(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0007】
概要
本発明は、1つの局面において、ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物の糸、第2の局面において、架橋ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物の糸を提供することによって、これらのおよび他のニーズを満たす。一部の態様において、糸は、ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物の糸と、架橋ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物の糸の組み合わせである。
【0008】
第3の局面において、ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物の糸を作製する方法が提供される。ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物は、水または緩衝液と混合されてゲルを形成する。ゲルは押し出されて糸を形成する。次いで、糸は乾燥されて、ヒアルロン酸の糸が得られる。
【0009】
第4の局面において、架橋ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物の糸を作製する方法が提供される。ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物は、水または緩衝液および架橋剤と混合されて、ゲルを形成する。ゲルは押し出されて糸を形成する。次いで、糸は乾燥されて、架橋ヒアルロン酸の糸が得られる。
【0010】
第5の局面において、皺の治療を必要とする対象において皺を治療する方法が提供される。ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物の糸、または架橋ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物の糸、またはその組み合わせが針の基端側に取り付けられる。針の末端が、対象の皮膚表面を通って、皺に隣接するかまたは皺の中にある真皮に挿入される。皺の基部にある対象の真皮に針が通される。次いで、針は対象の皮膚表面から出て、針が以前に占有していた位置に糸が引き込まれるように、対象の皮膚から取り出されるまで末端側に引っ張られる。余分な糸は、対象の皮膚表面で針から切断される。
【0011】
さらに他の局面において、例えば、皮膚充填剤、癒着防止材、陰圧創傷用包帯を含む創傷用包帯、縫合糸などとして、ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物の糸、または架橋ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物の糸、またはその組み合わせを使用する方法が提供される。例えば、外科手術、眼科学(opthamology)、創傷閉鎖、薬物送達などにおいて、ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物の糸、または架橋ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物の糸、またはその組み合わせを使用する方法がさらに提供される。
[本発明1001]
ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物からなる、糸。
[本発明1002]
架橋ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物からなる、糸。
[本発明1003]
ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物からなる糸と、架橋ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物からなる糸との組み合わせからなる、糸。
[本発明1004]
本発明1001〜1003のいずれかの糸を含む、創傷用包帯。
[本発明1005]
糸がコラーゲンを含む、本発明1004の創傷用包帯。
[本発明1006]
本発明1001〜1003のいずれかの糸からなる少なくとも1つの織物メッシュを含む、創傷用包帯。
[本発明1007]
2層〜約10層の織物メッシュを含む、本発明1006の創傷用包帯。
[本発明1008]
織物メッシュが同一の糸を含む、本発明1006の創傷用包帯。
[本発明1009]
織物メッシュが異なる糸を含む、本発明1006の創傷用包帯。
[本発明1010]
本発明1001〜1003のいずれかの糸を含む、癒着防止材。
[本発明1011]
本発明1001〜1003のいずれかの糸からなる少なくとも1つの織物メッシュを含む、癒着防止材。
[本発明1012]
創傷位置に適合するパッド、パッドに着脱可能に接着された気密シール、パッドと流体連通している陰圧源、およびパッドの創傷接触面に取り付けられた本発明1001〜1003のいずれかの糸を含む、創傷用包帯。
[本発明1013]
糸からなる少なくとも1層の織物メッシュを含む、本発明1012の創傷用包帯。
[本発明1014]
本発明1004の創傷用包帯を、創傷治療を必要とする対象の創傷に取り付ける工程を含む、対象における創傷を治療する方法。
[本発明1015]
本発明1012の創傷用包帯を、創傷治療を必要とする対象の創傷に取り付ける工程を含む、対象における創傷を治療する方法。
[本発明1016]
本発明1001〜1003のいずれかの糸からなる、皮膚充填剤。
[本発明1017]
