(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334636
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】原子炉の補給水中の溶存ガスの除去
(51)【国際特許分類】
G21C 19/303 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
G21C19/30 E
【請求項の数】16
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-185918(P2016-185918)
(22)【出願日】2016年9月23日
(62)【分割の表示】特願2013-528255(P2013-528255)の分割
【原出願日】2011年9月7日
(65)【公開番号】特開2017-15731(P2017-15731A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2016年9月23日
(31)【優先権主張番号】12/877,145
(32)【優先日】2010年9月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】コノプカ、ジョージ、ジー
【審査官】
右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭60−175596(JP,A)
【文献】
特開平08−297196(JP,A)
【文献】
特開2005−111443(JP,A)
【文献】
特開平10−249105(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0025696(US,A1)
【文献】
特開昭58−140692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/303
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補給水から溶存ガスを少なくとも一部除去するための処理システムを含む水冷式原子炉の一次補給水系であって、前記一次補給水系が、
放水部を有し、溶存ガスを含む補給水を収容する貯蔵タンク(10)、
貯蔵タンク(10)の下流に配置された一次補給水系排水口、及び
第1の端部と第2の端部を有し、前記第1の端部が貯蔵タンク(10)の放水部に接続されるとともに、前記第2の端部が前記一次補給水系排水口に接続された一次放水ライン(15)を含み、
前記処理システムが、注水口及び排水口を有し、一次放水ライン(15)に接続され、貯蔵タンク(10)の放水部の下流で且つ前記一次補給水系排水口の上流に配置された膜システム(35)を具備しており、
溶存ガスを含む補給水流を、放水ライン(15)を通して貯蔵タンク(10)の放水部から膜システム(35)の注水口へ送水し、前記補給水流から前記溶存ガスを少なくとも一部除去することにより、膜システム(35)の排水口から流れる処理済補給水流を生成し、
前記処理済補給水流の溶存ガス含有量は、膜システム(35)の注水口へ送水された前記補給水流の溶存ガス含有量を下回っており、
前記一次補給水系は更に、前記処理済補給水流を膜システム(35)の排水口から前記水冷式原子炉に送水するか、又は貯蔵タンク(10)へと再循環させるための送水機構を含み、
前記水冷式原子炉が処理済補給水流を必要とする事象の発生に応答して前記一次補給水系が供給モードにあるときは、前記処理済補給水流を前記水冷式原子炉の構成要素又は系統に供給し、前記一次補給水系が供給停止モードにあるときは、前記処理済補給水流を前記一次補給水系の貯蔵タンク(10)へと再供給する一次補給水系。
【請求項2】
前記溶存ガスが、溶存酸素、溶存窒素、溶存アルゴン、及びそれらの混合物から成る群から選択された少なくとも1つの溶存ガスを含む、請求項1に記載の一次補給水系。
【請求項3】
前記溶存ガスが空気からの浸透の結果として前記補給水中に存在する、請求項1に記載の一次補給水系。
【請求項4】
前記補給水流を貯蔵タンク(10)から膜システム(35)に送水するために、貯蔵タンク(10)の放水部の下流で膜システム(35)の注水口の上流に配置されたポンプ(20)を更に含む、請求項1に記載の一次補給水系。
【請求項5】
膜システム(35)から出る前記補給水流を制御するために、膜システム(35)の排水口の下流に配置されたバルブを更に含む、請求項1に記載の一次補給水系。
【請求項6】
