第1、2のキャビティから取出し、そしてこれらをそれぞれの接合部において当接させてインサート用キャビティにインサートする装置であり、金型4、5の近傍、より詳しくは、型開き状態における可動側金型5のパーティングラインの近傍になるように設けられている。取出・搬送手段6は、ランプハウジングを把持する第1のチャック26と、ランプレンズを把持する第2のチャック27と、第1、2のチャック26、27を駆動するロボットアーム28とから構成されている。実際には、この取出・搬送手段6は金型4、5の2箇所の成形部において同時に成形される2個のランプハウジングと2個のランプレンズとを同時に取り出して、これらを2箇所のインサート用キャビティに同時にインサートするようになっており、第1、2のチャック26、27はそれぞれ2個ずつ設けられているが、図1には1個ずつしか示されていない。このような取出・搬送手段6は、図示されない駆動手段によって可動側金型5のパーティングラインに並行にスライドされて、可動側金型5内に入れられたり可動側金型5から待避するようになっている。
【0016】
本実施の形態に係る中空成形品の成形装置1によって中空成形品、つまり自動車のフロントランプを成形する方法を説明する。金型4、5を型締めすると、図3の(ア)に示されているように、第1の凹部18と第1のコア22とから第1のキャビティが、第2の凹部19と第2のコア23とから第2のキャビティが、そして第3、4の凹部20、24からインサート用キャビティが構成される。図3の(イ)に示されているように、第1、2の射出装置9、10を駆動して第1、2のキャビティに樹脂を射出する。すなわち1次成形を実施する。そうすると所定の有色樹脂からランプハウジング30が、透明な樹脂からランプレンズ31が成形される。冷却固化を待って、金型4、5を型開きする。このとき図3の(ウ)に示されているように、ランプハウジング30とランプレンズ31が、第1、2のコア22、23に残るようにして型開きする。そうするとランプハウジング30とランプレンズ31は、フロントランプになるときに内周面になる内側ではなく、外周面になる部分が露出する。取出・搬出手段6を駆動する。図3の(エ)に示されているように、第1のチャック26によってランプハウジング30の外周面を、第2のチャック27によってランプレンズ31の外周面を、それぞれ把持する。把持した状態で第1、2のコア22、23からランプハウジング30とランプレンズ31とを取り外すと、図3の(オ)に示されているようになる。取出・搬送手段6においてロボットアーム28を駆動して、図3の(カ)に示されているように、ランプハウジング30とランプレンズ31とをそれぞれの接合部において当接させる。詳しくは説明しないが、それぞれの接合部は嵌合されて緩やかに結合される。ランプハウジング30から第1のチャック26を外しロボットアーム28を駆動すると、図3の(キ)に示されているようになる。
【0017】
取出・搬送手段6を駆動して、図4の(ア)に示されているように、可動側金型5の第4の凹部24に、互いの接合部において緩やかに嵌合されたランプハウジング30とランプレンズ31をインサートする。ランプレンズ31から第2のチャック27を外して、取出・搬送手段6を金型4、5から待避する。金型4、5を型締めすると図4の(イ)に示されているように、第3、4の凹部20、24からなるインサート用キャビティに、互いの接合部において緩やかに嵌合されたランプハウジング30とランプレンズ31がインサートされた状態になる。このとき、第1の凹部18と第1のコア22とから第1のキャビティが、第2の凹部19と第2のコア23とから第2のキャビティが構成される。図4の(ウ)に示されているように、第1、2の射出装置9、10を駆動して樹脂を射出する。そうすると第1の射出装置9からはインサート用キャビティと第1のキャビティとに樹脂が射出され、第2の射出装置10からは第2のキャビティに樹脂が射出される。そうするとインサート用キャビティにおいて、2次成形が行われてランプハウジング30とランプレンズ31とが結合されて中空成形品が成形される。すなわち自動車のフロントランプ32が成形される。そして第1、2のキャビティにおいて、1次成形が行われてランプハウジング30’とランプレンズ31’とが成形される。金型4、5を型開きすると、図4の(エ)に示されているように、フロントランプ32が得られる。このとき、前記したようにランプハウジング30’とランプレンズ31’は、第1、2のコア22、23に残った状態になる。以下、同様にしてフロントランプ32を成形する。
【0018】
本実施の形態に係る中空成形品の成形方法は色々な変形が可能である。例えば、本実施の形態においては、取出・搬送手段6によってランプハウジング30とランプレンズ31とを金型とから取り外した後、すぐにロボットアーム28を駆動して、ランプハウジング30とランプレンズ31とをそれぞれの接合部において当接させ、これらを緩やかに嵌合させるように説明した。しかしながら、嵌合させる前に、フロントランプを構成する所定の部品、例えば反射板等をランプハウジング30にインサートしてもよい。そうすると、ランプハウジング30とランプレンズ31の中にインサート品が入れられた状態で、2次成形を実施することができる。他の変形も可能である。例えば、本実施の形態においては第1、2の射出装置9、10により2色の樹脂を射出する様に説明したが、1台の射出装置のみ使用して1色の樹脂を射出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0019】
1 中空成形品の成形装置 2 射出成形機
4 固定側金型 5 可動側金型
6 取出・搬送手段 8 型締装置
9 第1の射出装置 10 第2の射出装置
12 固定盤 13 可動盤
18 第1の凹部 19 第2の凹部
20 第3の凹部 22 第1のコア
23 第2のコア 24 第4の凹部
26 第1のチャック 27 第2のチャック
28 ロボットアーム 30 ランプハウジング
31 ランプレンズ
図1
図2
図3
図4
図5