美容用途において本発明1016の皮膚充填剤を使用する方法。
[本発明1018]
本発明1001〜1003のいずれかの糸からなる、縫合糸。
[本発明1019]
外科手術用途において本発明1018の縫合糸を使用する方法。
[本発明1020]
外科手術用途、眼科手術、創傷閉鎖、薬物送達、および関節内注射において本発明1001〜1003のいずれかの糸を使用する方法。
[本発明1021]
以下の工程を含む、対象における皺を治療する方法:
本発明1001〜1003のいずれかの糸を針に取り付ける工程;
針の末端を、対象の皮膚表面に通して、皺に隣接する対象の真皮に挿入する工程;
針を用いて、皺の下にある対象の真皮を横断する工程;
針を、対象の皮膚表面から押し出す工程;および
対象の皮膚表面で糸を針から切断する工程。
[本発明1022]
ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物と、水または緩衝液とを混合して、ゲルを形成する工程;
ゲルを押し出して糸にする工程;
ヒアルロン酸の糸を乾燥させる工程を含む、本発明1001の糸を作製する方法。
[本発明1023]
治療剤および/または診断剤と、ヒアルロン酸と、水または緩衝液とを混合して、ゲルを形成する工程をさらに含む、本発明1022の方法。
[本発明1024]
ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物と、水または緩衝液および架橋剤とを混合して、ゲルを形成する工程;
ゲルを押し出して糸にする工程;
架橋ヒアルロン酸の糸を乾燥させる工程を含む、本発明1002の糸を作製する方法。
[本発明1025]
治療剤および/または診断剤と、ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物と、水または緩衝液および架橋剤とを混合して、ゲルを形成する工程をさらに含む、本発明1024の方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
定義
「緩衝液」には、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、L-(+)-酒石酸、D-(-)-酒石酸、ACES、ADA、酢酸、酢酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、クエン酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸アンモニウムナトリウム、硫酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、BES、BICINE、BIS-TRIS、炭酸水素塩、ホウ酸、CAPS、CHES、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、クエン酸塩、クエン酸、ジエタノールアミン、EPP、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩、ギ酸溶液、Gly-Gly-Gly、Gly-Gly、グリシン、HEPES、イミダゾール、酢酸リチウム、クエン酸リチウム、MES、MOPS、酢酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、ギ酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、シュウ酸、PIPES、リン酸緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水、ピペラジンD-酒石酸カリウム、酢酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、塩化カリウム、クエン酸カリウム、ギ酸カリウム、シュウ酸カリウム、リン酸カリウム、フタル酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム、四ホウ酸カリウム、四シュウ酸カリウム脱水和物、プロピオン酸溶液、STE緩衝溶液、5,5-ジエチルバルビツール酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸水素ナトリウム一水和物、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、TAPS、TES、TNT、TRIS-グリシン、TRIS-酢酸、TRIS緩衝食塩水、TRIS-HCl、TRISリン酸-EDTA、トリシン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、酢酸トリエチルアンモニウム、リン酸トリエチルアンモニウム、酢酸トリメチルアンモニウム、リン酸トリメチルアンモニウム、Trizma(登録商標)酢酸塩、Trizma(登録商標)塩基、Trizma(登録商標)炭酸塩、Trizma(登録商標)塩酸塩またはTrizma(登録商標)マレイン酸塩が含まれるが、これに限定されない。
【0014】