前記補給水がホウ素を含まない、請求項1に記載の一次補給水系。
【請求項7】
前記溶存ガスが溶存酸素を含む、請求項1に記載の一次補給水系。
【請求項8】
膜システム(35)が前記補給水流から前記溶存ガスの全てを除去する、請求項1に記載の一次補給水系。
【請求項9】
膜システム(35)が前記補給水流から前記溶存酸素の全てを除去する、請求項7に記載の一次補給水系。
【請求項10】
膜システム(35)が複数枚の膜を含む、請求項1に記載の一次補給水系。
【請求項11】
前記複数枚の膜が液体脱ガス膜を含む、請求項10に記載の一次補給水系。
【請求項12】
前記処理システムが、前記水冷式原子炉が前記処理済補給水流の供給を必要とする事象の発生に応答してオンデマンドで作動状態になる、請求項1に記載の一次補給水系。
【請求項13】
前記送水機構が、膜システム(35)の排水口から前記水冷式原子炉の炉心に前記処理済補給水流を送水する、請求項1に記載の一次補給水系。
【請求項14】
水冷式原子炉の一次補給水系から処理済補給水を供給する方法であって、
放水部を有し、溶存ガスを含む補給水を収容するための貯蔵タンク(10)を提供すること、
注水口及び排水口を有する膜システム(35)を提供すること、
一次補給水排水口を膜システム(35)の下流に配置すること、
貯蔵タンク(10)の放水部から膜システム(35)の注水口に溶存ガスを含む補給水流を放水すること、
前記補給水流を膜システム(35)に通すこと、
前記膜システム(35)において前記補給水流から溶存ガスを少なくとも一部除去して処理済補給水流を生成すること、を含み、
前記処理済補給水流の溶存ガス含有量は、膜システム(35)の注水口に放水された前記補給水流の溶存ガス含有量を下回っており、
前記方法は更に、処理済補給水流を膜システム(35)の排水口から、水冷式原子炉の構成要素及び/又は系統から成る群から選択されたエンド・ユーザーに送水するか、又は貯蔵タンク(10)へと再循環させることを含み、
前記水冷式原子炉が処理済補給水流を必要とする事象の発生に応答して前記一次補給水系が供給モードにあるときは、前記処理済補給水流を前記水冷式原子炉の構成要素又は系統に供給し、前記一次補給水系が供給停止モードにあるときは、前記処理済補給水流を前記一次補給水系の貯蔵タンク(10)へと再供給する方法。
【請求項15】
前記方法が、前記水冷式原子炉が前記処理済補給水流の供給を必要とする事象の発生に応答してオンデマンドで作動状態になる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記処理済補給水流が、膜システム(35)の排水口から前記水冷式原子炉の炉心に送水される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水冷式原子炉に関し、具体的には、水冷式原子炉の補給水系に関する。本発明は更に、補給水中の溶存ガスを少なくとも一部分離し除去するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧水型原子炉(「PWR」)等の水冷式原子炉においては、原子炉の炉心に水が連続的に供給される。水は、一次補給水(「PMW」:Primary Makeup Water)系等の補給水源から連続的に補給される。水は、炉心内部の中性子束を制御するために用いられるホウ素等の少なくとも1つの化学物質を含有する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
典型的には、PMW系は補給水を収容するための一次水貯蔵タンクを含む。一次水貯蔵タンク内の補給水は通常、(例えばゴム製の袋で)覆って、貯蔵タンクに空気が入るのを防ぐ。しかしながら、覆いをしても、ある量の空気が貯蔵タンク内に入る可能性があることがわかっている。空気は、水に溶解可能である窒素、酸素、及びアルゴン等のガスを含有するので、貯蔵タンク内に入るのを防ぐことが望ましい。溶存ガスを含む補給水は最終的に炉心並びに関連の系統及び構成要素に供給される。酸素等の溶存ガスは水系における腐食源として知られているので、これは問題となり得る。当該技術分野において、ヒドラジン等の化学物質を補給水に加えてその溶存酸素レベルを制御することが知られている。しかしながら、ヒドラジンの添加にはそれに伴う不利な点がある。例えば、ヒドラジンは分解する可能性があり、その結果、補給水における溶存窒素量を増大させる恐れがある。更に、一次水貯蔵タンクにおいて窒素ブランケットを用いる場合があるが、これも補給水における溶存窒素量を増大させることがある。補給水が最終的に炉心に供給されると、補給水中の溶存窒素が炭素14の生成を増大させる可能性があることがわかっている。窒素は炉心内の中性子を吸収すると炭素14を形成する。炭素14は環境汚染物質であることが知られているため、その形成を最小限に抑えるか又は防止することが望ましい。更に、アルゴンは窒素と同様の望ましくない影響を及ぼすため、溶存する酸素、窒素、及びアルゴンの少なくとも1つを補給水から除去することが好ましい。