「塩」は、親化合物の望ましい活性を有する、ヒアルロン酸の塩を指す。このような塩には、(1)無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などを用いて形成される、酸添加塩;もしくは有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-二スルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、t-ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などを用いて形成される、酸添加塩;あるいは(2)塩親化合物に存在する酸性プロトンが、アンモニウムイオン、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン(例えば、ナトリウムもしくはカリウム)、アルカリ土類イオン(例えば、カルシウムもしくはマグネシウム)、またはアルミニウムイオンで置換された時に形成される、塩;あるいは有機塩基、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルグルカミン、モルホリン、ピペリジン、ジメチルアミン、ジエチルアミンなどとの配位結合が含まれるが、これに限定されない。例えばアルギン酸塩(arginate)などのアミノ酸の塩、およびグルクロン酸(glucurmic acid)またはガラクツロン酸(galactunoric acid)などの有機酸の塩も含まれる。
【0015】
ヒアルロン酸およびその誘導体の糸
本発明は、概して、ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物の糸、架橋ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物の糸、およびその組み合わせを提供する。一部の態様において、ヒアルロン酸は動物供給源から単離される。他の態様において、ヒアルロン酸は細菌発酵物から単離される。
【0016】
一部の態様において、インビボでのヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物の糸の寿命は、約1分〜約1ヶ月である。他の態様において、インビボでのヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物の糸の寿命は、約10分〜約1週間である。さらに他の態様において、インビボでのヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物の糸の寿命は、約1時間〜約3日である。
【0017】
一部の態様において、インビボでの架橋ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物の糸の寿命は、約1週間〜約24ヶ月である。他の態様において、インビボでの架橋ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物の糸の寿命は、約1ヶ月〜約12ヶ月である。さらに他の態様において、インビボでのヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物の糸の寿命は、約3ヶ月〜約9ヶ月である。
【0018】
一部の態様において、ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物は、ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)、ジビニルスルホン(DVS)、または塩酸1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)を用いて架橋されている。当業者であれば、他の多くの架橋剤を使用して、ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物を架橋できることを理解するだろう。従って、上記の架橋剤リストは包括的なものではなく例示である。
【0019】
前記の態様の一部では、ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物と架橋剤との架橋の程度は、約0.01%〜約20%である。前記の態様の他の態様では、ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物と架橋剤との架橋の程度は、約0.1%〜約10%である。前記の態様のさらに他の態様では、ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物と架橋剤との架橋の程度は、約1%〜約8%である。
【0020】
前記の態様の一部では、糸は、1つまたは複数の治療剤または診断剤を含む。前記の態様の他の態様では、診断剤は可溶性TB(結核)タンパク質である。前記の態様のさらに他の態様では、治療剤は、リドカイン、キシロカイン、ノボカイン、ベンゾカイン、プリロカイン、リピバカイン(ripivacaine)、プロポフォール、またはその組み合わせが含まれるが、これに限定されない麻酔薬である。前記の態様のさらに他の態様では、治療剤は、エピネフリン、アドレナリン、エフェドリン、アミノフィリン、テオフィリンまたはその組み合わせである。前記の態様のさらに他の態様では、治療剤はボツリヌス毒素である。前記の態様のさらに他の態様では、治療剤はラミニン-511である。前記の態様のさらに他の態様では、治療剤はグルコサミンであり、グルコサミンは、例えば、変形性関節症の治療において使用することができる。前記の態様のさらに他の態様では、治療剤は、ビタミンEまたはオールトランスレチノイン酸、例えば、レチノールが含まれるが、これに限定されない、抗酸化物質である。前記の態様のさらに他の態様では、治療剤には幹細胞が含まれる。前記の態様のさらに他の態様では、治療剤は、インシュリン、増殖因子、例えば、NGF(神経成長因子)、BDNF(脳由来神経栄養因子)、PDGF(血小板由来増殖因子)、またはプルモルファミン(Purmorphamine)デフェロキサミン(Deferoxamine)NGF(神経成長因子)、デキサメタゾン、アスコルビン酸、5-アザシチジン、4,6-二置換ピロロピリミジン、カルジオゲノール(cardiogenol)、cDNA、DNA、RNAi、BMP-4(骨形成タンパク質-4)、BMP-2(骨形成タンパク質-2)、抗生物質剤、例えば、βラクタム、フルオロキノロンを含むキノロン、アミノグリコシドまたはマクロライド、肝細胞増殖因子またはピルフェニドンを含むが、これに限定されない抗線維症剤、抗瘢痕剤、例えば、抗TGF-b2モノクローナル抗体(rhAnti-TGF-b2 mAb)、ペプチド、例えば、GHK銅結合ペプチド、組織再生剤、ステロイド、フィブロネクチン、サイトカイン、鎮痛剤、例えば、タペンタドール(Tapentadol)HCl、アヘン剤(例えば、モルヒネ、コドン、オキシコドンなど)、防腐剤、α-インターフェロン、β-インターフェロン、もしくはγ-インターフェロン、EPO、グルカゴン、カルシトニン、ヘパリン、インターロイキン-1、インターロイキン-2、フィルグラスチム、タンパク質、HGH、黄体形成ホルモン、心房性ナトリウム利尿因子、第VIII因子、第IX因子、または卵胞刺激ホルモンである。前記の態様のさらに他の態様では、糸は、複数の治療剤または診断剤の組み合わせを含有する。これらの態様の一部では、異なる糸が異なる治療剤または診断剤を含む。
【0021】
前記の態様の一部では、糸の最終的な引張り強さは、約0kpsi〜約250kpsiである。前記の態様の他の態様では、糸の最終的な引張り強さは、約1kpsi〜約125kpsiである。前記の態様のさらに他の態様では、糸の最終的な引張り強さは、約5kpsi〜約100kpsiである。
【0022】
前記の態様の一部では、糸の軸方向の引張り強さは、約0.01lbs〜約10lbsである。前記の態様の他の態様では、糸の軸方向の引張り強さは、約0.1lbs〜約5lbsである。前記の態様のさらに他の態様では、糸の軸方向の引張り強さは、約0.5lbs〜約2lbsである。
【0023】
前記の態様の一部では、糸の断面積は、約1
*10
6in
2〜約1,000
*10
6in
2である。前記の態様の他の態様では、糸の断面積は、約10
*10
6in
2〜約500
*10
6in
2である。前記の態様のさらに他の態様では、糸の断面積は、約50
*10
6in
2〜約250
*10
6in
2である。
【0024】
前記の態様の一部では、糸の直径は、約0.0001インチ〜約0.100インチである。前記の態様の他の態様では、糸の直径は、約0.001インチ〜約0.020インチである。前記の態様のさらに他の態様では、糸の直径は、約0.003インチ〜約0.010インチである。
【0025】
前記の態様の一部では、糸の弾性は約1%〜200%である。前記の態様の他の態様では、糸の弾性は約5%〜約100%である。前記の態様のさらに他の態様では、糸の弾性は約10%〜50%である。本明細書において、弾性とは、糸の最初の長さまで戻る能力を保持している間の、糸の%伸びである。
【0026】
前記の態様の一部では、糸の分子量は、約0.1MD〜約8MDである(MDは百万ダルトンである)。前記の態様の他の態様では、糸の分子量は約0.5MD〜約4MDである。前記の態様のさらに他の態様では、糸の分子量は約1MD〜約2MDである。
【0027】
前記の態様の一部では、糸の持続的な鎖の長さが約10nm〜約250nmである。前記の態様の他の態様では、糸の持続的な鎖の長さが約10nm〜約125nmである。前記の態様のさらに他の態様では、糸の持続的な鎖の長さが約10nm〜約75nmである。
【0028】
前記の態様の一部では、糸が完全に水和した時に、糸の断面積は約0%〜約10,000%まで膨張する。前記の態様の他の態様では、糸が完全に水和した時に、糸の断面積は約0%〜約2,500%まで膨張する。前記の態様のさらに他の態様では、糸が完全に水和した時に、糸の断面積は約0%〜約900%まで膨張する。
【0029】
前記の態様の一部では、糸は完全に水和した時に約0%〜約1,000%まで伸びる。前記の態様の他の態様では、糸は完全に水和した時に約0%〜約100%まで伸びる。前記の態様のさらに他の態様では、糸は完全に水和した時に約0%〜約30%まで伸びる。
【0030】
前記の態様の一部では、糸は、約1秒〜約24時間、水環境の中に浸漬された後に完全に水和する。前記の態様の他の態様では、糸は、約1秒〜約1時間、水環境の中に浸漬された後に完全に水和する。前記の態様のさらに他の態様では、糸は、約1秒〜約5分間、水環境の中に浸漬された後に完全に水和する。
【0031】
一部の態様において、糸は架橋され、約50kpsi〜約75kpsiの最終的な引張り強さ、0.005インチ〜約0.015インチの直径を有し、完全に水和した時に、糸の太さまたは直径は約50%〜約100%まで膨張し、インビボでの糸の寿命は約6ヶ月である。
【0032】
一部の態様において、前記の糸から、ひもを形成することができる。他の態様において、前記の糸から、コードを形成することができる。さらに他の態様において、前記の糸から、織物メッシュを形成することができる。さらに他の態様において、前記のひもまたはコードから、織物メッシュを形成することができる。
【0033】
一部の態様において、前記の糸を織る、または包む、または巻き付ける、または層状にすることによって、三次元構造を構築することができる。他の態様において、前記のひもを織る、または包む、または巻き付ける、または層状にすることによって、三次元構造を構築することができる。さらに他の態様において、前記のコードを織る、または包む、または巻き付ける、または層状にすることによって、三次元構造を構築することができる。さらに他の態様において、前記のメッシュを織る、または包む、または巻き付ける、または層状にすることによって、三次元構造を構築することができる。
【0034】