【0004】
このため、最終的に水冷式原子炉の炉心又は関連系統に供給される補給水中の溶存ガスのレベルを制御する、例えば低減するか、最小限に抑えるか、又は排除するための改良型システム及び方法を設計し開発することが要望されている。更に、必要としない場合はPMW系を待機又は非作動モードとし、補給水の供給を必要とする状況又は事象の発生に応答してPMW系を始動又は起動することができるように、オンデマンドで使用可能なシステム及び方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、放水部を有し、溶存ガスを含む補給水を収容する貯蔵タンク、一方の端部が貯蔵タンクの放水部に接続された放水ライン、及び補給水から溶存ガスを少なくとも一部除去するための処理システムを含む水冷式原子炉の一次補給水系において、注水口及び排水口を有する膜システムを含む処理システムを提供する。膜システムは、貯蔵タンクの放水部の下流に位置して溶存ガスを含む補給水流を受け、補給水流から溶存ガスを少なくとも一部除去して処理済補給水流を生成する。また、このシステムは、処理済補給水を膜システムの排水口から水冷式原子炉に送水するか、又は貯蔵タンクへと再循環させるための機構を含む。この処理システムは処理済補給水流を貯蔵タンクへと再循環させる待機配列に維持され、水冷式原子炉が処理済補給水流を必要とする事象の発生に応答して処理済補給水流を水冷式原子炉に送水する作動状態配列に変更される
【0006】
溶存ガスは、溶存酸素、溶存窒素、溶存アルゴン、及びそれらの混合物から成る群から選択された少なくとも1つの溶存ガスを含むことができる。溶存ガスは、空気からの浸透の結果として補給水に存在することがある。
【0007】
本発明の別の態様は、排水口を有し、溶存ガスを含む補給水を収容する貯蔵タンク、一方の端部が貯蔵タンクの排水口に接続された放水ライン、及び膜システムを含む水冷式原子炉の一次補給水系において、補給水から溶存ガスを少なくとも一部除去するための処理方法を提供する。この処理方法は、貯蔵タンクの排水口から膜システムの注水口に溶存ガスを含む補給水流を放水することと、補給水流を膜システムに通すこと、膜システムにおいて補給水流から溶存ガスを少なくとも一部除去して処理済補給水流を生成すること、及び、処理済補給水流を膜システムの排水口から、水冷式原子炉の構成要素及び/又は系統から成る群から選択されたエンド・ユーザーに送水するか、又は貯蔵タンクへと再循環させること、を含む。この処理方法は処理済補給水流を貯蔵タンクへと再循環させる待機配列で作動し、水冷式原子炉が処理済補給水流を必要とする事象の発生に応答して処理済補給水流を前記エンド・ユーザーに送水する作動状態配列に変更される。
【0008】
特許請求の範囲に明記される本発明は、例としてのみ示すいくつかの好適な実施形態に関する以下の詳細な説明及び添付図面から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に従った一次補給水(「PMW」)系の待機配列の概略図である。
【
図2】本発明の別の実施形態に従った、水冷式原子炉の化学体積制御系(Chemicaland Volume Control System)に補給水を供給するための一次補給水(「PMW」)系の配列の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、水冷式原子炉において補給水から溶存ガスを少なくとも一部分離し除去するためのシステム及び方法に関する。溶存ガスは、酸素、窒素、アルゴン、及びそれらの混合物等、空気に含まれる少なくとも1つのガスを含むことができる。溶存ガスは、空気からの浸透の結果として補給水中に存在することがある。補給水は、一次補給水(「PMW」)系等の系統に含まれ、最終的には、水冷式原子炉内の構成要素又は系統のようなエンド・ユーザーに供給される。例えば、補給水はPMW系から供給し、原子炉冷却系(「RCS」:Reactor Coolant System)を循環させることができ、これによって水冷式原子炉の炉心への給水が行われる。代替的な実施形態では、補給水は原子炉の他の系統及び構成要素を循環した後に炉心に供給することができる。補給水中の溶存ガスのレベル又は量は変動し得る。一実施形態では、補給水中の溶存ガスのパーセンテージは、補給水が空気に対して露出する度合い及びその結果としての補給水への空気の浸透度に依存し得る。例えば、露出度及び浸透度が増大すると、補給水中の溶存ガスのパーセンテージが高くなる。