一部の態様において、任意の糸で作られた三次元の円筒形移植片が提供される。このような移植片の例示的な使用は、乳頭再建のための使用である。一部の態様において、円筒形移植片を作るために用いられる糸は架橋され、軟骨細胞接着化合物を含む。他の態様において、糸の複数の同心コイルによって円筒形が得られる。
【0035】
ヒアルロン酸および/またはその誘導体の糸は1つまたは複数のキラル中心を含有してもよく、従って、立体異性体、例えば、鏡像異性体またはジアステレオマーとして存在してもよい。一般的に、立体異性的に純粋な形(例えば、鏡像異性的に純粋な形またはジアステレオ異性的に純粋な形)を含む、全ての立体異性体(すなわち、例示された化合物の可能性のある全ての鏡像異性体および立体異性体)ならびに鏡像異性体および立体異性体の混合物が本発明の範囲内である。
【0036】
ヒアルロン酸および/またはその誘導体の糸は、いくつかの互変異性体の形およびその混合物で存在してもよく、これらは全て本発明の範囲内である。ヒアルロン酸および/またはその誘導体の糸は、溶媒和しない形で存在してもよく、水和型を含む溶媒和する形で存在してもよい。一般的に、水和型および溶媒和型は本発明の範囲内である。従って、ヒアルロン酸および/またはその誘導体の糸の全ての物理的形態が、本発明によって意図される使用について等価であり、本発明の範囲内であることが意図される。
【0037】
ヒアルロン酸およびその誘導体の糸を作製する方法
本発明はまた、前記のヒアルロン酸およびその誘導体の糸を作製するための方法を提供する。一部の態様において、ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物の糸を作製する方法が提供される。ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物を水または緩衝液と混合して、ゲルを形成する。次いで、ゲルを押出して、ゲルの糸を形成する。例えば、ゲルを、ノズルの付いた注射器に入れ、ゲルがノズルから押出されるように、注射器を加圧し、注射器を直線移動させることによって、ゲルを押出すことができる。ノズルの特徴、例えば、先細り、長さ、および直径、注射器の圧力、ならびに直線移動の速度は、異なるサイズおよび機械的強度の糸を作製するように調節することができる。ゲルの糸を作製する別の方法は、ゲルを回転させる、すなわち生地のように回転させることによる方法、またはゲルを型に入れることによる方法である。ゲルの糸を作製するさらに別の方法は、重力の影響下で、または遠心力を用いて、ゲルを伸ばして糸にする方法である。ゲルの糸を作製するさらに別の方法は、ゲルを、荷電した平行なガラス板の間に入れて剪断することによる方法である。ゲルの糸を作製するさらに別の方法は、エラストマー上に作られた溝にゲルを閉じ込め、次いで、エラストマーを伸ばすことによる方法である。ゲルの糸を作製するさらに別の方法は、ゲルを、糸の脱水が可能な透過性のある管状構造に閉じ込め、必要に応じて、環境パラメータ、例えば、温度、圧力、および気体組成を調節することによって、脱水の内容を制御することによる方法である。次いで、調製後に、ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物の糸を乾燥させる。
【0038】
他の態様において、架橋ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物の糸を作製する方法が提供される。ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物は、水または緩衝液および架橋剤と混合されて、ゲルを形成する。次いで、前記の糸を形成するようにゲルは押出される。または、糸は前記の任意の方法によって作ることができる。一般的に、糸が乾燥するにつれて架橋が起こるように、架橋剤が添加された直後に、ゲルを押出す、または他の方法で操作しなければならない。次いで、調製後に、架橋ヒアルロン酸またはその塩、水和物、もしくは溶媒和化合物の糸を乾燥させる。
【0039】
一部の態様において、架橋剤とヒアルロン酸の比は、約0.01%〜約10%である。他の態様において、架橋剤とヒアルロン酸の比は、約0.02%〜約5%である。さらに他の態様において、架橋剤とヒアルロン酸の比は、約0.1%〜約3%である。
【0040】
前記の態様の一部では、1つまたは複数の治療剤または診断剤がゲル形成工程に含まれる。
【0041】
前記の態様の一部では、ゲルは、重量で約0.1%〜約10%の濃度のヒアルロン酸を有する。前記の態様の他の態様では、ゲルは、重量で約1%〜約7%の濃度のヒアルロン酸を有する。前記の態様のさらに他の態様では、ゲルは、重量で約4%〜約6%の濃度のヒアルロン酸を有する。
【0042】
前記の態様の一部では、ポリマー鎖は、軸方向に伸ばすことによって糸の軸に沿ってさらに方向付けられる。前記の態様の他の態様では、ポリマー鎖は、重力または遠心力によって、糸の軸に沿って方向付けられる。前記の態様のさらに他の態様では、糸を垂直につり下げることによって、重力が加えられる。前記の態様のさらに他の態様では、ポリマー鎖は、糸の長さに沿って電位を加えることによって、糸の軸に沿って方向付けられる。前記の態様のさらに他の態様では、ポリマー鎖は、前記の方法の組み合わせによって、糸の軸に沿って方向付けられる。
【0043】
前記の態様の一部では、糸は水で水和され、次いで、再び乾燥される。前記の態様の他の態様では、水和工程および乾燥工程は複数回、繰り返される。前記の態様のさらに他の態様では、ポリマー鎖は、軸方向に伸ばすことによって、重力もしくは遠心力を加えることによって、糸の長さに沿って電位を加えることによって、またはその組み合わせによって、糸の軸に沿って方向付けられる。前記の態様のさらに他の態様では、水和工程の間に、治療剤または診断剤または架橋剤が糸に適用される。
【0044】