【0011】
PMW系は、補給水を収容し貯蔵する貯蔵タンクを含む。補給水は脱塩水を含む。更に、補給水は任意に、他の化学物質を含む。他の化学物質の例はホウ素であるが、これに限定されるものではない。PWRにおいて、例えば、ホウ素含有水は原子炉を循環して炉心内の中性子束を制御する。一実施形態においては、脱塩水が脱塩水供給タンクから供給され、PMW系の貯蔵タンクの注水口に給水される。更に別の実施形態では、脱塩水供給タンクから供給される脱塩水はホウ素を含む。ホウ素の量は原子炉内の様々なパラメータに応じて変動し得るものであり、本発明を限定するものではない。典型的には、ホウ素の量は商用水冷式原子力発電所において用いられる既知の範囲内である。PMW系の貯蔵タンクのサイズ、形状、及び材料組成は様々であり、本発明を限定するものではない。貯蔵タンクは覆いを含む場合があり、その例はゴム製の袋であるが、これに限定されるものではない。貯蔵タンクはまた窒素ブランケットを含むことがある。補給水は、例えば水冷式原子炉内の他の構成要素及び系統であるエンド・ユーザーに提供する必要が生じるまで、貯蔵タンクに貯蔵され、PMW系内に収容される。
【0012】
PMW系は、水冷式原子炉において他の系統をサポートするために用いられる補助系統である。一例として、PMW系を化学体積制御系(「CVCS」)に接続し、更にこの化学体積制御系をRCSに接続し、RCSに補給水を原子炉に送出させることができる。このように、PMW系の貯蔵タンク内の補給水は貯蔵タンクからCVCSに、次いでRCSに、そして最終的には水冷式原子炉の炉心に流れることができる。補給水が貯蔵タンクをCVCS(又は水冷原子炉の他の構成要素又は系統)に接続する配管を通じて貯蔵タンクの排水口又は放水部を出るように、貯蔵タンクを様々なパイプ及び取付け器具によりCVCSに接続することができる。配管内には他の様々な構成要素があってもよい。例えば、補給水を貯蔵タンクの放水部からPMW系を介してPMW系の排水口又は放水部に、そして例えばCVCS、RCS、及び炉心等のエンド・ユーザーの構成要素又は系統の注水口に圧入するために、貯蔵タンクの下流にポンプを配置することができる。更に、貯蔵タンクの下流にバルブを配置して、エンド・ユーザーの構成要素又は系統への補給水の流量を制御することができる。バルブの開き具合を調節することによって補給水の流量を増減させることができる。更に、バルブを完全に閉じることによって、エンド・ユーザーの構成要素又は系統への補給水の流入を阻止することができる。
【0013】
PMW系の貯蔵タンクをPMW系の放水部(及び水冷式原子炉の別の構成要素又は系統の注水口)に接続する配管に、膜システムが配置される。膜システムは、補給水中の溶存ガスを少なくとも一部除去することができる。前述のように、補給水を収容するPMW系の貯蔵タンクに空気が入ることがあり、その結果、酸素、窒素、アルゴン、及びそれらの混合物等のガスが補給水に溶解する可能性がある。補給水は最終的に炉心を含む水冷式原子炉の様々な系統及び構成要素に供給され、溶存酸素等の溶存ガスは原子炉の構成要素に対して腐食性であるので、補給水中の溶存ガスを低減するか、最小限に抑えるか、又は排除することが望ましい。溶存酸素に加えて、貯蔵タンクにおける空気からの浸透又は窒素ブランケットの結果として補給水に窒素が溶解することがある。溶存窒素は炉心内の中性子を吸収すると反応して炭素14を形成することがあるが、炭素14は既知の環境汚染物質である。溶存アルゴンは溶存窒素と同様の望ましくない影響を及ぼすため、溶存酸素及び溶存窒素を除去することに加えて、溶存アルゴンを補給水から除去することも好ましい。
【0014】
本発明における使用に適した膜システムは、補給水等の液体流から、溶存酸素、溶存窒素、溶存アルゴン、及びそれらの混合物等の溶存ガスを少なくとも一部分離及び除去することができる多種多様な膜を含み得る。膜システムは、補給水から様々なレベル又は量の溶存ガスを除去することができる。例えば、一実施形態における膜システムは補給水から実質的に全ての溶存ガスを除去することができるが、この溶存ガスは溶存酸素、溶存窒素、溶存アルゴン、及びそれらの混合物を含む。別の実施形態における膜システムは補給水から実質的に全ての溶存酸素を除去することができる。除去する量又はパーセンテージは、様々な要因に依存し得る。要因の一例は膜システムの膜の種類及び枚数であるが、これに限定されるものではない。例えば膜システムのサイズ、形状、及び材料組成の具体的な設計は本発明を限定しない。本発明における使用に適した膜は当該技術分野において既知のものから選択することができる。一実施形態では、液体脱ガス膜を用いる。別の実施形態では、Liqui-Cel(登録商標)膜コンタクタとして市販されているガス除去膜を利用する。更に、膜の枚数は本発明にとって限定的なものではない。代替的な実施形態では、膜システムは1枚又は複数枚の膜を含むことができる。膜システムは注水口及び排水口を含む。PMW系の貯蔵タンクからの補給水は膜システムに入り、これに含まれる膜(複数の膜)を通過し、膜システムの排水口から出る。膜システムの排水口から放水される補給水は、膜システムの注水口に入る補給水よりも溶存ガスの含有量が少ない。更に、膜システムの排水口から放水された補給水に溶存ガスが残っていたとしても、商用水冷式原子炉に指定された範囲等の所望の溶存ガス仕様を満たす。
【0015】
一態様において、本発明のシステム及び方法は、補給水流がPMW系の貯蔵タンクから放水された後に補給水から溶存ガスを除去する。このように、本発明は補給水流を(膜システムによって)処理し、補給水流中の溶存ガスのレベルを所望の又は許容可能な範囲内に維持する。これは、貯蔵タンク内に収容された補給水を処理して貯蔵タンク内の溶存ガスのレベルを所望の又は許容可能な範囲内に維持することとは対照的である。
【0016】
一実施形態においては、膜システムから出ると、補給水は再循環によりPMW系の貯蔵タンクに戻る。この実施形態ではPMW系は待機配列にある。これが意味するのは、PMW系が作動状態になっておらず、補給水はPMW系からCVCS、RCS及び/又は炉心等である水冷式原子炉の他の構成要素及び系統に放水されていないということである。この配列が使用可能であるのは、一実施形態において、水冷式原子炉において補給水を供給する必要がある状況又は事象が発生していない場合である。別の実施形態では、この配列が使用可能であるのは、水冷式原子炉において補給水の供給が必要な事象の発生に応答してPMW系を起動する時である。例えば起動モードであるこの実施形態では、短い時間の間、例えば貯蔵タンクから膜システムに、更に再び貯蔵タンクへと、PMW系内で補給水を再循環させた後、PMW系を起動モードから供給又は送出モードに切り換える。
【0017】
例えば供給又は送出モードである別の実施形態では、補給水が貯蔵タンクから膜システムを介して水冷式原子炉のエンド・ユーザーの構成要素又は系統内に放水されるようにPMW系を作動状態に配列する。この配列は、(上述したような)起動モードの後に又は起動モードを経ないで用いることができる。この供給/送出配列は、水冷式原子炉の様々な系統及び構成要素に補給水を提供するように動作可能である。本発明によれば、補給水をオンデマンドで供給することができる。即ち、水冷式原子炉において補給水を必要とする状況又は事象が発生した場合、必要な補給水を送出してその状況又は事象を緩和するように、PMW系を配列して起動することができる。補給水を必要とする状況又は事象がない場合、PMW系は待機モード等の供給停止モードとするか、又は単に非作動モードとすることができる。例えば必要性に応答することによって、必要な時に限り系統を起動し作動させるようにすると様々な動作上の利点がある。利点には、(i)PMW貯蔵タンクの連続的処理を必要としないので、PMW系の構成要素の摩耗が少なく、構成要素の動作寿命が長くなること、及び/又は(ii)PMW貯蔵タンクに設けた溶存ガス排出機構の性能に依存しないことが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
一実施形態においては、PMW系を作動状態にして、RCSホウ素希釈のために補給水を供給する。RCSホウ素希釈は、最大出力を維持するために炉心の劣化をフォローするのに必要である。この実施形態では、ホウ素なしの補給水を原子炉水貯蔵タンクから放水し、膜システムを通過させてその溶存ガスを少なくとも一部除去し、CVCS内に放水し、最終的にRCSに供給し、水冷式原子炉の炉心内に循環させる。
【0019】