前記の態様の一部では、層状の糸を得るために、ゲルは、先に作られた糸の上に押出される。
【0045】
前記の態様の別の態様では、乾燥工程の後に、糸は薬剤に浸漬されるか、または薬剤でリンスされる。前記の態様の一部では、薬剤は、架橋剤、治療剤、または診断剤である。
【0046】
前記の態様の別の態様では、糸は、例えば、リンス工程の後に乾燥されるのと同時に、薬剤に浸漬されるか、または薬剤でリンスされる。前記の態様の一部では、薬剤は、架橋剤、治療剤、または診断剤である。
【0047】
前記の態様のさらに他の態様では、糸は凍結され、次いで、融解される。前記の態様のさらに他の態様では、糸は少なくとも2回以上、凍結され、次いで、融解される。
【0048】
前記の態様のさらに他の態様では、架橋を促進するために、乾燥した糸には放射線が照射される。前記の態様の一部では、架橋を促進するために、水和した糸には放射線が照射される。
【0049】
前記の態様のさらに他の態様では、糸の特性を変えるために、乾燥または水和した糸は、生体吸収可能な生体高分子、例えば、コラーゲン、PEG、またはPLGAでコーティングされる。または、コーティングされていない(free)織物メッシュとは物理的性質が異なる織物またはメッシュを作り出すために、織物構築物は一層でも3Dでもその全体をコーティングすることができる。
【0050】
ヒアルロン酸およびその誘導体の糸を使用する方法
本明細書に記載の糸、ひも、コード、織物メッシュ、または三次元構造は、例えば、動脈瘤の充填、腫瘍への血流の閉塞(すなわち、腫瘍閉塞)、眼瞼手術、(例えば、拡大または感度低下、すなわち、早漏症の治療のための)陰茎増大、診断剤および/または治療剤の鼻腔内(血液脳関門)送達装置、薬物送達のための角膜移植、隆鼻または鼻の再建、口唇の増大または再建、顔の増大または再建、耳垂の増大または再建、脊髄移植(例えば、膨隆型椎間板ヘルニア(bulging disk)を支持するための脊髄移植)、根管充填材(治療剤が加えられる)、声門閉鎖不全、レーザーフォトリフラクティブ療法(例えば、クッションとして用いられるヒアルロン酸糸/織物)、臓器の再成長のための足場材料、パーキンソン病(定位送達)における脊髄治療(BDNFおよびNGF)、治療分子または診断分子の正確な送達、歯髄移植、交換歯髄根管治療(replacement pulp root canal treatment)、成形された根管系、陰圧創傷療法、癒着防止材および創傷用包帯において使用することができる。
【0051】
一部の態様において、本明細書に記載の糸、ひも、コード、織物メッシュ、または三次元構造は、様々な審美的用途において皮膚充填剤として用いられる。他の態様において、本明細書に記載の糸、ひも、コード、織物メッシュ、または三次元構造は、様々な外科手術用途において縫合糸として用いられる。さらに他の態様において、本明細書に記載の糸、ひも、コード、織物メッシュ、または三次元構造は、眼科手術、薬物送達、および関節内注射において用いられる。
【0052】
一部の態様において、本明細書に記載の糸、ひも、コード、織物メッシュ、または三次元構造は、陰圧創傷用包帯を含む創傷用包帯に用いられる。
【0053】
一部の態様において、創傷用包帯は、少なくとも72時間、創傷と接触し続ける。他の態様において、陰圧創傷用包帯は、少なくとも1週間創傷と接触し続ける。さらに他の態様において、創傷用包帯は、少なくとも2週間、創傷と接触し続ける。さらに他の態様において、創傷用包帯は、少なくとも3週間、創傷と接触し続ける。さらに他の態様において、創傷用包帯は、少なくとも4週間、創傷と接触し続ける。前記の態様において、本明細書に記載の糸、ひも、コード、織物メッシュ、または三次元構造は完全に吸収されるので、肉芽組織はこれらの成分を保持しないことが理解されるはずである。これらの態様の一部では、創傷用包帯は、厚さが約1cm〜約5cmである。従って、これらの態様の一部において、包帯を交換することなく、創床を閉じることができる。
【0054】
一部の態様において、本明細書に記載の織物メッシュは、陰圧創傷用包帯を含む創傷用包帯において用いられる。他の態様において、包帯は2〜約10層の織物メッシュを含む。
【0055】
さらに他の態様において、織物メッシュは同一の糸を含む。さらに他の態様において、織物メッシュは異なる糸を含む。
【0056】
一部の態様において、織物メッシュは乾燥時に、厚さが約1mm〜約2mmである。他の態様において、織物メッシュは乾燥時に、厚さが約2mm〜約4mmである。
【0057】
一部の態様において、織物メッシュの孔径は、幅が約1mm〜約10mmである。他の態様において、織物メッシュの孔径は、幅が約0.3mm〜約0.6mmである。さらに他の態様において、織物メッシュの孔は整列している。さらに他の態様において、織物メッシュの孔は互い違いになっている。さらに他の態様において、織物メッシュは、所望のサイズの孔を作り出すように平行になっている。
【0058】
一部の態様において、織物メッシュは、約75mmHgの減圧まで機械的に安定している。他の態様において、織物メッシュは、約150mmHgの減圧まで機械的に安定している。
【0059】
一部の態様において、織物メッシュはコラーゲンを含む。他の態様において、包帯はポリウレタン発泡体に取り付けられる。さらに他の態様において、ポリウレタン発泡体は連続気泡発泡体である。さらに他の態様において、包帯は薄いフィルムに取り付けられる。さらに他の態様において、薄いフィルムはシリコーンまたはポリウレタンである。さらに他の態様において、包帯は、水溶性接着剤で薄いフィルムに取り付けられる。
【0060】
一部の態様において、包帯に用いられる糸は治療剤または診断剤を含む。
【0061】