膜システムは、様々な構成を用いてPMW系において実施することができる。補給水が膜システムを通過して溶存ガスが少なくとも一部除去された後、CVCS、RCS、及び炉心等(これらに限定されない)のエンド・ユーザーの構成要素又は系統に流入するように、膜システムは、貯蔵タンクの下流で、PMW系の任意の排水口の上流に配置される。一実施形態では、膜システムはバイパス・ラインに配置される。バイパス・ラインは、貯蔵タンクの下流(例えば補給水ポンプの下流)で放水用配管に接続され、PMW系の排水口及びエンド・ユーザーの構成要素又は系統の注水口の上流で再び放水用配管に接続される。
【0020】
図1及び
図2に、本発明の実施形態に従った水冷式原子炉のPMW系の2つの配列例を示す。
図1において、PMW系は待機配列である。PMW系は、補給水を収容し貯蔵格納一次水貯蔵タンク10を含む。補給水は脱塩水供給タンク(図示せず)から供給することができる。一次水貯蔵タンク10は放水ライン15によって一次補給水ポンプ20に接続されている。ポンプ20の下流で、放水ライン15は更に制御バルブ3及びPMW系からCVCS(図示せず)への排水口25を含む。待機配列では、バルブ3は閉位置にあって、PMW系の排水口25からの補給水の放水を阻止する。更に、待機モードの間、補給水は、(ポンプ20の下流で)放水ライン15に接続されたバイパス・ライン30へ圧入される。バイパス・ライン30には膜システム35が配置される。膜システム35は1枚以上の膜(図示せず)を含むことができ、膜はこれを通過する補給水から溶存ガスを少なくとも一部分離及び除去するように動作可能である。膜システム35は排気される気体を逃がすための通気ライン50を含む。バイパス・ライン30には更に、膜システム35の下流に制御バルブ2が配置される。バイパス・ライン30は制御バルブ2の下流で放水ライン15に接続する。待機配列の間、バルブ2は閉位置にあって、補給水が放水ライン15を通りPMW系から流れ出すことを阻止する。
図1に示すように、膜システム35の下流で制御バルブ2の上流のバイパス・ライン30に再循環ライン40が接続されている。待機配列の間、再循環ライン40は膜システム35の排水口から一次水貯蔵タンク10の注水口へと水を戻す。再循環ライン40には制御バルブ1が配置される。待機配列では、制御バルブ1は、水が一次水貯蔵タンク10から膜システム35を通って再び一次水貯蔵タンク10へと流れることを可能とする開位置にある。
【0021】
図2は
図1のPMW系を示すが、補給水を水冷式原子炉の構成要素又は系統に供給又は送出する作動状態配列に構成されている点が異なる。
図2は、
図1の一次水貯蔵タンク10、放水ライン15、ポンプ20、PMW系排水口25、バイパス・ライン30、膜システム35、再循環ライン40、通気ライン50、及びバルブ1、2、3を含む。
図2では、制御バルブ1は閉位置にあって、補給水が一次水貯蔵タンク10から膜システム35を通って再循環ライン40に流入し一次水貯蔵タンク10へ戻る再循環を阻止する。更に、制御バルブ3は閉位置にあるので、一次水貯蔵タンク10からPMW系排水口25へ流れる補給水は必ずまずバイパス・ライン30へ流入して膜システム35を通過する。
図2では、バルブ2は開位置にあるので、補給水は一次水貯蔵タンク10から放水ライン15、ポンプ20を通ってバイパス・ライン30に流入した後、膜システム35を通ってバイパス・ライン30に戻り、放水ライン15に流入し、PMW系の排水口25を通ってCVCSの注水口へ流れることができる。
【0022】
本発明のシステム及び方法は以下の利点の少なくとも1つを提供する。PMW系は必要な時に限り使用することができ、オンデマンドで利用可能である。エンド・ユーザーの構成要素又は系統が補給水を必要とする時、PMW系は起動して
図1の配列に構成され、その後、
図2の作動状態配列に切換えるか又は変更することができる。あるいは、PMW系は、
図1の配列(例えば待機)に維持することが可能であり、補給水が必要になった場合にこの配列を
図2の配列に切換えることができる。本発明によれば、補給水に含まれる溶存ガスを除去するために補給水に化学物質を注入する必要がない。更に、溶存ガスが指定された範囲に維持されるように、一次水貯蔵タンクに溶存ガス排出機構を設けるか又は一次水貯蔵タンクで何らかの前処理を施すことは不要である。これは、本発明が貯蔵タンクから放水された後に補給水流を処理するインラインシステム及びオンデマンド方法を用いるからである。
【0023】
例示目的のために本明細書において本発明の特定の実施形態を記載したが、添付の特許請求の範囲に明記したように本発明から逸脱することなく詳細において多数の変更が可能であることは当業者には明らかであろう。