一部の態様において、創傷、特に、開放創(Zamierski 米国特許第4,969,880号、同第5,100,396号、同第5,261,893号、同第5,527,293号、および同第6,071,267号、ならびにArgenta et al., 米国特許第5,636,643号および同第5,645,081号)の減圧により誘導される治癒において使用するために、陰圧創傷用包帯(Johnson et al., 米国特許第7,070,584号、Kemp et al., 米国特許第5,256,418号、Chatelier et al., 米国特許第5,449383号、Bennet et al., 米国特許第5,578,662号、Yasukawa et al., 米国特許第5,629,186号および同第5,780,281号ならびに米国特許出願第08/951,832号)が提供される。包帯は、創傷位置に適合するパッド、パッドに着脱可能に接着された気密シール、パッドと流体連通している陰圧源、ならびにパッドの創傷接触面に取り付けられた、本明細書に記載の糸、ひも、コード、織物メッシュ、または三次元構造を含む。パッド、シール、および減圧源は先行技術に記載のように実行される。
【0062】
他の態様において、本明細書に記載の糸、ひも、コード、織物メッシュ、または三次元構造は、約75mmHgの減圧まで機械的に安定している。さらに他の態様において、本明細書に記載の糸、ひも、コード、織物メッシュ、または三次元構造は、約150mmHgの減圧まで機械的に安定している。さらに他の態様において、包帯は、少なくとも1層の織物メッシュを含む。さらに他の態様において、包帯は、2〜約10層の織物メッシュを含む。さらに他の態様において、パッドは発泡体である。さらに他の態様において、パッドはポリウレタン連続気泡発泡体である。
【0063】
一部の態様において、チューブがパッドと陰圧源を接続する。さらに他の態様において、着脱可能なキャニスターがパッドと陰圧源の間に挿入され、パッドおよび陰圧源と流体連通する。
【0064】
一部の態様において、本明細書に記載の糸、ひも、コード、織物メッシュ、または三次元構造は水和されない。従って、これらの態様において、包帯は創傷と接触して置かれた時に、創傷滲出物を吸収することができる。他の態様において、本明細書に記載の糸、ひも、コード、織物メッシュ、または三次元構造は水和される。従って、これらの態様において、包帯は創傷と接触して置かれた時に、創傷を湿った状態に保つことができる。
【0065】
一部の態様において、流体に取り付けられた入力ポートがパッドと接続される。従って、これらの態様において、流体を創傷の中に投与することができる。一部の態様において、流体は食塩水である。他の態様において、流体は診断剤または治療剤を含有する。
【0066】
一部の態様において、本明細書に記載の糸、ひも、コード、織物メッシュ、または三次元構造は癒着防止材として用いられる。一部の態様において、本明細書に記載の織物メッシュは癒着防止材の中に用いられる。
【0067】
一部の態様において、対象において皺を治療する方法が提供される。例えば、
図3Aに示したように、皺は眼窩周囲領域にあってもよい。例えば、
図1、2A、および2Bに示したように、糸は針に取り付けられてもよい。例えば
図3Bに示したように、針の末端は、対象の皮膚表面を通って、皺に隣接する、または皺の中にある真皮に挿入することができる。一部の態様において、糸は、真皮の代わりに皮下空間に挿入される。次いで、例えば
図3Cに示したように、針は、皺の下にある対象の真皮を横断することができる。次いで、例えば
図3Dに示したように、針は、皺の反対の縁にある対象の皮膚から出ることができる。次いで、例えば
図3Eに示したように、皺の下の、先に針が占めていた位置に糸が引き入れられるように、針が対象から取り出されるまで針を末端方向に引っ張ることができる。最後に、例えば
図3Fに示したように、余分な糸を対象の皮膚表面にある針から切断し、糸を植え込んだままにする。
【0068】
理論に拘束されるつもりはないが、前記の方法は、
図5A、5Bおよび5Cに示したように皺を首尾良く治療することができる。典型的な皺を
図5Aに示した。
図5Bは、まだ水和していない、皺の下に移植された糸を示す。
図5Cに示したように、皺の下に移植された糸は完全に水和すると同時に、皺の表面外観が平らになる。
【0069】
一部の態様において、前記の方法は、前記の方法を必要とする対象の皮膚を若返らせるのに使用することができる。これらの態様の多くにおいて、糸は、かなりの量の非架橋ヒアルロン酸を含む。これらの態様の一部において、糸は、抗酸化物質、ビタミンE、もしくはレチノール、またはその組み合わせを含む。
【0070】
一部の態様において、対象における脱毛を治療する方法が提供される。対象、例えば、典型的な男性型脱毛症を有する男性を
図4Aに示し、発毛(と想像上の生え際)が望ましい領域を
図4Bに示した。例えば
図1、2A、2Bおよび4Cに示したように、糸を針に取り付けることができる。例えば
図4Cに示したように、針の末端は生え際の1つに挿入することができる。次いで、例えば
図4Dに示したように、針は、対象の生え際の下にある領域を横断することができ、対象の皮膚から出ることができる。次いで、例えば
図4Eに示したように、先に針が占めていた位置に糸が引っ張られるように、針が対象から取り出されるまで針を末端方向に引っ張ることができる。最後に、例えば
図4Dに示したように、余分な糸を対象の皮膚表面にある針から切断し、糸を植え込んだままにする。
【0071】
一部の態様において、腫瘍の治療を必要とする対象において腫瘍を治療するための方法が提供される。例えば
図1、2Aおよび2Bに示したように、糸を針に取り付けることができる。針の末端は対象の腫瘍に挿入することができる。次いで、針は腫瘍を横断することができ、次いで、腫瘍から出ることができる。次いで、先に針が占めていた位置に糸が引き入れられるように、針が対象の腫瘍から取り出されるまで針を末端方向に引っ張ることができる。最後に、余分な糸を針から切断し、糸を対象の腫瘍に植え込んだままにする。上記の態様の一部の態様において、糸は抗癌剤を含む。一部の態様において、糸は架橋され、Bcl-2阻害剤を含む。
【0072】
例示的な態様において、本発明の方法は膵臓腫瘍の治療に使用することができる。
図6Aは腫瘍を有するヒト膵臓を示すのに対して、
図6Bは、糸が取り付けられている針を示す。膵臓には、外科手術によって、または侵襲性が最小限の方法によって、例えば、腹腔鏡検査によって到達することができる。針の末端を膵臓腫瘍に挿入することができる。次いで、針は、
図6Cに示したように膵臓腫瘍を横断することができ、次いで、腫瘍から出ることができる。次いで、先に針が占めていた位置に糸が引き入れられるように、針が膵臓腫瘍から取り出されるまで針を末端方向に引っ張ることができる。最後に、余分な糸を針から切断し、糸を膵臓腫瘍に植え込んだままにする。このプロセスは、
図6Dに示したように、多くの糸が移植された膵臓腫瘍を得るように、何回も繰り返すことができる。一部の態様において、糸は抗癌剤を含む。
【0073】
一部の態様において、拡張蛇行静脈の治療を必要とする対象において拡張蛇行静脈を治療するための方法が提供される。例えば
図1、2A、および2Bに示したように、糸を針に取り付けることができる。針の末端を対象の拡張蛇行静脈に挿入することができる。次いで、針は拡張蛇行静脈を横断することができ、次いで、静脈から出ることができる。次いで、先に針が占めていた位置に糸が引き入れられるように、針が対象の拡張蛇行静脈から取り出されるまで針を末端方向に引っ張ることができる。最後に、余分な糸を針から切断し、糸を対象の拡張蛇行静脈に植え込んだままにする。一部の態様において、針には可撓性がある。他の態様において、糸は水和するとコイル状になって、血管がさらに容易に塞がれる。
【0074】
一部の態様において、架橋糸からなる三次元の円筒形移植片が皮膚の下に移植される、乳頭を再建するための方法が提供される。移植片は、治療剤、例えば、軟骨細胞(chrondrocyte)接着化合物を含んでもよい。
図7Aは、乳頭となるように成形された、糸の複数の同心コイル層からなる移植片を示すのに対して、
図7Bは、
図7Aの移植片の断面図を示す。
図7Cは、乳頭再建のために
図7Aの移植片がどのように使用できるかを示す。
【0075】
一部の態様において、神経または血管を再成長するための方法が提供される。
図8に示したように、針を用いて、神経または血管の再成長を促進することができる特定のラインに糸を置くことができる。
【実施例】
【0076】
以下の実施例を参照することによって、本発明をさらに定義する。本発明の範囲から逸脱することなく、材料および方法に対して多くの変更を実施できることは当業者に明らかであろう。
【0077】
実施例1:架橋糸の合成
5重量%ヒアルロン酸および0.4重量%BDDEの濃度を有し、残りが水からなるゲルを形成することによって、直径0.004インチ〜0.006インチの架橋糸を作製した。内径が0.02インチで先端が先細のノズル、20psiの注射器圧力、および注射器からのゲル射出の速度と釣り合った直線移動速度により、ゲルを押出して糸の形にした。しかしながら、望ましい太さの糸を作製することができる、押出しパラメータの非常に多くの組み合わせが存在する。糸を乾燥させ、次いで、糸を水和している水でリンスし、次いで、乾燥中に糸を伸ばした。リンスおよび乾燥の複数のサイクルを行っている間に、糸の全長が約25%〜約100%増えた。前記のように作製した糸は、おおよそ約0.25kg〜約1.50kgの張力で機能しなくなり、水和した時には直径が約25%〜約100%膨張する。これは、インビボでは1〜9ヶ月間、糸として存続し得る。
【0078】
実施例2:ヒアルロン酸糸による死体の皺の治療
皮下針(22〜25Ga)に、太さが0.004インチ〜0.008インチのヒアルロン酸糸を1本または2本、付けた。非架橋糸およびBDDEを用いて架橋した糸を両方とも使用した。針は、50歳女性の死体頭部、例えば、鼻唇ヒダ、口周囲、眼窩周囲、前頭筋(額)、および眉間にある皺を横断することができた。針は、先に針が挿入された位置に糸があるように、糸を皮膚に通して引っ張ることができた。
【0079】
実施例3:イヌへのヒアルロン酸糸の留置
急性イヌ試験および慢性イヌ試験を行った。皮下針(22〜25Ga)に、太さが0.004インチ〜0.008インチのヒアルロン酸糸を1本または2本、付けた。非架橋糸およびBDDEを用いて架橋した糸を両方とも使用した。全ての場合において、針は、取り付けられた糸を真皮に通して引っ張ることができた。数分以内に、ほとんどの糸は、線状の隆起の形で、動物の皮膚表面に対して目に見える影響を及ぼした。
【0080】
実施例4:様々なヒアルロン酸糸の引張り強さの比較
自己架橋ヒアルロン酸糸の引張り強さを、実施例1の方法を用いて架橋した糸と比較した。ヒアルロン酸を自己架橋する方法(USPTO6,387,413を参照されたい)を再現して、非架橋ヒアルロン酸の糸をくりかえし凍結融解した。このような全ての試料は、前記と同じ押出しパラメータを用いて作製しBDDEを用いて架橋した糸よりも、破断張力が小さかった。
【0081】
最後に、本発明を実施する別のやり方があることに留意すべきである。従って、本発明の態様は、例示であり、限定するものではないとみなすことができ、本発明は、本明細書において示された詳細に限定されないが、添付の特許請求の範囲の範囲および均等物の中で変更することができる。本明細書において引用された全ての参考文献および刊行物は、その全体が参照により組み入れられる。